だが、そうして誕生したステージは、斬新でありつつも、四季らしい、四季ならではのものになっている。
内容は、『リトルマーメイド』『アラジン』といった人気ミュージカルのナンバーを本番とは違うアレンジ、ダンスで魅せ楽しませるのはもちろん、ファミリーミュージカルや“昭和三部作”といったオリジナル作品の名曲も丁寧に織り込まれる。さらには、劇団の出発点であるストレートプレイ、ジロドゥの『オンディーヌ』、アヌイの『ひばり』といったセリフ劇の要素も組み込み、改めて劇団四季が自分たちのアイデンティティを噛みしめているかのよう。そんな様々な要素をつなぎ、「劇場は夢を見るところ」という力強い思いが全編を貫く。選曲も、祈りや希望を謳うナンバーが揃い、コロナ禍という逆風の中に伝えるべきメッセージを丁寧に選んでいるのがわかる。ことに終盤で歌われる『美女と野獣』の「人間に戻りたい」 ――これは劇中、魔法によって“モノ”に姿を変えられてしまった野獣の城の召使いたちが「人間に戻ったらあれをしたい、これもしたい」と歌う楽曲である―― は、「世の中が落ち着いたら日常を楽しもう、それまで希望をなくさず頑張ろう」というエールに聞こえ、胸にしみた。