『ねじまき鳥クロニクル』演出インバル「新しい次元を生み出したい」
そうしているうちに、もやもやとしたものが少しずつ何かに近づいているのが、ハッキリとわかる。「実験」「やってみよう」「遊び」という言葉が何度も出てくる中で、誰もが頭をフル回転させ、汗をかきながらも楽しそうだ。
インバルはこのワークショップについて「やってみてワクワクしました」と笑顔。「既にアイデアがあるシーンも、実際にキャストに会うとさらに新しいアイデアが湧きました。ひとつのことから別のことに発展したり、そこで新たなクリエイションが生まれたりもしました。魔法のような瞬間がありましたね」と手応えを感じた様子。
村上春樹の小説を舞台化することについては「この特別な原作の持つ力強さを、舞台の良さを活かして表現したいです。と同時に、小説から新しい“次元”を生み出したい。
原作の言葉が印象的ですが、そこにダンスや歌が加わることで新たなものが生まれるのではないかと思っています」と構想を明かす。その中で大切にしたいのは「村上春樹のエッセンス」。そのエッセンスとは「自分の中にあることを感じるのに、掴もうとするとスルッと通り過ぎてしまうようなもの」だと語る。そういうカタチのないものをインバルならではの発想で表現される舞台になりそうだ。