』。新婚の聟が手土産に酒樽を持ち舅の家にあいさつへ向かう。その道中、琵琶湖の渡船で船頭に酒を飲み干され、やっとの思いで舅の家に着くと…。「親子で継承してきた野村家の当たり狂言です。私と父で海外公演もやり定番にしてきた曲を、今回はひとつ代を飛ばして父と息子で。聟の若者らしいストレートな演技と老練な船頭や舅のコンビネーション。大団円を迎える最後に、お日様や梅の実、毬など(縁起の良い)丸づくしの謡を謡う。洗練された見応えのある曲です」。
休憩をはさみ2幕は『花折(はなおり)』。花盛りの寺で、住職が見習い僧に庭の花見禁制を言いつけ出かける。やってきた花見客たちは垣根越しに酒宴を開いて…。「みんなで謡いつ舞つ、にぎやかな曲で新春らしい華やかなものになっています。最後に狂言の中で最速と言える“道明寺”という素早い舞を舞うのがひとつの見どころ。少し先取りして花見気分を味わっていただきたいと思います」。酒を飲む役をやって25年の萬斎。「エアで酒を飲んでいるのに酔っぱらうようになりました(笑)。
大いに盛り上げたいと思います」。そんな中で今回特に注目は万作の得意とする『舟渡聟』の船頭。「父も91歳。元気ですが、三代そろう期間はそう長くはないと。