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<専門家インタビュー> 睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療装置で国産第1号となる「ジャスミン」を2006年に開発・販売した株式会社メトランが、このたび新世代の持続的自動気道陽圧ユニット「JPAP(ジェイパップ)」を発売しました。株式会社メトランの創業者であり、自らも睡眠時無呼吸症候群の患者としてJPAPを愛用するトラン・ゴック・フック(新田一福)会長に、JPAP開発のエピソードをお聞きしました。【トラン・ゴック・フック(新田一福)氏】 株式会社メトラン会長睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療装置で国産第1号となる「ジャスミン」を2006年に開発・販売した株式会社メトランが、このたび新世代の持続的自動気道陽圧ユニット「JPAP(ジェイパップ)」を発売しました。株式会社メトランの創業者であり、自らも睡眠時無呼吸症候群の患者としてJPAPを愛用するトラン・ゴック・フック(新田一福)会長に、JPAP開発のエピソードをお聞きしました。患者さんが自分で設定できるナチュラルサポート機能JPAPでは、ナチュラルサポート(NS)機能といって、吸気と呼気のサポートレベルをそれぞれに調整が可能な機能を備えています。医療従事者モードではなく患者モードにしてあるので、患者さん自身が呼吸をしながら、もっと呼吸がしやすいように自分で設定することができます。これは私自身の患者としての体験から決めた方針ですが、このような仕様で機械を出したのはメトランが初めてです。 今まではこうしたことを誰も考えていませんでした。患者さんの考えていることを何もわかっていなかったのです。JPAPは持ち運びが容易なコンパクトサイズ装置を小型化するということについては、最初のうちはなかなか理解が得られず、「どうして小さくする必要があるのか」と言われることもありました。しかし、自分の今のライフスタイルを考えると、よりコンパクトな小型の機械が欲しいという思いがありました。 私は出張や旅行に出かける機会が多いので、そんなときにCPAPの大きな機械を持って行こうとすると、それだけでスーツケースをひとつ余分に引っ張っていかなければなりません。しかし、今ではリュックに2日分の着替えとJPAPを入れて持っていくというのが自分のライフスタイルになっています。 JPAPには専用のキャリングケースが付属していますが、ユーザーの多くは機械を全部ケースから取り出して使っています。しかし、実はJPAPの本体はキャリングケースに入ったままで使うことができます。ですから、私は機械をキャリングケースに入れたままAC電源のコードだけをケースから出し、コンセントに挿して使っています。朝はマスクとチューブを外してAC電源コードをぐるぐるっと束ねてカバンに入れるだけですので、本当に5分ぐらいで片付けが終わってしまいます。 先日、懇意にしている医師に会って話をしたとき、その先生も私と同じ使い方を考えていたことがわかったのですが、そのことをどうしてユーザーに教えないのかというご意見をいただきました。 そこで、メトランではこれからYouTubeの動画などを活用して、詳しい使い方なども提案し、ユーザーの皆様にアピールしていくことを考えています。今後は株式会社メトランのウェブサイト()で、ユーザーに密着するような使い方のアイディアなどのコンテンツを充実させていくつもりです。ベッドサイドで使うための優れたデザインJPAPは2016年度のグッドデザイン賞金賞を受賞していますが、このデザインはデザイナーの山本秀夫先生に依頼したものです。今までの当社の工業デザイナーの仕事は絵を描いたらほぼそれで終わってしまうことが多かったのですが、山本先生の仕事は本当に素晴らしいものでした。 先生はオフィスに布団を持ち込んで部下の社員さんをそこに寝かせて、我々が提供したCPAPの機械やマスクを使って、寝ているときの様子や機械の設置状況などを想定しながらデザインされていました。また、飛行機に乗るときにはどうやって使うかといったことまで考えて、いくつものアイディアをご提案いただきました。 デザインというのは本当にとても大事です。JPAP本体の丸みを帯びた形は、まず見た目がとても柔らかい印象を持っています。JPAPは医療機器ですが、私自身はたとえばApple製品のようなインテリジェンスを打ち出したデザインよりも、一般の人には柔らかく、手に持ったときに気持ちがいいと感じるようなものがいいのではないかと考えています。 色も非常にこだわったポイントです。本体が丸みを帯びた可愛い形をしているので、私たちは最初、白っぽい色がいいのではないかと考え、たとえば女性向けには桜の花のようなピンクがかった色はどうだろう、などと話し合っていました。 ところが山本先生は、この日本古来の茄子紺(なすこん)は睡眠を連想する色だからと言って絶対に譲りませんでした。しかし、私のほうも白バージョンを諦められないので、いつも山本先生に食い下がっていました。自分でも写真を撮っているので、デザインにはかなりこだわりがありますし、いつか皆さんにも白いJPAPを見ていただきたいと気持ちは今でもあります。 最近、山本先生にお会いしたときにも「先生、やっぱり女性には可愛いのを作りましょうよ」と言ったのですが、先生も根負けしたのか、やっと白色の花模様など私の意見にも少し耳を傾けてくれるようになりました。山本先生は本当に素晴らしいデザイナーですから、私が新しく立ち上げた別の会社で手がけている製品のデザインもこれからお願いしようと思っています。小型化のもっとも大きな課題は「静音性」機械のサイズを小さくするときに難しいのは静音性の問題です。機械本体のサイズがある程度大きければ、圧力を発生させるブロアーの雑音を消すことは比較的容易なのですが、今の技術では機械が小さくなるほど音を消すことが難しくなります。しかし、私たちが持っている別の技術を使えば、将来的にはより音が静かでコンパクトなものができます。 ただし、私たちは技術的に少し先行しすぎているのかもしれません。市場に出すタイミングが早すぎると受け入れられない場合もあります。そういった意味では、現在の技術で小型化の壁となるのは静音性ではないかと思います。 また、本体が軽いため、寝返りをうつと引っ張られてしまうという問題もあります。まだ詳しくは言えませんが、将来的にはそういった問題も解決できるような、画期的な製品の開発を目指しています。自然な潤いと深部体温の低下で快眠をもたらすもともとJPAPは開発当初からあまり電気を使わないようにしようと考えていました。出張や旅行の際に大きな機械を持って行かなくても済むように、ヒーターを使わずに自然の水分蒸発で加湿するということが製品開発のコンセプトだったのですが、実際に使ってみると、それがとても気持ちいいということがわかったのです。 他のCPAPの場合は空気の温度を上げているので、マスクをつけた直後は気持ちいいのですが、一晩中8時間も吸い続けると逆によく眠れなくなってしまいます。 JPAPは、マスクをつけて最初のうちは少し冷たいのですが、人が眠るときには深部体温が下がるということがわかっています。ですから、最初は少し冷たくても、朝起きたときにとても気持ちがいいのです。ただ、一般の患者さんはマスクからいきなり冷たい空気が入ってくることにやや抵抗があるかもしれません。その壁をどうやって乗り越えるかということが今後の課題となります。寝る前には気持ちよく温め、眠りについた後は深部体温を下げるような方向へ持っていくというコンセプトで次の開発を進めているところです。 その製品に関しては、私の考えに異を唱えていた先生と共同で開発しようと考えています。意見の合わない人とケンカをするのではなく、学校のように議論しながら、こちらの考えに巻き込んで一緒にやっていこうというのが私のやり方です。反対していた人にも賛同してもらえるというのは、何よりも説得力があるのではないでしょうか。加湿器に代わる技術-人工鼻(HME)とメトランのHummax QEおそらくこれからは海外のCPAPメーカーもさらなる小型化に向かっていくと思われますが、彼らが機械を小さくするために一番問題になると考えているのは加湿器です。タンクに水を入れて温める方式では、どうしても加湿器を小さくすることができません。せっかくブロアー本体を小型化しても、大きな加湿器がついていたのでは携帯性が損なわれてしまい元も子もありません。 最近アメリカで発表されている小型のCPAPを見ていると、どうやら加湿器の問題を解決するために、人工呼吸器の「人工鼻」と呼ばれている機構を取り入れているようです。 人工鼻(Heat Moisture Exchangers; HME)とは、人工呼吸器を使っているときに吸気ガスを加湿するための器具です。患者さんの呼気中の水分を吸収して、吸気時にその水分を再び患者さんに吸わせることによって、人間の鼻腔粘膜と同様の加湿効果を得ることができるというものです。 人工鼻の場合には中にセルロース系の材料を入れて水分を蓄えますが、メトランのHummax QEではチューブの中に500ミクロンのホローファイバー(多孔質の中空糸膜)を入れてあります。このファイバーは疎水性なので、この中に水を入れても水は外に出ませんが、蒸発する面積はセルロースの6倍にもなります。この中空糸を使うことによって、まったくヒーターを使わなくても自然に水分が蒸発して、喉が乾かないように湿度を補うことができるのです。 CPAPは人工呼吸器のように吸気と呼気の通り道が分かれておらず、1本のチューブになっています。そのため、マスクには吐き出した炭酸ガスが溜まらないように外へ逃がす穴が開いています。 アメリカのあるメーカーが出している小型のCPAPはチューブの途中にHMEをつけているのですが、実はそれでは意味がありません。呼気がHMEに戻らないと、そこで湿度を逃さないようにトラップしておくことができないからです。それにもかかわらず、チューブの途中にHMEをつけた製品が売られているのですが、私から見ればこれは本当に意味のないことです。 しかし、CPAPを使うユーザーにはもちろんそんなことはわからないので、HMEがついていればそれだけいい製品だと思うでしょう。もちろん、海外でも技術レベルの高いメーカーでは、ちゃんとマスクから呼気が漏れるところにHMEを取り付けるようにしているところもあります。コントローラーを本体から分離した理由-メトランが目指す未来像とは実は最初のコンセプトでは、音の問題さえ解決すればブロアー本体はもっと小さくできると考えていました。現在の大きさになったのはあくまでも音の問題で大きくしただけであって、将来的にはもっと小型化することが可能です。ところが、機械を制御するためのコンピューターやセンサーなどを本体に内蔵して、そこにコントローラーまで付いていたのでは小さくすることができません。 そこで私たちはコントローラーを本体と分離してAC電源のアダプターと一体化させました。私たちが将来目指しているのは、必要なものをすべて中に入れて小型化した本体を胸元につければ、あとは電源コード1本だけで済むようなものです。このような将来のビジョンがあるからこそ、コントローラーを本体から分離してAC電源のアダプターと一体化すること自体も特許として出願しているのです。 私たちがどうして今このような製品を作っているのかというと、それは将来の目標があるからです。知らない人から見れば、なぜコントローラーを本体と一緒にしないのかと思われるかもしれません。仮にそうした要望が多いのであれば一緒にすることはできますし、現時点では技術的な問題は何もありません。 開発している私の頭の中には、今の製品が将来に結びつくような明確なロードマップがあります。現時点での技術と、今それを必要としているユーザーが納得してくれるところをすり合わせた結果が製品に反映されているのだと言ってもいいでしょう。 スティーブ・ジョブズのiPhoneも、将来発表する機種までの道筋を全部最初から持っていました。しかし、当時の技術でそれを実現しようとするととても高価なものになってしまいます。今、私が持っている特許の技術だけでも、もっと小型で音がしないものを作ることはできますし、すでに試作も行なっています。しかし、そうするとやはり非常に高いものになってしまうので、とても現実的とは言えません。 将来的に睡眠時無呼吸症候群の治療機器を買い取りできるようなシステムに持なれば、製品化してもいいのかもしれませんが、現状はレンタルですから、我々のような小さな会社がビジネスをするマーケットとしてはあまり向いていません。もしも患者さんが本当に自分の責任で治療機器を選んで買えるようになれば、もっといろいろなことが思ったようにできるのではないかと考えています。
2017年10月10日<専門家インタビュー> 睡眠時無呼吸症候群の治療に使われる持続的自動気道陽圧ユニット(CPAP)のほとんどが海外の製品で占められる中、人工呼吸器メーカーの草分けとして1984年に創業した株式会社メトランは、株式会社小池メディカルと共同で国産第1号となる「ジャスミン」を2006年に開発・販売しました。その開発の経緯と最新機種JPAP(ジェイパップ)のコンセプト、そして睡眠時無呼吸症候群治療のあるべき姿について、株式会社メトランの創業者であるトラン・ゴック・フック(新田一福)会長にお話をうかがいました。【トラン・ゴック・フック(新田一福)氏】 株式会社メトラン会長株式会社メトランがCPAPを開発するようになったきっかけそもそも株式会社メトランがCPAP治療機器を開発するようになったのは、当社の製品を販売していた株式会社小池メディカルからの依頼がきっかけでした。私たちの開発技術力を高く評価してくれていた小池社長から、CPAPは海外の製品しかないので、ぜひ国産のCPAP装置を作ってほしいと頼まれ、二つ返事でお引き受けしたことが発端だったのです。特許だらけのCPAP開発の壁を乗り越えた国産第1号ところがいざCPAP機器の開発を始めてみると、実に奥が深いということがわかりました。もちろん、それはどの領域にも言えることではありますが、ことCPAPに関しては非常に多くの技術が特許で押さえられていました。しかも国内メーカーの製品がなかったため、それらの特許はすべて欧米で取得されており、そのことが大きな壁となっていたのです。 そこで私は、メトランの現・代表取締役社長である中根伸一君がスタンフォード大学で研究していたニューラルネットワークのことを思い出しました。スタンフォード大学はニューラルネットワークの研究では世界でもレベルが高いことで知られています。彼の卒業論文のテーマは気道の閉塞をニューラルネットワークで検知できるというものでしたが、このテクノロジーを使えば特許に関係なく独自のCPAP装置が作れるということがわかり、ようやく国産第一号という形で世に出すことができたのです。睡眠時無呼吸症候群の患者として自分が使うために開発したJPAP当時は、なんとかして要求された仕様通りのものを作り、いろいろな患者さんに使ってもらうというところからスタートしました。しかしその後、自分が検査を受けて睡眠時無呼吸症候群と診断されたとき、私は「それなら患者として自社の製品を使える!」と思いました。そして、競合相手の製品を知るため、他社の製品も片っ端から自分で試してみようと考えたのです。 日本で買えない製品は、アメリカで6年ほど仕事をしていたときの知人を介して、インターネットのサイトで入手しました。ベッドの周りにはありとあらゆるCPAP装置やマスクが置かれ、私の寝室はさながら実験室のようでした。毎晩違う機械を使っては、朝起きた時に「これは気持ちよく起きられた」「これはダメだ」と、それぞれの製品の長所・短所を徹底的に比較・研究しました。 今回開発したJPAPは、その研究を元に医師たちと議論をしながら、「自分が使うための機械」として開発したというところがあります。ですから、私が現時点でベストなものを作ったと思っていても、一方ではいいと思わないという意見も出てくるかもしれません。また、それまでのメトランの製品は、使う人のことをそこまで突き詰めて考えて作っていなかったという反省もあります。CPAPの良し悪しは「呼吸仕事量」で決まるCPAP装置の良し悪しを判断する指標のひとつに、私たちの専門用語で「呼吸仕事量」と呼んでいるものがあります。私たちが普段呼吸しているときには周りにいくらでも空気があるので、息を吸ったからといって周囲の圧力が下がることはありませんが、CPAPではマスクをつけ、機械を通して呼吸をサポートしてもらうことになります。ですから、たとえばスーッと息を吸うときに機械がサポートしてくれるとより楽に息を吸うことができます。 このサポートの仕方が適切でないと、息を吸おうと思ってもガスが入って来ないので息が吸えなくなりますし、息を吐こうと思ったときに機械が制御して圧を下げてくれないと余分な力が必要になります。つまり、呼吸仕事量がよくない機械は患者さんにとって使いづらいものとなってしまうのです。このことは人工呼吸器を扱ってきた我々メトランにとっては当たり前のことですが、睡眠時無呼吸症候群の領域では医師も含めてあまり議論されていません。患者さんの使い心地が軽視されているCPAP治療私は、CPAPを使うからには快適な睡眠を提供できなければ意味がないと考えています。私が初めて睡眠時無呼吸症候群の治療を受けたとき、最初の3ヶ月は眠くて仕方がありませんでした。CPAPを使っているのになぜこんなに眠いのだろうと思って医師に尋ねたところ、寝ている間に足がピクピクと動く病気、つまり周期性四肢運動障害があるから薬で治療をする必要があるという説明を受けました。 しかし、私にはどうも納得がいきませんでした。そこで自分でいろいろ考えてみると、たしかにCPAPのおかげで物理的に気道の抵抗を下げることができ、無呼吸は起こらなくなりましたが、脳は休んでいないのではないかと思ったのです。CPAPに加温・加湿が必要だという間違った常識CPAP治療では、圧力を発生させるブロアーと呼ばれる機械や加湿器を通して空気を送り、マスクをつけてそれを吸う必要があります。しかし、いろいろと調べてみたところ、加湿器がないと湿度が与えられないというのはおかしいのではないかと思いました。 一般的には寝室の平均湿度はだいたい50〜60%ですから、それよりも少しだけ余分に湿度を与えれば、普段我々の身体が感じている空気の温度や湿度に近い状態が保てるはずなのです。人間の呼吸器は本来、素晴らしい加温・加湿の仕組みを持っている鼻から吸い込んだ空気は鼻腔で乱流を起こし、粘膜から湿度と温度が与えられます。気管支に達するときには、ほぼ体温に近い温度に暖められ、湿度もほとんど100%の状態です。気管支が十分に潤っているおかげで、繊毛がバクテリアや細菌、ゴミなどを痰として体外に排出でき、マイナス数十度の外気を吸っても死なないのです。これは人間の持っている素晴らしい加湿・加温器の機能であるといえます。 一方、手術をするときには気道を確保するために人工呼吸器で気管内に挿管をします。気管内にビニールチューブを入れると、鼻腔から肺に至る呼吸器粘膜が持っている加湿・加温性能がすべてバイパスされてしまうため、もしも人工呼吸器から加湿していないドライガスを入れると人は死んでしまいます。ですから、人工呼吸器の加湿器は37度の温度と100%の湿度を厳密に維持することが求められます。 しかし、これに対して睡眠時無呼吸症候群の場合はマスクを使っています。つまり、鼻の機能はそのまま生きているので、基本的には加温・加湿の必要はありません。 ただし、圧をかけて空気を送り込むと通常の呼吸時よりも少し流速が速いので喉が渇きます。ですから、その分だけ少し湿度を補えば済むのですが、海外のメーカーのアプローチの仕方はそうではありません。今述べたような患者さんの状況に基づいて開発するのではなく、「呼吸補助」には当然のごとく「加湿器」と「ヒーターで温める」ということがセットになっているのです。暖めた空気を一晩中吸っているとかえってよく眠れない?深部体温との関係マスクで吸っているところへ30度に加温された空気を送るのは、私自身は決して良い方法だとは思いません。たしかに暖められた空気が入ってくると気持ちよく感じるという人もいます。私もそのことは否定しませんが、朝まで一晩中30度の熱い空気を吸っていたら、私個人の感覚としてはとても寝ていられません。 そこで私がいろいろな文献を調べてみたところ、眠っているときの深部体温が起きているときよりも0.5〜0.7度下がらないと脳が休めないという論文を見つけました。海外製のCPAP装置はどれも30度ぐらいに加温した空気を送るようになっていますが、私たちが開発したCPAPは加温していない常温のままで空気を送っています。たしかに使い始めに暖かい空気を吸うと、そのときは気持ちがいいと感じますが、8時間の睡眠中ずっとそれが続いてもいいというわけではないというのが私の考えです。開発者から見たCPAP治療の課題私はこれまで主に小児や未熟児用の人工呼吸器の開発に携わってきましたが、残念ながら人工呼吸器を自分で使ってみて確認することはできませんでした。ところが自分が睡眠時無呼吸症候群(SAS)であることがわかり、患者としてCPAPを使う立場になってみると、様々な問題があるということがわかってきました。 たとえば病院で患者さんにCPAPの機械を貸し出すと、次の月に受診するまでの間、患者さんが実際にどのように使っているのかということがわかりません。 CPAPは機械やマスクによってその最大圧力の設定を調整する必要があります。CPAPの治療における様々な問題睡眠時無呼吸症候群の治療に携わっている医師がCPAPのことをよく知らされていないというケースも珍しくありません。人工呼吸器にしてもCPAPにしても、医師が経験を積む機会がまだ少なく、特にCPAPの分野では、海外の大手メーカーも機械のアルゴリズムを絶対に教えないようにしています。 私は先日、ある医師から教育講演を依頼されたとき、自社製品のアルゴリズムを全部公開しました。そうしなければCPAPの機械が実際にどのように制御されているのかということが医師にわからないからです。現状では、それを理解しているのは医療機器販売会社の社員だけですが、肝心のところは公開していないというのが実際のところです。CPAP治療からドロップアウトした患者さんのリスクとは現在、CPAP治療からドロップアウトする患者さんは30%以上と言われています。睡眠時無呼吸症候群の患者さんはおよそ40万人とされていますから、その30%というと12万人になります。一方で、睡眠時無呼吸症候群の治療を受けないと、30%の人が将来糖尿病になるというデータもあります。 つまり、40万人のうち治療を拒否した人たちが30%いて、そのうちの30%、3〜4万人の人たちが糖尿病や高血圧になるということです。これは社会的にも極めて大きな問題です。なぜそれほど多くの患者さんがドロップアウトするかというと、睡眠時無呼吸症候群の治療をしている医療機関であっても、メーカーから提供される情報が十分でないことなどから、CPAPの使い方を正しく理解されていないところが多いからだと思います。睡眠時無呼吸症候群の治療はどうあるべきか私は知り合いのある先生のところで、患者さんにCPAPの機械を渡すときの様子を実際に見せてもらったことがあります。 暗い部屋に入るとベッドで患者さんが横になっていました。先生はCPAPの機械をつける前に、左右の鼻がどれくらい詰まっているかなど、患者さんの状態を細かくチェックしていました。普通はなかなかそこまで調べないのですが、患者さんの鼻の状態がどうなっているかわからないと、用意したマスクが合うかどうかもわかりません。多くの医療機関では販売会社の社員が持ってきたものをただ言われるままにつけるだけなので、患者さんがどう感じているのかわからないのです。 普段よく眠れていないせいか、患者さんはCPAPの機械をつけると5分ほどで眠ってしまいましたが、その場には患者さん本人だけでなく、奥さんにも一緒に来られていました。その先生は患者さんのベッドパートナーにも必ず来てもらうようにしているそうです。 先生は患者さんが眠ってから30分ほど経ったところで、いきなりAC電源のコードをコンセントから引き抜いて、もしこうなったらどうすればいいと思いますか?と奥さんに尋ねました。なぜそんなことをするかというと、地震などの災害が起きて停電になったときの対応をベッドパートナーの方が知らないと困るからです。そのために、患者さんだけでなくベッドパートナーの方にも使い方をすべて説明してからCPAPの機械を渡すのです。患者さんや医師のためにメーカーとして行なっている取り組み私は今後、呼吸仕事量を測るモニターを商品化して医師が使えるようにしたいと考えています。そうすれば患者さんが楽に呼吸できているかどうか、人工呼吸器のように波形ですべてモニターすることができます。そういったことを考えていかなければ、最終的に患者さんのQOL(生活の質)を高めることにつながりません。 メトランで考えている治療というのは、患者さんのQOLを含めたものです。未熟児用の人工呼吸器で言えば、ただ赤ちゃんが退院できればいいというのは医療の仕事ではありません。その赤ちゃんが後遺症のない人生を送れるようにすることが本当の意味での治療なのです。今までの治療は赤ちゃんが命を落とすことなく退院するということが目標だったのですが、私の考えは違います。 睡眠時無呼吸症候群の治療装置も未熟児用の人工呼吸器と同じように、単に呼吸が止まらないというレベルの製品を作るというのは、私たちメトランの目指すところではありません。患者さんはマスクをつけて眠るという煩わしさを我慢して治療をするのですから、その犠牲に対してもっと快適な眠りを提供し、脳がしっかりと休めるような睡眠体験が得られるようにするべきです。私自身が患者として自社製品を使っているからこそ、睡眠時無呼吸症候群の治療を今後そのレベルまで引き上げていかなければならないと考えています。 今回開発したJPAPが目指すところも同じです。目的は呼吸が止まらないようにする治療ではありません。本当に大切なのは快適な睡眠、快適な生活が送れるということです。そのために私はもっと快適な機械をこれからも作っていこうと考えています。
2017年10月10日<ドクターズインタビュー>東京都内に複数の診療拠点を有する医療法人順齡會では理事長の西澤寛人先生が早くから睡眠時無呼吸症候群の診療に力を入れ、2017年からは患者さんの利便性と満足度を高めるために遠隔診療を導入しています。ご自身もCPAPユーザーであり、港区と江東区のクリニックを行き来しながら、遠隔診療を活用してきめ細やかな診療に取り組んでいる西澤寛人先生にお話をうかがいました。【西澤寛人先生】医療法人順齡會赤坂おだやかクリニック理事長(医療法人順齡會おだやかライフ内科クリニック院長併任)CPAPを中断してしまう患者さんはどれくらいいるのかCPAPで治療を開始した患者さん全体の約5%は継続が難しく、スリープスプリントと呼ばれるマウスピースを使ったOA(Oral Appliance: 口腔内装置)治療に移行する患者さんもいらっしゃいます。CPAPもスリープスプリントも使えないという患者さんはあまりいませんが、睡眠時の無呼吸が重症の場合にはスリープスプリントだけでは改善が難しい部分があり、その点がひとつの課題であると思います。医療者のきめ細かな対応でCPAPからの離脱はもっと減らすことができる患者さんがCPAPをやめてしまう理由としては、ひとつには使うのが面倒だということもあるのでしょうが、実は他の病院から私たちのところへ移って来られた方たちを診ていて気がついたことがあります。これは、最近急激に伸びてきた睡眠時無呼吸症候群に対する医療の今の限界なのかもしれないと感じているところでもあります。医療機器メーカーの広報や営業活動の後押しもあり、睡眠時無呼吸症候群が広く知られるようになったことで、それまでまったく経験のなかった医師が睡眠時無呼吸症候群の治療を始めるというケースも増えてきました。しかしその結果、CPAPを導入はしたものの、使い方の指導が十分行き届いていないということもあるのではないかと思います。CPAPは使う人に合わせて細かく設定を変更することができます。患者さんによっては初期設定のままでは圧が強すぎたり弱すぎたりすることがありますし、状況によってはある設定項目のオン・オフを切り替えると、もっと呼吸が楽になるような細かな設定が用意されているのです。ところが、転院されてきた患者さんが使っているCPAPの機械の設定条件を見ると、メーカーが出荷したときの設定とまったく同じだということがしばしばあったのです。本来ならば、患者さんが苦しくて途中で外してしまうようなことがあれば必要以上に圧がかかっていたりすることが考えられるので、設定を見直してみるべきです。たとえば、息を吸うときには圧がちょうどよくても、息を吐くときには機械から送り込まれる空気と吐く息がぶつかって息をしづらくなります。そこで最近の製品では、息を吐く呼気時に圧を自動的に少し下げる機能がついています。その設定を適切に調整すると、息を吐くときにも苦しい感じがしなくなり、一晩中つけていられるようになったという方も実際にいらっしゃいます。マスクも多種多様で、口・鼻を覆うものから鼻だけのもの、サイズも大きいものから小さいものまであります。ですから、マスクを替えてみるということも含めてさまざまな提案をすることによって、患者さんが楽にCPAPを続けられるようになると思います。また、当院ではCPAPのメーカー3社と契約していますので、ある会社の機械が合わなかった場合は別の会社の機械に替えてみるということもできます。保険点数は決まっていますから、患者さんが負担するコストも変わりませんし、実際に別の機械に入れ替えてみたらよくなったという患者さんはいらっしゃいます。さらに、Travel CPAPといって通常よりコンパクトな製品もあります。小型軽量でかさばらないので出張にも持って行きやすく、使用率も上がるので海外出張が多い方などには喜ばれています。その患者さんのニーズに合わせた提案をどれだけできるかということによって、CPAP離脱率はある程度低くなると思います。当院では離脱率は2〜5%と非常に低く、むしろ睡眠時無呼吸症候群が改善してCPAPから離脱するというケースがあるくらいです。かなりの肥満だった方が減量に成功したり、CPAPを使っているうちに喉が少し広がるようになって無呼吸が少なくなることもあります。再検査をして実際に無呼吸低呼吸指数(AHI)が減っているのでCPAPをやめたという患者さんも当然いらっしゃいます。睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療は安易に行われすぎているレンタルでCPAPを使っている患者さんが保険診療代を払いに来てくれないというような声を病院側から聞くことがありますが、私からみればきちんと診療をしていないから患者さんが来ないという面もあるのではないかと感じます。ただ使用料だけを払いに来させているようでは、やはり患者さんも病院に行く意義を感じないでしょう。普段から患者さんの話を聞いて、それならばこういう設定にちょっと変えてみましょう、というような提案ができていれば、患者さんもCPAPの調子が悪いから病院に行こう、先生に相談しようという話になるのではないでしょうか。患者さんからみた場合、どの医療機関がいいのかということは本当にわかりません。私が遠隔診療で診ている患者さんの中でもっとも遠方にいらっしゃるのは福岡の方です。その患者さんはいったん福岡のクリニックに紹介状を出して診ていただいていたのですが、2カ月後に患者さんが飛行機でわざわざ当院に来られたのです。私が驚いて事情をお尋ねすると、紹介先の医師は患者さんが持って行ったデータを見ようともせず、毎月保険診療代を払いに来てくれればいいと言わんばかりの態度だったというのです。その先生のところにはもう行きたくないと患者さんがおっしゃるので、それなら私が遠隔診察でやってみましょうとご提案して、今は2カ月に1回、福岡との間で遠隔診察をしています。ただし、CPAPの細かい設定などはできないため、患者さんが仕事で東京に出張される時に赤坂に立ち寄っていただき、そこで行うようにしています。私たちは睡眠時無呼吸症候群の患者さんを医療で幸せにして、さまざまな合併症から救っていかなければいけないと考えて診療にあたっています。睡眠時無呼吸症候群を診ている者の責任として、ビジネスのために睡眠時無呼吸症候群を利用することはやめてもらいたいと思っています。睡眠時無呼吸症候群の診療を行っているとされる医療機関の一部には、CPAPの設定などは業者さん任せにして、窓口で患者さんからお金をもらってメーカーに使用料を払っているだけというようなところもあることは事実です。CPAPは保険診療でも1カ月に4,700円ほどかかりますから、それだけのお金を患者さんが負担するからには、もう少ししっかりと適切な医療が受けられるようにしなければいけないと考えています。当院では虎の門病院睡眠呼吸科の成井浩司先生に顧問になっていただいていますが、私が大学院にいたときから成井先生のことはよく存じ上げていました。私はもともと心臓が専門で不整脈を診ていたのですが、不整脈の発生原因に睡眠時無呼吸症候群が大きく関わっているということを知り、関心を持つようになりました。まだ睡眠時無呼吸症候群が今のように知られていなかった頃から、血圧が高くてなかなかよくならない患者さんを見つけると、睡眠時無呼吸症候群があるのではないかと片っ端から検査をして、今日まで診療を続けています。経験や知識がない医師までもが睡眠時無呼吸症候群の診療を安易に始めている現状は止めようがありませんが、これでは患者さんがかわいそうだと思います。遠隔診療導入の背景患者さんにしてみれば、毎月病院に行くというのは誰しも負担に感じるはずです。毎月1回病院に来てくださいといっても、実際にはなかなか難しいところがあります。本来は毎月診るべきなのですが、実際に患者さんが来なかったときには保険診療の制度上、2カ月分さかのぼって算定できるということになっていますので、私たちのところでは実質的には診察を2カ月に1回という形にしています。そうすれば私が赤坂だけではなく、江東区南砂町のクリニックにいるときに患者さんを診ることもできます。実際、先日は江東区のクリニックから福岡にいらっしゃる患者さんを遠隔で診察しましたし、その前にはこの赤坂のクリニックからも診ています。遠隔診療では患者さんとつながることができれば、私がどこにいてもいいのです。私と患者さんとの間に画面があるだけで、対面の診察と変わりはありません。患者さんが遠隔診療のアプリから予約を取ると自動的に予約が入るので、私がパソコンからその日の診療呼び出しをすると、患者さんのスマートフォンでも呼び出し音が鳴ります。患者さんが電話に出るときと同じ要領で出ると、私のパソコン上でも患者さんが画面に出てくるという形です。診療報酬はクレジットカードで決済します。医療は対面でなければ、という考えの医師もいると思いますが、もうそういう時代ではなくなってくると思います。今や厚生労働省の課長クラスの方たちからも「医療はサービス業」という言葉が聞かれるようになっていますし、私自身もそう思っています。医療におけるサービスというものを考えると、患者さんに対して上から目線で病院に来なさいというような診療ではなく、いかにその患者さんにもっと病院を利用してもらいやすくするかということに重点を置いていかなければなりません。私は患者さんの利便性が良くなり、その利便性向上のおかげできちんと通院ができるようになり、健康管理ができるほうが有益だと考えています。逆に時間がなくて病院に行けないから薬をもらえなかったというほうが、よほど健康には不利益です。病院も患者さんの事情に合わせていける部分についてはサービスを強化していけばよいのではないでしょうか。
2017年09月28日<ドクターズインタビュー>東京都内に複数の診療拠点を有する医療法人順齡會では理事長の西澤寛人先生が早くから睡眠時無呼吸症候群の診療に力を入れ、虎の門病院と医療連携を結んで質の高いきめ細やかな診療を行っています。医療法人順齡會グループの4施設のひとつ「赤坂おだやかクリニック」で、西澤寛人先生にお話をうかがいました。【西澤寛人先生】医療法人順齡會赤坂おだやかクリニック理事長(医療法人順齡會おだやかライフ内科クリニック院長併任)睡眠時無呼吸症候群の受診と検査の流れ私たちの睡眠時無呼吸症候群外来を受診される患者さんは現在かなり多く、初診の患者さんはこの赤坂のクリニックだけで月に50から100人というところです。まず初診で来られた方には自宅で行う簡易検査をしていただいています。この簡易検査の結果だけでも、たとえば仰向けで寝たときに無呼吸が多いことや、横向きに寝ると無呼吸がまったくないなど、かなり詳しいことがわかることがあります。簡易検査でそれほど異常がない患者さんに関しては、横向きで寝るための枕を使って様子をみていただきます。横になって寝ていてもある程度無呼吸がみられる方や、かなり高い頻度で無呼吸がありそうな患者さんに関しては、終夜睡眠ポリグラフ(PSG検査)という、より精密な検査を受けていただくことになります。PSG検査に関しては、医療機関にひと晩泊まって行うパターンと在宅で行えるパターンの2つがありますが、最近は在宅での検査を選ばれる方がほとんどです。在宅での検査でも、ご自分で顔に5か所電極を貼っていただくと脳波を測ることもできます。ご自宅での脳波測定は医療保険の診療報酬算定でも認められているので問題はありません。ただし、ご自分で電極をつけることが難しい患者さんの場合には入院して検査を受けていただきます。入院の場合は、医療連携を結んでいる虎の門病院に電話を入れ、入院日を調整して予約を入れます。患者さんは直接虎の門病院へ行っていただき、検査を終えて退院されると結果がこちらに送られてくるという流れになっています。入院での精密検査の場合は、検査費と入院費、ベッド代等で約4〜5万円かかります。一方、自宅でご自身が行う場合は検査費用と再診料ぐらいしかかからないため、コスト的にも1万円ちょっとの負担で精密検査ができるというメリットがあります。また、夕方入院して翌朝帰れるといっても、一晩中病院に拘束されたくないという方もいらっしゃいますし、病院のベッドではなかなか眠れないという方もいらっしゃいます。そういった点でも在宅の検査は患者さんにとても喜ばれていて、当院を受診される方は在宅の検査を選ぶことが多くなっています。花粉症・アレルギーの患者さんにも実は睡眠時無呼吸症候群の人が当院では花粉症やアレルギーで受診される方も多くいらっしゃいますが、実は花粉のシーズンだけでなくいつも鼻が詰まっていて苦しいというので検査をしてみたら、実は睡眠時無呼吸症候群だったというケースもあります。その場合には鼻の状態をよくすれば睡眠時無呼吸症候群がある程度改善され、症状がよくなるという患者さんもいらっしゃいます。夜、何度も目が覚めてトイレに行くのは睡眠時無呼吸症候群かも?睡眠時無呼吸症候群では、夜寝ている途中で何回も目が覚めてしまうということがよくあります。また、トイレに行く回数が多いというのも、実は無呼吸が原因で睡眠が浅いためにしょっちゅうトイレに起きているという可能性があります。ですから、患者さんの悩みが「何度も目が覚める」「トイレが近い」というものであっても、もしかしたら睡眠時無呼吸症候群かもしれませんのでいびきをかいていないかご家族に訊いてみてください、というお話をすることがあります。ある程度年齢が高くなると、夜に何回もトイレに起きるので気になって泌尿器科に相談するという方も多くなります。男性であれば前立腺肥大かもしれないということで薬を出してもらっていたり、女性でも頻尿の薬を出してもらっている方たちの中には、実は睡眠時無呼吸症候群だったというケースもあると考えます。女性の場合、更年期を境に睡眠時無呼吸症候群が多くなってくるため、更年期前は意外に少ないという特徴があります。その一方、男性では年齢にあまり関係なく発症しています。現在、私たち順齡會グループの中でもっとも若年のCPAPユーザーは8歳です。そのお子さんは扁桃腺が大きいため寝ていると1時間に50回ぐらい呼吸が止まっていたのですが、年齢的に手術はまだしたくないというので今はCPAPを導入しています。意外に見過ごされている子どもの睡眠時無呼吸症候群これからは子どもの睡眠時無呼吸症候群も重要になってくるのではないかと思います。現代は飽食の時代ということもあり、肥満のために子どものうちから無睡眠時無呼吸症候群が起こることもありえます。その結果、学校で集中力がなくなったり授業中に眠くなってしまうことも考えられます。居眠りをして学校で怒られてしまうようなお子さんの中にも、実は睡眠時無呼吸症候群だったというケースがあるのではないかと思います。お父さんお母さんからみて、学校でよく寝てしまうと怒られる、集中力がない、太り気味である、いびきをかいているなどの条件が当てはまるようであれば、睡眠時無呼吸症候群の検査を一度受けていただいてもよいのではないかと考えます。あまり小さいお子さんは難しいと思いますが、小学校中学年ぐらいから上の年齢であれば検査をして診断することは十分可能です。睡眠時無呼吸症候群の治療-CPAP治療とOA治療について精密検査の結果、AHI(無呼吸低呼吸指数)が20以上の患者さんはCPAP(Continuous Positive Airway Pressure;持続陽圧呼吸療法)の適応となるので、多くの場合は治療としてCPAPの導入を行うということになります。ただし、CPAPの使用が難しい、あるいは使いづらいという患者さんにはOA(Oral Appliance: 口腔内装置)治療といって、スリープスプリントと呼ばれるマウスピースを作製し、寝るときに装着するという治療を行います。マウスピースに関しては現在、保険で使えるものと保険外のものがあります。いずれも下顎を少し前に出すことによって舌が落ちないようにして寝るというものですが、多少顎関節が痛くなるという難点があります。また、保険で使えるマウスピースは一体型で口を開くことができないため、少し苦しいと感じることもあります。保険外のマウスピースには、上下が分離式になっていて口を開くことができるソムノデントという製品がありますが、機構は同じなのでやはり顎関節が少し痛くなる方もいらっしゃいます。マウスピースは歯科医院で専用のものを作ってもらう必要がありますが、当院では連携している歯科医院をご紹介するか、もしくは医療連携を結んでいる虎の門病院の歯科で作ってもらうという形をとっています。鼻から挿入するチューブはCPAPが使えない状況で補助的に利用するいびきを改善するために鼻からナステントというチューブを挿入する方法がありますが、たしかにそれを使うことによって睡眠時の無呼吸がよくなる方はある程度いらっしゃいます。舌根(ぜっこん)が喉の奥の方に落ちてくると空気の通り道が狭くなっていびきになります。そこに圧をかけながら空気を送り込んで狭くなっているところを広げるというのがCPAPの仕組みです。一方、ナステントは最初からチューブを入れておいて舌根が喉の奥にぶつからないようにするというのが基本的な考えで、空気の通り道がそこで確保されます。私がナステントを処方しているのは、普段CPAPを使っている方が海外旅行で長時間飛行機に乗るような場合が多いです。現在、JALやANAの機内ではCPAPを使うことができるとアナウンスされていますが、状況によっては機内でのCPAP使用が難しいこともあるため、そのような場合にナステントを使って寝るようにしてもらっています。私自身も睡眠時無呼吸症候群でCPAPを3台所有しており、普段寝るときにはCPAPを使っていますが、海外旅行に行く飛行機の中では、機内食が出た後にナステントを鼻に挿して寝るようにしています。ナステントは一時期販売を見合わせていましたが、販売再開にあたって提供方法が変更となり、現在は医療機関で医師の指示書を入手していただいて購入することになっています。医療機器として登録されている製品ですから、私も本来はそういった形のほうが適切であると思います。患者さんの判断だけでナステントを購入して使い続けていると心配な面もあります。患者さんとしてはいびきが減るのでナステントだけを使っていても満足されるかもしれませんが、仮に80だったAHIが半減して40になっていたとしても、AHIが40というのは依然として重症の状態であり、何ら治療をしていないのと変わりません。つまり、合併症や今後の生命予後などのリスクが十分低減できていない状況なのです。ですから、ナステントを処方するにしても、最低でも簡易検査をした上で本当にナステントだけでいいのかどうかというところを患者さんにきちんと説明するべきであると考えます。
2017年09月28日<ドクターズインタビュー>日中の強い眠気に悩む方も多いのではないでしょうか?ナルコレプシーを疑い受診される方もいるようですが、多くは、自分自身でも気づかない睡眠不足であることが多いようです。東京女子医科大学病院睡眠科の鈴木真由美先生にお話をうかがいました。【鈴木真由美先生】東京女子医科大学病院睡眠科ナルコレプシー?実はほとんどが睡眠不足症候群ナルコレプシーとは、日中眠ってはならない状況下でも無意識に眠りこんでしまうが、目覚めた後は何事もなかったように元の状態に戻り、しばらくするとまた、「睡眠発作」に見舞われるのが特徴です。笑ったり驚いたりすると全身の力が抜けてしまう「情動脱力発作」、「入眠時幻覚」や「睡眠麻痺(いわゆる金縛り)」も頻繁に起こります。患者さんは若年層に多く、多くが10~20歳代で発症します。そのため、学校生活や就労で支障をきたすようになり、大学の保健センターや産業医などを通して私たちの睡眠科に来られることが多いです。ところが、昼間眠くて仕方がないとおっしゃる方を実際に診療してみても、ナルコレプシーと診断される方は多くはありません。そのほとんどが睡眠不足症候群です。しかし、ご自分が睡眠不足だということには案外気づいていません。ご本人は昼間に強い眠気があるから過眠症だと思っていても、実際の睡眠時間をよく聞き、4〜5時間だというような場合、もしくは、休日の睡眠時間が平日の睡眠時間より2時間以上延長している場合、睡眠不足が原因だと思って間違いありません。日中の眠気はいつから?患者さんのこれまでの生活を振り返る私はいつもその方の人生の中で普通に生活できていた頃のお話をうかがうようにしています。「そのとき何時間ぐらい睡眠をとっていましたか」「どんな生活をしていましたか」と質問していくと、ご本人も今の睡眠時間が短いということに気がつきます。必要な睡眠時間は人によって違うので、ナポレオンのようにショートスリーパーの方もいれば、10時間ぐらい寝ないとダメだというロングスリーパーの方もいます。ですから、単なる睡眠不足の方に対しては、「あなたは残念ながらナポレオンのようにショートスリーパーではないのですよ」というところから話を始めます。たとえば数年前、今のような眠気がなかった頃には睡眠に7時間使っていたとして、その後仕事が忙しくなって睡眠時間が4時間に減ってしまったとします。ちょうど睡眠時間が短くなった頃から日中に強い眠気を覚えるようになっていませんか、あなたの歴史はこうですよね、というふうにお話をしていくと、ご本人も思い当たる節があるということが多いです。しかし、それと同時に、「周りの人も同じような生活をしているのに自分だけ睡眠が足りないのはおかしい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。それは人によって睡眠時間が違うからですよということをお話しするのですが、それでもやはり半信半疑という方が多いです。睡眠不足症候群の治療の進め方そこでまず1か月間、私が指示するように睡眠時間を確保していただき、睡眠衛生指導についてもご説明して睡眠日誌に記載していただくようにしています。睡眠時間が長くなると、睡眠日誌の「昼間に眠くなる」という項目にチェックが入る頻度が減ってくるということを実感して、ご自分で認知してもらうということを繰り返していきます。睡眠日誌の中で普通に生活ができた日を振り返ってみて、睡眠時間を確保するために何をしたか、それにより昼間活動度がどのようにあがったか行動変容を確認し、仕事の業務整理などを提案していくという順序で進めていきます。それでもなお眠気が2時間おきに起きるような状況が日常的に続くとなると、やはり覚醒障害の疑いがあります。その場合はナルコレプシーなど過眠症の可能性を考え、専門的な検査に進んでいただくという形をとっています。加えて今はスマートフォンを寝床に持ち込んだり、遅くまでパソコンをしていたりと、夜間に光を浴びすぎる人が多くなっています。夜間からメラトニンという熟睡ホルモンが分泌されていくのですが、強い光を浴びるとそれが低下してしまうため、熟睡できなくなるのです。したがって、若い方の場合は、夜間の光の制限と睡眠時間の確保ができれば、昼間の眠気は改善することが多いです。さらに、やせた若い方でも顔の骨格の問題で睡眠時無呼吸の方がいるため、睡眠時無呼吸のチェックをすることも重要です。睡眠日誌は、患者さん自身にとって重要睡眠日誌を記載することは、診療に必要な情報を得るということと同時に、患者さんにも認知してもらうという意味があるため、原本をご本人に返しています。もし通院をやめて私たちのところへ来なくなっても、睡眠日誌が患者さん自身の手元に記録として残っていれば、ときどき思い出してご自身で振り返っていただくことができます。そういった意味でも睡眠日誌はとても有効なツールになります。体内時計のサイクルがずれる?睡眠覚醒概日リズム障害とは睡眠覚醒概日リズム障害にはいくつかのタイプがありますが、若い方に頻度が多いのが、睡眠相後退症候群です。これは寝る時間が遅い時間にずれていくため夜更かしになり、朝起きられなくなる(起床困難)というものです。たとえば大学で夜型の生活をしていた学生さんなどは、社会人になったからといって、4月からいきなり朝6時起床のサイクルには適応できないため、出社困難、遅刻、昼間の居眠りなどで就労に支障をきたします。実際に春先から5月頃にかけて、産業医を通じて私たちのところにも睡眠覚醒概日リズム障害の若い方たちがたくさん受診されます。睡眠相後退症候群の原因とは睡眠時間帯の遅れる原因のほとんどは、夜遅くまで起きていて、パソコンやスマートフォンを見過ぎていることですが、中には夜遅くまで試験勉強を続けて、夜型になった人もいます。そのうち、寝ようと思っても寝付けなくなってしまい、朝になりようやく眠りにつくようになり、その結果起床時間が遅れることになります。夏休みや年末年始など長期の休みの後に睡眠相後退症候群になりやすい傾向があります。睡眠相後退症候群の治療朝の日光を浴びて、朝食をきちんととるという指導をすることからはじめます。夜早く寝ることよりも、朝起きるところから始めることが大切です。朝の光を浴びた約14時間後にメラトニン(熟睡ホルモン)の分泌が始まります。また、私たちの体には体内時計があり、それにより昼夜に適した生活ができるようになっていますが、実は24時間よりも長い周期で動いています。地球の24時間周期に合わせるのが、朝の光です。体内時計には中枢(脳)の時計と、末梢(身体)の時計があり、筋肉や消化機能がうまく活動するには中枢時計からの指令を受けるシステムになっています。長時間絶食後、食事をとることは末梢の時計に直接働くルートがあるため、身体の体内時計を動かすために朝食をとることが重要となります。睡眠相後退症候群で受診される若い方たちの場合は、早く受診していただければ、これら睡眠衛生指導で多くの方が治ります。高照度の光を浴びて体内時計をリセットする光療法が有効です。メラトニン受容体に作用するラメルテオン(ロゼレム)という薬も効果がある方がいます。私がラメルテオンを処方する場合、通常の用量(1日1回8mg)より少量を投与します。極端に痩せた若い高校生ぐらいの女の子などであれば8分の1のときもあります。ラメルテオンにはメラトニン受容体に作用して体内時計を調節することと、それによる自然な眠りをもたらすという2つの役割がありますが、「体内時計を調節する」ということを実現するには少量で十分です。睡眠薬としては、従来のものに比べると効果が現れるまでに時間がかかるといわれていますが、体内時計を調節するという意味では比較的すぐに効果があり、よく効く方の場合は服用を始めてから数日で睡眠時間帯が移動していきます。しばらくはずっと服用を続けながら睡眠日誌を記載していただき、生活指導を行なっていきます。生活指導で改善するということは、元の生活に戻ればまたすぐに睡眠のリズムが乱れるということでもあり、それだけ環境因子の影響が大きいということなのです。朝日を浴びて体内時計をリセットするには?特に一人暮らしで朝起きられないという方は、窓のカーテンを閉めないで寝るようにしてもらっています。ほとんどの場合はそれでうまくいくことが多いのですが、なかなか改善しない患者さんがいらっしゃいました。「日当たりが悪いのですけど、一応カーテンを開けっ放しにしています」ということでした。その患者さんの照度と活動度を測ってみたところ、朝でも照度が低かったことが判明しました。そこで、実際に照度計でご自分の家の照度が低いということを認識していただき、どうしたら十分な照度になるか工夫していただいたのですが、結局家の外に出るしかありませんでした。診察室で患者さんを診るだけではなく、その患者さんの生活環境を知っておくということも大切なことだとつくづく思いました。このような場合は、朝起きたらまず1回外に出ることを勧めています。新聞を取りに行くのもいいでしょう。とにかく外に出れば、たとえ雨でも曇りでも、室内の蛍光灯の下よりは屋外の方が明るいのです。睡眠覚醒概日リズム障害には光感受性が関係している?睡眠覚醒概日リズム障害になりやすい人とそうでない人の違いは、よくわかっていませんが、一説には、光の感受性が関係するといわれています。光の感受性をよくするといわれるビタミンB12が効く人もいます。ビタミンB12は坐骨神経痛などの神経障害などに用いられます。たまたま私の患者さんの中に坐骨神経痛でビタミンB12を服用していた方がおられたのですが、服用をやめた途端に起床時間が遅れるようになりました。患者さんからも薬をやめると、起きずらいというのでビタミンB12を処方したところ、起床睡困難がピタリと治ったのです。生活指導は6ヶ月続けるのが目安特定保健指導などでも習慣づけにはおよそ6ヶ月必要だといわれていますので、私が患者さんの生活指導を行うときにも6ヶ月ぐらいかけるようにしています。月に1回来ていただくようにして、それを6ヶ月続けます。その間は患者さんに寄り添い、睡眠日誌を見ながら「ほら、できるようになりましたね」「じゃあ、ここはもうちょっと頑張りましょう」といって伴走しながら、最終的には卒業するという形になります。そのときには、それまでつけていた睡眠日誌をお渡しして、これからは自分で睡眠日記をつけながら環境調整をしてみてくださいとお伝えしています。そうすると、それほどドロップアウトする人はいなくなると思います。また、職場が変わったときなどは環境が乱れやすくなるので気をつけていただき、何かあれば早めに受診していただくことが大切です。非24時間睡眠覚醒リズム障害とは?症例としては多くはありませんが、睡眠相後退症候群を放置しているとそのままどんどん後ろへずれていってしまい、Non-24-Hour Disorder Resource(非24時間睡眠覚醒リズム障害)と呼ばれる状態になる場合があります。前述したように、私たちの体内時計は24時間周期より長いので、それを朝の光で毎日リセットする必要があります。もし不規則な生活などのためにリセットしないでいると、どんどんずれていってしまうというのが非24時間睡眠覚醒リズム障害の基本的なメカニズムです。社会生活を送ることが困難になり、また、元に戻すのが難しくなるので、そうならないよう注意しなければなりません。
2017年08月29日<ドクターズインタビュー>睡眠中に叫んだり暴れたりする症状がみられるレム睡眠行動障害という疾患があります。疾患の特徴やその治療法について東京女子医科大学病院睡眠科の鈴木真由美先生にお話をうかがいました。【鈴木真由美先生】東京女子医科大学病院睡眠科 レム睡眠行動障害とは?睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。レム睡眠のときには身体の筋肉が弛緩してまったく動きません。もしそこで起こされたとしても、いわゆる金縛りの状態になっているのがレム睡眠です。ところが、レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder; RBD)の場合には、その時見ている夢の内容に応じて、身体を動かしたり大声を出したりします。夢の内容はほとんどが悪夢で、たとえば大量の虫や象に襲われるなど非現実的な夢や、泥棒に襲われたり、昔の上司との口論など現実に近いものもあります。レム睡眠行動障害は、年の単位で症状が出現してくることが多いです。まず、悪夢を見るようになり、その後夢の内容に応じて声を出すようになり、そのうちに夢と一致して手や足を動かす(多くは夢の相手と戦ったり、追い払うしぐさをする)ようになります。さらにエスカレートすると隣で寝ているベッドパートナーに手が当たったり、ベッド柵などに手をぶつけて傷めてしまうこともあります。あるいはベッドから転落したり、壁にぶつかってけがをするということもあります。一緒に寝ていた奥様が「あなた、どうしたの」と訊いてみると、「こんな夢を見ていたんだ」と話した内容から、夢の中と同じ行動をしていたということがわかって、これはおかしいということで睡眠科へ来られるというのがひとつの典型例です。レム睡眠行動障害とパーキンソン病など脳の変性疾患との関係レム睡眠行動障害は脳の変性疾患(レビー小体型認知症やパーキンソン病、多系統萎縮症など)の一部分症状、もしくはそれに移行する前駆症状ではないかと捉えられています。実際にレム睡眠行動障害が見つかった方は、その後10年ほど経過するとこれらの神経変性疾患に移行していく割合が一般の方に比べると多いことは事実です。私が、レム睡眠行動障害の方に必ず確認するのは、嗅覚障害がないかということです。嗅覚障害はパーキンソン病などの非運動症状の中でも早くからみられる症状なので、嗅覚障害とレム睡眠行動障害の両方があるとパーキンソン病などのごく初期もしくはパーキンソン病などに進展する可能性が考えられます。その場合には同じ大学病院の中にある神経内科と連携して診てもらうようにしています。東京女子医科大学病院では、他の診療科との間でも同じ電子カルテの中でデータを共有することができます。たとえば脳のMRIなどの場合、私が検査を依頼した結果について、神経内科医が見ることができますし、逆に神経内科医がもう少し高度な脳の機能についても調べてみた場合も、私がそのデータを見られるという形になります。睡眠医療と神経内科領域の連携で対応難病であるパーキンソン病は高齢化にともなってますます増え、レビー小体型認知症もアルツハイマー病の次に多い認知症となっています。睡眠医療と神経内科領域がタイアップして診療を行うことで、日本の高齢社会で大きな課題となる疾患を将来的に予防できるようになるかもしれません。話がずれますが、睡眠領域はいくつもの診療科にまたがっているため、神経内科領域との連携だけではなくいろいろな診療科との連携が必要です。睡眠時無呼吸であれば呼吸器内科や循環器内科も関係してきます。また、うつによる不眠であれば精神科に紹介する必要があります。不眠の原因が鼻づまりなどであれば耳鼻科、マウスピースを作るときには口腔外科と、さまざまな診療科との連携が必要です。レム睡眠行動障害の治療法は?まず、患者や家族に病態を十分理解させ、暴力的行為がもとで家族関係が悪化するのを防ぐことが重要です。ついで、患者自身や配偶者など同室家族に対する傷害を減らすよう寝室の環境調整をします。レム睡眠行動障害と診断されたからといって、患者さん全員に治療が必要なわけではありません。症状出現の頻度が少ない場合、実はそれがレム睡眠行動障害という病気のせいだということがわかると、それだけで安心されて案外落ち着くこともあります。また、仕事のストレスが誘引になっているという方もいます。忙しく働いていたビジネスマンの方たちで、退職したと同時にレム睡眠行動障害が現れなくなったという方もいらっしゃいます。頻繁に悪夢を見、大暴れするなど、症状出現頻度が高い場合、薬物治療を行います。クロナゼパムが有効です。頻度が少なくても継続的にフォローするご本人が通院の必要性を感じなくなっても、年1回程度は来ていただくようにしています。最初脳のMRIを撮らせていただき、前回から、症状出現頻度など変わりないか、神経変性疾患の兆候が出てきていないかなどをチェックしています。レム睡眠行動障害はない方に比べれば、脳の変性疾患を将来発症する率が高いということを認識していただく必要はありますが、兆候が見つかった場合には早めに治療をスタートできるという面で、ある程度安心感につながっているのではないかと考えます。
2017年08月29日<ドクターズインタビュー>睡眠に関する悩みの原因を調べてみると、その中にはさまざまな睡眠障害や別の病気が隠れていることがあります。レストレスレッグス症候群や周期性四肢運動障害など、専門の医療機関でも遭遇することが少ない特殊な症例を診療している東京女子医科大学病院睡眠科の鈴木真由美先生にお話をうかがいました。【鈴木真由美先生】東京女子医科大学病院睡眠科レストレスレッグス症候群とは?レストレスレッグス症候群(Restless Legs Syndrome; RLS)は、夜、じっとしていると脚がむずむずして動かさずにはいられない衝動が生じる疾患で、そのためによく眠れなくなることがあります。私たちの睡眠科を受診される方の中では、不眠症と睡眠時無呼吸症候群の患者さんの割合が多く、レストレスレッグス症候群の頻度はそれほど高くありません。しかし、脚のむずむず感が原因で非常に困っておられる方は確実にいらっしゃいます。中には、他の病院で何剤も薬をもらっているのに少しもよくならないといって、私たちのところに来られるケースもあります。脚のむずむずが不眠の原因レストレスレッグス症候群という病気の存在を知らない方も多いです。不眠を訴えて受診されるのですが、よくお話をうかがってみると、実は脚のむずむず感が原因で不眠になっているということがあります。その場合は、一般的な睡眠薬を使っていても当然効果に限りがあり、レストレスレッグス症候群の治療をすることが重要です。患者さんはインターネットで病気の情報を得ている他の医療機関からの紹介で来られる方もいらっしゃいますが、患者さん自身が当科のホームページを見て来られるというケースもあります。患者さんが本当に困って、ご自分でインターネットなどを駆使して調べた末に、ようやくここにたどり着いたという方も多いという印象を持っています。医師の間でも認知度が低いレストレスレッグス症候群レストレスレッグス症候群に関する知識という点では、医師の教育にも少し問題があると思います。今でも、日本の医学教育の中では、睡眠学という臨床教科はなく、睡眠障害は精神科、呼吸器内科、あるいは神経内科の一部などで扱われているだけです。最近では医師国家試験にも出題されるので、レストレスレッグス症候群について、若い医師たちは勉強しています。ところが、我々の年代やある程度以上のベテラン層になると、レストレスレッグス症候群の認知度はかなり低いという状況です。また、日常診療においても、一般の診療科で患者さんが眠れないことを訴えても、医師はあまりその原因を深く掘り下げようとしない傾向があります。本来の専門領域の診療だけで精一杯なので、不眠を訴える患者さんにはまず睡眠薬を出すという形になってしまっている状況があります。レストレスレッグス症候群の診断レストレスレッグス症候群の診断でもっとも重要なのは、その症状によって脚を動かさずにいられないかどうかということです。症状そのものはむず痒さやほてり感などさまざまに表現されますが、脚を動かしたくなる、あるいは動かすと少し楽になる、夜間増悪し、朝にはその症状は軽快するという方はレストレスレッグス症候群の可能性があります。レストレスレッグス症候群と合併する疾患眠っている間に足がピクッと動いたり、ひじが素早く動くような動作を繰り返すために睡眠の質が悪くなる状態を周期性四肢運動障害(Periodic Limb Movement Disorder; PLMD)といい、レストレスレッグス症候群に多く合併します。ほとんどの患者さんは自覚がなく、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で診断されます。ご家族がみて「寝ているときにピクピクっと足が動いていた」というような情報がないとなかなか気づきにくい疾患です。睡眠時無呼吸症候群と周期性四肢運動障害の合併も多く、睡眠時無呼吸症候群を疑って終夜睡眠ポリグラフ検査をしたときに、たまたま周期性四肢運動障害が見つかることもあります。睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP治療をしても熟睡感がない、昼間の眠気が改善しないという場合には、周期性四肢運動障害の治療を併用すると不眠や昼間の眠気が改善します。レストレスレッグス症候群の耐えがたい症状患者さんにほとんど自覚がない睡眠時無呼吸や周期性四肢運動障害に対して、レストレスレッグス症候群は意識のある状況での障害です。夕方からなんともいえず脚がむずむずして眠れない、脚を動かさずにいられないといった症状は患者さんにとっては本当につらいものです。患者さんの中には「この脚を取ってほしい」というくらい症状が強い方もいらっしゃいます。私が実際に診ていたある患者さんは、血液検査で明らかに貧血があったため、話を聞いてみたところ、実は便腺が細く血便だということがわかりました。大腸がんを疑い、検査を受けなければならないのはわかっていましたが、検査台の上でじっとしていることが耐え難いから検査や治療を受けたくないとおっしゃっていました。実はその患者さんは、大腸がんによる出血が原因で貧血になっていて、その鉄欠乏によってむずむず脚の症状が引き起こされていたのです。もちろん私たちは大腸がんの検査や治療が優先だということをご説明しましたが、患者さんご本人にとっては、脚のむずむず感をなんとかしない限りとても検査や手術を受けられないと考えてしまうほど大きな問題だったのです。結局その患者さんは、大腸がんの手術を受けて貧血が解消されたことによって脚のむずむずもよくなり、私たちも患者さんも手術をしてよかったと喜べる結果になりました。レストレスレッグス症候群の原因は?レストレスレッグス症候群は、脳内伝達物質のひとつであるドパミンの働きが悪くなることによって起こるといわれています。また、鉄分が不足すると脳内のドパミンの働きが悪くなることもわかっています。鉄分が不足している方の場合には、鉄を補充することによってドパミンの働きがよくなり、脚がむずむずする症状もよくなっていくと考えられます。腎機能の悪い方や妊娠中の方、過多月経の人などは鉄が不足しがちです。高校生の女子で、下肢をさすり続けないと寝られない、足だけでなく手や身体を動かさずにいられなくなってちっとも落ち着かないという方が受診されたことがあります。このくらいの年頃にはダイエットや生理不順などで鉄が少なくなっていることがあるため、血液検査をしてみるとやはりそうだったということがありました。ただし、ここでいう鉄の不足は一般的な検診の血液検査だけではわかりません。フェリチンといって、貯蔵鉄の量をみる必要があります。一見すると健康そうで貧血の心配がなさそうな方でも、調べてみると貯蔵鉄が枯渇していることがあるので注意が必要です。レストレスレッグス症候群の原因となる疾患ご高齢の方の場合に見逃してはいけないのは、脊椎管狭窄症など他に原因があるかどうかということです。他に原因となる疾患がある場合を二次性ともいいますが、レストレスレッグス症候群の診断の際には除外しなければなりません。首や腰の状態を確認して、整形外科領域で何か病気がないかということを必ずチェックします。高齢になるほどレストレスレッグス症候群の発症は多くなりますので、他に病気を持っている方も当然多くなります。レストレスレッグス症候群の症状を改善する方法まずはじめに行う大切なことは生活指導です。脚のむずむず感には座ってじっとしていることが一番よくないので、ストレッチをしたり、ぬるめのお湯でよく温めると症状が改善する場合があります。カフェイン、アルコール、喫煙は増悪に関与しますから、控えることが大切です。症状を気にすると症状が強くなることから、症状出現時に、ほかに気をそらすことも有効です。症状の現れ方には個人差もありますが、季節や気温によって症状の程度が変わる方がいます。夏になると悪くなるという人もいれば、逆に冬になると悪くなるという人もいます。夏になると悪くなるという方の場合は、暑くなると余計に脚がほてってしまうので、冷たいシャワーで冷やすとむずむず感がおさまることがあります。また、タイルの上で足を冷やしたり、眠るときに足を布団から出しておくことも有効です。軽症例はこれら生活指導だけで緩和されます。レストレスレッグス症候群の薬物治療前述のように、鉄欠乏の状態では、鉄の補充から治療を始めます。妊婦さんなどの場合は、妊娠期間中だけ鉄を補充していればよく、赤ちゃんが生まれてしまえば何事もなかったように治ることも経験します。レストレスレッグス症候群は、ドパミン作動薬が有効な場合が多く、広く使われています。鉄欠乏のない場合、ドパミン作動薬から開始することが多いです。ただし、レストレスレッグス症候群は単一の疾患ではなく、あくまでも症候群です。脳内のドパミン系機能障害が関連すると考えられていますが、GABA系といって、ドパミンとは別の脳内伝達物質に作用する薬物が有効な方もいらっしゃいます。それは治療を始めてみないと実際にはわかりません。第一選択としてドパミン系に作用する薬で治療を行い、それでも効果がみられないときにはGABA系に作用する薬を使ってみるとよく効くという場合もあります。治療困難の患者さんにはドパミン系とGABA系の両方の薬を使っている方もいますし、保険適用外でさらに強い薬を使う場合もあります。睡眠衛生指導(睡眠に関する生活指導)の重要性私の患者さんの中に高校生で極端な偏食のお子さんがいました。学校生活にも差し支えるくらい睡眠障害が強かったので、鉄を補充してもらいながらレストレスレッグス症候群の治療を機会に偏食を直してもらうよう生活指導をしました。お母さんが「生まれたときからの偏食」とおっしゃるくらいで、たくさんの病院を転々として来られたのですが、私たちのところで検査をしたところ、鉄もかなり不足していました。本人はサプリメントで栄養を摂ればいいという考えを持っていたので、食べ物から必要な栄養素を摂取するという、いわゆる「食育」から指導を始めていきました。最初のうちは渋々従っていた彼女も、鉄を補充しながら私が勧めた体操などを試しているうちに、少しずつ学校生活も普通にできるようになってきました。当初は試験を受けることもできないような状態だったので進学が心配だったのですが、大学受験も無事合格することができました。睡眠衛生指導はとても重要で有効です。睡眠障害の治療は睡眠衛生指導がベースになると思っています。それができた上で、それでもよくならない方については、さらに何が原因なのかを考えていくという順序であるべきだろうと考えます。もちろん、うつ病などの精神疾患によるものやそれ以外の神経内科領域の病気特有の睡眠障害というものはありますが、睡眠外来にいらっしゃる方の場合には、睡眠衛生の面で不適切な生活習慣であるということがかなり多いと感じます。
2017年08月29日「睡眠時無呼吸症候群かもしれない」そう思ったとき、どの病院を受診すればよいのでしょうか?インターネットでは睡眠時無呼吸症候群の診療に対応していると書かれたホームページが多く見られますが、診断に欠かせない検査の内容は医療機関によってかなり違いがあるようです。検査の重要性と病院選びのポイントについて、駒ケ嶺医院 睡眠呼吸センター長の髙﨑雄司先生にお話をうかがいました。【高崎雄司(たかさきゆうじ)先生】駒ヶ嶺医院睡眠呼吸センターセンター長元東海大学健康科学学部教授、元日本医科大学第4内科助教授、日本睡眠学会評議員・認定医、日本呼吸器学会専門医・指導医睡眠時無呼吸症候群を治療する患者さんは増えているか?睡眠時無呼吸症候群に関する情報はここ10年くらいでかなり増えました。受診するきっかけが非常に増えたことによって、たくさんの方たちが治療を受けていることはたしかです。しかし、一部の方は、情報が届かないなど様々な理由で未受診のまま放置しているととらえています。受診しなければならない方たちはまだまだ多くいるに違いないと考えています。病院を選ぶポイント:インターネットの病院探しについて最近は、インターネットで調べて医療機関を受診する方が多くなっています。ホームページなどで睡眠時無呼吸症候群の治療ができると書いている医療機関はいたるところにありますが、患者さんにしてみれば、どうやってインターネットの情報から選べばいいのかわからない方がほとんどだと思います。インターネットで見て、自宅で簡易な検査ができるところがいいと考えられる方が多いかもしれません。しかし、検査をしていくうちに、最終的には泊りがけで終夜睡眠ポリグラフの検査をしなければならなくなる方もたくさんいらっしゃいます。ですから、本来は最初から幅広い検査ができる医療機関を受診されたほうがよいのではないかと思います。病院を選ぶポイント:睡眠時無呼吸症候群の診断方法について現在、睡眠に関する検査を受けることができる医療機関はたくさんあります。しかし、たいていの場合は呼吸が止まっているかどうかということだけをみるような簡易な検査が主体で、睡眠の質に関わる詳しいところまで調べているわけではありません。検査の結果、息が止まっている主な原因は気道がふさがっていることだろうと診断されると、多くの場合は持続陽圧呼吸療法(CPAP)で治療するという流れになっています。しかし、本当は病像が隠されていることが少なくありません。ですから、本来であれば当院の睡眠呼吸センターで行なっているような終夜睡眠ポリグラフ検査をしっかり受けていただいたほうがよいと考えます。病院を選ぶポイント:日本睡眠学会の認定検査技師が検査我々の睡眠呼吸センターでは、日本睡眠学会の認定検査技師が終夜睡眠ポリグラフの検査を担当しています。他の施設でも臨床検査技師が睡眠の検査を行ない解析を行う場合があると思いますが、一般的には終夜睡眠ポリグラフ検査の経験があまりない施設が大多数を占めています。当院で行なっている検査では、患者さんが検査を受けている間は担当の検査技師が朝まで別室で検査データをモニタリングしています。たとえば寝返りをうって電極(センサー)が外れそうになったらまたつけ直すということもしますし、検査中に起こった出来事や患者さんからの訴えなどについてもすべて記録して残しています。そういったことも含めてきちんとした検査を行えば、それだけ正確な診断ができると考えます。大きな病院も含めてたいていの場合は、患者さんの身体にセンサーをつけるなど検査に必要なことはひと通り検査技師が行なったとしても、そのあとは病棟の看護師などに引き継いで帰ってしまいます。看護師は基本的に他の入院患者さんをみているため、終夜睡眠ポリグラフの検査で何か異常があっても対応できない場合がありますし、検査の内容も詳しくはわかりません。そのため、朝になって検査が終わってみると、一部のデータがきちんと取れていなかったというようなことが起こる可能性があります。過去に他の施設で統計を取ったみたところ、終夜睡眠ポリグラフのセンサーからのシグナルが途絶えてしまったために患者さんが寝ている部屋に入ってセンサーをつけ直すなど、検査中に担当の検査技師が何らかの対応をしている頻度は約50%でした。つまり、検査技師が朝までモニタリングをせずに帰ってしまった場合には、約50%の確率で完全な検査ができていない可能性があるということになります。病院を選ぶポイント:検査データの解析は自動解析よりもマニュアル解析我々の睡眠呼吸センターでは、検査データの解析をマニュアルで行なっています。それはなぜかというと、自動解析が必ずしも正確ではないということがよくわかっているからです。また、時間ごとに細かくステージ判定などを行う必要もあるのですが、そういったことをしっかり行なっている施設はかなり少なく、日本睡眠学会認定の102の医療機関(2016年7月1日現在)の中でも、おそらく半分ほどもあるでしょうか?患者さんがインターネットで病院のホームページを調べただけでは、これまで話してきたようなポイントはなかなか判断できません。その施設でできる検査の内容を明らかにした上で、できない部分については他の専門施設に紹介するという形をとっているのであれば、ある程度信頼してもよいでしょう。しかし、自分のところでできる範囲の検査だけで診断をつけてしまうと、患者さんが必ずしも適切な治療を受けられないということにもなりかねません。それぞれの医療機関においても、単に終夜睡眠ポリグラフの検査ができるということを示すだけではなく、本当はその内容まで開示すべきと考えます。たとえば日本睡眠学会の認定検査技師が朝までついて検査を行っていますということを明示していれば、その病院はそこまできちんとやっているということですし、逆に言えば明示していない施設はそこまで対応していないということになります。やっていないものをやっているとは言えませんから、そうすれば患者さんにとって病院を選ぶひとつの目安となるのではないかと考えます。本格的な検査ができる医療機関は限られているのが現状我々のような詳しい検査ができる医療機関がどこにでもあるかというと、実はそれほど多くはありません。夜勤に対応してくれる検査技師も必要ですし、人手や手間の部分でどうしてもできないというところもあります。本当はそのような場合にどこかに相談できるようなシステムがあればよいのかもしれませんが、現在の状況ではまだなかなか難しいところです。日本睡眠学会で医療機関を認定するとき、その医療機関でできる検査の内容をあまり厳格にしてしまうと、認定医療機関の数が限定されて診断が停滞してしまうということにもなりかねません。検査の質を上げようという努力もしなければなりませんが、一方では睡眠医療を普及させなければならないという面もあるのです。もしも患者さんの近くに本格的な検査が可能な医療機関がなければ、一般的な治療をされているところでまず診てもらい、睡眠時無呼吸症候群の治療へ進むということになります。たとえば中年以降で、明らかに肥満が原因で閉塞性の睡眠時無呼吸症候群が起こっていると思われる場合は、治療が開始されるとすぐにCPAPの適応になる方が圧倒的に多いので近くの医療機関で診てもらって構いません。しかし、そうではない場合には、本来は睡眠専門の施設で診てもらうことが望ましいと考えます。
2017年08月10日眠っている間に呼吸が止まってしまう病気として近年注目されている「睡眠時無呼吸症候群」。呼吸の異常が起こる原因には中枢性と閉塞性の2種類があります。空気の通り道が狭くなっていびきや無呼吸が起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群は広く知られるようになってきましたが、中枢性睡眠時無呼吸症候群はまだあまり知られていません。中枢性睡眠時無呼吸症候群について、駒ケ嶺医院 睡眠呼吸センター長の髙﨑雄司先生にお話をうかがいました。【高崎雄司(たかさきゆうじ)先生】駒ヶ嶺医院睡眠呼吸センターセンター長元東海大学健康科学学部教授、元日本医科大学第4内科助教授、日本睡眠学会評議員・認定医、日本呼吸器学会専門医・指導医 睡眠時無呼吸症候群には閉塞性と中枢性の2種類がある睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断にあたっては、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)という検査をして睡眠時の呼吸と睡眠の質を調べ、無呼吸や低呼吸と呼ばれる異常な呼吸の発生頻度と睡眠の障害の程度から総合的に診断をします。このときに起こる無呼吸のパターンには、大きく2つのものがあります。それが閉塞性(へいそくせい)と中枢性(ちゅうすうせい)です。閉塞性と中枢性のそれぞれの違いとは?閉塞性の睡眠時無呼吸症候群は、呼吸をするときに鼻から入って肺に至る空気の通り道の中で、気道のどこかが狭くなったりふさがったりすることによって無呼吸が起こるものであり、その閉塞が解除されれば呼吸が再開します。閉塞性の睡眠時無呼吸症候群が起こる原因としては、扁桃腺が大きいことや骨格的にあごが小さく空気の通り道が狭いことなど、のどの周囲の構造による問題のほか、肥満のため首の周りに脂肪がついて圧迫されるなど、さまざまな理由があります。一方、中枢性の睡眠時無呼吸症候群は、頭の中の脳幹(のうかん)にある呼吸中枢というところから出される「呼吸をしなさい」という命令が、一時的に途絶えるために息が止まってしまうものです。中枢性睡無呼吸症候群の原因は?中枢性の睡眠時無呼吸症候群の場合の脳からの呼吸命令が一時的に途絶える原因としては、心臓が悪くなって血液を循環させる機能が低下する、いわゆる心不全によるものがもっともよく知られています。脳の中には血液中に含まれる二酸化炭素の量と酸素の量が正常かどうかということを感知するセンサーの働きをしている部分があり、その情報によって呼吸中枢が呼吸の命令を出しています。血液中の二酸化炭素が多くなってくること、逆に酸素の量が少なくなってくることなどで、呼吸が大きくなって肺での酸素の取り込みや二酸化炭素の排出を正常化するのです。ところが、呼吸によって実際に酸素と二酸化炭素の入れ替えをしている肺の動きと、血液中の二酸化炭素の量を感知している脳のセンサーの間にはいくらかの時間差が生じます。特に心臓が悪くなって血液の循環が悪くなると、二酸化炭素量の情報の脳センサーへの伝達に遅れが生じ、それが原因となって最終的には呼吸が止まってしまうことがあります。中枢性無呼吸症候群を引き起こす病気の典型的なものは心不全ですが、そのほかにも腎不全や脳の病気などによっても呼吸の異常が起こることがあります。たとえば脳血管障害などによって呼吸中枢にかかわっている脳の一部分が傷つくと、そのことが原因で無呼吸が起こることがあるのです。閉塞性に比べて中枢性の発症頻度がどれくらいあるのかということは正確にはよくわかっていませんが、おそらく10分の1程度あるかないかといわれています。中枢性睡眠時無呼吸症候群のもうひとつの原因とは?中枢性の睡眠時無呼吸症候群を引き起こすのは心不全などの重篤な病気ばかりではありません。たとえば、なかなか寝付くことができず少し寝ては目がさめるということを繰り返し、睡眠の質が悪化すると呼吸を調節する働きそのものが不安定になってしまい、そのために無呼吸が起こるようなケースのほうがむしろ多くみられます。しかし、このようなケースの多くの場合は治療の対象にはなりません。治療の対象になるのは先に述べたように心臓や腎臓が悪いケースか、もしくは脳血管障害が起こったために異常な呼吸を引き起こしているような場合に限られます。中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療では、心不全が原因であればまず心臓に対する薬がしっかりと使われているかどうかということが一番重要です。血管を拡げて血圧を下げることで心臓への負担を減らすためには、ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬などが用いられます。心臓の働きを助ける強心薬としてジギタリス製剤という薬を使うこともあります。また、できるだけ心臓に負担をかけないように生活習慣を改善することも大切です。これらがきちんと行なわれているにもかかわらず異常な呼吸が出る場合は、呼吸のほうに注目して治療をしていくことになります。具体的には、夜間在宅酸素療法もしくは持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行います。これは鼻や口に装着したマスクから圧力をかけて空気を送り込み、呼吸を助ける方法です。閉塞性と中枢性を併せ持つ睡眠時無呼吸症候群たとえば、構造的にのどが狭くなっている方に無呼吸が起こった場合でも、それがすべて気道の閉塞によって起こっているというわけではありません。ある一部分は中枢性の原因による場合もありますし、またある一部分は閉塞性と中枢性の中間型のような形で出ることもあります。患者さんの病態が中枢性かそれとも閉塞性かということは、そのどちらが主体であるかということから診断します。したがって、のどが狭いことが主因であった場合には閉塞性ということになります。しかしそうではない場合、心臓が悪い方たちの一部では、脳からの命令が途絶えたことによる睡眠時無呼吸症候群もたしかに多いのですが、気道の閉塞による睡眠時無呼吸症候群も起こっているという部分があります。ですから、純粋な意味で閉塞性や中枢性と呼べるようなケースは実際にはあまりないともいえるでしょう。中枢性睡眠時無呼吸症候群も年齢とともに増加閉塞性、中枢性どちらの睡眠時無呼吸症候群も年齢とともに増えていきますが、その理由はさまざまであり、何かこれといって主体となるようなものがあるわけではありません。ただし、加齢によって脳からの呼吸の命令そのものがある程度弱くなることもあるため、そのことが影響しているという可能性はあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状は?閉塞性の睡眠時無呼吸症候群のほうが症状は出やすいはずなのですが、それでも本人がまったく自覚していないということは少なくありません。10〜20年というような長い期間をかけて少しずつ悪くなるため、なかなか自分自身の身に異常が起こっていると気づかないのです。しかし、家族や周りの人たちから見ると、TVを観ていてもすぐに居眠りをしまうなど、明らかに普通ではないとわかる場合があります。ですから、周りの人がこのような異常に気づいたときには医療機関に相談するようにしてあげるとよいでしょう。中枢性睡眠時無呼吸症候群の症状は?中枢性の場合も、たとえばもともと心臓が悪い方の場合、ご家族が体調を気遣って注意していると、ときどき息をしていないことがあると気づくことがあります。しかし閉塞性の場合と違って特にいびきもかいていないので、見過ごされることがありえます。しかし、さらに悪くなってくると、心臓に負担がかかりすぎているため横を向いて寝ることもできなくなる場合があります。そこまで悪くなるとさすがに自分自身でも何かおかしいのではないかと思い、病院で検査を受けるという方もいるようです。睡眠時無呼吸症候群を治療せず放置すると閉塞性であれ中枢性であれ、睡眠中に無呼吸が起こった後、呼吸を再開するときには脳が起こされてしまいます。それが何度も繰り返されると睡眠の質が悪くなり、日中に眠気を催すということになります。睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置していた場合、まず問題になるのはこうした日中の眠気が解消しないことによる生活の質の低下です。しかしそれ以外にも、睡眠中に何度も起きたり寝たりを繰り返すため心臓に相当の負担がかかるということも見過ごすわけにはいきません。このような状態を放置していると、最終的には心筋梗塞や脳梗塞などを起こすことがありえます。つまり、閉塞性の睡眠時無呼吸症候群を放置すると心臓が悪くなり、また心臓が悪いと中枢性の睡眠時無呼吸症候群を悪化させることにもつながるのです。
2017年08月10日<専門家インタビュー>身体のさまざまな部分で本来の動きができない状態があると、夜眠っていても疲れが十分に取れず、不眠の原因につながることもあるそうです。百年整体葛西院の院長である高橋和之先生に、実際に身体の歪みをチェックしていただき、凝り固まった身体を眠れる状態に調整する手技を体験させていただきました。【高橋和之先生】百年整体葛西院院長アイセラピスト専門学院葛西校講師身体の歪みをどうやってチェックするのか教えてくださいそれでは実際に身体の状態をチェックしてみましょう。足を肩幅ぐらいに広げた状態で、まず全体的なバランスをチェックしていきます。まず足の両方が外側に体重が乗りやすい状態となっています。これは男性に多くみられます。次に土踏まずのアーチの度合いなどを見てみると、やや少ないかなというところです。この部分のアーチが少ないと、足が疲れやすいといった症状が出ることがあります。骨盤の左右を見てみると、右のほうが上がって高い位置にあるという状態ですね。そして全体的にみると、骨盤の右側が前に出るような形でねじれが入っている状態になっています。股関節の位置をみると、股関節の位置は左のほうが上に上がっているというような形で、かなりズレが出てきています。横から見てみると、やはり気持ち顔が前に出ているので、首や肩が凝りやすい状態になっています。では一度、前屈をやってみてください。こうするとどこか突っ張っていたり、張るような感じがあると思います。では、続いて施術用のベッドの端に一度お掛けください。全体的に前に出てきて浅く腰掛けましょう。両足をくっつけて揃えてみてください。今、左右の足を揃えていただいていますが、これを上から覗き込んでいただくと膝頭の位置がずれているのがわかると思います。座っているときも骨盤がずれた状態で座ってしまっているということです。これは簡単に調整することができます。まず、短くなっているほうの脚を上にして脚を組みます。そのまま背筋を少し伸ばして、長いほう脚の膝頭のところで手を組み、その状態で左右に揺らします。簡単にできるので、骨盤に対して自分でできるセルフケアとしてやってみるといいでしょう。自分で足を揃えて座り、左右の膝頭のどちらが前に出ているかをチェックして脚を組んで揺らしてあげるだけですが、揺らしているうちにだんだん骨盤のずれが調整されます。たとえば朝晩など、定期的にチェックしておくといいと思います。骨盤が良い状態をキープできていると脚にかかる負担も軽くなりますし、骨盤の上には背骨が乗っているので、上半身の負担も減らすことができます。では、立っていただいて、足を軽く肩幅ぐらいに広げた状態でもう一度前屈を同じようにやってみてください。さっきより動かしやすいというのが感覚としてお分かりになると思います。このように骨盤が良い状態を作れたら、あとはもっと全体的にみて身体が正しく動く状態を作って調整していきます。整体をするうえで重要な部分はどこですか腰というのは文字どおり人間の身体の中で「要」になるところなので重要です。当院がもうひとつ特に大事にしているのは「脚」です。それはなぜかというと、骨盤を支えてくれているのが脚だからです。脚と骨盤は股関節で繋がっているので、単に骨盤だけではなく下半身を大切にしています。下半身にとって「歩く」ということは大事なのでしょうか歩くことは大事です。しかし、どこかが痛いままで歩きすぎることはあまりよくありません。ですから、まずちゃんと良い状態で歩ける身体を作らなければなりません。水の中は浮力があって関節の負担が少ないので、膝や脚が痛い方はプールなどで歩いていただくことをお勧めしています。痛いときは無理せず、できる範囲でやっていくということが大切です座っていて脚を組みたくなるというのは、どういう状態でしょうかまずひとつの要因として、猫背であるから脚が組みたくなるということがあります。脚を組むということは、座ったときに背中を丸くして前かがみになるから脚が組むことができるのです。疲労がたまっていると、人は自然に猫背になりやすいです。たとえばマラソンで走った後のランナーなどが、ゼイゼイ息を切らしながら丸くなっているようなイメージがあると思いますが、それと同じように身体の不調や疲れが出ていると猫背にならざるを得ないということがあります。そのほかには、誰しも骨盤や股関節の歪みはどうしてもあるため、ねじれていると脚を組んでいるほうが一時的には楽だという場合があります。しかし、結局それを繰り返していると、腰や股関節が痛くなったり、脚に症状が出やすくなってしまいます。脚が組みたくなるというのは、身体が疲れている、もしくは身体が歪んでいるというサインのひとつにはなります。寝ている状態でも歪みをチェックするのでしょうか立っている状態、座っている状態、寝ている状態でそれぞれ身体の歪みが変わる場合があります。どの状態でも骨盤がよい状態にあるというのが理想です。寝ている状態での歪みをチェックしていきましょう。まず仰向けで枕に首をしっかりのせていただいて、骨盤の歪みや腰の浮き具合などをチェックします。腰の右のほうがちょっと浮いていて、左はしっかりと下についています。片側が浮いているということは、ねじれが入りやすい状態になっているということになります。骨盤を触って高さもチェックしてみましょう。骨盤の左側が上にねじれています。身体の前後では、右が前、左が後ろにねじれています。あとは足の開き具合、肩の浮き具合などもチェックします。つま先の左右どちらが開いているのかというところをみたり、肩とベッド面の間に隙間があるかどうかなどをみていきます。本来であれば仰向けに寝ているときは肩がベッドについているのですが、少し浮いているということはつまり、寝ているときに猫背になっているということであり、睡眠の妨げのひとつの要因となります。整体で調整をすると浮いていた肩がスッと下がって全身のバランスが変わっていきます。身体がよりリラックスした状態を作れると睡眠の質を上げることにつながります。横向きで寝る癖は、良くないのでしょうか横向きで寝ることはあまりよくないのですが、基本的にはご自分がよく眠れる姿勢でかまいませんので、まずは睡眠を優先していただくようにしています。その上で少し調整をしながら、最終的には仰向けでも寝られる状態にすることを目指します。また、横向きだけでなく。うつ伏せが寝やすいという方も中にはいらっしゃいます。この場合も睡眠を優先していただいて、調整しながら自然に仰向けで寝られるように、身体のバランスをしっかり変えていきます。整体は痛くはないのでしょうか整体というと施術の際に関節がボキボキ音を立てるとか、あるいは痛みを伴うようなイメージがあるかもしれませんが、当院では基本的には痛みを伴うような調整は行なっていません。たまに関節をボキボキ鳴らすような施術を好む方もおられるので、まれにご要望にお応えすることもありますけれど、基本的にはそういったことはやっていません。私は本来、整体というものは痛くないのが本当なのだろうと考えています。ただし、基本的には痛くない手技であっても、ときどき痛みを感じる方がいらっしゃいます。痛いということはそれだけ身体が固まってしまっているから痛く感じるのであって、私たちが行っている手技そのものは固さがなくなっていれば痛くないものであると思います。実際の調整の方法をいくつかみせていただけますかうつ伏せになっていただいた場合には、まずは脚の長さをチェックします。今みたところでは、右脚が少し短めになっているという状態です。また、ここでも骨盤の歪みはしっかりチェックします。手技としては、骨盤のねじれを取るときにはまず顔を右に向けていただき、右脚を横に広げていきます。手は左右とも同じように顔の横に置きます。これは猫背のときに肩まわりをゆるめる姿勢でもあります。猫背だと肩が前に出て背中が丸くなっているので、それを広げてやるため調整をかけていきます。この状態で少し揺らしながら骨盤などの歪みを調整していきます。腰だけでなく背中や肩など、揺らしてみて固いところを探りながらその部分の固さをとっていきます。私はこういった揺らす手技を主に使っています。どこか固いところがあると、揺れ方として均等に揺れてくれないのですが、関節が正常に動くように調整していきます。固いところは最初は揺れが小さいのですが、固さがとれてくると、揺れがどんどん大きくなっていきます。固いところをチェックしながら揺らして、骨盤が正しい位置に戻るようにしていきます。今度は左右反対向きで、先ほどと同じように姿勢を作っていただいて、反対向きでも同じことを行います。あとは仰向けになった状態でもいろいろなところを揺らしてみて、全身のケアをしながら施術を進めます。リラックスした状態を作れると身体が落ち着いてきますので、ただ単にこうして揺らしてリラックスする状態を作り出すだけでも不眠にも効果があります。身体の調整は心の持ちようで変わってくる身体の症状もやはり気持ちが前向きな人のほうが治りやすいということはあると思います。たとえば肩が痛くて今までは水平ぐらいまでしか腕が上がらなかったとして、それが施術して45度ぐらいまで上がるようになったというところで「これだけ上がるようになった」ということを喜べる人と、「まだ上まで上がらない」と考える人とでは、よくなるまでの時間、スピードという点でも違いがあるように思います。心と体というのは密接に関わるところがありますので、いろいろなお話をさせていただきながら考え方を変えていくということも大切です。不眠についても、1日24時間まったく眠れないというようなケースはまずないので、「眠れない」ということをあまり深刻にとらえる必要はないと思います。眠くなったら自然に寝られますから大丈夫ですよ、ことさら「寝ないといけない」なんて思わなくてもいいんですよ、ということをお伝えすることも多いです。夜眠れない方は、日中に短時間でも横になることが有効また、自律神経の不調で不眠になっているような方に対しては、日中に少しでもいいので横になる時間を作りましょうというアドバイスをすることがあります。専業主婦の方などにしばしばいらっしゃるのですが、ご主人が外で働いておられるのに自分が昼間にごろ寝をしたりすることがなんとなく申し訳ないと思っておられるようです。しかしそうなると、自律神経のうちで起きているときに働く交感神経が優位になっている状態が日中ずっと続くことになります。本来は夜になって眠るときには副交感神経が優位になるのですが、日中、交感神経がずっと興奮した状態なので、夜になっていざ寝ようとしても寝られないということが起こります。ですから、そういった方は特に日中、少しでもいいので寝転がる時間を作るということをお勧めします。少し横になってごろごろするだけでも副交感神経が優位になり、バランスを取ることができるようになっていきます。1分でも10秒でもかまいませんので、ときどき寝転がる時間を作ってあげることで、スイッチの入れ替わりをするということにつながります。一日中ずっと何かしていて、常に活発に動き回っているような方は、ほんの少しでもいいので寝転がって心身をリラックスさせることが大切です。
2017年07月11日<専門家インタビュー>整体といえば痛みやしびれなどの症状を和らげるためのもの、あるいは固くなったところをほぐしたり身体の歪みを調整するものといったイメージですが、全身のバランスを整えることで長年不眠に悩んでいた方が睡眠の質が改善されるというケースもあるようです。今回は、大阪・心斎橋で豊富な臨床経験を積んだのち、百年整体葛西院で院長として施術を行っている高橋和之先生に整体の睡眠の質の改善についてお話をうかがいました。【高橋和之先生】百年整体葛西院院長アイセラピスト専門学院葛西校講師不眠を訴えて来院する方は多いですか?不眠を主な症状として訴えるというわけではなく、他の症状と合わせて不眠の悩みを抱えている方がいらっしゃいます。痛みやしびれを訴えて来られて、よくお話をうかがってみると、あまりよく眠れていないという方が多いです。ご本人が「不眠」と自覚していないというケースです。私たちの考えからすれば、夜眠っている途中でトイレに起きたり、ちょっとした物音で目が覚めたりすることも「不眠」としてとらえているのですが、当院に来られている方のなかには、そういったことを「不眠」と受け取っていない方がおられるので、それらを含めると、来られる方の中で不眠の方は3人に1人くらいになるのではないでしょうか。不眠の方には、どんな症状がみられますかまず身体の筋肉が凝り固まってしまって、それに伴って猫背になっており、肩や腰が痛いと訴える方が多いです。また、便秘があったり、お腹の問題を抱えている方などもいます。こうした症状だけでも睡眠の質が落ちてしまいますので、整体による調整で、痛みが取れただけでもよく眠れるようになるというケースもあります。整体で身体を調整すると睡眠の質が改善しますか?私たちが整体で行なっていることは、自分で回復させる力を高めてあげるものです。寝ている間に身体がきちんと休まっていないと、回復力が落ちてしまいます。これにより、朝起きたときに何かだるいとか、体が重く感じるというようなことが起こりやすくなりますが、身体のさまざまなバランスを調整していくと、そういった状態を改善していくことができます。全身を調整していくことが大切なのでしょうか痛みなどの症状は身体からの危険信号のサインです。たとえば薬などを服用して安静にすることで症状がよくなったとしても、一時的に痛みのサインがなくなった後に、再び症状を繰り返してしまう場合もあります。痛いところだけを調整して症状がとれてすっきりしても、他のところに負担がかかっていたり歪んでいたりすると、日常生活に戻ったときに、同じ症状が出てしまうことも多いのです。また、一日の大半、姿勢が良くない状態があるだけでも、せっかく調整した効果が薄まることもあります。当院では、全身をバランスよく調整したうえで、皆さんが自分でできる簡単なセルフケアやちょっとした日常生活の注意点などもお伝えしています。こうしたアドバイスで、症状の再発を防ぎ、根本的によい状態がキープできるように目指しています。身体の歪みがある方は多いのでしょうか基本的にほぼすべての人に歪みがあると考えていただいていいと思います。利き手、利き足があるため、日中に普通の生活を送っているだけでもどうしてもある程度の歪みが生じます。人間というのは、「寝ること」と「歩くこと」で一日一日のリセットをしています。夜、寝ている間に寝返りを打ったりしながら、リセットさせています。寝返りは、基本的には誰もが意識せず自然にしているものなのですが、あまりに疲れていると寝返りを打つことすら嫌になってくるということが起こります。さらに、寝返りを打てないと余計に疲れが残ってしまうという悪循環となり、睡眠時間の長さとしては十分に寝ているにもかかわらず、疲れが取れていないということになりますこうした状態は、やはり身体の歪みが大きな要因となっている場合が多いです。歪みで身体が正常に働いていない状態にあるので、本来の働きができるように環境を整えることが私たちの仕事になります。日頃の寝方も影響するのでしょうか仕事から帰って疲れたからソファで寝てしまって、夜中に目が覚めてからようやく布団に入るというような睡眠習慣を繰り返してしまうと、睡眠の質が悪化して、そこから不眠につながっていくというケースも多いです。本当にちょっとしたことで睡眠の質は変わります。枕を変えたりベッドの硬さを変えたりするだけで睡眠の質が変わるということもあるので、そういったお話もさせていただいています。枕であれば、当院でも取り扱っている「けんこう枕」というものをご提案させていただくこともあります。この枕を使って寝ることで身体の調整ができるという枕です。首や肩のこりがある方や睡眠に悩んでいる方はこういった枕で寝ると睡眠の質が上がったり、腰の症状がとれて楽になったりします。枕という名はついていますが、整体のひとつの器具としてとらえています。円柱を半分にカットしたような形状の器具は、どのようにして使うのですかこれはストレッチのときに使うもので、首をその上に乗せることで首を正しい位置に戻すものです。人間はどうしても下を向くことが多いので、首が正しい位置に戻ることは少ないのです。その枕を使って一日10〜15分ほど寝ながらできる簡単なエクササイズやストレッチの方法がありますので、それらを行いながら寝ていただくと、首、肩こり、腰痛で悩んでいる方や、猫背や姿勢の悪さで悩んでいる方などには改善が期待できます。寝るときの首の状態には、正しい角度があるのでしょうかいろいろな理論があるので一概には言えませんが、あまり高すぎる枕は基本的におすすめしません。今ご説明した2種類の枕はそれぞれ相反するところがあり、半円形の円柱のほうは首をその上に載せて使うものであるのに対して、「けんこう枕」はどちらかというと首に負担をかけないようにするという考え方に基づいています。目的や使い方は異なりますが、両方とも症状に合わせて適切に使えば効果が期待できます。
2017年07月10日日本人の体型に合わせて開発されたマットレス「モットン」はNASAが開発したウレタンフォーム素材をベースに、日本人の体型に合わせて研究・開発を重ねた日本人のための腰痛対策マットレス。2013年の発売以来10万本以上を売り上げ、腰痛に悩む100人のモニターアンケートでも満足度94%以上という高い支持を得ているとのこと。「モットン」を実際に使ってみたネットで評価を確認してみると、他の腰痛対策マットレスと比較したランキングで上位を獲得し、「腰痛改善を第一に考えられている」、「コストパフォーマンスの良さ」など良い評価が並んでいる。一方で、「知名度の低さ」、「臭い」、「腰痛に効くひとと効かないひとがいる」など悪い評価もチラホラ。「90日間の交換・返金保障」をうたうモットン。ここまで長期間の試用ができる商品は他にあまりないので、実際に使ってみて確かめてみることにしてみた。こちらでモットンを購入したモットンは、体格・体型に合わせて硬さは3種類!モットンは専用のカバーがかけられた状態で届くのだが、そのベロア地の手触りはスベスベで、なかなか気持ちがいい。今回試してみたのは、体重が45〜80kgまでの対象の140N。N(ニュートン)は反発弾性を表す単位で、この数字が大きいほど硬く、小さいほど柔らかい。モットンは、体格・体型に合わせて選べるよう、100N/140N/170Nの3種類の硬さが用意されている。モットンに寝てみた。意外!?、あそこが沈む仰向けに寝ると、お尻の形にへこんでサポートされるので腰はあまり沈まず、包み込まれるような感じ。布団で寝ていた際には、腰から背中にかけてお布団との間に隙間ができていたが、モットンだと腰がしっかり支えられている感じで、なおかつ背中と布団の間に隙間ができない。なにより意外な発見だったのは、かかとがほんの少しだけマットレスに沈むのである。かかとが沈むことで、足首に余計な力がかからなくなるのだ。今まで布団で寝ていた時には全く意識していなかったが、モットンで寝てはじめて、かかとが沈むことのメリットに気づいた。モットンはとにかく平らなところは沈まず、出っ張っているところがその分だけ沈んで吸収してくれるので、身体の軸がまっすぐになる感覚があるのだ。モットンに横向きで寝てみると!?たとえば右側を下に横向きに寝ていると、右の脇腹にすごく反発力のサポートがあるのを感じる。右のお尻が少し沈み込んで、それに沿うようにマットレスが身体の型を取っているようだ。寝ているととても自然で、自分では肩はそれほどマットレスに沈んでいないように思ったが、やっぱり少し沈んでいる。左右に寝返りを打ってみても、モットンは十分な厚みがあるので床の硬さを感じることはまったくない。今まではいわゆる煎餅布団に寝ていて、そのほうがなんとなく身体にいいのかなと思っていたが、どうしても腰と布団の間にすき間があいてしまっていた。それに加えて、床材の硬さを背中やお尻で感じるというか、身体の出っ張りに敷布団ごしに床の感触が伝わってきていた。床の上にモットンを敷いて寝ていると、しっかりとした反発力の上に寝ていながら、それでいて身体が痛くなるような硬さは感じない。通気性や臭い、収納やお手入れは?モットンに寝ているとマットレスがへこんで包まれているところがあったかく感じる。なので、冬はいいとしても、夏は蒸れて暑いんじゃないか?と、ちょっと気になった。夏は専用カバーの上にメッシュや麻などで何か一枚敷いたほうが涼しいのでは?と思った。ネット上の評価でもいくつか挙げられていたが、新しいマットレスだからなのか、ウレタンフォームの素材が臭いを吸収しやすいのか、臭いが気になった。カバーを一回洗濯すれば臭いが落ちるのかもしれない、試しに市販の除菌・消臭スプレーを使ったが、効果がなかった。その後、モットンが家に届いてから夜寝るとき以外は壁に立てかけて風通しを良くしていたところ、2日、3日と日が経つにつれてだんだん臭いは気にならなくなっていった。モットンはすごく反発力があるので、普通の布団と違って三つ折りにたたんだり丸めようとしても、すぐに元の形に戻ってしまう。付属の専用バンドでまとめれば三つ折りの状態で押入れなどにしまうことはできると思うが、収納の観点からは普通の布団より少し場所を取るかもしれない。モットンで寝てみた翌朝の感想は?私は、腰痛持ちである。仕事が忙しく疲れがたまると腰や首・肩の痛みが悪化していた。整形外科で診てもらったところ、腰椎と頚椎、つまり腰と首のところで脊椎の椎間板が変形し、神経を圧迫しているという。いつもは朝起きたとき、すぐに身体を起こせない。横向きになって「痛い、痛い」と言いながらようやく身体を起こして、布団を出てからも1、2分は痛みが続いていた。ところがモットンで一晩寝たあと、何故かパッと起きられた。起き上がった瞬間は「あ、痛い!」と思ったが、痛かったのはそのときだけで、あとは痛みを感じなかった。モットンを使い始めて2回目の朝は?自分でも本当かな?と思うほどだが、起きるときに腰が全く痛くなかった。前日は家の片付けで重いものを持ったりしゃがみこんで作業をしたりしたため、夜寝る前も「腰が痛いなあ」と思っていたのだが、今朝は、目が覚めて体を起こすときの一瞬の痛みすら感じなかった。もちろん、腰痛の原因そのものが治っているわけではないので、起きてから時間が経つとまた前の日に起きていたときのようにだんだん痛くなってくるし、起きたときにも違和感がゼロというわけではない。少なくともいつもの朝のような痛みがまったく無くなったことに驚いた。モットンジャパンの担当者に聞いてみたモットンジャパン(株式会社グリボー)商品開発部本部長の伊藤貴啓さんに電話インタビューして聞いてみた。伊藤さんによるとモットンを使い始めてすぐに良さを実感できる方は少数派で、多くは2週間、1か月と使い続けるうちに腰の痛みがだんだん気にならなくなっていくそうだ。モットンの効果が出てくるのは、体格や筋肉の質などにもよってまちまちだが、大体60日から90日前後だそうだ。特に他の寝具を使っていた人は身体がその状態に慣れてしまっているので、モットンを使い始めても違和感を覚えることがあるのだとか。そんなときにはいきなり一晩モットンで寝るのではなく、ちょっとしたごろ寝や短時間の昼寝で身体を慣らしたり、それまで使っていたベッドマットレスの上にモットンを敷いて寝てみたりすることも有効だそうだ。また、90日間の交換・返金保証があるので、使ってみて硬さが合わないときには送料のみで違う硬さのものと交換することも可能(1回のみ)。但し、条件として90日間使ってみた後にはじめて、返金が可能ということだ。これは、前述の通り、腰痛の改善に効果が見られる日数がひとによってばらつきがあることが理由のようだ。今なら2万円引きで購入できるお試しキャンペーンを実施中とのこと。腰痛にお悩みの方は一度試してみるのもいいかも。モットンの90日間のお試しはこちら
2017年06月20日女性なら一度は経験があるのではないでしょうか。産婦人科を訪れた際の問診表で、あの周期を記入する瞬間。 “前回アレが来たのはいつだったかな?“と、手帳を見返してみたり、スマホアプリで慌てて確認したり。そんな女性達の不便を解消する新サービス「ルナルナ メディコ」が2017年6月1日よりスタートしました。実はこのサービス、あの「ルナルナ」が開発した、女性と医師をつなぐ新サービスなのです。月経周期管理アプリ等を提示されたことのある医師は約8割!今回スタートする「ルナルナ メディコ」は、ルナルナのユーザーである患者さんが記録した月経周期や基礎体温などのデータを、医師専用のタブレット端末で簡単にわかりやすく提示できる新しいサービス。ルナルナが行った調査によれば、月経周期や基礎体温の記録としてスマートフォンのアプリなどのデジタルツールを提示されたことのある産婦人科医師は約8割とのこと。月経周期管理アプリが多くの女性の生活の一部になっていることが伺えます。晩婚化、晩産化で女性の病気が増えている?!東京大学大学院医学系研究科 産婦人科学講座 教授の大須賀 穣 先生によると、晩婚化や晩産化に伴い、月経関連の疾患は増加しているとのこと。月経に関連する症状に悩む女性が多い一方で、月経のことで病院に行くのは・・・と医療機関を受診しない女性がまだまだ多いそうです。大須賀先生によれば、月経に伴う症状による社会経済的負担は年間でおよそ7000億円!女性がホルモンバランスの変化に伴う自分の身体のリズムを把握し、月経に関する正しい知識を身につけることは、パフォーマンスの向上、ひいては、日本全体を成長させることにもつながります。変わる女性のライフスタイルと月経への意識「ルナルナ メディコ」の監修医でもある広尾レディース院長の宗田 聡 先生は、”働く女性が、健康で効率良く長期的に仕事を続けていくためには、自身の身体的・精神的特徴をよく知っておくことが大切”。また、“将来的なライフプランの中で、妊娠や出産、産後の仕事復帰などを考えていくには、正しい知識を身につけておくことが極めて重要”と述べました。宗田先生のクリニックには、ピルの処方のために来院される患者さんも多いそうで、女性のライフスタイルの変化とともに、月経に振り回されるのではなく、月経を“コントロールする”という意識に徐々に変わってきているのではないかというお話もありました。医師・女性それぞれの負担を軽減、コミュニケーションの質を向上「ルナルナ メディコ」は、限られた診察時間の中でデータ確認の手間や時間を減らすことによって、健康アドバイスの時間を充実させるなど、医師と患者さんのコミュニケーションを向上させるきっかけとなることを目指すサービス(株式会社エムティーアイ ルナルナ事業部 事業部長 日根 麻綾氏)。スマートフォンなどで記録したデータを紙に書き写すといった患者さんの手間がなくなり、記入ミスなどを防ぐことが期待できます。 「ルナルナ」ユーザーは無料でサービス利用が可能2017年6月1日から半年間(予定)のモニター期間中は、サービスの利用に必要なツールやアカウント、専用タブレットなどが医療機関にすべて無償で提供。ルナルナユーザーの利用は無料ですので、患者さん側の費用負担は発生しません。現在は以下のクリニックで実証が決まっているそうです。広尾レディース(東京都渋谷区)産科婦人科館出張佐藤病院(群馬県高崎市)成城松村クリニック(東京都世田谷区)はなおかIVFクリニック品川(東京都品川区)※2017/6/1~6/3 産婦人科への受診はまだまだ女性にとってはハードルが高いかもしれませんが、髪やネイルのケアを行うのと同様に、身体のケアを行う場所として、定期的に産婦人科に通うという意識を持つことが重要なのです。
2017年06月01日【2017年4月23日更新】<ドクターズインタビュー>ストレス社会の現代では、不眠など睡眠に関する症状が他の精神的な症状の一部として現れていることも少なくありません。精神科領域の病気や睡眠障害を幅広く専門的に診断・治療している新橋スリープ・メンタルクリニック院長の佐藤幹先生に、ストレスとうつ病、不眠症の関係、特に職場のメンタルヘルスと不眠の問題についてお話をうかがいました。【佐藤 幹(さとうみき)先生】新橋スリープ・メンタルクリニック院長東京慈恵会医科大学付属病院本院精神神経科外来非常勤勤務睡眠障害を中心に精神科領域全般における診療を行なう。睡眠学を専門とし、過眠症(ナルコレプシー等)、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、時差ぼけなどの研究を行う。特に不眠症に関しては認知行動療法を取り入れた治療法を研究。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医日本睡眠学会認定医不眠が「うつ病」のリスクとなるストレス性障害は、精神医学的には適応障害といいます。その症状のひとつに不眠があります。原因のストレスがなくなれば睡眠がよくなる方もいますが、不眠だけが残る方たちもいます。また、ストレスがなくなってうつ症状はよくなっても、不眠症状だけが残る方たちもいます。そういう方たちは再びうつ病になりやすいといわれています。つまり、不眠症がうつ病を再発させるリスクファクターになるということです。ストレス性障害では、まずストレスの原因をはっきりさせる必要があります。ストレスの原因が明確な場合、例えば、上司との関係など職場の人間関係でうつ状態になっている方のケースは、配属を変えてもらうことが、症状を改善するためのひとつの選択肢になります。症状がうつ病もしくは適応障害の診断基準を満たした上で、患者さん本人が仕事を休みたいと思っている場合は、自宅静養することをお勧めしています。うつ症状が軽度であれば、仕事をしばらく休むだけで症状が改善し、抗うつ剤や睡眠薬などの薬を使わずに済むことがよくあります。ところが、もし休まずにうつ状態のまま会社に行き続けると、結果的に抗うつ剤などの薬が必要になるケースが多くみられます。いったん抗うつ剤を使い始めると、ある程度継続して抗うつ剤を使って行く必要があります。脳の機能が低下すると、主観的に頭が働かなくなって回転が悪くなったような感じがします。この症状をインヒビション(inhibition:抑制制止症状)といいます。たとえばメールがすぐ返せなくなる、簡単な指示が理解できない、などといったことが起こります。また、仕事中だけではなく、家でTVを観ていても内容が頭に入ってこないといったこともそのひとつです。これらはうつ病の兆候でもあります。「適応障害」と「うつ病」の違いは?inhibition(抑制)は、かつては「適応障害」ではなく、内因性のいわゆる「うつ病」だと捉えられていました。しかし、現在は必ずしもそうではないと考えられています。ストレスが強くかかって頭が働かなくなり、うつが疑われるようなケースでも、実際に仕事を休んで一週間もすると改善する方がいらっしゃいます。その場合はうつ病ではないと考えられるのです。臨床の現場では「適応障害」と「うつ病」の線引きは、難しいケースも少なくありません。例えば、24時間ずっと落ち込んでいるかどうか、ということは「うつ病」のひとつの目安になります。ほとんどのストレス性障害の場合は家に帰ればリラックスできるので、そのような場合はうつ病とは診断しません。しかし、ストレスが強すぎて家でもずっと仕事のことを考えて落ち込んでいるようであれば、適応障害も訴えによってうつ病に見えてしまいます。適応障害とうつ病が連続した病態なのか、二つの疾患を区別すべきなのか、現在の診断基準だけを元に考えると明確な線引きが困難になります。治療経過の中で、時間をかけて複合的に診断をつけてゆくことが必要です。「適応障害」は誰でもなりうるものです。たとえば恋人に振られるなど、今の状況に適応できず気持ちがついていかなくて予想を超えて落ち込んでいる、というのが「適応障害」です。ただし、その中でもうつ病の遺伝負因(いでんふいん)がある方、つまり脳の脆弱性を持っている方はうつ病に移行していくこともあります。内因性の「うつ病」の場合には、それまで楽しい気分であってもいきなり脳にスイッチが入ったように落ち込み、状況が良くなっても落ち込んだままの状態が続きます。クリニックに来られる方の多くは非常に多忙で時間がない方たちなので、いったん仕事を休むとそれだけでよくなる適応障害のことが多い傾向があります。しかし、何回も気分の落ち込みを繰り返している方、若い頃からうつ症状を認める方は、うつ病の可能性があります。また、少し判断が難しいケースとしては躁うつ病(双極性障害)のうつ状態である可能性もあります。そのため、うつ状態だけでなく躁状態があるかどうかの確認も必要です。こういったことをしっかりと見極めていかなくてはならないため、初診ではすぐに診断を決められないことも少なくありません。「うつ病」と不眠は切っても切れない関係脳にストレスがかかると生理的には覚醒度が上がるため、多くの例では不眠がつきまとうことになります。しかし、最近はうつ病で過眠を訴えて来る方もいらっしゃいます。精神的なストレスが、様々な形で睡眠の異常として表現されるのです。精神的な疾患がある場合には、睡眠だけを取り出してよくするということはできません。脳の状態全体をよくしていき、日中からのストレスを取り除くことによってようやく夜眠れるようになります。あるいは夜の睡眠をよくすることによって日中のストレスを少なくしていくことにもつながります。睡眠薬を上手に使い、夜にゆっくり休むことができると、日中の抑うつ気分も少なくなります。そのため、うつ状態の時には、睡眠薬は積極的に使うことが推奨されています。不眠とうつ病の関係についてはさまざまな方向から研究されています。たとえば不眠があるとうつ病がどれくらい再発するか、その逆にうつ病がよくなって不眠が残っていない人はどれくらいうつ病が再発していないか、また不眠が最初にあってうつ病になる人がどのくらいいるのか、といったことについて検討されています。今のところまだ結論は出ていませんが、どうやら不眠とうつ病は互いに移行するものだと考えられています。つまり、不眠があってもうつ病になるし、うつ病があっても不眠になりやすいということです。ビジネスマンの不眠には職場のサポートが大切ビジネスマンの方も含め、不眠で悩んでいる方にとっては、周囲からのサポートがとても重要です。会社から仕事を休んでもいいと言ってもらえたり、医療機関から診断書を出してもらえたりすると、患者さんはそれだけで楽になります。当院では、患者さんは会社のほうから病院に行って来てくださいといわれることも多く、ご本人がひとりで悩んで診断書をもらいに来るというようなケースはむしろ少ないです。最近では、職場のメンタルヘルスチェックをきっかけに受診をすすめられることもあるようで、紹介状にもメンタルヘルスチェックの結果について触れられていることがあります。単なる不眠ではなく、自分で何かおかしいと気づくきっかけには次のようなものが挙げられます。仕事上のミスが増えている遅刻が増えてきた仕事中に寝てしまうぼんやりしているしかし、自分で異変に気付かないうちに、症状が悪化していく方も少なくありません。若い方の場合は自分から不調を訴えて来ることが比較的多いのですが、年齢的に上の世代になるとなかなか自分からは言い出せず、むしろ周りから言われて病院に来ることが多くなります。キャパシティのある会社ならば「仕事を休みなさい」と言えるかもしれませんが、ある程度無理をしても仕事をしてもらわなければならない状況の会社も多いので、雇用側も従業員側もどちらからも言いにくいところがあるようです。しかし、睡眠時間が短いとどうしてもうつ状態などになるリスクが高くなる印象があります。雇用する側でも従業員の睡眠時間が6時間未満にならないように配慮すべきです。睡眠時間が6時間を切り、5時間台の状態が一定期間続くと、ひと晩徹夜をしたときと同じ程度に仕事の効率が落ちてしまうといわれています。毎日の勤務状況を改善することが難しくても、せめて週に2日ぐらいは7時間以上の睡眠が確保できるよう早く帰宅させるなどの工夫をすれば、うつ状態になるリスクを減らすことができるはずです。睡眠時間は1日に30分〜1時間程度長くするだけでもかなり違いますので、30分でもいいので早く帰って寝られるようにしてみてください。仕事上、帰宅時間が遅くなることが避けられない方は、フレックス・タイム制を利用するなどして出勤時間を遅くするのもひとつの方法でしょう。睡眠衛生と現代のライフスタイル不眠にはいろいろな理由があります。睡眠衛生が守られていない方に対しては、まず睡眠衛生を守ってもらうようにして、それでも眠れないという方が「不眠症」ということになります。仕事上、睡眠衛生を守ることが難しいという方も多くみられ、本質的な「不眠症」かどうかの判断は難しいところです。睡眠衛生を守るといっても、本来はそれほど難しいことではなく、すでに仕事をリタイヤした方などであれば健康を主体にした生活が可能ですが、現役で働いているとなかなか難しいところがあります。就寝1時間前ぐらいからTVやスマートフォンなどを見ないようにするのが睡眠にとっては理想的ですが、実際には就寝直前までパソコンでメールの返信をしていたり、TVでニュースをチェックしたりしている方が大勢いらっしゃいます。また、布団の中に携帯端末を持ち込んで見ていることも多いのですが、これもよくありません。このようにひとつひとつみていくとなかなか守るのが難しいところもあり、こうした睡眠衛生は、もはや現代社会では現実的ではないのかもしれません。社会や生活の変化に合わせて、睡眠衛生指導の内容もカスタマイズする必要があると思います。医療者側が、一方的に守れと指示するだけでは治療効果が少ないと感じています。不眠の背景にある長時間労働の影響多くの方は帰宅してから寝るまでの時間が短いため、生理的に睡眠の方向にシフトダウンすることが難しくなっています。たとえば、お風呂から上がって2時間ぐらい経たないと脳や内臓などの深部体温が下がらないため、その間は覚醒度が高く寝つきにくくなります。深部体温が下がれば眠りが深くなるので、入浴自体は眠りのためによいことなのですが、帰宅時間が遅いと食事や入浴を短時間で済ませなくてはなりません。また、仕事のことなどで神経が興奮している状態で床につくことも、不眠になりやすい要因のひとつです。帰宅時間が毎日遅くなるような生活では理想的な睡眠の確保が難しくなってきます。夜遅く帰宅したとき、お風呂に入る?入らない?夜遅くに帰宅して翌朝早く起きなければならないようなときには、寝る前にお風呂に入るよりも朝起きてからシャワーを浴びることをおすすめします。眠りに関しては、本来はバスタブに入って深部体温を上げないとあまり意味がありません。もちろん、汗を流さないとさっぱりしないという意味での寝苦しさはあるかもしれませんが、それが気にならないのであれば、朝起きてからシャワーを浴びると覚醒度は上がります。睡眠には気分的なものも関係するので一概には言えませんが、バスタブに入って深部体温を上げ、睡眠の2時間以上前に出られるという条件がクリアできるときにはバスタブに入るようにすればよいでしょう。また冷え性の方の場合は、体の末端が冷えていると体温が放出しにくくなり、深部体温が下がりにくいので、靴下を履いて寝ることをおすすめします。エアコンをつけたまま寝ることもよくないと思われがちですが、寒いと覚醒度が上がってしまうので就寝中はエアコンを使って構いません。休日の睡眠不足解消にもコツがある休日の前の日など、翌朝に起きる時間を気にしなければ眠れるという方は多いのですが、その場合にも注意しなければならない点があります。起きる時間が遅くなり午前10時〜11時ぐらいまでずれ込んでしまうと、週明けに時差ぼけのような状態となり月曜日の朝がつらくなってしまいます。また、午後3時以降に昼寝をするとその夜に眠りにくくなり、寝不足な状態から一週間が始まってしまうことになります。ですから、休日でも遅くても9時ごろまでには起き、いったん外に出るなどして日光を浴びるとよいでしょう。その後、午前11時〜午後2時ぐらいの時間帯であれば夜の睡眠には影響しないので二度寝をしてもかまいません。しかし、11時〜お昼頃までずっと寝てしまうと翌日の午前中に眠気が残りやすくなります。仕事中にどうしても眠いときは無理をせず仮眠をとる寝不足による眠気は寝ること以外では解消できません。眠らないでいると睡眠圧(すいみんあつ)というものがどんどん高くなります。お腹の中でガスがたまって便を我慢できなくなることをイメージしてみて下さい。睡眠も同様に圧力が高まってくると、最終的には気がつかないうちに眠ってしまうようなことになります。特に、車の運転中に眠ってしまったりすると生命に関わります。昼食後の眠気は、サーカディアンリズムや概日(がいじつ)リズムとも呼ばれる体内リズムのピークがお昼と夜中に2つあることが主な理由であると考えられます。もし食事によって眠くなるのであれば、朝食後や夕食後にも眠くなるはずです。よくいわれている血糖値の上下もある程度影響はあるにせよ、眠気の体内リズムのピークが二峰性(にほうせい)になっているということのほうが要素としては大きいでしょう。仮眠の前にカフェインを摂るとよいとされていますが、それはカフェインを摂った後30分ほどするとその効果が立ち上がってくるからです。ですから、カフェインを摂った直後に昼寝をして、昼寝が終わった頃にカフェインが立ち上がってくるとちょうどよいのです。ただし、寝不足だとカフェインを摂ってもあまり効きはよくありませんし、摂りすぎは夜の睡眠を悪化させてしまうので注意が必要です。仮眠をするときは、横になれなくてもイスに座ったまま目を閉じているだけでも効果があります。目や耳からの情報がなくなると睡眠に似た状態に入りやすくなります。どうしても眠気に耐えられないときは、トイレの個室などで5分ほど目を閉じるだけでも効果的でしょう。忙しい日々においても、ちょっとした工夫でより良い睡眠を手に入れることが出来ます。ぜひ実践してみてください。 佐藤 幹先生のその他の記事を読む■不眠症対策の悩みを解消!病院の選び方から睡眠薬まで
2017年04月15日【2017年4月23日更新】<ドクターズインタビュー>不眠のことで困っていても「どんな病院に行けばいいのかわからない」「病院に行っても睡眠薬を出されるだけなのでは?」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。日本睡眠学会認定医として、精神科領域の病気や睡眠障害を幅広く専門的に診断・治療している新橋スリープ・メンタルクリニック院長の佐藤幹先生に、不眠症の診断や治療についてお話をうかがいました。【佐藤 幹(さとうみき)先生】新橋スリープ・メンタルクリニック院長東京慈恵会医科大学付属病院本院精神神経科外来非常勤勤務睡眠障害を中心に精神科領域全般における診療を行なう。睡眠学を専門とし、過眠症(ナルコレプシー等)、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、時差ぼけなどの研究を行う。特に不眠症に関しては認知行動療法を取り入れた治療法を研究精神保健指定医、日本精神神経学会専門医日本睡眠学会認定医不眠の悩みは、認定医がいる病院へ睡眠の悩みでどんな病院に行けばいいかわからないという方は、まず学会の認定医がいる医療機関を選ぶようにするとよいでしょう。私自身も日本睡眠学会の認定医ですが、日本睡眠学会のホームページなどを見ていただくと、学会の認定医が全国のどこにいるかということがわかります。睡眠を扱っているクリニックはいろいろありますが、主に内科を専門としているクリニックでは睡眠薬や抗うつ剤はあまり出せません。そのため、精神科を求めて我々のクリニックに来院される方がいらっしゃいます。もちろん、現在は内科でも睡眠薬や抗うつ剤を処方していただける医師もいます。しかし、うつに限っていえば自殺などのリスクもあるため、やはり精神科の医師に任せたいというところもあるのではないかと思います。実際、私のところにもすでに内科にかかっていた、あるいは内科で睡眠薬だけ処方してもらっていたという患者さんはかなり来られています。不眠治療は、まず薬を使わない方法から薬を使わない改善方法としては、睡眠衛生指導や、眠くなるまで布団に入らないこと、そして起きる時間を一定にすることが挙げられます。睡眠時間制限法や刺激コントロール法と呼ばれるものです。しかし、睡眠時間自体が少ないと現実的にそうは言っていられません。特に社会人の方の場合、眠くなるまで布団に入らないといっても起きる時間は決まっているので、逆にプレッシャーにもなってしまいます。そうなると少し睡眠薬を使わなければならない場合もあります。順序としては、睡眠衛生をまず守っていただくようにします。そして、睡眠衛生の修正だけでは改善しない場合には、睡眠薬を使い、睡眠薬を使用しても効果が少ない場合は睡眠時間制限法や刺激コントロール法を試みます。最近では特に若い方の場合、睡眠薬を使うことにあまり抵抗がなく、とりあえずなんとかして寝て明日に備えたいという患者さんも多くなっていますが、安易に薬物治療に頼るべきではありません。睡眠薬は「必要な時にだけ使う」就寝直前に眠気がある日は、基本的に睡眠薬は使わないようにします。就寝直前になっても眠気がないとき、または眠気があって布団に入ってもその後20〜30分経っても眠れない、眠気がとんでしまって眠れそうにないというときに睡眠薬を使います。これを頓用(とんよう)といいます。睡眠薬は必要なときにだけ使うということが大事です。ただし、長年不眠を患っている方の場合には、最初からある程度の期間、薬を使っていただくこともあります。睡眠薬の副作用や依存性の心配は?私が診ている患者さんに関して言えば、不眠を主に訴えて受診される方のうち、3分の1から半分程度の方はリピーターとして来られることはありません。ほとんどの方は睡眠薬を1回処方して終わるため、薬に依存するようなケースはあまりありません。たとえば1回の処方で20回分の薬を出すと、その後まったく薬をもらいに来ない方も多いです。あるいは2〜3ヶ月後に来られて、3日に1回程度のペースで使っているとおっしゃる方、出張のときにだけ使っているという方もいらっしゃいます。いわゆるヘビーユーザーの方は月1回ぐらいの割合で薬をもらいに来ますが、そのような場合は神経症に近い病態であり、神経症の症状のひとつとして不眠が出ている可能性が高いと考えられます。治療期間は年単位になり、数年に及ぶこともあります。もしくは、睡眠時無呼吸症(SAS)など、睡眠の質を悪くするような別の要因が重なっている場合には、睡眠薬だけでは改善しません。原因疾患が治癒するまで、治療期間は長くなる傾向にあります。睡眠を専門とする医師の間では現在、薬物的な依存が強いといわれているベンゾジアゼピン系の薬は処方しないようにしています。使うのは非ベンゾジアゼピン系の薬か、オレキシン受容体拮抗薬(商品名:ベルソムラ)やメラトニン受容体作動薬(商品名:ロゼレム)といった薬です。強い不眠の方は睡眠薬を服用しないと眠れないので、その場合はある程度毎日服用してもかまいません。毎日服用しても問題がないように、依存性が少なくリバウンドしないような薬としてベンゾジアゼピン系以外のものを第一選択にしています。ベンゾジアゼピン系の薬は使い続けるうちに効きが悪くなり、量も増やさなければならなくなるケースが多く報告されています。また、ベンゾジアゼピン系の薬剤は他の薬に置き換えることが難しいため、最近では長期間にわたって服用するという場合も考えて、ベルソムラやロゼレムなど癖になりにくいものを選択するケースが多くなります。毎日服用する必要のない方の場合は、たとえば仕事がある前の日だけ服用して、週末は自力で眠る日を作るようにします。あるいは1日おきに服用していただくようにすると、自力で眠ることができている日もあるので、心理的にそれほど薬に頼らずにすみます。しかし、性格的に依存性が強い方も中にはいらっしゃいます。そうすると、たとえば「週5日だけ服用してください」と言っても毎日服用してしまい、すぐに薬をもらいに来ることになります。ですから、そういった方の場合には少し依存傾向があるということに注意を払いながら、必要以上に使わないように念を押しています。日本では1回に処方できる錠数も厳しく制限されているので、患者さんが薬を毎日服用したかどうかということはわかります。私自身も薬を多めに処方することはせず、患者さんが次回来られるまでの日数から計算してちょうど足りるくらいの数しか出していませんので、どのくらいのペースで服用しているのかということは把握しやすくなります。睡眠日誌で睡眠の状態と薬の服用状況を把握また、不眠の患者さんには睡眠日誌(睡眠表)で睡眠の記録をつけてもらうようにしています。睡眠日誌(睡眠表)には、睡眠薬を使った日に印をつけてもらう欄があり、床についた時間や起きた時間、途中で起きた時間や実際に眠れた時間などを表に記入するようになっています。それを2週間、1ヶ月というように一定期間書いて持って来てもらいます。日誌をつけると患者さんも自分のことがよくわかりますし、逆にそういったものがないと質問をしても曖昧な記憶だけで答えてしまうため、実際の状況が十分に把握できないからです。ただし几帳面な方の場合には、時間を分単位で正確に書こうとするなどあまりにも細かいところにこだわってしまい、逆に眠れなくなってしまうことになっても困ります。ですから、その都度時計を確認しなくてもよいので、朝起きた時の大まかな印象で書いてくださいとお伝えしています。自分自身の睡眠を長い目でみることによって、少しずつよくなっていることが実感できるというのも睡眠日誌のよい点です。検査のデータが「良好」でも「不眠症」の場合も実際に不眠症の方の脳波などを調べてみると、ほぼ全員が自己申告よりも客観的によく眠れています。しかし、それをご本人がどう受け取るかというところで反応が大きく2つに分かれます。「ああよかった、眠れているんだ」と安心する方は不眠症がよくなることが多いのですが、「いやいや、こんなに眠れているはずがない」という方たちは治療に時間がかかるという傾向があります。「不眠症とは何か」ということを考えるとき、検査をして睡眠のデータが悪くなければそれは不眠症ではないという考えもありますし、検査データが良好でもご本人が「眠れていない」と言っている、その主観を「不眠」というのだという意見もあります。私自身はおそらく後者が不眠というものであり、その状態をいわゆる不眠症の中核として扱うべきだろうと考えています。睡眠のデータ自体が悪い方たちについては、まず睡眠時無呼吸症(SAS)や周期性四肢運動障害(PLMD)などの可能性を考えなければなりません。そういうものがなくて眠れていない方たちには睡眠薬を使っていくことも必要です。しかし、実際に眠れているにもかかわらず眠れていないと思い込んでいる方たちをどうするかというところが問題です。こういった方たちは客観的には眠れているので本来ならば睡眠薬はあまり必要ないはずなのですが、その思い込みをどう治していくかというのが非常に難しいところです。高齢者にみられる睡眠の悩みの傾向ご自分が眠れていないという思いがどうしても強い方は、健康に不安があり病気ではないかと気になってしまうような、いわゆる心気的(しんきてき)な傾向がある方に多いです。特にご高齢の方に多くみられます。また、これまで長い間不眠で悩んでこられたような方は、SASやPLMDなど別の要因がないかチェックする必要もあります。それらの要因が何もないような方たちは、心気症(hypochondriasis)、いわゆるノイローゼなどに近い不眠症ということになります。睡眠日誌をつけていただくと、ご高齢の方の場合、眠くなくても早い時間に布団に入っているようなケースがかなり見られます。「年を取ると早く寝るようになる」と思っている方が多いのですが、眠気が来るまでは起きていても構わないのです。たとえば日頃から21時に就床している方達に、「23時まで起きているようにしてみましょう」というと皆さん驚かれるのですが、実際に眠くなるまで頑張って起きているように指導すると、それだけで不眠がよくなる方もいらっしゃいます。途中で目が覚めてしまうというのは、加齢による変化として当然起こりうることです。そこで中途覚醒や早朝覚醒に対して、どのくらい睡眠薬を使うかというのは難しいところですが、基本的には次の日に眠くて仕方ない、あるいは朝起きて倦怠感が残っているというようなことがなければ薬を使う必要はありません。いったん目が覚めても20分以内に再入眠できれば問題はないので、中途覚醒の回数自体はさほど気にする必要はないでしょう。不眠だけではなく「過眠」の方も多いクリニックを受診される方はビジネスマンが中心というわけではなく、高齢者や主婦、学生まで幅広い患者さんが来られています。その中には不眠症だけでなく過眠症の方も意外に多く、授業中に眠ってしまうという学生さんなどもいらっしゃいます。このようなケースは実は昔からあったもので、必ずしも最近患者さんが増えている傾向とはいえません。眠気のメカニズムがある程度学問的に解明され、新しい薬が開発されたことなどによって、これらの症状に診断がつくようになってきたのです。かつては怠けていると思われていたものの一部が、実は過眠症だったということがわかってきたのです。また、朝起きられない子どもたちの中には、睡眠覚醒リズム障害、つまり体内時計が狂ってきているようなケースがあることがわかってきました。こうした子どもたちも今では適切に治療することで学校にも行けるようになり、人生を取り戻すことができるようになっています。ADHD(attention deficit hyperactivity disorder:注意欠陥・多動性障害)の中には、眠気を訴える子どもたちが多いことが報告されています。臨床をしている中での印象ですが、将来的には、過眠症やナルコレプシー、ロングスリーパー、あるいはDSPS(Delayed sleep-phase syndrome:睡眠相後退症候群)と呼ばれる睡眠周期の延長や睡眠覚醒リズムの遅れなど、それぞれ別のものだと思われていた疾患についても、たとえば脳のノルアドレナリンやドパミンなどの神経伝達物質の分泌の偏りや、神経細胞の機能の個人差などを明らかにすることにより、病態の説明が可能になる時代が来るかもしれません。つまり、一部の過眠症状や睡眠覚醒リズム障害、ADHDなどが別々の疾患ではなく、ひとつの症候群なのかもしれないという仮説を自分なりに立てて患者さんを診察しています。夜型は必ずしも悪いことではない幼児でも遅くまで起きていて平気な子どもはいます。もちろん、20時ぐらいで寝てしまうというような子どものほうが多いのですが、それが教育や環境によるものなのかどうかというところははっきりしていません。おそらくそれは教育よりも、持って生まれた脳の特徴・性質的要素が大きいのではないかと考えています。また、発達障害の子どもには夜型が多く、宵っ張りのタイプが多いということも知られています。発達障害の例も含めて考えると、理想をいえば、睡眠リズムの個人差を重視し、その人が一番効率よく働ける時間帯を考慮してフレキシブルに出社できるような形が一番よいのかもしれません。もちろん、そういった勤務が可能な企業もすでにあるかもしれませんが、現実的には、標準的な勤務形態の中で縛られてしまうことのほうが多いのではないでしょうか。日本では一般に「早寝・早起き」が美徳とされていますが、必ずしもそれがすべての人にとってよいとは限りません。夜のほうが効率よく勉強できるという子どもはたくさんいます。私自身も夜中に勉強するタイプでした。ですから、全員に対して一律に朝活や朝練を求めるのは少し強引なのではないかという気もします。早朝も深夜も情報量が少なくなるという点では共通しています。外来で話を伺っていると、夜型の学生(中学生以降)の多くは、22時頃の時間帯に一度眠気が来てもそれを過ぎると元気になります。その後はどんどん眠気が少なくなり、23時から夜中の2時頃までとても元気になる傾向が見られます。ですから、こういったタイプの方は深夜に仕事や勉強が一番進むのではないでしょうか。日中の耐えられない眠気を伴う睡眠時無呼吸症(SAS)睡眠時間は足りているはずなのに昼間眠くてしかたがないという方は、睡眠時無呼吸症(SAS)の可能性もあります。このクリニックでは、SASの簡易検査を行なっています。本来は終夜ポリソムノグラフィー検査という泊まりがけの検査を受けていただき、睡眠中の脳波と呼吸状態をチェックした上で最終的に診断しますが、その場合は一泊入院が必要で、費用も高くなります。SASかどうかはっきりしないグレーゾーンの方には簡易検査として当院で機械を貸し出し、自宅で使っていただくようにしています。簡易検査の結果、さらに詳しい検査が必要な方は東京慈恵会医科大学附属病院にご紹介して、そこでCPAP(持続陽圧呼吸療法)を行うかどうかを決めるようにしています。一般的には肥満だと睡眠時無呼吸症になりやすいと言われています。しかし、痩せている人でも、骨格等の問題で無呼吸になるケースも考えられます。気道の周囲を取りまく舌、口蓋垂、軟口蓋が気道を塞ぐ場合鼻中隔の変形、慢性副鼻腔炎により空気の通りが悪い顎が小さい、後退している、上気道の空間そのものがもともと狭い脂肪沈着や扁桃肥大により喉や上気道が狭くなっている筋力がなく、気道自体がしっかりしていない閉塞型の無呼吸はこれらのいずれかの要因で起こりますが、顎が小さいことや鼻中隔湾曲など、顔面の骨格・構造によるケースが多くみられます。日本人は顎が小さいので、痩せてもあまりよくならない場合も多いと考えられます。また、慢性副鼻腔炎のある方は、その治療することによって無呼吸もよくなることがあります。中高年になってから多くみられるのは、筋力が低下して脂肪が増えるためです。男性の場合、睡眠時無呼吸症を発症している方は20歳の頃と比較すると15〜20kgぐらい体重が増えていることが多いです。また、女性の場合は閉経後に女性ホルモンの減少によって気道の筋力が弱まるため、いびきや無呼吸が多くなります。気道の筋力は鍛えられないので、上気道周りの脂肪を落とすことが有効な方法となります。睡眠時無呼吸症は、様々な疾患のリスク要因となります。(不整脈がある方は)止まっていた呼吸が再開するときに心臓の拍動が激しくなるため、そのときに不整脈が起こると血栓ができやすくなります。その血栓が心臓の血管に詰まると心筋梗塞になりますし、脳の血管に詰まると脳梗塞になりますので、そのリスクが上がることになります。また、血圧も上がりやすくなります。朝起きたときに血圧が高いというのは、無呼吸症の方に多くみられます。また、無呼吸症で起床時に頭が痛いのは、寝ている間に酸欠になっているからです。睡眠の質の改善に加え、こういった重篤な疾患を防ぐためにも、睡眠時無呼吸症の治療は重要です。佐藤幹先生のその他の記事を読む■うつ病と不眠症の原因・対策・改善
2017年04月14日クチコミでずっと予約が埋まり、キャンセル待ちが10万人を超えるヘッドスパ専門店「悟空のきもち」が開発した「睡眠用たわし」が2017年3月24日にいよいよ発売!発売前に早くも完売。現在2か月待ちと驚きの「人気たわし」を開発した銀座店のスゴ技ヘッドマイスター福有早暉(ふくあり・さき)さんに解説いただきながら寝てみます!手だけの刺激でみんな寝かされる。「悟空のきもち」のヘッドマイスターは、自らの手だけを使って一定のリズムで頭皮に刺激を与え、その下にある筋膜にストレッチを施します。これによってリラックスした状態をつくり、その快感が最高潮に高まったところで眠りに落とす「絶頂睡眠」。頭皮を少しいじめることによって寝つきのよい、眠りやすい頭皮の状態を作ることができるといいます。体のストレッチなどと同じように、最初はちょっと痛いけれど気持ちよく、それを続けていくとあまりの気持ち良さにストンと眠ってしまうのだとか。(開発者の福有さん)眠気解消ドリンク VS スゴ技ヘッドマイスターお客さんの中には、「今日こそは寝ないぞ」と意地になってカフェイン入りのドリンクを飲んでから来店するようなツワモノもいるそうです。福有さんの手にかかると、カフェインの効果も及ばす、ほとんどのお客さんを10分以内に眠りに落としてしまうといいます。寝落ち率ほぼ100%!そのスゴ技、一度は体験してみたいですね。現在、全店舗を合わせて35名のヘッドマイスターが活躍中ですが、その資格を得るには厳しい訓練で確かな技術を身につける必要があるのだそうです。頭の温度を冷やすことが、目覚めの爽快感の秘密!起床後の爽快感と頭の温度は密接に関わりがあるそうで、福有さんによれば、施術の際にはあえて冷たい手で頭の熱を奪うようにしているそうです。頭の温度を適度に冷やすことが、深い眠りを誘い、さらに、目覚めの爽快感にもつながっているとのことです。どう考えても枕じゃないこうした「悟空のきもち」が実践してきた眠りのメソッドから生まれたのが、「睡眠用たわし」。最初に寝具メーカーから快眠まくらを作ってほしいと依頼された際、福有さんはじめヘッドマイスターたちは、最高の眠りを考えると、どう考えてもまくらじゃないという結論でした。従来の枕の延長線上ではなく「枕を否定するものが必要」普通の枕では頭に熱がこもってしまい、目覚めたときに体のだるさや眠気が残ってしまうし、入眠速度はあがらないからだそうです。たわしを並べて、寝てみた!開発当初から、たわしと枕を結び付けるアイディアが浮かんでいて、通気性がよく頭を温めすぎないなど、どの点をとってみてもたわし以上のものは考えられなかったといいます。最初は本物のたわしを3つ並べてつなげたものを用意し、本当にその上に頭を乗せて寝てみるという荒行までしたそうです。その感想はさすがに違和感が強すぎて寝にくかったのだとか。(他に候補の素材なかったのですか?としつこく聞いてみましたが、たわし以外有り得なかったそう。)頭を冷やす抜群の通気性は本物のたわし以上開発協力を依頼したのが、和歌山で純国産たわしを生産する老舗メーカーの高田耕造商店。同社の「やさしいたわし」シリーズは、一般的なたわしよりも柔らかくてコシのある素材でできています。20回にわたる試作をくりかえしたのちに、睡眠用に最適な柔らかさのたわし素材を新たに開発したのだそうです。この睡眠用たわし、通気性では本物のたわし以上だといいます。普通のたわしは繊維を束ねているので、中心部では繊維がぎゅっと詰まって密になっています。ところがこの睡眠用たわしでは、たわし独特の突起を持つ素材を表面に使いつつ、中材には中空の透過素材を使っています。そのため、明かりにかざすと透けて見えるほど。どうやらこれが本物のたわしを超えた通気性と透過性を実現している秘密のようです。もちもち弾力感にこだわり、最適な高さをキープまた、普通の枕は頭の重みで沈み込んでしまうものが多い中、この睡眠用たわしではもちもちした弾力感に結構こだわっているそうです。全体としては見慣れた「たわしフォルム」を生かしているのですが、横から見ると少し平べったい形をしています。一見すると枕としては薄いのでは?とも思えますが、もちもちでも沈み込みは少ないのでこの厚みがベストというのことでした。寝てみるとやみつきになる絶妙なたわし感「睡眠用たわし」に触らせていただいたところ、本物のたわしよりもかなりやさしい感触に一同から「お〜」と驚きの声が。その独特の感触は、ヘアブラシが頭皮にほどよい刺激を与える感想に似ています。個人的に気になっていたのは、寝返りを打って顔に当たると痛いのではないかということ。実際にお店のリクライニングシートをお借りして、この「睡眠用たわし」に頭を乗せて左右に向きを変えてみましたが、横向きになっても痛いという感じはまったくなく、むしろ絶妙な気持ち良さがあります。公式サイトでは、慣れないうちはフェイスタオルなどをかぶせて、たわしの素材に触れる面積を少しずつ増やしていくことを推奨していますが、意外と痛みを感じないので、すぐに慣れてしまうというのが私の感想です。髪が長い女性の方の場合は髪を束ねて、後頭部にしっかりとたわしの感触が感じられるようにして寝ると効果が高いとのこと。たわし感満載の「茶色」と裏ワザが楽しい「白」の2色2017年3月24日から発売されるのは茶と白の2色。「たわし」を連想させる茶色は発売前に早くも先行予約を終了するほどの人気ですが、実はこの色を再現するのが技術的に難しいのだとか。一方、白のバージョンでは透過性の高さを生かした裏ワザが楽しめます。無料のアプリをインストールしたスマートフォンを睡眠用たわしの下に置くと、眠りに誘う環境音とともにランダムに彩りを変えるたわしが、幻想的なベッドルームを演出します。購入は快眠グッズ専門動画ショッピングサイトのNeltureから 「睡眠用たわし」のことをもっと知りたい方はこちら⇒今話題の「睡眠用たわし」を初めて触ってみた!★日本一予約が難しいヘッドスパ専門店「悟空のきもち」は何がスゴいのか?2008年に京都で誕生した「悟空のきもち」。そのユニークなネーミングは、孫悟空の頭を締め付ける金の輪が取れたときのような爽快感をイメージしたものだそうです。同店が提供する「極上無水のヘッドスパ」は、代表の金子淳美さんが考案した「21の手技」を駆使し、水やオイルなどを使わずに行うヘッドマッサージを進化させたもの。その快感が口コミで広がり、京都本店と大阪・心斎橋の2号店に続き、東京にも表参道・銀座に2店舗を出店。目指すは世界制覇!。次はニューヨークへの出店を計画中とのこと。日本の技術が世界の眠りを制覇する日も、そう遠くはないかもしれません!
2017年03月24日予約キャンセル待ちが10万人のヘッドマッサージ・頭のほぐし専門店「悟空のきもち」から、2017年3月24日に「睡眠用たわし」が発売されます。果たして、痛いのか、気持ちよいのか?頭皮への“刺激”が眠りを誘う?!その心地よさから10分ほどで眠りに落ちる「絶頂睡眠」で人気のヘッドスパ専門店「悟空のきもち」が独自の研究を重ねた中で、頭皮への刺激が眠りを誘うことがわかりました。大切なのは、何もしないでいると固くなったりむくんでしまったりする頭皮を適度に動かしてやること。そこで、頭皮を少しだけいじめるには、たわしの刺激が最適だそうです。たわしがベストの素材だった「悟空のきもち」を運営する株式会社ゴールデンフィールドでは、寝具メーカーからの依頼をきっかけに、快眠のための枕の開発に取り組んできました。同社では、頭と睡眠の関係を研究する中で、理想的な条件を持つ素材を検討した結果「たわし」にたどりついたといいます。“マイナス5℃”を実現するたわしの通気性従来の枕では寝ている間に頭の温度が上がってしまいますが、通気性抜群のたわし素材は頭の温度が上がることを防いでくれます。ポリエステル100%の枕との比較では、その差はおよそマイナス5℃。朝起きたときの爽快感や寝覚めのよさには、この頭の温度が大きく影響しているとのこと。脳の温度を下げて快適な睡眠を人が眠りにつくときには、体の中の熱を外に出して温度を下げ、体全体の代謝を下げることによって脳の温度も下がっていきます。脳をフル活動させて仕事をしている人ほど、疲れた脳がオーバーヒートしないように脳の温度を下げて休息させることが大切です。脳の温度が下がることで、自然に眠れる状態を作り出すことができます。たわしだから、毎日洗えてすぐに乾く!枕は使い続けるうちに体からはがれ落ちた皮膚のかけらなどが付着し、それを餌にしてダニが繁殖します。また、生きたダニだけでなくその死骸やフンも蓄積されていきます。一方、たわしは毎日洗って使うもの。通気性がよく水切れも早いので毎日水洗いして清潔な状態で使えるのが大きなメリットです。水洗い30分後(室内干しの場合)の重さを比較してみると、ポリエステル100%の枕が洗浄前の4.2倍の重さだったのに対し、睡眠用たわしは1.2倍。つまり30分も干せばほとんど乾いているというわけです。普通のたわしではない!たわしが理想的な素材であることはわかったものの、一般的な固いたわしではさすがに刺激が強く、そのままでは枕として使うには不向きでした。実は、よくある固いたわしの多くはパームヤシの繊維を束ねたもの。そこで協力を求めたのが、昔ながらの棕櫚(しゅろ)の繊維を使って柔らかさとコシの強さを兼ね備えた「やさしいたわし」を製造する高田耕造商店(株式会社コーゾー)でした。 同社が展開している「やさしいたわし」シリーズは、野菜や食器を傷めず、入浴時に体を洗っても痛くないという優れもの。この純国産棕櫚(しゅろ)にこだわった日本一のたわしの素材感を生かしながら、中材には通気性と弾力性を兼ね備えた透過エア素材を用いることで、睡眠に特化した世界初の「睡眠用たわし」がようやく完成しました。奇跡の圧力分散効果実際に睡眠用たわしが完成してみると、当初は想定していなかった副次的な効果として、たわし素材のもつ無数の突起で頭を支えることによって圧力がうまく分散されることがわかりました。従来の枕との比較でもその差は明らかです。■「睡眠用たわし」の主な特長色は、たわし色茶と白の2色価格は9,800円(税抜)果たして痛いのか!?気持ちよいのか!?気になる方はぜひお試しを! 「睡眠用たわし」を触ってみたら・・・ネムジム編集部は、「睡眠用たわし」の発売に先駆け、悟空のきもちの独占取材に成功。実際に触らせていただくことができました。その触り心地、寝心地は、まったくの予想外!編集部スタッフも思わず、これは絶対に欲しい!と、早速予約をしておりました。「睡眠用たわし」を実際に試した感想と開発秘話を次回記事にて公開いたします。乞うご期待。購入は快眠グッズ専門動画ショッピングサイトのNeltureから予約のキャンセル待ちが10万人!頭のほぐし専門店「悟空のきもち」とは?ドライヘッドスパの最高技術を駆使する日本初のヘッドマッサージ・頭のほぐし専門店として、2008年に京都・四条河原町に誕生。独自の「21の手技」を完成させ、快感の絶頂で眠りに落ちる「絶頂睡眠」の施術が高い評価を得ている。京都本店のほか、大阪・心斎橋店、東京表参道店・銀座店の全4店舗を展開。全店舗で3ヶ月先までの予約枠がすべて埋まり、2017年3月時点でキャンセル待ちの人数も4店舗合計で10万人を超えるという「日本一予約が難しい店」。純国産たわしシェア1位の老舗「高田耕造商店」とは?1948年に和歌山県で創業、純国産棕櫚(しゅろ)にこだわって昔ながらの束子(たわし)・箒(ほうき)を作り続けている。熟練の職人が厳選した繊維を巻き上げて作る「やさしいたわし」「やさしいほうき」シリーズを展開、純国産たわしシェア1位の老舗。
2017年03月23日<ドクターズインタビュー>東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生は、長年にわたり疲労の研究を進め、東京・新橋のクリニックで疲労と睡眠に特化した診療を行っています。梶本修身先生に疲労のメカニズムと睡眠との関係についてお話をうかがいました。【梶本修身(かじもと おさみ)先生】大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授東京疲労・睡眠クリニック院長大阪大学大学院医学研究科卒業。医学博士・医師産官学連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者著書『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)、『仕事がはかどる! 超高速脳のつくり方』(宝島社)など脳を疲れさせる寝汗といびき疲労回復に大切なことは、夜中に脳の自律神経が活動するような状況を避けることです。そのためには、ノンレム睡眠の深さを表す4つのステージでいえば3または4に相当するような深い睡眠を周期的に取る必要があります。まず悪い例として挙げられるのは、熱帯夜にエアコンをかけずに汗をびっしょりかくような寝方です。寝汗をかいているということは、体温調節のためにそれだけ自律神経が頑張っているという何よりの証拠です。いびきは睡眠中に運動をしているようなものそして、そのほかにもうひとつ、私たちが疲労の原因として、もっとも注目しているのは「いびき」です。睡眠中のいびきや無呼吸によって血液中の酸素飽和度が80%ほどに低下する方は多く、酸素が足りなくなると脳へ酸素を供給するために血圧を上げ、心拍を速くする必要があります。息を止めると心臓がドキドキしてきますが、それと同じことが深夜に起こっているのです。そうすると、眠りながら運動をしているような状況になり、自律神経は非常に疲れてしまいます。いびきをかいて眠っている人を見て、よく寝ているなというのは大間違いです。無呼吸はもちろんですが、いびきをかいているだけでも実は非常に自律神経を疲れさせているのです。女性はいびきに注意が必要女性の方の場合、男性に比べるといびきの音はそれほど大きくないことが多いのですが、むしろ自律神経へのダメージは深刻であるケースが少なくありません。女性は男性に比べて肺活量が少ないので、結果としていびきの音が小さい傾向がありますが、肺活量が小さいということは酸素を吸い込める量も少なくなります。また、女性の場合は貧血と低血圧を合併している人が多くみられます。貧血や低血圧があると脳に送られる酸素量はもともと少ない状態にあります。その結果、ちょっとしたことで酸素量が不足するので、脳に十分酸素を送るためには自律神経により負担がかかることになります。女性のいびきはホルモンの減少と関係また、女性の場合には更年期にさしかかる35歳から45歳の年代で、それまでほとんどいびきをかいてなかった方にいびきがみられるようになることがわかっています。これは女性ホルモンの減少と関係しているといわれています。一方、男性の場合にはいびきが気になりはじめるのはもう少し遅く、45歳から55歳の年代に多いという傾向があります。男性は豪快ないびきが多いため気づきやすいのですが、女性の場合はいびきの音が小さいことが多く、寝息といびきの区別がつかないような方が35歳から45歳の年代でだんだん増えてきます。ですから、女性の場合は少し寝息が大きいかもしれないという段階から注意していただいたほうがよいでしょう。いびきには簡易型PSG検査を睡眠や疲労を扱っているクリニックでは、簡易型PSG(睡眠ポリソムノグラフィー)という検査を行なっています。いびきが気になる方はまずこの検査を受けていただくことをおすすめします。簡易型PSG検査では病院に泊まって検査をする必要はありません。検査機器を宅配便でご自宅にお送りし、測定後に送り返していただくという形で検査が可能です。この検査を行うことによって睡眠時の無呼吸や低呼吸状態はもちろん、酸素飽和度や睡眠の時間や深さ、つまり睡眠の質がわかります。その検査結果は、ご本人が朝起きたときに疲れがとれている(あるいは疲れがとれていない)という感覚と非常によく相関しています。あなたのお疲れ度がすぐにわかる検査私たちのクリニックで実施している自律神経機能疲労度検査は、自律神経がどれだけ疲れているということがわかる検査です。自律神経機能検査で疲労度をみる方法は大きく2つあります。ひとつは交感神経と副交感神経のどちらがどれだけ優位になっているかという比をみるもので、もうひとつは交感神経と副交感神経を足した合計のトータルパワー値をみています。検査結果は縦軸と横軸で表されます。横軸はLF/HF(LF:交感神経系成分、HF:副交感神経系成分)と呼ばれるもので、交感神経と副交感神経の比を表しています。右に行くほど交感神経が優位なのでストレスが高いということになります。一方、縦軸はトータルパワー値を表していますので、上に行くほどほどトータルパワー値が高いということになります。縦軸のトータルパワー値は、年齢とともに顕著に低下します。また、年齢の平均値に比して下がっていると慢性的に疲労が強いということを意味します。一方、横軸のLF/HFの比は何か緊張するようなことが起こると高くなるので、日によって変わります。一般には、ストレスが高いと右にシフトし、交感神経が相対的に有になりますが、典型的な慢性疲労症候群の方のような場合には交感神経すら上がってこないことがあります。つまり、緊張した状況が作れないほど疲れているということがわかるのです。疲労の原因は、昼間の疲れか?夜間の睡眠か?私たちのクリニックには慢性的な疲労や、寝ても疲れがなかなかとれないという悩みを抱えた方が来られています。中には全国の大学病院からの紹介で来られる慢性疲労症候群の患者さんもいらっしゃいますが、こうした患者さんはすでに診断がついてから長い時間が経っていることが多く、治療も容易ではありません。しかし、そうではない方の場合にはまず疲れの原因を探り、それが昼間に起こっている原因なのか、それとも夜に起こっている原因なのかに分けて治療方針を決定します。夜に起こっている原因の可能性があるときには検査をして、実際にいびきがあればいびきを治していきます。それによって疲労が改善する方はかなり多くいらっしゃいます。いびきや睡眠時無呼吸に有効性が証明されているCPAPとは?いびきや睡眠時無呼吸の治療にはCPAP(持続的自動気道陽圧ユニット)という医療機器を使います。CPAPはきちんと装着すれば100%有効であることが証明されています。睡眠効率や中途覚醒など、睡眠の質を評価するパラメーターでみると100%の方に効果が出ていますし、疲労に関しても、疲れがとれた・軽くなったと感じている方が85%となっています。ただし、CPAPを装着すると圧迫感や違和感があるため、使うのをやめてしまう方も3〜4割おられます。そのため、私のクリニックではまずは1週間使っていただき、使用感に問題がないときに継続使用を勧めています。CPAPの保険適用基準は見直すべきCPAPを保険診療で使っていただくためには、PSG(睡眠ポリソムノグラフィー)という検査の結果が一定の条件を満たしている必要があります。現在の基準では1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示すAHI(Apnea Hypopnea Index)が簡易型PSG検査で40以上、終夜ポリソムノグラフィー検査で20以上となっています。しかし、実際にはAHIが5〜20の方であっても昼間の眠気による事故が通常より多いということはデータ上でも明らかであり、軽度だからといって治療をせずに放っておいてもよいということにはなりません。特に職業ドライバーの方が事故を起こすリスクを放置することは、社会的にも問題があると考えます。そして、いびき自体もやはりきちんと改善してさしあげたいということがあります。たしかにいびきだけの患者さんをすべて保険適用としてしまうと、対象となる方はかなりの人数になってしまうので健康保険財政上、厳しいところがあります。現在、私たちのクリニックでは、CPAPがいかに有効かということを多くの方に試していただくために、自費診療でも使っていただけるようにCPAPをご提供しています。軽度の患者さんにも有効な疲労回復CPAPの開発私自身、今よりも太っていた頃にいびきがあって調べてみたことがあるのですが、検査の結果無呼吸がそれほど多くなかったため、やはりCPAPの保険適用基準には該当しませんでした。しかしその当時、同じだけ寝ても以前に比べて疲れがとれなくなってきたという自覚があったのです。そこで自分でもCPAPを試してみたところ、それまでの目覚めと全く違ってスッキリとした朝を迎え、昼間の眠気も全く感じなくなったことは驚きでした。その後、自分でCPAPを購入していろいろ使い方を試してみましたが、それまで8時間は寝なければ疲れが取れなかったのが、今は5時間ぐらいの睡眠時間でも一日中仕事が出来るようになりました。こうした経験から、CPAPは睡眠の質を高め、結果的に疲れをとるという意味で優れているということを確信し、何人かの方に試していただいたところ、やはり非常によい結果が得られました。ただし、その当時のCPAPは無呼吸を検知して空気を送る圧を調整するような仕組みであったため、いびきを検知できるようなシステムに改良を加える必要があると考えました。そこで医療機器メーカーと相談して、現在はいびきによって送り出す空気の圧を調整する特殊なプログラムを組み込んでもらっています。疲れをとる自然な目覚め方とは?睡眠で重視すべきなのは時間ではなくて「質」です。そして、その「眠りの質」というのはまさに、自律神経をいかに休めるかということにポイントがあります。自律神経を疲れさせないという意味では、朝の目覚まし時計もできればやめておいたほうがよいでしょう。大きな音は人間に対しても動物に対しても恐怖心を呼び起こすものであり、強いストレスとなります。実際に目覚まし時計の音で起きたときの自律神経の働きを調べてみると、副交感神経から交感神経に一気に上がっていきます。その結果、心拍や血圧も15〜20%ぐらい上昇します。これでは朝一番でいきなり自律神経を疲れさせているということになってしまいます。理想的な起き方は、朝、少しずつ明るくなってきて自然に目が覚めるというものです。実は、私の自宅では照明とカーテンに少し仕掛けをしてあります。起床時間になると、最初の5分間は暗いところから桜色のライトがだんだん明るくなっていき、少しずつまぶたの上で光をゆっくり感じるようにしています。そして次にカーテンを自動で少しずつ開けていくという仕掛けになっています。この起き方をしていると自然に目覚めたような感じがするので、起こされたという感じがしません。まるで休日の朝のような目覚め方で毎朝起きることができます。そうすると、不思議なことに同じ時間でも熟睡感がかなり違ってきます。あくまでもよく眠った気がするだけなのですが、不快感なく起きるということは自律神経を疲れさせないためにも非常に大切であると考えます。そうした知見から、現在、このシステムはエコナビスタ株式会社から「快眠健康ナビ」というシステム名で商品化されています。自律神経が休まるには、「ゆらぎ」が必要眠るときの明るさについても、よく3ルクスの明るさがよいといわれています。真っ暗でもなく明るすぎるのでもなく、月明かり程度の明るさがちょうどよいというところから来ているのかもしれません。そういったこともすべて含めて、自律神経が一番休まる空間が望ましいのです。完全に締め切られた空間、まったくの無風で環境の変化がないところは動物にとって居心地がよくありません。たとえば家の中で飼っている犬は、どれだけ居心地がよくても2時間ぐらいで寝る場所を変えます。それは、家の中という「ゆらぎ」がない環境ではそよ風で匂いが運ばれることもなく、敵の侵入に気づくことができないからです。同じように、人間も環境が統一されて一定の状態にいることはリスクになります。ゆらぎがない空間というのはあまりに人工的すぎるため「何が起こっているのかわからない」と不安になり、ゆらぎがあるほうがむしろ安心できます。ですから、寝室もリビングもゆらぎを取り入れたほうが心地よく過ごせます。理想をいえばエアコンをつけて窓を開けるぐらいの感覚のほうがよいのですが、そういった自然なゆらぎの心地よさは、たとえば森の中であればお金をかけなくても手に入りますから、その意味では森林浴などはとてもよいと思います。リラックスのためには「五感が一致すること」が大切五感を一致させるということはとても重要です。たとえばスパやエステなど、リラクゼーションを提供する場所では、入った瞬間にたいてい少し暗くなっていて涼しいというつくりになっています。暗いところをあえて涼しくしているからこそ心地よく感じるのですが、それは私たちが経験上、日陰に入ると涼しい、つまり暗くなると涼しくなるということを知っているからです。逆に日陰に入って蒸し暑さを感じたら、それは近くに誰かがいるということを意味しています。このように、五感が一致していることは自然な状態であるという認識につながり、それがくい違っていると気持ちが悪いと感じます。たとえば海の香りは海の近くで感じるからこそ心地よいのであって、山で嗅ぐとあまりいい香りだとは思えないでしょう。コーラだと思って飲んだものが実はコーヒーだったら、普段好きで飲んでいるものでも一瞬吐き出したくなったりします。それと同じように、五感は常に一致していないと気持ちが悪いと感じてしまうのです。こうした感覚の一致というのは、過去の自分の体験や、もっと遡ればDNAに刻み込まれた記憶に由来するものです。それがずれているということは、何か普通ではないことが起こっていてその状況を本能的に怖がっているのだと考えられます。不自然な状態は、動物はとってはもちろん、人間に対してもリスクを与える可能性があります。ですから、不自然な状態が生じていると感じ取ったときには、自律神経が交感神経優位になって興奮する方向に働き、休まることができません。自律神経が休まるためにはむしろ副交感神経が優位になるような状況が理想的なのです。夕焼け色の照明は眠りにつくのを早める皆さんが仕事を終えて家に帰る頃、夕方の6〜7時になると空が夕焼けで赤い色に染まっていき、そして夜になります。多くの家庭ではリビングなどの照明に電球色が好まれますが、夕方の空があの色だということを遺伝子のレベルで知っているからこそ、家で過ごすときには無意識のうちにリラックスできる色を選んでいるのです。私たちも家に帰ったときに夕焼け色の照明を使うことを推奨していますし、実際に眠るときにも、あの夕焼け色からだんだん暗くなっていくようにすると寝つきが良くなります。眠る前にそうした夕焼け色の照明を2時間ぐらい浴びていると、入眠潜時(にゅうみんせんじ)といって、ベッドに入ってから眠るまでの時間が早くなるということも論文として発表しています。自然界に起こっていることを再現すると私たちは心地よいと感じます。電気のない時代には人も動物と一緒に自然のサイクルに従って生活をしていました。その記憶は遺伝子の中に深く刻まれているため、それに反することをしていると不安を自覚し、自律神経が交感神経優位に高ぶってしまうこともあるのです。自律神経をいたわるモニタリングが大切睡眠だけでなく、昼間の生活においても自律神経をいたわることは大切です。特に日本では、毎日の習慣だからといって疲れているときにも運動を欠かさないという方は多いのではないでしょうか。しかし、本来は疲れを自分でモニタリングして行動することがとても重要です。たとえば朝、ベッドから出た第一歩で疲れているな、足が重いなと思ったら、それは前日の疲れがまだ残っているという証拠です。日中の負荷が強ければ翌日に疲れが残りやすく、また睡眠の質が悪くても疲れが残りやすくなります。そのどちらかが(あるいは両方が)起こっているわけですから、その日は運動を控えるというようなことを考えてもいいはずです。また、本来は朝起きてから4時間後が一番覚醒している時間だといわれています。朝7時に起きる方なら11時、朝6時起床なら10時がもっとも覚醒した状態にあるというわけです。ですから、その時間に眠さを感じているようであれば、睡眠が足りていないか、あるいは前の日の疲れが過剰であったということになります。もし睡眠がちゃんととれているとしたら、前の日の運動や作業の負荷が普段より強かったのかもしれません。「なんとなく」の衝動を大切に患者さんへのアドバイスとして私がいつもお伝えしているのは「衝動を大切にする」ということです。「なんとなくしんどい」「なんとなく今日は歩きたくないからタクシーにしよう」「今日はなんとなく会社に行きたくないな」などと思うことは誰にでもあるのではないでしょうか。この「なんとなく」という、どこからともなく浮かんでくる衝動は、実は全身から上がってくるデータ集計であり、統計解析の結果なのです。私たち人間が実際に意識できることはごく一部であり、ほとんどのことは無意識のところで行われています。たとえば、「今日、カレーが食べたいな」と思っても、それがどこから浮かんできたのかわからないということはよくあります。人間のひらめきや行動の多くはそうしたものですが、実はこの「衝動」を無視し続けることは健康を害する恐れがあります。「今日はなんとなく運動したくないな」というときには、はっきりとした自覚がなくても疲れていたりするので、そんなときにはトレーニングジムに行かないほうがよいのです。これは怠け者の方がいいと言っているわけではありません。自分の感性に正直であるべきであり、その感性を隠してしまうことが一番危険だということです。意欲や達成感、楽しいことがあると隠れてしまうので、自分でモニタリングした感性はもっと大事にするべきですし、根拠がわからなくても、衝動として上がってくるものには実は意味があるのです。自分の体の状態を意識的にモニタリングすることはなかなかできません。たとえば熱っぽいかなということぐらいは感じ取れても、血圧すら自分ではわかりませんし、同じように疲労も自分ではよくわからないことがあります。「今日はなんだかやる気が出ない」というときには、体が何らかの警告を発しているのだから無視してはいけないという意識を持つべきでしょう。
2017年03月13日<ドクターズインタビュー>東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生は、長年にわたり疲労の研究を進め、東京・新橋のクリニックで疲労と睡眠に特化した診療を行っています。梶本修身先生に疲労のメカニズムと睡眠との関係についてお話をうかがいました。【梶本修身(かじもと おさみ)先生】大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授、東京疲労・睡眠クリニック院長大阪大学大学院医学研究科卒業。医学博士・医師産官学連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者著書『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)、『仕事がはかどる! 超高速脳のつくり方』(宝島社)など疲れをとるには、睡眠が最適の手段私たちは疲労の専門家として、睡眠を専門としている先生方とは違う方向から睡眠の研究をしています。私はもともと大阪大学の精神神経科で睡眠を専門としていましたが、その後、疲労に関することをテーマに研究を行う中で、睡眠はあくまでも疲れをとるための「手段」であると考えるようになりました。したがって「よい睡眠とは何か」といえば、前の日の疲れがとれるということが私たちにとってのよい睡眠の定義となります。一般的に「今日はよく眠れた」という言い方をしますが、その場合の「よく眠れた」というのは、朝起きたときに前の日の疲れがとれているということであり、それがすなわち、多くの人々にとっても一番よい睡眠であるといえます。ですから、たとえば睡眠の質を調べるPSG(睡眠ポリソムノグラフィー)検査でまったく問題がなかったとしても、朝になって疲れが残っていたとしたらそれはよい睡眠とはいえません。私たちは疲労回復物質や疲労を起こしにくくする物質の研究をしていますが、もしも疲れをまったく起こさないようにできれば、あえて睡眠をとる必要はありません。しかしそうした夢のような物質が見つかるまでは、疲れをとるために睡眠は不可欠であり、できるだけ効率のよい睡眠をとることが最も適切であるということになります。私はちょうど今、寝てもなかなか疲れがとれない方のための本を書いています。これは、いわゆる不眠に関する本ではありません。実は、寝ても疲れがとれないと感じている方は非常に多くいます。もちろん、よく眠れないという方や不眠症の方のための情報も大切なのですが、今回は、「寝ても寝ても疲れがとれない方はいったい何を改善したらいいのか?」ということを中心にお話ししていきたいと考えています。慢性的な疲労の2つの要因慢性疲労を起こす理由は2つあります。ひとつは睡眠では回復できないほど日中の疲労の負荷が強すぎること。もうひとつは睡眠の質が悪く前日の疲労を十分に回復できないことです。つまり、慢性的な疲労を蓄積させないためには、昼間の疲労を軽減するか、夜に疲労の回復を促すか、この2つしか克服法はありません。一度起こってしまった疲労を昼間のうちに回復させることはできません。日常生活で疲れにくくするための方法はさまざまなものがありますが、それらは疲労を回復させているのではなく、それ以上悪化することを防いでいるだけです。つまり、疲労を回復させる手段は睡眠しかないのです。すべての疲れは脳が感じている「自律神経の疲労」だった私たちの研究の結果、運動疲労(肉体疲労)だけでなく、精神作業疲労と呼ばれるデスクワークの疲労や眼精疲労も含めて、昼間に起こっている疲れは自律神経の疲労であるということが明らかになってきました。たとえば運動をしたときには心拍や呼吸が早くなりますが、それを調節しているのは脳の中にある自律神経の中枢であり、汗を出して体温を調節しているのもまた自律神経です。ゴルフであれマラソンであれ、真夏の炎天下と11月では同じ時間・同じ距離であってもその疲れ方は大きく異なります。行動量には差がないのに、温度や湿度などの気候の差、すなわち体温コントロールを行う自律神経が疲れてしまうのです。自律神経は、発汗、心拍、呼吸、血圧などを秒単位で調整して、身体を常に安定した状態にする働きを司っています。真夏の場合にはその負荷が非常に強くなることから、自律神経が疲れると考えられています。もしも運動疲労の原因が筋肉そのもののダメージであるならば、真夏でも11月でも疲れは変わらないはずです。運動疲労というと体の疲れのように思われがちですが、実は体ではなく脳の中にある自律神経の中枢が疲れているのです。自律神経の疲れは活性酸素による細胞のサビ自律神経の疲れは活性酸素(かっせいさんそ)によるものです。私たちが何らかの作業をして自律神経の細胞が一生懸命働くときには酸素を消費します。すると、その過程で活性酸素が発生して神経細胞自体を錆びさせてしまいます。そしてその神経細胞が錆びると、全体を構成する自律神経の中枢自体の機能が落ちてしまいます。これが自律神経の疲れのメカニズムです。この自律神経の機能低下が起きると、その情報はちょうど眉間の裏側に位置する眼窩前頭野(がんかぜんとうや)という脳の部位にサイトカインという物質を通じて伝えられます。これがいわゆる「疲労感」として認識されます。そのときにあえて「体が疲れた」と感じさせることによって、これ以上作業をさせないようにして体を酷使することを防いでいるのです。ですから、本当は自律神経が疲れているにもかかわらず、私たちは「自律神経が疲れた」とは感じず、「体が疲れた」というように誤解させられているのです。そうしなければ作業をやめることなく、もっと頑張ろうとしてしまうからです。つまり、疲れは防御反応から来るアラート(警報)なのです。疲労と老化のメカニズムは同じもの疲れと老化は基本的には同じものです。細胞が活性酸素で一時的に錆びた状態が疲労。そのサビが固まってしまって取れなくなった状態が老化です。つまり、疲労と老化の違いは、サビが一過性かそうでないか、可逆的か不可逆的かということになります。これは脳の中の神経細胞で考えるとわかりにくいかもしれませんが、肌の変化を考えていただくとわかりやすいでしょう。たとえば海水浴などで日焼けをしても、それは一時的なものですぐに元に戻ります。日焼けした肌は疲れている状態ですが、それは数日経てば元の状態に回復します。言ってみればこれが肌の疲労ということになります。沖縄に住んでいる人や、さらにいえば東南アジアの赤道に近いところに住んでいる人たちは一年中強い日差しにさらされて生活しています。このように毎日肌を紫外線などによって疲れさせていると、結果的に肌のダメージが可逆的なものから不可逆的なものになり、単に色が黒くなるだけでなくシミやしわとして定着します。これが肌の老化です。つまり、可逆的な範囲にとどまっているのが「疲労」であり、それが不可逆的な段階に至ると「老化」となります。ですから、その意味では老化を防ぐアンチエイジングのもっともよい方法は疲れないようにすることであるといえます。疲れも老化もまったく同じ酸化ストレスが原因であり、その酸化ストレスがこびりついて取れなくなった状態が「老化」となっていくのです。「活性酸素がたまる」というのはウソ?よく「活性酸素がたまる」と言いますが、活性酸素の寿命は長くても数十秒です。その一瞬で細胞を錆びさせてしまうのです。周りのものを酸化して錆びると活性酸素自体は還元してなくなってしまうので、長い間とどまっていることはありませんし、それ自体を測ることもできません。酸化ストレスマーカーといって、尿の中に出てくる8-イソプラスタンや8-OHdGなどの物質を酸化ストレスの指標にすることがありますが、それらは酸化ストレスの結果代謝されたものが尿中に含まれる値をみています。ですから、ストレスマーカーはあくまでも活性酸素が悪さをした結果出てきた錆(サビ)を測っているようなものであり、活性酸素自体を測っているわけではありません。活性酸素に抗酸化物質は有効か?疲れの原因が活性酸素による酸化ストレスであるならば、抗酸化物質によってこれに対抗するということが考えられます。活性酸素が発生しては消えていくので常に抗酸化物質がそこに存在しなければならないということです。ビタミンCは強力な抗酸化物質のひとつですが、摂取してから体の中に滞在している時間は1〜2時間といわれています。いったん活性酸素をきれいになくすことができたとしても、ビタミンCが代謝されて体の中からなくなってしまえば、そのあとは効力がありません。抗酸化作用を持続させるためには、たとえば点滴のような形で体に入れるような工夫が必要となります。ブルーベリーに含まれるアントシアニンやリンゴに含まれるアップルフェノンなどのポリフェノール、そしてカテキンなども非常に優れた抗酸化物質ですが、やはり同様に2時間以内にほとんど消えてしまうといわれています。たとえばアントシアニンなどは代謝が早く、体内に取り入れてから30分ほどでピークになるといわれています。ですから、もしもサプリメントとして摂るのであれば、少量ずつこまめに摂るほうがよいかもしれません。抗疲労物質イミダペプチドのメリット私たちが推奨しているイミダペプチドという抗疲労物質がなぜいいかというと、先にお話しした脳の自律神経の中枢にそのイミダペプチドを合成する酵素、すなわちイミダペプチドを作る工場があるからです。つまり、材料さえ供給すれば自律神経の中枢で作ってはそこで効果を発揮するということをおよそ8時間にわたって継続することができます。実際の抗酸化力そのものは、先ほど挙げた抗酸化物質の中ではイミダペプチドは決して強力とはいえません。しかし、それが自律神経の中枢で作用するということが非常に重要なポイントです。イミダペプチドを作っている工場は骨格筋と自律神経中枢にあります。脳と血管の間には血液脳関門というものがあり、血管から脳への物質の移動を制限して分子量の大きい物質を通さないようにしています。イミダペプチドは体内に摂取した後アミノ酸に分解されるので、最小単位のアミノ酸の状態で関門を通過し、脳へ到達することができます。しかし他の抗酸化物質の場合は、比較的通過しやすいポリフェノール以外は関門に引っかかってしまって脳には届きません。疲れの原因は自律神経の中枢ですから、脳に届かなければ肝心の自律神経にはまったく作用しないということになります。眼精疲労も自律神経の疲労眼精疲労については90年代頃からさかんに研究されてきました。その結果、目や視神経の疲労だと思われていた眼精疲労も実は自律神経の疲労であるということがわかってきました。動物の脳は、活発に活動をしているときには交感神経優位の状態にあり、リラックスしているときには逆に副交感神経優位となります。自律神経はこのように交感神経と副交感神経がうまく拮抗してバランスをとっています。ですから、私たち人間も仕事をしているときには交感神経優位の状態を保っています。動物が、獲物を追いかけるときや逆に敵に襲われる危険があるときなどは、交感神経が優位となります。このようにリスクが高い状況では、遠くを見る必要があるため、目に交感神経の刺激が伝わると、眼球内の水晶体を薄くして屈曲率を下げ、遠くがよく見えるように調整されます。このことは私たち人間も含めて全動物に共通する仕組みです。一方、お母さんのおっぱいを飲んでいる赤ちゃんや、その赤ちゃんを抱いているお母さんが見ている対象はおおむね70cm以内のごく近い距離にあります。このように脳がリラックスしている場合には、副交感神経が高まります。目に副交感神経の刺激が伝わると水晶体のレンズが分厚くなって近くがよく見えるようになります。つまり、基本的にすべての動物は、仕事モードのときには交感神経優位でレンズを薄くして遠くを見るようにし、安心できるときはレンズを厚くして近くを見ているのです。50万年の人類の歴史の中でこの数十年だけは、仕事や勉強などで集中して近くを見る時間が多くなりました。その場合、脳は交感神経優位となっているにもかかわらず、目には副交感神経の刺激を出さなければ近くを見ることができません。この矛盾が眼精疲労を引き起こしているのです。眼精疲労は筋肉が痙攣しているときのような状態眼精疲労を起こしている方を調べてみると、実際、目のレンズの厚さを調節する毛様体筋が痙攣(けいれん)を起こしているときのような状態になっていることがわかりました。こむら返りで足がつったときなど、筋肉が痙攣しているときには、関節を曲げるように働く筋肉と伸ばす側の筋肉が同時に収縮しているということがみられますが、眼精疲労でもそれと同じようなことが起きていたのです。眼精疲労を起こしている方のほとんどは、パソコンのディスプレイなど近くを見て仕事をしています。逆にいえば、遠くを見て仕事をしていると眼精疲労を起こしにくいと考えられます。3D(三次元映像)などの技術を用いることによって、近い距離にあるディスプレイを見ていながら、たとえば3m先などもっと遠くに目の焦点距離を合わせることがごく自然に実現できれば、眼精疲労を軽減できるようになるかもしれません。慢性疲労は自律神経失調症と同じ症状が出る眼精疲労が進行すると自律神経失調症と同じ症状が出てくることはよく知られていますが、眼精疲労に限らず運動疲労も徹夜による疲労も、慢性化した疲労はすべて結果的には自律神経失調症と同じ状態になる可能性があります。頭が痛い・重い体がだるい耳が遠く感じる目がしょぼしょぼする・目が乾くろれつが回りにくくなるふらつく汗が止まらなくなるこれらはすべて自律神経失調症の症状に共通していますし、徹夜明けなどにも同じような症状がみられます。つまり、自律神経失調症と慢性疲労とはほぼ同じ状態が表れるということです。こうした疲労は自律神経の疲労によるものがほとんどですから、その自律神経の疲労を睡眠によっていかにとるかということが非常に重要なのです。
2017年03月12日サイレースを飲んでいる人、処方された人必見。サイレースの効果、副作用や注意点など、すべて解説します。 ■薬の効果サイレース(フルニトラゼパム)は、入眠困難、中途覚醒、熟眠障害の不眠に有効です。とくに、サイレースは抗不安作用および筋弛緩作用を有しているため、不眠の患者がもちやすい不安に対する効果があります。 ■用法・用量通常、成人は1回0.5~2 mgを就寝前に服用しますが、年齢、症状により適宜増減します。ただし、高齢者は1回1mgまでとします。 ■主な副作用や注意点サイレースは、急性隅角緑内障の患者、および重症筋無力症の患者には禁忌です。また、肺性心、肺気腫、気管支喘息、および脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している患者は炭酸ガスナルコーシス(高炭酸ガス血症により意識障害などを伴う病態)を起こしやすいため、投与しないことが原則ですが、必要な場合は慎重に投与します。アルコール、中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体、鎮痛薬など)とは相互作用を有するので、併用する際は注意しましょう。必ず、指示された服用方法を守りましょう。飲み忘れた場合、寝つく前であればすぐ内服し、翌朝気づいた場合は内服しないようにしましょう。絶対に2回分を一度には飲まないように注意します。また、医師の指示なしに自分で判断して飲むのをやめたり、飲む量を増やしたりせず、誤って多くを飲んでしまった場合は、医師または薬剤師に相談します。自動車の運転など、危険を伴う機械の操作は避けましょう。飲酒はこの薬の作用を強めるので避けて下さい。妊娠または授乳中は必ず医師または薬剤師に相談しましょう。なお、サイレースの副作用は、総症例13,205例中、792例(6.00%)報告されており、主な副作用は、ふらつき、眠気(1%以上)、倦怠感(1%以上)でした(再審査終了時)。本剤は主成分「フルニトラゼパム」、商品名「ロヒプノール」として中外製薬からもサイレースと同年同月で販売開始されています。ロヒピノールの剤形、用法・用量、効果、主な副作用等については主成分が同じであるため、サイレースと同様です。 ■販売開始日1984年3月 ■製造販売元エーザイ株式会社 参考URL:サイレース 添付文書<筆者プロフィール>薬剤師、某国立大大学院卒。大手ライフサイエンス関連企業にて、10年以上、医療用医薬品の研究開発業務に従事。専門は臨床開発。医療用医薬品の承認審査業務について、市場ニーズ調査、臨床試験デザイン、データ収集、解析、承認申請用資料作成などの観点から関わり、実績を挙げている。 Photo by Victor
2017年03月02日【睡眠コンサルタント小林孝徳の健康経営道場第一回】最近「健康経営」を掲げ、従業員の健康促進や業務効率を追求する企業が増えていますが、従業員の健康関連コストで最も多くを占めるのは、医療費でも従業員の欠勤でもなく、出社しても仕事に身が入らない状態(=プレゼンティーズム)なのです。このコラムでは睡眠の視点からビジネスマンの健康、仕事の生産性について考えていきます。日本人は先進国の中でもトップクラスの長時間労働で、スマホやパソコンの使用などの影響もあって、慢性的な睡眠不足に陥っている人が多いようです。睡眠不足を原因とした国家レベルの経済的損失は約16兆円にも上っています(米ランド研究所の調査)。私はニューロスペースという会社で「睡眠コンサルタント」として、効果的な睡眠の取り方を研究し、企業の皆様に睡眠の質を改善するための研修を提供しています。私はこの仕事をしていく中で、ある重要なことに気づきました。それは、仕事の生産性が高い「ハイパフォーマー」のビジネスマンと、仕事を普通にこなす一般的な「そこそこビジネスマン」との間では、睡眠の取り方に大きな違いがあるということです。まずは、下の2つの図を見てください。図1がハイパフォーマーの睡眠パターンで、図2が一般的なビジネスマンの睡眠パターンです。 【図1】 【図2】 まずは「ハイパフォーマー」の睡眠の取り方にはどのような特徴があるでしょうか。一般的な「そこそこビジネスマン」の睡眠パターンとどのような違いがあるかを見ていきましょう。【原則①寝る時間がばらばらでも気にしない】ハイパフォーマーは、必ずこの時刻までに寝なければならないとは考えません。寝るのが遅くなってしまったときでも気にしないのです。そして早く眠れるときは早く寝る、眠たくなったら寝る、ということを心がけています。一般的なビジネスマンは、仕事やプライベートなど考え事、悩み事がどんどん頭に浮かんで来たり、部屋の温度が気になって眠れなかったりして、いざ布団に入ってもなかなか寝付けないということがありますが、ハイパフォーマーは多少の就寝時刻のずれは気にしないのです。ある意味、「眠り」に対して余裕のある考え方をしており、それがより良い睡眠を取るために重要なのです。【原則②決まった時刻に起きる】ハイパフォーマーは、毎日、起きる時間がほぼ一定です。仕事のない休日であっても、平日と同じ時刻か、遅くともプラス2時間以内には起きます。これによって、規則的なリズムで身体が活動できるようになり、仕事でパフォーマンスを発揮しやすくなるのです。【原則③戦略的に仮眠を取る】ハイパフォーマーは、眠気のピークが襲って来て生産性が落ち込む前に、先手を打って仮眠を取ります。私たちの体内時計では、起床してからまず7〜8時間後に眠気のピークが来ます。どうにもならないほど眠気を感じる前に、自分から仮眠を取るのです。アスリートの中にも、仮眠を取り入れて試合に臨むための管理をしている人が多くいます。IT企業などでは、社内に仮眠室を設け、従業員に短時間の仮眠を勧めているところも増えて来ています。時間は15分〜30分間が理想的です。仮眠の時間が長すぎてしまうと、その後の仕事に支障が出たり、人によっては頭痛やめまいが起きることがあります。一方、そこそこビジネスマンは、ついつい眠気を我慢してしまい、逆に仕事の生産性に影響が出てしまっています。【原則④電車の中では寝ない】そこそこビジネスマンは、帰宅の電車の中で気が抜けて眠りに落ちています。「今日も全力で仕事をやりきった」。電車の中がまさに第二のベッドです。降りるべき駅で乗り越してしまうこともあるでしょう。しかし、ハイパフォーマーは眠気を感じたとしても、電車の中で眠りません。帰宅途中で寝てしまうと、夜の睡眠で深く眠れなくなってしまうのです。帰宅したとたん、ソファーで寝てしまう人もいますが、これも同じで、夜の睡眠の質に影響が出ます。帰宅後に眠りたくなったら、眠気がピークに達する前に入浴をして目を覚ましましょう。【原則⑤休日の寝ダメをしない】ハイパフォーマーは休日の寝ダメをしません。休日にたくさん寝てしまう人も多いと思いますが、起床時間を2日連続でずらしてしまうと、週明けにツケが回ってくるのです。月曜日に起床したとき、「なんとなくだるい」「仕事に行きたくない」といういわゆる「ブルーマンデー」の症状の原因の1つは、この休日の睡眠リズムの狂いにあるのです。 これらの睡眠の取り方の差は、仕事の生産性を左右するだけでなく、何年か後の出世の差につながったり、会社全体の成長にも影響したりするかもしれません。あなたも「そこそこビジネスマン」から「ハイパフォーマー」になるために、睡眠の取り方を工夫してみてはいかがでしょうか? 小林孝徳(コバヤシタカノリ)株式会社ニューロスペース代表取締役社長学生時代から社会人まで睡眠障害に苦しんだ経験から、日本人の5人に1人が悩む睡眠の社会問題を解決したいと志し、2013年12月に株式会社ニューロスペースを設立。筑波大学や都内医療機関と共同で睡眠の質を計測する簡易型脳波計の開発や企業の睡眠の課題を解決するソリューションを提供している。認知行動療法に基づく睡眠改善プログラムで、不規則勤務など多様な企業の働き方に合わせた最適なパフォーマンス向上が可能となる。吉野家ホールディングス、DeNA、パナソニック、SBSホールディング、クボタなど多くの企業で睡眠改善を実現。photo by shaolinheart
2017年01月29日「毎朝、起きるのが辛い!」「体が動かない」という方は大変多いと思います。とくに寒くなるとベッドから出られない人も多くなると思います。朝起きられないのはどうしてなのでしょうか?ここでは、朝起きられない原因とその対策を紹介します。スッキリ起きて快適な朝を迎えたいですね!目次■ なぜ朝起きられないのか★可能性のある病気■ 朝スッキリ起きるための対策とアドバイス■ まとめ■ なぜ朝起きられないのか朝起きられない人は女性に男性よりも女性に多いと言われています。朝起きられない原因は様々です。主な原因はこちらの7つです。1.低血圧よく血圧で、「上が○○、下が○○」というのを聞いたことがありませんか?低血圧とは、上の血圧は100mmHg 以下の血圧を指します。また、低血圧=血液の流れが悪いということと同じであり、体中を巡る血液の量が少ないためふつうの人よりも朝起きるのが辛くなってしまいます。〇低血圧の症状疲れやすい朝起きるのに力が入らない一日中体がだるい朝から食欲が湧かないなどの症状があります。2.肝機能障害肝機能障害とは、肝臓の機能が何らかの原因で低下しており、肝臓が上手く働いていない状態です。初めは無症状で分かりにくいのが肝機能障害の特徴ですが、慢性的になるにつれて徐々に全身の倦怠感を感じ、いくら寝ても朝起きるのが辛く感じます。3.睡眠障害睡眠障害とは、睡眠によりその後の生活や仕事に支障が出ることを言います。また、睡眠障害と一口で言ってもその種類は多く、人によっては2種類の睡眠障害に同時に悩んでいる人もいます。そのため、朝方にちょうど寝入った人などは朝起きるのが難しくなります。4.疲労仕事や家事などで疲労がたまると朝が起きにくくなります。「単なる疲労ならば休めばとれるのでは?」と思う人も多いかもしれませんが、疲労が慢性化すると全身の倦怠感が強く1日くらい休むだけでは中々疲労自体を取ることはできません。さらに、仕事中毒などの人は急にその仕事を止めて休むと、今度はその休む行為自体がストレスになり却って披露してしまう場合があります。そのため、疲労がたまっていたり長年の疲労で自覚症状がない人は朝起きるのがかなり辛くなってきます。5.自律神経のバランスが崩れている自律神経は、活動的になる交感神経とリラックスして体を休める副交感神経のグループが交互にその働きを強めて私たちの行動をコントロールしています。その自律神経のバランスが崩れると、朝起きるときにも中々副交感神経から交感神経に交代せず体が活動してくれません。6.ストレス自律神経の働きとも密接な関係があり、ストレスが溜まると自律神経のバランスを壊してしまいます。そのため、夜は眠ることができず、朝は起きられないという問題が出てきてしまいます。この他にも、病気や慢性の持病などがある場合にはその病気のために朝が起きられない場合があります。7.貧血女性は生理や妊娠により貧血状態になりやすいです。貧血とは血液中に含まれている酸素の量が少なくなる現象です。そのため、低血圧と同じように全身に酸素が十分に行き渡らず脳や筋肉が十分に動かせなくなります。★可能性のある病気では、朝が起きられなくなる病気とはどのようなものがあるのでしょうか?病気の可能性がある場合、朝起きられない以外の症状(熱、体重減少、頭痛、痛み、寝汗など)も同時に起こることが殆どの場合は起こります。そのため、ここでは朝起きられないこととその他の症状も一緒に紹介します。1.低血圧症原因のところでも上がりましたが、全身に巡っている血液の量が少ないために酸素が行き渡らず脳が覚醒しないとともに筋肉も動きが鈍くなり朝起きにくくなります。その他の症状:冷えやすい、貧血(立ちくらみ、めまい、爪や唇が青白い)、疲れやすい2.肝・腎機能障害または肝臓・腎臓病肝臓は一番エネルギーを作り出したり、害がある物質を無毒化する臓器です。また、腎臓は体内の老廃物などを排出する臓器です。しかし、この二つのどちらかが正常に働いていなければ体内に毒素や有害な物質が溜まるようになり、排出されません。その他の症状:肌や目が黄色い、食欲がない、手のひらが痒い、脇腹が痛む、尿が出にくい、尿の色がおかしい、微熱、寝汗が多い3.不眠症(入眠障害・中途覚醒)原因のところでも上がりましたが、睡眠障害の中でも入眠障害と中途覚醒と呼ばれる不眠症は眠りに入る時間や、睡眠時間が短くなるために朝方起きるのが辛くなります。入眠障害:明かりを消してから2時間以上経っても眠れない中途覚醒:寝入りはいいが、夜中に起きてしまいその後に眠れず朝方眠気が来て寝てしまうことも多い4.無呼吸症候群寝ている間に気道が自分の舌や喉の筋肉でふさがりやすく、短時間呼吸が止まってしまう現象です。男性で肥満気味の人に多いですが、女性でもなっている人がいます。その他の症状:昼間の急激な眠さ、疲労感など5.心臓疾患:心臓病、心不全、狭心症など心臓は血液を体内へ送り出すポンプです。そのため、心臓疾患がある人や心臓に異常が出ている人は朝が起きにくいです。その他の症状:息が切れる、動悸が酷い、心臓が時々痛む6.その他の持病自己免疫性症候群(膠原病、関節リューマチ、SLEなど)糖尿病慢性関節炎アレルギー症これらの持病も夜に発作がでるなどして、朝方やっと眠りに入ることも多く朝起きるのが難しくなります。■ 朝スッキリ起きるための対策とアドバイスそれでは、どうしたら朝がすんなり起きられるようになるのでしょうか。1.低血圧の原因を探る低血圧症で起きることができない人は、その原因を探すことが大切です。低血圧症は大まかに分けると以下の3つに分けられます。脳貧血(脳に血液が上手く回っていかない)二次的低血圧(他に病気があり、その病気のせいで低血圧になっている)本態性低血圧(遺伝性や原因がなく元々血圧が低い)それぞれ対処方法が違うため、自分は低血圧でもどうしてそうなるのかという原因を調べることが大切です。上記のうち、脳貧血と本態性低血圧は、以下のことで軽減できます。適度な運動で筋肉量を増やすビタミンやミネラル、必須栄養素を満遍なくとる血行を良くするこの2つによって直ぐには改善しませんが、早い人では1か月で血圧が増えてくる人も多いです。2.病気や持病を先に治す病気にかかっている人や持病がある人は、その病気によって朝起きることが辛いのかもしれません。そのため、明らかに病気や持病が分かっている人はまずその治療から始めてみてください。また、病気かどうか分からない人は一度内科か心療内科をおすすめします。看護師さんや医師の中には「疲れじゃないかな、休養を取ってください」で終わる人もいますが、症状が1か月以上続いているようならば病気の可能性が高いです。そのため、受診後の1か月後にまた違う病院で診てもらうようにしてください。3.朝日が入る場所に寝る脳が眠っている場合には、朝日を感知することによって、脳内にある松果体という部分が活性化されメラトニンという物質が放出されます。メラトニンは体内時計という私たちの1日の大まかな時間のリズムを司っているメカニズムに刺激を与え、朝になるとその体内時計をリセットさせる働きがあります。そのため、遮光カーテンなどで朝日を遮っている部屋などは自分の顔の部分に朝日が当たるように工夫してみて下さい。また、体全体に朝日が当たるのも効果的です。4.規則正しい生活をする私たちの体には自己再生機能がついています。例えば、時差の違う国に行くと、最初は眠れないですがそのうちその時間帯に合わせた行動ができるようになります。そこで、眠いときに寝るなどという生活をせず、「朝は6時に起きて、夜は11時までに寝る」と言ったような規則正しい生活を週末でも心がけてみてください。自律神経が徐々にバランスを取り戻し、その時間になると起きる習慣がつきます。5.不眠症の場合には先に病院へ行く不眠症の場合には、酷くなってしまうと日常生活にも支障が出るようになります。そこで、早めに精神科か心療内科へ行き、早めのケアが必要になってきます。■ まとめ誰にでも、朝が起きられないことはありますがそれが最低でも2週間以上続く場合には、何らかの原因や怖い病気が隠されている場合もあります。そのため、単なる疲れだと過信せず早めに行動を起こしましょう。 <筆者プロフィール>ニックネーム:benichanカリブ海で内科医師をしています。最新機器がない島で最低限の技術で工夫して患者さんを診察しています。自分自身も入眠障害型の不眠症なので、皆さんと一緒に問題を解決していきたいと思っています。日本の医療技術は先進国の中でも高い技術を誇っていますので、その技術の恩恵を利用しない手はありません!不眠を改善し、朝までぐっすり眠りましょう!
2017年01月13日睡眠不足は死亡リスクを上昇させ、仕事の生産性を低下させるとされてきましたが、日本人の睡眠不足を原因とした国家レベルの経済的損失は、国民総生産(GDP)の2.92%にあたる1,380億ドル(約15兆9,638億円=2017年1月4日現在)に達し、このGDP比は調査対象5か国の中でも最大であることが、米国のシンクタンク「ランド研究所」の調査研究で分かりました。同研究所が2016年11月に発表しました。 各国の睡眠不足による損失はGDPの1~2%程度研究結果によると、米国の睡眠不足を原因とした経済的損失は年間4,111億ドル(GDPの2.28%)、ドイツは600億ドル(GDPの1.56%)、英国は500億ドル(GDPの1.86%)、カナダは214億ドル(GDPの1.35%)。 睡眠が6時間未満だと死亡リスクも13%高い同研究所は、OECD加盟5か国(日、米、英、独、加)の睡眠時間などのデータをモデル解析し、ひと晩に平均6時間未満しか眠っていない人の死亡リスクは7時間以上眠っている人より13%も高く、その結果として各国のGDPの最大約3%が失われていることを突き止めました。逆に、国民の睡眠時間が増えれば数十億ドルの経済効果があることになります。 ストレスと忙しさで睡眠不足の人は増えている一方、7時間の睡眠を取っていない人々の割合は年々増加しています。このことは、現代のライフスタイル、つまりストレスに加え、アルコール、タバコ、運動不足、スマートフォンやパソコンなど電子機器の使い過ぎなどと関係しているとしています。睡眠は人々の健康と生産性には不可欠です。睡眠が足りなければ、健康だけでなく、学校や仕事にも影響します。 米国政府は「睡眠不足は公衆健康問題」と宣言米疾病対策センター(CDC)は、米国の成人の3分の1以上が慢性的な睡眠不足に陥っており、このため、睡眠不足は公衆健康問題であると宣言しています。 出典:米ランド研究所のプレスリリース by m01229
2017年01月05日寝入りは良いのに夜中に起きてしまってそのまま眠れない!このような症状で悩んでいる方はいらっしゃいませんか?その症状はもしかしたら中途覚醒といわれる睡眠障害の一種かもしれません。中途覚醒の原因と対策を紹介していきます。目次■ 中途覚醒とは■ 中途覚醒の主な症状■ 中途覚醒の原因■ 中途覚醒の対策とアドバイス■中途覚醒とは字の如く睡眠の途中で目が覚めてしまうことをいいます。真夜中に目が覚める人は多く、統計では15%以上もの人がこの中途覚醒に悩んでいると言われています。「寝入りは良いのになぜ途中で起きたくらいで悩むの」と思う人も多いかもしれませんが、実際に中途覚醒の睡眠障害を起こしている人は、以下のようなポイントで病院へ来る人が多いです。疲れが取れない:中途半端な睡眠時間のため寝た気がしない:途中で起きるため体が徐々に不調になってきた:短い睡眠時間のため朝が起きれなくなってしまった:夜中に1回起きるため日中眠くて生活や仕事に支障をきたすようになったこの他にもあまりに夜中に起きるので、風邪を引きやすくなったり精神的に不安定になってしまう人もいます。■中途覚醒の主な症状中途覚醒の症状は年齢とも密接に結びついています。実際に、「寝るのも体力がいる」など高齢の方々がよく言われるように、60代以上の方では20%以上の方が中途覚醒の経験や悩みを抱えていると言われています。では、一体どのような症状が中途覚醒にはあるのでしょうか。60代以上で多く起こりやすい寝入ってから3~4時間後に目が覚める事が多い一度起きてしまうともう一度眠りにくい朝と夜の活動時間帯が逆転しやすい日中に酷い睡魔に襲われたり日中の仕事や生活に支障が出る中途覚醒の悩みは他の睡眠障害よりもあまり周りに理解されないことも多いです。なぜならば寝入りはいいので周りの人は睡眠不足であると思わないからです。また、自分自身でもあまり深刻に思わない方も多く、深刻な状態になってからしか治療にかからないことが多く、治療が長くかかってしまう傾向があります。■中途覚醒の原因中途覚醒の原因には、睡眠サイクルやホルモンバランスなど様々な関係が原因であると言われています。その主な原因は以下の6つです。1.睡眠サイクル睡眠サイクルには、大きくレム睡眠、ノンレム睡眠の二つの睡眠が上手く重なり合って交互に起こります。平均的に90分周期で交代すると言われていますが、人によっては90分周期や100分周期の方も多く少しずつずれています。以下がレム睡眠、ノンレム睡眠の働きです。・レム睡眠:記憶を残したり消したりする、体を休める、記憶を整理する(受験生や勉強している人はこの睡眠が大事だと言われています)・ノンレム睡眠:脳を休める、ホルモンの分泌や免疫力をアップさせる中途覚醒はこのレム睡眠(脳ではなく体を休める睡眠)に変わる時に眠りが浅くなり起こりやすいです。年齢が高くなるほど、レム睡眠が長くなりますので60代以上の方はこの睡眠サイクルが原因の方が多いです。2.深夜の飲酒アルコールを飲む人に多いのも中途覚醒の特徴です。アルコールは寝入りを良くするのですが(血管が飲んだ後拡張する)、ちょうど深夜近くになるとアルコールが体内から抜け始めます(肝臓で解毒されます)。その際、血管が収縮するとともにアルコールの離脱症状も起こり、深夜に目が覚めてしまう人が多いのです。さらに、飲酒をすると布団もかけずに深夜に寒くて起きるなど、飲酒の体内への作用というより、酔ったために引き起こされる状況により起きてしまう人も多いです。(中年や最近では若い方でも多くなってきています)3.ストレスストレスが溜まってくると、男性ホルモンが過剰に分泌されます。男性ホルモンは交感神経も刺激しやすく、交感神経が寝ている間でもリーダーになり、脳を興奮させてしまうため睡眠途中で起きてしまいます。4.夜間の頻尿高齢の方に多いのですが、高齢になるにつれて前立腺肥大や膀胱の筋肉の弛緩により夜間の頻尿が増えてきます。そのため、中途覚醒という睡眠障害というよりは2次的にこの原因によって起きてしまうことが多いです。5.睡眠時無呼吸症候群いびきが大きい方などはこの無呼吸症候群の恐れがあります。何らかの原因(肥満によるのどに周辺につく脂肪や舌の肥大など)により呼吸ができなくなり起きてしまう可能性もあります。中年の男性の方や肥満の方に多いのがこの原因です。 >>睡眠時無呼吸症候群の診断と治療6.薬の副作用入眠障害と同様に、以下の薬やサプリメントは交感神経に働きかけるため入眠困難になる場合もあります。(個人差あり)気分を高揚させるような薬(抗うつ剤、抗パーキンソン病の薬)カフェイン栄養ドリンク高血圧の薬気管支拡張剤など呼吸器系の薬ステロイド抗生物質咳止めの薬など★中途覚醒で可能性のある病気中途覚醒を起こしている原因は持病や疾患で、中途覚醒はその2次的なもので起こる可能性がある病気を挙げていきます。とくに心配なのは、以下の病気です。1.高齢の方鬱病、 (男性だけ)前立腺肥大、 むずむず脚症候群(足がむずむずするような不快感があって眠れない病気です)、心臓疾患:心不全、狭心症など、 呼吸器系の疾患:喘息、COPD、慢性気管支炎、肺気腫、 慢性リューマチや慢性関節炎、 首・腰・肩などの神経症、 慢性腎臓病、 糖尿病、 高血圧2.中年の方や若い方アルコール依存症、鬱病や他の精神疾患、 睡眠時無呼吸症候群、 慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、周期性四肢運動障害 (足が寝ている間に、大きく動きその動きで目が覚めてしまいます)など ■中途覚醒の対策とアドバイス大切なのは、自覚があったらすぐに専門機関(内科か精神科・心療内科)へ行き的確な治療を受けることです。また、生活習慣も密接に関係するので、生活の見直しもかなり効果的です。具体的には以下のようなことをおすすめします。<病院で使用される治療薬>ハルシオン、リスミー、デパス・サイレース/ロヒプノール、レンドルミン、ベルソムラなど※睡眠薬では根本的な治療にならないことも多いため、医師とよく相談をして治療にあたりましょう。>>不眠症の種類と症状、不眠症薬の効果と副作用を知る>>睡眠薬に依存しない5つの方法<治療薬以外の対処法>〇認知行動学治療:行動で睡眠をコントロールする方法です1.睡眠制御法:寝室=寝る場所と脳に記憶させる方法ですやり方は、できるだけ寝る以外で寝室を使用せず、脳に「寝室は寝るだけの場所」という考えを認識させます。そのため、寝るときだけ寝室に移動し、お昼寝などは寝室で寝ないなど決めて実行してみてください。2.刺激制限法寝る前の儀式もそうですが、できるだけ寝室では寝るだけのために刺激を排除する方法ですやり方は、寝室に入ったらPCやスマホなどの電源を消したり、本を止めて横になります。それを繰り返す事によって刺激が制限され、寝室で眠れるようになりやすくします。〇寝る前のストレッチ寝る前に首と呼ばれる部分から徐々に伸ばしていきます。そうすることにより手足の先まで血行が良くなり眠りが持続しやすくなります。〇ストレスの除去あまり悩みを抱え込まないようにしたり、趣味でストレスを解消したりすることをおすすめします。体を動かすのも中途覚醒には効果的ですので散歩やジョギングなどから始めてみて下さい。〇生活習慣の改善アルコールを飲まない日を作ったり、アルコールを飲む日はアルコールを飲みながらそれと同じ量の水を飲みます(お茶はノンカフェインのものを飲んでください)また、暴飲暴食や脂っこい食べ物はお昼や朝に食べて寝る前には控えるようにしても、胃腸の働きが穏やかになり睡眠の継続に効果的です。〇その他のおすすめノンカフェインのお茶などを飲んで、気の置けない友だちなど電話ができる人と楽しくおしゃべりします。1時間くらい話すとちょうど興奮も覚めて程よく疲れるので女性などはおすすめです。また、ニュース断食などもやってみましょう!ショッキングや悲しいニュースなど知らなくていいことは自分の脳から締め出します。そのため、ニュースなどは最低限必要なものだけ読み、あとは省いてしまいます。 <筆者プロフィール>ニックネーム:benichanカリブ海で内科医師をしています。最新機器がない島で最低限の技術で工夫して患者さんを診察しています。自分自身も入眠障害型の不眠症なので、皆さんと一緒に問題を解決していきたいと思っています。日本の医療技術は先進国の中でも高い技術を誇っていますので、その技術の恩恵を利用しない手はありません!不眠を改善し、朝までぐっすり眠りましょう!
2016年12月30日眠いのに眠れないという皆さん、入眠障害という言葉を知っていますか?日本人の約3割は入眠障害だと言われています。入眠障害を抱えている方は他の睡眠障害を併発している場合が多く、病院へ行くときにはかなり入眠障害が酷くなってしまう場合が多いのが特徴です。入眠障害について、原因と対処方法、試してみてほしい方法などを紹介します。目次■ 入眠障害とは■ 入眠障害の症状■ 入眠障害の原因■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断前)■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断後)■入眠障害とは悩みや考え事などないのに自然な眠りに入れない状態(消灯から2時間以上)が週に3回以上あり、それが3か月以上連続で続いている場合を入眠障害といいます。入眠障害は中々自分自身で自覚するのが難しいこともあり多くの人が人知れず悩んでいる状況です。病院で治療が必要なのは、寝入りが悪いために以下のような事が続く場合です。睡眠不足が連続で2週間以上続く睡眠が足りていないため、仕事や生活に支障をきたす昼間の生活に睡眠不足が支障をきたす他の人から見て昼間の生活が支障をきたしていると指摘される入眠障害など睡眠に関する悩みで多いのが、「自分は本当に入眠障害なのだろうか?このくらいで病院に行ったらおかしいと思われるのではないか」ということです。■入眠障害の症状入眠障害の症状は外の睡眠障害の症状と違うのが特徴的です。しかし、入眠障害+他の睡眠障害という方もいらっしゃいますので、以下の症状に少しでも当てはまる方は最寄りの内科か精神科・心療内科へ行くことをおすすめします。消灯から2時間経っても寝付けない(注意:ただし、通常は既に1時間以上経てば入眠が困難であると不快感を感じ始めます。)ある時期から寝入りがかなり悪くなった悩みなどを消灯まで引きずっていないコーヒーや飲酒などの刺激物などを取っていないのに眠れない体は疲れているのに眠れそうで眠れない何かで寝入り際に起きてしまうとまた眠るのが難しくなってくる仕事やスポーツなど体を動かしたり頭を使うようなことがあり疲れていても眠りに入れないちなみに私はこれらの症状すべてが当てはまります。また、些細な隣の部屋からの話し声や外を走っている車のエンジン音なども寝入り際に気になると次に寝入るのが難しくなってしまいます。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド■入眠障害の原因では一体、入眠障害の原因は何なのでしょうか?大きな原因は次の8つが考えられます。1.頭が興奮しすぎている私たちの体は自律神経(交感神経・副交感神経)と呼ばれる2つの神経のグループが交互にリーダーになり、私たちの行動がコントロールされています。◎交感神経:活発に活動したり興奮状態の時はこの神経のグループがリーダーとなり私たちを動かしてくれます。(例:興奮する、目が覚める、やる気の状態)◎副交感神経:睡眠や消化活動などに体が落ち着いた場合にリーダーになるグループです。(例:トイレに行きたくなる、お腹が空く、眠くなる、やる気がなくなる、落ち着く)入眠障害の原因は、「体が疲れているのに頭が興奮しているため眠りを呼び起こさない」というのが第一の原因だと言われています。2.性格や遺伝気質交感神経の働きとも関係が出てきますが、性格的に交感神経がリーダーになりやすい人や、遺伝気質的に(親戚にそのような人が多い)興奮しやすい気質などを持っている場合は、他の人よりも興奮が収まりにくく中々眠りにはいれません。3.寝入る前の体温が高すぎる/低すぎる寝入る直前は体温が少し下がっています。しかし熱帯夜などを思い浮かべてくださると分かりやすいと思いますが、体温が眠る前にも関わらず高いと眠りに入りにくい傾向があります。ちなみに以下のような状態の時に起こりやすくなります。高温のお風呂が好き寝る部屋が暑い体を寝る直前に温めすぎる(*注意:適度に温めるのは寝入るために良いことですが、やりすぎて温めすぎるのは却って入眠を困難にしてしまいます。)厚着や布団などを多くかけすぎる反対に寒すぎるこのように極端な環境だと寝入りに入るタイミングを逃してしまう場合が多いです。4.寝入るのに適切な環境でないお子さんが小さい場合や、眠る時間帯が違う人が一緒に暮らしていると起こりやすい原因です。また、いびきや歯ぎしり、寝言なども気になってしまう人には原因になりやすいです。その他にも、以下のようなことがあると眠りにくいです。眠っている時にPCやベッドサイドのライトが目に入ってくる夜中に帰ってくる人が近所にいる大学生など人が多く集まる場所が近くにある5.昼間あまり活発に動いていない/動きすぎている昼間一人で家に居る人や、事務の仕事の人などは体を動かさずにPCのモニターなどだけを見ている作業が多くなります。そうすると、体があまり疲れずに夜になっても寝入りが難しくなります。反対に、一日中走り回ったり立ち仕事で絶えず体を動かす人も体が疲れすぎて眠りにすんなり入れないことがあります。6.昼間の刺激物(カフェイン飲料やカカオなど)の過剰摂取昼間にカフェインが多く含まれたコーヒーやお茶などを飲むと中々交感神経と副交感神経が交代してくれず、眠りに入れなくなります。また、チョコレートや辛い香辛料などが好きな人も夜までそれらで興奮された脳の状態が残ってしまい、寝入りが難しくなってしまいます。7.ショックな映像やショックな出来事が身近に起こったショックを受けることを聞いたり、人から直接批判されたりすると精神面で軽く落ち込み(へこむ状態)それが寝入りを悪くさせている可能性もあります。自分では気にしていないようでも、無意識に心の奥底で傷ついている場合があります。また、身近でなくてもショッキングな出来事や映像などを見てしまうと、代理トラウマといって自分が直に受けていないのにそのショックを受けた状態(トラウマ状態)になってしまいます。8.持病の薬やサプリメント以下の薬やサプリメントは交感神経に働きかけるため入眠困難になる場合もあります。(個人差あり)気分を高揚させるような薬(抗うつ剤、抗パーキンソン病の薬)カフェイン栄養ドリンク高血圧の薬気管支拡張剤など呼吸器系の薬ステロイド抗生物質咳止めの薬など★可能性のある病気上記の8つ以外の原因に、病気によって入眠困難になる場合も考えられます。そのような場合には、必ず以下のポイントに注視してみてください。例1.心臓や肺が悪い場合入眠困難+息苦しい、咳が出る、むくみがでるなど例2.鬱などの精神的な場合入眠困難+外に出る気がしない、気分が落ち込む、やる気が出ないなど(ベッドから出れない)例3.腎臓病や肝臓病の場合入眠困難+肌の色(指で押すと黄色くなる)や肌の痒み・赤み、尿の色の変化(茶色や黒色など)、急にお腹だけ膨れてきた、生活できないほどの疲労感や倦怠感などこの他にも、糖尿病や慢性的な病気、または自己免疫性症候群やアトピー性皮膚炎などの持病がある人は入眠困難になりやすいです。■入眠障害の対策とアドバイス(診断前)重要なのは以下の3つのことです。1.内科か心療内科・精神科の専門機関にかかる一番重要なことは、まずは内科や心療内科など専門機関にかかり、適切な診断を受けることだと思います。もし、入眠困難だけでしたら入眠困難を治すように努力すればいいですし、他の病気が原因で2次的に入眠困難が起こっているようでしたら、その元になっている病気を先に治すという風に、早めに診断されれば早めに対処でき短時間で解決する場合も多いからです。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド2.持病を治す持病があればそれをしっかりと治してみて、それでも入眠困難があるかどうか確かめてください。3.自己判断をしない自己判断で安易に市販の睡眠薬などを飲むのは根本的な解決になっていません。■入眠障害の対策とアドバイス(診断後)入眠困難などの睡眠障害と診断されたら、まずは医師の治療内容に従ってみましょう。医師は治療マニュアルに沿って治療を行います。日本睡眠学会が定める治療マニュアルは、日本人の体質に一番適した治療法です。何ができるのか分からない時は、まずは身近な物から目を向けてみて下さい。例えば、以下のようなものもおすすめです。寝る前には少し頭を冷やして足元を温める:副交感神経に変わり安いです消灯の1時間前には全てのITツールを遮断する(PC,スマホ、タブレットなど):脳を興奮させないようにしますストレッチなどで体をほぐす:血行が良くなり筋肉がほぐれるので寝入りが楽になりますノンカフェインの暖かいお茶を飲む:体温が上がり血糖値も少し上がるので(正常の範囲内です)空腹感がまぎれます呼吸を少し意識して遅くする:副交感神経に変わりやすくなります肌に触れる素材はコットンなど柔らかい素材にかえる寝る前の儀式(羊を数えたり、白湯を飲んだり)など習慣をつける参考文献URL:日本睡眠学会治療マニュアル <筆者プロフィール>ニックネーム:benichanカリブ海で内科医師をしています。最新機器がない島で最低限の技術で工夫して患者さんを診察しています。自分自身も入眠障害型の不眠症なので、皆さんと一緒に問題を解決していきたいと思っています。日本の医療技術は先進国の中でも高い技術を誇っていますので、その技術の恩恵を利用しない手はありません!不眠を改善し、朝までぐっすり眠りましょう!
2016年12月30日「いびきがうるさいと言われるがどうしたら治るのかわからない」「ただのいびきだから放っておいても大丈夫だろう」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。いびきには実はもっと重要な病気が隠されている場合があるのです。なぜいびきをかくのか、その原因や可能性のある病気、治療方法の紹介、いびきを軽減するための日々の生活のおけるアドバイスをしていきたいと思います。目次■ いびきとは■ いびきの出るメカニズム■ いびきの原因は?- いびきに隠れている病気の可能性■ いびきの治療方法と改善のためのアドバイス■いびきとはいびきとは睡眠中に鼻やのどから出る音のことを意味します。寝方やその時の状態によってほとんどの人はいびきをかく可能性がありますが、酷い人はその音によって家族中が同じ部屋で寝ていないのに聞こえるほど大きな音を発生させます。いびきは大きいほど気道が塞がれている度合いも大きく、治療が必要です。■いびきの出るメカニズム呼吸のために空気が私たちの気道を通り抜けますが、いびきはその気道が何らかの原因によって狭くなっている状態の時に、喉の奥の粘膜(上気道の粘膜)と空気が作り出す音です。自然に出る音なので、健康な人でも以下のような人たちは出やすいと言われています。舌が厚い人鼻の骨が先天的に曲がったりいびつな人:外からでは分かりません首のまわりに脂肪がつきやすい人や太っている人顔の骨格や顎の骨が小さい人口蓋垂(のどちんこ)が大きい人これらの人たちは、雑音が出やすく健康でも寝方や寝る角度によっていびきをかく可能性が高いです。■いびきの原因は?- いびきに隠れている病気の可能性私たちは誰でも疲れていたり風邪を引いたりすれば、上気道が狭められいびきをかきやすくなります。しかし、それ以外にもいびきには恐ろしい病気の兆候が隠されているかもしれません。ここでは、いびきの原因や隠されている病気について主な原因や病気を5つ紹介していきます。1.睡眠時無呼吸症候群(SAS)睡眠時に気道が塞がるために、10秒ほど呼吸が止まった状態をいいます。また、それが1晩に5回以上起こる場合この診断が下される場合が多いです。〇この病気にかかりやすい人は以下のような特徴があります。中年の男性肥満気味舌が厚いお酒やたばこの習慣化首周りに脂肪がつきやすい〇睡眠時無呼吸症候群の主な症状昼間の耐えられないほどの眠気頭痛いびき(家族に言われて気が付く場合が殆どです)全身倦怠感その他にも、やる気のなさや集中力の欠如など、日常生活や仕事に影響が出ることも多いのですが、本人が気が付きにくい病気のために病院へ来る人はまだまだ少ないのが現状です。この病気の怖いところは、睡眠中なので本人が気が付かず、病院で診察される際にはかなり症状が進行しているというところです。さらに、この病気はそれに伴って起こりやすい合併症がかなり深刻になってきます。〇この病気が酷くなった場合の合併症関連性が説明できる病気もあれば、未だに関連を究明中の病気もあります。抵抗性高血圧症:高血圧の投薬治療を行っているにも関わらず血圧が上手くコントロールできていない高血圧症です。脳卒中:脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、脳の血管が破裂してしまう(脳出血)病気です。糖尿病:血糖値が高くなることにより、体内に色々な不調がでる病気です。不整脈:脈が一定でなく早かったり(頻脈)、遅かったり(徐脈)するために心室細動を起こしやすく最悪の場合亡くなる場合もあります。睡眠時無呼吸症候群についてもっと知りたい方はこちら>>睡眠時無呼吸症候群の診断と治療2.鼻の慢性疾患(蓄膿症や副鼻腔炎など)鼻の中が慢性的に炎症を起こしているため空気の出入りを阻害しやすくいびきが起こります。鼻で呼吸ができないと口で呼吸するしかないため、いつも口を開けているようなお子さんや大人でも息が荒い人(運動していない状態)などはこの鼻の病気のためにいびきをかきます。それ以外にも、この病気の人たちには以下の症状も一緒に起こる場合が多いです。鼻つまり頭痛微熱(お子さんに多いです)鼻声また、スポーツや少しの運動でさえも疲れて息が上がってしまうのも特徴です。3.扁桃腺が大きいこれも身体構造の1つに入りますが、扁桃腺((口蓋垂)のどちんこの両脇にある器官)が大きい人は睡眠時に扁桃腺が気道をふさぎやすく、いびきをかきやすいです。その他にも扁桃腺が大きいと腫れやすく、高熱や膿を持ちやすくなるため、あまり扁桃腺炎が酷い人などは切除手術などを行う人もいます。4.生活習慣とくに飲酒は筋肉を弛緩させ、気道を狭めてしまいます。また筋肉が弛緩すると、舌がのどの奥にはまるため気道をさらにふさいでしまします。夜の飲酒が習慣になっている人はかなり要注意です。5.睡眠薬による筋肉弛緩飲酒の項でも出ましたが、筋肉弛緩作用が強い睡眠薬は注意が必要です。ベンゾジアゼピン系は強制的に筋肉を弛緩させ、睡眠に入らせます。そのため、アルコールの作用と同じように気道がふさがりやすくなりいびきをかきます。また、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は効き目も強いため、いびきをかいてもその本人はほとんど気が付きません。そのため、この睡眠薬を飲んでいる人は家族にいびきが出ているかどうかを聞いてみてください。不眠症薬についてもっと知りたい方はこちら>>不眠症の種類と症状、不眠症薬の効果と副作用を知る>>睡眠薬に依存しない5つの方法■いびきの治療方法と改善のためのアドバイスいびきはその原因・病気によって治療方法が違います。しかし、いびきはそのままにしておけば酸欠になりやすく睡眠時無呼吸症候群などの状態も引き起こすことになりますので、家族がいびきをかいていたら直ぐに病院へ行き、適切な診断を受けることをすすめてください。早く対処方法が分かれば、いびきは1日や2日程度で治る場合もあります。1.睡眠時無呼吸症候群の人軽い症状の人はまず生活習慣から治していきます。飲酒や減量など、気道をふさぐ要素を1つずつ解決していきます。中程度の人や、生活習慣を改善しても治らなかった人は、以下のような治療方法があります。〇CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法 )空気を送る機械につながったマスクをして寝ます。そして、睡眠中継続的に空気を送り気道を開ける治療方法です。重症の人には効果的な治療法です。病院や歯科医院で診断を受けたあと、機材をレンタルできるので使用方法やコツなどの説明をしっかりと聞いて試してみてください。根治療法なので、日本国内では一番一般的で効果的な治療方法です。また、よく眠れるようになるため他の症状(頭痛や日中の眠気など)も徐々に回復していきます。〇マウスピース(スリープスプリント)下あごを固定させ、喉の奥へズレないように作られています。このマウスピースによって舌が厚い人や顎の小さい人、喉に脂肪がつきやすい人などでも気道をふさぎにくくなり、いびきも止まります。睡眠時無呼吸症候群専門病院や歯科医院でも行っていますので、検索してみるといいでしょう。診察の保険は効きますがマウスピースは保険が効かない場合が多いです。しかし、素材などによって安いものもありますので歯科医師や医師と相談してみてください。睡眠時無呼吸症候群の治療についてもっと知りたい方はこちら>>睡眠時無呼吸症候群の改善は、食生活と運動による減量2.鼻の慢性疾患の人鼻の治療を第一に考えます。鼻が治療できれば自然にいびきもなくなります。そのため、抗ヒスタミン剤や抗炎症剤、鼻スプレーなどで鼻の通りを良くし、鼻呼吸を行えるように治療することが大切です。また、軽い鼻つまりや先天性の鼻の骨の湾曲などは、鼻腔拡張テープなども睡眠時のいびきには効果的です。3.扁桃腺が大きい人お子さんや、扁桃腺炎のために仕事に支障が出るような人には、外科的手術がすすめられます。外科手術によって扁桃腺を切除することにより、膿や炎症することがなくなります。4.生活習慣飲酒を控えたり、減量を行うことにより、首周りに付く脂肪や筋肉の弛緩を防いで自然な睡眠を取ることができます。5.睡眠薬ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を止め、筋肉を弛緩させず自然な睡眠を起こさせる睡眠薬に変更することもひとつの方法です。ただし、睡眠薬やある種類の抗鬱薬と一緒に取ると効果がブーストされ危険ですので必ず自己診断ではなく医師の診断とアドバイスを受けてください。不眠症薬についてもっと知りたい方はこちら>>不眠症の種類と症状、不眠症薬の効果と副作用を知る>>睡眠薬に依存しない5つの方法■最後に-寝るときのアドバイスその他にも、寝る際には以下のことを気をつけることで、いびきが改善します。仰向けで寝ないで、横向きに寝る柔らかい枕は止める寝ている時、喉が顎で圧迫されないように寝るいびきの録音アプリなどで自分のいびきを録音するまた、仰向けで寝る場合には、下あごが喉を圧迫しないようにするといびきをかきにくいです(イメージは、人工呼吸法の場合に下あごを上に引き上げ、下あごから首までが真っすぐ平らになる感じです) <筆者プロフィール>ニックネーム:benichanカリブ海で内科医師をしています。最新機器がない島で最低限の技術で工夫して患者さんを診察しています。自分自身も入眠障害型の不眠症なので、皆さんと一緒に問題を解決していきたいと思っています。日本の医療技術は先進国の中でも高い技術を誇っていますので、その技術の恩恵を利用しない手はありません!不眠を改善し、朝までぐっすり眠りましょう!
2016年12月30日レンドルミンを飲んでる人、処方された人必見。レンドルミンの効果、副作用や注意点など、すべて解説します。 ■薬の効果レンドルミンは、不眠症の治療に用いるお薬です。服薬後早期(通常15~30分)に催眠作用が出現するため、とくに入眠困難を訴える神経症に伴う不眠には効果的で、半錠(0.125 mg)で十分な場合もあります。レンドルミンは持ち越し効果(服用翌日まで睡眠薬の影響が残ってしまうこと)も弱いため、高齢者にも比較的用いやすくなっています。レンドルミンのような短時間作用型の睡眠薬は、少量での使用では服薬中に日中の不安症状がみられることがありますが、これは昼間に薬剤が消失している過程で退薬症状(依存しやすい薬物を長期間使用して、急に服用を中止したり、減量した時に起こる症状)として出現するものです。 ■用法・用量不眠症に対して、本剤0.25 mg就寝前(適宜増減)。 ■主な副作用や注意点重症筋無力症や急性隅角緑内障の患者への投与は禁忌です。呼吸機能の低下している患者への投与は炭酸ガスナルコーシス(高炭酸ガス血症により意識障害などを伴う病態)を起こす危険性があるため原則禁忌です。不眠症が改善しても、反跳性不眠(服薬中止後に以前よりも強い不眠が出現する現象)の原因となるため急激な投与中止はせず、1~2週間ごとに投与量を半分にするなどの方法で徐々に減らしていきます。本剤のように短時間作用型のものは反跳性不眠の出現の可能性が高いため、処方の中断・減量はより慎重になる必要があります。高齢者では、運動失調(筋肉の運きは正常であるにもかかわらず、関連する神経がうまく働かないため、目的とする運動がうまくできなくなる状態)などの副作用が出現しやすいため少量から開始します。長期にわたる投与が必要な症例もありますが、臨床用量の範囲内であれば、とくに問題視することはありません。必ず就寝前に服用します。服用して就寝した後、睡眠途中に起床して仕事をする可能性があるときには健忘をきたすことがあるため服用しないようにしましょう。アルコールとの併用は、作用を増強させる可能性があるため避けます。服用の中断・減量の際には必ず医師と相談します。眠気や集中力の低下などの作用が翌朝以降にも及ぶことがありますので、危険を伴う作業には従事しないようにしましょう。ペンゾジアゼピン化合物で、新生児に哺乳困難、嘔吐、活動低下、筋緊張低下、過緊張、傾眠(強い眠気を感じて、うとうとする状態)、呼吸抑制チアノーゼ、易刺激性、神経過敏、振戦(意思とは関係無く生じる細かいふるえ)、低体温、頻脈等をおこすことが報告されているため、妊娠後期の婦人は有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ服用します。 ■販売開始日2002年7月 ■製造販売元日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 参考URL:レンドルミン 添付文書<筆者プロフィール>薬剤師、某国立大大学院卒。大手ライフサイエンス関連企業にて、10年以上、医療用医薬品の研究開発業務に従事。専門は臨床開発。医療用医薬品の承認審査業務について、市場ニーズ調査、臨床試験デザイン、データ収集、解析、承認申請用資料作成などの観点から関わり、実績を挙げている。 Photo by Victor
2016年12月19日ハルシオンを飲んでる人、処方された人必見。ハルシオンの効果、副作用や注意点など、すべて解説します。 ■薬の効果ハルシオンの適応症は、①不眠症、②麻酔前投薬、の2病変です。血中濃度推移から考えますと、ハルシオン(トリアゾラム)は、睡眠前半に十分な濃度を発現するため入眠障害に適します。睡眠後半に急激に濃度が低下するため、ハルシオンを連用した場合でも体内蓄積の可能性は少なくなっています。朝起床時の血中濃度はほぼ0に近くなっているため残眠感を伴いませんが、ハルシオンは中途覚醒や早朝覚醒の不眠には不適です。ただし、もともとベンゾジアゼピンの薬物動態は個人差が大きく、またその薬効は用量依存的であることに留意すべきです。すなわち超短時間作用型のハルシオンも、高用量での使用では作用持続時間の延長により持ち越し効果(服用翌日まで睡眠薬の影響が残ってしまうこと)発現の危険があります。高齢者、腎機能障害、肝機能障害、心臓疾患の方では代謝、排泄の遅延のため、また脳器質障害(脳が構造的に障害される疾患で、脳腫瘍や脳感染症、脳血管障害など)患者では薬効の増強をきたすことがあり、低用量の設定が望まれます。 ■用法・用量標準的な用法・用量:0.25 mgを就床前20~30分以内に内服します。入眠困難が改善しない場合は0.5 mgまでの増量が認められています。しかし有害事象回避の視点から、入眠困難が改善しない場合は、非ベンゾジアゼピンへの変更が推奨されます。高齢者、肝機能不全、腎機能障害、脳器質障害患者には初期量を0.125 mgに設定します。 ■主な副作用や注意点調査症例数12,930例中、副作用発現症例は338例(2.61%)であり、副作用発現件数は延べ700件でした。その主なものは、めまい・ふらつき164件(1.27%)眠気155件(1.20%)倦怠感100件(0.77%)頭痛・頭重91件(0.70%)等でした(承認時までの調査及び市販後の使用成績調査の集計)。高用量のハルシオンを連用後の急激な中断により反跳性不眠(服薬中止後に以前よりも強い不眠が出現する現象)が起こることがあります。不眠の程度が治療前より重度であり、不眠症状の再燃と判断されます。ハルシオン常用量を3~6ヶ月以上の長期連用後、中断により不安、振戦(意思とは関係無く生じる細かいふるえ)や、発汗などの症状がみられることがあります。服薬の離脱には4~6ヶ月をかけて服薬量を徐々に減らしていく必要があります。ハルシオンの処方に際しては、症状の評価を十分に行ない、嗜壁(特定の行動や人間関係を特に好む)問題をもつ患者群をなるべく除外し、適正使用に配慮すべきです。ハルシオンの連用時、また服薬終了数日以内の飲酒、授乳、自動車の運転や重機の操作などは控えるべきです。抗HIV薬(リトナビルなど)、アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾールなど)、グレープフルーツジュースは本剤の代謝を阻害し、その血中濃度を上昇させる危険があります。 ■販売開始日1983年4月(0.25mg)1990年7月(0.125mg) ■製造販売元ファイザー株式会社 参考URL:ハルシオン 添付文書<筆者プロフィール>薬剤師、某国立大大学院卒。大手ライフサイエンス関連企業にて、10年以上、医療用医薬品の研究開発業務に従事。専門は臨床開発。医療用医薬品の承認審査業務について、市場ニーズ調査、臨床試験デザイン、データ収集、解析、承認申請用資料作成などの観点から関わり、実績を挙げている。 Photo by Victor
2016年12月19日昨今、睡眠の質への関心が高まっていますが、従業員向けに良質の睡眠をとるための研修を実施する企業がじわじわと増えています。研修を提供するのは、「眠りは技術である」をモットーに、筑波大学との産学連携で睡眠を解析し、そのスキルを伝授している株式会社ニューロスペース(東京都千代田区、代表取締役社長:小林孝徳)。 メンタルヘルスの向上、精神病の予防にも研修会では、社員へのヒアリングを基に解析した、その企業特有の問題のある睡眠パターンを紹介し、それが起きる睡眠のメカニズムを説明。そのうえで、具体的な解決方法を示してくれます。従業員の生産性を高めるだけでなく、メンタルヘルスの向上、精神病の予防にもつながるということです。 多くの業種、企業が睡眠研修を採用同社は2003年創業のベンチャー企業。これまでに、外食、IT、物流、鉄道、寝具など多くの業界企業が、同社の睡眠研修を採用しています。 実践しやすく、従業員の生活習慣が改善たとえば、2006年11月に研修会を実施した株式会社クボタでは、恩加島事業センターの従業員約300名が参加=写真=。「これまで実施してきた基礎的なメンタルヘルス研修はマンネリの感があったが、今回はより具体的、実用的な内容で、実践しやすく、役に立つものが多かった。生活習慣改善につながる」と好評だったとのこと。 多くの睡眠の改善や行動変容2016年6月に実施した株式会社ディー・エヌ・エーでは、約100人の社員が参加。その後に実施したアンケートでは、多くの社員に睡眠の改善や行動変容が見られたということです。2016年3月には、株式会社吉野家の店長集会(計2日間)で計約900人が受講しました。 睡眠体験施設の運営もニューロスペースでは、企業向けの睡眠研修のほか、睡眠計測機器の製作・販売、睡眠ノウハウ・システムの開発なども行っています。
2016年12月18日5~6時間の睡眠しか取らなかった運転者は交通事故のリスクが約2倍に、睡眠時間4~5時間の運転者は交通事故リスクが4倍以上にも上ることが、米自動車協会交通安全財団(本部・米ワシントンD.C.)の研究で明らかになりました。同財団が2016年12月6日、研究レポート「睡眠不足と交通事故の関係」として発表しました。 睡眠不足は飲酒運転による事故リスクと同程度研究は、2005~2007年に発生した交通事故4,571件に関与した運転者7,234人と睡眠時間の関係を分析。睡眠時間が過去24時間で6~7時間だと、睡眠時間7時間以上の運転者と比べて事故リスクは1.3倍、5~6時間だと1.9倍、4~5時間だと4.3倍、4時間以下だと11.5倍にもなりました。このリスクのレベルは、米幹線道路交通安全局(NHTSA)が公表している飲酒運転が引き起こす交通事故のリスクと同程度だということです。 死亡交通事故の21%は眠気運転が関係睡眠不足は、刺激に対する反応を遅らせ、反応の正確さも減少させる結果、運転すれば交通事故の危険をもたらします。同財団によるこれまでの研究で、死亡交通事故の21%が運転者の眠気と関係していることが分かっていましたが、睡眠時間と交通事故リスクの数量的な関係を突き止めたのは今回が初めてです。 7時間以上の睡眠を取らずに運転するのは危険米疾病対策センター(CDC)の調査によると、米国の自動車ドライバーの35%が、7時間の睡眠を取れていませんでした。同財団によれば、運転者の97%が、眠気のある状態で運転する人はほかのドライバーの安全を脅かしており、許せないと考えている一方、運転者3人のうち1人は、過去1か月以内に非常に疲れて目を開けているのがつらい状態でも運転したことがあると答えたそうです。同財団では、7時間以上の睡眠を取らずに運転すれば、死亡事故に結びつく危険があると、ドライバーたちに警告しています。 出典:米自動車協会交通安全財団プレスリリース米自動車協会交通安全財団研究報告書 by Gary Knight
2016年12月18日