ある小説をめぐるスリラーミュージカル『アンクル・トム』日本初演開幕
出演者は実力派揃い。ケビン役の上口耕平は近年歌唱力・演技力とも磨きがかかり、めきめきと存在感を増している注目株だ。今回も盗作をきっかけに追い詰められ、ある選択をせまられる青年のギリギリの心理を熱演。トム役の新納慎也はこの人らしい華やかさを封印、腹の読めない謎めいた初老の男を演じ新境地を開いた。このふたりのセリフ、歌の応酬はスリリングかつ大迫力で、見応え十分。出版社の編集長役の池田有希子は知的さと苛烈さを上手くブレンドし、ケビンの親友役の内藤大希もミステリアスな空気で物語にさらなる謎を投入。キャスト陣の熱演で、たった4人とは思えない、緊迫感のあるミュージカルになっている。近年「韓国ミュージカル」はミュージカルの大きな1ジャンルに成長しつつあるが、また1作、注目の作品が誕生しそうだ。
公演は10月27日(日)まで同劇場にて、チケットは発売中。なおこの作品では次世代の俳優育成を目的とした〈エンカレッジデー〉が期間中3公演設定され、こちらには山田元、高畑こと美、ユーリック武蔵が出演(特別出演として新納も同役で出演する)。〈エンカレッジデー〉はチケット価格も安く設定されている。将来の演劇界を支援するこの試みにも注目だ。