4月は新学期のスタート。新たにコーチになったり、審判をやってみる方も多いのではないでしょうか?実は、お父さん世代が学生だった頃とは大きく変わっているルールもあります。3級審判資格を取得し、主に「サッカー審判批評」という分野でジャーナリストとして活躍する石井紘人さんに聞く「2021年4月版の最新ルール解釈」。後編では「ゴールキック」「オフサイド」「PK時の、GKの立ち位置」「夏場の対策」について、話をうかがっていきます。(取材・文:鈴木智之)昔はなかった「飲水タイム」「クーリングブレイク」など新ルールを今のうちに覚えよう<<前編:手に当たったらハンド、じゃない!お父さんコーチが知っておきたい、昔と今でこれだけ変わったサッカーのルール池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>■ゴールキックをペナルティエリア内で受けてもよくなった2019/20年の競技規則改正による、大きなルール改正が「ゴールキック」についてです。これまでゴールキックのボールは、「ペナルティエリアの外」でしか受けることができませんでした。しかし、2019/20年のルール改正により「ペナルティエリア内で受けても良い」ことになりました。これは育成年代において、歓迎すべき変更と言えるでしょう。GKを使ってビルドアップすることができますし、キックが飛ばない場合、自陣ゴール前でボールを奪われるケースも減りそうです。当然のことですが、ゴールキックのとき、相手チームの選手はペナルティエリアの中に入ってはいけません。これは覚えておきたいポイントです。「相手チームの選手がペナルティエリアに入った状態で、ゴールキックのボールが蹴られた場合はやり直しです。また、クイックリスタートは認められていますが、ボールがしっかりと止まった(静止した)状態で始めましょう。ボールが転がっていたらやり直しです」早くリスタートしたいあまり、ボールが転がった状態で蹴ってしまうことがありますが、それをするとやり直しになってしまうので、気をつけましょう。■PK時のキーパーの足の位置が変更になった続いては「PK時のGKの立ち位置」についてです。石井さんが説明します。「2019/20の競技規則改正で、PK時にGKがセーブをする際に、左右どちらかの足がゴールライン上にかかっていればOKになりました。厳密にラインを踏むのではなく、空中にあってもOKです。これもVARの運用によるルール改正と考えられます」レフェリーをするときは、PKの前にGKを呼び「両足がラインから離れていたら、シュートを止めたとしてもやり直しだからね」などとアドバイスをすると良いかもしれません。「ゴールが入ったあとでも、『いまの出方だと、キックを止めてもやり直しになるから気をつけてね』と声をかけるとか、コミュニケーションをとって未然に防ぐことが大事だと思います。育成年代のレフェリーには、ディイレクターな観点も必要です。レフェリーは取り締まる人ではなく、同じサッカーをする仲間という視点を持って、レフェリングをしてほしいと思います」かつては、キッカーよりも先にGK動いてラインから飛び出してしまうと、1度目のプレーから警告が出されていましたが、2020/21年の競技規則改正により、1度目は注意、2度目から警告となりました。「これはGKが試合中に1度警告を受けていた場合、PK戦の1プレーで2枚目の警告となり、退場になるのを防ぐ狙いがあると推測します」GKにとっては、思い切ってプレーしやすくなったと言えるでしょう。■新米コーチにはわかりづらいオフサイドのルールオフサイドについても、ここでおさらいしておきましょう。判断に困るケースが、守備側の選手の足に当たったり、キックミスによって、オフサイドポジションにいる攻撃側の選手にボールが渡ったときです。「相手のディフェンダーがクリアミスをして、オフサイドポジションにいる選手にボールが渡った場合はオフサイドではありません。もともと曖昧な部分だったのですが、数年前から明記されるようになりました。このケースは、ジュニアのサッカーでは意外とあると思います」石井さんは「オフサイドについては、競技規則にわかりやすく書いてあるので、一読をおすすめします」とアドバイスをしてくれました。とくにオフサイドはゴールに直結しやすい場面で起きる判定なので、これを機に最新情報を改めて確認してみましょう。■昔はなかった「飲水タイム」と「クーリングブレイク」夏に向けて気温が高くなると、「飲水タイム」や「クーリングブレイク」も必要になります。「小学生年代の試合では、WBGTが25℃以上の場合は『飲水タイム』、28℃以上では『クーリングブレイク』を行います。『飲水タイム』の場合は、監督は戦術的な指示をしてはいけないとされていますが、そこまで厳密に取り締まらなくてもいいのではと思います。選手と監督がコミュニケーションをとるぐらいはいいのかなと。作戦ボードを使って、『飲水タイム』の時間をオーバーしそうな仰々しいのは良くありませんが、とくに育成年代の試合は、杓子定規に注意をしなくてもいいと思います」飲水タイムはピッチの中で水などを飲み、時間は1分ほど。クーリングブレイクはテントの中に入って涼んで良く、時間も3分とそれなりにあります。WBGTの数値によって決められていますが、体感温度や湿度の高さなどを考慮して、柔軟に運用したいところです。2回に渡って石井さんに話をうかがってきましたが、大人がルールを正しく運用することが、結果として子どもたちの上達を導くことに加え、健康面をサポートすることにもつながります。これを機にルールを改めて学び直し、より良いレフェリング、指導に役立てましょう!石井紘人(いしい・はやと)過去、日本サッカー協会C級ライセンスと三級審判員取得。サッカーは審判批評、他に運動生理学の批評を専門とする。『TokyoNHK2020』サイトで一年間に渡り、パラリンピックスポーツの取材を行い、現在は『J-cast』にて東京五輪へ向けたオリンピアンへのインタビューを連載中。著作に『足指をまげるだけで腰痛は治る』(ぴあ)、プロデュース作品に久保竜彦が出演した『弾丸シュートを蹴る方法』(JVD)がある。株式会社ダブルインフィニティ代表取締役でもあり、JFA協力、Jリーグと制作したドキュメントDVD『審判~ピッチ上の、もう一つのチーム~』やJリーグベストゴールズ『メモリーズ&アーカイブス』の版元でもある。自身のサイトは『週刊審判批評』。池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>
2021年04月27日この春からお子さんのサッカー活動に携わる方、中にはお父さんコーチとしてかかわる方たちも少なくないのではないでしょうか。子どもたちにサッカーを教えるパパさんへ、伝えておきたいことがあります。サッカーは好きだけど、プレーした経験がなくて教え方がわからない、サッカー経験者だけど、指導経験はない、あるいはサッカーを指導してきたけれど、なかなか上手くいかない。そんなパパさんたちはきっと、「サッカーをしっかりと教えなきゃいけない」と思っているでしょう。今回は、サッカーを教えることよりも大切にしなければならないことをお伝えしたいと思います。(構成・文:KEI IMAI)ジュニア年代で大事なことは、サッカーを「教える」ことではなく......(写真は少年サッカーのイメージ)池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>私は、小学2年生の頃からサッカーを始め、高学年になる頃にはすっかりサッカーに魅了され、プロを目指すようになりました。大学時代は、川崎フロンターレや名古屋グランパスで監督経験を勤めた風間八宏氏の元でプレーする経験をさせていただきました。しかし、大怪我によって半年ほどプレーできなくなってしまいました。手術後、リハビリをしながらジュニアのサッカーチームでコーチのバイトをすることになりました。そこで見たジュニア世代のサッカー環境に衝撃を受けました。■コーチの顔色を伺いながらサッカーする子どもたちジュニアサッカーの現場では、サッカーを始めたばかりの子どもたちを、サッカーゲームの選手を操作するかのように指示し、コントロールし続ける指導者の姿がありました。サッカーが楽しくて始めたはずなのに、子どもたちの多くはベンチにいるコーチの顔色を伺いながらプレーしているのです。「なんでシュート撃たないの!」「クリアしろ!」「○○にパスしろ!」「もっと左にポジションを取れ!」「つぶせ!」「ちゃんとやれよ!」「......」子どもたちは怒られないようにビクビクしながらサッカーしてました。そんな光景に私は衝撃を受けました。子どもたちに怒鳴り散らすコーチの多さに、それが当たり前になってしまっているジュニアサッカーの現場に......。■子どもたちにサッカーを教えるよりも大切なことジュニア年代の指導でとりわけ大切なことは、サッカーを好きになってもらうことです。コーチの存在によって、子どもたちがサッカーに夢中になることです。サッカーが楽しいと思えなければ、自ら上手くなろうという気持ちは芽生えません。コーチはサッカーを好きにさせ、上手くなりたいという気持ちを育むことが大切です。コーチングとは、主体性を育み、自ら気が付き、自発的な行動を促す指導法です。サッカーの育成年代の現場で行われているのは、コーチングよりもティーチングです。ティーチングとは、知っている人が知らない人に教える、できる人ができない人に教える指導法です。サッカーというスポーツは、ピッチに出た選手が、目まぐるしく局面が変化する中で、自らプレーを判断していかなければなりません。つまり、コーチングによって自発的にプレーできるようになる必要があるのです。子どもを厳しく指導して、鍛え上げるという発想は、子どもの主体性、自発性を奪うリスクがあることを理解する必要があります。ひどい場合にはサッカーが嫌いになって辞めてしまう子もいます。強いチームを作って実績をつくるという大人のエゴを子どもに押し付けてはいけません。子どもが上手くなりたい!強くなりたい!という心を育むこと、そして適切なタイミングでコーチングをすることが大切なのです。決して、大人が成長を焦ってはいけません。先回りして教えて、子ども自ら気づくチャンスを奪ってはいけません。時間がかかっても、子どもが自ら気がつくことことが、とてもとても大切なのです。■私の子どもの頃のコーチたちが教えてくれたこと私がサッカーをはじめた時、幸運なことに素晴らしいコーチたちに巡り合えました。今思い返しても、一番最初に彼らと出会っていなかったら私はサッカーを辞めてしまっていたかもしれません。彼らは、とにかく子どもたちと一緒にサッカーで遊んでくれたのです。私たちにサッカーの楽しさを伝えてくれました。ああしろ、こうしろなどと言われた記憶はなく、ひたすら一緒にボールを蹴って遊んだ記憶しかありません。リフティングの技、ドリブルで相手を騙す方法を、遊びの中でちょっとづつ教えてくれました。ある日の練習では、マラドーナやプラティニのビデオを見せてくれて、そのままグラウンドでマラドーナのボールタッチを練習したり、プラティニのドリブルを練習しました。後にも先にもあんなに楽しい練習をしたことはありませんでした。コーチたちは、遊びの中で上手くなる術を教えてくれたのです。彼らのおかげで、私たちは時間があればみんなでサッカーをして日が暮れるまで遊びました。私は小学生時代、コーチにサッカーを教わったことはありませんでした。ただし、サッカーの楽しさを伝えてもらいました。そのおかげで、サッカーが上手くなりたい。プロになりたいという気持ちが生まれ、プロサッカー選手になることはできませんでしたが、今日までサッカーを楽しむことができています。ぜひみなさんも、子どもたちにサッカーの魅力を伝えてください。KEI IMAI桐蔭横浜大学サッカー部時代に風間八宏氏にサッカーの本質を学んだ後、育成年代(主にジュニア)の指導に5年ほど携わる。その後半年間、中南米をサッカーしながら旅をし帰国。ブログ「大人になってから学ぶサッカーの本質とは」を運営し、サッカー育成年代の取材、指導者や現役選手にインタビューをしサッカーの本質を伝える活動をしている。筆者Facebookアカウント>>筆者Twitterアカウント>>池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>風間八宏
2021年04月26日サッカーにおけるゴールキーパーは、ピッチ内で中唯一手を使用できるなど、フィールドプレーヤーとは特徴が大きく異なります。そのため、プレーに関する用語も聞き慣れないものが少なくありません。この記事では、キーパーの「ファンブル」とはどのようなプレーなのかその概要について解説します。キーパーをやっているお子さんがいらっしゃる方はぜひ参考にしてみてください。ファンブルとはファンブルとは、ゴールキーパーが相手のシュートなどを一度はボールをキャッチしたものの、落としてしまうことです。ファンブルは、サッカーにおいて一般的に使用されている言葉ですが、サッカー以外の球技スポーツにおいても使用されています。ファンブルするとどうなる?ゴールキーパーがファンブルすると、ピンチを招く可能性があります。これはシュートを打つ場合、基本的に相手選手はゴール前につめてくるためです。そのため、試合中、特にゴール前の混戦時などは、ゴールキーパーはファンブルを避けなければいけません。ファンブルはどういう時に起こる?ファンブルは試合中のさまざまな場面で起こりますが、特に無回転ボールによるブレ球シュートや回転がかかったシュートをキャッチしようとするときに起こりやすいとされています。また、クロスやコーナーキックのボールをジャンプしてキャッチしようとしたものの、ファンブルしてしまうケース、スピードのある力強いシュートのキャッチを試みようとした時などにもファンブルするケースなどもあります。そのほかにも、雨の日の試合は手が滑りやすくなるため、ボールを落としやすくなっているため注意しなければいけません。ファンブルしないためのポイント勝敗にも大きく影響する恐れのあるファンブルは、絶対に避けなければいけません。ここでは、ファンブルをしないための基本的なポイントについて解説します。キャッチできるかどうかを素早く判断するファンブルをするケースの1つに、キャッチが難しいボールを無理してキャッチしようとしたためにボールを落としてしまうというものがあります。このようなケースは、ボールをキャッチできるかどうか素早く判断できれば回避することができるでしょう。例えば、無回転ボールのシュートを打たれた場合でも、キャッチングではなくパンチング(フィスティング)や、手のひらの固いところではじくディフレクティングなどで回避することもできます。キャッチングできるに越したことはありませんが、失点しないことが一番大切であるため、適切な判断を素早く下すようにしましょう。判断力を磨くためには、実戦経験を積むことも欠かせません。試行錯誤しながら取り組んでみてください。キャッチングの正しい方法を学ぶ正しいキャッチング方法を理解することも大切です。例えば、ゴールキーパーの中には、ボールの大きさを正しく把握できておらず、キャッチングの形を作る際に、ボールの大きさよりも大きい形で手を構えるケースが少なくありません。またボールを怖がり、ちゃんと見ていないためにキャッチできないケースもあります。そのため、ボールの大きさを覚えさせ、適切な大きさの形で構えられるようにする、ボールをしっかりと見るようにするなどキャッチングをするためのポイントを知ることが欠かせません。まとめ今回は、ゴールキーパーのファンブルについてその概要から、起こりやすいシーン、ファンブルをしないためのポイントなどについて解説しました。サッカーにおいて1回のファンブルで試合に負けてしまう可能性は十分にあるため、ゴールキーパーは適切な判断をすること、キャッチングの正しい方法を学ぶことなどが大切です。ぜひ今回の内容を参考に練習に取り組んでみてください。
2021年04月26日何人かいるコーチたちの間で、今やるべき練習メニューや練習時間など指導方針にギャップがある。子どもたちの成長という目的は全員一緒なのに、それぞれアプローチの部分で異なるイメージを持っていて、相容れない状態。話し合い以外にどうやって解決すればいい?とのご相談をいただきました。みなさんのチームではどうしていますか?かつては自分も同じ悩みを抱えていた、という池上正さん。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた経験をもとにアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<ドリブルとパス、どちらを先に教えるべき?ジュニア年代の育成ではどちらを優先すべきか教えて<お父さんコーチからの質問>こんにちは。私は地元の少年団でコーチをしております。担当はU-12です。担当するトップチームのコーチ間で、今やるべき練習メニューの相違、練習時間の使い方など指導方針のギャップがあり、信頼関係がうまく構築できていないと感じています。指導対象となる子どもたちの成長を第一に考えていることは一致しているのですが、指導方針のギャップを埋めるためにはどのような行動をとるのがよいでしょうか。「子どもたちの成長」という目的は一緒なのに、そこまでのアプローチがそれぞれ異なるイメージを持っていて、相容れない状況です。池上さんはこれまでそのような場合に、どんな風に解決してきたかなど教えていただけないでしょうか。話し合いを重ねるだけでなく、練習メニューで共通認識をすり合わせることができたりする方法や、この年代にはこの練習が良いという指針など、もしそんなのがあればアドバイスをお願いします。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。コーチ間で指導方針や方法論にギャップがあるというお話ですね。具体的に、どう違って、異なることでどんな弊害が起きているのかもわからないので、想像でお話しするしかないのですが、もしかしたら「違いは違いとしてそのままにする」ということでもいいのかもしれません。■相容れないように聞こえても根っこは同じ、というのは海外でもあること先日、ドイツのサッカーに詳しい湯浅健二さんの講演を拝聴しました。湯浅さんによると、世界トップの監督たちが集まると、決まって喧々諤々(けんけんがくがく)の議論が始まるそうです。「私の理論では......」と主張します。ただし、一見すると、それぞれが相容れないように聞こえるが、根っこは同じことを話しているのだそうです。そんな話を非常に面白く聴かせていただきました。このことは、まさしくオシムさんがおっしゃっていたことに通じます。「サッカーにはセオリーがあるぞ」サッカーは、どんな戦術でも共通の認識がある。そこから、こうじゃないか、ああじゃないかとそれぞれの指導者が表現を変えたり、その人らしい色をつけていくのです。■グアルディオラの「3ゾーン・5レーン」は選手に意識させるための工夫によるもの例えば、マンチェスターシティーを率いるペップ・グアルディオラ監督は、「3ゾーン・5レーン」という表現をします。これはサッカーのアタックのベーシックな考え方「3ゾーン・3レーン」を、もう少し細やかに約束ごとを作ったものです。例えば、左右のサイドを使いだすと、真ん中が空いてきます。グアルディオラ監督は基本の3レーンをさらに分けて5つにして選手に示しました。誰かがどこかのレーンに入ると、そこにスペースができます。そのレーンがあるか、ないかではなく「誰かが動くとスペースができる」というセオリーを飲み込ませるために、5つのレーンを選手に意識させる工夫をしているのです。「うちのチームはこのレーンを使うぞ」というような、新しいものが出てきたわけではありません。もとのセオリーは同じなのです。■かつては自分も同じ悩みを抱えていたそのように考えると、ご相談者様の少年団のコーチのみなさんも実は根本の考え方は同じだと感じます。アプローチの仕方に違いはあれど、「子どもたちの成長」という目的は一緒だとご相談者様も書いておられます。全員が子どもの成長を本当に思っているとしたら、実は話し合いで十分解決するケースではないでしょうか。私自身、Jリーグ2クラブに在籍した時代は、育成コーチや育成部長といった立場で多くのコーチとミーティングを重ねてきました。コーチの能力にばらつきがあるなどして、ご相談者様の悩みと同じような問題を抱えたこともあります。さまざまな意見が出される中で「カテゴリー(年代)別に、ある程度練習メニューを決めてはどうだろう」という意見も出ました。各々のコーチに任せず、指導の均一化を図るには、マニュアル化してしまうことも考えられました。そうすれば、指導がブレず進むかもしれないというわけです。■練習メニューは山ほどあるのだから、それぞれのコーチが何をしてもよいしかし、そうした場合「コーチのパーソナリティー(個性や判断)はどうなるのか?」といった異論も出てきました。そこを重要視するならば、指導の根幹となる部分(ビジョンや哲学)は共有しよう。ただし、そこからズレてしまってはいけないことはきちんとアナウンスする。その範疇で指導できそうならば、各コーチに任せた方がいいのではないか。そんな議論をたくさんしました。加えて、練習メニューの選択にも共通認識を持つことを大事にしました。練習メニューは山ほどありますから、何をしてもいいわけです。■枝葉の議論でなく、おおもとの目的をテーマに話し合ってみようそのなかで「ドリブルかパスか」みたいな、前回のこの連載でさせていただいたような話もたくさんしました。「いや、パスを重視すべきだ」「いや、どちらかに偏って指導するのではなく、クローズドスキルの時間を減らせばいい」そういった議論を重ねました。つまり、議論の内容は、常に枝葉の部分ではなく、おおもとのところをテーマにしてきた気がします。例えば、子どもがうまくなっていくことってどういうことなのか?自分で判断する重要性は何なのか?視野を持たせて自分で情報を集める能力をつけないと、上に行って困るのは子どもではないか?そうすると「みなさん、選手が自分で判断できるようになる練習をやってください」と言えばいいだけでした。■サッカーの要素が全部あるメニューさらにいえば、この年代にはこの練習が良いという指針は特に設けません。それは今も同じです。良い練習とは、サッカーの要素が全部あって、子どもがらせん階段をのぼっていけるようなメニューが一番です。そう考えると、ゲーム(ミニゲーム)が一番です。指導者は、ゲームをする際の「設定」を、その年代の特徴を考慮して考えればいいだけです。その年齢ごとに、仲間を認識できる広さや人数を調整する。例えば、幼児なら人数は、2対1や2対2など、味方は自分ともうひとりだけ。コート(グリッド)は狭く設定します。池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>次ページ:どんな練習メニューをするか、の前に大事なことは......■どんな練習メニューをするか、の前に大事なことは......(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)要するに、年齢が低ければ低いほど、人数もコートの広さも小さくなります。年齢が高くなれば4対3や4対4など、人数を増やす設定にします。パスをする選択肢(仲間)が増えてくるし、グリッドが広くなるので、パスも長くなります。日本はその気づきが欧州よりもかなり遅れました。わずか十数年前まで、小学生まで11人制でやっていたのですから。オランダは、小学生に4対4を40年前からやらせています。まずは、「どんなふうに育てるか」というビジョンを明確にするための話し合いをして みてはいかがでしょうか?池池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年04月23日サッカーにおけるサイドバックは、守備はもちろん攻撃においても様々な役割が求められるポジションです。そのため、どのような動きをすればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。この記事ではサイドバックの基本的な動き方について解説します。サイドバックを始めたばかりの方などはぜひ参考にしてみてください。サイドバックは攻守のカギを握るポジションサイドバックとは、4バックや5バックなどのディフェンスラインで両サイドに位置するポジションのことです。ディフェンダーの一員ということもあり、相手の突破を防ぐなど守備面での貢献が求められるほか、オーバーラップやビルドアップなど攻撃面での関与も必要となります。サイドバックのプレーが試合結果を大きく左右すると言っても過言ではないため、攻守のカギを握っていると言えるでしょう。サイドバックの基本的な動きここでは、サイドバックの基本的な動きやプレーについて解説します。攻守両方での動きを取り上げているためぜひ参考にしてみてください。相手の突破を防ぐサイドバックの大きな役割の1つが相手サイドハーフの突破を防ぐことです。サイドを崩されると大きなピンチを招く可能性があるため、粘り強く相手についていくような守備は欠かせません。サイドのスペースを埋めつつ、相手のサイドハーフに対していつでもアプローチできるようなポジションを取ることがポイントです。ディフェンスラインを揃える動きチームによって異なる部分はありますが、一般的にディフェンダーはディフェンスラインを意識してポジションを取ります。ディフェンスラインが揃っていれば、相手のスルーパスに対する抜け出しに対応できるほか、うまくいけばオフサイドを取ることもできます。ディフェンスラインを揃える場合、サイドバックはラインをコントロールするセンターバックよりも少し前めのポジションを取るのがコツです。また、逆サイドから攻撃を受けている場合、味方のセンターバックは攻撃を受けているサイドを注視してしまうため、自分でラインを確認しポジションを調整するようにしましょう。ポジションのスライド基本的には左右どちらかのポジションに位置することになるサイドバックですが、時にはポジションをスライドさせセンターバックのポジションに入ることもあります。例えば、左サイドから攻撃を受けている場合、センターバックは左サイドバックのサポートをするために左サイド寄りのポジションをとらなければいけません。そうなるとセンターバックのスペースが空いてしまい、相手に使われる可能性があるため、右サイドバックがポジションをスライドさせ、センターバックのポジションをカバーします。スライドは「中に絞る」とも呼ばれるサイドバックにおける基本的な動き方の1つです。つるべの動きを意識するサイドバックは、オーバーラップによる攻撃参加も重要な役割ですが、両サイドバックが一度に攻撃参加すると相手にボールを奪われた時にサイドに大きなスペースができてしまうため、かえってピンチを招く可能性があります。そのため、サイドバックは基本的につるべの動きを意識しましょう。つるべの動きとは片方のサイドバックが攻撃参加のために上がっている場合、もう片方のサイドバックは最終ラインに残ることです。これによって守備時の対応も可能になります。サイドハーフをサポートして攻撃に厚みを持たせるサイドバックはサイドハーフと連携した攻撃参加も重要な役割です。例えば、オーバーラップしてサイドハーフを追い越し、クロスを上げる、中に切り込んでシュートを打つといったプレーが挙げられます。そのため、攻撃の状況を見て前線に上がっていく動きも必要です。まとめ今回は、サイドバックの動き方について解説しました。守備面では1対1の対応からラインディフェンス、つるべの動きなど相手に自由に攻撃をさせないための動きが必要となるほか、攻撃面ではオーバーラップによる積極的な攻撃参加が求められます。サイドバックの動きが試合にも大きく影響するため、今回の内容を参考に実際の試合にも臨んでみてください。
2021年04月23日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「バウンドしたボールを上手く扱えない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。試合の中でパスを受けるとき、浮き球で飛んでくることもたくさんあります。地面にバウンドしたボールをしっかりコントロールしてスムーズに次の動作につなげなければなりません。 しかし、サッカーを始めたばかりの初心者は、バウンドして跳ねたボールをしっかり足や身体でコントロールすることができません。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合の中で浮き球のパスが飛んできてもバウンドしたボールをコントロールして次の動きにつなげる動作が自然と出来できるようになります。親は難しい動きは一切ありません。ほとんど手でボールを投げるだけです。【やり方】1.親子で離れて立ち、親がボールを持つ2.親がボールを投げ、ワンバウンドしたボールを子どもがキャッチ3.慣れてきたら、ボールをキャッチする前に足や胸など身体のどこかに当ててからキャッチ4.できるようになったら、子どもはボールを蹴って返す5.それもできるようになったら、親子で対戦するなどゲーム性を持たせる【ポイント】・顔を上げてボールをよく見る・身体の正面でキャッチする・親は高いボール、低いボール、強いボール、弱いボールなど様々な種類のボールを投げる・ボールの高さによって足元だけでなく、太ももや胸なども使う・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年04月22日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「ドリブル中に相手との駆け引きが出来ない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。試合の中でボールを奪いに来る相手をどうかわすか、駆け引きをしなければなりません。 しかし、サッカーを始めたばかりの初心者は足元のボールのコントロールに集中してしまったり、とにかく前進すること以外の選択肢がなく、フェイントを入れて相手の逆をついたりすることができません。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合でドリブルしているときにボールを奪いに来た相手をかわす駆け引きが自然と出来できるようになります。親は難しい動きは一切ありません。簡単な動きですが運動不足解消にもつながるのでぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.目印を4つ用意し、2~3メートル間隔で正方形に置く2.親子で対角線に立ち、鬼ごっこをする3.子どもは親につかまる前に親子のセンターラインジュにあるどちらかの目印にタッチする4.タッチした目印に子どもが立ち、親は対角線に歩いて移動5.先ほどと同じように、親子を挟んだライン上にあるどちらかの目印にタッチ6.慣れてきたら、じゃんけんで攻守を決めるなどバリエーションをつける7.上半身を左右に揺さぶって相手を惑わすなど、フェイントを入れたり仕合で使う動きもやってみる8.ボールのない動き方が身についてきたら、ボールを使ってやってみる9.できるようになったら、親と子が立っている対面の目印に触れたら得点倍など、難易度を高めるアレンジをする【ポイント】・顔を上げて相手の動きをよく見る・空いているゴール(目印)を見つける・足だけでなく上半身も使って相手を誘う動きもやってみる・狙っているゴールではなく、あえて違うゴールを狙って相手を誘う駆け引きをする・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年04月21日身長を伸ばしたいと考えている子どもは多いでしょうのではないでしょうか。身長を伸ばすためには食事を通して栄養素をしっかりと摂取することが大切です。この記事では、身長と食べもの、食事の関係について解説します。「身長を伸ばす食べものはあるの?」「身長を伸ばすためにはどうすればいいの?」といった疑問を持っている方は参考にしてみてください。身長を伸ばす食べものはない「この食べものを食べれば身長が伸びる!」といったものは、残念ながら存在しません。身長を伸ばす特定の食べものは存在しませんが、体を成長させたり、身長を伸ばしたりするためには、さまざまな栄養素が必要となるため、食事を通してしっかりと栄養を摂取することが大切です。特に成長期の子どもは身長がもっとも伸びる時期であるため、この時期にバランスよく栄養を摂取することは、身長を伸ばすためにも大きなポイントとなります。食べ過ぎは逆効果先述の通り、体を大きくするためには食事を通してバランスよく栄養を摂取することが欠かせません。また、サッカー選手として激しい運動をするとなると、体を動かすためのエネルギーも必要であるため、栄養摂取はなおさら重要です。しかし、だからといってたくさんのご飯を食べるのは逆効果であるため注意しなければいけません。例えば、お米やパスタといった糖質を一気に摂取すると血糖値が急上昇し、血糖値を抑えるためにインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンにより血糖値の急上昇は抑えられますが、インスリンには成長ホルモンの分泌を抑制する効果もあるため、成長を阻害する要因となるでしょう。このように身長を伸ばす、という観点に立つと食べ過ぎは避けるべきだと言えます。身長に関する噂に注意「牛乳を飲むと身長が伸びる」という話を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。しかし、牛乳を飲めば身長が伸びるわけではありません。確かに牛乳はカルシウムを豊富に含んでおり、骨の形成に使用される栄養素であるため、体の成長には欠かせないものです。しかし、牛乳が身長に直接影響するわけではありません。また、牛乳ばかりを飲んでいると栄養バランスも崩れてしまうため、かえって体にとっては望ましくないといえます。牛乳以外にも「この器具を使用すれば身長が伸びる」「身長を伸ばすならこのツボを押せ!」と言った話を聞くかもしれませんが、こう言ったケースは根拠のないただの噂であることがほとんどであるため、注意しましょう。普通の生活を心がけよう身長を伸ばすための特別な方法はありません。あえてポイントを挙げるとすれば、栄養をしっかりととり、十分な睡眠を確保すること、つまり規則正しい普通の生活を心がけることです。普通の生活を心がけていれば、成長期を迎えた時に身長が伸びることが期待できます。逆に食事が偏っている、夜更かしをして睡眠不足と言った状態だと、成長期を迎えても十分に背が伸びない可能性があるでしょう。サッカーをしている子どもであれば、練習や試合をしたらしっかりとご飯を食べて栄養を摂取し、ストレッチなどで体をケアし、しっかり睡眠をとることを意識してみてください。まとめ今回は身長を伸ばす食べものをテーマに身長と食べもの、食事の関係について解説しました。「○○をすれば身長が伸びる」と言った噂を聞くことがありますが、身長を伸ばすための近道はありません。バランスの良い栄養を摂取し、睡眠をしっかりとるといった普通の生活を心がけることが大切です。好き嫌いをせずご飯をしっかりと食べることが、結果的に身長が伸びることにつながるかもしれません。
2021年04月21日4月は新学期のスタート。新たにコーチになったり、審判をやってみる方も多いのではないでしょうか?そこで今回は3級審判資格を取得し、主に「サッカー審判批評」という分野でジャーナリストとして活躍する石井紘人さんに、「2021年4月版の最新ルール解釈」について、話をうかがいました。ハンドやゴールキック、PK時のGKの立ち位置など、昔に比べてルールの解釈が変わっている箇所もあるので、これを読んで情報をアップデートさせましょう!(取材・文:鈴木智之)この春お父さんコーチを始める人が知っておきたい、昔と今ではこんなに違うサッカーのルールとは■ハンドのルールが大きく変わったサッカーの試合で争点になる反則。それが「ハンドの反則」です。「試合中、手にボールが当たったらハンド」と思っている人もいるかもしれませんが、それは違います。2020/21の最新の競技規則によると手や腕にボールが当たっても必ずしもハンドの反則にはなりません。たとえば、ニュートラルな位置にある腕にボールが当たってもハンドの反則にはならないのです。分かりやすいのが、昔ロベルト・バッジョがDFのニュートラルな位置にある腕にあえてボールをあてて、PKをとったことがあるのですが、現在の競技規則ではハンドの反則にはなりません。一方で、手を伸ばしてボールに当たりに行く未必の故意、浮いたボールを手でコントロールしようとする動作は、明らかに不自然なのでハンドの反則になります。<ハンドの定義>ボールを手または腕で扱う(P108)ハンドの反則を判定するにあたり、腕の上限は脇の下の最も奥の位置までのところとする(P164)競技者が次のことを行った場合、反則となる(P108)・手や腕をボールの方向に動かす場合を含め、手や腕を用いて意図的にボールに触れる。・ゴールキーパーを含め、偶発的であっても、手や腕から相手チームのゴールに直接得点する。偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に(P164)・ 相手競技者のゴールに得点する。・ 得点の機会を作り出す。次のように手や腕でボールに触れたとき(P108)・ 手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした。・ 競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある(競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合を除く)。引用:サッカー競技規則2020/21 (競技規則日本語訳:日本サッカー協会)石井さんは現在のハンドの反則を次のように説明します。「競技規則が改正になる前のハンドの反則は、レフェリーの主観が強い反則でした。腕にあたったとしても、主審にどう見えたかで判定が変わっていました。しかし、VARの導入により、腕に当たった事実が見えるようになりました。映像で腕に当たっている事実が見えるようになると、ハンドの反則をとらない決断は難しいですよね。ロシアワールドカップの決勝が最たる例です。そこで、そういったVARに合わせて『腕の上限は脇の下の最も奥の位置まで』『競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある』という言葉が入り、ハンドの反則のグレーさを減らしたのだと思います。」■「手に当たったらハンド」ではないジュニアの試合で多いのが、二つ。一つは、至近距離でシュートを打たれ、それが守備側のニュートラルな位置にある手に当たるケースです。これは手や腕を用いて体を不自然に大きくしていないため、ハンドの反則にはなりません。もう一つが、転んでしまった時の支え手にボールが当たることです。この場合も、腕が体から横または縦方向に伸ばされていない限り、ハンドの反則にはなりません。このケースを抑えておくだけでも、試合中に手に当たったからといって「ハンドだろ!」と騒ぐことも無くなりそうです。これは指導者やレフェリーを担当する人だけでなく、試合を観戦する保護者も知っておきたいポイントです。「ハンドという単語は手という意味ですよね。なので、指導者も保護者も、『ハンド!』とアピールするのではなく、競技規則を知って、『ハンドの反則だろ!』とアピールするようになったら、理解も進むのかもしれないと思っています」■「不自然」ではなくてもハンドになるケースとは「不自然」ではなくても、ハンドになるケースもあります。それが「手に当たったボールがゴールインしたとき」です。石井さんはその背景を、次のように説明します。「現代はVARがあるので、ボールが手に当たってゴールインした場合、誰の目にも明らかになります。FIFA(国際サッカー連盟)は、ビッグマッチで決まったゴールが、手によるものというケースは避けたいのでしょう。そう考えると、マラドーナの神の手ゴールは、いまの時代は100%生まれないことになります」さらに言うと、偶発的に手に当たったボールが味方の前にこぼれ、それをシュートしてゴールが決まったとしても、ハンドの反則でゴールにはなりません。が、これは今年の夏の競技規則改正で変わるようで「偶発的でも手や腕にボールが当たった選手自身が直後に得点することに限定されそうです」とのこと。「ジュニアの場合、ボールが自分の方へ飛んできたときに、咄嗟に手でお腹や顔を防ぐことがあります。そのプレーで、手に当たったからといって、わざわざハンドの反則を取る必要はないと思います。その場面は見逃してあげて、試合が終わった後に『手でボールに触ると、ハンドの反則をとられる可能性があるから、気をつけようね』とアドバイスをしてあげるといいと思います。また指導者や保護者側もVAR向けのハンドの反則の細かい条文を、VARがない試合、ましてやアマチュアの試合で審判員に要求するのは違うと思います。審判団が競技規則を理解し、ベストを尽くそうと走っていたのであれば、審判団に委ねる姿勢を持つことが子どもへの教育になると思います」■ルールは選手を罰するためのものではないジュニア年代のレフェリーは、子どもたちに正しいルールを教えてあげる「指導者」の側面もあります。杓子定規に競技規則を守り、反則を見落とさない、取り締まることがレフェリーの役割ではありません。子どもがサッカーを楽しみ、成長するためのサポート役。それがレフェリーの役割のひとつと言えるのではないでしょうか。「競技規則の理念を読むとわかりますが、ルールは選手を罰するために作られたものではないんですね。ルールとは、サッカーを公正に、公平にするためにあるものです。ハンドの反則を見落とさないように"減点法"で見ていくと、些細なこともファウルのように見えるかもしれません。でも、ルールというものが生まれた背景は、そうではないことを知ってほしいです」■オフサイドもゴールキックも解釈が変わっているルールは時代とともに変化しています。これを読んでいるあなたが子どもの頃に知り得たものとは、ハンドもオフサイドもゴールキックも、解釈が変わっています。サッカーの進化と同じように、ルールも合わせて変化しているのです。「いまはレフェリーの方がSNSなどを使って情報発信していますし、日本サッカー協会のWebサイトやYou Tubeを見ると、ルールに関する最新の情報が掲載されています。まずはそれを読んだり、見たりすることが、レフェリーを始めるための第一歩になると思います」■昔はOKだったものがいまはファウルになっていることも昔はOKだったものが、いまはファウルになったり、その逆もあるので、まずは「いまのルールをどうなっているのか」に目を向けてみてください。サッカーの指導同様、ルールについてもアップデートしていくことが、子どもたちの成長につながるはずです。次回の記事では「ゴールキック」「オフサイド」「PK時の、GKの立ち位置」について、石井さんに解説をしてもらいます。石井紘人(いしい・はやと)過去、日本サッカー協会C級ライセンスと三級審判員取得。サッカーは審判批評、他に運動生理学の批評を専門とする。『TokyoNHK2020』サイトで一年間に渡り、パラリンピックスポーツの取材を行い、現在は『J-cast』にて東京五輪へ向けたオリンピアンへのインタビューを連載中。著作に『足指をまげるだけで腰痛は治る』(ぴあ)、プロデュース作品に久保竜彦が出演した『弾丸シュートを蹴る方法』(JVD)がある。株式会社ダブルインフィニティ代表取締役でもあり、JFA協力、Jリーグと制作したドキュメントDVD『審判~ピッチ上の、もう一つのチーム~』やJリーグベストゴールズ『メモリーズ&アーカイブス』の版元でもある。自身のサイトは『週刊審判批評』。
2021年04月20日大人が口出しせず、グラウンド設営、大会運営、レフェリーまでを子どもたちが行う子どもが主役の大会「フォレストカップ」。大会を主催する伊勢原FCフォレストは「子どもが自分で考えて、行動できるようになる」をモットーとするクラブで、代表を務める一場哲宏監督の理念に賛同した保護者、子どもたちが集まり、人として、サッカー選手として成長するために、日々奮闘しています。チームに子どもを預ける保護者の皆さんにも、チームのどんなところに賛同しているか、親としての意識がどう変わったかなどを伺いました。(取材・文:鈴木智之)自分たちのプレーの振り返りだけでなく、相手チームへのアドバイス、気づきも話し合います<<前編:会場設営、出場メンバーも作戦も子どもたちで。ベンチに大人が入らない「子どもが主体の大会」で子どもたちに起こる変化■日替わりキャプテン、お互いのいいところを言い合うミーティング伊勢原FCフォレストは、コーチがガイド役となって子どもたちを導きながら、「自分で考えて行動できる」ようになるため、練習では日替わりキャプテンを中心に練習内容を決めたり、練習後にはお互いのいいところを言い合うミーティングをしたり、試合会場には大人の送迎に頼らず、自分たちで行ったりと、様々な経験を積んでいきます。「自主性」「自立」をテーマに活動して行く中で、子どもたちが徐々に成長し、大会の設営や運営、レフェリーまでも自分たちでできるようになっていきます。その集大成がフォレストカップなのです。当然、最初からうまくいくわけはありません。大人がこうしなさいと命令し、そのとおりにやらせるほうが簡単です。しかし一場監督は「子どもたちが自分で考えて、行動できるようになってほしい」という想いから、指示命令を出すのは我慢して、子どもたちが何を感じ、どう行動するかを見守っています。■ジュニア年代は通過点、将来を見て指導することが大事「1、2年生の頃は大変ですよ。対外試合をすると、10点差以上で負けることもしょっちゅうですから。でも、私も含めたコーチはそうなることがわかっているので、とくに慌てたり動揺はしません。1、2年生の場合、相手チームに身体能力の高い子がいたり、こっちのGKが慣れていない子だと、たくさん点が入っちゃうじゃないですか。だから、1、2年生の頃にそうやって負けることに関しては、全然問題ないんです」ただ、と一場監督は付け加えます。「保護者の方は心配になるみたいです。こんなにボロ負けして、このチームは弱いんじゃないかって(笑)。そこで僕が理由を説明して納得してもらうのですが、5、6年生になると、ボロ負けした相手に勝つようになります。それはフォレストの取り組みを通じて、サッカー選手として、人間として成長していくからです。子どもたちは目先の勝ち負けに一喜一憂してもいいのですが、僕たち指導者は、子どもの将来を見て指導することが大切だと思っています」サッカー選手として考えると、ジュニア年代はゴールではなく通過点。結果が出るのはもっと先です。さらに言うと、プロになれる選手はほんの一握り。99.9%の子どもたちはサッカー経験を胸に、社会人としてプロサッカー選手以外の仕事につきます。「僕たちは、子どもたちが社会に出た時に、立派な社会人になって、ゆくゆくはサッカーに貢献してほしいという想いで、小学生年代の指導に関わらせてもらっています」■「失敗してよかったね、そこから何が学べる?」というスタンスに保護者も共感フォレストの保護者の多くが、その考えに賛同しているようです。子どもたちや保護者は、一場監督を始め、コーチのことをニックネームで読んでいます。それはクラブ側から働きかけたもので、コーチが教え、子どもが教わるという上下関係ではなく、ともに学び、成長していく仲間なのだという考えがもとになっています。保護者の方々は、こう言います。「最初は『てっちゃん』(一場監督のニックネーム)って呼んでいいの?って感じでしたけど、いまはフレンドリーに呼んでいます(笑)。周りには『ザ・サッカー』という、昔ながらの根性をベースにした指導のチームが多い中、サッカー選手としてだけでなく、将来のことも考えて指導しているところに共感しました」(Aさん)「誰かに言われてやるのはできるけど、言われる前に自分で考えて行動するのは、大人でも難しいことですよね。それは小さい頃からの積み重ねなのかなと思います。私は小さい頃から体育会系で育ってきて、コーチに言われたことをやるという考え方でした。子育てをしていても、子どもに次はこれをやって、あれをやってと言っていたのですが、フォレストに子どもを入れて、てっちゃんの考え方を聞く中で、そうではないんだなと考え方を変えてもらいました」(Bさん)「フォレストの子どもたちは、いきいきとサッカーをやれているのでいいなと思います。コーチがああしなさい、こうしなさいとやって、強いチームもありますけど、てっちゃんに習った子ども達を見ると、低学年までは弱小チームですが、6年生になるとある程度の結果が毎年出ています。なんでも頭ごなしにダメと言わず、やったことに対して『ナイスチャレンジ』と言ってくれて、失敗しても怒らない。むしろ『失敗してよかったね。そこから何が学べる?』というスタンスなので、私たち親もそういう考えにシフトしていきました」(Cさん)■子どもたち自身も自分で考えて動けるようになったことを実感会場設営やサッカーの審判だけでなく、大山こまの大会運営も子どもたちが行います子どもたち自身も変化は感じているようで、6年生の黒須蒼平くんは「フォレストに入って良かった。楽しいし、コーチもただ怒鳴ったりするだけじゃなくて、成長しやすい教え方をしてくれる」と元気に答えてくれました。「フォレストは自力で試合会場まで行きます。親の送迎はないので、電車にひとりで乗れるようになりました。試合のポジションも自分たちで決めるし、プレーで失敗したとしても、他のチームだったらコーチが怒鳴って、こうしろって答えを言っちゃうけど、フォレストの場合はまずは自分で考えるので、コーチになにか言われなくても動けるようになる。そこは成長したと思う」■自分で考えて行動する力は中学生活でも活きているほかにもフォレストの中学生が、はにかみながら、こう話してくれました。「小学生の頃から、自分で考えて行動することをさせてくれたので、すごくありがたかったです。何か起きたときに、どうすればいいかを自分で考えるくせがつきましたし、学校で先生の手伝いをするときも、周りがやらなくてもすぐに気づいて、行動できるようになりました」(原海都くん/中2)「自分の考えを意見として相手に伝えることは、小学生の頃からずっとやっています。学校の体育祭や文化祭などでは、自分の係じゃないところでも手伝ったりと、周りに言われなくても動けるようになりました。社会に出た時も、その考えは大事になると思うので、継続していきたいです」(山口雄雅くん/中2)フォレストカップでは学年の垣根を越えて、協力しながら運営する姿が見られました。これも日々、フォレストで積み上げてきたことがあってのことでしょう。主体性を育むことは、一朝一夕にできることではありません。コーチ、保護者、選手が同じ方向を見て、我慢強く取り組んでいくこと。その大切さを、フォレストのみなさんが教えてくれました。一場哲宏(いちば・てつひろ)伊勢原FCフォレスト代表。日本体育大学に進学後、ドイツ・ケルン体育大学にて交換留学生として4年間サッカーの指導法を学ぶ。ケルンの街クラブで5・6才カテゴリーの監督の他、イギリスや湘南ベルマーレなど国内外で指導に携わる。 2019年4月から一般社団法人伊勢原FCフォレスト代表理事と保育専門学校講師として活動中。独・英・Jクラブで確立したサッカーを通して『人間力』も養う【4ステップ理論】を提供。保有資格は、日本サッカー協会公認指導者ライセンスB級、日本サッカー協会公認キッズリーダーインストラクター、日本キッズコーチング協会公認エキスパート、幼稚園教諭一種保育士
2021年04月19日ジュニア年代の指導ではドリブルとパス、どちらを先に教えたらいい?保護者も子どもたちもドリブル軍団が勝利を収める場面を見て移籍したくなるようだ。サッカーの最小局面は2対1という考えで指導しているけど、保護者や子どもたちのそんな姿を見ていると、指導が不安になる。ジュニア年代で優先的に伝えるのはドリブル?パス?というご相談。みなさんはどんな風に教えていますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、お父さんコーチの悩みにアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<監督の顔を潰さずチーム外自主トレでできることは?<お父さんコーチからの質問>池上さん初めまして。私は普段は専属で街クラブのジュニアチームで指導しています。指導年齢は未就学児から小6までです。早速ですが質問です。ジュニアの育成年代に伝えて行くべき優先順位はパスですか?ドリブルですか?ドリブルに特化したスクールや動画の配信が子ども達を夢中にさせているのを目の当たりにします。またドリブルに特化したチームが有利にゲームを運び勝利する場面も多々見かけます。私としては「サッカー」を教えたいのでサッカーの最小局面は2対1という考えの元で指導しています。ただ保護者や子ども達はドリブル軍団が勝利を収める場面を見ると移籍したくなるようです。正直私も不安になる事があります。池上さんの育成に関する優先順位、勝手に前提を作って恐縮ですが、ドリブルかパスかの考えをもとにご教授いただけると幸いです。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。これまでも拙書でも何度か取り上げてきましたが、ドリブルかパスかという議論は、日本ではまだ見かける議論です。そのうえ数年前から「ドリブルデザイナー」といった肩書を名乗る方も現れました。■ドリブルよりパスを教えることが難しいと思う指導者も少なくないドリブルやリフティングは、目に見えて成長がわかりやすい技術で、しかも「個人」に絞って技術の程度を評価できます。一方の「パス」は、ひとりだけの技術ではありません。受け手がボールを受けやすいスペースに現れて初めて、出し手はパスを出せます。その点では、ドリブルが個人のスキルであるのに対し、パスはチーム(組織)のスキルと言えます。その点で、指導者のみなさんはパスを教えることを難しく感じられているようです。■止める、蹴るの技術を取り出して教えるのは後でいい例えばパスのスキルというと、まずは「止めて蹴る」から教え始めます。「ボールを止められなかったり、しっかり蹴れなければパスはできない」という考えの方は多いと思います。ある指導者と話をしたときのことです。私が「うまく動くことを教えれば、サッカーは楽しくなりますよ。(止める、蹴るの)技術を取り出して教えるのは後でいいのではないか」と話したら、「ボールを蹴れない子どもに動き方を教えても仕方がないだろう」とおっしゃいました。「まさしくおっしゃる通りです。でも、キックの練習から入ると、このキックはいつ使うのかがわからないのでは?ゲームの中で、向かい合って蹴ったりするパスは使いませんよね。まず最初に、『ここに動いてボールをもらえばシュートを打てる』ということを理解できれば、子どもは『じゃあ、そのときにうまく蹴るためにキックの練習をしよう』となりませんか?」そう話しました。キックやボールコントロールを何のためにやるのか、それがわかったほうが技術練習は断然楽しくなるはずです。その指導者の方は「なるほど」と納得してくださいました。■どちらが先ではない。パスもドリブルも一緒に教えないといけない対するドリブルも、実は同じことが言えます。「こういうときにドリブルできるとどう?向こうの人にパスしやすくなるよね」とか「この密集を抜け出すためにはドリブルができるといいね」と、使いどころを一緒に探してあげてください。要するに、パスもドリブルも一緒に教えないといけません。どちらが先ということはないと私は考えます。では、その先にあるものはなにか。ご相談者様が書かれているように「2対1」がそのひとつです。さまざまな局面で、ドリブルをしたほうがいいか、パスしたほうがいいかを判断する力を養うためにも、2対1をしてもらいます。2対1から始める意味は「2人で協力すると簡単に点が取れるよね」ということを伝えるのが一番のポイントです。例えば、味方のほうにちょっとボール向けると、前が空く可能性があります。そうすると、そこでパスもできるし、自分でドリブルしてシュートも打てます。どっちもできる。「そこで何を選びますか?」といったプロセスをたどることが大事です。指導者が「そこでパスを選べ」とか「ドリブルで勝負しろ」と命じるものではありません。■ドリブルがうまくなった子にパスを教えるのは難しい加えて、これは私の経験上わかっていることですが、ドリブルが上手くなった子に、「じゃあ、次はパスができるようになろう」とパスを教えるのは難しい。ひとりでドリブルで相手を抜けてしまう子は、なかなかパスを出そうとしません。逆に、ドリブルもパスも一緒にトレーニングした子どもがゲームの中で自分の前にスペースがあるのにパスを探していたら「ここ、空いてるじゃん。ドリブルしてごらんよ」とアドバイスすると、その子は変わってきます。変化しやすいのです。パスもドリブルも、選択肢が両方ある。もっといえば、どこにパスを出すか、どんなドリブルで場面を変えるかというようにそれぞれに選択肢があることが重要です。場面場面でどれだけたくさんの情報を持てるか。そして、その情報を瞬時に整理して選べるかがいい選手の条件です。この認知、判断の次に「行動」がきます。正確に出てきたパスをコントロールし、次にパスやドリブルを選べるか。それができるプレーヤーになるためのベースをつくるのが、私たち育成年代を教える指導者の大きな仕事なのです。■サッカーに必要な認知、判断力は「大人になったら理解できる」ものではないしたがって、情報を入れるトレーニングを早くからやったほうがいい。対面パスやジグザグドリブルのようなクローズドスキルだけでは、子どもは考えなくて済みます。日本のジュニアは足元の技術が素晴らしいと言われますが、それだけをやってしまうと頭で考える力がついてきません。近年、この認知能力は、世界のサッカーが見られるようになったおかげで推進されているかもしれません。「個の力を育てないといけないのでは」という意見があります。おっしゃる通り欧州でも「個の力が重要」と言われています。抜きんでた個の技術は、メッシなどスーパーな選手がひとつのお手本でしょう。ところが、欧州の指導者は、すべての子どもたちをメッシになるように育てなきゃいけないとは思っていません。対する日本人はことさら「個の力は大切だ。メッシのような選手を育てなくては」と思ってしまうのかもしれません。ディフェンダー、ミッドフィルダー、フォワードと、ポジションの違いもありますが、共通して持たなくてはいけないのはサッカーをどう認知して判断するかという力です。このベースがあっての話が「個の力」の追求になるのですが、そこが抜けていないでしょうか。この能力は「大人になったら理解できる」というものでもありません。小さいときから、何を選びますか?何を考えますか?と、自分で考えて認知し行動する習慣をつけておく必要があります。無論、2対1の局面でもドリブルしたほうがいい場合もあります。でも、そこは「君が選べばいいんだよ」と伝える。そんな育て方をしてほしいと思います。池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>次ページ:ドリブル軍団を見て移籍したくなる理由■ドリブル軍団を見て移籍したくなる理由(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)「ドリブル軍団が勝利を収める場面を見ると移籍したくなるようだ」と書かれていますが、移籍する人たちはドリブルを指導してほしいわけではないと思います。シンプルに「強いチームに行きたい」と親子とも思っているのではないでしょうか。そこを変えない限り、日本の育成は変わらないと思います。「じゃあ、ドリブル軍団に勝つように頑張ろう」では時間がかかります。保護者や子どもたちがサッカーの本質を理解していないから、目に見えて成果がわかりやすいところに行きたくなる。そこに理解を求めたり、一緒に学ぶ姿勢を持てるといいと思います。2対1など、あなたがなさっていることは間違っていません。ご自分の指導にぜひ自信をもって、学びながら進めていってください。池池上正さんの指導DVDプレゼント!詳しくはこちら【4月限定】>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年04月16日流通経済大学付属柏高校の榎本雅大監督に行ったインタビューの前編では、昨年から取り組むコミュニケーション能力を高める取り組みと共に、指導者と選手の関係性についてお聞きしました。後編の今回は、指導する中で感じる保護者の変化と、今年から新たに立ち上げる下部組織「クラブ・ドラゴンズ柏U-12」についてお聞きしました。(取材・文:森田将義)クラブ・ドラゴンズ柏の代表でU-12の監督を務める稲垣雄也さん(C)森田将義<<前編:「上下関係ではなく、一人の人間として」対話を大事にする流経柏・榎本監督が始めた選手と今まで以上に向き合う新たな取り組み■自立している選手が活躍できる大学卒業後に指導者としてのキャリアをスタートさせ、この春で20年目。これまで多くの高校生を見てきた榎本監督は、保護者の変化を感じると口にします。「過干渉すぎる気がするんです。失敗して成長していくのに、色んなことを親がやってしまうから、失敗しない。転んでから対処すれば良いのに、転びそうになると『怪我しちゃうよ』と先に手を差し伸べるのと同じです。なので、『努力とか知恵を出さないと失敗するんだよ』という所から教えないといけないんです。サッカーも私生活でも人任せになっている気がします」これまで指導してきた選手の中で、印象に残っているのは北海道コンサドーレ札幌でプレーするMF青木亮太選手です。世代別代表で飛行機移動する際は荷物が多く、朝も早いため空港まで送り迎えする保護者も多いのですが、青木選手は家から空港まで一人移動していました。「周りに頼らず自分でやらなければいけない習慣がつくと色んな知恵が出てくると思うんです。結果を出さなければと自主練習するのと同じで、私生活で自立している選手がサッカーで活躍できるんだと彼から学びました」■サッカースクールに行けば上手くなるわけではないそうした保護者の変化に伴い、「本来は失敗と成功から学んでいくのが教育の根幹なのに、"やってあげる"に変わってきている」とも榎本監督は話します。「サッカースクールに行くとサッカーが上手くなるというのも誤解。こんな練習をすれば良いんだよという仕組みを習いにいく場所であり、上手くなるには自分で練習するしかない」。自ら成長する選手の重要性は、高校生が受けるインタビューからも感じたと榎本監督は話します。今年、流経柏からジェフユナイテッド市原・千葉へと加入したGK松原颯太選手は取材される度に、「こんなことを話した方が良いな」と気付き、修正することで上達していったそうです。大人がこうやって話なさいと対応を教えるのは簡単ですが、選手の成長に繋がりませんし、本音ではない仮面と言える言葉を褒められても意味がありません。「最初は『アイツ口の利き方が悪いな』と思われてもОKだと思うんです。記者の人が聞きたいのは本音の部分。言葉が足りなくても、『この子はこんなことを考えているんだ』と分かる方が良いじゃないですか。松原がプロまで届いたのは、そうしたインタビューも含めて自分で成長したから。プロの練習に参加したら随分大人びて帰ってきたなと思うくらい成長していました」■流経柏がU-12を発足させた理由選手との関係性を見直し 、コミュニケーション能力の向上に力を入れ始めた昨年に続き、今年の春からは、また新たな取り組みも始めました。これまで3種年代の下部組織として活動しているクラブ・ドラゴンズ柏U-15に加え、U-12も発足させたのです。監督には、流経柏のGKコーチ、ジェフユナイテッド市原・千葉のスカウトを歴任した稲垣雄也氏が就任し、これから活動を本格化していきます。U-12を立ち上げた理由について、榎本監督はこう話します。「1種から4種年代まで持っているJリーグのアカデミーはあっても、学校組織がベースとなっている組織はない。選手が育っていくためには、教育が根幹にあるのが大事だと思うんです。流経が好きで、組織を良くしたいと思ってくれる選手を一人でも多く育てたい」流経柏高校サッカー部の榎本監督(右)は、「流経が好きで、組織を良くしたいと思う選手を育てたい」と語ります(C)森田将義就任にあたって、稲垣監督は「今回ジェフを辞めて流経に戻ってきたのは、相応の覚悟を持ってきたつもり」と話す通り、並々ならぬ想いで小学生の指導に当たります。「日本一を目指している大学や高校の選手を見ていると、上に行くために必要な勝者のメンタリティーを持っている。同じような組織になるために、強豪ではなく結果でも育成でも突き抜けるのがテーマ。Jクラブが街のシンボルであるように、街クラブがシンボルにもなれると思っています。Jクラブにできて、街クラブにできないことはない」■チームの雰囲気や場所が選手のマインドを変える稲垣監督は流経柏のコーチをしていた時代に、ピッチ外で頼りない選手もいざ流経柏のユニフォームを着れば、キリっと表情が変わり、勇敢に戦う姿が印象に残っていると話します。「感じたのはチームの雰囲気や場所が選手のマインドを変えるということ。スカウト時代も含め色んなチームを見させてもらいましたが、簡単なことではなく、一番難しいことなんだと感じました。勘違いとギリギリのラインだと思うんですけど、ユニフォームを着ただけで強くなったと思えるのは凄い。それはどの試合や練習でも負けてはいけない、勝ちに拘るんだという所から生まれる物だと思うんです。僕自身、みんなが格上と思うチームが相手でも『負けるわけがない』と思っていました」。そうした勝者のメンタリティーとも言える心を持った選手を育てるのが、クラブ・ドラゴンズ柏U-12のテーマです。■サッカーの理解度は、自立した心や自分自身での工夫が必要ただ勝負に拘るのではなく、選手育成との両立を図るのもクラブ・ドラゴンズ柏U-12が目指す方向性です。「選手を上のステージに引き上げようと考えると勝てば何でも良いだろうという考えでは、その先に繋がりません。勝利と育成の両方を目指さなければいけない。育成に拘っているから勝利を度外視するのは、指導者の逃げだと思うんです。ゴールを目指して、ゴールを守るスポーツというサッカーの本質はしっかり伝えていきたい」。稲垣監督は指導者、Jリーグのスカウトとして多くのプロサッカー選手と接する中で、能力任せでサッカーをしていては上手くいかない選手が多いと感じていました。一流の選手が超一流に、二流の選手が一流になるためには、サッカーへの理解度が重要です。そのためには、自立した心や自分で考えて工夫できる力がないといけません。■自分の強みを持てる選手を育てたい目指すスタイルもこれまで多くのタレントを輩出してきた流経大柏と稲垣監督だからこその考え方が伝わります。「サッカーは11人でやるスポーツ。強い選手もいれば、上手い選手もいりますし、汗をかける選手も必要です。自分の強みを持てる選手を育てていきたい。チームに個が合わせるのではなく、個を活かせるようなチームにしていきたい。チームとしてのサッカーに拘り過ぎると『こういうサッカーをするとこういう部分は良くなるけど、これはできないよね』と、他のチームに進んだ時に選手が苦しんでしまう。それに、特定のスタイルが良いと保護者が勘違いしてしまう危険性もあります。バルセロナやマンチェスター・シティのサッカーは素晴らしいけど特殊です。同じサッカーを目指すなら、寝る間も惜しんでインサイドパスを練習する必要が出てくるけど現実的ではありません。全員に押し付けると、良さが消えてしまう選手もいるので、それぞれの良さを活かしたサッカーをしていきたい」強豪の立場に満足せず、新たな取り組みをスタートさせながら、選手と向き合うのが新生・流経柏。これからもサッカー界を沸かせる選手が出てくるのは間違いありません。
2021年04月15日サッカーをしていて「敏捷性」という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。サッカー選手にとって、敏捷性を鍛えることは非常に重要です。一方で敏捷性がどのようなものなのか、どうやって鍛えるのかわからない人もいるでしょう。この記事では、敏捷性の意味や鍛えるためにはどのようなトレーニングをすればいいのか解説します。自宅でも使用できるトレーニング道具も紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。敏捷性とは?敏捷性とは、簡単にいうと動作のすばしっこさや機敏さを意味する言葉であり、スポーツにおける重要な能力の1つだと言えます。英語だと「アジリティ(Agility)」という言葉になるため、こちらで馴染みのある人もいるかもしれません。サッカーにおける敏捷性とは、ダッシュやドリブルの加速、減速、方向転換、急ストップ、急発進といった要素が該当します。敏捷性は、プレーをするうえでの基本的な要素であり、攻守両面において欠かすことができません。敏捷性があれば、プレーの質も大きく向上するでしょう。敏捷性=足の速さではないサッカーをしていて「あの子は足が速いな〜」と感じることがあるかもしれませんが、足が速いからといって敏捷性があるというわけではありません。先ほども説明しているように、サッカーにおける敏捷性とは加減速や方向転換などのことを指しています。そのため、短い距離で一気にトップスピードまで持っていける、スピードの緩急をつけるのがうまい、ドリブル中の方向転換で相手をうまくかわすといったことができる、といった選手が、敏捷性があるといえるでしょう。日本人選手であれば、香川真司選手や長友佑都選手などは高い敏捷性を備えています。両選手は決して体格が大きいわけではありませんが、スピードや緩急、などを駆使してフィジカルの強い相手であっても対等に勝負することができています。このような選手たちが活躍していることを考えると、敏捷性がいかに重要であるか理解できるのではないでしょうか。敏捷性を鍛えるトレーニング敏捷性を鍛える場合、特別なトレーニングが必要なわけではありません。例えば、縄跳びや鬼ごっこなどは、一見すると遊んでいるように思えますが、さまざまなステップワークを踏んだり、加減速や方向転換などを行ったりするため、敏捷性を鍛えることができます。日常生活の中でもできるため、子どもたちにとっても取り組みやすいでしょう。また、スポーツショップなどで購入できるはしご型のトレーニング道具である「ラダー」も敏捷性を鍛える際に活用できます。ラダーの枠に応じて素早くステップワークを踏んだり、切り返しをしたり、加減速を行ったりできるため、こちらもおすすめです。ラダーの購入を検討している方は、「タニラダー」の利用がおすすめです。こちらの商品は、一般的なラダーよりもマスの数が少ない4マス構造となっており、簡単に設置できます。また、マスが少ない分、スピードを落とすことなくステップワークが踏めるため、実践に近いスピードを体に染み込ませることができます。敏捷性のトレーニング自体は、簡単にできるものなので、ぜひ自主練習の際などにも取り入れてみてください。まとめ今回は、敏捷性の意味や鍛えるためのトレーニングなどについて解説しました。ドリブルや守備など、サッカーにおいて敏捷性が必要となる場面はたくさんあります。サッカーがうまい=ボールの扱いがうまいといったイメージがあるかもしれませんが、敏捷性も欠かすことはできません。ぜひ、今回の内容を参考に敏捷性の向上に取り組んでみてください。
2021年04月15日少年団だけど、低学年の頃はテクニックに恵まれたメンバーばかりで大会も優勝か準優勝。みんなキラキラ楽しくサッカーしていたのに、クラブチームに移籍する子が出始めてチームが崩壊。Aチームの子が退団したらBチームから補充するけど、レベル差があってAチームの子たちが受け入れられず、失敗に罵倒したり仲間同士信頼しあってない。チームに失望して去っていく人も続出......。残された者たちであと2年サッカーを楽しむために、どうすればいい?とのご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<もっと真剣にサッカーして!仲間との温度差に悩む息子をどう支えるか問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。9歳の子どもを地元の少年団に通わせています。低学年の頃は、向上心も強く、テクニック共に恵まれたメンバーばかりで、大会は優勝もしくは準優勝と、みんながキラキラと楽しくサッカーをしていたように思います。しかし、中学年になって、Jクラブの育成組織や強豪クラブチームに移籍する者が出てきたころからチームが崩壊しだしました。残された子たちで新たにチーム作りをするはずでしたが、現実は......。上手いAチームの子が抜ければ、Bチームからの補充となるのですが、今までいた子との実力差があるので、Aチームのメンバーが補充メンバーを受け入れられず。仲間を信頼し合わないサッカーとなり、失敗に対して罵声がとんだり、言われた子は萎縮して思うように動かず自信をなくし再びBに落ちる......。そんなチームになってしまいました。誰もが楽しんでサッカーをしていない状況となり、このままこのチームにいたらダメになると、チームを去って行く者が多発し、完全に崩壊してしまいました。こういう状況を作ってしまったコーチへの不信感もありますが、残された者達で残り2年間サッカーを楽しんでいくために、どう親はフォローをしていけばいいのでしょうか?<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。いただいた相談文からしか類推できないので、事実の把握が100%合致しているかはわかりません。そのあたりはお許しください。■勝つ=楽しいという価値観だと、負け始めると崩壊することもご相談文を読んで最初に思ったのは、勝利を優先してきたチームにありがちな「歪み」だということです。「低学年の頃は、向上心も強く、テクニック共に恵まれたメンバーばかりで、大会は優勝もしくは準優勝」とあるように、息子さんの学年のチームは早熟な子がたまたま集まっていて、1、2年生の大会では勝てたのでしょう。似たようなケースはよく見受けられます。お母さんが「みんながキラキラと楽しくサッカーをしていた」と書かれているように、結果としてチームは勝利することで子どもをサッカーにつなぎとめていた傾向がありそうだと感じました。もしそうであれば、選手もコーチも「勝つこと=サッカーが楽しい」という価値観なので、負け始めるといとも簡単に「負ける=サッカーが楽しくない」に移行してしまいます。■Aチーム、Bチーム同等のほうが脱落したり辞める子がいなくなる私が少年サッカーを取材する中で、上記のことを理解しているコーチの方々は、自チームが低学年の大会で優勝したり勝ってしまうと危機感を募らせていました。お母さんの息子さんのチームのようなことが起きることを経験上知っているからです。例えば、Aコーチは、中学年まではなるべくチームをA、B同等にして大会に出場させるなど工夫していました。そのほうがチームの底上げになるし、脱落したり、辞める子もいなくなるからです。彼がそのように「4年生までAB同等」にしたのは、その数年前に3年生の途中でチームを去ったB君のことがあったからです。B君は3年生のはじめに入団。少し太っていましたが、頑張り屋さんでした。ただ、多くのチームメイトが1年生からサッカーを始めていたので、止める蹴るの技術の上達が少しみんなより遅れていました。試合には、チームがリードしていれば終わりごろに少し出場させる。それでもB君は満足しているだろうとAコーチは勝手に思っていました。でも、B君は3年生の秋くらいに突然チームをやめてしまいました。「試合にはほとんど出ていないので、ユニフォームがもったいないので使ってください」と母親から返されたAコーチですが「そのときは、まあ仕方ないか、サッカーにはまらなかったんだな」と思ったそうです。■全員出場のクラブで見違えるように成長ところが3年経って、子どもたちが6年生になったある日。他市も含めたカップ戦で、子どもたちが「あれ、B君じゃないの?」と騒ぎ始めました。背が高くなり体も締まって、足も速くなっていました。見違えるようにキビキビと動くB君はセンターバックを務め、危機察知能力が高く、チームのピンチをことごとくカバー。しかも、その腕にはキャプテンマークを巻いていました。あとで聞いた話では、チームをやめたB君はスクールでサッカーを続行。半年後に転校した先で民間クラブへ入団。そのクラブは全員出場させて、とてもいい指導だという評判のクラブでした。Aコーチは打ちのめされ、指導やチームの運営方法を見直しました。■子どもは勝つための駒ではないいかがでしょうか。お母さんはこのチームのやり方しかご存じないかと思います。「上手いAチームの子が抜ければ、Bチームからの補充となる」と書いていらっしゃいますが、子どもは勝つための駒ではありません。このやり方では、「今までいた子との実力差がある」のは当然です。だから、先述のAコーチは中学年まで同じ力でチームを編成したし、そのようなことを理解しているクラブは常にチーム編成を変えるなどして底上げを図っています。全員をうまくしようと努力しているのです。■補充メンバーを受け入れられない状況にしているのは指導者の責任それなのに「Aチームのメンバーが補充メンバーを受け入れらない」状況にしてしまっているのは、やはりコーチの責任でしょう。低学年のわずか1年か2年の間で勝ったり負けたりすることに意味があるかどうかを考えなくてはならないと思います。お母さんはこの状況をおかしいと感じて、ご相談してくださったと思います。何とかしたいという思いはよくわかります。「残された者達で残り2年間サッカーを楽しんでいくために、どう親はフォローをしていけばいいのか?」と問われていますが、ピッチで起きていることは指導者と選手の問題です。酷なようですが、ギスギスした関係が続き、そのことをコーチが問題にしない状況を親御さんが改革するのは無理でしょう。できるとしたら、お母さんがそのような不安を抱えていることを、コーチの方々や他の保護者と腹を割って話すことです。より良いチームにしていきたいことを訴えてはいかがでしょうか。ただ、残念ながら「保護者に意見されて考えを変えました」とおっしゃる少年サッカーの指導者を私は知りません。この世界を取材し始めて15年以上経ちますが、世の中的にもそう多くはない現状があるように感じます。■息子さんをフォローする方法(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)息子さんをフォローする方法があるとすれば、彼にすべてを委ねることです。「他のチームでやりたいなと思ったら、いつでも力になるよ。でも、このチームで楽しくサッカーをしたいと思うんだったら、どうしたらみんなで楽しくできるか考えてみよう」と言って、話し相手になってあげてください。そこで「何のためにサッカーをしているか」を話し合ってみてください。サッカー自体が楽しいから。今の仲間といるのが好きだから。さまざま出てくるでしょう。話しているうちに「今、自分はどうしたいか」が息子さんに見えてくるといいなと思います。決して良い環境とは言えなさそうですが、あくまで「息子が選んで在籍しているチーム」だと考えましょう。ここで悩んだり、どうしようかと考えたり、決断することは、あとで考えると良い経験になるはずです。そう考えて、親御さんは見守り役に徹してください。悩むのも、解決するのも、最後に決めるのも、息子さんなのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年04月14日サッカーをしていると「アジリティが重要だ」「アジリティを鍛えよう」といった言葉を聞くことがありますが、中にはアジリティがどのようなものかわからない人もいるでしょう。この記事では、アジリティとはなんなのか、その意味について解説し、なぜアジリティが必要なのか、そしてどのようなトレーニングをすればいいのか解説します。アジリティトレーニングに使用できるおすすめの道具も取り上げているので、ぜひ参考にしてみてください。アジリティとはアジリティとは、日本語で言う敏捷性のことです。敏捷性というと足の速さなどをイメージするかもしれませんが、サッカーにおけるアジリティは単なる速さのことを指しているわけではありません。具体的には、スピードや加減速、さらには方向転換の速さなどのことを指しています。アジリティの必要性アジリティはサッカーにおいて必要不可欠な要素であり、アジリティがあれば攻守両面において役立ちます。先ほども説明しているように、アジリティは加減速や方向転換の速さなどのことを指しており、サッカーにおいてこれらの能力が役立つ場面は少なくありません。例えば、相手を抜き去るドリブルをするためには、緩急をつけたドリブルが効果的です。またトラップの際に素早く切り返し相手の逆を取れれば大きなチャンスにつながるでしょう。そのほかにも、ボールを持った相手に対応するには、自由自在に加減速や方向転換ができることが欠かせません。このようにアジリティを鍛えることで、サッカーでは様々な場面で活躍できます。アジリティは小さいころから育てるアジリティ能力は小さいころから育てることが大切です。特に幼児期は神経機能が発達する時期で、体の動かし方や力加減のコントロールなど運動を調整する能力が向上する時期であるためです。筋トレは体ができあがっていない子どもには適していないとされていますが、アジリティはそういったことはないため、ぜひトレーニングしてみてください。アジリティを鍛えるトレーニングここでは、アジリティトレーニングの具体的な内容について解説します。簡単にできるトレーニングもあるためぜひ参考にしてみてください。鬼ごっこ鬼ごっこは、一見するとただの遊びに思えるかもしれませんが、鬼から逃げるために加減速や方向転換を行う必要があるなど、アジリティトレーニングにぴったりです。また、子どもたちにとっても馴染みのあるものであるため、細かいルール説明がなくてもすぐにできる点も大きな特徴です。練習の際のウォーミングアップなどにも適しています。ラダートレーニングラダーとは、はしごの形をしたトレーニング用具であり、サッカーをはじめとして様々なスポーツで使用されています。ラダー上で、いろいろなステップワークを踏むことで、足の動きやさばきが早くなり、アジリティの向上にもつながります。ラダーはスポーツショップなどで購入できるため、個人で購入しておけば、自主練習の際などにも活用できるでしょう。中でも「タニラダー」は、4マス構造となっており、持ち運びや設置が簡単に行えます。また、実践に近い形でのステップワークが踏めるようになっているため、アジリティトレーニングにもぴったりです。ぜひ利用を検討してみてください。まとめ今回は、アジリティについてその意味から必要性、さらには具体的なトレーニング方法などについて解説しました。サッカースキルの向上というと、どうしてもボールテクニックなどに注目してしまいがちですが、アジリティは攻守両面において欠かせない重要な要素です。鬼ごっこやラダーなど普段の練習を通して鍛えられるものであるため、ぜひアジリティの向上に取り組んでみてください。
2021年04月14日子どもたちが会場設営、当日の運営、出場メンバーと作戦も決める。ベンチに大人は入らない。そんな子どもたちが主体の大会があることを知っていますか?神奈川県伊勢原市で活動する伊勢原FCフォレスト主催の「フォレストカップ」は、大人が口出しせず、グラウンド設営、大会運営、レフェリーまでを子どもたちが行う「子どもが主役」の大会です。この度のコロナ禍で開催が危ぶまれましたが、感染対策と参加チームを近隣のみ、少数にすることで実施。子どもたちが主体となって運営し、躍動する姿が見られるこの大会を通してどんなことが行われているのかをお伝えします。(取材・文:鈴木智之)ベンチには選手だけ。メンバーも戦術も自分たちで決めます■出場メンバーも作戦も子どもたちが決めるフォレストカップは「子どもたちによる、子どもたちのための大会」です。試合中、コーチはベンチに入らず、出場メンバーや作戦も子どもたちが決めます。試合は3ピリオド制で、第2ピリオド終了後、両チームが、お互いの良かったところとアドバイスを送り合う『合同ミーティング』を行います。今大会はコロナ禍のため、チームであらかじめ意見をまとめ、代表者のみが発言するなど工夫をこらしました。大会は主役である子どもを、大人がうまくサポートする形で進んでいきます。任せっぱなしではなく、見守り、アドバイスをする絶妙なさじ加減が、伊勢原FCフォレストの代表で、運営責任者を務める一場哲宏さんのマネジメント力です。「大会のルールとして、第1ピリオドに出た選手は第2ピリオドには出られません。第3ピリオドは交代自由で、誰が出てもOKです。そうすることで、選手は必ず試合に出ることができます。フォレストカップは小3から小6までのカテゴリーがあり、経験の少ない3年生の場合、コーチが見ていないのをいいことに(笑)、第3ピリオドはいつも同じ、上手な子しか出ないといったことも起きます。そのときは『この子、あまり試合に出てないんじゃない?』などと声をかけながら、導いていきます」■普段なら指示してしまう場面も、離れてみることで指導者にも気づきが生まれる※この日は撮影が入っていたため輪の中に大人がいますが、通常は子どもたちだけでミーティングを行いますグラウンドには、子どもたちの姿しかありません。コーチは離れたところから見ています。観戦に来た保護者と同じ距離感です。大会に参加した西鶴間サッカークラブの安東洋一監督は、次のように感想を話してくれました。「これまで何度か参加させてもらっていますが、コーチがベンチに入らないのはこの大会だけです。いつもはコーチが指示をしてしまう場面でも、子どもたちに任せるので、普段からそういう場面を増やしてもいいのではないかという、指導者側の気づきにもなりますよね」合同ミーティングについては「ミーティングは、大人から子どもへの一方通行になってしまいがちですが、子どもたち同士で話す場を設けることで、一生懸命、自分の考えや想いを話そうとします。とても良い時間だと思います」と感心していました。■ベンチに大人が入らないからこそ起こる、子どもたちの変化試合を見ながら相手チームのいいところを探して書く一場監督は合同ミーティングの様子を遠目で見ながら、子どもたちの変化について、こう話します。「3、4年生と5、6年生では、意見の質も変わってきます。3、4年生のときは、相手に対して遠慮なく、思ったことを口にするのですが、高学年になると戦術的なことも含めて、相手に気を使いながら言うようになります。年齢による社会性の芽生えとともに、発言の内容も変わるので、おもしろいですよね」伊勢原FCフォレストでは「選手の自立」をテーマに、自分で考えてサッカーをすることを大切にしています。合同ミーティングもその一環です。「相手チームにアドバイスができるのは、相手がどういうサッカーをしているのか、どういう戦術なのかを理解しているから。それに対して、自分たちはやりにくかった、やりやすかった、もっとこうすればいいと、お互いの立場に立って考え、言葉で伝えることができるのは、相当レベルが高いことだと思います」フォレストカップでは、参加賞として作戦ボードに「相手チームの良いところ」「相手チームへのアドバイス」と書かれたマグネットを渡しています。このように大人がサポートすることで、子どもたちの考えを引き出す仕組みをうまく作っているのです。一場監督は言います。「突然、発言しろと言われても難しいと思います。フォレストでは普段から、練習後に必ず相手と自分の良いところを見つける『いいとこメガネ』というミーティングをしています。人間は違いや欠点に目が行きやすいので、そのようにしてお互いのいいところを見つけ合うようにしています」■任せてみれば子どもたちは意外とできるもの普段の大会とは違った光景が繰り広げられる、フォレストカップ。グラウンドの一角には、伊勢原市の郷土玩具である「大山こま」で遊ぶことのできるスペースが設けられ、子どもたちが楽しそうに触れ合っていました。もちろん、こまスペースの運営も、フォレストの選手たちです。一場さんはその様子を、目を細めて見ています。「フォレストカップは開会式、閉会式、こま大会など、すべて子どもたちが主体となって運営します。子どもに任せれば、意外とできるものなんです。でも、大会運営や審判は大人がやるものだという固定観念があるので、多くの場合はそうはなりませんよね。フォレストカップのような取り組みがあるんだと知ってもらえれば、うちでもやってみようかなと思う人が出てくるかもしれません。そのきっかけになればいいと思います」いま一度「ジュニアサッカーは子どもが主役」という当たり前のことを見つめ直す機会でもあるフォレストカップ。このような取り組みをすることも、サッカーを通じて、子どもたちの成長につなげるための、ひとつの方法といえるのではないでしょうか。次回の記事では、フォレストカップに参加した子どもたち、保護者の声をお届けします。一場哲宏(いちば・てつひろ)伊勢原FCフォレスト代表。日本体育大学に進学後、ドイツ・ケルン体育大学にて交換留学生として4年間サッカーの指導法を学ぶ。ケルンの街クラブで5・6才カテゴリーの監督の他、イギリスや湘南ベルマーレなど国内外で指導に携わる。 2019年4月から一般社団法人伊勢原FCフォレスト代表理事と保育専門学校講師として活動中。独・英・Jクラブで確立したサッカーを通して『人間力』も養う【4ステップ理論】を提供。保有資格は、日本サッカー協会公認指導者ライセンスB級、日本サッカー協会公認キッズリーダーインストラクター、日本キッズコーチング協会公認エキスパート、幼稚園教諭一種保育士
2021年04月13日2008年の選手権優勝、2度のインターハイ優勝など輝かしい経験を持つ流通経済大学付属柏高校が昨年から、新たなスタートを切りました。チームの礎を築いた本田裕一郎前監督からバトンを引き継いだ榎本雅大監督は就任と共に流経大柏の伝統を残しながらも、選手と今まで以上に向き合う新たな取り組みを始めています。今回は取り組みと共に、榎本監督が考える指導者と選手の関係性について話を聞きました。(取材・文・写真:森田将義)選手たちが自ら書き始めた日誌(C)森田将義■プロに行った選手は、このチームで成り上がってやる!という気持ちが強かった榎本監督は現役時代、習志野高校と国士館大学でDFとしてプレー。大学3年生次には総理大臣杯とインカレの2冠を達成しています。当時のチームメイトにはJリーグやJFLへと進んだ選手が多く、榎本監督は「負けず嫌いで、きつい練習でも心が折れない選手が多かった」と振り返ります。流経柏にも全国大会での活躍を目指し、各地から中学時代にエースだった選手が集まります。彼らも負けず嫌いばかりですが、スタメンの座を勝ち取れる選手や大学やプロで活躍できる選手は一握りの選手だけ。榎本監督は「最初は中学までからの変化に戸惑う選手も多い。競争を勝ち上がっていけるかは、信念がどれだけあるかに尽きる。プロに行く選手は、"絶対にこのチームで成り上がってやる!"という気持ちが強かった」と口にします。中学時代は自然とボールが集まっていた選手であっても、高校では同じようには行きません。ボールを上手く引き出せるようポジショニングを意識しなければいけませんし、定位置を掴むには目に見える結果も必要になります。試合で活躍するためには自分の特徴を知ってもらう必要もあるため、榎本監督は就任と同時にコミュニケーション能力を身につける取り組みを始めました。■チームの一員として認められるためには、貢献が必要その一つが、試合ごとに榎本監督がつける振り返りのチェックシートです。目標として掲げる選手権優勝を果たすために必要な対人プレー、セットプレーといったチームプレーの評価と共に、選手個人も10点満点で評価し、全員に対してのコメントも加えています。指摘した箇所を良くするために努力して欲しいとの意味と共に、評価が違うと感じたなら自分の意見をぶつけて欲しいと考えているからです。それでも、自分の意見を言えない選手が多いため、今年に入ってからは話す機会を増やそうと1対1の面談も始めました。6人のスタッフが持ち回りで1日3人ずつ全部員との面談を実施するのですが、与えられた時間は3分間。選手が話しやすいよう「緊急事態宣言の延長について」などテーマは選手自ら決めて話すのがルールです。「言葉はフランクで良いんです。尊敬語とか謙譲語でなくて良いから、考えたことを話して欲しい。どんな内容でも失礼だとは思いません。考えたことを話さない方が、人間関係を良くしようとしていないんだから失礼にあたると伝えています。僕が怒っていたことに対して、選手が意見してくれると"そんなことを考えていたんだ"と考え方を改め直すかもしれない」また、今年は今まで以上にミーティングの回数を増やすつもりです。理由について、榎本監督はこう話します。「チームや社会の一員になるのは、組織にどう貢献できるかだと思うんです。サッカーでいえば相手選手をマークしたり、危ない場面で身体を張って防ぐことが勝利への貢献になり、チームの一員として認められる。そうした貢献が分かりやすいのがミーティングで、議題に対して何も意見しない選手は貢献していないことになるんです。何もしない選手に手を差し伸べてくれる人はいません」ミーティングの内容は誰がどんなことを話したか明確にするため、議事録として残します。何も話さない選手に対しては、「テーマに対して自分は何を考えたのか、みんなに伝えなければいけない。"みんなに合わせるよ"といった発言は貢献ではない」と問いかけるそうです。■上下関係ではなく、一人の人間として向き合いたいこうした取り組みを始めたきっかけの一つが、海外遠征です。海外の選手はコーチとフランクな関係であることに驚いたと振り返ります。コミュニケーションの量が日本とは比べ物にならないくらい多く、冗談も飛ばし合う関係性が選手の成長に繋がると考えるようになりました。選手との対話を大事にする榎本監督(C)森田将義「僕らがもっと選手に寄っていかなければいけない」と話す榎本監督は、こう続けます。「指導者と選手ではなく一人の人間として向き合いたい。卒業生を見ていると、自分より立派な人間はたくさんいる。彼らに対して立派なことばかり言っているけど、自分の方が出来ていないなって思うことがたくさんある。人間力の差に年齢差はない。僕らも学ばせて貰っている。大人と子どもが切磋琢磨しながら成長していけるのが、これからの教育の理想かなと思うんです」今年から立ち上がった下部組織であるクラブ・ドラゴンズ柏U‐12の稲垣雄也監督との関係性も榎本監督らしさを感じます。稲垣監督は榎本監督が流経大柏で指導を始めた初年度の選手ですが、「教え子なのに、そんなこと言うの?と思う時がある」と榎本監督が笑うくらい関係性はフレンドリー。「上っ面で褒めてくれるだけでなくて、悪いことまで指摘してくれる人とは人間関係が良好になっていくと思うんです。イナも僕の悪い所があれば、ちゃんと指摘してくれるから大事な存在です。『この人、凄くきっちりしているけど、裏ではどうなんだろう?』ではなく、『榎本は表裏がなく、ずっとあのままだよ』と思われる方が、人間関係ができていくと思います」■不貞腐れるなら、意見して欲しい選手との関係性も変わりません。「コーチと選手の関係になると"はい"か"いいえ"しかなくなる。不満な顔を見せる選手もいるけど、不貞腐れているくらいなら『僕はこう思っています!』と言えば良いんです。それに対してうるさいとは思いません」そうした考え方は挨拶にも反映されています。日本の部活動では選手が誰かとすれ違うと足を止め深々と挨拶をするのが美徳とされています。「形だけになっている事もあるので、本当にそれで良いのかと疑問に思う。大人の方から、『こんにちは』と声を掛ければ、子どもたちが凄いなと思い、見習うかもしれない」と考える榎本監督は自ら進んで生徒に挨拶をします。こうした新たな取り組みによって進んで自らの意見を発信できる選手が増え始め、練習の活気が溢れています。また、ピッチ外でも選手主体の取り組みも始まりました。ミーティングの機会を増やそうとしても、コロナ禍で話し合う時間を長くはとれないため、話せる選手は限られてきます。思ったことを口にできない選手が多いと感じたことから、背番号順で日誌を書き始めたのです。まだ書く内容は大人からすれば物足りないかもしれません。書き忘れる選手もいますが、流経柏の取り組みは選手が成長していくためのステップとして今後の人生に活きてくるはずです。後編では、今年から立ち上がった下部組織であるクラブ・ドラゴンズ柏U-12の稲垣雄也監督に指導する中で感じる保護者の変化と、育成の理念などを伺いましたのでお楽しみに。
2021年04月12日この春からお子さんがサッカーを始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。サッカーを通して身に着けてほしいものは何ですか?運動能力をアップさせることだけでなく、心も成長させてくれるサッカー。サッカーを通じて子どもがどう変わっていくか。前回に引き続き、シンキングサッカースクールのコーチたちに聞きました。サッカーをすることで身につくは自分で考える力、チャレンジする精神、それ以外にも社会に出るまでに身に着けたいスキルがたくさんあります。ぜひご覧ください。(取材・文:前田陽子)サッカーで身につくこととは(写真は少年サッカーのイメージ)<<前編:サッカーを通じて「自分で考えて動く力」が身につく理由とは?■チャレンジする力がつく親御さんが子どもに求めることのひとつにチャレンジ精神があります。菊池コーチは「サッカーはミスが多いスポーツで、ミスが起こるのはチャレンジをしているから。そして、ひとつひとつのミスにその都度落ち込んでいては練習や試合は進まないので、すぐに気持ちを立て直して次のチャレンジをする必要があります。チャレンジを続けることで得られる成功体験が次のチャレンジにつながります」とサッカーは常にチャレンジの連続であることを教えてくれました。プレイをすることは=たくさんのチャレンジをすること。そして成功をして、褒められる・認められるという経験をすると、授業などでも手を上げて発言ができる子になれるはずです。■周囲に気配りができるようになるまた、サッカーはボールのあるところ以上に、ボールを持っていない人の動きが重要です。自分がボールを持っている選手の守備をしているなら、その選手に注目しながら、反対側にいる相手選手とチームメイトの動きも考えなければなりません。彼らが何を考えどんな動きをしようとしているのかを想像することがいいプレイにつながります。「ピッチ上で日々、チームメイトや相手選手が何をしようとしているのか、何をしたいのかを考えるようになると、ビッチの外でもお友だちの思いを想像することができるようになります。それによってどう声をかけよう、どう動いてあげようという気配りが生まれます」と柏瀬コーチが子どもたちの変化を明かしてくれました。■負けず嫌いになって集中力も高まる近頃の学校生活では平等が基本で勝ち負けのシチュエーションは多くありません。けれどスポーツには勝ち負けがあり、勝ちたい、負けたくないという気持ちが自然と芽生えてきます。「大人の世界には順位があります。子どものころからサッカーを通じて勝ち負けを経験することは、いずれ必ずためになります。また、勝つためや上達のためには目標を立てる必要があります。目標に向かって何かを取り組むときの子どもの集中力や爆発力には本当にすごいもの。普通ではちょっと無理だろうと思えるほどの力が発揮されます」と菊池コーチ。普段家庭では見せない顔を、ピッチ上では見せてくれることをコーチたちは知っています。■自分の意見が言え、話の折り合いをつける力がつくまた、チームスポーツでは、自分の気持ちや意見を伝える必要があります。話し合いができるようになるには、自分に自信がつくことが必要。チャレンジをして、成功体験を積むと自分を表現できるようになります。プレイ中には、引っ張ったり、押したりという小さなトラブルもよく起きます。点を取り合うスポーツなので、理不尽と感じる場面もないとは言えません。ピッチ上にはコーチも監督もいないので、そこを話し合うのも子どもたちです。さまざまなシチュエーションを経験することで、話し合いができるようになり、折り合いの付け方がわかるようになります。サッカーはチームメイトとの話し合いを通じて、考えて意見を言う力が付きます(写真は少年サッカーのイメージ)■学校外の友達ができるスクールなどに入ることの利点として、学校とは違うコミュニティのお友だちができることもひとつです。「多少、学校でイヤなことがあってもスクールに行くことで気分転換ができたり、悩みの相談ができたりします。居心地がいいことばかりではないかもしれませんが、いろいろな価値観、いろいろな立場の人と知り合えるのは、社会に出る前の経験としてとても素晴らしいことだと思います」と菊池コーチ。■自分の意見が言え、話の折り合いをつける力がつくさらに、スポーツにはルールがあり、守ることが大原則。ルールの大切さが理解できるようになると、生活面でもルールが守れるようになります。また、あいさつをする機会も増え、自然とあいさつも出来るようになります。「子どもたちは大好きなサッカーをするために時間をどのように使うのがいいのかを考えて、実行していますね。スクールでは練習前に宿題をする子もたくさんいます。高学年になるころには、どう1日を過ごすと快適なのかを考えて、時間をコントロールする子も多いです」と菊池コーチがスクール生の様子を教えてくれました。サッカーにはプレイを通じて子どもが成長できる要素がたくさんあります。そのベースは子どもたちがサッカーを楽しむこと。そのためにコーチたちも日々切磋琢磨しています。スクール生の親御さんからは「子どもたちの扱いがとてもうまくて安心して通わせられます」という嬉しいご意見もたくさんいただいています。そんなコーチたちの元でサッカーをはじめてみませんか?考える力が身につくサッカースクール「シシンキングサッカースクール」の詳細はこちら
2021年04月09日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「足元のボールにばかり集中してしまい、周りを見るなど複数のことが同時にできない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。試合の中では立ち止まったままパスをすることはありません。動きの中で周囲の状況を確認しながらドリブルしたり、パスを出さなければなりません。 しかし、サッカーを始めたばかりの初心者は足元のボールのコントロールに集中してしまい、複数の動作を同時に行うことがなかなかできません。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合中のなかで常に動きながら周囲を確認したりパスを出すなど、複数の動きが同時にできるようになります。親は難しい動きは一切ありません。親は手でボールを転がすだけ。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.子どもがボールを2つもち、親子で離れて立つ2.1つのボールを手でパス3.もう一つのボールは足でパス4.親は2つのボールを交互にキャッチし、ボールを返す5.慣れてきたら子どもの足元にボールを返す時にバウンドさせて返す6.できるようになったらパスのスピードを上げるなどして難易度を上げる【ポイント】・親は最初はゴロのボールを返す(転がす)・足元でボールをコントロールして親にパスを出す・姿勢を良くし、顔を下げない・2つのボールを視界にとらえる・親は子どもの蹴るタイミングに合わせてボールを返す・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年04月08日この春からお子さんがサッカーを始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。数あるスポーツの中からサッカーを選んだ理由は何でしょう。サッカーを通して身に着けてほしいものは?それらはご家庭ごとに違うかもしれません。運動能力をアップさせることだけでなく、心も成長させてくれるサッカー。サッカーを通じて子どもがどう変わっていくかを、日々子どもたちと触れ合っているシンキングサッカースクールのコーチたちに聞きました。楽しんでプレーしたりチーム活動をするなかで体力やコミュニケーション力など、様々な力が自然と身に付くサッカーの魅力を存分にお伝えします。お子さんのサポートに役立ててください。(取材・文:前田陽子)サッカーで身につくこととは(写真は少年サッカーのイメージ)■楽しく身体を動かしながら運動能力が高まる子どもにとってのスポーツの魅力は「身体を動かすことの楽しさや勝つことの喜びなど、スポーツの楽しさが体験できること」とコーチたちは口を揃えます。その中でも「サッカーはボールひとつがあればできるスポーツ。バスケットボールのように手でボールをつくのは子どもには難しく、野球は複雑なルールがありますが、サッカーはボールが蹴れればOKというシンプルさです。遊びの延長のようにできるので、子どもの最初のスポーツにぴったりです」と黒滝コーチは言います。加えて、サッカーは身体全てを使うスポーツで、前後にはもちろん、横にも斜めにも走り、ジャンプもして、スローインでは手も使います。ボールを蹴りながら走ることを筆頭に、バックステップを踏んだり、相手を追いかけたりという非日常の動きの連続。その動きを続けることで、五感で察知したものを判断して筋肉を動かす過程をスムーズに行う、コーディネーション能力も身に付きます。■ボール遊びもままならない現代だからこそまた、暑くても寒くても一年中行うのもサッカーの特徴。持続的に運動するので自然と体力がつき、風邪などを引きにくくなります。近所の公園では遊具も限定され、ボール遊びもままなりません。スクールに入ればコーチたち大人が見守っているという安心安全な環境も得られます。外で遊ぶ時間が減っている現代だからこそ、オンラインではなく実際に人と会って一緒に運動することで得るものがたくさんあるはずです。■「ごめん」「ありがとう」が言える子になる、周りを思いやる力がつくサッカーは圧倒的にミスの多いスポーツで、誰かに補ってもらったり、誰かを助けたりしなければ成り立たちません。常にチームメイトはもちろん、対戦相手のことを考えてプレイしなければならないので、最初はひとりよがりのプレイばかりでも続けているうちに協調性が身に付きます。また、自分も仲間もミスをすることが当然なので、ありがとう、ごめんねが自然と言えるように。自分を反省して、感謝する心が育つのです。そういったことを重ねてチームメイトや周囲の人を思いやれる子になります。■常に状況が変化するスポーツだから、自分で考えて判断する力がつくサッカーは、野球のようにセットポジションに入るという場面がなく、プレイが切れるタイミングがありません。ピッチにいる間は常に状況が変化し、その場面場面で瞬時に最善の判断をしなければなりません。助言を求める時間はないので、ドリブルをするのかパスをするのか、右に行くのか左に行くのかなどを自分で判断することを繰り返し行います。「日常生活でも、朝と昼、昼と夜では状況も変わります。いつも同じ判断でいいという場面は滅多にありません。状況を判断してどうすればいいのかを常に考え、最善だと思う判断ができるようになりたいですよね。サッカーをすることで、判断力、決断力、そして行動力が身に付きますよ」と柏瀬コーチが普段の生活での変化を教えてくれました。サッカーは常に自分で考えて動くスポーツ(写真は少年サッカーのイメージ)大人になるにつれ、自分で考えて行動できることの大切さを実感する保護者の方も多いと思います。それらは、ある年齢に達したらいきなり身につくものではありません。子どもの頃から徐々に身に着けさせることが必要です。プレーが途切れず常に自分で考える事が習慣化されるサッカーを通じて、自分で決めて行動できるようになるのです。そして、ミスのスポーツなので仲間にフォローしてもらう場面も多いため、自然と「ごめん」「ありがとう」が言えるようになり、相手を思いやることができるようになります。学校でも社会でも活きる力をつけることができるスポーツなのです。お子さんの「楽しい」を応援しながら、人間的な成長をサポートしてあげる参考にしてください。考える力が身につくサッカースクール「シシンキングサッカースクール」の詳細はこちら
2021年04月07日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「動いている相手に上手くパスできない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。ボールを止める、蹴る、はサッカーの基本中の基本の一つ。試合の中では立ち止まったままパスをすることはありません。状況に応じて常に動いています。 しかし、サッカーを始めたばかりの初心者には動いている味方にパスをする動作は難しいもの。いつ、どの辺に蹴ればいいのか予想してボールを蹴ることがなかなかできません。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、「いつ、どこにパスを出せばいいのか」が分かるようになり、試合中のなかで常に動いている味方にパスを出すことができるようになります。親は難しい動きは一切ありません。動画では足を使っていますが、手でキャッチしても大丈夫です。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.3~5m四方に4色の目印を置く2.親は色を指定してその目印に向かって移動3.子どもは親に向かってパス4.親はボールを返し、ほかの目印に移動5.子どもは親がいた目印をドリブルで回り、再び親にパス6.慣れてきたら親は色を言わずに動き、子どもはそれを見てパス7.それができるようになったら、親は動きに緩急をつけてどこに行くかわからないようにするなど難易度を上げる【ポイント】・親の動くスピードをよく見る・親が動くスピードに合わせてパスの強弱を変える・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年04月06日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「浮き球のトラップでバランスを崩してパスできない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。ボールを止める、蹴る、はサッカーの基本中の基本の一つ。試合の中ではグラウンダーのパスばかりではありません。状況によって浮き球のパスが来ることも多々あります。そして、相手がボールを奪いに来ていたり、味方がチャンスならそのままパスを出すこともあります。しかし、サッカーを始めたばかりの初心者には浮き球で飛んできたボールをうまくトラップして足元に落とし、味方にパスをする動作は難しいもの。体のバランスを崩してしまうことも多いです。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合中のなかで試合中のなかで浮き球が飛んできてもバランスを崩さずにトラップして味方にパスを出すことができるようになります。親は難しい動きは一切ありません。手でボールを投げるだけ。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち、少し離れて立つ2.子どもは片足を上げてバランスをとる3.親は、上げている方の足にボールを投げる4.子どもはダイレクトでボールを返す5.慣れたらボールを一度タッチして、コントロールしてから返す6.慣れて来たら親は逃げるスピードを上げ、ボールも避けるなど難易度を上げる【ポイント】・身体をひもでつられているようなイメージで立つ・ボールをよく見る・腕や体全体を使ってバランスをとる・慣れてきたら腿や胸なども使ってコントロール・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年04月05日今社会が求めているのは、変化の激しい社会を生き抜く力を持つ"自立した子"。ということは親御さん達も体感しているのではないでしょうか。平成29・30年に学習指導要領が改訂され、「生きる力~学びの、その先へ~」というリーフレットが学校などで配布されましたよね。子どもがもらってきた、というご家庭も多いのでは。サカイク読者の多くの親御さんも、「子どもにはちゃんと年齢なりに自立していってほしい」と願っていらっしゃいます。自立とは、自分のことを自分でできるのはもちろん、自分がやりたいことを自分で見つけ、それを実現するために試行錯誤しながら探求できることです。そんな自立した子にするためには、親のサポートが必要不可欠。どんなサポートができるのかを、親子向けのサッカー教室や外遊び教室を実施しているkid’s dream プロジェクトの西脇和治さんに聞きました。(取材・文:前田陽子)外遊び経験が少ない現代の子どもたち■「自由にしていいよ」と言われると思考がフリーズする現代の子どもたちひと昔前の子どもたちは、近所の公園でかくれんぼや鬼ごっこ、木登りなどを子どもたちだけで遊んでいました。親御さんたちも子ども時代にそのような遊びをしたことがあるのではないでしょうか。その中で熱中したり、喜んだり、ケガという失敗をたくさんしながら、体力や創造性、判断力、社会性を育くんできたものです。ですが、現代の子どもたちはゲームなど室内で遊びが中心で、外で走り回る時間はぐっと減っています。未就学児の時点で保護者が「うちの子、体力ないな」と気づくことも少なくないのだとか。自宅のみならず、幼稚園や保育園で他の子とのかかわりをみて気づくパターンもあるようですが、体力以外に遊び方にも課題があるようです。「今の子どもたちはまず体力がないです。保育園や幼稚園の園庭での遊び方も画一的。提案された遊び方は上手にできるけれど、自分で遊び方を考えるということをしたことがないんですよね」と西脇さんは現在の子どもたちの様子をこう話します。例えば、いくつかの輪っかで遊ぶ時。順番に輪っかを飛んでいこう、と言われたことは楽しんでできます。けれど、輪っかを使って自由に遊んでいいよ、となると身体が止まってしまう。この輪っかは片足で、こちらは両足でジャンプしようなどと、遊び方を想像することができません。「未就学の子もびっくりするほどたくさん習い事をしています。どこかに行って教えてもらう、こういう風にやるという道順があってやることばかりです。なので、自由に好きなことをやる経験がない。大人の水先案内がないと遊べない原因でしょう」と西脇さん。まして親世代も豊かで便利な時代に生まれ、ものごとには決まった手順やマニュアルがあるのが当たり前、言われたことをやるのが良いとされる環境で育ってきたので、「自由に」と言われてどんなことができるか、わが子に教えられなかったりするのだとか。なのでついわが子にも方法などを示して、その通りに動かそうとしてしまいますが、大人が先導をする「教える」ことをちょっと減らすことで、子どもが自ら考えるようになるのではないでしょうか。■昔と今では子どもを取り巻く環境がこんなに違う先述したように、昔と今では子どもたちの外遊びや様々な環境が異なっています。日本サッカー協会のキッズプログラムのハンドブックによるとU-6年代では下記のような違いがあるとされています。外遊び【昔】鬼ごっこ、木登り等の外遊びが中心。グループ(年齢、性別の違った仲間)遊びの中で喜び、熱中、成功、失敗が原動力となって、からだ、精神、創造性、判断力、社会性が育てられました。大人の出る幕はありませんでした。【今】テレビ、ビデオ、コンピュータゲーム等の室内でかつ少人数(同性、同年齢)での遊びが台頭。リセットして何度も繰り返すことのできるゲームには悔しさや痛みを感じる場面がありません。時間や内容も大人がコントロールしなければなりません。強制されない自由なスポーツの減少【昔】こどもたちが空き地や広場でボールを蹴ったり野球をしたりしていました。そこでは強制されることなくのびのびと自由にスポーツを楽しんでいました。【今】空き地や広場の減少と、交通事情の変化にともなって、自由な遊びの延長であるスポーツからクラブでプログラム化されたスポーツに変わってきました。他人への無関心【昔】社会的意識が高く、年代を超えた交流やつながりがありました。学校の先生も責任持って、こどもに厳しく規律やモラルを指導する環境がありました。【今】(諸事情がありますが)注意したり、叱ったりする人が特別視され、他人のこどもに無関心な大人が増えてきました。規律やモラルを指導する場が減り、学校の先生も厳しく接することが難しくなってきました。家庭環境の変化しつけの低下【昔】兄弟も多く、縦の組織がはっきりした大家族でした。全員での食事の機会を通じて、家庭内でも日常的に競争や協調が必要とされていました。また親の責任やこどもに対する要求も多く求められていました。【今】少子化によって、兄弟が少なく、個室が与えられる等、家族の間での刺激が少なくなりました。一人のこどもに対する親の期待が大きかったり、自分の基準でこどもに接するため過保護になったり、逆に放任になってしまうケースも出てきました。子どもを取り巻く環境の変化(出典:JFAキッズ(U-6)ハンドブック)■結果や成果の評価ではなく、やろうとしたことを褒める西脇さんが主催する親子プロジェクトでは、最初に親子で遊ぶ時間を設けています。キッズプロジェクトでは親子で遊ぶ時間を設けています親御さんには遊ぶ間、次の言葉や行動は無しでと約束してもらうのだそうです。・批判する・責める・文句を言う・がみがみ言う・脅す・罰する・目先のほうびで釣るそのようにすると、親はじっとわが子を見る時間が増えます。子どもが何かに挑戦しようとしているところを親が見つけ、挑戦した姿勢を認めてあげると子どもたちがどれだけいい顔をするかを見ることができるからだそうです。と同時に、普段どれだけ「やりなさい」などの指示命令が多く、子どもたちがやろうとしているところを見つけていないのかもわかるのだとか。講習で言われるだけではぼんやりとしか理解しませんが、目の前でわが子が良い顔、嬉しそうな顔をする瞬間を見る体験をすることで大きな気づきになるそうです。■やる前から「無理」「やらない」という理由親をはじめ、先生やコーチたちも「できたね~」「あ~、○○が出来たらよかったのに」など結果や成果、順位で判断することが多いため、子どもは目の前の課題を見て出来そうじゃないと感じると自分から「やらない」「挑戦しない」という選択をしてしまうのだそうです。また、大人の手が足りすぎていると失敗を恐れることが多いのだとも。わが子に頑張ってほしい、挑戦してほしいと思っているのに、声かけで挑戦する意欲を削いでしまっている、それどころか挑戦が怖いと思わせているのは非常に残念なことですよね。大切なのは結果ではなく、やろうとする過程です。やろうとする素振り、やろうかなという言葉を聞いたら「いいところに気が付いたね」とやろうとしていることを褒めると良いと西脇さんは言います。そして思い切って取り組んだら、結果はどうあれ「ナイストライ」「ナイスチャレンジ」と声かけをしてあげて、と語ります。そういった事を繰り返し子どもの背中を押してあげることで、それまで無理と言っていた子がびっくりするぐらいチャレンジするようになるのだそうです。親御さんはわが子の不安を取り除いて、安心してチャレンジできるようにしてあげてください。さらに親御さんへも西脇さんからの提案をいただきました。「親御さんにも自分が親として頑張っていることを誰かに認められたい、褒められたいという欲求がありますよね。親も初めて親をしているので、これでいいのかという不安を持っているのは当然のこと。大人になると、『頑張っているね、それでいいんだよ』と他者から言ってもらう機会はなかなかないので、ご友人間や夫婦間で言い合ってみるのも良いと思います」。夫婦は横並びでテレビを見たり、食卓でも並んで座ることが多いですよね。時には目を見て正面に座って、お互いを褒める時間を作ってみてはいかがでしょうか。■「遊びに行く」のはモールや名前のついている施設に行くことではないこれまでの活動でたくさんの親子に接してきた西脇さんは、最近の保護者の傾向をこう語ります。「親子で遊びに行くことを、子どもをどこかに連れて行くことだと思っている親が多いです」これには「確かに」と感じた方もいるのでは。「遊びに行く」と言うと、どこかの施設、名称のついている場所に行くことだと考える方は少なくない世代ですよね。テーマパークに行くことも悪くはないですが、子どもたちが求めているのはそれより手を繋いで歩いてくれること。自分の方を見てくれることの方が大事です。お出かけも素敵な思い出ですが、「遊ぶ」のはその辺の自然でもできる親子の触れ合いです。また、公園に出かけて親がシートに座ったままは子どもだけ「遊んできなさい」というのは良くない、と西脇さん。子どもの年齢にもよりますが、公園では手を繋いで歩くなど親子の触れ合いをたくさんした方が良いと言います。子どもは親と手を繋いでいることで安心感が満たされ、そうすると興味が変わって急に手を放して走って行くことも。安心することで、他方に興味がわいてそこに向かうことができる、この繰り返しがとても大事なのだそうです。その中で感性の元となる五感が刺激を受けて、次の第六感になるインスピレーションや創造性に広がって行きます。■協調性や思いやりを育むためには親子のかかわりが大事子どもが失敗しても怖くない環境を作ってあげることが大事そして子どもが「あのね」と話し出したら、遊ぶことや家事などから手を止めて話を聞いてあげて「そう思ったんだね」と受け止めることが大事だと言います。忙しい中毎回そんなの無理、という親御さんもいると思いますが、できるだけ子どもの話しに耳を傾け、しっかり聞いている態度を示してあげてください。協調性や思いやりは親子の関わりが多く子どもの心が満たされれば自然と育まれるもので、そのために親がストレスを抱えては良くないと西脇さんは指摘します。親がストレスをためると、子どもの些細な事が気になってガミガミ言ってしまったりと、しわ寄せが子どもにいってしまうことがあるので、周囲の人に協力を求め、親も積極的に気分転換をしてほしいとアドバイスを送ります。ストレスを軽減して子どもと1対1で向かい合う時間を作ることが大切です。子どもが一歩踏み出すためには、子どもと向き合い、十分に安心させてあげること、失敗することが怖くない安心環境を作ってあげることが大事です。甲斐甲斐しく子どもの面倒を見る親が「良い親」と見なされる風潮もあるようですが、いつまでも親が子どもの世話をし続けますか?いつまでも親が世話をし続けるより、徐々に自立してくれた方が、親も自分の時間を作れたりして楽になるのです。わが子を成長させたいなら、子どものやる気を見つけてたくさん「ナイストライ」「ナイスチャレンジ」と声をかけてあげてください。西脇和治(にしわき・かずはる)一般社団法人エルソル / Elsol y TresTesoro代表社会において、自主自立した人間となれるよう支援、向上心を持って「考動する」人づくりなどのコンセプトを掲げ、ジュニア、ジュニアユースのクラブ運営、未就学児~小学生対象のスクール運営、親子の外遊び教室や保護者・指導者向け講演会を行うKid’s dreamプロジェクトなどの活動をしている。一般社団法人エルソル・エルソルKids dream プロジェクトJr、JrユースサッカークラブElsol y TresTesoro
2021年04月02日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「動きながらボールを止める、蹴るができない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。ボールを止める、蹴る、はサッカーの基本中の基本の一つ。試合の中では立ち止まったままパスを受けたり、パスを出すような場面はありません。常に動きながらの動作になりますが、サッカーを始めたばかりの初心者には動きながらボールを止める、蹴る動作は難しいもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合中に動きながらボールを止めること、蹴ることができるようになります。親は難しい動きは一切ありません。動画では足を使っていますが、手でボールを転がしてもOKです。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.子がボールを持ち、少し離れて立つ2.子どもはドリブルをしながら親にパスを出す3.親はそのボールを蹴り返すか、手で転がして返す4.慣れて来たら親がボールタッチの回数を指定する5.それができるようになったら、ボールタッチする足も指定するなど難易度を上げる【ポイント】・ボールを見ながら動く・身体の近くでボールをコントロールする・蹴る時は自分の身体の少し前にボールを置く・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年03月31日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「狙ったところにパスが出せない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。パスはサッカーの基本スキルの一つ。味方に正確に届けるためには狙ったところに蹴れるようにならなければなりませんが、初心者のうちはなかなかうまくできないもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合中に狙ったところにパスできるようになります。親は難しい動きは一切ありません。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.子がボールを持ち、少し離れて立つ2.2人の中間に1~2m離して目印を置く3.子どもは目印の間を通してパスを出す、親はそのボールを蹴り返す4.慣れて来たら子どもはインサイドを使ってやってみる5.それもできるようになったら、距離を遠くしたり、ボールを止めてすぐに蹴るなど試合の状況に近づけてやってみる【ポイント】・軸足を相手に向ける・インサイドキックの際は、蹴る方の足首を固定し外側に向ける・蹴る瞬間はボールをよく見る・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年03月30日サッカー経験者であることを知るチームの保護者から、少年団の練習とは別に定期的な自主トレを頼まれた。監督がサッカー経験がなく、具体的なコーチングがないことなどで親たちからの信頼を失いかけているようで、自分が行う自主トレに保護者が求める要素がどんどん増えている。子どもたちが大会で結果を残していることもあって親たちの「もっとちゃんと教えてほしい」という要求が高まっている状態だが、ただのお父さんコーチがどこまで関わっていい?とご相談をいただきました。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、お父さんコーチの悩みにアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<楽しい指導より厳しい指導が良いのでは。という保護者を説得する方法は?<お父さんコーチからの質問>春から小学2年の息子がいるお父さんコーチです。少年団のコーチではありません。息子が入団するとき、私がサッカー経験者であることを知る保護者の方々から、少年団練習とは別に、週2回の定期的な自主トレを行って欲しいと依頼を受け、試合のない週末に限り自主トレコーチをしています。私は、自主トレの内容が少年団で指導されるものと違うと、子ども達のプレーに迷いが生じたり、少年団コーチにご迷惑がかかっては本末転倒であると思い、あくまでも基礎的なトレーニングに留めて行っています。しかし、少年団のコーチはサッカー経験の無いご年配コーチで、試合中に具体的なコーチングもなく、普段の練習中も子ども達を野放しにしてご自身は居眠りをされたりと、保護者からの信用を失いかけています。そうしたこともあって、私が行う自主トレに保護者が求める要素が段々と多くなってきて、私もどこまで子ども達と関わって良いか悩んでいます。監督との関係性が悪いわけではありませんが、保護者の不満を監督へ相談するというのもなかなか難しいです。子ども達は、昨夏の地区サッカー大会で優勝、今冬の地区フットサル大会でも準優勝と、今は結果が全てではないのかも知れませんが結果を残していることもあって「もっとちゃんと教えてほしい」と保護者の期待も高まり、少年団に対するフラストレーションもあるようです。このような状況で私自身どこまで関わって良いものか、自主トレで行えるメニューなどとあわせましてご指導いただきたく思います。 どうか宜しくお願い致します。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。つまり、メインコーチのうかがい知れないところで、秘密の練習をしているということですね。結果が出たこともあって、保護者も「もっと練習して」と要求しているようですが、小学2年生からこのように期待して練習をたくさんさせるという状況がいいとは私は思えません。■クラブに預けたのならコーチに任せた方がいい結論から言いましょう。保護者に、チーム練習外のトレーニングを頼まれても、引き受けないほうがいいでしょう。そのクラブに預けたのだから、そこにいるコーチに任せたほうがいい。もし、保護者が担当コーチに不満を感じているのなら、話し合えばいいことです。もし、みんなでコーチに話したけど、その方自身が変わらないときは、その時点で親子で判断すればいいのではないでしょうか。例えば、移籍を考えた場合、近くに良いクラブがないという話は少なくありませんが、サッカーができる環境は間違いなくあるはずです。■自分たちで考えることで選手としての引き出しが広がる私が京都サンガに在籍しているとき、バドゥー監督がある時「ちょっと用があって30分ほど抜けるから、ちょっと見てて」とほかのコーチに指導を委ねることがありました。すると、ほかのコーチは「監督の指導方法もわからないのに、どうしたらいいんですか?」と戸惑うわけです。すると、彼は「いや、ただサッカーをすればいいんだよ」と涼しい顔で答えていました。任せたコーチがバドゥーと違うことを言ったとしても、そこで判断するのは選手です。選手からすると、監督と違うことを言われたら、そこに疑問も生まれますが、同時にそこに考える機会も生まれます。そして、そういうことは、彼らのそこから先のサッカーキャリアの中では起こりがちです。「監督はこう言ってる」「ヘッドコーチはこう言ってる」では、僕たちはどうする?そのような経路をたどることで、選手の引き出しは広がります。そう考えると、バドゥーの態度は何ら間違ったものではありません。「なんでもいいよ。サッカーやってくれれば」という言葉の裏には、「サッカーのトレーニングはどんなことをしようが、同じサッカーだ」という本質ともいえる考えがあるわけです。■自主練はコーチのいる状態でやるものなのか少年サッカーでは、いいコーチがいれば、これは受け入れ難いぞと思える指導者もいて、いろんなことに出くわします。したがって、お子さんが「ここでいい」「ここでサッカーするよ」と自分で決めて、楽しんでいるようなら、それでいいと私は考えます。そもそも、自主練は、みんなで集まって決まった時間と決まった場所で、しかもコーチがいる状態でやるものでしょうか。子どもたちに「勝手にやっておいで。やってもやらなくてもいいよ」と言って、自由にさせてあげてほしいと私は思います。■自主練することや他の子よりうまくなることより大事なことこの連載の相談にも「うちの子が自主練しないのですが、どうすればいいですか?」という質問が多いです。子どもが自主練をしないのは、サッカー以外に他にやりたいことがある、ということです。そんな生き方している子どものほうが私は素晴らしいと感じます。日本の教育は「相対評価」で、そこにいる他の子どもたちよりもうまくなると、親御さんは満足します。コーチはその地域の他のチームの子どもよりうまくなれば安心します。小さな枠の中の競争に、どんな意味があるのか。そこをぜひ一度、みなさんで考えてみてください。「みんなよりうまくなって」「他のチームより強くなって」よりも、子どもたちが自分で選んで、自分の時間をプロデュースする。そんな主体性を身につけて、サッカー以外のいろんなことを吸収していくことが大切です。■子どもたちが選ぶことが大事、大人たちも今の状況が不満なら話し合うこともうひとつ、日本のあまり良くない習慣に「一筋主義」があります。一度始めたスポーツは、最後までやり通せ。一度入ったチームで最後まで頑張れ――。どちらも、今の大人が子どものときの価値観であり、大人からの指示命令です。そうではなく、子どもが選ぶことが重要です。例えば、相談者様のチームのコーチについても、さまざまな見方ができます。「普段は居眠りしている」とありますが、逆に子どもは自由にサッカーができていいのではないか?とも受け取れます。怒鳴られたり、教え込まれるよりはずっといいと思いますが、いかがでしょうか。そのあたりもぜひ話し合ってみてください。■8歳前後は楽しく試合できればいい。自主練はやりすぎもうひとつ。「子ども達は、昨夏の地区サッカー大会で優勝、今冬の地区フットサル大会でも準優勝と、今は結果が全てではないのかも知れませんが結果を残している」と書かれています。しかしながら、この結果が自主練あってのものなのか。その効果かどうかは証明できません。年配のコーチの方は実は子どもたちの理解がよくて、ひょっとすると、とてもいいものを持っておられるかもしれません。ご相談文だけではわかりづらいのですが、そもそも8歳前後の年代は、楽しく試合をしていればいい時代です。自主練はやりすぎな気がします。私は、サカイクの兄弟サイトである指導者向けサービス「COACH UNITED ACADEMY」でもお話ししているので、よかったら参考にしてください。池上正さんの指導を動画で見る>>次ページ:ドリル的な練習より効果的な指導は......■ドリル的な練習より効果的な指導は......(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)最後に、自主トレで行えるメニューを教えてほしいとのことですが、場所はどのくらいで、人数がある程度わからないと何とも言えないところです。ご相談者様はサッカーの経験者のようなので、子どもと一緒に試合(ミニゲーム)をすればいいかと思います。ドリル的な練習をするよりは、試合の中でどんなところに動くと得なのかを考えてもらうほうが有意義な時間になりそうです。加えて、コーチがわざと強いボールを蹴ったり、強いパス出してあげるなどし、壁になってあげてください。チャレンジという壁ですね。小さいときから縦割りでプレーしている子どもが大人になってすごく上手くなるのは、上級生が壁になってくれるからです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年03月26日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「体を使ってボールをキープできない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。試合では相手チームがボールを奪いに来ます。相手にボールを取られないようにするには、体を使って防御することが大事ですが、初心者のうちはなかなかうまくできないもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、体を使ってボールをキープできるようになります。親は難しい動きは一切ありません。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち、子どもと離れて立つ2.親がボールを転がし、子どもは足で止める3.親は子どものもとにボールを取りに行く4.子どもは親とボールの間に腕や体を入れ、体を横向き(半身)にしてボールを守る5.慣れて来たら目印を置いてゴールを作り、子どもは取りに来た親からボールを守ってゴールを目指すなど試合で起こる状況に近づける【ポイント】・ボールと親の間に自分の身体を入れてボールを守る・身体を横向き(半身)にする・腕をしっかり使って距離を作る・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年03月26日サッカーをしていて、「もっと速く走りたい」と思ったことのある人は多いのではないでしょうか。足の速さは、正しい走り方のフォームを理解し、コツをおさえることで十分に改善可能です。この記事では速くなりたい人に向けて、そのコツと注意点について解説します。速く走る走り方を知りたい人はぜひ参考にしてみてください。速く走るポイントここでは、速く走るためのポイントについて解説します。速く走る方法の基本的なポイントであるため、ぜひ参考にしてみてください。走るときのフォームを意識する速く走りたい場合、まずは正しいフォームを身につけるところから始めましょう。走る際のフォームを正すだけでもタイムが改善される可能性があります。正しいフォームを身につけるためには、体をまっすぐな状態にすることがポイントです。このまっすぐな状態から体を前傾姿勢にすることで、後ろ足のかかとが浮き走る際に欠かせない反発力が得やすくなります。一方で、首が前に出ている、膝が曲がっているなど、フォームが崩れてしまうと、地面をしっかりと蹴ることができないため、反発力も得にくく、スピードも出にくくなります。足の着地点速く走ろうとすると、足をできるだけ前の方に出そうとするかもしれません。しかし足の着地点が体から離れていると、かかとから接地することになりブレーキがかかってしまうため、加速しにくくなってしまいます。一方で、体よりも後ろに着地点を持ってくることができれば、つま先から接地することになり、体の力をつま先に乗せ加速することができるでしょう。つま先にパワーを集めるイメージで、自分の体よりも後ろ側に接地することを意識してください。腕をしっかりと振る速く走りたい場合、腕をしっかりと振ることが大切です。しっかりとした腕振りは、スムーズな骨盤の動きにつながり、足を効率よく出すことができるようになります。腕を振る時は肩の力を抜き、肘を90度にするのがポイントです。ちなみに、腕を力強く振ろうとするあまり、手をグーにして力んでしまう人もいます。力みは姿勢に影響を与え、加速しにくくなってしまうため、手はグーにして握るのではなくではなく開いた状態で走るようにしましょう。速く走るための注意点ここでは、速く走れるようになりたい人に覚えておいてもらいたい注意点について解説します。その場しのぎの対策をしないインターネットで「速く走る方法」と検索すると輪ゴムを使った方法など、一時的に足が速くなる方法が見つかります。確かに学校の授業の短距離走で勝ちたい、といった目的であればこのような方法を試してもいいのかもしれませんが、サッカー選手として足を速くしたいのであれば、その場しのぎの対策はするべきではありません。ちゃんと速くなりたいのであれば、先ほど説明したように正しいフォームを身につける、腕をしっかり振るといったことを普段のトレーニングの中から意識して走るようにしましょう。日常生活の過ごし方に注意速く走るためにはいい姿勢をキープすることが大切ですが、日常生活の中には、姿勢を悪くする要素がいたるところにあるため注意が必要です。例えば、近年では子どもたちがパソコンやスマートフォンを使用ことは特別なことではありません。これらの機器を使用する時、顎が前に出たり、猫背になってしまったりと姿勢が崩れやすくなります。同じように、勉強するときも姿勢が崩れやすくなっています。日常生活の中から姿勢が崩れてしまうと、走るときにも影響が出るため、姿勢が崩れていないか普段から意識しておくようにしましょう。まとめ今回は、速く走るためのポイントについて解説しました。速く走りたい場合、正しいフォームを身につけることが重要です。また、足の着地点に注意すること、腕をしっかりと振ることも走る際のポイントとなります。今回紹介した内容を意識しながら走ってみてください。
2021年03月26日近年、大人だけでなく子どもも、花粉症に悩まされているケースが多いようです。サッカーをするお子さんの場合、山の麓のグラウンドや風の強い河川敷など、花粉が舞っている状況でサッカーをする場面がたくさんあります。そこで今回は、医療法人つばさ会高座渋谷つばさクリニックの武井智昭院長に、花粉症対策について話をうかがいました。後編では、サッカーの場面での対策、日常生活でできる体質改善、近年注目されている、花粉症が治る治療法などについて、話は進んでいきます。(取材・文:鈴木智之)■症状が出たら医師の診断の元、薬を処方してもらうのが一番この記事が公開されているいまは、花粉シーズンの真っ最中。前回の記事でもお伝えしましたが、花粉症対策の一番の方法は、病院に行き、花粉症の薬をもらうことです。武井院長は言います。「飲み薬、点鼻薬、目薬と、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどを軽減する薬を服用することで、症状をある程度、抑えることができます。花粉症で咳が出ることもあるので、その場合は医療機関を受診して、咳止めを処方してもらうと良いでしょう」■アレルギー症状を抑えるために腸内環境を整えることも大切花粉症はスギやヒノキのアレルギー反応によって起こります。近年、花粉症のほかに、食物アレルギーや気管支喘息など、子どものアレルギーの病気が全体的に増えてきているそうです。「原因として挙げられるのが、食生活の欧米化です。アレルギーの病気や免疫の病気、感染症にも言えることですが、人間の白血球やリンパ球などの免疫に関わる細胞は、多くのものがお腹の中にあります。『腸活』をして、善玉菌が含まれているヨーグルトや食物繊維などを摂ることで、腸内環境を整え、アレルギー症状を抑えることが大切です」『腸活』は腸内環境を整えて、健康な体を手に入れるために行うものです。アレルギー症状を軽減させるためには、脂っこい食事やジャンクフードなどを控えて、7時間以上睡眠をとるといったように、生活習慣を見直し、アレルギーを起こさないための体質にすることが重要なのだそうです。「最近の小学生は食生活の欧米化や、野菜をあまり食べなくなってきているので、摂取する食物繊維が少なくなっています。さらにコロナ禍で外遊びが減り、運動時間の減少も見られます。腹筋の筋力が落ちると排泄機能も低下します。便通が良くなることで腸内環境は改善するので、食物繊維を摂ることと適度な運動を心がけてみてください」■汗の処理にも気をつけよう花粉症に関しては、激しい運動をすることで悪化するおそれがあります。アレルギー症状は、血のめぐりが良くなると発症しやすくなるからです。とくにサッカーなどをして、ぜえぜえと呼吸をすると、その分、花粉をたくさん吸い込むことになります。少年サッカーは山の麓や河川敷のグラウンドなど、花粉が多く舞っているところでプレーすることも多いので、できる限り予防をして臨みたいところです。「サッカーがある日は普段より多めに花粉症の薬を飲んだり、頻繁に目薬をさすと良いでしょう。目や鼻を練習の合間に洗浄するのもひとつの方法です。休憩時間に、水のあるところに行って、目を洗い、目薬をさす。鼻うがいをするなどして、花粉を洗い流しましょう。コンタクトレンズをつけている場合は、一度外してから目を洗うようにしましょう」さらに、こう続けます。「気をつけてほしいのが汗の処理です。汗をかくと、タオルなどで拭く時に、顔などを触ってしまい、タオルに花粉が付着し、それを手で触って目や鼻についてしまうことがあります。目のかゆみの原因にもなるので、なるべく顔を触らないように心がけましょう」■アレルギー症状を抑えるためにはクールダウンで体温を下げるのも効果的お子さんのサッカーを観戦する保護者の方も、基本的な対策は同じです。病院で処方された薬を飲む。マスクやメガネをつけて目と鼻をガードする。コンタクトレンズよりもメガネの方が、花粉から目を守ることができます。また、帽子をかぶると、髪の毛に花粉がつくのを防ぐことができるのでおすすめです。「身体の血流が良くなるとアレルギー反応が出やすいので、身体を冷やすのも効果的です。水分を多く摂る、冷たいものを飲むなど、身体を冷やすことを意識してみてください。お風呂は普段どおり入っても大丈夫ですが、できればぬるめの方が良いと思います」と、可能であれば練習後にクールダウンを行って体温を下げることを実施すると良いと教えてくれました。花粉症の都市伝説として「一定量以上の花粉を浴びると、コップから水があふれるように花粉症が発症する」というものがありますが、武井院長によると「医学的見地からは、あまり関係がない」そうです。「3歳、4歳の時点で発症する子もいますし、遺伝的な要素、食生活の変化も影響していると考えられます。アレルギー検査をすると、原因が何かを知ることができますし、保険適応のものは39項目まで調べられるので、アレルギーかな? 花粉症かな? と思ったら早めに検査し、対策をしましょう」■今や花粉症は治る!悩んでいる方は医師に相談を近年、花粉症の治療で注目を集めているのが『舌下免疫療法』です。花粉のオフシーズンから1日1錠、薬を飲み始め、3年ほど続けると8割ほどの人に改善が見られるそうです。「費用的にもそれほど高価ではなく、保険適応です。花粉以外のアレルギー、ダニやハウスダストにも効果があるので、舌下免疫療法を選ぶ人も増えています。5歳以上から、花粉の飛散がない6月から12月に開始します」2月頃からスギ・ヒノキの花粉が飛び始め、夏を経て、秋にはブタクサ、ヨモギの花粉が飛散します。花粉症になると頭がボーッとしたり、集中力が続かないなど、日常生活へ支障が出てしまうので、なるべく早く対処をして、健やかに日々を送ることができるようにしましょう。武井智昭(たけい・ともあき)医師。慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院 にて小児科研修、2005年から平塚共済病院小児科医長として勤務、2020年に「高座渋谷つばさクリニック」院長就任。専門は小児科・内科・アレルギー科。
2021年03月25日サッカーをしていてコーチから「ビルドアップ」という言葉を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか?この記事では、ビルドアップとはどのようなものなのか解説します。また、ビルドアップのポイントついても取り上げているのでぜひ参考にしてみてください。ビルドアップとはビルドアップ(build up)とは、英語で「組み立てる」という意味を持つ言葉であり、サッカーにおいては攻撃の組み立てを意味します。攻撃の組み立ては、相手ゴール前での攻撃のことではなく、自陣後方のゴールキーパーやディフェンダーから中盤、前線へとボールをつなげていきながら行うことだと考えてください。ビルドアップというとパスによる組み立てをイメージするかもしれませんが、パスに限らずドリブルによる攻撃の組み立てもビルドアップの1つと考えられます。ちなみに、似たような言葉に「ビルドアップ走」というものがありますが、こちらは、ランニングの練習方法を指す言葉であり、サッカーとは関係ないため間違えないようにしましょう。ビルドアップの練習ビルドアップの練習方法はさまざまですが、最も簡単に行えるのがボール回しです。ボール回しは相手ディフェンダーがいる状態でボールをキープすることになるため、正確なパスはもちろん体の向きやパスを受ける際のポジショニングなどビルドアップに欠かせない要素を多分に含んでいます。子どもたちにとっても馴染みのある練習メニューなので、取り組みやすいでしょう。ビルドアップのポイントここでは、ビルドアップを行うときの基本的なポイントについて解説します。基本的なポイントですが、参考にしてみてください。正確なパスビルドアップはパスをベースに攻撃を組み立てていくことになるため、正確なパスは欠かせない要素です。パスがずれる、浮く、一か八かのパスをだすといった状態では、相手にボールを奪われるリスクが高まり、かえってカウンターを受けることになるかもしれません。特にビルドアップはゴールキーパーやディフェンスラインから始まるため、自陣ゴール付近のパスミスは失点に直結します。そのため、正確なパスはビルドアップのポイントとなります。ポジショニングビルドアップを行う場合、ボールを受ける選手のポジショニングは非常に大切です。特にポイントとなるのがディフェンスラインです。具体的には、2人センターバックがボールを受けるポジションを取るときはペナルティエリアの幅を目安に開くのがポイントです。これは、センターバック2人が距離を取ることで相手フォワードがプレッシャーをかけにくくなるためです。また、サイドバックがセンターバックよりも高い位置を取れれば、相手の守備網を突破しやすくなるだけでなく、より前方へボールを運びやすくなります。あくまでも目的はゴールを奪うことビルドアップをしていると、どうしてもボールをキープすることばかりを意識してしまいがちです。しかし、ビルドアップの目的はあくまでも攻撃を組み立てゴールを奪うことだということを忘れないでください。相手のプレッシャーがこない後方でボールを回すことがビルドアップではありません。8人制サッカーでのビルドアップ8人制サッカーでもビルドアップを行うときのポイントは11人制と同じです。ただ、8人制サッカーは、11人制サッカー以上に全員が攻守に関わることが求められるため、ディフェンスの選手が前線に上がっていくこともあるでしょう。また、キーパーが高い位置を取りパス回しに加わることができれば、味方を前線に押し上げることができるため、ゴールキーパーも攻撃に関わるという意識を持たせることが大切です。まとめ今回はビルドアップに関して、その意味から行う際のポイントについて解説しました。攻撃の組み立てを意味するビルドアップにおいては、後方の選手から前線の選手まで全員が協力して攻撃を組み立てていきます。ただし、あくまでも目的はゴールを奪うことにあるため、ただのボールキープにならないように注意してください。
2021年03月25日