注目の演出家ロッテ・デ・ベア、『ドン・カルロ』を語る
「このオペラの価値は、永遠に続くものと思っています。人々の権力闘争は、過去のものではないのです」と語るデ・ベア。「このプロダクションが初演された2019年、米国ではトランプ大統領とペンス副大統領が、人々の、たとえば女性の権利を奪おうとしていた。私は、この作品の時代設定をいまから40年後の世界としています。いまもこの世界では戦争をはじめいろんなことが起こっていますが、これがどんどん酷くなったら、という想像のもとでの設定です。そこで、自由を奪われ、様々な規則の中で生活する女性たちのことを表現できるのではないかと思いました。私はいつも、普通の人間を、表現したいのです」。
演出に取り組む際には、「なぜいま、この作品を演じるのか」ということを最初に考えるという彼女。
2022年9月にウィーン・フォルクスオーパー初の女性芸術監督に就任、オペレッタの殿堂に新風を吹き込むという大仕事にも取り組む。オペラの未来を担う才能の登場に、期待が高まる。指揮はレオナルド・シーニ、管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団。9月30日(土)よこすか芸術劇場を皮切りに、10月7日(土)・8日(日)札幌文化芸術劇場hitaru、10月13日(金)~15日(日)東京文化会館 大ホールで上演。
(取材・文:加藤智子)