すわなち、婚約者が浮気をしたとか、婚約者に暴力をふるわれたとか、婚約者が回復不能な精神病にかかったなどの事実があれば、婚約破棄の正当な理由として認められると考えます」
不妊は「正当な理由に」該当する?
理崎弁護士:「それでは、配偶者の不妊は、婚約破棄の「正当な理由」として認められるのでしょうか。この点、古い裁判例ですが、婚約成立後、男性が性的に不能であることが判明したため、女性のほうから婚約を解消したことに対して、男性が女性に婚約の不当破棄を理由に慰謝料の支払いを求めた事案において、裁判所は、婚約の解消には正当な理由があるとして、男性からの慰謝料請求を認めませんでした(千葉地裁佐倉支部昭和28年1月23日判決)。
上記裁判例の判断に従えば、本件でも女性の不妊が判明した以上、男性からの婚約解消には「正当な理由」が認められ、女性の男性に対する慰謝料請求は認められないように思われます。この点、今から自分の子孫を残す、ということは婚姻生活において重要な要素の一つだと考えられますので、婚約相手の不妊が判明した以上、婚約を破棄するだけの正当な理由にはなり得ると思います。
ただし、上記裁判例が出たのは今から65年も前のものであり、その後、夫婦の結婚観、子ども観は相当変化しておりますので、上記裁判例の判断が現在でもそのまま通用するとは言えないと思います。