2022年4月1日 12:00
東京国立博物館所蔵の名品2件の修理を行うファンドレイジング事業 「踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクト」を4月1日より開始
また、過去の修理による石膏が経年劣化し、一部に剥離が生じている状態です。東京国立博物館の所蔵する埴輪の中でも知名度の高い作品であることから、他施設から貸出し依頼の多い作品ですが、慎重な取扱いを必要とするため、断念せざるを得ない状況です。
▼胴に横向きの亀裂が入っている
「埴輪 踊る人々」(部分) 胴に入る亀裂の様子
今回の修理では、解体、旧修理による石膏部分の除去、亀裂の強化・接合などが行われる予定です。旧修理の石膏を除去した部分には劣化しにくい補填材を使用し、最新の知見をもとに復元する計画です。
▼右半分が旧修理で施された石膏
「埴輪 踊る人々」(部分) 旧修理で施された石膏(右半分)
●担当研究員の声 東京国立博物館 特別展室 主任研究員 河野正訓
東京国立博物館で収蔵している埴輪の多くが、明治から昭和初期に出土したものです。教科書でおなじみの「埴輪 踊る人々」も、昭和5年(1930)に山林を開墾中に偶然発見され、その後すぐに石膏をつかい修理されています。上半身は比較的オリジナルが残っていますが、意外にも下の円筒部は石膏による復元が大半を占めます。昭和初期の修理のため石膏が非常に脆くなっており、当館で展示する際の取扱いや、他施設の展覧会に出品するための輸送に耐えられなくなっています。