2017年10月5日 07:00
恋を始めたい女性へ 山崎ナオコーラが贈る書き下ろし!
いや、批判したいわけではない。妄想なのだから、まったく構わない。むしろ、マンガの中ではこの感じを突き詰めていった方が面白くなるはずだ。
でも、リアルな世界では、「私は困っている顔だけするので、あとは察して、物語を進めてくれ」というのは虫が良すぎるし、男性がかわいそうだ。
そういうわけで、「恋をしよう」と決めて、自分の心の波立ちに敏感になるのは、結構面白そうだ。自分なりの解釈で、恋という言葉を、軽く自由に使ってみるのもいいかもしれない。
もうちょっと広く考えて、恋人になりたいという気持ちだけでなく、雑貨屋で見つけた醤油差しの形にきゅんとして「絶対に買う」と決めるのも、よく行くうどん屋の女性店員の優しい接客にドキドキして「これからこのうどん屋に来るのが楽しくなりそう」と思うのも、恋と言いたければ恋と言って良いのだ。日常の中に小さな恋をいっぱい見つけるのも一興だ。
山崎ナオコーラさん‘04年、『人のセックスを笑うな』が文藝賞を受賞し、作家デビュー。すべての人に温かい視線を注ぐエッセイも人気。著書に、『昼田とハッコウ』(講談社文庫)、『美しい距離』(文藝春秋)など。最新刊は、『母ではなくて、親になる』(河出書房新社)。