(c)石阪大輔
3月から新たにスタートする神奈川県立音楽堂での「アフタヌーンコンサート」シリーズ(主催:神奈川芸術協会)に出演する、NHK交響楽団第1コンサートマスター篠崎史紀。「音楽堂はすごく響きのいいホール。客席がせり上がっていてお客の顔が見えるので一体になりやすい。僕が大好きな、サロンの感じがあるよね」
聴衆と奏者が近くで感じ合える小規模のサロン・コンサートには、音楽会本来の醍醐味があるという。今回も、演奏曲目の半分は当日のトークで発表という、親密なサロンの雰囲気を醸し出す。
でも、単なる名曲コンサートにしないのがこの人らしいところ。あらかじめ発表されているシューベルトとドヴォルザークの作品には、「アイデンティティの提示」というテーマが隠れている。
「シューベルトは一生をウィーンで過ごした唯一の大作曲家。
ウィーンの“地”の作曲家だから、歌いまわしにウィーン風の訛りが、理屈でなく、当たり前に入っている。自分のアイデンティティをそのまま出せた音楽家だった。
一方でドヴォルザークは、誰に聞いたってチェコの作曲家だけど、実は当時のチェコはハプスブルク家が統治するオーストリア。自分たちのアイデンティティをもぎ取られた民族だったわけです。