チェリスト必須の作品に込められた多彩な魅力を伝えたい
実際に行ってみないとわからないことは多く、同じ国でも都市によって守っている伝統や奏法が微妙に違うことも知ることができました。例えばモーツァルトの演奏スタイルが距離の近いウィーン、ザルツブルク、ミュンヘンで全く違ったのには驚きましたね」
そんな彼が文化庁新進芸術家海外研修生としての成果を発表する作品として選んだのはハイドンの「チェロ協奏曲第2番」。コンクールやオーディションでよく演奏される、チェリストの必須曲だ。
「奏者の技量だけでなく、度胸やトラブル処理能力も分かるのでオーケストラのオーディションでは必ず課題曲に入ります。しかし、まず音楽としてとても素敵な曲で、古典らしいリリカルさとチェロの明るく澄んだ高音の音色のコンビネーションは他の協奏曲にない魅力です。ハイドンはとても好きな作曲家の1人なので、この曲の持つ魅力を、ぜひこの機会に多くの方にお届けできたらと思い選曲しました。普段はドイツで演奏活動をしているため、久しぶりに日本のお客様の前で協奏曲を弾ける事をとても楽しみにしています。今後もチェリストとしてさらに成長していけるよう研鑽を重ね、音楽が持っている人間的な深みも伝えられる演奏家になっていきたいです」
取材・文:長井進之介