連載記事:リアル・モンスターワイフ、再び
「どうして?」完璧な妻をがんばるほど、夫の気持ちが離れる理由:柚那の場合【リアル・モンスターワイフ、再び 第3回】
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夫の愛が冷めてゆく…それは、妻に
モンスターワイフの影が見えるから。ということで、モンスターワイフにはさまざまな種類があります。
前回は、「ビジュアル系モンスター 産後ボーボー」というモンスターワイフを紹介しました。今回は、一見なんでもやってくれる妻だけど、どんどん夫は疲弊してしまうという
メンタル系モンスターをご紹介します。
■誰が見ても完璧な妻、しかし夫にとっては…
「メンタル系モンスター 仕切り鬼」代表:柚那(仮名)37歳の場合
駅前にあるドラッグストアでパートの仕事を終え、急いで体育館に向かう。柚那はPTA仲間で結成したママさんバレー部の副主将だ。火曜の夜と土曜の午後は汗が床にしたたるほど猛練習をしている。
バレーの練習がある日の夕食は早起きして作り、夫の和樹と息子の壮馬がレンジでチンするだけで食べることができるようしてある。
火曜の夜のことだった。バレーの練習を終えて帰宅すると、和樹が夕食で使った食器をシンクに置いたままスポーツニュースを見ていた。
「ちょっと。カズ、何これ? 火曜と土曜の夜の食器洗いはカズと壮馬って決めてるよね。壮馬はもう寝てるの?」
「…ああ。今日、壮馬は体育で水泳だったから眠いって言うし、俺も野球の結果が気になったからつい…」
柚那は首にかけていたタオルをはずしながら目を吊り上げて言った。
「
家族で決めたことは守る約束だよね。カズがそんなんじゃ、壮馬にサボりぐせがつくじゃない。
やると決めたらやり通してよ」
「…う、うん。悪かったよ」
「今から洗って。洗ったら水気を切ってから拭いてね」
「今からか? 明日の朝やるよ」
柚那は低い声になる。
「壮馬に『決まりは守らなくちゃダメ』ってことを教えたいの。私も仕事始める時『家事はおろそかにしない、両立する』って約束したからがんばってるんだよ。お弁当だって、毎日5時起きして作ってる。ママさんバレーの日も夕食は作ってから行ってる。後片付けくらい…」
和樹は、柚那の言葉をさえぎるように立ち上がってシンクに向かう。
背をかがめ、面倒くさそうに食器を洗い始める。背中越しに柚那がボソっと言う。
「油汚れは、ここにあるボロ布で拭き取ってから洗って。
洗剤もったいないし」
和樹はチっと舌を鳴らした。