その事実に、打ちのめされたのだ、と。そしてそのすべてから、逃げ出したくなってしまったのだ、と。
そして、いま、舞は転職し、忙しい職場に配属になって、初めて、あの頃の一真の気持ちがほんの少しだけ分かったような気がしている。
忙しい時は、生命の危機なのだ。何よりも、毎日の生活を維持することだけが最優先。恋愛なんかにうつつを抜かしている場合じゃない。
舞は、今後の工程表を、PC上でチェックしながら、ため息をついた。今日までのアラートがついている項目を全部終えないと、帰れない。
今日も終電には乗れないだろう。
連日の深夜残業で、眠くて、思考が麻痺して来る。そんな時は、ふと一真のことを思いだす。
たぶん、あの時の一真は、本当に余裕がなくて、恋愛だの、舞のことを考える余裕がなかったんだろう。好きだの嫌いだの以前に。そもそも頭と心の中に、そのためのスペースがなかったのだ。
スマホが明るく光っている。さっきから何度目だろう。
どんどん増えていくメッセージ。
今付き合っている恋人の永井からのものだというのは、スマホをのぞかなくてもわかる。
「はあ、・・・・・・めんどくさい。いまはそれどこじゃないっつの」