米沢が演じ分けた、儚いながらも凛とした美しさが魅力のオデットと、品の良さと大胆さを併せ持つ誘惑者オディール。一方の福岡は、悩み多き王子を清々しく演じた。その後も日替わりで登場する主役カップルそれぞれが、各々の個性を存分に生かした演技で客席を魅了するだろう。もちろん、第2幕、ガリーナ・サムソワによる、ロシアの伝統を受け継ぐ幻想的な群舞の美しさは格別だし、英国のオリジナルを再現したという衣裳も圧巻。バレエの美しさ、楽しさとはこうであったかと、あらためて実感させられる舞台だ。
冒頭、吉田は10月20日に他界した牧阿佐美への弔意を表し、翌23日の開幕公演を彼女の追悼公演としたいと述べたことにも触れておきたい。翌日の舞台は、熱気あふれるカーテンコールで成功を印象付けたが、1999年から2010年の長期にわたりこの劇場の舞踊部門芸術監督を務めた故人の、その大きな功績をしのぶひとときともなった。公演は11月3日(水・祝)まで新国立劇場オペラパレスにて開催。
好評につきチケットは残り僅か。
文:加藤智子