自分の中のグレーな気持ちを、笑って流してしまっておく
むしろ彼女たちは本気で千田サンのことを心配して、裕二を追い払おうとしてくれました。
普通に考えれば、家事もしないで浮気をしているヒモの裕二が悪いので、千田サンを説得した多枝子・純子のほうが圧倒的に正しい。そして、自分をぞんざいに扱う恋人より自分を心配してくれる友達の言葉を信じた千田サンもまた、圧倒的に正しい。
「世俗の風が舞い込んだとき、その幸福は石になったのだ。五年たってやっとわかった」。小説はこんな一文で終わっています。
白黒つけられない「グレー」な気持ちを
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デートでお金を払わされるなんて不幸。浮気をされるなんて不幸。
恋人と長続きしないなんて不幸。彼が無職なんて不幸。仕事が充実していないなんて不幸。友達がいないなんて不幸。介護などの事情があるわけでもないのに実家で暮らしている独身なんて不幸。
世の中にはそんな「いわゆる不幸」のイメージが溢れかえっていて、しかもそれは多くの場合あからさまに否定できないというか、「まあ、そうかも」とこちらを思わせるある種の正しさを持っています。だけど、そんな正しさに押し殺されることなく、自分自身の意志を貫く──というのもまた普通の人間には難しいし、やっぱり小遣いをせびってパチンコに行くようなヒモに寄生されている生活が、そう長く続くとも思えません。