シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (14/28)
*画像はイメージです:近年は「終活」がテーマの番組もあり、この言葉を見聞きしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。終活と聞くとネガティブなイメージを持つかもしれませんが、前向きな気持ちで自分の人生の最期を決めたいという意志を持っていたり、家族の負担を減らすために行ったりとポジティブな側面も多くあります。終活にあたり、遺言書の作成や葬儀の方法、墓の形式などいくつか考えるポイントがありますが、今回は遺言書の作成について解説してみたいと思います。 ■遺言書とは遺言書とは、人が生前に死後の自分の財産の行方や身上の事項の処理などについて行う「言い遺し」あるいは「書き遺し」のことを言います(床谷文雄・犬伏由子編『現代相続法』186頁)。遺言がなければ、亡くなった人の法定相続人が法定相続分どおりに財産を相続することになりますが、遺言があれば、特定の相続人や相続人以外の第三者にのみ財産を相続させたり、遺贈することが出来ます。 ■遺言書の作成方法遺言の一般的な形式としては、遺言書の内容の全てを自署する「自筆証書遺言」と公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。自筆証書の場合、遺言どおりに財産を相続するためには、遺言者の死後に家庭裁判所で「検認」という手続を経る必要があります。一方で、公正証書遺言の場合には、「検認」手続を経る必要がないので、遺言者の死亡と同時に、遺言の内容に従って財産の相続手続をすることが出来ます。なお、自筆証書であれ公正証書遺言であれ、遺言書は、生前に何度でも書き換えることが出来ます。再婚をしたり、孫が出来たタイミングなどで、従来の遺言の内容を書き換えるというケースはよくあります。遺言が書き換えられた場合、新しい遺言が優先するので、新しい遺言と古い遺言が抵触する場合には、抵触する部分については、古い遺言は撤回されたことになります。 ■遺言書作成のポイント遺言によって、遺言者の財産を誰にどのように分けるかを自由に決めることが出来ますが、本来、遺言がなければ財産を相続することができたはずの相続人には、「遺留分」がありますので、遺言によって財産を取得した人は、遺言によって排除された相続人から、遺留分減殺請求権を行使される可能性があります。遺留分減殺請求権を行使されると、不動産は遺留分減殺請求権を行使してきた相続人との共有状態になり、預貯金等についても遺留分に相当する金額を支払わなければなりません。遺言者の死後、残された人たちの間で揉めることも少なくありません。トラブルが発生するのを防ぐためにも、本来の相続人の遺留分にも配慮した遺言内容にする必要があります。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*チータン.C / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月24日*画像はイメージです:兵庫県姫路市役所に勤務していた42歳の女性が、一目惚れした20代男性をモノにしようと、住民記録システムを不正操作し、印刷するなどしていたことが判明。さらにこの女性は記載された住所を頼りに男性の自宅を訪れ、勤務先と電話番号の書かれた手紙を手渡したそうです。恋は盲目といえばそれまでですが、かなりの問題行為であることは間違いありません。このような「個人情報の不正アクセス」が簡単にできてしまう環境にも、問題があると言わざるをえないでしょう。そうなると厳しく罰して欲しいところ。このような行動はどのような罪に問われるのか。法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。 ■どのような罪に問われる?「行為態様によっては別の罪が成立する場合もありますが、本件では報道のとおり個人情報保護条例違反ということになるのではないかと思われます。個人情報保護法の適用範囲に地方公共団体は含まれていないため、同法違反となることはありませんが、地方公共団体が条例を定めていれば、その条例違反ということになります。ちなみに、職員が第三者に秘密を漏洩した場合には、住民基本台帳法違反として、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります」(清水弁護士)やはり個人情報を不正に検索し、持ち出したということで、個人情報保護条例違反になるのですね。 ■被害男性が申し込みを受け入れていたら?今回は被害にあった男性が問い合わせをしたため、事態が明るみに出ましたが、仮に愛を受け入れた場合どうだったのでしょうか?法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺うと…。「男性が通報しなくても、個人の権利が侵害されるために罪とされているものではない以上、罪の成立には無関係であり、仮に男性が受け入れていたとしても、変わらず違法です。ただ、通報しなければ発覚はしなかった可能性はあると思います」(清水弁護士)いくら相手が好きだからといって、住民記録システムを不正操作し印刷するのは立派な犯罪行為。女性には猛省を促したいものです。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*primagefactory / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月23日*画像はイメージです:離婚する際、未成年の子の親権者になって、離婚後に元配偶者から養育費を支払ってもらっているという人は少なくないかと思います。それでは、離婚後に仕事をクビになってしまい、離婚したときよりも収入が減ってしまった場合、元配偶者に養育費の増額を請求することは出来るのでしょうか?この点について解説してみたいと思います。 ■どんな場合に養育費の変更が認められるのかまず、どういった場合に養育費の変更が認められるかですが、これは離婚後に“事情の変更”がある場合と規定されています(民法880条)。事情変更として認められるのは、子どもが大きな病気をしたり、進学したりすることで、特別の費用が必要になった場合や、義務者の収入が失業等で減少した場合、権利者の収入が増加した場合などとされています(冨永忠祐編・『離婚事件処理マニュアル』より)。この点、権利者(養育費をもらう側)の収入の減少によって事情変更が認められるのは、そのような状態がある程度続いていることが必要だと考えます。収入の減少が一時的なものに過ぎない場合には、事情変更には当たらないと考えます。 ■仕事をクビになったケースでは?仕事がクビになって収入が減ったとしても、再就職することで再び収入を確保することが出来ますので、失業状態が一時的なものに過ぎない場合には、事情変更として認められず、養育費の増額請求は認められないと考えます。なお、仕事をクビになって収入がなくなってしまった場合には、受給要件(本人に就職しようとする意思と能力があること、離職日以前の2年間に被保険者期間が12カ月以上あること)さえ満たしていれば、国から失業保険を受け取ることが出来ますので、再就職するまでの間の足りない生活費は、失業保険によって賄うということも考えられます。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月22日*画像はイメージです:昨今、偽の旧一万円札(聖徳太子像)を海外で製造し日本に密輸され、使用されるケースが増えているといわれています。旧一万円札は現行のものと比較すると偽造しやすいだけに、一部犯罪集団がつけこんでいるようです。このような偽札製造はどのような罪に問われるのでしょうか。また、旧札と現行の札では、偽造に罪の違いか出るか否かも気になります。星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお話を伺いました。 ■どんな罪になる?「刑法上148条の通貨偽造罪、偽造通貨行使罪となります。通貨偽造罪の目的は、通貨に対する社会の信用を保護することにあります。そのため、通貨偽造罪の対象は、“通用する貨幣”とされており、現在でも使用できるとされている旧紙幣の偽造であっても、処罰対象となります」(星野弁護士) ■旧一万円札と現行一万円札と比較すると罪に違いは出る?「刑法上適用される条文は同じですから、罪名としては同じであり、したがって、法定刑も同じです。また実際に下される判決についても、旧紙幣であっても現在も通用する以上、現紙幣の偽造の場合と比較して、それだけで有利な情状とはいえないでしょう。通貨として同じような通用力がある以上は、旧一万円札か現行一万円札かは、情状面で有利にも不利にも(罪が重くなるか軽くなるか)影響はないと思われます。むしろ、個別事案において、偽造の量や行使の有無、目的といった点が情状面で重要となるでしょう」(星野弁護士) 旧一万円札だからといって罪の重さが変わるわけではないようです。いずれにしても、紙幣偽造はやめるようにしてください。また、偽札を見かけた場合は、直ちに警察に届けましょう。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*freeangle / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月21日*画像はイメージです:今月14日、62歳の女性にストーカー行為をしたとして、46歳の女性が逮捕されるという出来事がありました。同性間のストーカー行為はあまり聞きなれないかと思いますが、どういった行為がストーカー行為とみなされるのかといった点と併せて解説したいと思います。 ■どんな行為がストーカー行為に認定される?ストーカー規制法は、ストーカー行為の規制とストーカー被害者への援助措置について定めた法律です。ストーカー行為とは、同じ人に対し「つきまとい等」を繰り返すことです。つきまとい等を繰り返した行った場合にストーカー行為として規制されるわけです。「つきまとい等」とは、好きになった人やその関係者に対して、以下の8つの類型の行為を行うことです。 (1)つきまとい・待ち伏せ・進路妨害・見張り・押し掛け(2)監視していると思わせるようなことを告げる(3)面会・交際等の要求(4)著しく粗野・乱暴な言動(5)無言電話・連続電話・ファクシミリ・電子メール(6)汚物・動物の死体等の送付(7)名誉毀損行為(8)性的羞恥心の侵害行為 ストーカー行為をした者は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる場合があります。ストーカー被害者は、警察にストーカー被害を申し出ることができ、警察は、ストーカーがさらにつきまとい等を繰り返すおそれがあると判断した場合、ストーカーに対しつきまとい等をしないよう警告することができます。ストーカーが警察の警告に従わなかった場合、公安委員会は、ストーカーに対し、つきまとい等を止めるよう命令することができます。ストーカーが公安委員会の命令に違反してつきまとい等をさらに繰り返した場合、ストーカーは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる場合があります。また、ストーカー行為規制法は同性間でも適用があります。同性間でもストーカー被害があり得、保護する必要があるからです。 ■同性間、異性間のストーカーによる違いは特にはないストーカー規制法は、同性のストーカーについて異性のストーカーと異なる規制を設けているわけではなく、特に違いはありません。ただし、実際上の問題として、同性のストーカーの場合、被害者自身ストーカー被害に遭っていると気づきにくい場合もあるでしょうし、また警察もある程度の事実がないとストーカーとして扱うのが難しいのではと思います。 ■警告を無視して繰り返すと逮捕に至るケースも執拗・悪質なストーカー行為を繰り返した場合です。警察からの警告を無視した場合だけでなく、被害者本人・弁護士等からの警告を無視して悪質なストーカー行為(例交際中に撮影した裸の写真の送付等)をした場合にも逮捕される可能性はあります。また、ストーカー行為が脅迫等の他の犯罪にも当たる場合逮捕される可能性は高くなると考えられます。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージです*奥川りな / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月20日*画像はイメージです:山尾 志桜里衆議院議員が、弁護士と不倫していたとの報道がされています。現在山尾氏の夫が激怒し、東京弁護士会に懲戒請求を行っていると一部で噂されています。この噂が事実であると仮定して、請求は通るものなのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 ■懲戒請求は通る?「弁護士に対する懲戒は、職務上の義務違反があった場合だけではなく、私生活上の行為であっても、品位を失うべき非行であれば、その対象になると理解されています(弁護士法56条1項)。この点、山尾さんも相手の弁護士も不貞行為があったことを否定しているので、弁護士会としても、懲戒審査の過程で、不貞行為がないと判断した場合には、単に二人で会っていたということだけでは品位を失うべき非行には当たらないので、懲戒の対象にはならないと考えます。また、仮に、弁護士会によって不貞行為があると認定された場合であっても、それだけで品位を失うべき非行に該当する可能性は低いと考えます。過去には、不貞相手から懲戒請求をされて、懲戒が認められたケースはありますが(ただ、単に不貞行為をしていただけではなく、既婚者である男性が未婚であると偽って交際していたという悪質なケース)、私が調べた限り、配偶者から懲戒請求をされて、懲戒が認められたケースはありませんでした。以上のとおり、今回、山尾さんの夫から男性弁護士に対する懲戒請求は認められる可能性は低いですが、立証次第では、男性弁護士への慰謝料請求が認められる余地はあると思います」(理崎弁護士) どうやら懲戒請求が認められる可能性は低いようです。 ■弁護士が不倫したら慰謝料は高くなる?今回一部で批判されているのが、山尾議員のお相手が不倫問題を扱っていた弁護士であるということ。このような場合、慰謝料は高くならないのでしょうか?同じく高島総合法律事務所の理崎智英弁護士にお話を聞いてみると……。「慰謝料の金額は、不貞期間、不貞回数、婚姻期間、配偶者との間の未成年の子の有無等から総合的に判断されますが、不貞相手の職業は関係ありません。そのため、不貞相手が弁護士だからといって、慰謝料の金額が高くなるということはありません」(理崎弁護士) 一般的な心証は良くなくとも、基本的に不貞相手の職業は慰謝料金額決定のポイントにはならないのですね。大きな社会的な制裁を受けることにはなりそうですが……。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*AlessandroBiasciol / Shutterstock
2017年09月19日*画像はイメージです:皆さんは病院を探したいと思ったとき、どのようにして探しますか?きっと、スマホやパソコンでネット検索をするという人が多いのではないでしょうか。その中で、病院のウェブサイトを閲覧される人もいらっしゃると思います。しかし、そんな病院のウェブサイトの内容が今後はガラリと変わるかもしれません。 ■これまで、病院のウェブサイトは法律の規制の対象外だった病院の広告は、医療法という法律とその関連法令によって、その内容に規制がかけられています。具体的には、虚偽広告の禁止、比較広告の禁止、誇大広告の禁止、広告可能な事項の限定などです。しかし、これまで病院の“ウェブサイト”は、このような規制の対象外とされてきました。それは、規制の対象となる広告は、以下の3つの要件を満たすものに限られていたからです。(1)患者の受診を誘引する意図があること(誘因性)(2)病院名が特定可能であること(特定性)(3)一般人が認知できる状態にあること(認知性)このうち、(3)の認知性とは、特に病院に興味がない人の目にも広告が飛び込んでくる状態のことを指します。そうすると、ウェブサイトは自分で検索して見つけ出さないとその人の目には飛び込んできませんから、広告に当たらないとされていたのです。 ■医療法の改正によりウェブサイトも規制の対象にしかし、インターネットの普及とともに、特に美容医療関係について、病院のウェブサイトに関する消費者トラブルが増加してきました。その結果、病院のウェブサイトについても、国から「医療機関ホームページガイドライン」が公表され、その記載について指針が示されましたが、法的拘束力はありませんでした。その結果、今年の国会で、医療法の改正が行われ、遅くとも来年の6月には、病院のウェブサイトも広告規制の対象に含まれることになりました。一方で、上記のように、広告規制の内容として広告可能な事項が限定されているのですが、これをそのままウェブサイトに当てはめると、有益な情報まで記載できなくなってしまうとの懸念があります。そこで、ウェブサイトについては、今後の議論で、広告可能な事項が広げられることになっています。その結果によって、今後病院のウェブサイトの内容がどの程度変わるかが決まることになるでしょう。 ■病院がウェブサイトを作成する際の注意点医療法が病院の広告を規制しているのは、(1)医療は人の命にも関わるものであるため、不当な広告によって不適切な医療を受けたりすると、大きな被害が発生する可能性があること、(2)医療は専門的な分野であり、人々が病院の広告から何が良い治療かを取捨選択することは難しいことが理由です。そのため、今後は病院のウェブサイトに対する行政からの指導も厳しくなってくるでしょう。これから病院のウェブサイトを作成する際には、きちんと医療法による広告規制に違反しない内容を記載していく必要があります。 *著者:弁護士 成 眞海(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。取り扱い分野は、離婚から企業法務まで幅広く対応。)【画像】イメージです*saki / PIXTA(ピクスタ)医療法改正により病院のウェブサイトにどんな影響が?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。医療法改正により病院のウェブサイトにどんな影響が?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2017年09月18日*画像はイメージです:昨今、国会議員や芸能人の不倫問題がメディアを賑わせていますが、その際、当事者からは、ホテルでは仕事の打合せをしていただけで「一線を越えていない」という言い訳がされることが多いと思います。「一線を越えていない」とは性行為はしていないという意味だと思いますが、それでは、そのような言い分は、配偶者からの慰謝料請求の裁判や、配偶者との離婚裁判において、抗弁として通用するのでしょうか? ■不貞行為がなければ慰謝料請求の対象にはならず離婚もできないまず、基本をおさらいしますが、もし本当に一線を越えていなければ、つまり不貞行為(≒性行為)がなければ、基本的には慰謝料請求の対象にはなりません。また、離婚が出来るかどうかですが、法律が離婚を認める場合は5つあり(民法770条1項)、その中に相手方の不貞行為がありますが、不貞行為がなければこの理由を根拠に離婚をすることはできません。 ■「一線を越えていない」発言、裁判所はどう判断?それでは本題の「一線を越えていない」との当事者の言い分を裁判所がどう判断するかについてです。この点、不貞行為があったかどうかについて争いがある場合には、慰謝料の支払いや離婚を求める当事者としては、不貞行為の存在を立証する必要がありますが、不貞行為を立証するための証拠としては、不貞行為を撮影した写真やビデオ、二人でホテルに入っていくところを撮影した写真、メールやSNSでの会話の内容等があります。そのため、当事者がいくら「一線を越えていない」などと言い訳したとしても、二人で新幹線の座席で手をつないでいる場面の写真や、同じホテルの部屋や相手の自宅で朝まで過ごしていたといった事情や証拠があれば、不貞行為ありと認定される可能性が高いでしょう。一方で、慰謝料や離婚を請求されている当事者としては、不貞行為ありとの認定を覆すためには、ホテルの部屋や相手の自宅で仕事の打合せをしていたという客観的な事情を主張するとともに、信用力の高い証拠(打合せメモ、第三者の証言等)を提出して争うことが考えられます。ただし、仕事の打合せは必ずしも夜にホテルや相手の自宅でする必要はないので、仕事の打合せをしていたとの言い分を裁判所に認めてもらえる可能性は高くはないでしょう。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです* MJTH / Shutterstock
2017年09月17日先日、ある企業がタバコを吸わない社員に対し、6日間の休暇を与える方針を打ち出したことが話題になりました。制度の目的は、社員の禁煙促進やいわゆる“タバコ休憩”を取る社員と取らない社員の公平性を保つことなどであると思われますが、喫煙者としては納得がいきません。給与はともかく、労働条件は同じであるべきのようにも思えます。このように非喫煙者だけに特典を与えるような制度は、問題ないのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 Q.非喫煙者に特別休暇を付与…これは違法ではありませんか?*画像はイメージです:違法とはいえないと思われます。「結論からいうと、法律上明確な問題はないと考えられます。労働者の待遇については労働基準法3条が次のように規定しています。 「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」 まずこの中の「喫煙者である」という事情は、「労働者の国籍、信条、社会的身分」に直接的には該当しないため、その差別的取扱いが合理性を伴い、かつ公序良俗(民法90条)に反するなどしない限り、違法とされるリスクは低いと思われます。そこで、本件でも非喫煙者にのみ6日間の有給休暇を与えることが公序良俗に反するかどうかを考えてみましょう。喫煙者は、非喫煙者とは異なり、タバコ休憩として職務を離れている時間が結果的に長く、それらを換算した時間数に相当する日数分の休暇を与えることは、合理性を伴っていると考えられます。従業員間の労働時間の公平性を保つために、年次有給休暇として喫煙者がタバコ休憩をしている時間1年分を下回る程度の日数を与えることは、公序良俗違反とまではいえないでしょう。さらに、喫煙者は喫煙をやめることによって6日間の有給を取得でき、喫煙者自身の意思によって有給の取得を放棄し、喫煙による離席という選択ができることからも、やはり不合理な差別とまではいえないでしょう。そのため、非喫煙者にのみ有給を6日間追加で与えることは公序良俗に反するものではなく、法的には許されることになりそうです」(大達弁護士) このような動きが広がれば、喫煙者が減るかもしれませんね *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Ushico / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月16日*画像はイメージです:企業ではセクハラなど会社に重大な損失を与える行為をした、犯罪をした社員に対し、懲戒処分を前提とした「自宅待機命令」を出すことがあります。会社は当該社員を自宅で待機させた上で、事実関係の調査や処遇の考慮などを行うことが一般的。懲戒処分相当の行為をしたことが事実であることが確認できた場合は、相応の処分が下されることになります。 ■賃金はもらいたいところ……労働者側としては懲戒処分相当の行為をしてしまった場合は、会社の決定に従わざるを得ません。「クビ」といわれて辞めさせられることもあるでしょう。しかし、自宅待機命令については、会社が「来るな」と言っているわけですから、労働者側としては、待機中の賃金を支払ってもらいたいところ。会社側としてはもちろん、支払いたくはありません。セクハラなどの重大行為で懲戒処分を検討している社員に対して自宅待機命令を出した際、企業は賃金を支払う必要があるのか。社員は賃金をもらうことができるのか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 ■自宅待機命令期間中賃金はもらえる?「セクハラが事実で懲戒処分が相当であれば、自宅待機中の賃金は貰えないのが普通です。懲戒処分とは、企業が秩序を維持するために従業員の規律違反・秩序違反に対して行う制裁のことです。セクハラは企業秩序を乱す職場規律違反と考えられますから、就業規則で「職場規律違反」を懲戒事由、「出勤停止」を懲戒の手段の一つと定めていたのであれば、セクハラを理由として自宅待機命令を下すことができます。この場合、セクハラを行った従業員は、会社から自宅待機を命じられたことで労務を提供できないわけですが、職場規律に違反し自業自得ですのでその間の賃金請求はできない、働いていない以上もらえない、ということになります。ただし、懲戒処分は相当なものでなければならず、懲戒事由と比較して不相当に重い処分は無効ですので、セクハラの内容からして不当に長い自宅待機の場合、相当な自宅待機期間を超える期間の分の賃金は請求できると考えます」(冨本弁護士)従業員の犯した行為や就業規則などが、考慮ポイントになるようです。素人には判断のつきにくい事案ですので、弁護士に相談するのがベストかもしれませんね。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月14日*画像はイメージです:財産分与は、簡単にいえば、夫婦が協力して築き上げてきた財産を精算して夫婦でわける制度のことです。離婚の際に養育費や親権の話などと一緒に話すことになると思いますが、今回は財産分与の基本と財産分与を有利に進めるポイントについて解説していきたいと思います。 ■財産分与ってどのタイミングで話し合う?財産分与は離婚とセットで話されがちですが、離婚が決まって初めて財産分与が問題になるものですので、離婚が決まらないうちに財産分与だけを取り上げて問題にすることはできません。離婚について合意ができない場合には、離婚したい側が、離婚訴訟で“離婚+財産分与”を求めることになります。また、財産分与は離婚する際に同時に行うことが多いですが、離婚した後から請求することも可能です。離婚後に財産分与についての話し合いがまとまらない場合には、調停や審判を申し立てることになります。離婚時から2年を経過すると、財産分与を請求することはできなくなってしまうという期間制限がありますので、その点をよく注意しておく必要があります。 ■財産分与の対象になるのは?財産分与の対象となるのは、“夫婦が協力して築いた財産”です。一般的には、別居した後は夫婦の協力関係が失われてしまいますので、婚姻期間中かつ別居するまでの期間に形成された財産が、財産分与の対象になります。別居しないまま、あるいは単身赴任状態のまま婚姻が破綻したような場合には、“協力して財産を築き上げてきたといえるのはいつまでか?”ということが夫婦間で争われることも多いです。夫婦のどちらかの名義になっている財産や、あるいは子どものような第三者の名義になっている財産であっても、その財産が夫婦の協力で築いたものだといえるならば、財産分与の対象になります。名義の関係では、たとえば“夫が経営する会社の名義になっている財産が財産分与の対象になるか?”といった点が実務上争いになります。以上述べたことの裏返しとして、そもそも夫婦の協力で築いたものではない財産は、財産分与の対象にはなりません。このような財産を特有財産といいます。 ■特有財産ってどんなものがある?特有財産の典型例は、婚姻する前に形成した財産や、婚姻中に自分の親から相続した財産などが挙げられます。特有財産を元手に獲得した財産も特有財産になります。たとえば、親から相続した不動産から得られる賃貸収入は特有財産になりますので、財産分与の対象外ということになります。ちなみに、法律上は「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」とされています(民法762条2項)。そのため、“この財産は特有財産だから財産分与の対象にならない”と主張したいのであれば、その人の側で、問題の財産が特有財産であることを証明していかなければならないことになります。 ■財産分与を有利に進めるためのポイント財産分与を有利に進めるためのポイントは次のとおりです。(1)相手方がどのような財産をどこに持っているのかを把握するたとえば、妻が夫に財産分与を求めたいと思っているという場合を考えてみます。実際に財産分与を求めた場合に、どのような財産があるかを夫が正直に全て話してくれれば、それぞれの財産をどのように分けようかという話に進みます。しかし、夫が財産を隠してしまい、妻がそれに気づかなければ、その財産は財産分与の対象から漏れてしまうことになります。なお、調停や審判を申し立てれば、裁判所が色々調査してくれるのではないかと誤解している方もいらっしゃいますが、たとえば夫が銀行預金を隠しているのではないかという場合なら、どこの銀行の何支店の口座なのかという程度は最低限判明していないと、裁判所を通じた調査依頼(=調査嘱託)をすることもできません。したがって、常日頃から相手方に届く郵便物をチェックしておくなどして、どのような財産をどこに持っているのかを把握しておきましょう。 (2)財産形成にどれだけ寄与したか、生活史をまとめる財産分与の話し合いがまとまらずに審判となる場合、財産分与のときの分与割合は2分の1ずつというのが原則です。しかし、たとえば夫の特殊な才能で財産を大きく増やせたというような場合には、夫に有利に分与割合が修正されることもあります。もっとも、そのような場合であっても分与割合が修正されないケースもあります。分与割合を修正してもらいたいのであれば、自分がどれだけ努力をして、それがどのように財産形成に寄与してきたのかについて裁判官を説得できるだけの主張立証を行う必要があります。したがって、あらかじめ資産を形成した過程をまとめておくと役に立ちます。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージですsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月13日*画像はイメージです:月30日、SNS『GREE』内で自分になりすまし、他人を罵倒する書き込みをされたとして、長野県に住む男性がなりすまし実行犯に対し、723万円の損害賠償を求めた裁判の判決が大阪地裁で行われました。その中で裁判長は「社会的評価を低下させ、名誉権を侵害した」として、被告側に130万円を支払うよう命令。「なりすまし」行為で名誉権侵害が成立することが、司法によって認められることになりました。 ■なぜ723万円が130万円に減額された?今回の判決で、なりすまし行為が名誉権侵害であることが認められましたが、723万円の損害賠償請求額が130万円に大幅に減額されたことも事実。被害者としては納得がいかないかもしれません。なぜこのような金額になったのでしょうか。インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。「賠償額については、慰謝料と認容額の約1割分が「弁護士費用」として認められるのが通常の実務です。慰謝料額についてはこれまでの蓄積から概ね30~100万円程度の間で、裁判官の心証により認定されることが多いです。なお、これらのほかに、インターネット上の権利侵害の場合には誰がやっているか不明であるため、発信者情報開示請求が必要になり、そのために調査費用(弁護士費用)がかかることになります。これについても認めてもらえる方向になってきていますが、報道だけからは、この件でそれが認められているかは明らかではありません。ただ、金額が比較的高いことからすると、認められていると想像されます」(清水弁護士)今回の損害賠償額は、過去の判例から見ると、一般的な金額といえるようです。 ■なりすまし被害に遭った場合どのように犯人を特定する?TwitterやFacebookなどでは、たびたびアカウントが乗っ取られる事態が発生し、誰にでも「なりすまし」をされるリスクがあります。仮になりすましを受けた場合損害賠償請求を行うことができることは分かりましたが、どのようにすれば相手を特定できるでしょうか。法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に方法などをお伺いすると……。「なりすましの場合、それだけでは一般的には権利侵害とはいえないですが、名誉毀損やプライバシー侵害がある内容が含まれていれば、それを理由にして発信者情報開示請求を行うことで特定することができる余地があります」(清水弁護士)「なりすまされただけ」では一般的に権利を侵害しているとはいえませんが、名誉毀損やプライバシー侵害に遭った場合は、それを理由に発信者開示請求を行い、犯人を特定できる可能性があるそう。そうはいっても、自分が受けている被害が名誉毀損やプライバシー侵害にあたるかどうかは、判断のつきにくいところ。まずはインターネット問題に精通した弁護士への相談してみることが、第一歩といえるでしょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Pretty Vectors / Shutterstock
2017年09月12日*画像はイメージです:日本の女性モデルは、世界と比較すると「痩せすぎ」であるという指摘があります。これは日本人が「痩せていることが美しい」という価値観を持っているためだと思われます。そのため、モデルたちは太らないよう食事制限などを行いますが、なかには行き過ぎて拒食症や摂食障害になることもあり、問題化しています。 ■モデルや芸能人に「痩せなければクビ」と命令するケースも美しいことをウリにするモデルや芸能人だけに、体型を維持するよう努力するのはあたりまえであるという考え方があります。そのため、競争勝ち抜くために、体型の崩れが目立つモデルには、事務所から「痩せなければクビ」などと、実際に解雇する気があるのかは別にしても、発奮を促す意味でそのような言葉をかけることがあるようです。また、TV番組などでも「○○キロ痩せなければMC降板」などと銘打ち、ダイエット企画が放送されることがあります。見ているほうは面白いでしょうが、言われたほうはたまったものではありません。このような「痩せなければクビ」という命令は合法なのでしょうか。また実際に痩せることができなかったとして当該モデルを解雇した場合、違法性を問われないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 ■「痩せなければクビ」は違法?「合法(解雇が有効)となる場合もあると考えます。まず、労働者の解雇について、一般論を確認いたしますと、労働者が契約社員の場合、契約期間が定められており、その契約期間中は簡単に労働者を解雇できません。どうしても解雇したい場合には「やむを得ない事由」が必要です(民法628条・労働契約法17条1項)。労働者が正社員の場合、契約期間の定めはありませんが、労働者を解雇する場合には、まず原則として30日前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払わなければないとされています(労働基準法20条1項)。そして、解雇予告・解雇予告手当の条件を充たせば解雇が有効かというと、必ずしもそうではなく、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするとされています(労働契約法16条)。つまり、労働者の解雇は簡単に認められるものではありません。また、男女雇用機会均等法は性別を理由とする差別はもちろん身長・体重を理由とする差別も禁止しており、合理的な理由がある場合でなければ特別な取り扱いをしてはならないとしています(男女雇用機会均等法7条・同法施行規則2条1号)。以上、一般論から言えば、そもそも労働者の解雇自体簡単には認められないし、さらに身長・体重を理由に差別的取扱いをするのも問題があることになります。ただし、「やむを得ない事由」・「客観的合理的理由」・「解雇の社会通念上の相当性」が認められれば解雇は有効ですし、体重を理由とする差別的取り扱いについても「合理的な理由」があればこれも有効です。モデルの場合、職業の性質上ルックスが条件とされるのは仕方のないことだと思いますので、例えば、事務所から適切な食事制限・運動を指示されたにも関わらず従わず、隠れて間食を続け、あるいは運動をさぼり、その結果ルックスを維持できなくなったような場合、「やむをえない事由」・「合理的な理由」があるとして解雇が有効となる場合もあるのではと考えます」(冨本弁護士)モデルという職業の性質上、事務所からの指示を無視する形でルックスや体型維持を怠った場合は、解雇が有効となる場合も考えられるようです。華やかなモデル業界も、厳しい世界なのですね。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*tomos / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月11日*画像はイメージです:スマートフォンの普及により、ここ数年で皆さんの生活環境は全く新しいものに変わったかと思います。気軽に知りたい情報を調べることができる、いつでもどこでもコミュニケーションを取ることができるなど、便利な世の中になりましたね。一方で、利便性が高まった陰で新たなトラブルも多く発生しております。今回はそういった新しいトラブルのうち、恐喝と脅迫に絞って対応方法などを解説したいと思います。 ■一般人から受ける恐喝や脅迫が大半を占めている皆さんが想像する恐喝や脅迫というと、暴力団をはじめとする反社会的勢力といわれるような方々から受けるものというイメージではないでしょうか。たしかに、そういった恐喝や脅迫もあるでしょうが、昨今相談を受けるケースは、スマートフォンが普及したことが一つの要員となって全くの一般人から受けるものがその大半を占めております。例えば、“リベンジポルノ”です。不特定多数の人間が閲覧することのできるウェブサイトへの投稿をほのめかし、金銭や自己の要望を実現しようとするものや、単純に復讐目的者ものなど多くご相談を受けます。また、いわゆる“美人局”をはじめとする出会い系サイトでのトラブルも多く見受けられます。 ■警察へ相談で対処することは難しいこういったトラブルの対処のため、皆さんが最初に思いつく方法には何がありますでしょうか。おそらくほとんどの方は警察へ相談するという方法を挙げられるかと思います。もちろん、事態が悪化する前に予防的に警察へ被害相談をすることは必須といえます。ですが、警察は恐喝や脅迫の明確な証拠がなければすぐには動いてくれません。その意味では警察に対処を期待することはハードルが高いといえるでしょう。インターネットで検索をすると、恐喝や脅迫などのトラブルに対応するサービスを提供する調査会社(探偵)もいるようです。たしかに警察へ対処を求めるよりハードルは低いと思われますが、調査を目的とする調査会社が一体どのような方法で恐喝や脅迫に対応するかいまいち不明確ですし、法的紛争への対応を有償で取り扱えば、いわゆる非弁行為として弁護士法に反することにもなるため、どこまでの対応が期待できるか疑問も残るところです。 ■加害者と被害者の接点を無くすことが大事弁護士による対応は、恐喝や脅迫をしてきている相手方に対し、電話や書面などにより代理人にしたことを通知し、本人への連絡(実家や職場など本人の関係先への連絡も含む)を控えるよう申し入れします。恐喝や脅迫対応の最大のポイントは、“揺さぶりをかけてくる相手方との接点を解消すること”です。脅迫文言もこちらに届かなければ冷静に対処できるわけです。具体的な準備では、相手方と接点を持つ際には、録音などによって証拠を保全し、訴訟や警察への相談の準備をします。相手方が、弁護士の頭越しに本人や関係先に連絡を継続するようであれば、その都度警告をしながら、必要に応じて警察への介入も求めます。相手方から何らかの要望があるとき、それが法的に妥当であれば、妥当な範囲で応じることを検討し、不当であれば拒否し続けます。過去の経験でいえば、弁護士が介入した後には多くのケースで脅迫行為は止みます。暫くは弁護士宛に嫌がらせや荒唐無稽な主張が続くこともありますが、それも時間が解決します。物理的に100%のブロックができる訳ではないため限界はありますが、少なくとも脅迫され続けて判断能力を奪われがちな状況からは解放され、冷静に状況を分析したうえで必要な対処ができます。 恐喝や脅迫に及んでくる人物は、とにかく弱みにつきこみながら、時間を区切り、焦らせて自分の要求を通そうとしてきます。冷静に対処すれば恐れる必要はありません。お困りのときは、お気軽に弁護士にご相談ください。 *著者 弁護士:若井 亮(不動法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)【画像】イメージです*AFPics / Shutterstock
2017年09月10日*画像はイメージです:天理市長が公務で東京に出張中、派遣型風俗を利用したことが話題になっています。同氏は自費で利用したことや、報じられていたような禁止行為を要求したことはないとのことですが、一部には公務で訪れたホテルで派遣型風俗を利用するのは市長にふさわしくないという声もあり、意見がわかれているようです。 ■企業にマイナスイメージを与える社員も存在出張中に派遣型風俗を利用することの是非はさておき、天理市長が一部の有権者にマイナスイメージを与えたことは間違いないようです。一般社会の場合、出張中所属企業にマイナスイメージを植え付けるような振る舞いをした場合、会社から処分を受ける可能性があります。それが続けば、懲戒免職処分などもありうるかもしれません。それはある種致し方ないと思われますが、企業に迷惑をかけないまったく個人的な「素行不良」が続いた場合はどうなるのでしょう?会社は当該社員に罰則や解雇などの処分を下すことができるのでしょうか?銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士にお聞きしました。 ■業務時間以外の素行不良社員に罰則や解雇などの処分を下すことはできる?「実務上、懲戒処分は従業員の企業秩序違反行為に対する制裁であると捉えられているので、私生活上の非行に対して懲戒処分をすることもできることになっています。会社に関係なく、破廉恥な行為を行ったような場合、懲戒解雇になった事例をよく聞くことがあると思います。ただ、あまりにも会社が従業員の私生活に首を突っ込むのは、私生活における行動の自由を不当に制限することになるので、その辺の限界は重要なポイントになってくるかと思います。この点、判例は以下の様に判示しています(最判昭和49年3月15日、日本鋼管事件)。「営利を目的とする会社がその名誉、信用その他相当の社会的評価を維持することは,会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから,会社の社会的評価に重大な影響を与えるような従業員の行為については,それが職務遂行と直接関係のない私生活上で行われたものであっても,これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない」としつつ,「しかして,従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには,必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが,当該行為の性質,情状のほか,会社の事業の種類,態様,規模,会社の経済界に占める地位,経済方針及びその従業員の会社における地位,職種等諸般の事情から総合的に判断して,右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」 過去の判例を眺めてみますと、交通事故を除く一般刑事事件、特に破廉恥罪などでは、懲戒解雇処分を有効とするものが多いですね。社内の不倫、セクハラに伴うトラブルも、懲戒解雇処分を有効とするものが多いようです。それ以外の素行不良ですと、会社の社会的評価をどの程度下げたのかによりけりですが、解雇よりも低い懲戒処分なら有効と判断されるものもありそうですね」(小野弁護士)過去の判例を見ると、やはり私生活の素行不良であっても解雇されることはあるそう「会社外だから良いや」という考えは、一般社会では通用しないのですね。*取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*polkadot / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月09日*画像はイメージです:月31日、群馬県大泉町の路上で職務質問を受けた際噛み付いたとして、公務執行妨害容疑で逮捕される寸前だったベトナム人男性が逃亡する事件が発生。男性は警官に対し噛み付くなどして逃走。警察が行方を見失ったため、付近住民に不安が広がりました。結局、当該男性は1日午後11時20分頃、熊谷市のコンビニ駐車場にいたところを発見され、逮捕されました。二次被害がなかったことは不幸中の幸いですが、一歩間違えれば大事件に発展する可能性も。大失態を演じた警察に住民などから、怒りの声があがっています。なお、逮捕された男は警察の取り調べに対し逃走した理由について、「無免許運転やオーバーステイがバレると思ったため」と述べているそうです。 ■逮捕時に「逃亡」した場合罪は重くなる?今回のように逮捕時に「逃亡」した場合、素直に罪を認めて逮捕に応じるよりも罪を重くするべきであるように思えます。そのようなことは可能なのでしょうか。星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお話を伺いました。「まず、刑法には逃走罪がありますが、現行犯逮捕されたただけの者が逃走した場合を処罰していませんので、逃走罪は成立しません。警察官に噛みつくなどしている点は、問題なく公務執行妨害となります。その後の逃走状況に応じて、民家等他人が看守する建物、住居に隠れていた場合は、建造物侵入や住居侵入罪に問われる可能性があります。オーバーステイという事情があれば、もちろん入管法違反の罪にもなります。刑法の逃走罪というと、今回のようなケースに適用されると思われがちですが、逃走罪は”裁判の執行により拘禁された者”が逃走した場合に適用されるので、現行犯逮捕の犯人が逃走しても逃走罪には問われません。ただし、逮捕時に噛みつき逃走したことは公務執行妨害罪や入管法違反で起訴されたときに情状面で考慮されます」(星野弁護士)どうやら逮捕時に逃げたというだけでは、罪は成立しないようです。 ■警察官の責任は?今回のような失態を演じた警察官に刑事責任などは発生しないのでしょうか?こちらも同じく星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士に聞いてみると……。「仮に注意散漫があったとしても、そのことをもって刑事責任に問われることはありません。今回の事案では噛みつくなど抵抗されているので過失があるとは思えませんが、仮に重い過失があった場合であっても、職務上の懲戒処分となるだけであり、刑事上の責任が発生することはないでしょう」(星野弁護士)やはり刑事責任等は発生することはないのですね。もちろん犯人の取り逃がしは、刑事的な責任はなくとも、職務上の処分となる可能性はあると思われます。また、「現行犯逮捕時に逃げる」という行為も、罪にはならなくともやって良い行為ではありません。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Africa Studio / Shutterstock
2017年09月08日*画像はイメージです:今年に入ってから多数ご相談いただいている詐欺の一つに、愛人契約を誘い文句とする詐欺があります。残念ながら多くのご相談者様が泣き寝入りせざるを得ない状況にあり、弁護士としては非常に悔しいところです。現在でも同様の詐欺被害に遭われている方がいらっしゃるため、これ以上の被害拡大を止めるべく、今回は愛人契約詐欺について、その手口を解説したいと思います。 ■愛人契約詐欺の流れ被害者の方々は、ある出会い系サイトで犯人と接点を持ちます。このサイトは、成功した男性とそういった男性との出会いを求める女性をマッチングするという特徴を有しています。犯人から毎月の手当の支払などを条件とする愛人契約を締結することを提案され、まずはお互いの要望などをすり合わせるという目的で会うことになります。会う場所は高級ホテルのラウンジや個室を指定されます。犯人は「成功者」を装っているため、高価そうな時計を身に着けているなど、良い身なりをしていることが多いようです。なお、「成功者」を装った犯人が来るというパターンのほかに、「成功者」を紹介するという人物が現れるというパターンもあるようです。犯人からは、月々の手当を数十万支払うのと同時に、被害者のクレジットカードの決済口座を犯人の口座とする旨の提案があります。つまり、被害者が自分のクレジットカードをいくら使っても、犯人の口座から引き落とされるので心配はない、自由に使ってよいという提案です。そしてこの決済口座の変更にあたり、自分は銀行の頭取などに直接話を通すことができる立場にあるので、クレジットカードを自分に預けてくれればこの手続をやっておくと申し向け、被害者からクレジットカードを受け取るのです(クレジットカードは後日返却するという話をされます)。この際、手続に必要であると話して、被害者から暗証番号も聞き出します。クレジットカードを受け取った犯人は、その足でコンビニのATMなどに向かいキャッシングで限度額までお金を引き出します。被害者の方は、覚えのない高額な請求が来て、初めて被害にあったことを知るというのが、愛人契約詐欺の流れです。 ■犯人を特定できる可能性は限りなく少ない犯人は信用をさせるために、免許証など見せることもあるようです。ですが、当職がお受けしたケースでは偽造の免許証であり、身元の特定には使えませんでした。また、携帯電話の契約者情報を調査しても、レンタル携帯であり、本人に繋がる情報が得られませんでした。すなわち、後で犯人の身元を特定しようとしても全く手がかりが存在しないわけです。当職がお受けしたケースのうち、たったの一件のみ、警察と当職及び当職が経営する調査会社の連携により起訴までこぎつけた事案がありますが、これは本当に運が良かったと言わざるを得ません。上記以外にご相談を受けたケースでは、そのほとんどが犯人の身元すら特定できず泣き寝入りしています。知能犯担当の刑事に聞いたところでは、詐欺のシナリオが詐欺師の間で共有されているせいか、同様の被害相談がかなりあるようです。 もっとも近いところでは数日前(平成29年8月末)に上記の被害に遭われた方からの相談をお受けしました。現在でも同様の詐欺が行われております。上記のような話を受けたら、クレジットカードを渡したり、暗証番号を教えたりすることは避けていただきたく思います。 *著者 弁護士:若井 亮(不動法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月06日*画像はイメージです:月、ある人気YouTuberに詐欺疑惑が浮上し、大炎上。彼を信じていた人たちにとっては、「騙された」と感じる行動だった模様です。その騒動に便乗して、SNSでは人気YouTuberの偽物が次々と登場。偽物と本物が入り混じり、何が真実なのかがよくわからなくなっているよう。偽物アカウントの目的は、アフィリエイト収入を狙ったものであるとみられていますが、詳細は不明です。 ■法的にネット上の「なりすまし」を罰することはできないのか?YouTuberに限らず、TwitterやSNSでは芸能人の偽物が登場し、事務所が「本人ではありません」と否定することが多々あります。悪質なものになると、巧みに商品販売サイトやアフィリエイトリンクサイトに誘導し、収入を得るようなこともあると聞きます。このようなネット上の「なりすまし」を法律的に取り締まることはできないのでしょうか?法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。「なりすましを直接取り締まる法律はありません。ただし、名誉毀損罪に当たるような内容が含まれていれば、名誉毀損罪にて取り締まることができるほか、業務妨害の内容があれば、業務妨害罪に当たる余地があります」(清水弁護士)残念ながらネット上の「なりすまし」行為を罰する法律は、現在のところ存在していないようです。 ■「なりすまし」アカウントで得た収入はどうなるのか?「なりすまし」行為で収入を得た場合はどうなのでしょうか?本人に収益を返すようなことは、できるのでしょうか?「なりすましアカウントが収益を得ても、それはなりすました者の利益となるのが原則であり、その利益を取り上げるということは、法律構成としては考えられるものの、難しいと思われます」(清水弁護士)なりすまし行為で得た収入についても、現状取り締まることは難しいようです。まだまだ法整備が追いついていないということでしょうか。もちろん、法的に罰することが難しいといっても、なりすましが好ましくない行為であることはいうまでもありません。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*graphicalicious / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月05日*画像はイメージです:不動産オーナーの皆様は、迷惑な賃借人に頭を悩ませていることもあるかと思います。使用目的を定めていたにもかかわらず目的と異なる使いかたをされていたり、毎晩遅くまで騒いで近隣の迷惑になっていたりといったことから近隣トラブルに発展するケースもあります。やめてもらうよう注意しているのに聞く耳を持たない賃借人とはもう縁を切りたい、そう思うこともあるでしょう。このような用法違反の場合に、賃借人に部屋から出て行ってもらうことはできるでしょうか。今回は、ペット禁止としていたのに賃借人がペットを飼っていた場合を例に考えてみましょう。 ■賃貸借契約を解除する場合の特殊性賃貸不動産から賃借人に出て行ってもらうためには、賃貸借契約を解除する必要があります。賃借人が同意してくれれば良いですが、同意してくれなかった場合には、法律上の解除原因がなければ契約を解除することはできません。例えば、賃貸借契約にペットの飼育を禁止する特約を付していた場合に、賃借人がその特約に反してペットを飼育していたとすれば、用法違反として法律上の解除原因があるといえるでしょうか。実は、用法違反があったとして直ちに賃貸借契約を解除することができるかというと、そう簡単にはいきません。実際、ペット飼育禁止の特約付きで賃貸借契約を締結し、賃借人がペットを飼育したものの、賃貸借契約の解除が認められなかった事案があります。なぜでしょうか。実は、賃貸借契約を解除するにあたり、「賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない特段の事情」がある場合には、契約解除は認められないのです。賃貸借契約は、売買契約等と異なり、当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約なので、賃借人に用法違反があったとしても、当事者間の信頼関係が維持されているのであれば、契約の基礎が残っている以上、解除によって賃借人の利用権を妨げることはできないのです。 ■契約解除が認められない場合とは?例えば、賃借人が犬を飼っているケースで考えてみましょう。部屋内に犬の小屋があり、食事や排泄物の処理についても訓練が行き届いていて、悪臭や泣き声もほとんどなく、建物内の柱や畳等が汚れたり損傷したりしておらず、賃借人もその犬を最後に飼育を打ち止めすることが確実視されるような場合には、賃貸人にとって不利益が多いというわけではありません。このような場合には、そのような犬を飼ったからといって直ちに賃貸借契約の解除が認められない可能性があります。元々、ペット禁止特約の目的は、賃借人がペットを飼うことによって不衛生になったり、近隣住民に迷惑になったりすることで、賃貸人としても不利益を被るので、このような賃貸人の不利益を防止する点にあります。したがって、先ほどのような事情がある場合には、ペット禁止特約の目的を害する程度が小さいので、信頼関係を破壊するおそれがあるとまでは認められない可能性があるのです。 ■場合によっては賃借人の主張に備えて弁護士に相談を「信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない特段の事情」については、それが存在することを賃借人が主張立証する必要がありますが、そのような事情を基礎付ける積極的事実とその評価を障害する消極的事実との総合評価によって決まるので、賃貸人としても信頼関係が破壊されたという事情を主張できるよう準備する必要があります。迷惑な賃借人に部屋から出て行ってもらいたいオーナーさんとしては、弁護士に相談し、そのような事情をあらかじめ調査するのが良いでしょう。 *著者:宮前豪(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。離婚問題から企業法務まで幅広く精通。)【画像】イメージです*YAMATO / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月04日*画像はイメージです:尿意や便意は人間の生理現象。「我慢しろ」と言われても、なかなかできるものではありません。コンビニエンスストアのトイレがあって助かった経験がある人も多いのではないでしょうか。そんなコンビニのトイレですが「使用する際は一声かけてください」と張り紙がしてある場合があります。店側としてはみだりにトイレを使用されることや、商品の万引き防止などからそのような措置を取っているのだろうと考えられます。 ■トイレを借りる場合は一声かけるものだが……「一声かけて」という張り紙がある場合、当然ながらコンビニのトイレを借りる場合は店員に「トイレを貸してください」と店員に声をかけていることと思います。しかし、「面倒くさい」と思うのも事実です。デパートなどでは勝手に使っても良いわけですから、「何も言わなくてもいいじゃないか」とも思ってしまいます。仮に声をかけずにコンビニのトイレを借りた場合どうなるのでしょうか?無断で敷地内に侵入したわけですから、建造物侵入罪に問われるような気もしますが、コンビニのトイレくらいでそれはないようにも思えます。一体真相はどうなっているのでしょうか?星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお伺いしました。 ■コンビニのトイレを借りるとき声をかけないとどうなる?「刑法上、他人が看守する建造物への侵入行為は建造物侵入罪とされています。他人が看守する建造物への侵入とは、管理権者の意思に反する立ち入りを意味します。例えば、窃盗目的、営業時間外の立ち入りなどは、明らかに管理権者であるコンビニ店長が予定しない立ち入りであり、建造物侵入となります。他方、デパートや駅構内、スーパー、コンビニなど公衆の出入りが自由とされている場所は、基本的に最終的に買い物をしなかったとしても、立ち入りが管理権者の意思に反するとはいえません。そうすると、トイレ目的でのコンビニ利用が建造物侵入となるのは、(1)コンビニ入口にトイレ利用だけの目的での入店を明確に拒否する表示があり、かつ、(2)利用者が明確にトイレ利用目的だけであったと評価できる場合に限られるでしょう。しかし、最終的にコンビニで買い物をしない限り、コンビニ店長の意思に反する立ち入りということはできませんから、結局、(2)利用者が明確にトイレ利用目的だけであったとの要件を立証するのは極めて難しいのではないかと思います。したがって、実際にはトイレ利用だけであったとしても、建造物侵入で刑事罰を科されることは想定しにくいと思います。マナーの問題として、「従業員に一声かけるべき」なのはいうまでもありません」(星野弁護士)従業員に一声かけることはマナーとしては当然のことですが、仮にかけなかったとしても建造物侵入罪となる可能性は低いようです。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月03日*画像はイメージです:中古住宅の購入を検討する上で、住宅の欠陥の有無は気になるところです。しかし、目に見えないところに欠陥がある場合には、当該欠陥についての告知を受けない限りは、発見することが難しいです。例えば、中古住宅の前住民が自殺していたような場合には多くの人がその購入を戸惑うと思います。この意味で、その物件は欠陥ある物件といえそうですが、売主が告知してくれない限りは、知る機会すらありません。このような『いわくつき』の物件のことを、『事故物件』と呼ぶことが多いようですが、今回は、このような『事故物件』を、『事故物件』ではない価格で売却した売主及び仲介した不動産業者の責任について考えてみます。 ■事故物件とは『事故物件』という単語に明確な定義はないようですが、一般的には、いわくつきの物件であり、購入者が心理的に購入を躊躇うような物件、法律的にいえば、心理的な瑕疵(=欠陥)のある物件を示しているといえます。ただ、この心理的なものについては、人によって感じ方は違うかもしれません。自殺に限っても、10年前に自殺があった物件と、1ヶ月前に自殺があった物件とでは感じ方は変わるのではないでしょうか。裁判上も、自殺からどのくらいの期間が経過しているのかといった事情のほか、居住目的か事業用目的かといった事情を総合考慮した上で、心理的な瑕疵といえるかの判断がされています。 ■売主の責任は?売買契約における売主は、法律上、瑕疵担保責任を負っています(民法570条)。この瑕疵担保責任は、欠陥のある物件を売ったことに対する売主の責任であり、売主の認識を問わずに発生する責任とされています。つまり、売主が欠陥の存在を知らなかった場合であっても、売主には欠陥ある物件を売ったことに対する責任があるということです。したがって、前住民の自殺が心理的な瑕疵に該当する場合においては、この瑕疵担保責任に基づき、買主から契約の解除を求められ、売買代金の返金及び損害賠償請求を受ける可能性があります。では、売主が、心理的な瑕疵の存在を知りながら、これを買主に告知しなかった場合はどうでしょうか。この場合にも、先ほどの瑕疵担保責任は当然発生しますが、そのほかにも、告知義務違反による損害賠償請求、あるいは、契約上の違約金の請求等を受ける可能性があります。 ■仲介不動産業者の責任は?仲介に入った不動産業者が、買主に対して、心理的な瑕疵を告知しなかった場合はどうでしょうか。まず、先ほど述べた瑕疵担保責任は、あくまで売主の責任ですから、仲介不動産業者がこの責任を負うことはありません。ただし、心理的な瑕疵の存在を把握していたか、あるいは把握できて当然という場合には、瑕疵担保責任ではなく、告知義務違反を問われる可能性は残されます。まず、売主からは心理的な瑕疵の存在を聞かされていたものの、あえてこれを告知しなかった場合は、心理的な瑕疵に該当するため、不動産仲介業者にも告知義務が認められ、仲介不動産業者にも告知義務違反が認められることになるでしょう。この場合、買主から損害賠償請求を受けることは十分に考えられます。 他方で、売主から心理的な瑕疵の存在を聞かされていなかった場合はどうでしょうか。この場合には、通常の不動産仲介業者に求められるだけの注意義務をもって対応していたにも関わらず、心理的な瑕疵を把握することができなかったといえれば、責任を負うことはないと考えられます。ただし、売主の説明に不信な点があることに気がついていたにも関わらず、調査を行わなかった場合などにおいては、不動産業者としての責任追及を受ける可能性は十分にあるといえそうです。 中古物件の購入者としては、『事故物件』であることを隠されないためにも、また、万が一隠された場合に備えて、是非とも、過去の事故・事件の存否を売主や仲介不動産業者に確認しておきたいところです。 *著者:弁護士 河原﨑友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*kirin / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月01日*画像はイメージです:「私は、ある株式会社の常務取締役を務めておりますが、社長から『他の取締役と意見が合わないから辞めてくれないか』と言われました。辞めざるを得ないのでしょうか。会社に対して何も主張できないのでしょうか」取締役のかたからこのようなご相談をいただきました。通常の労働者であれば、労働法によってその地位が保護されていますが、取締役などの会社の役員は会社との関係でどのような立場になるのでしょうか。 ■労働者との違い株式会社と取締役との法律関係は、雇用関係ではなく、委任関係とされています(会社法330条)。従業員が取締役に選任されるにあたって、退職手続をとり、退職金をもらう人もいらっしゃるかと思いますが、それはいったん労働契約が終了するためです。したがって、労働者の場合と異なり、取締役には労働契約法上の解雇規制(労契法16条)の適用はありません。なお、取締役の中には、従業員兼務取締役という立場の人もいて、この場合は労働者の地位が残っていると考えられています。次に、任期中に取締役を解任したい場合には、株主総会決議によって解任することができます(会社法339条1項)。取締役の解任には、労働契約上の解雇規制とは異なり、特段の理由を必要とせず、株主総会決議があれば自由に取締役を解任することができます。 本件では、常務取締役ですので、通常従業員兼務取締役ではなく、純然たる取締役です。そうだとすると、労働者ではありませんので、労働契約法上の解雇規制の適用もなく、当該会社の株主総会決議によって、解任することができます。 ■取締役解任の損害賠償請求それでは、取締役の解任の場合には、会社に対して何も主張できないのでしょうか。会社法339条2項は、解任された取締役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができると規定しています。これは、取締役の解任の自由を保障しつつ、正当な理由がある場合を除いて、解任そのものによる損害賠償を認めることで、取締役の任期に対する期待保護と株主の会社支配権の確保との調和を図ったものと説明されています(法定責任説)。この会社法339条2項により請求できる損害賠償の範囲は、取締役が解任されなければ在任中および任期満了時に得られた利益の額とされており、典型的には残任期分の役員報酬相当額となります。一方で、慰謝料や弁護士費用は原則として認められません。 ■損害賠償請求が認められないケースも先ほど、損害賠償額の範囲について触れましたが、どんなケースで損害賠償請求が認められるのでしょうか?これについては、会社法339条2項には記載があり「正当な理由」のある解任を除き損害賠償請求が認められる、とされています。つまり、「正当な理由」がある場合には、取締役解任に対する損害賠償請求は認められないことになります。取締役解任の「正当な理由」の有無で争われる主要なケースは以下のような4つに大別されます。 (1)法令・定款違反行為、心身の故障(2)職務への著しい不適任など(3)経営上の判断の失敗(4)主観的な信頼関係喪失(大株主の好みや、より適任な者がいるというような単なる主観的な信頼関係喪失) それぞれのケースが正当な理由に該当するかどうかですが、(1)(2)に関しては、正当な理由に該当するとされています。(3)については正当な理由の有無について争いがあるとされており、(4)は正当な理由とは原則として認められません。 本件では、他の取締役と意見が合わないという理由だけでは、④の主観的な信頼関係喪失といえ、正当な理由は認められないでしょう。したがって、本件では、残任期分の役員報酬相当額の損害賠償請求が認められる可能性が高いといえます。 *著者 弁護士 小林 洋介(センチュリー法律事務所。一つ一つのご相談には個性があり、解決策もさまざまです。それぞれのご相談の事情や時代の変化に応じて、既存の解決策にとらわれず、新しい解決策を常に模索し、提案し続けていきたいと考えております)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月31日*画像はイメージです:月と9月は、台風が多く発生する時期です。接近が予想される場合、災害に巻き込まれる可能性があるため、イベントなどが中止になることがあります。野球のように雨天中止が頻繁に発生する興行ならば混乱はありませんが、屋内でのライブなど、中止となることを想定していないイベントが仮に台風やその他災害によって中止になった場合、その後どうなるのかよくわからず、混乱してしまいます。チケット購入者への返金や、出演者に支払われる予定だった出演料の支払い義務は発生するのでしょうか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 ■チケット購入者への返金の必要性は?「結論からいいますと、特約がない場合、チケット購入者は主催者に対してチケット代金の返還を請求することができると考えます。ライブの主催者は、予定の日時に指定の場所でアーティストのライブをチケット購入者が鑑賞できるようにする義務を負っており、これに対し、チケット購入者はチケット代金を支払う義務を負っています。要するに、鑑賞できるようにする義務とチケット代金を支払う義務とは対価関係にあり、ライブ主催者とチケット購入者は双方が互いに対価的な債務を負っているということができます(双務契約)。このように契約当事者双方が対価的な債務を負っている場合で、当事者双方の責任でない事情によって一方当事者が債務を履行することができなくなった場合、公平の見地から、他方当事者の債務も消滅するとされています(民法536条1項危険負担の債務者主義)。危険負担というのは、契約当事者双方が対価的な債務を負っている場合において、一方の債務だけが債務者の責任でない事情によって履行不能となった場合に、他方の債務をどう扱うかという問題です。一方の債務が消滅した危険(リスク)を、債務者(消滅した債務についての)と債権者(消滅した債務についての)のどちらが負担するかという問題です。台風は誰の責任でもありませんから、台風が原因で主催者の債務が履行不能となった場合、チケット購入者の代金支払い債務も消滅することになるわけです。そして、チケット購入者が既に代金を支払っていた場合、主催者の不当利得となりますので、チケット購入者は、主催者に対してチケット代金の返還を請求できることになります」(冨本弁護士) ■出演者への出演料は?「結論からいいますと、特約がない場合、出演者は出演料を請求することはできないと考えます。出演者は、指定の日時場所でライブを行う義務を負っており、これに対し、主催者は出演料を支払う義務を負っています。出演者と主催者の契約関係も、双方が対価的な債務を負う双務契約です。やはり、台風は誰の責任でもありませんから、台風が原因で出演者の債務が履行不能となった場合、主催者の出演料支払い債務も消滅することになります(民法536条1項危険負担の債務者主義)」(冨本弁護士) チケット購入者への返金義務は認められる可能性が高く、逆に出演者への出演料は請求することは難しいようです。イベントが台風に遭遇しないことを、願うしかなさそうですね……。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*graphicalicious / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月29日*画像はイメージです:月14日、東京都大田区や神奈川県川崎市で車上荒らしを行っていたとして、無職の男(52)が逮捕されました。男は防犯装着がついていない自動車を狙い、バールなどで窓ガラスを割るなどして犯行に及んでいたそうです。取り調べで余罪を追及された男は、容疑を認めた上で、「70件くらいやった」と供述。そして、動機については「生活が苦しかったから」などと述べている模様です。このように、同じ犯罪を同じ手口で何度も行う犯罪者は少なくないのが現状。当然、罪は重くなるものと思われるのですが、実際のところどうなのでしょうか。星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士に真相をお伺いしました。 ■同じ犯罪でも回数を重ねることで罪が重くなる?「同種犯罪、異種犯罪にかかわらず、確定判決を経ていない犯罪は基本的にまとめて併合罪(刑法45条)となります。併合罪では、原則として最も重い罪の刑の長期の1.5倍が全体の法定刑の上限となります(刑法47条)。ただし、各罪の長期の刑期の合計年数を超えることはできません(刑法47条但し書き)。したがって、窃盗1件だけの場合と比べ、窃盗の法定刑上限(10年以下)が1.5倍(15年以下)となります」(星野弁護士) ■「70件」は珍しくない「実務上、車上荒らし、ポスト合鍵を使用した住居侵入窃盗、盗撮行為、詐欺事案など、警察による発覚・検挙が難しい事案では、今回の事件のような余罪が70件以上という犯人は、それほど珍しくもありません。窃盗などは、発覚して逮捕されるまで何回も繰り返されることが特に多いので、今回の事件はたまたま報道されていますが、実際の裁判では70件とかそれ以上の余罪がある事件は、実はかなりあります。また、余罪が70件あっても、実際に起訴までされるのは被害内容が特定できた分だけとなり、さらに被害内容が特定できても、全部を起訴するわけではなく、実際には3~5件程度起訴されるだけとなることが多いです。残りは、情状面で考慮されることになります。また、実際に起訴されるのは余罪全体のうちの数件となりますし、併合罪の法定刑上限まで重い刑罰が実際に下されることもまずありません」(星野弁護士) ■多少重くなる程度「実際に下される判決の処断刑は1件だけの場合と比較し、感覚的には「多少重くなる程度」というイメージです。意外かもしれませんが、70件程度の余罪という事件は、実際にはよくあります。併合罪による法定刑上限の加重はありますが、実際にはそれだけで大幅に刑が重くなるということはあまりありません」(星野弁護士)1件だけと比較すると重くなることは間違いないようですが、それでも「多少」という範囲なのですね。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Daniel Jedzura / Shutterstock
2017年08月27日*画像はイメージです:現在、日本では3組に1組の夫婦が離婚するといわれています。それだけの夫婦が離婚をするとなれば、離婚に至る原因も様々でしょう。離婚の際に相手方に落ち度があれば慰謝料の話をしますし、もし子どもがいれば養育費の話など、金銭の話は離婚には付き物のように思います。今回はそんなお金の話の中でも“離婚後に元配偶者の不倫の事実を知った”という場合の慰謝料について解説してみたいと思います。 ■離婚後に慰謝料の請求はできるのか?まず一般論としては、離婚後であっても慰謝料の請求をすることは可能です。慰謝料は、一言でいえば“婚姻を破綻させた落ち度が相手方にある”という場合に、“離婚によって配偶者の地位を失う精神的苦痛を慰めるためのお金”として認められます。具体的には、相手方の不貞や暴力、性交渉拒否といったものがあげられます。いわゆる性格の不一致や価値観が合わないという場合に慰謝料を支払ってほしいというご相談を受けることがありますが、このような場合はお互い様という面がありますので、裁判所で慰謝料を認めてもらうことは基本的に難しいです。ちなみに離婚前の話し合いの段階であれば、あなたと相手方の双方の状況によっては、慰謝料ではなく違う名目での支払いを認めさせる余地もありえるでしょう。 ■離婚後に元配偶者の不倫が発覚…慰謝料請求は可能?「婚姻時の元夫・妻の不倫が後になって発覚した」という場合であっても、元夫・妻あるいはその不貞相手に対して、離婚後に慰謝料を請求することは可能です。ただしこの場合、「不倫が婚姻を破綻させたといえるのか」という点を争われる可能性が出てきます。つまり、慰謝料を請求された相手方としては、「現実には不倫の事実を知らずに離婚したのだから、不倫と離婚との間に因果関係はない。自分の不倫が婚姻を破綻させたわけではないから、慰謝料支払い義務はない」と反論してくる可能性があります。慰謝料請求についての協議がまとまらず民事訴訟で請求するとなると、あなたの側で、たとえば家庭内不和が(当時は気づかなかった)不倫の結果であったことを立証することなどが必要となってきます。結論的には、不倫が発覚した直後に離婚する場合と比べるとハードルが上がってしまうことは否定しがたいように思われます。「婚姻時の元夫・妻の不倫が後になって発覚した」という場合でも、少し気を付けておけば離婚前に気が付いたはずということも多いです。不倫がないかどうかなどについて、離婚する前によく調べておくべきでしょう。 ■離婚後の不倫発覚…慰謝料額は変わる?慰謝料額はまずは話し合い、話がまとまらなければ最終的には裁判官が諸般の事情を総合的に判断して決めることになります。そして離婚後に不倫が発覚した場合は、不倫発覚直後に離婚する場合と比べると低額になる傾向にあります。ここで問題となるのは、先に述べた不倫と離婚との因果関係です。不倫直後に離婚する場合であれば、不倫の事実によって離婚するという因果関係が客観的にも明白です。しかし、離婚後に不倫の事実が発覚したという場合には「そもそも不倫と離婚とに因果関係がないのでは?」という疑いが出てきてしまいます。仮に因果関係があるとしても、“離婚によって生じた精神的苦痛が全て不倫のせいだとはいえないだろう”などと裁判官に判断されてしまう可能性があるのです。 ■慰謝料請求には時効がある慰謝料請求権は、基本的には離婚成立から3年で時効にかかってしまいます。ただし、離婚成立後に不倫相手が誰であるかを知ったという場合であれば、その人物に対する慰謝料請求権については、知ってから3年までは時効にかからないことになります。もっともその場合でも、不倫と離婚との因果関係が争われる可能性が高いという別の問題は残りますので、その点についても事前によく検討しておくことが必要です。繰り返しになりますが、“不倫が原因で離婚した場合”と“離婚後に不倫が判明した場合”とは大きく異なってきます。前者なら離婚で受けた精神的苦痛についての慰謝料が認められる可能性は十分ありますが、後者の場合には先に述べた因果関係が問題とされる可能性は高いです。そのため、場合によっては、“離婚して時間も経っているし、元夫・妻が不倫していたとしても自分にはもう関係ない”と割り切って、今の生活に注力するほうがよいこともありえます。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*Antonio Guillem / Shutterstock
2017年08月26日*画像はイメージです:月22日、大手転職サイト「転職会議」に事実無根の投稿をされたとして、徳島市の企業が高松市のプロバイダー「STNet」に対し、投稿者の名前・住所などの開示を求めていた裁判が高松地裁で行われました。 ■発端は従業員を名乗る人物の書き込み事の発端は、「転職会議」のサイト上で、従業員を名乗る人物が徳島市の企業について「ワンマン社長」「管理職の能力が低い」などと投稿したこと。企業側はこの書き込みが「事実無根」「誤った投稿は採用活動の妨げになる」として、昨年10月、東京のサイト運営会社に対し投稿者のIPアドレスを開示するよう請求。主張が認められ、アドレスの開示を受けました。IPアドレスを解析した結果、投稿者が高松市のプロバイダー「STNet」を利用していることが判明。企業はより詳細な情報を求め、高松地裁に投稿者の住所や氏名などの情報を開示するよう請求します。「STNet」側は争う姿勢を見せましたが、高松地裁は企業側の主張を認め、「名誉が毀損されたことは明らか」として、「STNet」に情報を開示するよう命じました。 ■今後はどうなる?気になってくるのは、今後この事案がどうなるのか。インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。「プロバイダが控訴しなければ、情報が開示されることになります。その後は、当該企業が”話し合いたい”という趣旨のコメントをしているようなので、話し合いが行われることになるのではないでしょうか」(清水弁護士)控訴をした場合、判決は維持されるでしょうか。「判決を見ているわけではなく、あくまで報道を前提にすると、本件では判断が覆る可能性もあるのではないかと思います。名誉毀損となるためには社会的評価の低下が必要になります。“管理能力はない”という点については社会的評価の低下があり得るとしても、ワンマンであるということは必ずしもマイナス評価を受けるわけではなく、リーダーシップがあるといったプラスの意味で捉えられる余地もあり、必ずしも社会的評価の低下があるとは言えない、とされるのが一般的ではないかと思われます。また、仮に社会的評価の低下があるとしても、違法性阻却事由があれば名誉毀損にはなりません。本件のような意見論評型の名誉毀損の場合は、人身攻撃に及ぶなど意見・論評としての域を逸脱したものでないこと、が違法性阻却事由の一つとなりますが、”管理能力はない”という点は一般的な感想レベルといえるもので、人身攻撃に及んでいるということはできないからです」(清水弁護士) 今回高松地裁がプロバイダーに開示命令を出しているため、控訴がなければ情報を開示する必要がありますが、現在報道されている内容などを総合すると、今回の判決について、争う余地もあるようです。今後の展開が注目されますね。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Dmitry A / Shutterstock
2017年08月26日*画像はイメージです:近年、「終活」という言葉がクローズアップされてきていますが、それに従って、自分の財産の整理や相続について計画をする人が増えているように感じます。そのような人が、自分の死後の財産をどのように残すかを決めるために、どのような方法があるかを考えた場合、真っ先に思い浮かぶのは、遺言書ではないでしょうか。しかしながら、遺言は場合によっては記載通りに遺産が継承されないこともあるのです。どういったことなのか解説していきたいと思います。 ■遺言は無視される?日本における相続では、民法で法定相続分という割合が決まっており、相続人の間で、この法定相続分に従って、亡くなった人(法律用語で「被相続人」といいます)の遺産を分割するのが原則です。ただし、遺産分割は、被相続人の財産の死後における処遇を決めるものですので、被相続人の意思を反映させるべきとも考えられています。その意思表示の方法が「遺言」です。法律上、遺言は、相手方の受領を必要としない相手方の無い単独行為であるとされています。要するに、遺言をした人が死亡すると、原則として、受け取る相続人の意思にかかわらず、遺言に書かれた内容どおりに財産が承継されるということです。ただし、 判例上、相続人の間で、被相続人が残した遺言の内容と異なった遺産分割協議を行うことは禁止されないとされています。「遺言は無視されちゃうの?何で?」と思うかもしれませんが、財産の承継を指定された相続人において、遺産を受け取りたくないという場合もあります。例えば、親が実家の土地建物を長男に継いでほしいと思い、これを長男に相続させるという遺言を残していたけれども、長男は実家を出ており、自分の家も所有してるため、実家に戻る予定はないというような場合です。このような場合に、長男が引き継がなければならないとすると、長男は「自分は住まないし、維持費用もかかるので、実家を売却して手放したい」などと考えることも十分にありえます。もし、他の兄弟が承継して実家を残してくれるというのであれば、遺言にこだわらずに、他の兄弟に承継してもらったほうが、実家は残るので、そのほうがかえって被相続人の意思にも適うという見方もできます。このような考えもあり、相続人が遺言と異なる遺産分割の合意をすることは認められていて、その場合は、結果として、被相続人が思い描いたような財産承継がなされないということになります。遺言を残す側からしたら、遺言が守られない場合があるということに納得がいかないかもしれません。しかし、財産を残したい被相続人の側だけでなく、もらう側の相続人にも立場や事情があります。 ■相続対策よりも…遺言を残すことを考えている人にとっては、自分の遺志をしっかり残すということが、なによりも大事かもしれません。しかし、その前に、遺志を受け取る側の迷惑になっていないかをよく考えたり、いざ自分が亡くなってしまった後に、受け取る側の相続人に迷惑だと思われないように、生きているうちに家族・親族としっかりコミュニケーションをとっておくということを忘れないようにしてほしいです。当たり前のことのように思われるかもしれませんが、コミュニケーション不足による親族間のトラブルは少なくありませんし、お金の問題ですから解決も難しいです。問題が大きくなってしまうと疎遠・絶縁となってしまったというケースも珍しくはありません。普段からのコミュニケーションを大切にしているという前提があってこそ、われわれ弁護士の専門的な助言が、遺言を残したい方の想いを実現するためにより役立ってくるのだと思っています。 *著者:千屋全由(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。企業関係の相談・紛争処理から貸金返還や交通事故等の損害賠償請求といった個人の法的トラブルまで、様々な案件に携わっている)【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月25日*画像はイメージです:月28日、京都府でトラックにひき逃げされた男性が道路交通法違反で書類送検されたことが判明。非常にレアなケースだけに、驚きが広がっています。もちろん、ひき逃げした人間も罰せられているのですが、「ひかれたのに書類送検」とはビックリ。一体どうしてなのでしょうか? ■被害者なのに書類送検された理由とは?その理由とは、ひかれた男性が道路に寝そべっていたから。トラックにひかれ、左足を骨折する重症を追った被害者の男性ですが、この「道路に寝る」という行為は道路交通法第76条第4項第2号に違反しています。第七十六条 何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。4何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。一 道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。二 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。四 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。五 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。六 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。七 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為 骨折という重傷を負っているにもかかわらず書類送検とは少々可愛そうな気もしますが、やはり違反行為である以上、罰せられる可能性はあります。被害者の男性は当時酒に酔っていたそうで、そのまま道に寝てしまったそう。お酒が好きな人のなかにはそのような経験を持つ人もいるかもしれませんが、仮に事故にあったとしても罰せられるということを認識し、そのようなことは行わないようにしましょう。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*andriano.cz / Shutterstock
2017年08月23日*画像はイメージです:高知県で、自転車に乗っていた47歳の女性が歩道を歩いていた77歳の女性と衝突。77歳の女性は転倒し、骨折をする事故が発生しました。事故を起こした47歳の女性は、救護活動などを一切せず、立ち去るという暴挙に。警察は必死の捜査を行い、犯人を特定。当該女性は道路交通法違反で書類送検され、罰金刑が確定しています。 ■自転車事故で自動車運転免許が停止にさらに警察は「骨折させておきながら逃げた」ことを重く見て、女性の持っていた自動車運転免許について、180日の免許停止処分とすると発表。“自転車”で事故を起こし、“自動車”の運転免許停止になるという珍しい現象が発生し、話題となりました。ちなみに、高知県では初めてのことだったそう。一方で他県を見ると、「自転車事故で自動車運転免許停止」という事態がちらほらと発生しているようです。なぜこのようなことになるのでしょうか?桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に真相を聞いてみました。 ■なぜ自動車運転免許が停止になった?「道路交通法103条では免許の取消及び停止がなされる場合について規定していますが、同条1項8号では免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるときにおいて、免許の取消及び6ヶ月を超えない範囲内での免許の停止を認めています」(大窪弁護士)道路交通法103条の1項8条に、しっかりと規定があるのですね。 ■今後増加する可能性さらに大窪和久弁護士は、今後このようなケースが増加するのではないかと指摘します。「自転車での飲酒運転や危険運転についても、それを行った運転者が自動車を運転する場合に危険が生じる可能性が高いとして上記条文を根拠に免許停止がなされる事例は数は多くありませんがこれまでもあります。自転車運転の安全についても厳しい見方がされるようになってきていますので今後処分件数は増えるのではないでしょうか」(大窪弁護士) 自転車の危険運転は社会問題化しており、死亡事故も発生しています。そのようなことを防ぐ意味でも、大窪弁護士の指摘するように、処分件数が増えそうですね。 *取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月22日*画像はイメージです:読者の皆さんは、人から名字と下の名前どちらで呼ばれますか?おそらく、名字で呼ばれる機会が多いのではないでしょうか。この名字と名前は法律的にはそれぞれ「氏」「名」と呼ばれています。基本的に名は変わることがありませんが、氏は婚姻・結婚で変わることがあります。今回は氏について婚姻時や離婚後、再婚時にどうなるのかといった点について解説してみたいと思います。 ■民法に「夫婦は氏を合わせる」という規定がある民法には、婚姻する際、夫婦どちらかの氏に合わせるとの規定があります(750条)。ほとんどが夫側の氏に合わせるようです。氏を変えると、様々な不都合(免許の書き換え、契約関係の名前の訂正等)が考えられます。そのため、職場では通称として旧姓を使用する人も増え、職場での通称使用をめぐって裁判になる事件も出てきています。 ■離婚後に氏はどうなる?さて、氏を変えた人は離婚時どうなるのでしょう。民法は、氏を変えたものは離婚により、「婚姻前の氏に復する」と規定しています(767条1項)。例えば、私は林という氏ですが、私が佐藤さんと「佐藤」という氏を選択して婚姻し、そして離婚した場合、私は「佐藤」から「林」に戻ることになります。 ■離婚後の子どもの氏はどうなる?もし、離婚時に子どもがいた場合、子どもの氏はどうなるのでしょうか?離婚した本人は「佐藤」から「林」に氏が変わりますが、子どもの氏は「佐藤」のままとなります。そのため、私と子どもの氏が異なることになり、社会生活上支障をきたすかもしれません。また、私にとっても、長年「佐藤」で過ごしていれば「林」に戻ることが社会生活に支障をきたすかもしれません。民法には、離婚時に婚姻生活で使っていた氏を引き続き使える手続きがあり(民法767条2項等)、この手続を利用すれば、私は離婚後も「佐藤」と名乗れることになります。 ■再婚後に再度離婚をしたら氏はどうなる?では、私が「佐藤」を名乗ることに決めた後、鈴木さんと出会い再婚し、新たに「鈴木」と名乗ることにしました。そして、再度離婚した場合、私の氏はどうなるのでしょうか。私が「鈴木」から戻る氏とは、元々の氏である「林」でしょうか。それとも鈴木さんと出会う前に名乗っていた「佐藤」でしょうか。民法767条2項には、「婚姻前の氏に復する」と規定されています。結論をいえば、婚姻前の氏は「佐藤」でしたので、私の氏は「佐藤」になります。離婚後に「林」には戻れないのです。 ■もし元々の氏を名乗りたければ?もっとも、私が「佐藤」から「林」を名乗る方法が全くないわけではありません。例えば、林さんと婚姻すれば、新たに「林」と名乗れます。また、林さんの養子になれば「林」の氏になります。しかしながら、婚姻するには別の林さんを見つけて良い仲にならねばなりませんし、年上の別の林さんを見つけて養子に入れてもらうのも一苦労です。他には、氏の変更を家庭裁判所に許可を求めるという方法も用意されています。家庭裁判所に許可してもらうには「やむを得ない事情」が必要です(戸籍法107条1項)。いずれにせよ、簡単には「林」に戻れません。離婚の際、どちらの氏を使うのか、慎重に判断しないと後悔することになるかもしれませんね。 *著者 弁護士:林 正和(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。全ての案件に対し、最善を尽くすため、広い視野を持ち、幅広い知見を得られるよう精進して参る所存です。)【画像】イメージです*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月21日