Be inspired!がお届けする新着記事一覧 (5/30)
政治家が平然と嘘をつき、差別が蔓延する社会。世界中で経済格差が広がり、戦争が煽られている。ポストトゥルースが叫ばれて久しいが、現代を象徴する言葉を考えると「虚偽」「不安」「疎外」「分断」という絶望的な文字が思い浮かぶ。「だったら自分だけ楽しければいいじゃん」と社会に背を向け、SNSで必死に自分を取り繕いながら生きる人が増えているのも偶然ではないだろう。この時代に渦巻くのは、綺麗に語られた言葉ではない。AをとってもBをとっても、何かが違う。果てしない選択肢の海に溺れ息ができないのに、何かを表明しないと食べていけないし、生きていけない。そんな「社会のジレンマ」、そして「個人の葛藤」だ。ジレンマと葛藤を乗り越えるもの。それが、いつの時代もアートであり、音楽だった。今回Be insipired!は、『M/ALL』の主催者とアーティストに、イベントへの想いを5回にわたり連載形式でインタビューする。第一回目は主催者の一人、2015年に国会前という政治の最前線に踊りでた奥田 愛基(おくだ あき、25歳)さんだ。アメリカの公民権運動に参加したレズビアンの詩人、オードリー・ロードの言葉「Your silence will not protect you.(沈黙はあなたを守らない)」とプリントされたTシャツを着ている奥田さん奥田さんは、SEALDs時代から“社会とアートをつなげる空間”を幾度もつくってきた。2015年に主催したイベント『DON’T TRASH YOUR VOTE』にはボアダムス、DJ NOBU、DYGLらが参加。自身が企画した大規模街宣の舞台にもスチャダラパーが立った。その他にも、2016年にはフジロックや、坂本龍一が中心に呼びかけた『NO NUKES FES』にゲストとして登壇したり、ライブストリーミングチャンネル『DOMMUNE』で政治家とアーティストを迎えてトークセッションを開催したりと、活動の場を広げている。「音楽に政治を持ち込むな」という世間からの厳しい批判を浴びながらも、常に新しい挑戦をしてきた奥田さんは、『M/ALL』のコンセプトを練った張本人だ。これまでのさまざまな活動のなかで、彼を突き動かしてきた信念や葛藤、そして、絶望的な社会でも希望を持ち続けられる理由を聞いた。『M/ALL』運営メンバーたち国会前とクラブ。同じ社会の空間でしょ震災以降、音楽イベントやクラブで遊んでいるときに「楽しいだけでも楽しくない」という感覚が芽生えるようになりました。楽しくても、みんな次の日には仕事や学校がある。現実世界に結局帰っていくという虚しさが残るっていうか。自分も真面目に勉強して社会問題を考えて政治的な活動をして。そういう“真面目な自分”と“遊んでいる自分”が、どこかで乖離しちゃうんですよね。“社会的な現実”と“個人的な楽しさ”がどうつながるのかをずっと考えてましたそんな彼を変えたのは、2015年の国会前。アーティストやデザイナーが集い、原発問題や現政権のあり方に対して熱く語り合う様子や、デモが終わった後に「じゃ、この後クラブでイベントあるから」と颯爽と去っていくDJの背中を眺めているうちに「カルチャーと社会のつながり」を実感するようになる。社会とつながっていないカルチャーはそもそもカルチャーじゃないと思うようになりました。今回のイベントM/ALLは、「カルチャーも社会問題もどっちも体感できる空間をつくっちゃえばよくない? 」と友人や知り合いに声をかけて企画したものです。「楽しかった、よかった」「はい、消費して終わり」じゃなくて、「その先に何があるのか?」ということが、このイベントでみんなに問いかけたいことですとはいえ奥田さんは、個人と社会の断絶を誰よりも痛感している。「個人と社会の関係って、矛盾だらけですよね」と、考え込んだ。社会のこと、四六時中考えてられないじゃないですか。でもだからといって、社会からも逃げられない。みんな日々葛藤してる。だから「楽しいけど楽しいだけじゃない」「社会について考えたくないけど考えたい」という矛盾をそのまま体現するイベントにしたいんです。だって、みんな結局社会で生きてるんでしょ?それでも希望が持てるのは、音楽があるから生きてていいのかどうか、不安になることがたくさんあると思います。「何の役に立つのか?」みたいな生産性や効率性だけで判断してしまうと、すぐ「じゃあいらない」ってなる。でも、世界ってそんな場所なのかな役に立つかわからないけど、そのもの自体に価値があるように思えたり、意味が宿ったり。アートってそういう世界ですよね。絶望のなかで、音楽や絵や詩に触れて心から感動したとき、ようやく人間性が回復して自分の言葉や表現が生まれることもある。アートが社会からなくなると、人間はロボットみたいになると思いますアートはその時代に生きる人々の複雑な内面性を映し出す鏡でもある。そんなアートのなかでも、奥田さんを救ってきたのは、特に音楽だったという。それは、現代の音楽シーンにおける音楽に「寛容さ」という特徴があるからだ。「音楽は人間を自由にすると思います。自分が先頭に立ってデモやって、精神的にめっちゃしんどくなった時期がありました。でも、音楽に何度も救われました」。ハウスミュージックとゲイカルチャーが切り離せない関係であるように、昔から音楽シーンをつくってきたのは、社会の端に追いやられた人々、つまり人種的、民族的、性的マイノリティーの人々だった。音楽には「あらゆる人を対等に扱う」という信念が貫いているからだ。音楽は、どんな人でも楽しむことができるからいい。誰でも来れる場所って、あんまりなくないですか? 歌詞がなくても、意味がわからなくても「楽しい」って共有して、みんなで共感し合える。例えば、偶然ライブを隣で見ている人とか、クラブで一緒に踊ってる人とかと、名刺交換って普通しないですよね。利害関係抜きに一緒に楽しんで、感覚的にわかりあえる。言葉では対立するかもしれないような、多様な人々が、音楽を介して簡単につながることができる。この寛容さが、音楽のよさだと思います「一緒に生きているという感覚」。これが広い意味での“政治的な感覚”だと、奥田さんは最後に言葉を強めた。THE M/ALLクラウドファウンディング「音楽」「アート」「社会」をひとつに繋ぐ”カルチャーのショッピングモール”、「THE M/ALL」が渋谷で初開催! 「MAKE ALL(すべてを作る)」のマインドで、この社会をいまより少しでもマシなものにするために。クラウドファンディングを通し本イベントの無料開催を目指します。「音楽xアートx社会を再接続する」をテーマに、ミュージシャン&DJによるライブ、アートと社会問題について各分野の若手クリエイターや専門家が語り合うトークセッション、会期前日から会場に滞在するアーティストがその場で作品を作り上げていくアーティスト・イン・レジデンスなど、さまざまな企画が4つの会場(WWW、WWWX、 WWWβ、GALLERY X BY PARCO)をまたいで同時進行します。<WWW / WWW X / WWWβ>2018年5月26日(土)OPEN 15:00 / START 16:00<GALLERY X BY PARCO>2018年5月26日(土)~5月27日(日)OPEN 15:00 / START 16:00【出演者】<WWW / WWW X / WWWβ>出演アーティスト・コムアイ・BudaMunk・MOMENT JOON・odd eyes・行松陽介・1017 Muney・Gotch・Awich・田我流・Yellow Fang・テンテンコ・Maika Loubté・Bullsxxt<GALLERY X BY PARCO>出演アーティスト・中川えりな(Making-Love Club)・野村由芽(She is)・桑原亮子(NeoL)・haru.(HIGH(er) magazine )・村田実莉(アーティスト)・ヌケメ(ファッションデザイナー/アーティスト)・歌代ニーナ(マルチクリエイター)・JUN(Be inspired!)・UMMMI.(映像作家)・五野井郁夫(国際政治学者)・奥田愛基()
2018年04月16日オーストリアで一流大学を卒業したある2人の若者が選んだ道は、農業。それも、「都会ならではの農業」だった。@Elena Seitaridis収穫したものは数時間のうちに契約しているレストランや個人に貨物自転車でお届け。使ったあとのコーヒーのかすは堆肥として再利用する。これは彼らがいうところの「きのこサイクル」である。© Karin Hackl Photography彼らのビジネスの根底にあるのは、彼らのプロダクトを通して消費者をインスパイアし、その消費者が行動を起こせるようなきっかけを作りたいという思い。そのため、自分たちのビジネスモデルや技術は透明化しており、ワークショップなどを通して知識を広める活動もしている。2017年1月には気候・エネルギー基金と農業省、農林省、水管理委員会から、オーストリアでもっともサステイナブルなビジネスを行うスタートアップとして『グリーンスター賞』を獲得した。© Norbert Habring▶︎オススメ記事・「高級オーガニック野菜をお手頃に!」魚のフンを利用して野菜を育てる“インドア農業”の革命児、NYに現る。・消費者の「食べたい」に合わせて農家が食品を生産する、という“間違った”構造に終止符を打つレストランAll photos via Hut & StielText by Noemi Minami ーBe inspired!
2018年04月13日「お金を払っても行けない音楽フェス」が今年も日本にやってくるPhoto by ⓒRockCorps supported by JT夏が近づくにつれ、数多く開催される「音楽フェス」。夏中に一回は行っておきたいと、今から今年のフェス情報をチェックしている人もいるかもしれない。「お金を払っても行けない音楽フェス」について聞いたことはあるだろうか。普段数万円は出さなければ行けない音楽フェスに、0円でいけるフェス。言い換えれば、「いくらお金を払っても行けないフェス」、それが「RockCorps supported by JT(ロックコープス)」。この特殊な音楽フェスに行くためにお金の代わりとなるのは、「4時間ボランティアをすること」だという。2003年にアメリカでソーシャル・プロダクション・カンパニーとして誕生した「ロックコープス」。音楽の力を使って“企業”と“地域社会”と“人々”を結び付け 、「4時間のボランティア活動をすると、アーティストライブのチケットがもらえる」というシンプルな仕組みを作り、人々の社会貢献活動への参加を推進してきた。ロックコープスの創設者・現CEO スティーブン・グリーン氏2017年、Be inspired!は創始者でCEOでもあるスティーブン・グリーン氏に取材を行った。そのときに彼が話したのは、日本でロックコープスをやる6つの意義。①日本の若者に「新しい世界」に飛び込むチャンスを与えることができる②政府でもビジネスでもない、国民が社会を変えることができる ③音楽は社会問題を問いかける存在になる ④ボランティアに“真面目な人”以外も参加できるようになる ⑤日本の大人も忘れかけている、「若者のパワー」に気づくことができる ⑥将来的にボランティアが若者にとって身近な存在になるなるほど、4時間のボランティアさえすれば無料で音楽フェスに行けるのも嬉しいが、フェス以外にも私たちに、そして日本全体にいい影響を与えるビジョンを持っているらしい。毎回海外から大物アーティストを招いて開催されることで知られているこのロックコープスだが、今年はUKからエレクトリニック・ポップの歌姫 エリー・ゴールディングの出演が決定している。エリー・ゴールディング創設当初から3年連続で公式アンバサダーに就任することになったのは高橋みなみ氏。これまで参加者と共に東日本大震災の被災地域の支援に参加してきた。▶︎オススメ記事・#02「 “遊びながらやる感覚” で環境活動にも参加したい」。映像で環境NGOをポップにするクリエーター。 |「世界は気候変動で繋がっている」。若き環境アクティビストのリアルな声。by 350.org・世界中のスケーターが国境を超えて集まり、ボランティアで発展途上国にスケートパークを建設し続ける理由。All photos via RockCorps supported by JTText by Noemi Minami ーBe inspired!
2018年04月13日「だっておかしくない?」取材のなかでYuriがそう何度も繰り返していたのが印象的だった。今回、東京で美容師として働くYuriが、低用量ピルを飲みはじめるまでに感じた日本の「おかしいところ」をBe inspired!に話してくれた。日本に対する不満を訴えたいわけではない。生理と共に生きるすべての人が知っておくべきことを知れていないという現状に対して彼女は不安を感じている。Yuri知っていればもっとはやく改善できたニューヨークの美容学校で勉強をしていたYuri。6年前に日本に帰国し、新しい美容室で働き始めた。一心不乱に働いていたため、睡眠があまり取れず、食事も手抜き。ストレスが溜まり体調は悪くなっていった。あるとき、ニキビが顔中にできはじめとても悩んだという。てっきり肌の問題だと思った彼女は、肌に対する対策をするものの、あまり効果はなかった。そして今年にはいってまたニキビができはじめて不安な気持ちを抱えていた。同時にそれまで1ヶ月ごとにきていた生理が2ヶ月、3ヶ月ごととなり、激しい痛みを感じるようになった。ひどいときは立ち上がれないほどだったそうだ。海外の友達に相談したところ、「ホルモンの問題だろうから、産婦人科に行ったほういいよ」とアドバイスをもらい、そこで普段はあまり行かない産婦人科を訪れた。結局のところ、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)を抱えていたのが肌のトラブルや生理不順、度を超えた生理痛の原因だった。PCOSとは、卵巣の中にたくさんの卵胞があり卵子をうまく排出できない状態のこと。これは珍しいことではなく、治療を行えば改善される。「まずだいたいさ日本人って婦人科行かないじゃん。そもそもそういう会話もあまりない」。生理が不規則なことと肌や体の不調の関係性について知っていればもっとはやく改善できていた、と話す彼女。「血栓とかできて死んじゃうかもしれないから安易に飲まない方がいいよ」低用量ピルについての情報が限られているのは、日本がセックスについてオープンに話す風潮がないことが関係しているのかもしれない。日本では「ピル=セックスします」でしょ。だからピルについて話すのを避けるのは、セックスしないっていうのを日本は前提にしたいからだと思う「今こうしてこのことについて話しているのも、まわりの人から聞いて不愉快なのかな、小声で喋らないといけないのかな」と、カフェで取材を受けていると考えてしまうと話す彼女。それでも「セックスすることが当たり前」だと、人々は気づくべきだと言う。日本の「セックスをしないことを前提とした風潮」には代償が伴うからだ。お母さんにピル飲もうかな、なんて言ったら「なんのために飲むの!」ってなるだろうから、なんかめんどくさくて言ってない。相談できなくて苦しんでる子ってたくさんいると思うんだよね低用量ピルという選択肢を知っていれば、もしくは気軽に相談できていれば体調を改善することができるかもしれない人が、社会の風潮を原因に情報を知るきっかけがなかったり、相談できていなかったりするのが現状なのかもしれない。さらに、たとえ情報を得て低用量ピルを飲むことを希望しても、その機会は日本では平等ではない事実も彼女は指摘する。ピルって安いもんじゃない。でも日本の貧困層は増えてる。家はあっても給食費は払えない子とか、そういう子たちはどっからピルをもらえばいいの?おかしくない?もう学校の先生があげろよって思うスウェーデンやイギリスをはじめとした国々では低用量ピルを無料で国民に提供している事実を考慮すると、日本にも改善できることがあるのではないかと考えられる。生理だから我慢することが普通風邪をひいたら病院に行くのは一般的であるのに対し、生理痛となると「黙って我慢する」のが普通なことにもYuriは疑問を持つ。ほんとは自分の体をコントロールするってことがどんだけ大事なのかとか、そのことでどれだけの利益が自分にあるのかとかわかってない人が多いと思うんだよね。“生理痛はしょうがないものだから”ってなっているせいで▶︎オススメ記事・日本も働き方だけでなく、性教育の改革を。ノルウェーの国営放送が“素人のいつものセックス”を放映・痴漢にあっても、黙っているのが「ふつう?」日本の理不尽な常識を崩す“レディース集団”とはAll photos and text by Noemi Minami ーBe inspired!
2018年04月12日「トリケラトプス拳」なるものにはまっています。『クラップラー刃牙』(クラップラーバキ 以下、刃牙)というカルト的な人気のある格闘漫画に出てくる技なのですが、これ頑張ったら習得出来るんじゃないかと思って、家で自主トレをしています。そんなトリケラトプスな日々ですが、実は最近、私の生活スタイルが変わりました。世間の喧噪からちょっと距離を置き、自宅を整理し、野菜を育てたり書を読んだりヨガピラティスをしたりトリケラトプス拳をして過ごしています。今までよりもちょっと晴耕雨読寄りになったのですが、晴耕雨読とはいっても、最新の情報はネットから入るし、時々は都市へ出るし、中国や台湾の同族の元に居候しに行くので、いうなれば、“ネオ晴耕雨読・インターナショナル隠居生活”です。どういうことか説明しましょう。実は今、トリケラトプス拳が登場する刃牙のイラストを表紙にした哲学の本があります。その名も『史上最強の哲学入門』です。つまり、このエグザイルの青年は、トリケラトプス拳を鍛錬している私の目の前で、偶然にも刃牙作者イラストの哲学入門を読んでいたのであります。ということで私は、大興奮したのであります。それまで、瞑想後で副交感神経がたっぷりのリラックスモードの私でしたが、エグザイル青年が史上最強の哲学入門読んでいると分かった瞬間から交感神経バリバリでアドレナリンが出まくってしまいました。大興奮です。思い切って、「すみません、私、実はトリケラトプス拳やってるんですけど」と話しかけようと思いました。が、そうこうしているうちに地下鉄は駅に着き、その青年はその駅で降りて行きました。無念!先日、女子大生からインタビューを受ける機会がありまして、その子から、「大学生に伝えたいことはなんですか」と質問されました。そして私は、「どれも本当の多面性のある自分を持つこと」と伝えました。私の答えを聞き、20歳のその子は非常に驚いていました。彼女を取り巻く世界では、むしろ自分を一つに絞っていくことが推奨されているというのです。でもね、ひとつって、世界はそんなにシンプルじゃないし、人間はもっと複雑であっていいと思うのです。就職に悩む自分もいて、ロックを楽しむ自分もいて、起業に憧れる自分もいて、全て存在して大丈夫なのです。八方美人になるわけではなく、奇をてらって意外性を狙う訳ではなく、本当の自分を複数持つことは可能です。本当に好きだと思うことが複数あるのであれば、わざわざ絞ることをせずに、それらを愛する自分の感情を肯定してあげるといいと思います。そんなことを考えつつ、私は今日もトリケラトプス拳に励むのでありました。CAMILLE AYAKA (カミーユ 綾香)Facebook|Instagram北九州市出身。在日韓国人と元残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動する一方、ネオ晴耕雨読の生活を実践している。「マイノリティの爆弾」を「マジョリティ社会」に投げつけるために2017年5月から本メディアBe inspired!で連載中。
2018年04月11日「過労死」で数が減少し続けている蜂のための“エナジードリンク”がポーランドで開発された。蜂たちが労働を続けてくれなければ死んでいくのは人間なのだから、これは他人事ではない。Photo by Massimiliano Latella約20兆円相当の自然界の巨大ビジネスと、過労死する蜂たち食料を作るのには虫や動物がいなくなちゃならない。スーパーの棚に並ぶ食料を買っていると忘れがちだが、他の生物なしに私たち人間は生きてはいけない。特に蜂は地球上の90%の自然植物の存続に関わっているといわれている。受粉を「ビジネス」として考えれば、送粉者として約20兆円の利益を生み出しているのが蜂である。しかしその数は年々減少。もちろん、現実問題「蜂が行なっているビジネス」がなくなれば経済的な大損害だけでなく、それは食料確保の問題で、人類の存続に関わってくるだろう。(参照元:Bee Saving Paper)この問題に目をつけたポーランドの広告やメディアの代理店 Saatchi & Saatchiは、都心の蜂を救う活動をしているCity Beeとタッグを組み、昆虫学のエキスパートと職人の力を借りて「Bee Saving Paper(ビーセイビングペーパー):蜂を救う紙」を開発した。この生分解性紙にはベタつかないように加工された蜂にエネルギーを与えるブドウ糖が含まれている。このブドウ糖は蜂の大好物の植物ハゼリソウから取り出されたものだ。また、この紙には水からできたUV塗料に覆われた蜂だけが見える円上の模様が施されており、それが蜂の休憩所の目印となる。▶︎オススメ記事・もう食品ラップはいらない。ハチの力を借りて作られる「1年間、何度も使えるラップ」。・19店目:日本初上陸。増粘剤や安定剤など“余計なもの”を一切入れない、超オーガニックアイスクリーム Three Twins Ice Cream| フーディーなBi編集部オススメ『TOKYO GOOD FOOD』All photos via Bee Saving Paper unless otherwise stated. Text by Noemi MinamiーBe inspired!
2018年04月10日近年、環境や人体への影響を見直し、食の生産背景が注目されている。街のレストランは、顧客満足のために「美味しさ」だけでなく「安全」を求め、スーパーでもオーガニック商品のコーナーが作られたりと、少しづつ変化がみられている。そのなかでも注目されているのが「農園から食卓へ」を意味する「ファームトゥーテーブル」というスタイルのレストラン。農園から採れたての新鮮な野菜を調達し、それを調理してお客様に提供する、一見理想的に思えるこのスタイル。しかし、元アメリカ大統領オバマ氏も訪れるアメリカ最先端のレストランのシェフは、この「ファームトゥーテーブル」がもはや正義ではないことを指摘している。そして、食の未来の姿を提案する。そこで最近注目を浴びているのが冒頭で述べたファームトゥーテーブルというスタイルのレストランだ。ファームトゥーテーブルとは、直訳すると「農園から食卓へ」という意味。このスタイルのレストランでは農園で採れた野菜が直接レストランに運ばれ、調理されたものが提供される。そうすることで、食べる人は、作り手のわかる安全な野菜を新鮮な状態で楽しむことができるのだ。このファームトゥーテーブルからは、とても正しい仕組みのような印象を受ける。実際、ファームトゥーテーブルを実践するシェフは自分たちの取り組みに胸を張る。しかし、アメリカ・ニューヨークにあるレストランBlue Hill(ブルーヒル)のシェフで、10年以上世界中の農業コミュニティについて研究をしているダン・バーバーは、ファームトゥーテーブルでは食の根源的な問題を解決できていないと指摘する。彼がシェフを務めるBlue Hill(ブルーヒル)は「ファームトゥーテーブル」スタイルのレストランとして有名だが、なぜこう指摘するのだろうか。「食べ手の都合」から逃れられないファームトゥーテーブルダン・バーバー氏そもそもファームトゥーテーブルは、食べる人がより新鮮で栄養価の高い食べ物を食べられるようにと考えた末に生み出された、農業流通システムである。実際、多くの場合は周辺の農家から直接仕入れを行うため、食べる人が嫌がる不健康な農業が行われていたらすぐに明らかになる。よって農家は注意を払い、さらに比較的フードマイレージも低くすることができるために、あらゆる食の問題を解決する取り組みとして知られている。Blue Hillの場合はレストランのそばに自分で農園を運営し、そこから仕入れを行っているため、一見すればファームトゥーテーブルの仕組みをとっている。だが、バーバー氏が主張しているのは、「食の作り手と食べ手の力関係」である。近年の農業は、消費者の需要と嗜好に合わせて、多少自然の摂理に抗ってでも生産を増やしてきた。たとえば、ドキュメンタリー映画『FOOD.INC』で指摘されている鶏の飼育シーンでは、大量のひよこが小さな空間に敷き詰められることで、歩けなくなるようにして身体を肥やさせる。そうする理由は、食べる人が丸々と肥えた鶏肉を欲しているからだ。レストランBlue Hillを拠点とし、長年食と向き合ってきたバーバー氏が注目したのは、フレンチやイタリアン、スパニッシュ、中華、といった長い時間をかけて発展してきた世界の食文化である。地域でよく栽培される野菜は、最も旬な時期を知ったその地域の人によって調理され、楽しまれてきた。2013年に世界遺産に認定された和食も、その特徴として「海、山、里と表情豊かな自然が揃っているため、各地で地域に根ざした多様な食材が用いられていること」と「素材の味を引き出す調理技術と道具が発達していること」が一番にあげられていた。例えば、日本の田園地帯では、春にはウドやたらの芽などの山菜を採り、夏は川で若鮎を塩焼きにし、秋は山できのこ狩りをして、冬は日本酒と酒肴で身体を温める。そんな四季の風景がある。このように、その地域の気候や環境、農業システム全体が直接反映されているような料理が、未来に残されるべき食の姿だとバーバー氏は指摘する。食材単体をどこから仕入れるか、という視点だけではなく、農業システム全体に思考を凝らした食を彼は、「第三の皿」と呼んでいるのだ。残念ながら、バーバー氏の住むアメリカには、長く地域に根ざすような食文化は育っていない。しかしだからこそ、アメリカでこのような食のシステム全体を考えた地域に根ざした食を作ることが、自らの使命だと彼は語る。
2018年04月09日スマホをどのくらいの頻度で買い替えているだろうか?スマホを販売する企業も、一定の期間で買い替える人や、修理に出さず買い替えた人が得をするような仕組みを作っており、「スマホが壊れたら買い換える」というのが当たり前となってしまっている。その次から次に「買い換える」という個人の選択が関連して、地球環境を悪化させてきているという。「スマホの製造」により増えていく二酸化炭素の排出スマホを気軽に新調している人も少なくないだろう。だが、その軽い気持ちでとってしまう行動の裏には、急速な環境破壊の存在がある。スマートフォンやノートパソコン、タブレット端末などを含む情報コミュニケーションの分野からの二酸化炭素排出量は、iPhoneが発売された2007年では1%だったのが、現在までに3倍、2040年には14倍になると予測されている。その二酸化炭素排出の85〜95%以上が新しいスマホの製造によるもの。そして機種が新しくなるほど内蔵される機能が増えているからか、その排出量が増える場合が多い。(参照元:Journal of Cleaner Production, Fast company)また、それ以外にもスマホに使用されている鉱物をめぐる問題も忘れてはいけない。それらを資金源とする武装勢力がいることから地域内外で紛争が起きており、コンゴでの紛争では540万人以上の死者が出ている。(参照元:Fairphone, Huffpost)しかしながら、このような問題がありながら、一般的になってきた具体的な対策といえば「使えなくなった・使わなくなった機器のリサイクル」くらいだろうか。人や環境に優しい、“DIYスマホ”という選択肢一般的に使われているスマホに対する代替品を紹介するとしたら、オランダ生まれの「Fairphone(フェアフォン)」かもしれない。持ち主が自分で修理したり、パーツを購入して新たな機能を追加したりできる“DIYスマホ”で、現状では世界で一番環境に優しいスマホと呼べる製品だ。特徴としてはまず、「スマホ産業を変えること」そして「人と製品との関係性を築くこと」を目指している。それから使用者の95%が「修理が簡単」だと回答しているほど、異常が起きてもドライバーを使って簡単に直せる。これで新しいものに買い換えるのと比べ、二酸化炭素の排出量を3割減らせ、従来の製品をリサイクルするよりも環境に負担をかけない。(参照元:Fairphone)また、製品の「透明性」も重視しており、鉱物資源についても人権侵害や環境破壊などにかかわっている「紛争鉱物」は使用しない方針をとるのだ。※動画が見られない方はこちら販売を願う人たちの声も少なくないが、現在のところ残念ながら日本で購入することができないのが、このFairphone。オランダをはじめとするヨーロッパなど地域ではシェアを伸ばしてきている。現代の生活必需品であるスマホをどう選んでいくべきか今までどんな理由でスマホを買い替えてきたのか、振り返ってみてほしい。「動作しなくなったから」「現在使用しているものが使いにくくて」という買い替える必要性の高い理由から、「今使っていたものが物足りなく感じるから」「ただ新しいものがほしいから」という客観的には必要性の低い理由までさまざまだろう。手軽に自分の気分次第で買い換えられる人がいるというのは、消費者が消費サイクルの最も上にいるからで、その力を使えば手にしているスマホの背景にある問題に変化をもたらす可能性を持っていることと同義なのだ。Fairphoneのような比較的持続性の高い製品に買い換えるとしても、少なからず環境に対するコストはかかってしまうが、まずはスマホを「買い換えるのが普通」という考え方から一度離れて製品を比較することが重要ではないだろうか。FairphoneWebsite|Facebook|Twitter|Instagram|Youtube|Flickr
2018年04月08日ーまず最初に、自己紹介をお願いします。ハロー、Be inspired! Emma Kohlmann(エマ・コールマン)です。ニューヨーク生まれで今はニューヨークとプロビデンスとボストンにほど近いマサーチューセッツ州のある変わった街に住んでる。画家で、Zineパブリッシャー。Zineは7年前に遠く離れて住む人たちとつながるために作り始めた。当時はインターネットで友達を作って、その子たちにZineを送ってた。いつもあなたのことを考えているよって伝えるために。主に水彩と墨を使って作品を作っています。キャンバスとアクリルを使うこともある。東京のKIT Gallery、コペンハーゲンのV1 Gallery、あとアメリカのいくつかのギャラリーで展示したことがある。ーエマの作品には裸がたくさん出てくるよね。過去のインタビューで「自分が興味深いと思う体の一部を描いていて、その部分が生きているのか、死んでいるのかわからない」って言ってたのがとても印象的でした。「生死がわからない体の一部」を通して何を表現しているの?私の作品は大抵、 既存の一般的な「体のイメージ」を抽象化しようとしているの。世の中は「見た目主義」だから、それを緩和させられたらいいなって思ってる。世の中に存在する「体のイメージ」とは違うものを提示したい。体の中に私たちが「美しい」って思えない部分ってあるでしょ。そんなところに興味があって、考えるきっかけを作りたい。最終的には、多様な体が受け入れられるようなインクルーシブさを作ることが目標。ー「女性の体が性的な物として見られることを変えたい」とも言っていたよね。エマの絵の中に出てくる女性に見える裸はどんな視線で見られたい?作品の中で、パワーがシフトするってことを表現するのが私にとってとても重要なの。私が描く体のほとんどは女性、でも同時に男性でもあるし、両方でもある。性別を、もっとソフトで優しいものと捉えたい。力強い作品でありながら、「男性的な視点」だったり「性別に構築された価値観」をひっくり返すようなイメージを生み出したい。ー性別についてエマはどんな考えを持ってるの?社会はどんな考えを持つべきだと思う?欧米での性別に対する考えに関していえば、独断的。生まれた瞬間から「あなたは男/女です」って決めつける。色を与えられてそれに見合ったルールを押し付けられる。あなたは可愛くない、太り過ぎ、男らしくない…。でもそれぞれのルール(男らしさや女らしさ)に沿った期待を満たすことなんて誰もできない。常に何かが足りない。そんな考え方に抗おうとしても、プレッシャーから逃れることはできない。これって、生まれてきた体と心の性別が違う人だけに言えることじゃなくて、自分は男だ、女だって生まれてきた体と心が一致している人も同じで、誰も「男/女」の理想的姿を満たせる人なんていない。 アーティストとしてそういった既存の考え方に疑問を投げかけたい。ーエマの作品の素敵なところは力強いのに、同時にどこか悲しそうなところだと思います。アートを通して何を表現しようとしているの?悲しみと力強さは作品に映し出したいこと。その方がリアルじゃない?私たちが生きている体を取り巻く「苦痛」があるでしょ。それぞれの人がストーリーを持っていて、光があれば、闇もある。そう言った感情を呼び起こしたいの。その分野で常に新しいことを学ぼうとしているし、私の作品を見た人にも考えて欲しい。自分の空想の世界を現実のものにしたい。それってコミュニケーションとアートでしかできないことなの。▶︎これまでのGOOD ART GALLERY・ #10 「食のために毎秒4万の命が殺される」。その事実を全身で訴え続ける、“動物”に最も近いアーティスト・#9 男の子か女の子か、どちらかじゃないとダメって誰が決めたの?21歳の「性別のない」アーティスト・#8 「デブでブスだと認めることが自分を愛する第一歩」。一風変わった“ポジティブ”な考えを持つ22歳の画家▶︎オススメ記事・「苦しいなら逃げてもいい」。20代の臨床心理士が、我慢を美しいと考える日本人に伝えたいこと・日本とルーマニアという“鎖国”をしていた国をルーツに持つ彼女が、「日本の多様性」について考えたことAll photos via Emma KohlmannText by Noemi Minami ーBe inspired!
2018年04月06日こんにちは。赤澤 えるです。思い出の服を持ち寄る連載『記憶の一着』、第7回です。たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って何だろう。それはどうして残るのだろう。それを手放す時ってどんな時…?服の価値、服の未来、ゲストのお話をヒントに考えていく連載です。本日のゲストはアーティスト・佐藤ノアさん。ガールズバンド「suga/es」のヴォーカルを務める彼女。Instagram・Twitter共にそれぞれ20万人以上のフォロワーを抱える、20歳になったばかりのインフルエンサーです。多大な影響力を持つ彼女が選ぶ、「記憶の一着」とは?赤澤えると佐藤ノアさん▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちら外に出なくなった私を救った『記憶の一着』とは赤澤 える(以下、える):『記憶の一着』について聞かせてください。佐藤ノア(以下、ノア):高校生の時に祖母がプレゼントしてくれたコートです。もらったのはクリスマスの頃だったかな。まだ地元の北海道にいました。3、4年経ちますけど冬になったら毎年着ています。モデルの仕事をしていると冬はコートをたくさん持っていないといけない感じになるんです。SNSに載せるものが全部同じような写真になってしまうから。でも私はこのコートだけは繰り返し着て、意識的に毎年載せています。他の服も割と長く着る方ですが…。ノア:はい。でも、LEBECCA boutiqueの服は捨てない。本人を目の前にして言うと変な感じですが…捨てたいと感じない理由は、作り手の思いや熱量を知っているからだと思います。えるさんみたいに“#レベッカブティックのこと”を書いていたり長文で自分の思いを発信したり、そういう作り手の熱量が強ければ強いほどきっと私たちの熱量も高くなると思うんですよね。える:私たちは熱いを通り越して熱苦しいけどね!ノアちゃんはいつも長文を嫌わずしっかり読んでくれてるよね。いつもありがとうね。ノア:思いが伝わる文章だから好きなんです。インスタにあんな長文書く人がいるんだってびっくりしましたけど、私は好きです。こんな風に100%でいてくれる服屋さんがもっと周りに増えてくれたら良いな、とも思います。える:それはなかなか難しいかもね。本来はそうあるべきだけど、あまりにも簡単に服が作られて売られて買われている時代だから。熱なんかなくてもあるふりをしてブランドが息をできるの。熱量があるふりをするためにプロを雇って、思いや考えを構築してもらったり発信してもらったりしているのなんて、珍しくないって聞くもんね。ノア:うん。私はLEBECCA boutique以外、私が普段着ている服の背景を知らないです。それを発信してくれる人もまわりにはいない。LEBECCA boutiqueしかないし、えるさんしかいないんですよ。簡単に安く手に入る時代だからこそ、作り手側がもっと服の背景を発信してくれたら良いなって思います。そうやってSNSを使ってくれる人がえるさん以外にも増えたら、“ゴミになる服”って減ると思うんです。ファッションブランドのプレスの方と仲良くなってもこのあたりは知れないことの方が多い気がする…。える:そこまで言ってくれるのは嬉しいな。私も今まであまりそういう人物に出会ったことがなかったから、ブランドなんて新しく作っても意味がないと思ってた。それでもやる機会に恵まれたから、私は私が納得できるようにやっているんだけど。ノア:絶対に続けてください。誰かが大事にしているものなら自分もって思える人は多いと思うんです。“思い出の服の祭典”出演にあたって思うことえる:最後にもう1つ聞かせて。この連載は、ノアちゃん率いる『suga/es』が出演してくれる『instant GALA 〜思い出の服の祭典〜』に連動しているんだけど、ノアちゃんは4/22当日どんな服を着て来るの?ノア:多分ですけど、ワンピースですね。メンバーもみんな大好きなアイテムだし、初めてのMVで着たのもワンピースだったから、なんとなくそうなる気がする。※動画が見られない方はこちらえる:来場してくださる方々には何を着てきてほしいとかある?ノア:きっとすぐに浮かばない人もきっと多いと思うんです。でもそれは、何を着てきても私たちが“思い出の服”にしてあげます!える:100点の回答!嬉しい。ノア:やった(笑)でもね、本当にそう思うんです。える:うんうん。そうなんだよね、今は「これが思い出の服」って言い切れるものがなくてもいいの。このイベントをきっかけにそういう愛せる服を1つでも2つでもクローゼットにおいてくれるようになったら素敵だし、そういう服を持っている自分っていう存在を何より愛おしく思ってほしいなって思うんだ。服のことを考えているようで、服を大切にしているようで、自分のことを考えて大切にすることに直結する。思い出を大切にするってそういうことだから。ノア:そんなイベントの第一回目に出させてもらえるの、嬉しい。たくさんの人に来てほしいですね。Eru Akazawa(赤澤 える)Twitter|InstagramLEBECCA boutiqueブランド総合ディレクターをはじめ、様々な分野でマルチに活動。特にエシカルファッションに強い興味・関心を寄せ、自分なりの解釈を織り交ぜたアプローチを続けている。また、参加者全員が「思い出の服」をドレスコードとして身につけ、新しいファッションカルチャーを発信する、世界初の服フェス『instant GALA(インスタント・ガラ)』のクリエイティブディレクターに就任。▶︎これまでの赤澤えると『記憶の一着』・#006 マカロニえんぴつ はっとりの『記憶の一着』・#005 読者モデル 荒井愛花の『記憶の一着』・#004 音楽家 永原真夏の『記憶の一着』・#003 モデル 前田エマ の『記憶の一着』・#002 れもんらいふ 千原徹也の『記憶の一着』▶︎オススメ記事・「自分の好きな自分でいると、自信が持てる」。イケメンな彼女に聞いた、“モテるファッション”への違和感・「好き」を仕事にするから成功する。ポートランドが教えてくれた「人間らしい働き方」とは。All photos by Ulysses AokiText by Eru AkazawaーBe inspired!
2018年04月06日こんにちは!EVERY DENIMの山脇です。EVERY DENIMは僕と実の弟2人で立ち上げたデニムブランドで、2年半店舗を持たず全国各地でイベント販売を重ねてきました。2018年4月からはキャンピングカーで47都道府県を旅しながらデニムを届け、衣食住にまつわるたくさんの生産者さんに出会いたいと考えています。初回の旅は4月5日〜10日。同じく「Be inspired!」で連載を持つ赤澤 えるさんともに、茨城、栃木、群馬県を巡りながら、8日(日)夜には茨城県つくば市のコワーキングスペース「Tsukuba Place Lab」で洋服の販売&トークイベントを開催する予定です。また4月14日(土)には東京で旅の報告会を行います。報告会では旅の途中に仕入れた素材を使用した食事会も併せて行います。本連載ではそんな旅の中で出会う「心を満たす生産や消費のあり方」を地域で実践している人々を紹介していきます。山脇本人とキャンピングカー▶︎山脇 耀平インタビュー記事:『日本中に心を満たす生産と消費を。国内生産率3%のデニムに、誰もが愛着が持てる社会を作る25歳の起業家』今回は旅の始まりを4月に控え、地方にいる様々な人の話を記事にし発信する上で、先人から心構えを聞いておきたい、ということで今回は、ウェブマガジン「ジモコロ」で編集長を務める徳谷 柿次郎(とくたに かきじろう)さんにお話を伺いました。「ジモコロ」とは、地元にまつわる様々な話題を取り上げ、明るく楽しく伝えることで読者の地元愛を掘り起こすウェブマガジン。編集長として全国各地に自ら足を運び、取材を通じて地域の魅力を発信し続けてきた彼は、なぜ自分の地元でもない「誰かの地元」を愛情を持って届けられるのか。そして、それをなぜ東京の人たちにも届けようとするのか。その理由を聞いてみました。山脇本人とあしたのジョーと柿次郎さん地方のモノサシをもっちゃった大阪が地元の柿次郎さん。今から9年前の26歳の時に上京し、編集プロダクション勤務を経て2011年にwebコンテンツ制作を得意とする「株式会社バーグハンバーグバーグ(以下、バーグ)」に転職。上京して数年はまったく地方に興味がなかった彼は、バーグに勤めてちょうど3年目を迎える頃、長野県に旅行したことが「ジモコロを立ち上げよう」と思った最大のきっかけだったという。バーグで働きだしてから3年目くらいのころ、長野の松本へ一人旅しました。やったことのないことがしたくて、唐突に「薪割りをしたい!」ってFacebookに投稿したら「ウチでできますよ」って長野に住む知り合いからコメントがきて、本当に薪割りをすることになったんです。その体験が楽しくて、社内でみんなに報告したり、いろんな所へ旅行するようになりました。この頃から自分が経験した面白いことを経験してない人へ伝えて面白がってもらう楽しさを感じはじめました。それが「ジモコロ」を立ち上げるきっかけでしたねそして2015年5月に「ジモコロ」を立ち上げ、本格的に地方取材をスタートした柿次郎さんは、東京では出会えない人やモノ、文化を知ったという。取材のモチベーションは「自分のため」ジモコロの記事を読むと、話し手の口調や感情がいきいきと伝わってくる。まるで自分も聞き手と同じ場で話を聞いている感覚になるのだ。「取材相手への徹底的な愛情」がなければ書けないこのような記事を生み出す原動力は、自分が経験した面白いことを経験してない人へ伝えて面白がってもらう、という「他人のため」だけではなく、「自分のため」でもあると柿次郎さんは話す。人の話を記事にする上で、究極のモチベーションは相手と仲良くなること。つまり「自分のため」なんです。仲良くなりたいから面白い記事を読みやすく作り、世の中へ広める努力を徹底的にする。記事きっかけでたくさんの人に興味を持ってもらえた、という結果こそが取材相手に対する貢献であり、喜んでもらえる理由だと思う。「自分のため」といっても自己満足で終わるのではなく、まずは目の前の人をどう喜ばせるか。それを何より大切にするのが結果的には聞き手と話し手と読み手みんなのためになると考えています「誰かの地元」を愛情持って届け続ける柿次郎さんがジモコロを通じて、自分の地元ではない“誰かの地元”を愛情持って届け続けられるのには2つの理由があった。1つは、彼が自分の楽しみを第一に考え、その上で関わる相手に対して価値を出すという生き方を貫いているから。もう1つはかつて自分をフックアップしてくれた人たちへの感謝の気持ちを忘れずに持っているから。生きる上で一人一人に本気で向き合ってきたからこそ得られた柿次郎さんへの信頼は、彼がこれから進む道において大きな力になるのだろう。徳谷 柿次郎 / KAKIJIRO TOKUTANITwitter|Facebook|Email|Website株式会社Huuuu代表取締役。おじさん界代表。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学EVERY DENIMWebsite|Facebook|TwitterEVERY DENIMとは2015年現役大学生兄弟が立ち上げたデニムブランド。なによりも職人さんを大切にし、瀬戸内の工場に眠る技術力を引き出しながらものづくりを行う。店舗を持たずに全国各地に自ら足を運び、ゲストハウスやコミュニティスペースを中心にデニムを販売している。
2018年04月05日“和のある暮らし”とか“和カフェ”とか言ってる時点でおかしいでしょ。ここ日本なんだから始終優しい笑顔を見せる彼女の口から、インタビュー冒頭で芯のある言葉が返ってきた。三河 万紀(みかわまき)さん、28歳。2年前、東京・高円寺に全国各地の厳選された和菓子と日本茶、器を提供する和菓子カフェ「山桜桃屋(ゆすらや)」を構えた。行き過ぎた東京のコーヒー文化や西洋風にアレンジされた和カフェブームに疑問を持っているという万紀さん。 今回Be inspired!は、和菓子カフェをひとりで経営する彼女に、なぜ今東京に「山桜桃屋」のような空間が必要だと思ったのか、その思想をインタビューした。東京・高円寺の駅を出て雑多な商店街を進むと、一軒の和菓子屋「山桜桃屋」が佇むみんな、コーヒーをいかにかっこよく出すかしか考えてなくない?2020年に東京オリンピックを控えてか、いわゆる和ブームが到来して久しい。都内には西洋風にアレンジされた和カフェも増え、 “ゆったり”、“ほっこり”といったイメージが定着。空前のコーヒーブームの最中、和文化にも注目が集まっている。しかし万紀さんの思想を貫くのは、ほっこり精神ではなく、凛とした反骨精神だ。西洋的なかっこよいものやおしゃれなもののブームにはすぐ火がつき持て囃されるこの時代。現在の和ブームも結局、西洋文化に吸収されてしまっている現状を嘆いている。“和のある暮らし”とか“和カフェ”とか言ってる時点でおかしいでしょ。ここ日本なんだから。いくら衣食住すべてを今風にかっこよくしても、しょせん西洋の真似にすぎない。とても芯が弱いと思うただでさえ飲食店経営が難しい時代。一人で“純”和菓子屋を開くことが怖くなかったのか、という質問に万紀さんはキョトンとし「そんなこと考えたこともなかった」と、はにかんだ。「というかみんな、コーヒーをいかにかっこよく出すかしか考えてなくない?」三河 万紀(みかわ まき)さん美術大学で彫刻を勉強していた万紀さんだが、「自分の手で一から空間を作りたい」という気持ちから中退。全国の和食器屋や和菓子屋を巡りながらアルバイトで資金を貯め、ここ高円寺の地にようやく自身の店「山桜桃屋」をオープンさせた。当時は、家族や周囲から反対されたという。でも、彼女は諦めなかった。自分がどんなお店を開きたいのかA4用紙にまとめ、アドバイスをもらうため、個人店の経営者から有名チェーン店を展開する社長、器屋さんや和菓子屋さんにも見せにいった。応援するよと言ってくれる人もいたけど、「どうせできないでしょ」「ムリでしょ」という目で見られることも多かった。最前線で飲食店を経営しているある人から言われたのは、「和菓子なんておいしくないじゃん」「ババくさいじゃん」という言葉。あの時は本当にめげそうになったけど、逆に「やってやる!」という悔しさをバネに、自分の好きなものが詰まった和菓子カフェをなんとかオープンさせましたお店を始めた理由は、ただ一つの純粋な気持ち。「自然の大切さを感じてもらいたいから」だった。「こんなに小さなお菓子ひとつに季節が現れている和菓子は、本当に奥深いんです」と、彼女はインタビュー中に、季節の和菓子を丁寧に選んだ器にのせて出してくれた。山形県の老舗和菓子屋「乃し梅本舗 佐藤屋」の和菓子「下萌」店内のふきのとうは家の庭から、梅は山から採ってきたもの。店内には自ら鉋(かんな)で削って作った机や、骨董市で集めたインテリアなど細部までこだわりぬいた感性が宿るこだわり続けるのは「本物であること」万紀さんの一日は、お客さんに癒しのひと時を過ごしてもらえるよう草花を活けることから始まる。ここに来るお客さんは落ち着く、和むって言ってくれるんです。それは、自然の草花のおかげだと思っていて。自然のものが少しでもあったら空間が生きるから。店内もなるべく人の手でつくられたものに囲まれる空間作りをしている。自然や、人の手で丁寧に作られたものからは、何か感じるものがある。美味しかった。綺麗だった。居心地がよかった。こんな風に純粋に五感で感じることって最近なくなってきてない?食の世界は、ただ「美味しい」だけでは成り立たない。どのような空間で、どのように提供されるか。どう食べるかがその奥行きをつくる。「いくら美味しいものが出ても、その器が微妙だったら物足りない。見た目で楽しむことができないから」。飲食店の肝は、空間づくり、トータルコーディネートなのだ。たとえば、器は道具でしょ。だから、料理を盛り付けてはじめてその良さが出る。そしてその真髄は、手に持ったり口をつけたりと、実際に触れることではじめて理解できる。そのくらい和文化は繊細だと思うんです日本らしさ、日本人らしさを大切に、という語り方は、文化や価値観の多様化が進むこの時代にそぐわない気もする。でも万紀さんは、この時代だからこそ大事だ、と続ける。日本には美しいもの、独自の感性が溢れている。まずはこの土地に合った生き方を一人ひとりが見つめ直すべきだと思う。もちろん、グローバルに生きること、多様性を認めることは大事。でもそれは、自国の文化を大切にしないということではないはず。ていうか、自分の土地のものに目を向けて初めて外のことがわかるんじゃないかな日本の文化をもっと身近にしたい最後に、万紀さんの今後の目標を聞いた。これからも日本文化に携わって盛り上げていきたい。いま誰でもアクセスできる駅前とかにチェーン展開されてる店はほとんど洋風のカフェ。みんなそこへ無自覚に吸い込まれていく。そんな文化を変えたいんです。日本茶と和菓子がもっと身近になって、みんなが気軽に入れるこういうお店が増えてほしいと願っています目まぐるしい日々のなかで現代人が見失っていること。それは、彼女が大切にするような日本的な感性なのかもしれない。スターバックスで時間を潰しながらスマホ片手にコーヒーを飲む。そんな無自覚な時間を幾度過ごしても、ここ山桜桃屋のように落ち着くことはできないのはそのせいだろう。多様性を謳う今だからこそ、自国の文化への関心を取り戻す必要がある。ぜひ高円寺へ足を運び、万紀さんのつくる空間の豊かさに触れてほしい。器と和菓子 山桜桃屋Instagram〒166-0002東京都杉並区高円寺北3-2-12 平日13:00-20:00 土日祝12:00-20:00 定休日 水曜
2018年04月04日「共感」が現代の若者の消費のキーワードだといわれ始めてから数年が経つ。ものの便利さや機能性だけではなく、生産背景に納得できるか、その会社の信念に共感できるか、そんなことが重要視されるようになった。それでも常に意識しながら消費をして生きてきた人なんて滅多にいないだろう。ほとんどの人が何かをきっかけに変わったはず。そのきっかけは各々違うにせよ、自分の意識の変化を経験した大抵の人の頭に浮かぶ疑問があるのではないだろうか。「意識が変化する前に買った、今となっては共感できない物とどうやって向き合っていくのか?」そんな疑問を持つ人たちに、丁寧に「選択肢」を与えてくれるのが、毛皮リメイクの老舗ブランド「TADFUR(タッドファー)」。「一儲け」から、「ものを大切にする」マインドへ。若きリーダーの意識変化TADFURは1967年に創業され、今年51年目となる毛皮リメイクの老舗ブランド。「親に譲り受けたが時代とともにスタイルが変わったためそのままでは着られない」「年を重ね服の重さが気になる」などの理由でファーコートなど、毛皮製品のリメイクを望む人の相談にのり、一人ひとりと時代にあったデザインを常駐のデザイナー、そしてパタンナーと作り上げる。「職人の手間」と「動物の命」のうえに成り立つ毛皮製品をできるだけ無駄にせず、大切にするべきだという信念がビジネスの根底にある。現在35歳で取締役を務める松田 真吾(まつだ しんご)氏の祖父は、1960年代、在日米軍やその家族に向けて毛皮を販売するアルバイトをしたのち、毛皮商社に就職。外国人向けに作られた毛皮製品が日本人のサイズに合わなかったため、修理を始めたことがきっかけで祖母と共にTADFURを創業したのだそう。技術の発展とともに父親の代で本格的にリメイクするようになり、松田氏の代では都内に利用したい人が気軽に相談できるサロンを作ったり、大々的にブランドを発信したりするなど、改革を続けている。TADFUR CMO 松田 真吾氏家族三代続いてきたリメイク業、てっきり幼い頃から消費や社会について意識していたのかと思うと、そうでもないという。大学生時代には漠然と「起業したい」という思いがあり、それはどちらかというと「一儲けしてやろう」という感じだったらしい。たぶん当時はまだ「社会起業家」って言葉もなかったような気がします。ライブドアの堀江さんがメディアを騒がせてて、サイバーエージェントの藤田さんの講演を聞きにいったり、ビジネスを「上場させる」とか「儲ける」っていう切り口でばかり考えていました。「起業してやりてぇ」みたいな(笑)そうして勢いのある起業家をサポートするベンチャー企業に入社し、日々エッジの効いた経営者のためにPRの仕事などをして応援していたという。その仕事を通して様々な企業の話を聞くうちに、TADFURの毛皮のリメイクという類をみないニッチなビジネスモデルを見つめ直し、ビジネス的な視点で価値を見出した。うちの会社がどれだけニッチなことをやってるか、どれだけ差別化できてるかってことに気づいて、その面白さに引き込まれたんです。社会性みたいなものは後付けですね、完全に。そのうちに社会的営利とか、うちの会社が存在しなきゃいけない社会的な問題構造みたいなものに気づいて、なんかこれはやれることがあるし、どんどんアプローチしてみたいなって思うようになりました毛皮をリメイクする、というビジネスモデル自体が「ものを大切にする」という思想に基づいているが、TADFURの活動はそれだけにとどまらない。リメイクの作業工程で出てくるものも再利用する活動を行なっている。それに代表されるのが、洋服を仕立てる際にデザインやサイズを確認するために試験的に縫製される布製の型「トワル」の再利用、「Re:Toile(リ:トワル)」だ。2013年にそれまで廃棄していたトワルを何らかの形で再利用できないかとFacebookで呼びかけたところ、アートイベントや演劇に使いたいとう申し出が殺到したそう。「毛皮を大切にしようよ」っていう信念を持って活動をしていた我々が、トワルを年間で1,000個近く捨てていた時期があって。それおかしいじゃんって僕の理念が毛皮を大切にすることだけじゃなくて「ものを大切にする」っていうところにシフトしていきましたPhoto via TADFURさらにそうやって再利用されたトワルが最終的にゴミにならないように、バイオエタノール*1として再資源化している。日本環境設計の技術で、コットンなどの自然素材はバイオエタノール、ポリエステルはペットボトルのペット樹脂に変えられる。技術の発展によりゴミを燃料に変えることができるようになったが、だからといって「簡単に捨ててもいい」と思ってはいけないと松田氏は強調する。再生できるならすぐ処分してもいいって考えが出てきちゃったら嫌ですね。バイオエタノールにする過程でもエネルギーが使われていますので、もうほんと最終の最終手段であるべきだと思います。江戸時代の人は、着物が古くなったら部屋着にして、それでも着られなくなったら雑巾にして、最後に屑屋(くずや)さんに引き取ってもらっていた。現代ではそこまでいかないにしても、捨てる前に再利用できないか、もしくは誰かに引き取ってもらえないかって考えて、最終的に捨てるっていう方法を取って欲しいですね(*1 )バイオエタノールとは、トウモロコシや木材、コットンなどの産業資源としてのバイオマスから生成されるエタノール(エチルアルコール)を指す。燃料として自動車などに使われている。「直すより新しいものを買ったほうが安い」「直すより新しいものを買ったほうが安い」。これはサロンに相談しにくる人からよく聞く声だそう。それでも人々がこのサービスを利用するのは、TADFURが使わなくなった毛皮の製品に新しい価値を生み出してくれるから。ちょこっと直すだけではなく、ガラッと変えられるのが毛皮の特性なんです。バラバラにしてパズルのように組み合わせることができるので、実はリメイクには適している素材なんです*2。お客様にはそういうことを丁寧に説明します。あとは、できるだけ言いたくはないのですが、話をしてもよさそうなお客様には、そのコート一着に何匹の動物が使われているのかを伝えますすべての人に伝えることが正義だとは思わないが、毛皮が作られているうえで犠牲になっている動物の存在を知ることは大切だと松田氏は話す。慎重にならなければいけないトピックですが、それでも知っていて欲しいですね。一匹の動物からコートができていると思っている方も少なくないんです。それは実はあり得ない話で。ロングコートだと、ミンクのようなイタチ科の動物であれば40匹分の毛皮が使われていることもあります。リスで作ることもありますね。あんなにちっちゃいのに。生産過程が知らされていないまま売りに出されているのが現状です。そういうのを知ったうえで使って欲しいという思いはあります(*2 )毛皮縫製における最大の特徴は、縫い目が毛に隠れてほぼ見えないこと。そのため、職人の目利きと技が優れていれば痕跡を残すことなく直すことができる。TADFURというきっかけに巡り会い、「ものを大切にする」という思想を持ち始めた当初、気持ちが高ぶり一方的に発信していたという松田氏。社内でファストファッションの裏側を暴くドキュメンタリー『ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜』の上映会を企画したときも押し付けになってしまっていたと振り返る。社会をよりよくしたいと、政治的な活動にも参加していた松田氏はその経験も通して、「広めたいっていうのは自分の正義であり、エゴでもある」と気づいたそうだ。いろんな組織に絡んでいくうちに、様々な思惑がみえました。社会問題をなんとかして解決したい人、選挙で「この人を通したい」って思ってる人、自分の身近な問題をわかってほしいと共有しようとする人。でもそれでまわりが見えなくなることが多くて。人間関係をぶち壊しちゃったり。そういう現場を見てきたし、僕も友達に「?」って顔をされたこともあった。そこから少し抜けてみると、僕自身強く言ってくる人のプレッシャーをすごく感じたりした。そんな経験を経て距離の取り方を考えないと、難しいな人って、と思うようになったんですよねだからこそ、自分はまだうまくできてはいないが、毛皮に関しても楽しくプラスな気持ちで「選択肢」として存在したいと松田氏は話す。残っている課題は、毛皮という分野において、「ものを大切にするという選択肢」を楽しく提供していくことであり、毛皮というものの特色上、利用者の年代が高めのアッパー層に集中している現状に対して工夫することだという。今の自分の金銭感覚で、うちのサービスはなかなか利用できないですよ、やっぱり(笑)「たっけー」て思うんですよ(笑)もちろん良いものにはそれだけお金を掛ける価値もあるし、それだけの職人さんたちの手間がかかるんです。そこをもうちょっと自分の感覚に寄せられるようなラインナップにできたらすごく面白くなるかなと思っています。だから、毛皮っていう入り口から僕は入りましたけど、それが洋服に広がっていっても別にいいと思います。将来関わるもののなかに、なんかものを直す仕事を毛皮以外でやっている可能性は大いにあると思っています▶︎オススメ記事・アンチファストファッション。「泥」を尊敬し、「土」に還る服を作る男。・「ゴミを作っている感覚だった」。大量生産・大量消費の服作りに疑問を抱いた男が立ち上げたアパレルブランドAll photos by Misa Kusakabe unless otherwise stated. Text by Noemi Minami ーBe inspired!
2018年04月03日筆者が臨床心理士のKANAの存在を知ったのは、何気なくインスタグラムを見ていたときだった。そこでたまたま見つけたのが彼女の、渋谷で統合失調症を抱える女性と出会ったときの話を綴った投稿で、現在までに27,500以上の「いいね!」を集めている。知り合いに伝えるつもりで発信した彼女にとって、その反響は予想外だったという。今回Be inspired!は、20代の臨床心理士である彼女にコンタクトをとり、彼女が自分自身の目を通して、人に悩みを打ち明けにくい日本社会をどう見ているのか話を聞いてみた。少し前には最近でも耳にする“メンヘラ*1”という言葉がネットスラングとして使われるようになり、精神疾患が身近なものになったようにも思える。しかし、その言葉のせいで病気を軽いものとしかとらえられない人たちもいるようだ。「“メンヘラ”という言葉が流行ったことが関係あるのかはわかりませんが」と前置きをしつつ、彼女はこう話す。精神科は怖いっていうイメージがあったかもしれないけど、すごく精神科の敷居が低くなってきています。眠れないとかちょっと落ち込んじゃったとかっていうのでも割と足を運びやすくなったし、その“メンヘラ”っていう言葉ができて「病むのってこう分類化されるんだ」って、救われた人もいると思うんですよ。「私、こういう傾向があるんだよね」ってある種での自己紹介にも使いやすいし、若者が扱いやすいワードじゃないでしょうか。それはいい傾向ではあると思うんですけど、その反面、間違った情報によって精神疾患への理解がそこで止まったり、その軽い言葉のイメージだけが一人歩きしてしまったりしたこと。だから「私、メンヘラなのかもしれない」「ちょっとおかしいのかもしれない」って悩んでしまう人もいると思います(*1)メンタルヘルスの悩みを抱えている人をさす俗語逃げたっていい。自分を肯定することが大切臨床心理士として働くKANAに次に聞きたかったのが、彼女が現代の日本社会について感じていること。そこで話に出てきたのが大ヒット映画『アナと雪の女王』。同映画のテーマ曲の「ありのままで〜」という日本向けの訳詞は2014年の新語・流行語大賞のトップ10に入るほどの人気ぶりだった。最近上映されている人気ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』でも共通しているのが、挿入歌に「これが私だ」という歌詞があることだという。そんな歌詞が人気を呼ぶのは、「日本社会で生きる人が簡単に“ありのまま”でいられないから」だと彼女は指摘する。「自分らしく」とか「ありのまま」でいるとか「これが私だ」っていうフレーズがすごく日本に生きる人の胸に響きやすいって思って。でもそれってできてないから。できてないことってすごく響くじゃないですか。できているなら普通のことになってしまいますが、自分がすごく負い目に感じていたり、「私全然自分らしくない」とかっていうのを感じてしまっていたりするから、そこが心にすごく響いているんじゃないかなって私の人生もそうなんですけど、辛いことも悲しいことも嬉しいこともすべて絶対に意味があって、あの時間にあの人と知り合ったこととか、あの人と喧嘩したこととか、そういうすべての選択に必ず意味がある、それが今の自分になっている。そのようにすべてに意味があると考えると、おのずと今の自分を受け入れられるようになる。あのとき自分はあの選択をしたから今の自分があるって受け入れやすさにもなると思うんです自分を他者と比べてしまう人たちへインターネットに情報が溢れ、急速に世の中が変化しているように思えて、あるいはまわりの人がそれぞれの分野で活躍しているように見えて、自分は取り残されてしまうのではないかと焦っている人もいるのではないだろうか。筆者がKANAと話すなかで最も印象に残ったのが、そんな「変化」に対する彼女の見方だった。変化って側からみるとすごく大きいものに見える。たとえば親友のAちゃんがあのときから急に変わっちゃったとかってあるじゃないですか。でも実際にAちゃんは何も考えてなかったり、日々生きているなかでちょっとずつ変化してきただけかもしれない。Aちゃん本人にその自覚はなかったりもする。他人から見たら大きくても「変化」って実は小さいもので、毎日のすごく地味な積み重ねなんです。でもなぜか人って大きな変化を求めがちで、「こういう悪いところを大きく変えなきゃ」と思ってしまう。だけどちっちゃい行動を意識するだけいいし、その場で足踏みしてるだけでもいい。足踏みだけでも筋肉がついてくるし、いつかのタイミングで前に進めるかもしれないしって思いますね「隣の芝生は青い」ということわざがあるように、他者がよく見えてしまうことはいつの世にもあるけれども、それは人の内面が他者からは見えないゆえに感じるのかもしれない。したがって、自分より優れているように見える他者を“基準”にして焦るのではなく、まずは彼女が強調していたように、自分自身の選択したことや感じていることを「肯定する」のが大切ではないだろうか。それが自分の生きやすい環境を見つけることにつながってくる。KANA
2018年04月02日「環境活動=まじめ=つまらない」。そんなイメージを吹き飛ばす環境NGOが日本に存在する。それが「国際環境NGO 350.org Japan (以下、350)」だ。年齢、職業、性別、人種もとにかく多様。下は6歳の子どもから上は70代のおばあちゃんまで。また、シングルマザーや障がいをもった人、外国人もメンバーにいる。そこで主体的に動いているのは主にミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代)の若者たち。少しでも多くの人に、楽しみながら環境活動ができることを知ってもらいたい!そこで、Be inspired!では、以前本誌でも紹介した350のフィールド・オーガナイザー イアンが、350の活動に関わる人をインタビューする連載をお届けする。その名も『「世界は気候変動で繋がっている」。若き環境アクティビストのリアルな声。by 350.org』。350のフィールド・オーガナイザー イアン連載4回目の今回は、350のボランティアメンバーである、ニーナとサトシとの対談。2人はイアンと共に、海面上昇の影響で世界で一番最初に沈むと言われている島国「ツバル」に2か月間(1月〜3月)行き、島民のインタビューやマングローブの植林、ドキュメンタリー動画の撮影などをしてきた。未来の見えない国に暮らしながらも、底抜けに明るい人々と触れ合って見つけた自分なりの”幸せの基準”、そして自分達ができる環境活動について語り合った。左からサトシ、イアン、ニーナ東京都内の田舎、羽村市に生まれて川と山で遊んで育ったサトシ。オーストラリアにて環境学を学んだ後、今は環境専門の広告屋さんを目指して、ネット広告会社に勤務。浅草で友達と一緒に古民家に住んでいる。もう一人は愛知県生まれで、ミシガン州のデトロイト育ちのニーナ。デトロイトは、彼女いわくとても危険な街らしい(実際にアメリカで最も治安が悪いと言われている)。ツバルへ行くために、仕事を辞めて頭も剃った。現在はメディア関係の仕事を探し中。▶︎350.org Japanイアン氏のインタビュー記事『「日本の銀行が環境破壊に加担する事実」を知らない日本人へ。25歳のアクティビストが提案する解決策とは』世界一つまんない国「ツバル」イアン:ツバルに行く前にツバルにどんなイメージを持ってましたか?サトシ:高校の授業でツバルの写真を見た。白い集会所の前に灰色の海水が上がってきているやつ。シンプルに言うと、めっちゃ暗いイメージがあった。“沈みゆく悲劇の国”みたいな。とにかく沈むっていうイメージが先行してて、なぜか人がいるっていうイメージがなかった。ニーナ:350のイベントで初めてツバルのことを知ったんだけど、私も島にはあまり人がいないイメージがあったし、沈んじゃうんだ、かわいそうって思ってた。あと、「ツバルやること」っていう言葉を検索したら、一番上にブログが出てきて、そのタイトルが「ツバル、世界一つまんない国」だった。イアン:すごい言われようだな笑 自分もメディアの報道をそのまま受け取っていて、「沈む国」というイメージ強くて、みんな悲しみにくれているんだと思ってた。イアン:ツバルはサンゴ礁でできた島だから地盤が結構スカスカで海水が湧き出てくるんだよね。サトシ:すごく印象的だったのが、水たまりで子ども達がバシャバシャ楽しそうに遊んでたこと。子ども達はめっちゃハッピーなんだけど、実はその水溜りはかなり汚ない。ツバルってトイレが垂れ流しの場合が多くて、ゴミも多いし、そこを楽しく遊んでるんだけど、あの水は飲んだりしたらすごくやばいはず。イアン:俺もそれこを歩きながら、絶対うんこ混じってるなーと思ってた(笑)ツバルは真ん中が凹んだ形状になっていて、その部分の海抜がとても低いから、大潮が来ると海水が湧き出てきて浸水しちゃうんだよね。近年、その被害は大きくなってきてるって島の人たちが言ってたな。ニーナ:そうそう。浸水していた地域に住んでるおじさんが言ってたけど、昔は足首辺りまでしか水が上がってこなかったらしい。でも今は膝あたりまで来てるって。幸せのなり方に迷いのないツバル人と、選択肢が多すぎて混乱している日本人イアン:ツバルにいる間、口を揃えて「この国は人々の幸福度がめっちゃ高い」って言ってたじゃん。それはなんでだと思う?ニーナ:インタビューした人たちに「幸せですか?」って聞くと、全員が「幸せです」と即答だったのには本当に驚いた。「幸せです」どころか、「めっちゃ幸せです!」って元気そうに答えてた(笑)それが衝撃的で、なんでこんなシンプルな生活なのに、こんなに幸せになれるんだろうって思った。イアン:同じ質問を日本人にしたら即答する人は果たしてどれくらいるんだろうね?サトシ:おれは、やっぱりツバルの人々は幸せへのハードルが低いのかなって思った。良い意味で!日本に生まれて、学歴社会で、子どもの頃から勉強して良い学校に行きなさい、それで次は良い会社に入って良い生活をしなさいみたいな。良いものを求められて、自分も良いものを求めてしまう。良いことがあった時に素直に喜べずに、次の良いこと、もっと良いことを考えてしまう。でも、ツバルの人たちは日々の些細なことに幸せを感じている感じだった。イアン:すごいわかる。生きていければ良い。それが幸せなんだ。っていう考えに揺らぎが無かったよね。それは裏返すと、彼らはどう幸せになれば良いのかっていうのに一切混乱がないんだと思う。日本だと選択肢が多すぎるから幸福をどう得るのか混乱してる。日本では、競争のなかで物事を図ろうとする傾向があると思う。例えば友達のはずなのに、年収を比べて、俺の年収低いみたいな。その手前で、この人と自分が友達であるという関係性をもっと大事にすべきでしょ。それを嬉しく思うことが、幸せなんじゃない?って思った。単純に「周りの人は大切に」ってことだね。ニーナ:うん。向こうにいて日本人は、一番の幸せへの近道であるはずの家族や友達とかそういうところを置き去りにして、仕事を追いかけてるって思った。ツバルだったら、家族と一緒に暮らすことが一番の幸せだって言ってるのに、今の日本だったら、社会人で親と一緒に暮らしていたら少し引け目を感じなければいけないというのが、ちょっとおかしいかもと思った。ツバルのために今あなたがとれるアクション気候変動の影響を受けている人々は、私たちとは違う遠い世界に生きているように感じてしまう。でも実は、私たちは彼らに会うことができる、彼らと友達になれる。「先進国の責任」じゃなくて、気軽に友達を助けるような気持ちで始める環境活動があって良いのではないだろうか。350では、活動をともにするボランティアを募集している。少しでもビビッとくるものがあったなら、ぜひ参加してみてほしい。SATOSHI & NINA & IAN
2018年03月31日こんにちは、そしてお久しぶりです、谷村リサです。前回の記事でもサラッと書いたけれど、私は今ベルリンに住んでいる。ベルリンのそんなところは本当に大好きなので、嫌なところに気付いても目を瞑って生きていった方がいろいろ楽なのかもしれない。それでも一度気付いたら、あれこれ考えずにはいられない質なので、チャイナドレス風の服を来た女性の横にGEISHAと書かれたポスターを見かけたり、寿司がすっかりベトナムレストランの定番メニューになっていたりするのを見たときに、この街の人々にとってアジアはまだまだ程遠い存在なんだと感じる。人と話していても、「自分達とは違うアジア人」というフィルターが立ちはだかるときがある。さすがアジア人、暗算が早いのね。アジア人は髪がまっすぐでいいわね。それはシュガーコートに包まれていて、甘い賞賛のように聞こえるけれど、私と彼らを隔てる壁以外のなんでもなくて、私たち本当はそんなに違わなくって、共通点だって見つけようと思えばいくらでもあるのに、と思う。アジア人の女の子はみんな大人しくて女性らしい?ーあなたの名前とベルリンで何をしているか教えてください。サラ・リトル。シングルマザー、フリーランスのタトゥーアーティスト・モデル。 ーアジア人女性のステレオタイプってなんだと思う?従順、「いい子」、実はエロいことに興味津々、料理上手、ベットの中で「セックスしたいの」って言う、小さい、キュート、ハローキティにゲーム、そして漫画が好き。 ーベルリンに住んでいて、アジア人女性フェチを感じる?高校の頃に比べたらそうでもないけれど、自分がインドネシア出身だと知った途端、男性が興味を示してくることはある。ー「イエローフィーバー」持ちの人に出会ったことはある?どんなことを言われた?まだ高校生だった頃、男子が私がどのくらい「キツい」のか聞いてくることがあった。私がアジア人で小さいから。 ーどうしたらアジア人女性の性的対象化(フェティシャイゼーション)、つまりアジア人女性が一種のフェチの対象として扱われている現実を改善できるのだろう?世界中の有色人種の人々によって作られた映画や文学、その他のクリエイティブな表現方法をもっとインターネットを通じて広めることができれば、ハリウッドなどが作り出したステレオタイプを打ち消すことができると思う。シュアンーあなたの名前とベルリンで何をしているか教えてください。シュアン。コスチュームヘッドウェアのデザインをしている。ーアジア人女性のステレオタイプってなんだと思う?服従的な女の子、従順すぎて人形と見分けがつかないような女性。オタクっぽい真面目な学生。ドラゴンレディー*1とタイガーマザー*2。よくこの質問に関して、ハイパーセクシュアリティ*3という単語が挙がるけど、私はそう思わない。ステレオタイプに関して言えば、私たちは自分自身の欲求や要求を持っていると考えられていなくて、誰のどんな性的妄想であろうといつでも受け答えると思われているから。私たちの自主性はとても低いと思われている。ーベルリンに住んでいて、アジア人女性フェチを感じる?ドイツで生まれ育ったが、ベルリンに限らずそう感じる。ベルリンはよく進歩的だと言われるけれど、数字の上での多様性が必ずしも社会的な受け入れを意味する訳ではない。ー「イエローフィーバー」持ちの人に出会ったことはある?どんなことを言われた?一人の人間として見られていない気持ちになる。特に親密な関係を結んでいる誰かからそういったことを言われたときはとても傷つく。セックスをした人から私が何人目のアジア人だって聞かされることもよくある。少なくとも3人の「初めてのアジア人」だったし、4人目や9人目だったこともある。あと、第三者には私がアジア人であるという事実しか目に入らないということにも気が付いた。 誰かがアジア人と付き合ったことがあると、すぐ「彼・彼女はアジア人が好きだから、チャンスがあるよ」と言われる。近しい友達にこんなことを言われたときには本当に傷つく。だって私がアジア人だってこと以外に何も良いところがないみたいだから。ーどうしたらアジア人女性の性的対象化(フェティシャイゼーション)、つまりアジア人女性が一種のフェチの対象として扱われている現実を改善できるのだろう?人種差別と一緒で一回一回指摘していかなきゃいけない。けれど人種フェチを減らすことは難しいと思う。好きなタイプの話ってとてもパーソナルなことだから、指摘するとすぐ個人を攻撃をしてると思われてしまう。でも、セクシャリティは遺伝的素因で決まるかもしれないけれど、好きなタイプは違う。タイプは生まれ育った環境の影響で決まるから。(*1)欧米メディアでよく使用されてきた、目的の為には手段を選ばない、強気で神秘的な女性としてのアジア人女性のステレオタイプ(*2)同じく欧米メディアでよく使用されてきた、子供に過剰に学業的な成功を求めるアジア人の母親のステレオタイプ(*3)過剰なまでに性的な事柄に興味があること
2018年03月30日こんにちは。赤澤 えるです。思い出の服を持ち寄る連載『記憶の一着』、第6回です。たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って何だろう。それはどうして残るのだろう。それを手放す時ってどんな時…?服の価値、服の未来、ゲストのお話をヒントに考えていく連載です。本日のゲストはミュージシャン・はっとりさん。「マカロニえんぴつ」というユニークな名前のロックバンドでヴォーカルとギターを担当する彼。現役音大生だった頃に組んだそのバンドの音楽は「全年齢対象ポップスロック」と称され、日々着実にファンを増やしています。バンドを代表するフロントマンである彼が選ぶ、『記憶の一着』とは?赤澤えるとはっとりさん▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちら“問題作”と言われるMVで着た『記憶の一着』とは赤澤 える(以下、える):『記憶の一着』について聞かせてください。はっとり:「鳴らせ」のMVで着た服。僕のバンド「マカロニえんぴつ」が全国デビューしたミニアルバムのリード曲です。バンドとしても俺としても思い出のある作品で着ていた、通称“鳴らせシャツ”です。大人の方々に協力してもらって初めてちゃんと撮った、すごく大事なミュージックビデオ。3年くらい前になるかな。える:これを買った時のことを覚えてる?はっとり:学生時代からよく行っている下北沢の古着屋さんで買いました。MV用ってわけじゃなくて、単純にかわいかったので。最初のアーティスト写真もこれを着ていましたよ。える:しっくりくるものに出会ったんだね。はっとり:自分が小柄なのもあってオーバーサイズで着たいんです。タイトなのを着ると似合わなくて。袖も裾も長めの大きめサイズを着たい。だからこれはぴったりでした。生地がちゃんとしているからずっと着れてる。脱退メンバーの、最後の言葉える:その服を纏ってからの3年間、どんなことが変わった?はっとり:本当に色々ありましたけど、特に実感している変化は“感謝”をするようになったこと。「感謝をしなきゃダメだよ。自分一人で生きているわけじゃないから」って母親とかに言われるじゃないですか。そんなの分かってるし当たり前じゃんって思ってたんだけど、本当の意味で分かってなかったなって思うんです。最近メンバーを1人失って、理由は色々あるんですけど「メンバーという一番近い存在に感謝をしていなかったな」って思ったんです。脱退の時に色々と本音を話してくれて「他のメンバーがついてこなくなっちゃうよ」って言われたんですけどそれで改めて反省して。身近な人への感謝が足りてなかった。この5年ついてきてくれたメンバーがいる中で、それが本当に欠けてた。える:去っていくメンバーが教えてくれたんだね。はっとり:そうです。あとそれによってライブのスタイルが変わりました。俺たち毎年「今年来るバンド」って言われ続けてて、それでも思い通りにうまくはいかなくて。それでも来続けてくれるファンの方がいる。その人たちへの感謝でライブが変わったんです。それまでは何のためにやっているのかっていうのが、いまいち自分の中ではっきりしていなかったところがあって、良いライブ・悪いライブの差もあまりよくわからなかった。でも最近は目の前の人に感謝をして、「俺たちを選んでくれてありがとう。あなたたちは何も間違っていないよ」って抱きしめるくらいのつもりでライブをするようになって。そしたら今まで苦手だったMCも自然と話せるようになって、自分がライブをやっている意味が分かってきた。楽しくなってきましたよ。える:すごく伝わってくる。2、3年会っていなかったけど、本当に変わったね。言葉と表情にハリがあるというか…。はっとり:変えてもらったって感じですけどね。過去の自分が嫌いですもん。一週間前の自分でも嫌い。夜眠れなくなるくらい、いちいち反省しちゃうんですよ。心配性というか、人からどう見られているかがすごく気になるんです。傷ついて気付くことも傷つけられて気付かされることもあるしそれは避けられないけど、俺は誰も傷つけたくない。彼の“捨てられない”という価値観が、このバンドの全てなんだなと感じました。言ってしまえば彼と私はきっと同じ立場。“捨てられない”または“捨てない”という価値観と、そうする価値のあるモノ、その両方を世の中に提案・提供する使命を背負っている者同士だと思います。そして、音楽も服も扱う人の扱い方によって輝くし、傷つくし、時には簡単に消されてしまうこともある。だからこそ、それに気がついた人から丁寧に愛すべきだなと彼と話して改めて感じました。instant GALAのステージでは、彼が捨てなかったものの集大成が観れそう。心から楽しみです。マカロニえんぴつ はっとりWebsite|Twitter|Instagram|instant GALAクラウドファンディングあの日、あの時、あの場所で、あなたは何を着ていましたか?「載せたら終わり」の新時代、載せても終わらないものは何ですか?服への愛着・愛情を喚起し、ソーシャルグッドなファッションのあり方を発信する、思い出の服の祭典。4月22日(日)渋谷WWW Xにて初開催です。
2018年03月30日ここ最近、健康志向の上昇も相まって、あふれるほど売られている「健康食品」。似たようなものも多いし、成分表示を見ても何がなんだか分からないから、結局訳も分からず飲んだり食べたりしているという人、結構多いんじゃないだろうか。「もっとシンプルで体に良いものがあれば」。誰もが望むそんなわがままに応えてくれそうなのが、野菜や果物をその風味や栄養素を損なわずにパウダー化した「NICE n EASY(ナイスンイージー)」だ。「じゃあどの添加物を入れますか?」という業界の常識今回話を聞いたのは、WEBマーケティング会社を経営する起業家であり、件の粉、NICE n EASY(ナイスンイージー)の生みの親である清水 拓也(しみず たくや)さん。清水 拓也さん「WEBマーケティングをやっている会社がなんで食品?」ってよく聞かれるんですけど、ぼくは新卒で入った以前の職場で、店舗の企画や運営とか、手触りのあるものを作っていたアナログ人間なので、今回もそういったものを作りたいと思ったんですそうして始まった製品開発。苦労したのが、食品業界の常識である「添加物」の存在だった。製品開発の時に、充填・加工会社の方から当然のように「添加物は何を混ぜる?」って聞かれて、「そもそもそういう前提なのか」と驚いたんです。ここは誤解してほしくないんですが、添加物=悪だとは考えていません。NICE n EASYにもパウダー化に欠かせなかった食物繊維のセルロースという添加物が入っています私たちがいま口にしているものの大半には、何かしらの添加物(ここでは食材を加工・保存する際に加えるものとする)が含まれている。保存や風味・味付けなど、添加物が使用される理由はさまざまだ。たとえば豆腐を作るために欠かせない「にがり」など、もはや添加物なしの食生活は成り立たないと言っていい。清水さんが添加物を極力使わない理由は敵視ではなく、彼の信念からくるものだった。また、前職でさまざまな健康食品の企画に携わっていた際に、業界の姿勢に疑問をいだく瞬間があったという清水さん。この点については、何らかの方法で別解を提示したいという。あの時は製品の売り方や儲け方の話ばかりしていた気がします。ビジネスである以上、利益は出さないといけないんですけど、「先にそこの話をするの?」と思っていました。まず大事なのは、多くの人の「健康になりたい」とか、「体にいい生活を送りたい」という願いに応えられるような製品を作ること。そうじゃないかと思うんです「これって素材そのものなんですよね」。圧倒的な選択肢が生み出す無限の可能性NICE n EASYの一番面白いところって、自由なところなんですよ。何に振りかけてもいい、混ぜてもいい、溶かしてもいい。素材そのものみたいなものなので、ここがゼロ地点なんです「ENJI」を水に溶かす様子NICE n EASY自体の味や色味は、原料である野菜と果物そのものからきているため、余計な雑味はなく、人工ではない自然な色合いをそのまま生かすことができる。今人気なのは、「ヨーグルトや豆乳に加える」使い方。他にもプロテインに混ぜたり、サフランのように色味や風味付けのための調味料として使う人もいるそうだ。粉という形が圧倒的な選択肢を生み、使い手の想像力をかき立ててくれる。シンプルで使い方も簡単。だからこそ、「そういう使い方があるのか!」ってぼくが気づかされることもよくあります。買ってくれた方にはいろんな可能性を試してほしいですね未完成だからこそ。NICE n EASYが業界に革命を起こすべく理由前述したクラウドファンディングの支持者に製品を届け終えた今、「NICE n EASYはようやくスタートラインに立てたかどうか。まだまだ余白があって未完成品なんです」と清水さんはいう。「種類は増やしたいし、もっと水に溶けやすいようにしたい」と課題を口にする。まだ資本力が無いブランドなので、受け手が求めるものを、受け手のいろんな意見を聞きながら、少しずつ開発していくのがいいかなと思っています。そういう意見とか感想って作られたものではなく生の声だから、ポジティブなものでもネガティブなものでも嬉しいんです。「ENJI」と「MOEGI」のパッケージには商品番号が印字されているんですが、それぞれ「001」と「002」の3桁。まだまだ先は長い(笑)「MOEGI」を使う清水さん消費者の声を取り入れる余白を残した製品を世に出すという視点は、完璧な製品を世界に送り出そうとしてきた多くの日本ブランドには無かった盲点かもしれない。もはや利便性や快適性の追求は天井を打ちつつある。完成品を広告して売るのではなく、あえて余白を残した未完成品を、受け手の声とともに成長させていく。それが清水さんが目指すブランドの形だ。ストイックじゃなくてもいい。NICE n EASY的ゆるい健康生活のススメ「不健康がいい」なんてそんな奇特な人はなかなか見かけないから、健康でいたいという思いは誰もが持つ共通項だろう。しかしアルコールに溺れたい日もあれば、食欲に身を任せてしまう日もあるから、健康というのは難しい。そんな私たちに、NICE n EASYは手を差し伸べてくれる。その名に込められた思いとともに。NICE n EASYという名前は、体にNICEなものをEASYに摂ろうという意味が込めてあるんです。個人的には「健康」という概念に対して、もう少し気楽に考えてもいいと思っています。「これは食べちゃダメだ」とか、「1日これぐらい食べましょう」とか、そういうのってしんどいですよね。だからぼくは日々を楽しみつつ、その上で体にいいものを摂っていこうよってことを、NICE n EASYを通して伝えたいんです心機一転のこの春から、あなただけの一服でサクッとリフレッシュなんて、NICE n EASY的ゆるい健康生活のススメ、悪くない選択肢じゃないだろうか。▶︎オススメ記事・p.17 「1日に不足する野菜を10秒チャージ」。手軽に栄養補給できる社会派パウダー「NICE n EASY」。|『GOOD GOODS CATALOG』・19店目:日本初上陸。増粘剤や安定剤など“余計なもの”を一切入れない、超オーガニックアイスクリーム Three Twins Ice Cream| フーディーなBi編集部オススメ『TOKYO GOOD FOOD』All photos by Jun HirayamaText by Yuuki HondaLocation provided by THE LOCAL COFFEE STANDーBe inspired!
2018年03月29日アフリカ・欧州中心に世界の都市を訪れ、オルタナティブな起業家のあり方や次世代のグローバル社会と向き合うヒントを探る、ノマド・ライター、マキです。Maki & Mphoという会社を立ち上げ、南アフリカ人クリエイターとの協業でファッション・インテリア雑貨の開発と販売を行うブランド事業と、「アフリカの視点」を世界に届けるメディア・コンテンツ事業の展開を行っています。Mama Rocksを立ち上げたサマンサとナタリー筆者は、ナイロビで出会った知人の紹介で、Mama Rocksを訪ねたのがきっかけで、それ以来ナイロビを訪問するたびに必ず訪れています。その魅力は、こだわりの素材と独自のフレーバーが特徴のグルメバーガーそのものだけでなく、Mama Rocksブランドの背景にある、サマンサとナタリーのビジョンやミッションなのかもしれません。UK出身の二人が、どういったきっかけで、なぜナイロビで起業したのか、なぜバーガーなのか、なぜ地元のクリエイターたちと連携したブランド作りを行うのか。彼女たちの想いや起業のストーリー、そして人生設計に、私たちが「本当にやりたいこと」を見つけるためのヒントが隠れているかもしれません。「どんなレガシーを残したいか」。時間をかけて、じっくり自分と向き合うことで見えてきた、歩むべき道マキ:まずは起業に至るまでのストーリーを教えてもらえるかな。サマンサ:イギリスの大学を卒業した後、わたしもナタリーも人事系の仕事をしていたの。ナタリーはメディア業界、わたしはチャリティー業界で就職していた。マキ:今のバーガーショップのフィールドとは全く違うところからスタートしたんだね。サマンサ:そう。チャリティー業界で何年かキャリアを積んで、生活は充実していた。一方で、かなり残業もして忙しかった。でもあるとき、ふと立ち止まって振り返ってみる機会があって、あることに気がついて…。仕事に投資している自分のエネルギーや努力を、もっと自分のためになる何かに使いたいっていう気持ちが芽生えてきた。それから、自分の道を切り開くという選択肢が魅力的に思えてきたのもある。マキ:何か具体的な影響やきっかけがあったりしたのかな。サマンサ:共に起業家である両親の影響は強いと思う。常に「自分のボスになれ」と言われ続けてきた。両親には、いつもそういう風に鼓舞されてきたかな。マキ:身近に起業家のロールモデルがいるのは心強いね。でも、なんらかのロールモデルがいたとしても、本当に自分のやりたいことを明確にして、決断をしてキャリアを進めていくというのは、誰にとっても難しいことだと思う。サマンサ:両親の影響だけじゃなくて、すごく長い時間をかけて、自分自身についてもじっくり考えた。それによって自分のことを理解することができた。何によって自分が突き動かされるのか。あとそれから重要だったのは、自分が残したいレガシー(後世に残すもの)は何なのかについて考えたこと。つまり、より広い世界に対して、わたしはどのような影響を残せるのかということ。マキ:バーガーを一つのメディアとして捉えている点は面白いね。ナタリー:メディアとしてのバーガーは、わたしたちの価値観を表現するのに適切だっただけでなくて、アフリカ料理の様々なフレーバーを凝縮させて、発信するのにも好都合だったと思う。アフリカ料理は、まだまだグローバルに知られていないという事実もあるので。マキ:起業の場所として、ナイロビを選んだのはなぜ?サマンサ:父がケニア人で、両親も13年以上ケニアに住んでいるという影響は一つある。それから、わたしとナタリーもケニアを頻繁に訪問するなかで、明らかな経済成長を目にして、ビジネス機会としても魅力的だった。東アフリカの中では、もっとも大きい市場だし、中産階級の人口も拡大している。こうした中産階級の人々は、旅に慣れていて、食べ物やサービスに対する期待値も高い。それにもかかわらず、わたしたちがMama Rocksを立ち上げた当時は、彼らのニーズを満たすサービスは限られていた。それからナイロビは、アートシーンも盛り上がっていて、すごくエキサイティングな都市だったから、むしろナイロビじゃなかったらどこ?という感じもあった。マキ:生まれ育ったUKを離れて、ケニアでの起業というのは大きな変化だと思うけれど、どんなことが特に大変だった?サマンサ:個人的には、起業のために親元に戻らなければならなかったということが大きいかな。自立した社会人として今まで生活してきたのが、いきなり逆戻りして子どもになるような感覚は、あまり気持ちいいものではなかった。それから、文化的ギャップも経験した。男性は、ビジネスとなると、大概、他の男性に向かって話を始めて、なんか脇に追いやられる感じを味わったのも不快な経験。自立した強い女性としてやってきたという経験があるからね。実務的なチャレンジとしては、市場に高品質・高価格というグルメバーガー(Mama Rocksのバーガーは、900円前後)の位置づけを理解してもらうことや、そもそも高品質な食材を提供してくれるサプライヤーを探すことなどが大変だった。マキ:起業というと「自分のボスになる」という要素が強調されるけれど、そのプロセスにおいては、実際に経済的にも精神的にも、ある意味、自立とは逆に、人に頼らなくてはならない場面も多々あると思う。姉妹での起業というのは、強みになっているのかもしれないね。サマンサ:ナタリーと一緒に起業しようと思ったのは、自分たちの背景や影響が似ているから。わたしたちは大親友で、一緒に働くのは楽しいし、絶対的な信頼関係がある。ほかのビジネスパートナーは考えられないかな。「わたしたちも、Mama Rocksも主人公じゃない」。世界の若者を鼓舞し続けるためのドミノエフェクトをつくるマキ:「アンダーグラウンド」というのは、あまり大々的には発信しづらいということなのかな。ナタリー:文化的にも歴史的にも、アフリカにおいて、アート、芸術分野はあまり賞賛されたり、推奨されたりしてこなかった。生計を立てるのに適切な領域ではない、というのが上の世代の考えだった。若者がそういったフィールドに進むことも、推奨されない。自分が何にパッションがあって、どうやって自己表現するか、家族に自分が何者かをどう表現するかはアフリカの人にとってプライオリティではなかった。マキ:クリエイティブ業界のキャリアが、応援されづらいというのは、必ずしもアフリカに限ったことではないと思う。経済成長の過程にある国においては、より実務的なキャリアが優先されるのかもしれないね。クリエイティブにこだわるのはなぜ?ナタリー:わたしたちは、クリエイティビティや自己表現こそが、アフリカ大陸の成長や変化をもたらす要素だと思っていて。恥ずかしがらずに、才能を忌憚なく発揮させることが必要だと思う。同時に、若者がパッションに従ってやりたいことをやる、というのを推奨していきたいとも思う。若者、そして彼らのクリエイティビティが、アフリカを変えると思っているから。彼らのパッションに火をつけるブランドになりたい。サマンサ:クリエイティブな考え方の重要性は、必ずしもクリエイティブ業界とかクリエイターに限定される話ではなくて。既存の枠組みに囚われずに、新しいやり方を提案するっていくこと。例えばケニアではM-Pesa(エムペサ)というモバイル・マネーのサービスが普及していて、銀行口座を持っていない層にも普及している。クリエイティビティがなかったらこういったサービスが生まれたり、普及したりしなかったと思う。長い時間をかけて、自分の生い立ちや価値観にじっくり向き合う、そしてそこから自分がどんなレガシーを残したいかを考える。グルメバーガー事業というビジネスの表層からは想像できない、サマンサとナタリーの深い思いやパッションが非常に印象的でした。自分自身を深堀しつつ、最終的には自分自身やキャリアを超えたより広い世界に、情熱の矛先があるからこそ、揺るぎない信念のもと、自分の好きなことを継続し続けられるのかもしれません。Mama RocksWebsite|Facebook|Twitter|Instagramケニア人の父とナイジェリア人の母を持ち、UKで生まれ育った姉妹起業家ナタリーとサマンサが、ケニアの首都ナイロビで始めた、コンテンポラリーなアフリカンテイストのグルメバーガーショップ。 ▶︎ノマド・ライター マキが届ける『ナイロビ、クリエイティブ起業家の肖像』・#001 「正しいことをしているという確信」。選択肢がありすぎる現代でも道に迷わない観察者、ヴェルマ・ロッサ▶︎オススメ記事・15店目:「ポテトとジンジャーで世界を平和にする」。駒澤大学に佇む、他社と手を組みクラフトマンシップを発信するお店、Brooklyn Ribbon Fries。|フーディーなBi編集部オススメ『TOKYO GOOD FOOD』・保守的な国ケニアで“出る杭”として活躍する姉弟クリエイティブ起業家から学ぶ「日本人に欠けていること」All photos via Mama Rocks unless otherwise stated. Text by MakiーBe inspired!
2018年03月28日日本には、日本国内と国外のもの(内と外)をわける「島国」的な特徴が一部に残っている。また遠く離れた東欧の国ルーマニアにも、外からの情報が遮断されていた時代が長く、閉鎖的な空気が未だに残っているという。東京藝術大学を油画専攻首席、美術学部総代として卒業し現在は同大大学院に通うスクリプカリウ落合安奈(おちあい あな)さんは、そんな日本とルーマニアにルーツを持ち、そのバックグラウンドに少なからず影響を受けたアーティストだ。今回Be inspired!は、そんなバックグラウンドからマイノリティや区別や差別、偏見に興味を持ち、作品でのアプローチを試みている彼女に、2020年にオリンピックを控えた日本が異なるバックグラウンドを持つ人たちが大勢来日するにあたって何に気をつけたらいいか、知らない文化についてどう想像力を働かせるべきなのか聞いてみた。意外にも共通点のあった、日本とルーマニア日本は江戸時代に国民に出入国制限をかけた“鎖国”をしていたことがあり、現在も「島国」であることから、外から入ってきたものに対して不寛容である側面がある。“日本人”とそれ以外を極端に区別したり、日本人の多様性を受け入れられなかったりするところだ。彼女自身が幼い頃に、外見的特徴や仕草が“日本人らしくない”と、いじめを受けたことがあったのもその一例かもしれない。一方ルーマニアは、1945年から1989年まで共産党一党独裁の社会主義国で、秘密警察が国民の思想や言論を監視し、統制が図られていた。そのような過去があるがゆえ、経済的に遅れを取ったという否定的な面はあるが、だからこそ中世ヨーロッパの趣が残っており「ヨーロッパのタイムカプセル」や「ヨーロッパ最後の中世」とも称される。そんなルーマニアに滞在していたときには、アジア人を軽視していて差別的でありながら褒めているつもりで「アジア人だけどルーマニアの血が入っているから美しいんだね」と言われたり、他のヨーロッパの国を旅しているときにはルーマニアのルーツを持っていることを話すと「ロマ*1の多い国か」と言わんばかりに苦い顔をされたことがあったりした。(*1)ヨーロッパを中心に分布している少数民族で、多くの地域で「よそ者」として排除されてきた歴史がある。現在も差別の対象となってしまっている彼らは、ルーマニア国内に多く暮らしている“ハーフ”に対する問題は日本で起きているもので、本当は当事者以外にも関係がないわけではないはずです。日本だから起こってしまっている問題なのに、その問題を見ようとしなかったり、自分のこととして考えられなかったりするだけなんだと思うんですよね。それをどうやって考えてもらえるように伝えるかを日々作品を作りながら考えています彼女にとって美術は、言葉で説明できない感覚や思いのはけ口としても機能している。それを含めた自身のテーマに興味を持ってもらえるよう、幾重にも工夫を重ねた作品を使い、当事者ではない人たちが気づいていないところまで思いを馳せられるようなきっかけを作ろうとしているのだ。たとえば『明滅する輪郭』と名付けた作品では、空気はどこでもつながっていて、他人が吐いた空気を自分が吸い込むことで「相手の成分」が自分の一部になる可能性があり、相手にとっても同様だということを表現した。自分と相手の“境界線”は曖昧で、自分は当事者ではないと思える事柄だって実際に関係ないとは限らないと暗示しているようだ。“明滅する輪郭” / “Outline to flicker”(2015)ビニール袋を人の顔に縫い付けることで「呼吸」を可視化させている“異なる価値観”に触れないと気づけない問題安奈さんに、日本の「多様性に対する認識の欠如」についてどう考えているのかを聞いてみると、自分と異なる価値観に触れてみないとわからない問題が多いという。たとえば、友人にベジタリアンがいて一緒に食事に行く機会があれば、選べるメニューが少ないというベジタリアンが直面する問題や、まわりがベジタリアンの友人のことを配慮して店を選ばなければならないというちょっとした問題にも気づく。安奈さんがフランスを訪れたときには、現地の学生と共同生活をすることがあり、体調を崩していたにもかかわらず彼らの文化である食後の団欒の場を離れようとしたら一部の学生から非難されたことがあった。相手の文化に従わなかったことにより起きる小さな摩擦を、彼女はリアリティを持って知ったのだ。▶︎オススメ記事・どこで生まれても“ハーフ”はつらい。24歳の混血児ラッパーが「社会への怒り」を前向きに発信する理由。・日本人なのに「日本語うまいね」と褒められます。私が「ハーフ顔」に生まれて“よかった”理由。All photos by Kotetsu Nakazato unless otherwise stated. Text by Shiori Kirigaya ーBe inspired!
2018年03月26日日本でもメイクアップアーティストには男性が少なくないし、「化粧する若い男性」がメディアで取り上げられることも今に始まったことではない。また世界では化粧品の広告に男性が登場したり、トランスジェンダーの人をフィーチャーしたコスメラインが発売されたりと、化粧品業界は排他性をなくしつつある。だがそれでも、未だ化粧品売り場は女性のものだと思われる傾向が強く、外見が「女性」に見られない人にとっては行きやすい場所ではないかもしれない。トランスジェンダーの人向けのメイクアップ講座を開いていたメイクアップアーティストが、そんな状況に危機感を感じて、ついに化粧品ブランドをスタートさせたという。トランスジェンダーの受刑者たちを思ってメイクアップアーティストでJECCA Makeupの創始者のJessica Blackler(ジェシカ・ブラックラー)は、同ブランドを立ち上げる前、男性の受刑者が入所している刑務所に服役している人から刑務所内でのメイクアップレッスンを頼まれたという。そこで彼女は女性と自認するトランスジェンダーの受刑者たちが、男性と自認する人たちと同室で過ごせなければならず苦しむ様子を目の当たりにした。JECCA Makeupの創始者のJessica Blackleそこで彼女たちに向けてメイクアップレッスンを行うことで、彼女たちをいい意味で結束させられたことから、トランスジェンダーのコミュニティに合った化粧品を作れないかと思いつき、ブランドの立ち上げにつながった。また、それにあたって所持品に制限のある刑務所でも使える機能的な化粧品として、手で直接塗ることができ肌の色のムラの補正ができるものをまず商品化したという経緯がある。商品を作ることで、社会を変える社会に浸透してしまった「化粧品は女性のためのもの」という固定観念を壊すためのアプローチの仕方はさまざまだが、性別を問わない化粧品のブランドや商品自体を作ることは、従来の化粧品が性別で人を排除している面を持っていることに気づかせ、「化粧品は化粧をしたい人すべてのもの」だと訴えるのに最適な方法かもしれない。商品が存在すれば、社会にその事実を認めさせ、それを使う人たちの需要があると証明しやすい。JECCA MakeupWebsite|Online store|Instagram|Twitter|Facebookジェシカ本人によるメイクアップレッスンを受けるコースも寄与のリターンとして選べるクラウドファンディングのページはこちら
2018年03月25日こんにちは。赤澤 えるです。思い出の服を持ち寄る連載『記憶の一着』、第5回です。たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って何だろう。それはどうして残るのだろう。それを手放す時ってどんな時…?服の価値、服の未来、ゲストのお話をヒントに考えていく連載です。▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちら本日のゲストは読者モデル・荒井愛花さん。151cmという小柄なスタイルを活かし、青文字系雑誌「mer」のモデルとして活躍する彼女は、インスタグラムで約14万フォロワーを抱えるインフルエンサー。私にとって大切な数年来の友人でもあります。「普段話さないような真面目な話がしたい」「包み隠さず正直なインタビューにしよう」と約束を交わして迎えた今日、彼女が選ぶ「記憶の一着」とは?える:私にとっても人生初のコラボとなった服。記憶の一着に選んでもらえて嬉しい。愛花:コラボをしようって話が決まった時、本当にデザインに悩んだ。えるはすごくこだわりがある人だけど、えると私はタイプが違うというか割と正反対の人間だと思う。えると違って私はどっちかというと強いこだわりがないタイプの人間。やるって決まったことに対してはこだわりを持つけど、生活する上での強いこだわりとかそういうのはあまりない。だからどうしようって。える:私からすると別にこだわりがない風には感じなかったかな。自分のしたいこと、自分が届けたいお客様、そこに対する自分のモノづくりっていうところにはこだわりがしっかりあるように見えたよ。この色は嫌だ!この形は違う!とか、はっきりしてた。愛花:つくるなら絶対にみんなが喜んでくれるものを作りたいと思ったし、初のコラボでとても緊張しているけど私がデザインした洋服がみんなの大切な1枚になったらなって思った。そこにはとてもこだわりました。える:この服をもし手放すとしたらどんな時?愛花:これは手放さないよ。えるはいつも「レベッカの服は飽きたら売っていいよ」って言ってくれるけど。それ本当に嫌じゃないの?える:私は、自分のブランドの服を売られるっていうことは決して嫌じゃない。転売行為は別としてね。私は1つの服に飽きちゃうのは仕方がないことだと思ってるの。でも、飽きたらゴミにするっていうのは絶対に違うと思ってる。愛花:それいつも言ってるよね。「飽きたら自分の名前が出るところで売ってね」って何回も言ってくれてる。ブランド始めた時からぶれないね。える:友達のブランドのものって、なかなか売りづらいと思うんだよね。フリマの機会があったとしても、周りから「え、友達の服を売ってお小遣いにするの?」って思われたくないだろうし、どうしても売りづらい。売りづらいから売れないってなると、匿名でフリマアプリに出す。それすら面倒くさいと、ゴミ箱に捨てる。私はそんなの悲しいから、飽きてしまったら堂々と売ってほしいんだ。愛花:ブランドの人がそんなこと言うのって、新しいと思う。える:自分の名前が出る時に売れば、受け継いだ人もお互いに顔が見えて喜びが増えるよね。どういう時に着ていたものかストーリーが伝えられれば尚更だし、その相手がファンの方ならもう言うこと無い。捨てたらただのゴミ。でも次の人に渡せば、その人の宝物にもなり得る。ファンの一言で、服への意識が変わった愛花:最初にモデルをやったのは大学3年生の時で、その時は本当に意識が薄くてまだ“仕事”という感覚ではなかった。「呼ばれるから行く」って感じ。それが楽しい時期でもあったし。でも、その時に洋服を整理してて「これ処分する〜 こんなにいっぱい〜」みたいなのをSNSに何の気なしに載せたら、「服の仕事をしている人がそういうことを言わないでください」って一般の方からリプライが来たの。その時が初めてちゃんと洋服のことを考えた瞬間だった。自分のやってることが仕事だって自覚もした。える:ドキッとしたんだね。愛花:この仕事をせずに普通に生活してたとして、要る服・要らない服って出てくるし捨てる機会だって多いと思うの。でも、自分はこういう仕事をしてるしちゃんと考えて行動しなきゃなって思った。だからフリマとか、後輩や友達にあげるとか、そういう機会を大切にしてる。える:叩かれるからもちろん載せないけど実は大量に捨ててるとか、断捨離ってタイトルをつけて正当化するとか、そういう人が多い中で“見えていなくてもちゃんとしよう”って姿勢は本当に素敵だなって思う。それでもやっぱり、持っている服って多いの?愛花:職業柄ある程度の量はあるし、普通よりは持っていると思う。「私服コーデ企画」とかあるし、自分の特集になるとそれが1ヶ月分とかだから。そういうのは服を持っていないとできない。フリマのために保管したりもしてるよ。える:意外だよね。びっくり。愛花:私は現場で1人だけOLさんのような格好をしてた。人見知りだから誰にも話しかけられないし、本当に孤独って感じ。それで自分で着なきゃいつまでもわからないなって思って、いつも撮影の時にあったコンバースを買ったの。える:今の姿からじゃ想像できない。じゃあ、その靴も“記憶の一着”だね。愛花:うん。雑誌で青文字モデルをたくさん見て勉強したから、今は参考にしてもらえるのが嬉しい。身長が小さいことしか武器がなかったけど、同じ低身長の方が応援してくれたりしてるし「読モをやってて良かったな」って思う。【編集後記】人生の中心となっている仕事をお互いに活かして挑んだ、人生初のコラボレーション企画。彼女はいつもSNSや雑誌で人気者な上に私の8倍もフォロワーがいるから、商品を作ることに対してこんなに悩んでいたとは正直思っていませんでした。今そして今までの“読モである自分”と向き合って出したデザインなんだと思うと、私も一層愛おしく感じます。ちなみに今日私が着ているのは、愛花と初めて出会った時に着ていたワンピース。二人で行った海外旅行にも着ていきました。さらに思い出が重なって“記憶の一着”として愛おしさが強まります。愛花にとってあのワンピースもそういう存在になると良いな。MANAKA ARAI(荒井 愛花)Instagram|Blog雑誌『mer』のモデル、さらには女優として活躍の場を広げる。身長151cmと小柄でもバランスの良いファッションに定評あり。instant GALAクラウドファンディングあの日、あの時、あの場所で、あなたは何を着ていましたか?「載せたら終わり」の新時代、載せても終わらないものは何ですか?服への愛着・愛情を喚起し、ソーシャルグッドなファッションのあり方を発信する、思い出の服の祭典。4月22日(日)渋谷WWW Xにて初開催です。
2018年03月23日アニメ好きは知っているかもしれない。2014年1月にYoutubeに投稿され話題をかっさらったアニメ、『せんぱいクラブ』。スウェーデンの高校生2人組によって作られたこのDIYアニメは、トーストを口にくわえて学校まで走る女子学生の姿やパンチラなど、“お約束”をもったいぶらずに盛り込んでいる。高校に入学した主人公が謎の「せんぱいクラブ」という部活に出会うところから物語は始まる。その部活にいるのは、ヒーローせんぱい、ロックンロールせんぱい、ボウルカットせんぱい、バンチョーせんぱい、お嬢様せんぱいなど、日本のカルチャーに親しみのある人ならクスッとしてしまうようなキャラクターたちばかり。日本のアニメをオマージュし見事日本のアニメファンを虜にして再生回数は投稿されてすぐ90万回に。2015年にはポニーキャニオンからDVDがリリースされた。このアニメの魅力はなんといっても片言の日本語。アニメ製作のためだけに日本語を学んだという作者の1人、Eric Bradford(エリック・ブラッドフォード)は高校を卒業し現在フリーランスとしてスウェーデンを拠点に働いている。そんな彼が今回日本に滞在中だというので、Be inspired!は話を聞きに行った。彼との会話から見えてきたのは、物心ついたときからインターネットが当たり前だった「デジタルネイティブ世代」の実態。教育も仕事も「既存の形にとらわれないDIYスタイル」が今後どんどん増えていくのかもしれない。エリック・ブラッドフォードー「せんぱいクラブ」の作者ということでまず最初におうかがいしておきたかったのですが、スウェーデンに「先輩」って概念はあるのですか?ないよ!日本国外の人は「先輩」って概念をアニメで知るんだと思う(笑)しかもすごく美化されていると思う。スウェーデンと日本では文化がすごく違うから一概には言えないけど、日本は階層的だし、「敬語」とか「タメ語」とかにわけられているよね。個人的にはスウェーデン式のほうがいいかな。「先輩」って概念がないのもそうだけど、スウェーデンみたいに「みんな平等」っていう価値観はいいと思う。日本の学校でそれがどう影響しているのかはわからないけど、仕事場では上下関係の度が過ぎることで知られているから…。ーまさに「せんぱいクラブ」は「先輩」を面白おかしく美化しているから、どう思ってるのか気になりました。「せんぱいクラブ」はアニメに出てくる「先輩」っていうコンセプトのパロディだから、現実の日本社会のシステムについては触れてないんだ。「せんぱいクラブ」は100%アニメの日本のイメージを元にしている。音楽が大好きだというエリック。中野のレコード屋さんでーそういうことだったのですね。『せんぱいクラブ』はもともと高校の授業の課題で作ったと聞きました。うーん、そうとも言える。スウェーデンでは、卒業するときに卒業制作があるんだ。僕はデザインプログラムをやっていたから、デジタルコンテンツクリエーションに関連した卒業制作にする必要があった。もともとゲームのプロトタイプの構想を練っていたんだけど、それはほったらかしにして放課後に「せんぱいクラブ」を作っていたんだ。それで、卒業制作の提出日の一ヶ月前にやっぱり「せんぱいクラブ」を提出しようって決めた。それにエッセイを書いて一緒に提出しようって。「せんぱいクラブ」のほうが新鮮だったし、基準を満たしていたから。無事卒業制作として通ったよ。ー1ヶ月前に卒業制作のテーマを個人のプロジェクトに変えられるのはスウェーデンらしいですね!日本だと難しそうな気もする。先生たちの反応はどうでした?気に入ってくれたよ。学校のプロジェクトのためにやっていたわけではなかったから、意欲的に取り組んでいたんだ。情熱を持って楽しみながらやっていたことだから。学校のプロジェクトだとそうもいかないよね(笑)ーその気持ちすごくわかります。高校ではデザインプログラムを専攻していたんですね。というか、高校に専攻があるんですね。世界でも教育基準が高いと有名なスウェーデンの学校教育について少し教えてください。スウェーデンの学校はいわゆる普通の授業ももちろんあるけど、専門性を持つこともできる。一般的には中学校ではあまり多くないかもしれないけど(僕は中学は音楽を専門にした学校に行っていたけど)、高校はプログラムベースで授業が構成されているんだ。僕のはITデザインプログラムだったし、兄はアートベースのプログラムだった。音楽プログラムもあるし、大学に行って弁護士になりたい人とかはハイレベルの一般教育のプログラムを専攻する。スウェーデンの学校には様々な専門コースがあって、一般教育も受けるけど、専門のコースだとそれぞれコースに特化した授業の量が多いってことだよ。僕は3年間で数学は一学期分しかなかったんだ。ー若いうちからリスクを感じることなくいろいろ挑戦できるんですね。今の話を聞いていて、スウェーデンでは時間をかけて自分がそのとき興味があることに挑戦できるからこそ、やりたいことが若いうちから見つかりそうだなと思いました。そうだね。他の国と比べたらスウェーデン人は若いうちからやりたいことがわかってる人が多いかもしれない。だからこそ大きな国ではないのに、世界的にみても成功しているクリエイターや起業家が多いのかも。スウェーデン社会は人々に機会を与えるのが上手かもしれない。特にクリエイティブな機会を。ーエリックさんは、今フリーランスでアニメーションやモーショングラフィックス、PV制作などを手がけるフリーランサーとして活躍していますよね。しかも大学には行かず、高校を卒業してすぐフリーランスとして働きはじめ、生計を立てている。スウェーデンならではの教育システムのおかげで今いる場所にたどり着いたと感じていますか?うーん、僕は個人的にはその恩恵を受けてないかも。大学にも行ってないし、僕は今知っていることは全部自分で学んだから。ー(!!!) ITの専門性の高い高校でスキルを学んだわけではないんですか?学校では正直何も学べなかった。高校で教えられたことって、中学の時に自分でインターネットで学んだことだったから。だから学校では時間を無駄にしているだけな気がしていた。でもそれは僕の個人的な体験で、ほとんどの人にとって、学校で学べることは多いと思うよ。でもだから個人的に、僕は大学に行く気がしなかったんだ。もしかしたら何か学べたかもしれないけど、高校は楽しくなかったし、何も得られなかったから学校ってものにうんざりしてた。だから高校卒業後すぐにフリーランスを始めて、日本にも留学したんだ。取材での「インターネットで学びたいことは学べるから大学行く必要は感じなかった」というエリックの言葉から、デジタルネイティブの真髄を垣間見た。もちろんインターネットでは学べないことだってたくさんあるが、もしもやりたいことを成し遂げるために必要なことがインターネットで学べるのであれば必ずしも既存の道を進む必要はないのかもしれない。インターネットが普及して以来人々のコミュニケーションや働き方は大きく変わってきた。教育や、教育に対する価値観も今後変わっていくのかもしれない。エリック・ブラッドフォードの新作アニメ『1000% Initiated! – Satellite Young (The Anime) – Episode 1』※動画が見られない方はこちらEric BradfordWebsite|Youtube
2018年03月21日三国志、長いです。こんにちは、カミーユです。去年からずっと、中国のドラマ『三国志』を観ております。大きな声では言えませんが、こっそり中国の動画サイトに無断でアップされてあるのないかなと思って、中国人の子に聞いてみました。いくつか動画サイトを教えてもらい、観ようとするのですが、サイトにアクセスすると何故か私のPCが異常な警戒音を発します。仕方ないので、TSUTAYAに貢いでいます。▶︎過去の連載記事はこちらから。1|2|3|4|5|6|7|8|9|10Photo by j_arlecchino異なる“死に方”を選んだ、私の「推し武将、推し天皇、推し作家」数ヶ月ほどだらだら見続けているのですが、先日ついに、私の推し武将、周瑜(しゅうゆ)が死にました。嗚呼、周瑜!!作品によって描かれ方は違うのですが、今作の中ではサイコパスとして描かれておりまして、サイコパスに目のない私はサイコ周瑜を非常に気に入っておりました。諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)をライバル視しており、でも決して追いつけず劣等感を抱くというキャラなのですが、死ぬときも病床でのた打ち回りながら、「天は俺を生んでおきながら、何故、諸葛亮も生んだのだ(既生瑜何生亮)!」と叫びながら憤死しました。嗚呼、憤死!Photo by Manuel Joseph周瑜の憤死を味わいながら、崇徳(すとく)天皇を思い出しました。崇徳天皇は私の推し天皇なのですが、色々あって島流しにされて怒り狂って舌を噛み切って「日本国の大魔縁となり、皇を取って民とし民を皇となさん」とかなんとかわけの分からないこと言って、最後は天狗になりました。嗚呼、崇徳天皇! で、崇徳天皇となると今度は三島由紀夫が連想されます。三島由紀夫は私の推し作家なのですが、彼の「春の雪」という作品が映画化されたときに、崇徳天皇の歌がモチーフとされていました。三島由紀夫の最期は、簡単に言えば、色々あって自衛隊駐屯地に乗り込んで占拠して切腹して自害しました。嗚呼、切腹! 死に方にも色々あります。周瑜は憤死、崇徳院は天狗、三島は切腹です。これって、大きくカテゴライズすると全て自殺なのではないかと思います。三島は明らかに自殺ですが、周瑜と崇徳院も自らを死(天狗含む)に追いやったわけでありますから、自殺の枠に近いでしょう。三島由紀夫Photo by DietrichLiao自殺を“絶対悪”と言い切る資格があるのでしょうか?となるとですよ、自殺って、絶対悪にされるものでしょうか。例えばですが、無双の武将として気高く生きてきた周瑜が諸葛亮にプライドをボコボコにされて、そんな彼に、「周瑜、ガンバ、恥辱にまみれてもいいじゃない、死なずに生きよう、にんげんだもの」なんて言えなくないですか。島流しにされた崇徳院に対して、「崇徳院、ガンバ、流刑でも天狗にならずにいいじゃない、にんげんだもの」とか言えなくないですか。私はちょっと言えないんですよね。何故なら死に方って、生き方と同じくらい個人の自由だと思うからです。 十代の頃、よく不法侵入していた近所の大学の図書館に、ストア哲学の本がありました。そこには、「ストア学派では、自殺は人間の自由の最高の表現であるとする」と記されておりました。この一節に、私は感動しました。有り難いことにこれまで自殺を願うことも実行することもなく生きて来られましたが、だからといって自殺を絶対ダメだと決めつけることには違和感がありました。それって、どうなの。生き方が自由なら、死に方も自由でしょ?きっと、生きられないほどの苦しみというのは、存在すると思うのです。英雄の挫折や作家の苦しみもそうであろうし、重病の辛さもそうです。そういう人に対して、自殺は絶対悪と言い切る資格は、果たして私達にあるのでしょうか。だってその苦しみを持っているのは、本人だけでしょう。本人しか知りえない苦しみであるのなら、それを知ったかぶりで諫めるのは驕りではないでしょうか。Photo by Giammarco Boscaroてゆうか、他者に対して自殺は駄目だと言い切るよりも、もうちょっと緩い言い方でいいんじゃないんでしょうか。私は自殺しないし多くの人(マジョリティ)は駄目って言ってるけど、決めるのはあなた次第、くらいでいいんじゃないでしょうか。なんかその方が自殺率減るんじゃないかという気がします。私は死なない、あなたは知らない。それでいいじゃないですか。自分の死に方くらい、自分で決めたっていじゃない、にんげんだもの。CAMILLE AYAKA (カミーユ 綾香)Facebook|Instagram北九州市出身。在日韓国人と元残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。警固インターナショナルの代表としてアジア各国を飛び回りつつ、十数言語による語学スクールとインバウンド支援の多言語ウェブサイト制作会社を運営する一方、難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動中。「マイノリティの爆弾」を「マジョリティ社会」に投げつけるために2017年5月から本メディアBe inspired!で連載中。Photo by Keisuke Mitsumoto▶︎オススメ記事・“平和ボケ”の日本人へ。社会がいう“正しい答え”ではなく、自分にあった答えを探すための冊子を作る若者・「当たり前」を疑わない人へ。「哲学」という“自由になる方法”を知った彼女が「答えも勝敗もない対話」が重要だと考える理由。Text by Camille AyakaーBe inspired!
2018年03月19日HIV/エイズと聞いて「死」を連想する人は近ごろでは少ないだろう。だが20数年前ならそうはいかなかった。その時代に死んでいったのは、イギリスのロックバンド クイーンのフレディ・マーキュリー、アーティストのキース・ヘリング、学者のミシェル・フーコー、俳優のジャック・ドゥミなどの著名人を含む多くの人々。社会派の映画を紹介する『GOOD CINEMA PICKS』では今回、そんな時代のエイズ問題を見て見ぬふりをする政府や、抗エイズ新薬の研究結果を出し渋る製薬会社と闘ったアクティビストたちを、ドキュメンタリーのようにリアルに、ハウスミュージックのビートを織り交ぜながら描いた映画『BPM ビート・パー・ミニット』をピックした。エイズ有効な薬が出回るようになったのは、1995, 1996年になってからだった。それまでは、HIV/エイズに対する理解が世界的になく、同性愛者に対する偏見が根強かったため「エイズ=ゲイ、薬物使用者、刑務所に服役している者、セックスワーカーの病気」と考えられており、対応が見送られてばかり。そんな状況下で生き残った者として、これ以上苦しむ人が増えないように、そして偏見をなくそうと立ち上がったのが、当事者を中心とした若者たち。ショーンが劇中でそう話していたように、もし自分が死んでしまったら遺灰をデモで蒔くような“政治的埋葬”を望む者たちも少なくなかったというくらいに、活動には命が捧げられていたのだという。なるべくワンテイクで撮り、“リアルさ”を追求した「ドキュメンタリーのように思えた」。そんな感想がこの映画に多く寄せられている。監督を務めたロバン・カンピヨ氏は、なるべく作り込みすぎない作品にしようと、ワンテイクで撮れるように指揮していたという。監督本人も、同作の舞台と同時代にACT UPに参加しており、その記憶から当事者たちを被害者として描くのではなく、“闘うアクティビスト”として描くことにこだわった。だがその一方で、当時は白人ばかりであったACT UPに、劇中では黒人を登場させるなど「包括的さ」の願いを込めた脚色がされているとも話している。(参考:VICE)また、一般的につまらないとされる「議論を交わすシーン」を、同作の重要なポイントとして幾度も入れているところが監督の挑戦といえるだろう。メンバーが過激な抗議行動に出たあと、それが正しいことだったのかを振り返って話し合ったり、デモでのアプローチの仕方を提案しあったりなど、活動の意味を再確認しながら、具体的にどう活動を進めていくべきなのかを真剣に議論している様子が見られる。▶︎オススメ記事・8作目:摂食障害、セクシュアリティ、鬱。ティーンエイジャーの友情と葛藤をパンクに描いた映画『チーム・ハリケーン』|GOOD CINEMA PICKS・7作目:偽善的な世の中に波紋を起こす。「命を奪うことを楽しむ人間」の姿を非批判的に描いた映画『サファリ』|GOOD CINEMA PICKSText by Shiori KirigayaーBe inspired!
2018年03月18日こんにちは。赤澤 えるです。思い出の服を持ち寄る連載『記憶の一着』、第4回です。たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って何だろう。それはどうして残るのだろう。それを手放す時ってどんな時…?服の価値、服の未来、ゲストのお話をヒントに考えていく連載です。赤澤える▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちら本日のゲストはミュージシャン・永原真夏さん。人気バンド「SEBASTIAN X」の活動休止後すぐにソロ活動をスタートさせ、今年3月には初のソロアルバムをリリースしたばかり。顔立ちからは想像のつかない力強い歌声と圧倒的な歌唱力を持つ彼女が選ぶ、「記憶の一着」とは?このライダースが“正装”真夏:このライダースはいつも着ているから、思い出を挙げようとしたらもうありすぎるんだけど…着ていて楽しかったなって思い出すのは、サンフランシスコに行った時のこと。夜は少し寒かったからこれを着ていたんですけど、昼は暑かったからつばの広い麦わら帽子をかぶっていたんです。ライダースと麦わら帽子を組み合わせている私を見て、街ゆく人が「最高の組み合わせだね!」って次々言ってくれたんです。雑な組み合わせになっちゃったと思っていたけど意外と関係ないのか!って、1つ自分のスタイルになったかもしれない。でももう、このライダースとの思い出はそれだけじゃなく色々あります。える:真夏さんにとってはトレードマーク的な存在ですかね。真夏:そうですね、定番です。寒かったら着る。私にとってはこれが正装でもあります。それを着るまでは何を着ていたかは…あれ、なんだろう、分からない…える:それだけこのライダースが自分にしっくりきて着続けているんですね。真夏:あ、でもその前の服が1つある!私、中学生の時に着ていたピーコートを20代になっても着ていました。多分、気に入ると延々と着るタイプなんです。好きなものがずっと変わらない。困ったなぁってくらい。える:物持ちが良いだけでなく、自分の定番を作るのが上手なんですね。真夏:でも、リリースの度にビジュアルや印象で変化を表現したい気持ちはあるんです。けど、自分の趣味が変わらないからもう仕方ないなって最近思い始めました。える:それってすごい良いところですよね。変えちゃいけないって思っていたり、誰かから指示されているわけじゃないんですもんね。真夏:好きなものが変わらないっていうのと不精な性格が合わさっているだけなんですけどね。これより好きなものがないっていうシンプルな気持ち。私はこれなんだ!っていう気持ちよりも、ただただこれより気に入るものが見つからないんだっていうだけ。える:おばあちゃんになっても着てるんだろうな。真夏:そうですね。でもこれ小さいから太らないようにしないと。ちょっと太ったらパツパツになっちゃうから(笑)でもね、この小ささが可愛くて。もしかしたら新しいのに出会えるかもしれないって思って探したこともあるんですけど、大きすぎたり長すぎたり、仲がボロボロだったり革の臭いが気になったり。結局これなんだなって思っています。もう自分に馴染んでる。最高の一着ですね。える:この服をもし手放すとしたらどんな時ですか?真夏:えー!手放さないです。最後まで自分の元が良いです。自分の子どもでも「自分で買いな」って言います。自分のスペシャルは自分で探してほしい。だからあげたりはしないかな。ひとりぼっちで聴いてほしいえる:あたたかいコミュニティですね。場所を作りたいっていうのはライブも含むと思うんですけど、真夏さんは自分の楽曲をどういう風に聴いてほしいですか?真夏:うーん、ひとりぼっちで聴いてほしいかな。自分の音楽の向き合い方がそうだったので。ライブハウスでは楽しんでほしいから自分も盛り上げたり煽ったりはするんですけど、自分がお客さんだったらその輪の中には入らないです。バーカウンターのところでじっとしているタイプ。ステージから盛り上げるのは大好きなんですけどね。私はみんなと盛り上げるのが好きなキャラクターだと思われがちなんです。歌がパワフルだと言われるからなのか、人見知りしないと思われているからなのか。そういう“パブリックイメージと実際の自分はイコールではない”っていうことにはもう慣れちゃったんですけど。える:ギャップがあるというのは散々言われてきたんですね。真夏:うん。そういうわけで、基本的にはひとりで聴くってことしか知らない。私はイヤホンやヘッドホンで聴いていたい。レコードやスピーカーでも、ひとりで。そうやって音楽に向き合ってきたから。だからライブを観に行っても盛り上がりたいって思ったことはないです。そういう場所で友達を作りたいって思ったこともない。むしろ誰とも友達になりたくないし、友達は少ない方が良いと思っています。でも、それでも友達になった人たちがいる。私がライブをするライブハウスってそういうところ。でもライブハウスに来る人たちって、実は誰も友達を作りたいと思って来ていないんじゃないかな…って思います。誰とでも仲良くなれてコミュニケーションが取れる人たちじゃなくて、誰もわかってくれなくていいやって思ってるんだと思う。それで「お前も誰もわかってくれないよな〜!」っていう出会いをする。わかってくれよ!っていうのが内心にあるとは思う。やっぱりはぐれた人たちが来るところだから。える:真夏さんの歌声を聴いている時に孤独を感じたことってなかったから、改めてひとりでじっくり聴いてみたい。精神的にひとりぼっちの時、どう聴こえるか感じたい。真夏:うんうん。そういう時とか、帰り道とかで聴いてほしい。《アルバム INFO》永原真夏「GREAT HUNGRY」instant GALAクラウドファンディングあの日、あの時、あの場所で、あなたは何を着ていましたか?「載せたら終わり」の新時代、載せても終わらないものは何ですか?服への愛着・愛情を喚起し、ソーシャルグッドなファッションのあり方を発信する、思い出の服の祭典。4月22日(日)渋谷WWW Xにて初開催です。
2018年03月16日新たな街へ旅をするとき、準備の仕方は人それぞれ。天気予報を見て洋服を選ぶ。行きたい場所を全てノートにまとめ、携帯のグーグルマップに星をつける。どのフィルムカメラを持って行くか悩み、フィルムロールの数をチェックする。もしくは何も計画せずにその旅に身を任せる。準備の段階からその人の旅のスタイルが見えてくるかもしれない。しかし、旅する人全員が共感できることが一つある。それは、旅先の真の姿を経験したいという気持ち。オーストリア、ウィーンには自分の街の「真の姿」を広めようとしている団体がある。それは、ホームレスが見せる街の素顔。アル中。ヤク中。「ホームレス」という言葉から浮かぶイメージホームレスについての世界的な調査をするのは簡単なことではない。誰をホームレスと定義するかが国ごとに違ううえ、各国の機関がすべてのホームレスを把握できていないのが現実である。2005年に世界中のホームレスの人口を調べる調査が国連によって行われ、その数は1億人*1といわれた。 (参照元:HOMELESSWORLDCUP)そして、日本では2015年に厚生労働省が調査した結果、6,541名と発表された。(参照元:Yahooニュース)(*1)国ごとが独自に調査を行い、それぞれの結果をまとめたものである。ここで考慮に入れなければならないのが国によってホームレスの定義が違うこと。ホームレスの定義が決まっていないとはいえ、ホームレスに対する固定観念は国を超えて共通している。ホームレスを目にしたときや、言葉を聞くだけで思い浮かぶイメージ。怠惰、薬物中毒者、アル中。ホームレスになった理由が何であろうと結局は、自業自得。そういったイメージで人をくくることは、その人独自のストーリーを単純化し、悪質なイメージを植え付ける。それだけではなく、その自己責任論は、世間のあり方、誰にでも起こり得る人生の転換や挫折などの様々な理由を無視することとなる。だから私たちは一人ひとりのストーリーを聞き、理解する必要があるのではないだろうか。スーパートランプスがホームレスの人をツアーガイドにするのは金銭的に困っている彼らにただお金を渡すことだけが目的ではない。様々な理由から世間に戻れなくなってしまった人に前へ進む最初のステップとなるチャンスを提供しているのだ。そのチャンスは過去の経験を隠すのではなく、尊重してこそあるもの。ホームレス生活という経験からしか知り得ない場所や知識、そして現実をツアーを通し伝えている。ガイドが自分自身の経験と想いからツアーを作成することで、ツアー参加者は街のホームレスに対する不十分な対策の現状が知れるだけでなく、そのパーソナルなストーリーに心動かされたり、共感が生まれたりする。欲しいのはお金ではないガイドはツアーを通し世間とのつながりも作ることができる。ホームレスである以上、世間は手を差し伸べる前に指をさし全責任を押し付けるか、壁を作り入れさせないことが多い。スーパートランプスの活動はホームレスになってしまった人が次の一歩を踏み出す為に自尊心を持つきっかけとなる。そして、参加者はユニークなツアーを楽しめると同時にガイドとの結びつきが社会問題への認識を高めるきっかけとなる。ホームレスになるのは誰にでも起こり得る現実であるからこそ理解し、助け合う必要がある。スーパートランプスのウェブサイトでは、ガイドを一人ひとりストーリーとともに紹介し、ツアーを通して彼らが伝えたいメッセージを掲載している。それを見て参加者は自身の興味に合わせて予約ができるのだ。Ferdinand (フェルディナンド)ツアー名:My Unexpected Hope (私の思いがけない希望)3年半のホームレス生活で知った、タダで服や食べ物をもらえる場所、気づかれずお手洗いを使える場所などを自身の人生をディープに語りながらまわるツアー。法律とホームレス事情をどのような形で変えていけるか話し合うことを心がけている。街とホームレスの共存人は街にある仕事の数、そして職種の多さから都市に集まる。だが、世界の人口、そして街の人口密度が増えるにつれ、土地の価格が世界中で年々上がっている。今まで支払いが可能だった家賃が上がり、ホームレスにならざるを得ない人がいるという例は少なくない。世界中の街では、ホームレスの人口が増えていくなかで「隠す」、「追い出す」が対策となっている。街に住む人もホームレスの姿を見ることに慣れてしまい、思いやりが薄まりつつあるかもしれない。だからこそ、スーパートランプスへの参加などを通して実際にホームレスの人と話し、わかり合う必要がある。そうすることで街の市民として「無視するべきではない」という責任が見えてくるだろう。ホームレスへの固定観念を捨て、新たな目で見るきっかけを生むスーパートランプスのような活動で、ホームレスと市民を差別化する街のあり方は変われるかもしれない。▶︎オススメ記事・“炊き出し”なんて時代遅れ。ホームレスに「タダで食事を与えない場所」が日本にも必要な理由。・「同情するなら、演劇を教えておくれ」。ホームレスの自尊心を取り戻す「英国ダンボール劇団」とは。All photos via SUPERTRAMPSText by Ami TakagiーBe inspired!
2018年03月16日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第7弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。自由とは、ルールの王様になること校則という城壁を前に中高生のわたしたちが選べる道は、二つ。従うか破るかしかありません。管理する側は、ルールを作ることで、従う者を褒め称え破る者を罰するという単純な基準を掌握することができるし、ルールを守る側は考えなくていいので楽チン。胸張って生きられるし。ルールを破る、一見自由に飛翔しているように見えるひとも、目の前でダメと言われたことを行えばいいだけなので、どちらにせよ、楽なのだ。みんなルールに圧倒され、縛られている。どちらに転んでも、ルールの奴隷だ。中学のわたしは、小ちゃい反抗なんかでは目の前にそびえ立つ絶対的なルールは落城しないと考えたのだ。自由は、そんなに簡単じゃない。ドイツの大哲学者カントは、人間の自律(=自由)は「自己立法」だと言います。誰かからあれこれ言われたことを無批判に行うのではなく、理性を行使し自ら立てた規則(ルール)に従うことこそ自由だと。ルールの奴隷になるのではなく、自らに課すルールをつくることだと。自由とは、ルールの王様になることなのだ。王様にも奴隷にもならず好きに生きればええやん、とも思いたいけど、やっぱりルールは必要。無法地帯では、ひとはひとと一緒にいられないから。他者と共存できないから。家族や友達関係や学校といった小さなコミュニティでも、大きな社会でも、ひとがひとといる限り、ルールは存在し続けます。「ひとを殺したいひと」「殺したくないひと」「殺されたくないひと」が共存するためには、まあ殺しちゃダメだろという決まりがないと、社会は成り立たない。決まりに従いながらも自由に生きるためには、「なんで殺しちゃいけないのか?」という理由を他者とともに考え、共有することが大事。奴隷制度を産み出してしまう原因は、ルールそのものにあるのではなく、押し付けがましさ思慮のなさ、そして、ルールの理由をそこで生きる他者と共有していないことにあるのではないでしょうか。「なんでスカートの長さを短くしちゃいけないの?」と勇気をもって先生に聞いたときに「校則だから」と言われたあの理不尽さを思い出します。先生も理由を知らない校則が学校に存在する状況は、ふつうに考えて、恐ろしい。学校も、生徒が納得できる校則を、生徒と一緒に作ればいいのにね。みんなで理由を考えながら。四月からの哲学対話の授業で、そんな授業もできたらいいなと、ふと考えました。▶︎オススメ記事・ある母親が“皆勤賞”を取った息子を授賞式に出席させなかった“優しい”理由・「メイクはマナー」という日本社会の“理不尽な常識”に反抗する日本人女性たち。All photos by Junko KobayashiText by Reina TashiroーBe inspired!
2018年03月15日フェアトレード、ダイレクトトレード、オーガニック、ベジタリアン、ビーガン、ゼロウェイスト、昆虫食、未来食…。東京の街に日々増えていく、お腹をただ満たすだけではない「思想の詰まった飲食店」。「ビーガンの友達と、ビーガンメニューのあるレストランにいきたい」、「サードウェーブの先を行くコーヒーが飲みたい」、「フードロスのないレストランに行きたい」、「無農薬野菜が食べたい」、「友達や恋人と健康的な食事をしたい」、「ストーリーのある食材で作られたものを食べたい」「地元の食材を食べたい」などなど。そんなニーズに答える連載。「食べることはお腹を満たすだけじゃない。思想も一緒にいただきます」、その名も『TOKYO GOOD FOOD』。フーディーなBe inspired!編集部が東京で出会える、社会に、環境に、健康に、あなたに、兎に角「GOODなFOOD」を気まぐれでお届け!第19回目の『TOKYO GOOD FOOD』は、米カリフォルニア州サンラファレル発のアイスクリームブランド、「Three Twins Ice Cream(スリーツインズ アイスクリーム)」を紹介する。
2018年03月14日2017年4月28日に渋谷にオープンした複合施設、「SHIBUYA CAST.」。都会のど真ん中にあるこの場所で、血縁にも地縁にもよらない「拡張家族」になることを目的に、共に暮らし、共に働く集団がいる。名前は「Cift(シフト)」。現在のメンバーは39名。半数以上が起業をしていたり、フリーランスのような形で働いている。ファシリテーター、弁護士、映画監督、美容師、デザイナー、ソーシャルヒッピー、木こり見習いなどなど、全員の肩書きを集めると100以上に。大多数のメンバーがCift以外にも、東京から地方都市、海外まで、様々な場所に拠点を持っていてその数も合わせると100以上になる。メンバーのうち約半数は既婚者で、何人かは離婚経験者。2人のメンバーはパートナーや子どもも一緒にCiftで暮らしている。そうした“家族”も含めると、年齢は0歳から50代にわたる。バックグラウンドも活動領域もライフスタイルも異なる39人が、なぜ渋谷に集い、なぜ「拡張家族」になることを目指しているのか。本連載では、CiftのメンバーでありこれまでにBe inspiredで記事の執筆もしてきたアーヤ藍が、多様なメンバーたちにインタビューを重ねながら、新しい時代の「家族」「コミュニティ」「生き方」を探っていく。アーヤ藍Photo by Jun Hirayama第3回目は、対話の場でみんなの意見を引き出したり、整理してコミュニケーションを円滑にしたりするサポートをするファシリテーターの丹羽 妙(にわ たえ)さん。最近は特に、企業内のコミュニケーションを活発化するためのワークショップ等を行っている。Ciftでもメンバーが集まって対話をする際にファシリテーションをしたり、アクティブブックダイアローグ(通称ABD)という読書法を用いた読書会を開催したりしている。また、Ciftのなかでも一番、人との物理的距離が近く、日常からメンバーにハグをしたり、マッサージをしたりと、身体的にふれあうことをよくしているのが丹羽さんだ。丹羽妙さんPhoto by Ai Ayah一人ひとりが意見を持ち寄り、世界を広げるファシリテーションアーヤ藍(以下、アーヤ):たえちゃん(丹羽妙さんのこと)はファシリテーションを仕事にしているけど、ファシリテーターとしてのキャリアを積み始めたきっかけは? 丹羽妙(以下、丹羽):10年前、学生のときに出会った「京都市未来まちづくり100人委員会」っていうプロジェクトがきっかけだね。京都でいろんな活動をしている市民、大学生から、地域の経営者やお坊さん、研究者、80歳のおじいさんまで、様々な立場・バックグラウンドの148人が集まって、京都の未来のために今したいことは何かを対話したの。そして、与えられた議題を決まり切ったスタイルで議論するのではなくて、参加者が自ら重要だと思うアジェンダをあげて、関心のある人同士で仲間を作り、実際にプロジェクトを起こして行く…っていう、参加者の主体性を最大限引き出すように考えられた形式の会なの。アーヤ:もともと拡張家族みたいなテーマは、たえちゃんにとっても大事だったんだ? 丹羽:「居場所」っていうのは私の人生のテーマだと思う。生まれてからしばらく、父母兄とイギリスで幸せに過ごしていたんだけど、2歳10ヶ月くらいのときに父親の病気がわかって急に日本に帰り、約1年の闘病生活ののちに死んじゃったんだよね。母親は2日に1回病院にいっていて、その間、祖父母に面倒をみてもらっていたんだけど、子どもながらに大変な状況だって分かっているから、母親が病院に行くときも「寂しい」とか「行かないで」って言わずに我慢してたみたい。 そのあと、そうやって育ててくれたおばあちゃんが、私が高校生ぐらいの時に認知症になったの。野菜炒めにクッキーを入れるとか、笑えることもあるんだけど、家族の間に不穏な空気が流れることも増えて…。大好きで尊敬している人が、別人に見えてくることはショックだったし、人間の脆さや不確かさを痛感させられた。それを家族に言うことが「できない」っと思って一人で抱えていたんだよね。 そういう原体験があったから、ずっと「世界は孤独で、誰も信用しちゃいけない」って心のどこかで思ってたみたい。中高生の頃から、張り切りガールな一方で、家では甘えたり、心の悲鳴を伝えられず、代わりに女子友達にベタベタくっつくみたいなアンバランスさがあったなあ。今もCiftでもよく人にくっついているけど(笑)。安心できる人に触れることで充電したり、何かを交流させたりすることを覚えたんだと思う。Ayah Ai(アーヤ藍)1990年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。ユナイテッドピープル株式会社で、環境問題や人権問題などをテーマとした、社会的メッセージ性のあるドキュメンタリー映画の配給・宣伝を約3年手掛ける。2017年春にユナイテッドピープルを卒業し、同年夏より「ソーシャル×ビジネス」をさらに掘り下げるべく、カフェ・カンパニー株式会社で精進中。
2018年03月13日