当時はベトナム戦争や女性解放の時代。秩序と混沌が繰り返されるかのように、それが今また繰り返されている。現在の日本の状況に合ったもの、希望のある作品にしたい」
モティーフを執拗に反復するミニマル・ミュージックは、もともと無調音楽に対するアンチテーゼだから、じつは調的で聴きやすい。80年代以降のテクノやトランスなど、クラブ・ミュージックもその影響を受けているぐらいだ。指揮のキハラも「音の洪水に包まれるような印象。ディスコなど、ロックの要素も大きい音楽」と紹介した。前衛オペラの金字塔ではあるけれど、聴衆に現代音楽の専門的な知識などは必要ない。
公演キャッチは「これはオペラか?ダンスか?演劇か?」。
それらの総合アートでもあるし、どの入口から入っても楽しめるとも言える。いわば多様性の元祖。台詞を担当する俳優の松雪泰子と田中要次や、バレエ・ダンサー中村祥子、ヴァイオリニスト辻彩奈(アインシュタインはヴァイオリンを弾いた)など、多彩な出演者を得て、刺激的な舞台になるのは間違いない。器楽の編成は電子オルガン2、フルート3、バスクラリネット、サクソフォン2。合唱(独唱含む)は東京混声合唱団。宣材イラストを『AKIRA』の大友克洋が描き下ろしている。
(宮本明)