くらし情報『本質に迫る新たなつう像。小林沙羅《夕鶴》初挑戦』

本質に迫る新たなつう像。小林沙羅《夕鶴》初挑戦

大事なのはお客さんに本質を伝えることであって、その本質を語るための周りの部分はどうでもいい。もちろん役を演じるうえでは大事なことだけれども、そこから出発するのではなく、お客さんに何かを届けるために最後に必要になる部分。役の心理を深く読み込んで、自分自身とリンクさせるやり方とはまったく逆の方向からの役作りを求められているんだなと強く感じました」
そうやって取り組む中で、彼女自身の楽譜の捉え方や音楽の表現も少し変わったという。感情を無にして歌うことで新しいものが見えてきた。
「私は表現イコール感情だと思っていたところがあったのですが、じつは表現はもう楽譜に書かれていて、楽譜をきちんと歌っていけば、そこに表現が生まれてくる。それが音楽の本質なんじゃないか。感情はあとから乗ってくればいい。これも今までのやり方とは逆の、私にとって新しいことであり、必要なことだと思っています」
つう役は声楽技術的にはけっしてハードルが高くはないが、表現は難しく、師の高橋大海からも「歌い手として熟してから歌わないとダメ」と釘を刺されていたという。
それがまさに今。岡田とともに、新しいつう像を生み出してくれそうだ。

(文・宮本明)
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