型のない無手勝流な鶴瓶噺は、続けないとダメなんです。
極寒のなか、コートもなんもなしにタキシード1枚で逃げ惑うという役でした。自分でもよう生きてるなぁと思います(笑)」
2022年を振り返って「友達が増えた」と真っ先に口にできる人生。そもそも、70歳をすぎて友達が増える人がいったいどれほどいるのか。漢字なら唯一無二、英語ではワン&オンリー。そんな芸人の冠番組ならぬ冠芸である鶴瓶噺に、弱点などあるのだろうか。
「昔、落語のことを聞かれて『笑福亭鶴瓶<落語』と答えたことがあるんです。やっぱり、長い歴史と深い伝統がある落語という存在はとてつもなく大きい。でも、こっちは『笑福亭鶴瓶=鶴瓶噺』で完全にいっしょ。
鶴瓶噺と僕はイコールなんです。だからこその強みもあるとは思うんですけど、落語と違って型がないでしょ?型のない芸って、続けないとダメなんです。仮に、型のない芸を無手勝流と呼ぶのならずっとやり続けているからこそ無手勝流であって、やめた途端に無手勝流とすら呼ばれなくなると思うんです。鶴瓶噺だって、今年が最後となったらその瞬間は笑ってもらえるかもですけど、すぐに色褪せてしまうはずですから」
鶴瓶噺は、点ではなく線でこそ楽しみが増すのか。30年後の100歳での鶴瓶噺を想像しながらの2023年版は、必見にして必聴の予感がする。
取材・文:唐澤和也