まで、出演者が一丸となって気迫がみなぎる舞台を見せる。
夜の部1本目の『神霊矢口渡』は、主人公のお舟を演じる中村児太郎が見どころだ。冒頭、凛々しい新田義峯にひと目惚れした表情の可愛らしさ。後半では、義峯の命を狙う父の頓兵衛から命がけで義峯を守ろうとする娘心の必死さ、いじらしさ。その頓兵衛役・市川男女蔵も、荒々しい人物ながら、娘を前にためらう表情も見せて印象に残った。
続いて『め組の喧嘩』は、市川團十郎がめ組の鳶頭・辰五郎役。江戸っ子の心意気を持ちながらも、妻や子、仲間への愛情深さがにじみ出てハマり役だ。力士・四ツ車大八役の市川右團次も、器の大きさを醸し出して辰五郎に対峙。
30人を超えるいなせな鳶たちが力士たちとの喧嘩の前に気合いを入れるクライマックスは、ワクワクするような格好良さだ。
最後は、劇聖と謳われた九世團十郎が制定した「新歌舞伎十八番」のひとつ『静の法楽舞』に、物語やケレン味を加えた『鎌倉八幡宮静の法楽舞』。次々と展開する壮麗な舞台美術の中、團十郎が静御前から源義経、老女など七役を、あるときは美しく、あるときは情感豊かに踊り、客席からはため息が。まだ年少ながら、市川ぼたんと市川新之助が立派に勤める「押戻し」