日本人キャストも頼もしい。日本が誇るバス妻屋秀和の領主ヘルマンはじめ、鈴木准(ヴァルター)、青山貴(ビーテロルフ)ら「歌びと」たちが、ソロでもアンサンブルでも際立った歌唱。短い出番ながら牧童役・前川依子の透明なソプラノも一服の清涼剤のようなインパクトを残している。
合唱シーンも圧巻だった。いつもどおりの高水準の新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)。コロナ禍のオペラ上演はどこも、感染対策のため、人数を減らしたり、舞台裏で歌ったり、合唱シーンに工夫を強いられてきた。舞台いっぱいに広がった合唱の声の“圧”を浴びるのは久しぶりだ。しかも〈大行進曲〉や〈巡礼の合唱〉など、オペラ屈指の名合唱曲のある《タンホイザー》ならなおさら。
やっぱりこうでなければ。オペラが戻ってきた!と感慨を深くした。
指揮のアレホ・ペレスは新国立劇場初登場だが、二期会や読売日本交響楽団など日本でもすでに定評。正攻法のどっしりとしたワーグナーで、しかも緩むところがない。ピットの東京交響楽団も豊かなサウンドで応えていた。
新国立劇場《タンホイザー》は2月11日(土・祝)まで全5公演。上演時間は約4時間(休憩2回含む)。
(宮本明)