水がどっと甕から零れ落ちるように、もう二度と、関係を維持しようとは思えなくなる。
どんなに、泣いてすがっても、声の限り懇願しても。一度あふれてしまった水は、もう戻らない。それを舞は、一真との別れで、身を持って知った。
一真には、何度も何度も長い謝罪のメールを送った。「あんな風に責めてごめん。もう二度と言わないから」「忙しいのは分かってる。そんな一真を応援している」「別れるなんて考えられない。
一真しかいない」心から、そう思って、涙ながらに何度も送った。
でも、そのひとつにも返事はなく、既読の文字だけが無情に連なって行った。始めは、まさかこんな簡単に別れるはずがない、と思っていた舞だが、3ヶ月もたつ頃に、ようやく、自分たちの関係が終わってしまったのだという事実に行きついた。そして、それを知って、改めてひどく泣いた。
一真が、本当はどう思っていたのか。今となっては、もう確かめるすべはない。でも、一真の友人の言葉を信じるならば、一真は、舞との別れは、舞への愛情とは何の関係もない、と言っていたということだ。
好きでなくなったわけではない、ただ、自分のせいで、恋人が苦しんでいるのに、自分にはそれを打開するすべがない。