ミュージカル『once upon a time in海雲台』稽古場レポート
という、演出の渡邉さつきの言葉からスタート。キャストはわずか4人。集中しつつも、少人数編成らしいアットホームさも伝わってくる。冒頭は列車を舞台にしたドタバタ道中という様相。これまでの作品群ではドラマティックなイメージが強いホ・スヒョンの音楽だが、今作では軽快さも魅力。ここでは旅に出るワクワク感がダイレクトに伝わってきて、楽しい。
そしてキャストの歌声が心地よいほど伸びやかだ。チョン役は山田元。
甘いマスクに高身長、プリンス的役柄も似合う人だが、今回はちょっとおっちょこちょいの可愛らしい青年。これがズルいほどハマっていて、チョンの恋心に、観客はキュンキュンすること間違いなし。歌手志望ながら引っ込み思案、とある失敗を引きずってしまっているヨンドクを演じるのはMARIA-E。持ち前のパワフルボイスを存分に発揮しつつ、これまた観る者が共感してしまうだろう繊細な女の子を丁寧に作っている。軍人と謎の青年ビンの二役を演じる中村翼も確かな歌唱力とチャーミングさで作品の世界を彩り、おばあちゃん役の入絵加奈子はコミカルに笑わせたかと思いきや、物語の芯のテーマをしっとりと染みわたらせる。実力ある4人が力を合わせ、優しい世界を作り上げているのが心地よい。