むかしから家庭教育の大定番であるのが「絵本の読み聞かせ」です。それが子どもの成長に与える効果については、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語科教諭である中島克治先生も手放しで絶賛します。絵本の読み聞かせは、子どもになにをもたらしてくれるのでしょうか。中島先生が「計り知れない」と語るその効果を教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)絵本の読み聞かせが子どもの心を豊かにする日々、進化を続ける子ども向け教材ですが、やはりむかしながらの「絵本の読み聞かせ」は、いまも変わらず最高の教育ツールといえます。お父さん、お母さんに絵本を読んでもらえる時間は、子どもにとってはまさに至福のとき。親子の強い絆を生んでくれるものです。そして、絵本の読み聞かせは子どもの心を成長させてくれます。絵本というものは、言葉の世界とイマジネーションの世界がぴたっとつながっていくものです。言葉によってイマジネーションをつくっていく、あるいは絵で表現されているものを言葉で補っていく。そのプロセスは、幼い子どもの脳にとっていちばん大切なものといっても過言ではありません。それが子どもの心を豊かにしていくのですからね。教育熱心な親であれば、絵本の読み聞かせによって「読解力」を得られるのかという点も気になるでしょう。その疑問に対する答えは、もちろん「YES」です。小学校での国語のテストでは「この場面での登場人物の気持ちを答えなさい」という問題が出されますよね?その問いに解答するために必要なものとはなんでしょうか。それは、「共感力」です。その力を絵本が高めてくれます。たとえば、みなさんにもおなじみのかぐや姫が物語の最後に月に帰っていく場面をイメージしてください。そこでは、かぐや姫もおじいさんもおばあさんも別れを惜しんで悲しんでいます。実際には別れというものの重みが子どもにはまだわからないにしても、自分から切り離された物語の世界として仮想的に別れを感じることができる。それは、ある種、社会的な常識を学んでいるともいえます。子どもはその過程を経て、「どういう世界のどういう状況に置かれた人間がどういう感情を抱くのか」ということを知っていきます。そうやって、共感力が磨かれていくわけです。いまの世界に必要な「思いやりと優しさ」その共感力は、子どもの内面にも大きな影響を与えます。絵本の世界に触れている子どもとそうではない子どもには、「思いやりと優しさ」という点で大きなちがいが出るように思います。もちろん、思いやりと優しさを持つことができるのは、絵本の世界に触れている子どものほうです。いまの世界は弱肉強食とまではいわないまでも、どこか殺伐としたところがあるものです。価値観が単純化していて、「勝つことがいいこと、強いことがいいこと」だと多くの人がとらえています。だからこそ、負けること、弱いことを見下す風潮もどうしても出てくる。そういう世界ですから、弱い子どものなかではどんどん劣等感が膨らむし、そうではない子どもは優越感を持つために差別的になることも多いように感じます。でも、絵本の世界に触れていたとしたらどうでしょうか。絵本は、そもそも作者である大人が「こういう子どもになってほしい」「こういう世界が大事だよ」と考えて、絵と文章で子どもに訴えている内容がほとんどです。そこには、子どもに対する大人の強い願い、思いが込められています。そういう絵本を親が媒介して子どもに触れさせてあげれば、殺伐とした日常生活とは切り離されたところで「心の大切さ」を感じることになり、子どもは自然と思いやりや優しさに重きを置くようになるはずです。そういう子どもなら、たとえ目の前の世界がどれだけ殺伐としていて、タフな者しか勝ち残れないようなものに見えるとしても、その競争からこぼれ落ちること、こぼれ落ちた者にも価値を見出していけるのではないでしょうか。子どもが求める限り読み聞かせをしてあげようさて、絵本の読み聞かせというと、「何歳くらいまでやってあげればいいの?」という疑問を持っている人もいるかもしれません。その答えは、「子どもが聞いてくれるうちはいつまででも」です。子どもはある日突然大人になるわけではありません。ある部分は大人に近づいても、ある部分は子どものままというふうに、凸凹した状態で成長していきます。それは大人になったあとも変わらないのではないでしょうか。誰のなかにも大人の心と子どもの心が共存しています。そして、読み聞かせを求める子どもの心があるうちは、いつまでだって絵本の読み聞かせをしてあげればいいと思うのです。子どもは絵本の読み聞かせを通じて、絵本の内容とは別のものも受け取っています。それはたとえば親が自分のそばのいてくれることだとか、親が自分のために時間を使ってくれている、心を使ってくれているということです。それらの安心できる時間の大切さというのは、小学生になる前の幼い子どもでも、小学生でも変わらないはずです。子どもが求める限り、いつまでだって読み聞かせをしてあげてください。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月26日教育先進国として名高いフィンランド。そのメソッドが優れていることは世界的に有名ですが、実際にどのような教育や政策が実施されているかご存じですか?日本で行なわれている教育との差は、いったい何なのでしょうか?今回は、日本とフィンランドの教育を徹底比較していきましょう。フィンランドの学校教育フィンランドの教育が世界から注目されるようになったのは、1968年に行なわれた大々的な教育改革がきっかけでした。この改革により、フィンランドは「持てる資源のほとんどを教育に投資する」「男女、家族の背景、財力は関係なく、万人に教育の機会を与える」という方針のもと、1972年には初等学校・中等学校を総合学校として統合し、義務教育をこれまでの6年から9年に延長します。この総合学校とは、日本の小学校と中学校にあたるものです。9学年全てが同じ校舎で学ぶ場合と、1~6学年と7~9学年の校舎が分かれている場合があります。総合学校を卒業した後、子どもの約半数は普通高校に進み、大学または応用化学大学への進学を目指します。それ以外の子どもは職業高校へ進み、実際の現場や学校などで職業訓練を受け、職業資格、上級職業資格、専門職業資格という3段階の資格を取得するのだそう。いずれの学校も、卒業までに2~4年かかります。待機児童問題とは無縁なフィンランド日本ではここ数年、保育園不足や待機児童問題が深刻化しています。厚生労働省の調査によると、平成29年度の待機児童数は全国で26,081人。前年比2,528人の増加でした。一方、フィンランドでは保育が必要な全ての子どもに保育施設を24時間確保することが各自治体に義務づけられており、違反した場合は罰則があります。そして、親の就労状況に関係なく、0歳から保育園(日本の保育園・幼稚園に相当)を利用することができるのです。また、総合学校での初等教育が始まる前の1年間は、保育園もしくは学校内でのプレスクール(就学前教育)に通って社会性を育てることが義務教育に含まれています。フィンランドと日本の教育比較日本とフィンランドには、幼児教育や義務教育のシステム以外にも、さまざまな違いがあります。・教育費日本では、認可保育園の場合は保護者の収入に応じた保育料がかかり、高校や大学では学費などの負担があります。しかしフィンランドでは、プレスクールから大学・大学院まで無料で通うことが可能です。総合学校では、教科書や給食も無料。高校では、教科書代の負担はありますが、給食は無料です。家庭の経済状況にかかわらず、学びたい子どもはしっかり学べるという体制が整っているのです。昨今日本で増えている、大学卒業後の奨学金返済が生活を圧迫しているという問題も、フィンランドであれば起こることがなさそうですね。・読書量フィンランドの読書量は世界1位。図書館の数はもちろん、図書館を利用しにくい地域を巡回する移動式図書館の数も多く、国民が図書館利用に熱心であることで知られています。昨今読書離れが指摘されている日本とは対照的ですね。ところで、「読書量が算数の成績を左右する」ことはご存知ですか?「読書量の多い人は国語の成績が良い」というイメージを抱いている方は多いかもしれませんが、「読書量が多いほど算数の偏差値が高い」という研究結果も出ているのです。2016年から2017年にかけてベネッセが行なった調査によると、読書量の多いグループと全く読書をしないグループとでは、読書量の多いグループのほうが全ての科目において成績が良く、中でも算数の偏差値において最も大きな差が開いたのだそう。フィンランドが教育先進国として成績を残している理由には、読書量も関係しているかもしれませんね。・授業や休みの日数フィンランドの年間授業日数は190日程度で、日本よりも40日程度少なくなっています。加えて、夏休みが2ヶ月。さらに、小学生のうちは宿題やテストもほとんどなく、塾もないので、学習時間そのものが他の国と比べて短い傾向にあります。小学生のうちから塾に通うことが当たり前になっている場合も多い日本からすると「そんなに休んで、勉強は大丈夫なの?」と不安になってしまいそうですが、逆に遊びと勉強の切り替えがしっかりとできるようになり、限られた時間で集中して学習に取り組むようになるのです。・PISAテストの結果フィンランドは、経済協力開発機構(OECD)が3年に1回、世界各国の15歳の子どもを対象に実施している「国際学習到達度調査(PISA)」で常に上位となっていましたが、2016年には数学の結果が12位と順位を落としています。一方で日本の数学の成績は5位でした。しかし、フィンランドではこの結果を受けても教育制度の改革をする予定はないそうです。その理由は、フィンランドの教育指針は生徒の勉強時間を多くすること“ではなく”、「学校を楽しくおもしろい場所にすること」だから。順位という数字に一喜一憂することなく、教育の本当の目的をしっかりと見定めているのです。・地域の子育て支援日本では、ワーキングマザーや、子どもがいる共働き家庭に対する理解や支援が、まだまだ充分ではありませんよね。一方、フィンランドのヘルシンキ市には、「レイッキプイスト」という日本の学童保育と子育て支援センターを併せたような施設があります。ここでは、おやつ代のみという格安の料金で放課後の学童保育を利用できるほか、夏休み期間は子どもに無料で昼食を提供するサービスを行なっているそう。このように、社会全体で子育てをする文化があり、子育てと仕事が両立できる体制が整っているのです。フィンランド式教育のメリット日本に比べて授業時間が少なく、休暇を十分に取っているフィンランドの教育ですが、さまざまなメリットがあります。一般財団法人基礎力財団理事長の陰山英男氏いわく、勉強は短時間で済ませたほうが学力が上がるのだそう。小学校高学年では、2時間程度をピークに、3時間、4時間と学習時間が増えるにつれて成績が落ちていったという結果が出ていると言います。反対に、学習時間が短ければ、そのぶん集中して学習することができるようになり、脳が鍛えられていくのだそう。「○分だけ」と時間を決めて行なうことで、毎日続けやすくなる効果もあるため、勉強の習慣も身につきやすくなります。また、自由時間がきちんと確保されていることから、自分の得意分野を見つけたり個性や能力を伸ばしたりする機会につながり、子どもの自己肯定感を伸ばすきっかけになるのも利点です。幼少期から習い事や塾などの教育に熱心になるケースが多い日本ですが、たまにはフィンランドのように、「遊ぶ時間を十分確保して、限られた時間で集中して勉強する」ことを実践してはいかがでしょうか。***フィンランドと日本の教育には、それぞれ優れた面があります。子どもの性格や生活環境に合わせて、適宜使い分けてみるのもいいかもしれませんね。文/田口るい(参考)Compathy Magazine|日本も後に続け!世界一の学力を誇るフィンランドの教育とは?こどもまなび☆ラボ|「フィンランド教育」の特徴とは?「教育費無料」にとどまらない、教育大国のシステムホンシェルジュ|ゆとり教育風のフィンランド教育?特徴と課題、日本の教育との違いに迫るクーリエ・ジャポン|子供を高い私学に入れるのはカネの無駄?「PISA」の結果を各国メディアはこう報じた東洋経済オンライン|フィンランドのワーママに「罪悪感」などない厚生労働省|「保育所等関連状況取りまとめ(平成 29 年4月1日)」カレントアウェアネス・ポータル|フィンランドの公共図書HugKum|小1は15分、小2は30分。勉強は短時間で済ませるほうが、学力が上がる!【隂山英男の家で伸ばす! 子どもの学力】こどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること影山ラボ|子どもは無限に育つ
2019年06月22日近年、虐待に関する悲しいニュースが続いていますよね。同じ子どもを持つ親として、心を痛めている方も多いのではないでしょうか。しかし、こうした問題は決して他人事ではありません。なぜなら、虐待は悪意のもとになされるものだけではないから。「子どものためによかれと思って」なされた行動が、親の自覚のないままに虐待とみなされるケースもあるのです。特に、「教育虐待」にはその傾向があります。「教育虐待」は、ここ数年で広まってきた言葉ですが、どのような行為を指すかご存知でしょうか?「知らない」という方のなかには、気づかないうちに当てはまってしまっている方もいるかもしれません。そこで今回は「教育虐待」と「教育虐待を未然に防ぐ方法」についてお話しします。「教育虐待」は子どもの将来に多大なダメージを与えるみなさんは、自分の子どもに下記のような「しつけ」や「教育」を行なっていませんか?・宿題が終わっていないと、夜遅くまでやらせる・解けない問題があると、「どうしてできないの?」と責める・塾や習い事でスケジュール漬けにしている・親子間の約束が守られなかったとき、厳しく責め立てる・成績が悪いと、「努力が足りない」「人間のくず」などの暴言を浴びせる一見、よくある「しつけ」や「教育」のように思われるかもしれません。しかし、これらの行為が子どもを過度に追い詰めた場合、「教育虐待」とみなされることがあります。青山学院大学の古荘純一教授によると、「教育虐待」とは、教育を理由に子どもに無理難題を押し付ける心理的虐待のこと。2011年の「日本子ども虐待防止学会」で初めて発表された、新しい考え方です。「教育虐待」を受けている子どもは、大人になってからも、他者からの指示がなければ動けなくなる恐れがあります。また、自信が持てない、何をしても楽しめないなど、心の問題を抱えてしまうことも。学校生活や就職活動を機に不適応行動を起こす人も少なくありません。こうしたことから、「教育虐待」は子どもの将来に多大なダメージを与えるということがわかります。「子どものために」と言いながら子どもを追い詰める親たち「教育虐待」という言葉を広めた武蔵大学の武田信子教授によると、教育虐待に走りやすい家庭は、下記のような特徴を持っている家庭が多いと言われています。1. 親自身が、経済的事情などで進学を諦めた経験がある2. 母親が不本意に仕事を辞めて、専業主婦になった3. 子どもの両親ともに高学歴で社会的地位が高い上記の1と2の親が「教育虐待」をした場合の理由として考えられるのは、自らの生き方や学歴にコンプレックスを抱いているということ。子どもには同じ苦しみを与えたくないという強い思いから、自分が経験した失敗を避けるための教育に力を入れてしまいます。一方、3の親の場合は “失敗知らず” ですが、逆に自らの成功体験に依存しているということが考えられます。自分の知らない道を子どもに歩ませることを極端に恐れ、子どもにも高学歴・社会的地位の高い大人を目指すことを強制してしまうのです。社会福祉法人カリヨン子どもセンターの石井花梨事務局長いわく、教育虐待は決して特別な家庭に限った話ではないのだそう。表面的には「子どものために」という親心のもとに行なわれているのです。しかし、本当に子どものことを考えていると言えるでしょうか。本当に子どものことを考えていれば、子どもを追い詰めるほどの行為には至らないはずです。そう考えると、「教育虐待」をしている親は、「子どものために」と言いながら、実際には自分のために、過度な「しつけ」や「教育」を行なっているのだと言えますよね。その教育、本当に必要……?子どもを見て考え直そうとはいえ、「しつけ」や「教育」そのものを怠るわけにはいきません。親として、子どもに適切な「しつけ」や「教育」を行ないつつ、「教育虐待」しないようにするには、どうすればいいのでしょうか。小児科医の高橋孝雄さんは、親の「しつけ」や「教育」が虐待になるかどうかの分かれ目は、「親の関心が子どもにあるのか、テストの点数や合格した学校などの成果にあるのか」であると言います。前者であれば、自分の行為によって子どもが追い詰められていたら、すぐに気づいて対処できるはずです。しかし、後者の場合、子どもの変化に気づけないまま、子どもを追い詰め続けてしまうことがあります。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏いわく、現在の教育虐待には、「親自身の不安を解消しようとしている」という構造があるのだそう。我が子が新しい時代を生き抜いていけるのかが不安で、親が思う解決策を与えようと無理やり難関大を目指させたり、子どもの望まない習い事でスケジュールを埋めたりしてしまうのです。しかし、子どもたちがこれから生きていくのは、親たちが生きてきた世界とは全く異なり、予想もつかない世界。おおた氏は、親が与える解決策にはあまり意味がないと言います。まずは、「親は無力である」と親自身が自覚することが大切なのだそう。「教育虐待」を未然に防ぐのに必要なのは、まず子ども自身に関心を持つことです。子どもの様子をよく観察し、今行なっている「しつけ」や「教育」が本当にその子に必要なのか、よく考えなくてはなりません。たとえば、子どもが習い事に行くのを嫌がったとき、たまたま気分が乗らないだけなのか、ずっといやいや通っていたのか、はっきりさせることが必要です。そのうえで、なぜその習い事に通わせているのか、親の考えを伝えます。最後は、「続けるのか辞めるのか、あなたが決めていいよ」と、子どもの意思を尊重しましょう。子どもの人生は子どものものであることを自覚したうえで、子ども自身の生きる力を信じてあげることが大切なのです。***子育てをしていると、子どもが自分の分身であるかのような錯覚につい陥ってしまうことがあるでしょう。だからこそ、より幸せな人生を歩めるように導かなくては、と考えてしまいます。しかし、子どもは親と同じひとりの人間であり、親の分身ではありません。どんな人生を歩むことが幸せか、決めるのは子ども本人です。親が特別なことをしなくても、自分の思う幸せを追い求め、たくましく道を切り開いていきます。親は、それを一番近くで応援してあげればいいのです。(参考)こどもまなびラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある日経DUAL|「勉強しなさい」エスカレートすれば教育虐待に東洋経済ONLINE|中学受験で教育虐待しやすい親の2つの特徴東洋経済ONLINE|「あなたのため」が「教育虐待」に変わるときPRESIDENT Online|なぜ「教育」という名の「虐待」が増えているのか朝日新聞DIGITAL|しつけに名を借りた虐待…どの家庭でも起こりうる「考える力」を伸ばす『地図育®』コラム|教育熱心も度が過ぎると虐待になる?あなたのその行動が”教育虐待”にならないように気を付けよう日経DUAL|「教育熱心」と「教育虐待」線引きはどこに?
2019年06月20日現在の子ども教育の重要なキーワードとして、教育メディアでも頻繁に取り上げられる「自己肯定感」。日本人の場合、そもそも自己肯定感が低いことが問題ともされますが、その原因はどんなところにあるのでしょうか。お話を聞いたのは東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり先生。二児の母でもある先生に、子どもの自己肯定感を高めるために親が果たすべき役割も含めて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの自己肯定感を下げてしまう親の「先回り」日本人の自己肯定感は低いとよく指摘されます。それどころか、いまの子どもたち、若い人たちを見ていると、自己肯定感はさらに低くなっているように感じてしまいます。学生に自分の長所と短所をそれぞれ10個挙げるようにいってみても、すぐに挙がるのは圧倒的に短所のほう。一方、長所はなかなか挙がってきません。その要因のひとつとしては、謙虚であることを美徳とする日本の文化があるでしょう。本当は自分でいいところだと思っていても、それを口にすることがはばかられる。加えて、長所というからには、誰からもいいところだと思われるようなものでなければいけないという考え方もあるように思います。でも、長所というのはもっと身近なところ、日常生活のなかにでもあるもので、なにか大きなことを成し遂げたといったことでなくてもいいのです。でも、日本人の場合はやっぱり謙虚ですから……そういうふうに自分を見ることができない場合があるようですね。また、親が先回りしてしまうことも、いまの子どもたちの自己肯定感を下げている要因かもしれません。子どもがなにか問題にぶつかりそうになったら、その問題の芽を事前に摘んでしまう親が多いのです。その先回りを、親は子どものためだと思っています。でも、子どもは成長過程でさまざまな問題に直面し、解決するなかで自信を持つと同時に達成感を感じたり、周囲の人に認められる言葉かけをされたりすることで自己肯定感を高めていくわけです。そのきっかけを奪ってしまっては、子どもの自己肯定感が高まるわけもありません。自己肯定感の高低による子どものちがい自己肯定感の高低によって、子どもにはさまざまなちがいが表れます。自己肯定感が高い子どもは、自分に自信があるのでどんなことにも積極的に取り組むことができます。それから、自分のいいところも悪いところも含めて「いまの自分でいいんだ」という思いがあるので、気持ちにゆとりがあり、情緒が安定して他人にも優しくできます。しかし、自己肯定感が低い子どもは、人からどう見られているかという評価を気にして自分に自信を持てません。すると、友だちに対するジェラシーもあって、大人が見ていないところで友だちに対して意地悪をするといった問題行動を起こすこともあります。自己肯定感が低いというと、ただ自分に自信がないおとなしい子を想像するかもしれません。もちろん、そういうタイプの子どももいますが、自己肯定感が低い子どもであってもどこかで「認められたい」という気持ちがあり、それが友だちへの意地悪などゆがんだかたちで出てしまうこともあるのです。子どもに役割を与えて褒めるきっかけをつくるこれらの話を聞けば、あたりまえですが「自己肯定感が高い子どもに育ってもらいたい」と考えるのが親心でしょう。自己肯定感は、とくに小さい子ども同士の関係性のなかではなかなか育まれません。つまり、子どもの自己肯定感を育てるには周囲の大人、とくに親のかかわり方が重要になってくる。親はしっかりと子どもを観察する必要があるのですが、なかでも注意してほしいのは、「どうせ」という言葉です。だいたい4歳後半くらいから出てくる言葉ですが、子どもが「どうせできない」なんていいはじめたら要注意。「どうせ」という言葉が出たら、子どもを認めたり褒めたりするような言葉かけを増やす必要があると考えてください。あるいは、家のお手伝いなど役割を子どもに与えてあげることも効果的です。ポイントは、その子どもの力では「簡単ではないけどなんとかできる」という無理のないハードルの役割にすること。そして、そのお手伝いを子どもがしてくれたなら、「頑張ったね!」「すごいね!」「ありがとう!」とたくさん褒めてあげましょう。そうすることで、子どもは自己評価が上がり、自然と自己肯定感も高まっていきます。幼児期から小学校低学年くらいまでの子どもの自己肯定感は、親の言葉かけ次第で高くもなれば低くもなります。お手伝いなどの役割を子どもに与えることは、子どもに「自分は必要とされている」と自信を与えるとともに、親が言葉かけしやすい状況をつくる意味もあるのです。「自分の良さ」に目を向けることを教えるまた、親が子どもを見る「ものさし」を意識することも大切です。子どもは4歳頃から「あの子は足が速い」とか「この子は絵が上手」といったものさしで友だちと自分を比べるようになります。小学生になると勉強やテストもはじまるので、子ども自身もつい「できる・できない」のものさしで自分を見てしまうものです。でも、そのものさしのなかで育つと、できる子と自分を比べてしまう傾向が強まり、自己肯定感は高まりません。そこで親の出番です。誰もが万能ではないし、得意なことも苦手なこともあってあたりまえだということを子どもに教えてほしいのです。子どもにとって苦手なことがあれば、「一緒にやろうか」と手伝って達成感を味わわせてあげましょう。そして、なによりも「自分の良さ」に目を向けることを教えてあげてください。たとえば、図工の課題で工作をするにも要領がいい子はささっと終わらせてしまうのに、苦手な子、あるいは丁寧な子はどうしても時間がかかります。その子が居残りまでして作品をつくり上げて、しかもひとりできちんと片づけまでしたとしましょう。最後まで手を抜くことなく頑張れたこと、みんなで使う教室をきちんと片づけたことは間違いなくその子の「良さ」であるはずです。親としては、完成した作品の評価だけでなく、むしろ、完成するまでのプロセスをしっかり褒めて、「お母さんがちゃんと見ていてくれた」と子どもに思わせ、自信を持たせてあげてほしいと思うのです。『保育の心理学 実践につなげる、子どもの発達理解』井戸ゆかり 編著/萌文書林(2019)■ 東京都市大学人間科学部教授・井戸ゆかり先生 インタビュー一覧第1回:あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサイン第2回:「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ(※近日公開)第3回:「辛抱強い子」を育てるヒント。「我慢する力」を伸ばすのは“○○上手な親”だった!(※近日公開)第4回:「先生に言いつけるよ」がダメな理由。自己主張できない子が育つ“4つのNGなしつけ”(※近日公開)【プロフィール】井戸ゆかり(いど・ゆかり)東京都出身。東京都市大学人間科学部教授。専門は発達臨床心理学、保育学、児童学。学術博士。横浜市子育てサポート研修講師、渋谷区子ども・子育て会議会長などを務める。二児の母。著書に『子どもの「おそい・できない」にイライラしなくなる本』(PHP研究所)、『「気がね」する子どもたち-「よい子」からのSOS-』(萌文書林)、編著に『保育の心理学Ⅱ 演習で学ぶ、子ども理解と具体的援助』(萌文書林)』、監修書に『1さいのなあに? のびのび育つ! 親子ふれあい絵本』『2さいのなあに? 「知りたい」がいっぱい! であい絵本』(ともにPHP研究所)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月12日ICT教育とは、簡単に言うと「デジタル機器(タブレットやパソコン)を使った教育」のことを指しますが、そのメリットや注意点を正しく理解しているでしょうか。ICT教育は、国もその重要性を認識し、ガイドラインが策定されています。そのため、今後多くの学校でICT教育が取り入れられると予想されているのです。この記事では、ICT教育の代表的なメリットや、ICT教育を受ける際に注意しておきたいことも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。そもそもICT教育とは?そもそもICT教育とは、インターネット、パソコンやタブレットを利用した教育のことです。「ICT」は、「Information and Communication Technology」の頭文字をとった言葉で、「情報通信技術」という意味で、現在非常に注目されています。ICT教育では生徒1人ひとりに端末を配布し、紙ではなくデジタルを媒体とした授業を行います。事前に作成したデータや動画を用いて授業を行うため、紙を使った授業ではできなかった五感を刺激する授業が可能です。特に、紙では伝えづらかった英会話や図形問題では、理解を深めるのに役立つでしょう。今後は情報通信技術が益々重要になっていくことが考えられているので、総務省や文部科学省もガイドラインを策定するほど重要でありと認識されています。しかし、現在はすべての学校でICT教育を受けられるわけではありません。子どもにICT教育を受けさせたいのであれば、ICT教育を導入している学校を探す必要があります。ICT教育のメリットとは?ICT教育のメリットには、代表的なものに以下の3つがあります。授業が分かりやすくなる効率的に授業の準備ができるデジタル機器が身近な存在になるひとつずつ解説していきます。●授業が分かりやすくなるICT教育を導入することにより、インターネット環境や映像を使うことで授業が理解しやすくなります。具体的な例を挙げると英会話がイメージしやすいのではないでしょうか。英語の授業は、英語が話せない日本人教師が教えています。そのため、ネイティブな発音による授業が難しく、文法ばかりの授業で英会話が身につきにくい環境です。しかし、ICT教育を取り入れることで、インターネットを通じてネイティブに話せる講師が授業を受け持てるため、子ども達は日頃からネイティブな英語に慣れ親しめます。幼いころからこの環境が整っていれば英会話が身近なものになり、今以上に実用的な英語力が身につくことに期待ができるのです。他にも、アニメーションを使った授業を行えば、図形を立体的に認識する手伝いができたり、歴史に興味を持ちやすくなったりすることに期待できます。また、端末を使った授業なので、何度も同じ授業を見直せるため、自習がしやすくなり理解度の向上にも役立つでしょう。ICT教育を取り入れれば、再生するだけで教師の授業を何度でも受けられます。興味が持ちやすく分かりやすい授業を受けることが可能なので、子ども達の理解度を高められる可能性があるのです。●効率的に授業の準備ができるこちらは教員側のメリットになりますが、ICT教育を取り入れることで効率的に授業の準備ができるため、教師の負担を軽減することができます。というのも、紙が媒体の授業を行う場合はプリントを作ったり、1人ひとりのテストの採点を教師が行ったりする必要がありました。授業の準備やテストの採点は教師への負担が大きく、退職する理由のひとつでもあったのです。しかし、ICT教育ならデジタル機器を使った授業になるので、授業の準備はデータの必要な箇所の修正や追加で済みます。小テストのような頻繁なテストもデジタル化することで、準備が簡単になるだけではなく、採点の時間を大幅に削られるようにもなるでしょう。その結果、ICT教育は残業や休日での仕事を減らせるので、教師の負担を大きく軽減させることができます。●デジタル機器が身近な存在になる日本に限らず、世界的にパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が身近な存在になりつつあります。一昔前まで、パソコンやスマートフォンを持っている人は多くありませんでしたが、現在は仕事や大学でも使用する場面が増えたため、デジタル機器を取り扱えるスキルが必須になってきています。このような流れからも、パソコンやスマートフォンが使えなくては、社会に出てから戦力になりづらくなってきています。そのため、これからの子ども達は今までの授業と同時に、デジタル機器の取り扱いについても理解することが必要と言えるのです。ICT教育を導入することで幼いころからデジタル機器の扱いに慣れさせることができるため、デジタル機器の導入による授業の効率化に加え取り扱いも学ぶことができるため一石二鳥です。さらに、デジタル機器は非常に高価なので、家庭の収入差によるデジタル機器を取り扱う機会に差がありましたが、ICT教育を受けることによりすべての子ども達が平等にデジタル機器を身近な存在にできるようになるのもメリットの一つです。仕事の自動化やビッグデータの取り扱いなど、今後益々デジタル機器を使った仕事が増えていくことが考えられており、ICT教育はそんな状況になっても対応できるような教育が期待できるのです。ICT教育の注意点生徒の理解度を深めたり教師の負担を軽減させたりと、ICT教育には大きなメリットがあります。しかし、ICT教育は大きなメリットと同時に、注意したほうが良いこともあるのです。ICT教育で注意しておきたいことは、主に以下の3つです。時代とともにトレンドが変化するVDT症候群になる可能性がある想像力が低下する可能性もある子どもにICT教育を受けさせたいのならば、情報収集してよく注意しておきましょう。●時代とともにトレンドが変化するデジタル機器や情報通信技術というものは、進化が非常に早いです。つい最近出たデジタル機器や技術でも、数年後には古くて誰も使わなくなっている可能性があります。せっかく学校で習得したことや慣れた端末がトレンドではなくなり、将来役に立たない知識や技術になるかもしれません。そのため、ICT教育を受ける際はトレンド色の強い知識や技術だけではなく、ワードやエクセルなど凡庸性が高い教育も受けることをおすすめします。●VDT症候群になる可能性があるデジタル機器を使いすぎると、VDT症候群になる可能性があります。VDT症候群とは、パソコンやスマートフォンのディスプレイやキーボードの使いすぎで、肉体的・精神的に疲労をすることで起こる症状です。VDT症候群には、以下のような症状が確認されています。眼球……ドライアイ、視力低下、頭痛体……肩こり、腰痛、手のしびれ精神……イライラ、耳鳴り、頭痛VDT症候群を予防するためには、連続作業時間を60分以内にして定期的に休憩をするようにしてください。また、正しい姿勢で作業することも重要です。ICT教育を取り入れる場合は、自然とパソコンやスマートフォント接触する時間が増加しますので、子どもがVDT症候群にならないように常に注意してあげましょう。●想像力が低下する可能性もあるICT教育では、視覚から得られる情報量が非常に多くなります。調べれば解決してしまうため自分で考える機会が減ってしまい、その結果想像力が低下するかもしれないと考えられているのです。もし、ICT教育を取り入れるのなら、五感を使う教育をしたり、自分で考える時間を作ったりと、子どもの想像力を向上させる工夫をする必要があるでしょう。モバイル機器を禁止する時間を設けたり、親子で会話するときは調べることを禁止したり、子どもが想像力を働かせられる環境を整えることをおすすめします。まとめICT教育は学習効率を上げられるため、子どもには大きなメリットがあります。また、世界的にモバイル機器の取り扱いスキルや情報通信技術は必須スキルとなっていくことが予想されているので、社会に出てから苦労しないようにぜひとも取り入れておきたい教育方法です。しかし、ICT教育には気をつけなければいけないことが多々あります。もし子どもにICT教育を受けさせるのならばデメリットに関して把握しておき、ICT教育によるデメリットを最小限にする努力が必要になるでしょう。●ライター/高須 亮
2019年06月06日子どもたちの個性を大切にする『イエナプラン』教育で知られるオランダ。その教育環境の良さや子どもの幸福度の高さ(2013年・世界第1位)から、日本でもオランダ教育の要素を取り入れていこうという動きが出てきています。今回は、教師の役割や通知表の評価の仕方を通して、日本とは何もかも違うオランダ教育について考えていきましょう。イエナプランだけじゃない!?学校ごとに異なる教育方針オランダでは、学校が「子どもの未来を作る場」だと考えられています。そして、学校は「自分の好きなことや得意なことを見つける場所」という考えが、社会に根づいているのです。このように、国全体で子どもの未来につながる教育を目指していて、憲法でも『教育の自由』が保証されているオランダ。よく知られているのは「イエナプラン教育」ではないでしょうか。■イエナプラン教育って?ドイツのイエナ大学教授ペーター・ペーターゼンが生み出した、子どもたちの個性を大切にして対話を重視する教育のこと。<特徴>○異なる年齢の子どもたちが一緒に学習する。○子どもたちが輪になって、さまざまなテーマについて話し合い発表する。教師は進行役に徹する。○教室は「リビングルーム」という考え。グループ活動がしやすいように、自由に移動可能な机・椅子が配置されている。※イエナプランについて、詳しくは過去記事をご覧ください。□尾木ママ絶賛!“日本教育の3周先を行く”オランダの「イエナプラン教育」□オランダで大人気「イエナプラン教育」とは?日本でも開校間近“期待のスクール”の魅力。もちろん、オランダのすべての小学校がイエナプラン教育を取り入れているわけではありません。「100人いれば、100通りの教育方法がある」といわれるくらい多様性に富んでいるオランダ教育には、他国で生まれた教育も積極的に取り入れる柔軟さがあるようです。先生はコーチ!自己肯定感を育む授業の仕組み『子どもを伸ばす共育コーチング』(拓殖書房新社)の著者でコーチングのプロとして活躍中の石川尚子先生は、視察に行ったオランダの学校で次のような授業風景を目にしたそう。オランダの学校では、授業の折々に、先生から質問が投げかけられます。(中略)純粋に、子どもたちの考えを促す質問です。どんな答えが返ってきても、先生はまず受け止めます。ですから、子どもたちにも、先生が求めている正解を答えなければという思考がありません。誰かの評価を得るためではなく、純粋に自分はどう思うかを考え、表現し合います。(引用元:ベネッセ 教育情報サイト|教育にコーチングが根付いている国の子どもは幸福度が高い?[やる気を引き出すコーチング])その質問とは、「ここまでやってみてどう思った?」「どんなことに気がついた?」といった、子どもの内に秘められている言葉を引き出すものばかりだったそうです。そして授業の最後には、必ずこの学びの体験を次に活かす質問を投げかけます。先生から「次やるときは、どうしたらもっとよくなると思う?」などの問いを受けることによって、子どもたちは今回の体験を振り返り、次に活かすための気づきが生まれるのです。やってみて振り返り、またやってみて振り返る。オランダの教育現場ではこの過程が大事にされており、それはまさにコーチングのプロセスと手法だと石川先生は述べます。このプロセスを繰り返し、実践したことがうまくいくと、自己肯定感はより高まるそう。まずは大人が答えを持たずに、子どもの考えを受け止めることが大切です。そして、次に進むためにはどうしたらいいか、この学びからどんな気づきが得られたか、など子どもなりの考えを引き出すように導く「質問力」が必要なのですね。オランダは「先生こそが社会のことを一番知らない」という前提で教育プログラムが作られているそうです。極端な言い方になりますが、それは「社会に出たことがないから」。しかし、私たちが生活している「社会」は、日々ものすごいスピードで変わっていっているという現実があります。だからこそ先生は「教える人」「指導する人」ではなく、子ども一人ひとりの適性を見抜き、適した道に進めるようにアシストしてあげる「コーチ」に徹しているのです。点数で評価しない。通知表は子ども自身の成長の記録博報堂のクリエイティブディレクターを経て、家族の教育環境のためにオランダに移住した吉田和充さんは、小学校に通うお子さんが持ち帰ってきた通知表に非常に驚かされたそう。それは、日本の学校で渡される通知表とはまったく違うものでした。日本との大きな違いは、分厚いバインダーに挟まれた書類のような形式で渡されることです。このバインダーは入学時からずっと同じものを使い続けていて、4歳の最年少学年では絵や工作がファイルされているだけのこともあるそうです。学年が上がるにつれて、全国統一試験の結果なども加わってきます。内容としては、まず担任の先生の総評から入ります。A4サイズ1ページ分にもわたり、生徒のことをかなり詳細に記しているそう。次に生徒自身のコメントです。仲の良い友だちや好きな活動や遊び、授業について自分の言葉で書かれています。このように最初の2ページほどは、先生と生徒双方の総評のようなコメントが書かれているそうです。次にようやく成績に関するページが出てきます。ただし各教科で点数が重視されることはなく、過去の自分と比べた成長率が評価のポイントになります。つまり、すべての評価は『絶対評価』であり、大事なのは「前の学期の自分と比べてどう成長したか」ということだというのです。テストの点数や偏差値を重視しないのは、オランダが国として「学校は自分の適性や好きなことを見つけて、将来の自分の進む道を決める場所」という共通の認識をもっていることにほかなりません。通知表に記されている42個の評価項目の一部をご紹介します。・積極性・人の話を聴く力・リーダーシップ・プレゼン能力・計画性・他人を助ける能力・学校行事への参加度・自己主張力・協調性・独創性日本の学校の通知表でも同じような評価項目がありますが、「プレゼン能力」や「自己主張力」「独創性」などは、これからの社会を生き抜くために、ぜひ身につけたい能力です。我が子の成長と向き合うとき、「テストの点数が上がった」「同級生のほかの子に比べて優れている」という視点で見るのではなく、「1年前に比べて積極的に発言できるようになった」と評価してあげたいですね。***日本でも少しずつオランダ式の教育を取り入れようという動きが出てきているようです。いいところは取り入れつつも、日本独自の優れた教育は否定すべきではありません。目まぐるしく変化する世の中の流れに合わせながらも、常に「子どもにとって何が最善なのか」を考えて導いてあげる必要がありそうですね。(参考)現代ビジネス|「世界一の教育」オランダの小学校は日本とはレベルが違ったStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|オランダで大人気「イエナプラン教育」とは?日本でも開校間近“期待のスクール”の魅力。Study Hacker こどもまなび☆ラボ|尾木ママ絶賛!“日本教育の3周先を行く”オランダの「イエナプラン教育」ベネッセ 教育情報サイト|教育にコーチングが根付いている国の子どもは幸福度が高い?[やる気を引き出すコーチング]FINDERS|「通知表」が変われば教育が変わる?オランダの通知表に見る世界一子どもが幸せな理由【連載】オランダ発スロージャーナリズム(11)
2019年06月04日「がんは今や珍しい病気ではなくなった」とよく言われます。だからこそ「もし自分ががんになってしまったらどうしよう」と、頭を悩ませてしまう人は多いでしょう。とくに、子を持つパパやママの場合、子どもの将来のことが何よりも気になるだろうと思います。そこで、子育て世代のがん患者を対象にした調査をもとに、親ががんになったときに子どもの教育計画にどう変化が起こったのか見ていきます。■子育て世代がん患者の教育費への影響は?「子育て世代のがん患者における教育費に関する調査」報告書(「一般社団法人キャンサーペアレンツ」と「ライフネット生命保険」共同調査)によると、最初のがん告知を受けたときに不安に感じたこととして、「家族への影響」と答えた人が8割以上となりました。またがんり患による子どもの教育費に影響があると答えた人は、5割強近くとなりました。Q.がんに罹患したことで、子どもの進路など教育計画に影響はあったか?影響があった 22.1%今後影響があると考えている 31.7%影響はなかった 53.5%■収入減でも「教育費は抑えたくない」思いがんにり患したときに、教育費への影響があると答えた人が5割いますが、別の質問では、実際に「教育費を抑えた」と回答したのはわずか2割足らずでした。コメントからも、親たちが教育費を抑えずに、試行錯誤している様子が伝わってきます。「本当は公立に行ってほしかったが、受験対策や入ってからの役員などフォローが難しいと思い、私立の学校を選びました。教育費は抑えられなかった」(46歳女性)「教育費、本当は抑えるべきなんだろうけど、中学受験に向けて必死に頑張っている子どもに、塾を辞めてほしいとは言えなかった」(39歳女性)「子どもたちの教育費用だけは抑えたくなかったので、学費や塾代などは貯蓄から回しました」(45歳女性)また調査によると、がんのステージによって教育費への影響は異なっており、ステージ1の人の場合では、支出を抑えたのは9.7%。一方、ステージがあがってくると、2割を超えるようになります。■「進路への影響」に不安を抱える親たち子どもへの影響を少なくしたいと考える親は多いでしょう。しかし、教育費は子どもを持つ世帯すべてにとって、大きな課題です。調査によると、がん告知後、平均して2割程度、世帯収入が下がるとあります。がんになったことで「子どもの進路などの教育計画に影響があった」という人たちの具体的な声を紹介します。「都立高校を受験させ、予備校も行かせず、学費保険を中途解約して治療費に充てた」(52歳女性)「がんにならなければ、パートから正社員へと考えていた時期でした。手術、抗がん剤治療の期間が長かったため、正社員で働くことは諦めました。子どもの大学進学については、自宅から通える範囲の公立校を目指してもえるようにと話をしました。塾にも通っていません」(41歳女性)さらに、「今後影響があると考えている」人たちからは、次のようなコメントが寄せられました。●塾に入れてあげられない●私立進学は難しい●進学時期の教育費が貯蓄ではまかなえず、体調がどこまで働ける体に戻れるか不安●今後のお金がどれくらいかかるかわからず、子どものための貯蓄ができるか不安「教育費を抑えたくない」という気持ちの一方で、実際には経済的な理由からなかなか思うようにいかないという親の歯がゆさが感じられます。■もし、がんになったときお金は? それでは、がんになった場合、どのような支援を受けて、収入の減少を補えばいいのでしょう。Q.がんにり患したことで、金銭面の支援を受けたものは?※複数回答あり1位 民間の保険会社からの給付金 72.6%2位 親からの金銭的な援助 35.7%3位 傷病手当金 31.4%~以下略~全体の7割の人たちは、民間の保険会社からの給付金を利用し、親(祖父母)からの支援を受けた人も約35%と、2番目に多い結果となりました。保険の給付金というと、「治療費に使う」というように考えてしまいますが、実際には自身や家族の生活水準を保つために使ってもいいものです。例えば、家事代行を頼むために使うなど、使い道の観点を変えてみてもいいかもしれません。■子育て世代ががんと教育費に向き合うにはお金、治療法、家庭内の貯蓄など、情報を知っていることで対応が変わってくることもあります。万が一のときについて、家族や夫婦間でも話しあっておくことだけでも違ってくるのではないでしょうか。たとえば、貯蓄、生活費、保険など、さまざまな観点で家計を見直したり、場合によってはファイナンシャルプランナーに相談してみたり。もし、病気になったときには家族だけで抱え込まずに、祖父母や周りの人たちの力を借りることが大切なのだと、今回の調査結果をみて思いました。もしもがんになって途方に暮れてしまったら、子育て世代のがん患者を支援する団体や仕事面や精神面など、さまざまな支援の窓口があります。ここまで、子育て世代ががんになった場合に教育費とどのように向き合っていくべきか考えてきました。実際に病気と闘いながら子育てをするのは大きな苦労があるのだと身につまされるとともに、今自分にもきっとできることがあるのだと、気づかされます。「もしそうなったらどうするのか」といった不測の事態への対応を考えながらも、日々子どもたちとの生活を大事にしていきたいですね。「子育て世代のがん患者における教育費に関する調査」キャンサーペアレンツの会員(子どもをもつガン患者)398名へのインターネットによる調査(一般社団法人キャンサーペアレンツ×ライフネット生命保険共同調査)<参考>キャンサーペアレンツ:こどもをもつがん患者同士でつながるためのSNS
2019年05月30日先行き不透明なこの時代、子どもの将来に不安を感じる親が、わが子になるべくたくさんの教育をほどこそうとする風潮があります。ですが中には、子どもが大きな負担を強いられているようなケースや、課題をさぼったり期待通りの成果を出さない時に、つい強く叱りすぎてしまったり、時には罰を与えてしまったり…。そんな話を聞くことも決して少なくはありません。どこまでが教育で、どこからが虐待なのか? 何が親をそこまで駆り立ててしまうのか?『追いつめる親』『習い事狂騒曲』の著者であり、教育ジャーナリストのおおたとしまささんにインタビュー。第2回は、「教育」と「虐待」の境目についておうかがいします。お話をうかがったのは… おおたとしまささん教育ジャーナリスト。麻布中高卒業、東京外国語大学中退、上智大学卒業後、リクルートにて雑誌編集。独立後、多数の育児・教育関連媒体の編集・企画に関わる。学校や塾などの教育現場を丹念に取材し、斬新な切り口で考察する筆致に定評がある。しつけから中学受験、夫婦関係までをテーマに、講演・メディア出演も多数。中高教育の資格、カウンセラーの資格。小学校教育の経験もある。『ルポ塾歴社会』『名門校とは何か?』『受験と進学の新常識』『中学受験「必笑法」』など著書は50冊以上。 『追いつめる親「あなたのため」は呪いの言葉』 の改訂版が2019年7月に出版予定。■教育と虐待、その境い目の見極め方法――明確な線引きは難しいと思うのですが、「教育的指導」と「虐待」の境目をきちんと知っておきたいです。おおたとしまささん(以下、おおたさん):概念的な線引きとしては、「子どもの人権を尊重しているか」というところです。子どもを親の所有物ではなく、自分と同じひとりの人間だと思うことができているかどうか、それが「教育的指導」と「虐待」の境目だと思います。――具体的な目安はありますか?おおたさん:例えば、1日5時間勉強させても全然平気な子もいるのですが、普通の子にさせたら大抵はつぶれてしまいます。それと同じで、負荷はその子にとっての相対的なものである、ということがまず大前提です。そして、その相対的な負荷が子どもの受忍限度を超えていることに気づくには、なんらかの負荷(勉強や習い事など)をかけた後の子どもの表情を見ればわかると思います。例えば、勉強が終わった後、「つらかったけどやっと終わったぜー!」というふうに晴ればれとした明るい表情になっているのか。それとも宿題が終わった後も「また明日もあるのか…」というふうに全然表情が輝かないのか。それが、ひとつの判断材料になると思います。負荷が終わった後にショボンとしているようでしたら、それは明らかに「これ以上やったらマズイ」というサインです。■「どうしてできないの?」「約束したでしょう?」2つの言葉が子どもを追いつめる――教育熱心すぎる親がやってしまいがちなNG対応はありますか? おおたさん:2つのパターンがあります。1つは、「どうしてできないの?」という言い方。そう言われても、わからないものはわからないのだからどうしようもないですよね。追いつめられれば追いつめられるほど、子どもの頭は真っ白になってしまいますし、「こんな問題ができないあなたはバカ」という含意が子どもを直撃します。――確かに…。ですが、親がつい言ってしまいがちな言葉です…。おおたさん:もう1つは「約束」です。例えば、テストで悪い点を取ると、教育熱心な親御さんは「どうしてこうなったのか?」「これからどうするか?」と冷静に原因と対策について話します。そして、「じゃあ具体的にどうするんだ?」と問いつめます。ヘビににらまれたカエル状態の子どもは、「これからはゲームの時間を減らして毎日勉強する」などと言わざるを得ません。ほとんど誘導尋問なのですが、こうして子どもは約束させられるわけです。でも、約束した時は本気でも、人間はそんなに強くありませんし、ましてや子どもです。ですが、約束が破られた時、「やるって約束したのに! 約束を破ったのか!」と親は理論武装して責め、子どもは言い逃れができず、追いつめられてしまうのです。――身に覚えがあるような…(苦笑)。おおたさん:実は、むやみに怒鳴ったりたたいたりする親御さんは少数で。最近の多くの親御さんは、こうして子どもを叱るに十分な理由をみつけてから、その正論を振りかざして、子どもを追いつめるのです。でも、たとえ、そこに正論があったとしても、相手を傷つけすぎて良いわけがないのです。親がやるべきことは、どうしたら子どもが悪かったと理解してくれるのか、次から改善してくれるのかを考えること。なのに、目的が自分のネガティブな感情を全部吐き出して、子どもにぶつけることに変わってしまっているのです。■体罰は愛ではない! 指導者としての未熟さが原因――「時には、ビシッと親の力を見せつけてやらないとなめられる」という厳しい親の意見も耳にしますが、どう思われますか?おおたさん:家庭において、親は絶対的な強者で子どもは弱者です。親という圧倒的に強い立場を利用して、逃げ場がない子どもを追い込むのは、穴に落ちた犬に石を投げるような卑怯(ひきょう)なことだと思いますけどね。以前、北海道で、親がしつけと称して山中に7歳の子どもを置き去りにした事件(※)がありましたよね? 当時も「親の行為はしつけか、虐待か?」と話題になりましたが、山中に幼い子どもを置いていくなどということがしつけのわけがない。あれは命に関わるような暴力的な行為で、たとえどんな理由があっても絶対にやってはいけないのです。――当時、「似たようなことをやってしまったことがある」という親御さんも少なくなかったですよね。おおたさん:中には、しつけと称して、愛があればたたいていいと体罰を容認する人もいますが、私は、体罰を生むのは愛ではなく、指導者としての未熟さだと思っています。言葉や態度による罵倒も同じです。スパルタ的な指導で子どもが伸びるという人もいますが、罰による成長は一時的なものであり、本質的な成長にはなりません。人は変えられる(外的動機づけ)のではなく、自ら変わる(内的動機づけ)のですから。 ■子どもの言動にイラッ「どうしても怒りが抑えられない時は?」――でも、親も未熟で、怒りの感情が抑えられない時もあります。そんな時はどうしたらよいのでしょう?おおたさん:ひとつ提案があります。子どもの言動にイラッとしてしまった時は、「今、自分は溺れかけているんだ」と考えてみてください。溺れている時、あなたはまず何をしますか? まず、口を閉じますよね? 次に、ジタバタするのをやめますよね? そうやって溺れた時と同じようにふるまったうえで、自分の感じていることをただ言葉にするのではなく、どうやったら子どもが前向きな気持ちで、自らの行動を改めようと思えるようになるか、翻訳するひと手間を考えましょう。いい翻訳が思いつかない時は、そのまま口を閉じていることが最善の策であることも少なくありません。――すでにやってしまった(手を出してしまったり暴言を吐いてしまったり)場合、親はどうやってリカバリーしたらいいのでしょう?おおたさん:間違いに気づいた瞬間から、親子関係をどうつくっていくのか、どんな親になりたいのか、それを考えればいいと思います。大切なことは、起きてしまったことを否定するのではなく、それを糧にするにはどうしたらいいかを考えること。望ましくないことが生じてしまった時、それを今後の糧にすることができるかどうかが、その人の強さだと思います。親も強くならなければいけないし、子どもにもその強さを学んでもらわなければならない。親も子どもも成長しています。親子関係も修復可能です。取り返しがつかないなんてことはないのですから。友人や仕事関係の相手にはきちんと配慮できるのに、わが子となると遠慮なく追いつめてしまう。子どもなら許されると思ってしまう。そこには、どんなに傷つけても結局、子どもは親以外には頼れない、という親のおごりや甘えがあるのかもしれません。でも、おおたさんが言うように、「たとえ、正論だとして相手を傷つけすぎて良いわけがない」のです。怒りが抑えられない時は、せめて「口を閉じる」こと。心に留めておきたいと思いました。次回は、おおたさんが考える「これからの時代に必要な力」についてうかがいます。※2016年、北海道の山中で、親が子どもをしつけのために車から降ろし、置き去りにした事件。7日後、子どもは無事発見された。取材・文/まちとこ出版社N
2019年05月29日先行き不透明なこの時代、子どもの将来に不安を感じる親が、わが子になるべくたくさんの教育をほどこそうとする風潮があります。著者の周囲でも、幼児期から塾に通ったり、毎日が習い事で埋まっているという話はざらです。もちろん、子どもが楽しんでいるなら良いのですが、中には、大きな負担を強いられているようなケースも見受けられます。さらに、子どもが宿題や習い事の練習をさぼったり、成績がふるわなかった時、つい強く叱りすぎてしまったり、時には罰を与えてしまったり…。そんな話を聞くことも、決して少なくはありません。そんな時に知ったのが、「教育虐待」という言葉でした。教育虐待とは、「子どもの受忍限度を超えて勉強させること」、「親の所得格差が子どもの学習権に大きく影響する」状態も教育虐待とされています。もし、上記の話に少しでも引っかかる方がいたら、一度立ち止まって考えてほしい。そんな思いで、『追いつめる親』『習い事狂騒曲』の著者であり、教育ジャーナリストのおおたとしまささんにお話をうかがってきました。著書には、驚くような悲惨な教育虐待のケースも紹介されていますが、それは決してひとごとではありません。本書を読んでいくと、この問題が親個人の問題ではないこと、そして程度の差こそあれ、親であれば誰もが陥る危険性があることがよくわかります。どこまでが教育で、どこからが虐待なのか? 何が親をそこまで駆り立ててしまうのでしょうか?お話をうかがったのは… おおたとしまささん教育ジャーナリスト。麻布中高卒業、東京外国語大学中退、上智大学卒業後、リクルートにて雑誌編集。独立後、多数の育児・教育関連媒体の編集・企画に関わる。学校や塾などの教育現場を丹念に取材し、斬新な切り口で考察する筆致に定評がある。しつけから中学受験、夫婦関係までをテーマに、講演・メディア出演も多数。中高教育の資格、カウンセラーの資格。小学校教育の経験もある。『ルポ塾歴社会』『名門校とは何か?』『受験と進学の新常識』『中学受験「必笑法」』など著書は50冊以上。 『追いつめる親「あなたのため」は呪いの言葉』 の改訂版が2019年7月に出版予定。■「子どもをスーパーマンに」求め過ぎる親たちおおたとしまささん(以下、おおたさん):教育熱心な親が子どもを追い詰めてしまうのは、今にはじまったことではありません。教育虐待という言葉ができる前の1970年代から、教育虐待に関する事件は起きています。ただ、昨今の教育虐待の状況は、以前とは少し変わってきたところがあると感じています。――どこらへんが変わってきているのでしょうか?おおたさん:高度経済成長期はテストで良い点がとれる子を育て、「高学歴」というパッケージ商品さえ手にすれば、それで親は満足でした。いい大学にさえ入れば、そこから先の将来は良い会社に入って終身雇用というレールができていたからです。ですが昨今、高学歴はもう役に立たないと言われるようになりました。とはいえ、学歴が要らなくなったというわけではなく、高学歴があることはもう大前提。それプラス、スポーツも音楽もといった、ほかのオプションもできなくてはいけないという、まるでスーパーマンのような人間を育てなければならないという、ある種の暴走が社会にはびこっているように感じます。それを真に受けてしまった親御さんが、幼児期からいろいろな習い事をさせたり、何かの役に立ちそうなスキルを身に着けさせたりと、躍起になっている傾向があります。――求められるハードルがどんどん上がっているのですね。おおたさん:子どもの特技や強みを伸ばすための習い事ならまだ良いのですが、例えば、英語やプログラミングの場合は、将来の職業スキルとして、幼児期からやらせているわけですよね? 「このスキルを身につけておかないと、将来仕事に就けない」というふうに。そういう面が目立ってきているように感じます。■「教育」とは何? 「人材育成」との混同が引き起こす虐待――子どもの将来に対する、親の不安が押しつけられてしまっているのでしょうか?おおたさん:現在の教育虐待の構造の前提として、教育そのものがビジネスの原理に汚染されている、というところがあります。そもそも、教育とビジネスというのは、全く違う力学として働くものですが、経済至上主義的な現在の価値観で、教育がビジネス的な論理に当てはめて語られるようになってしまったのです。――具体的に、どういうことなのでしょう?おおたさん:「教育」と「人材育成」がごっちゃになっているのですよ。そもそも教育とは、子どもの持つ能力を、その子らしく最大化して自己実現し、かつ、余った力を社会に還元してより良い社会を作ること。つまり、「教育はまずその子ありき」なのです。一方で、人材育成というのは、なんらかの目的に合致した人を育てることです。例えば、「わが社にはプログラムができる人材が必要」というふうに。つまり、「人材は目的ありき」なのです。本来「教育」とは、「どうしたらこの子が輝けるよう育つのだろう?」と、その子を見て考えるべきものなのに、その子を見ずに「これからの時代はこんな人材が求められているから、そういう人材にするためにどうしたらいいのか?」と、型にはめていく発想になってしまっているわけです。■子どもだけではない「追いつめられる親」――時代に求められる「型」に、親が子どもをはめようと躍起になってしまう。その焦りや不安が教育虐待の引き金になっていくのですね?おおたさん:それ以外にも、親が脅迫概念にかられる背景がもうひとつあります。それは、「子どものできは親次第」という社会的通念があることです。例えば、東大に子どもを合格させた親がメディアでチヤホヤされるなど。子育てにおける成功事例は、その子、その親、その関係性があったうえで、その場限りのものでしかないのに、たまたまうまくいった例をあたかも親の手柄のようにいう風潮がおかしいのです。逆に、子どもがひきこもりやニートになってしまった親が「自分の子育てが間違っていたのではないか?」と自分を責めてしまったり、周囲から非難されたり…。本来、親の関わり方と子どもの人生の在り方とは、直線的因果律(結果が生じるには、ある特定された原因が存在するという考え方)で結びつけることはできないのですが。これは、マスメディアの責任も大きいと思います。――確かに、核家族で子育てしていると、子どもの責任が全部親の肩にかかってくるような、そんなプレッシャーは感じます。おおたさん:現代の子育てでは親の責任が大きすぎて、親の方に力が入りすぎているのかもしれません。親こそが、すでに追い詰められているのかもしれません。だとすれば、教育虐待は単なる親の人格的な問題として片づけることはできないのです。「教育」と「人材育成」は似て非なるもの。「本来の意味での教育が、虐待に直結することはありえず、教育虐待のように見えるものの本質は、『人材育成虐待』なのではないか?」とおおさたんは言います。自分が子どもにしているのは、本当に教育なのか? それとも、人材育成なのか? 非常に考えさせられるお話でした。 次回 は、「教育」と「虐待」の境い目についておうかがいします。取材・文/まちとこ出版社N
2019年05月28日5月10日、参議院で子ども・子育て支援法の一部を改正する法案が可決・成立し、10月1日から幼児教育・保育が無償化されることが決定しました。子育て世帯にはとてもうれしいニュースですね。ところで、10月1日からは幼児教育・保育の無償化だけでなく、私たちの暮らしに関わる色々な制度が変わることをご存知でしょうか?そこで今回は、幼児教育・保育の無償化を含め、10月1日から変わるものの中で、特に子育て世帯に影響しそうなもの3つについてお話しします。■ 1.幼児教育・保育の無償化tkc-taka / PIXTA(ピクスタ)まず、0歳児から2歳児までの子どもたちの、認可保育所、認定こども園、幼稚園などの利用料については、「住民税非課税世帯」を対象に無償化されます。3歳から5歳までの子どもたちについては、「収入に関わらずすべての世帯を対象」に、認可保育所、認定こども園、幼稚園(ただし専業主婦[夫]世帯は月25,700円を上限)の利用料が無償化となります。さらに幼稚園の預かり保育や、認定外保育園、ベビーシッターなどについても一定の要件のもと無償化(上限有)されます。ただし、実費として徴収されている費用(通園の送迎費、給食などの食料費、行事費、制服代など)は、無償化の対象外となりますのでご注意ください。■ 2.消費税の軽減税率制度Naoaki / PIXTA(ピクスタ)10月1日からの消費増税に伴い、消費税の軽減税率制度が導入されます。軽減税率制度とは「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」を対象に、税率が10%ではなく現行と同じ8%に軽減されるという制度です。少し分かりにくく、一部ではあまり評判のよくないこの制度ですが、何かとお金がかかる子育て世帯にとっては家計のやりくりに「賢く」利用したいところです。では、飲食料品について軽減税率が適用されるのはどんな場合なのか例を挙げてみましょう。1. スーパー、コンビニなどで購入する食品(生鮮、加工品問わず)、飲料(酒類除く)ocsa / PIXTA(ピクスタ)軽減税率が適用されるのは肉・野菜・魚などの生鮮食品に限られません。例えば惣菜やお弁当、菓子類など、人の飲用又は食用に供されるすべての飲食物が対象となります(酒類、医薬品、医薬部外品等を除く)。2. 料理のテイクアウトや宅配Job Design Photography / PIXTA(ピクスタ)飲食店から料理をテイクアウトする場合や、料理等を宅配してもらう場合(ピザの宅配や出前など)も軽減税率の適用があります。ただし、ケータリングは飲食物の販売(譲渡)だけではなく、食事の配膳・提供が一体となったサービス(役務の提供)とみなされ、軽減税率が適用されません。3. おもちゃ付きのお菓子など、食品と食品以外のセット販売あすか / PIXTA(ピクスタ)おもちゃ付きのお菓子や、マグカップと紅茶のセット販売など、食品と食品以外がセットで販売されている商品等を「一体資産」といいます。このような場合、セットになっている食品の価格が、セット販売価格(税抜1万円以下に限る)に対する割合の2/3以上であればセット商品全体に軽減税率が適用されます。分かりやすい例でいえば、おもちゃ付きのお菓子価格が300円だとした場合、そのうちお菓子価格が200円以上であれば軽減税率が適用されますが、逆におもちゃ価格が100円以上なら標準税率の10%が課税されることになります。■ 3.住宅ローン減税の控除期間延長(10%課税の場合)もとくん / PIXTA(ピクスタ)これまで住宅ローン減税の控除期間は10年でしたが、10月1日以降にこの制度を利用する場合は控除期間が13年まで延長されます。ただし、この制度は利用できる期間が限定されていることに注意が必要です。この控除を受けるためには、2019年10月1日から2020年12月31日までの間にマイホームを購入(引渡しをうけること)し、入居をしなければなりません。また、この期間に入居したとしても消費税の経過措置(税率8%)を受けた場合や、取引対象が非課税(売主が個人等)の場合には、この措置が受けられませんのでご注意ください!花火 / PIXTA(ピクスタ)今回ご紹介した以外にも「自動車税の引き下げ」や、「中小の小売店で商品をキャッシュレスで購入する際のポイント還元」なども始まる予定となっています。何かと出費が多い子育て世帯ですが、さまざまな「新制度を上手に活用」すれば、家計の負担を少しでも減らすことができるかもしれません。参考※参議院「子ども・子育て支援法改正案を議決」※国税庁「消費税の軽減税率制度の実施」※国土交通省「住宅ローン減税」
2019年05月20日教育といえば「何かを教える」というイメージが強いですよね。しかし最近では「教えない」教育が重視されています。今回は、教えない教育がもたらすメリットや、家庭でもできる教えない教育について紹介しましょう。詰め込み教育から「教えない」教育へこれまでの教育は、試験や受験に役立つ知識をただひたすら詰め込む形が主流でした。教科書の内容を暗記したり、計算問題をひたすら反復練習したりして知識を蓄えることこそが、正しい勉強方法だと考えていらっしゃった親御さん方も多いのではないでしょうか。しかし、時代は変化しました。今やロボットやAIが人間の代わりに仕事や作業をすることが当たり前になりつつあります。その結果、これからを生きる子どもたちに必要なのは、知識を詰め込むことではなく、物事をより柔軟に、かつ自主的に考える力を身に付けることに変わってきているのです。こうした力を育てるためには、かつての教育とは真逆ともいえる「教えない」教育が有効だとされています。教えない教育がもたらすメリット教えない教育とは、子どもに何も教えずにただ放置することではありません。学びの基礎となる部分をしっかり教えたり、安全な環境を整えたりした上で、その先を子ども自身に考えさせることに重点を置いた教育です。結果として、子どもには以下のようなメリットがあります。・思考力が身につく教えない教育は、言い方を変えれば「子どもに考えさせる教育」です。「どうしたらこれが達成できるのか」「どうしたら前よりもうまくできるのか」などと考えることで、思考力がどんどん身についていきます。・自分の意見を言えるようになる教えない教育では、自分の中の考えをまとめて実行したり、相手にわかりやすく伝えたりすることが必須です。その結果、子どもは、自分の意見を言うことに慣れていき、やがてプレゼンテーション能力が向上していくことも期待されています。・問題解決能力が伸びる子どもが自分なりに試行錯誤することで、納得のいく答えを導き出したり、自分の本意とは違う結果を受け入れたりする場面が、教えない教育ではたくさん存在します。そうした経験をした子どもは、問題にぶち当たった時にも諦めたりせず、どうすれば解決できるのかをしっかりと考えることができるのです。・知的好奇心が伸びる教えない教育を行うと、子どもは新しい発見にたくさん出会います。その結果、自分で考えることの楽しさや、気づくことの喜びを知っていくようになり、知的好奇心がどんどん伸びていきます。子どもが「学びたい」と思える環境づくりのコツ教えない教育を通して、子どもが自ら「学びたい」と思えるようにするために、以下に取り組んでみましょう。・子どもが集中している時は見守る子どもが何かに集中している時間は、まさに「自ら学んでいる」状態です。そんな時はついつい「すごいじゃん!」「ママ(パパ)にも見せて!」などと声をかけたくなりますが、その気持ちをぐっとこらえて見守るようにしましょう。教えない教育では、子どもが行なっていることに親がやたらと手出しをするのではなく、子どもが安心して集中できる環境を整えてあげることこそが重要とされています。・自然の中で遊ばせる自然には、木の香りや太陽の光、土の感触や鳥の鳴き声など、五感への刺激が溢れています。脳科学分野の権威である小泉英明氏は、自然がもたらすさまざまな刺激についてこう述べています。「光、音、様々な形や色、感触――自然は、意図しない刺激に満ちています。一方、人間が与える教育は、意識上の言語で作られたもの。良い教育をしているつもりでも知らず知らずのうちに意識下への刺激がカットされて、刺激が狭められてしまう危険性があるのです」(引用元:日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由)さらに小泉氏は、意欲ややる気にかかわっている脳の内側を鍛えるためには、ひらがなや数字を教えるといった知育的な学びよりも、まずは自然に触れることが大切だとおっしゃっています。子どもと自然がいっぱいの公園などで遊ぶのはもちろん、キャンプや農作業体験をするのも、教えない教育の一環として有効です。・子どもの質問にすぐ答えを出さない子どもに「どうしてこれはこうなるの?」と質問されたら、「それはこうだからだよ」と答えを教えて説明する親は多いでしょう。しかし、それでは子どもの考える機会を奪うことにつながる場合もあります。そのため、子どもに質問されたら「どうしてだと思う?」と質問返しをして、子どもなりの考えを引き出しましょう。そうして自分の考えを言えたら「しっかり考えたんだね」と褒めてあげるのがコツです。そんなやりとりを通して、子どもは考えることの楽しさを覚えていきます。***昨今では、低年齢から塾や習い事をする子どもも多く、親はつい「うちの子にも何かさせなければ……」と焦りがちです。しかし、何かを教えたり与えたりする教育だけでなく、あえて教えない教育も、子どもの成長を促すことを知っておきたいですね。文/田口るい(参考)プレジデントオンライン|ペラペラな親ほど早期英語教育に“冷淡”日経DUAL|“教えない”早期教育を脳科学者らが勧める理由プレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣日経ビジネス|先生が「教えない」ほうが学力は伸びるぎゅってweb|一生モノの「集中力」は子どものときにベネッセ教育情報サイト|どうなる?大学入学共通テスト小学生のうちから「考える」習慣づけが大切に!?Study Hackerこどもまなび☆ラボ|2020年度から「大学入学共通テスト」がスタート!親が今からやっておくべきことは?
2019年05月17日「将来、子どもが英語を話せるようにするためにはどうしたらよいですか?」これは私が幼児の英語教育に携わってから、一番よく聞かれる質問です。2020年度に全国の小学校で英語教育が必修化することを受け、英語教育を重視するママが増えています。そんな教育熱心なママたちからの質問の中には「あれ?」と感じてしまうものも。今回は私の経験も含めながら、みなさんが勘違いしているかもしれない英語教育のいろいろをQ&A形式で紹介したいと思います。Q. 英語耳・英語脳は6歳までしか育たないの?A. 幼児期(1~6歳)は「聞く」と「話す」がとても得意な時期です。そして、リスニング能力については、やはり早い時期から英語を始めた子どものほうが発音が良いと感じます。でも、6歳を過ぎても英語耳、英語脳を育てることは可能です。私の経験の範囲内ですが、年齢に関わらず、良い耳を持つ人は日本語にない"R"と"L"の聞き取りもできますし、聞き取りができれば、その音を自分で作り出すこともできます。英語と日本語は周波数が違う、音節が違うから聞き取りづらいなどと言われますが、大人になってから環境や勉強法で克服し、ネィティブ並みの発音を身につけている人が私の周りにはたくさんいます。Q. 英語に興味がないわが子。英語を学ばせるのはムリ?A. 子どもが英語に興味がないと悲しんでいる人は、まず自分が英語に興味があるかを考えてみましょう。私が英語を学ぶ上で一番大切だと思うのは、子どもだけでなく、大人も一緒にやってみること。一番効果的なのは、で以前にお伝えした、子どもが好きな遊びを英語で大人が一緒にやることです。でも、それが難しい場合は、自分が好きな海外アーティストの曲を子どもに聴かせたり、海外旅行に行ったときのエピソードを話してあげるだけでも大丈夫。家庭で身近に英語の存在を感じられる環境が子どもの言語感覚を養います。Q. 日本人の親が英語を教えるのはよくないの?A. 発音を重視される保護者にはネィティブの先生とのレッスンをおすすめしています。しかし、「英語を嫌いにならない子ども」を育てたいのであれば、日本人のママやパパが英語を教えることに私は大賛成です。幼少期から英語に触れておけば、子どもが成長してやる気になった時にぐんと伸びます。そのためにはやはり子ども本人が楽しめる形を大人が一緒になって作り上げることが一番。幼少期は「大好きなママやパパ」と一緒に「遊びながら学ぶ」ことが、子どもの心も育てます。Q. お金をかけているのにちっとも上達しない!A. レッスンに通わせているのに、英語が身についていない!」という相談もよく受けます。そのような相談に限って「レッスンにさえ通わせていれば大丈夫」と家庭でのサポートがない場合がほとんど。週に1度、1時間程度のレッスンに通わせているだけでは英語は身につきません。家庭で習い事と連動している教材のCDを聴かせ、DVDを見せるのは大切な親の役目。子どもと一緒にCDを聴いて、DVD鑑賞ができればなおよしです。私が教えているクラスの子どもたちも家庭でのサポートのあるなしで、あきらかに習熟度に違いが見られます。英語教育は年齢があがると、子どもの努力も親の努力もより必要になりますが、幼児期に種まきをしておくと、この努力が軽減されます。「大人も一緒に楽しむ」をキーワードにこの春から親子で英語を楽しんでみませんか。<文・写真:フリーランス記者稲井華子>
2019年04月15日皆さまは、生理中の子どもとのお風呂、どうしてますか?私は、基本的には生理中は着衣のまま子どもを洗い、子どもたちが寝てから一人で入るようにしていました。生理のたびに、どうしたものかと思いつつ、一緒に入った場合にうまく隠す自信がなかったため、このような方法をとっていたのですが…。■生理中にお風呂に入ったら…ある日、私が着衣のまま入ることに子どもに抗議され、どうしても一緒に入らないといけないことになりました。こんな日に限って生理二日目…。■子どもにわかりやすく、嫌悪感を抱かせないためにはせっかくの機会だと思って、できるだけ子どもたちにわかるように話を切り出してみました。「女の子はね、大人になると、一ヶ月に一週間くらい、血がでる時があるの。でも別にこれはケガしてるとか、病気とかじゃなくて、とっても自然なことなの」性に関することはこれまであまり触れずに来たため、ドキドキしながら、でも真剣に話しました。「『生理』っていうんだけど、女の子はあなたよりもう少し大きくなると、おなかの中で毎月赤ちゃんのためのベッドを作るようになるの。ふかふかで寝心地のいいベッドをね。でも、毎月赤ちゃんが来てくれるわけじゃないから、赤ちゃんがこなかった月は、ベッドが流されて出てくるの。ママは今、その時期なのよ」とにかく、伝えたいことは伝えた…はず!どんな風に伝えるのがよかったのかはわからないけど、子どもたちも途中で茶化したりせず、真剣な目で聞いてくれていたから、きっと伝わったのだろう。…と思いたい。■性教育は気まずい…でもタブー視できない子どもの性教育って、どうも気まずくて、いままでのらりくらりとかわしていたけれど、子どもたちもいつまでも赤ちゃんではないし、これから広い世界に出るにつれて、自分でいろんな情報をキャッチするのでしょう。そしてその情報は正しいこともあるし、正しくないこともあるでしょう。思春期になるとますます性の話題ってしづらくなる(自分を振り返っても、思春期のときには親からあまり聞きたい話題ではない)と思うので、こんな風に話す機会があったときには、その年齢にあったレベルでお話することもありなのかなぁと思ったりしました。子どもの早熟化が加速しているとニュースでも聞くので、性の話題をタブーにしないためにも、いまくらいから折をみて少しずつそんな話もしていこうかなと思い、『13歳までに伝えたい女の子の心と体のこと』という本も購入してみました。娘に渡すのはまだ先だと思いますが、急に質問されたときにも話に一貫性を持たせるために、私もしっかり読んで、何か質問されたときには自信をもって答えられるようにしたいなと思いました(のらりくらりとかわしていた時期は、回答がコロコロ変わってしまうこともあり不信感を抱かせてしまいそうだったので…)。性の問題はとても難しいけれど、成長の中でいつかは向き合わなければいけないこと。だから私は、まだ先入観も抵抗感もない時期から少しずつ話していく作戦でいこうと思っています。<参考書籍> 『13歳までに伝えたい女の子の心と体のこと』 (やまがたてるえ著/かんき出版)
2019年04月12日近年、子どもを取り巻くお金の環境が大きく変わったことで、学校教育でも間もなく「お金の教育」がはじまります。日本はようやく国としてマネー教育に本腰を入れることになったのです。では、海外のマネー教育とはどんなものなのでしょうか。マネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生にお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまの日本にもマネー教育はあるが……間もなく実施される新学習指導要領による公教育には、いわゆるマネー教育が組み込まれることになりました。とはいえ、現在も学校においてマネー教育がまったくされていないわけではありません。ひとつは日本銀行が組織している金融広報中央委員会によるもの。金融広報中央委員会のかつての名称は貯蓄増強中央委員会。もともとは、戦後間もない頃に、国民に貯蓄を奨励し、お金を財政と企業融資に使って日本の産業拡大を図るための組織でした。「貯蓄は美徳だ」と国民を教育していたわけです。現在も傘下の組織が各都道府県にあります。主な活動は、小学校、中学校、高校向けのマネー教育の教材をつくること。それから、金融・金銭教育研究校を指定して、「かしこい消費者になり、かしこい買い物をする」という教育をおこなっています。子どもの頃に通っていた学校が、「子ども銀行」の活動をしていたという方もいるかもしれません。それも金融広報中央委員会によるマネー教育の一環です。もうひとつは最近のものです。2012年に消費者教育推進法という法律が制定されました。これは、自分のためだけではなく、「世のなかのためにもいい買い物をしよう」という教育をおこなうための法律です。「世のなかのためのいい買い物」とは、たとえば持続可能な社会をつくるために環境にいいものを買う、あるいは人権のことも考えてフェアトレード商品を買うといったものですね。この法律により、現行の学習指導要領でも家庭科や社会科の学習内容に「消費者教育」という名称でマネー教育が盛り込まれています。たとえば、小学3年生なら、社会科の勉強として商店街や小売店のお金の流れやそこで働く人の視点を学ぶ。これも広い意味ではマネー教育といえます。欧米の教育は「生き方教育」とはいえ、授業時間全体からすれば日本のマネー教育はごく限られたものです。では、海外のマネー教育はどうなのかというと、特に欧米では日本よりもはるかに進んでいるといっていいでしょう。そのちがいは、教育そのもののとらえ方によるところが大きいと感じています。日本の中央集権的な教育の目的は、健全な勤労者を育てて経済のパイを大きくしようとするもの。いわばエリート養成のための「知識注入型教育」が中心です。一方、もともと子どもに自立心や権利意識を持たせることを重視する欧米の教育は「生き方教育」といえます。そのため、特に北欧の教育では、手に職を持たせるという意味もあってか、「ものづくり」を重視する。それどころか、小学4年生になると自分で仕事をつくって生活していくための「起業家精神」を教える授業もあるほどです。そういう教育ですから、当然、マネー教育にも力を入れています。スウェーデンでは子どもたちに生活設計をさせる授業があります。収入がいくらで家賃がいくらで、毎月いくら貯金できるとか、利息が○%だから年末には預金がいくらになるというふうに生活設計をさせる。しかも、面白いことにこれが算数の授業なのです。フィンランドでは図工の時間に広告をつくるという授業を視察しました。図工の授業とはいえ、ただのアートでは終わりません。子どもたちは「これなら商品が売れるだろう」と考えた文言を広告に入れる。売り手がどのように買い手を誘導しようするのか、マーケティング戦略を学ぶわけです。さらに、今度は消費者サイドに立ってそういう戦略に乗せられないための方法を学んでいました。求められる「実生活に根ざした教育」アメリカのマネー教育もわたしのなかでは強く印象に残っています。わたしがアメリカでマネー教育の視察をしたのは1987年頃。少し古い話になりますが、逆にいえばアメリカでは少なくとも30年以上も前から積極的にマネー教育がおこなわれていたということになる。さて、肝心の授業内容です。当時のアメリカは小切手社会でした。すると、小学生が小切手を切る授業を受けていたのです。子どもが「$100」と小切手に書いたら、先生は「それじゃ、駄目だ」という。ただ「$100」と書いたのでは、線を書き足されて「$400」にされるかもしれないし、0をふたつ加えて「$10000」に書き換えられるかもしれませんよね。不正防止のために「$100と書いたら、その下に『one hundred dollars』と書きなさい」と指導するのです。完全に実用的な内容でした。また、高校生になると、中古車ディーラーで車を買うシミュレーションをおこなう授業もありました。走行距離や事故歴、燃費など、車を買うときになにをチェックするべきかを教える。それこそかしこい消費者になるための教育をしているわけです。これは「コンシューマーエコノミクス(消費者経済学)」という教科の授業でした。独立教科でマネー教育をするアメリカ、さまざまな教科で横断的にマネー教育をするヨーロッパというちがいはありますが、学校でリアル経済を教える点では共通しています。そうして、子どもを社会のなかで自立した人間に育てることこそが教育だという思考があるのでしょう。二次関数や因数分解、微分積分を学んで数学の面白さに目覚めた子どもが数学者やエンジニアを目指す――そんな教育もたしかに大事なものでしょう。でも、日本の教育にももっと実生活に直結する内容が必要とされているのかもしれません。『子どもにおこづかいをあげよう!』藍ひろ子 著・西村隆男 監修/主婦の友社(2014)■ 横浜国立大学名誉教授・西村隆男先生 インタビュー一覧第1回:「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ第2回:遅れが著しい日本の「マネー教育」。日本の子どもは“社会のなかで自立”できるのか?第3回:「会議・交渉・契約書」で自己肯定感が育つ。子どもをぐんと伸ばす“おこづかい”のあげ方(※近日公開)【プロフィール】西村隆男(にしむら・たかお)1951年生まれ、東京都出身。横浜国立大学名誉教授。経済学博士。高校教諭を経て、横浜国立大学教育学部で25年教壇に立つ。研究テーマは金融教育、消費者教育、パーソナルファイナンス(家計財務管理)など。金融広報中央委員会委員、金融経済教育推進会議委員、前日本消費者教育学会会長。著書に『消費者教育学の地平』(慶應義塾大学出版会)、『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』(祥伝社)、『子どもとマスターする46の金の知識』(合同出版)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月29日日本という国で育つ子どもたちが、学校教育を受けはじめるのは誰もが小学生になってから。でも、生きていくうえで欠かせない「お金の教育」に関しては、はじまる時期もその内容も各家庭の方針によってまちまちです。正解がないだけに、マネー教育に関して悩んでいるという親御さんも少なくないでしょう。アドバイスをしてくれたのは、マネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生です。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)ようやく動きはじめた日本のマネー教育これまでの日本には「マネー教育」というものは存在しなかったというと、やや語弊があるかもしれませんが、あたらずといえども遠からずという状況でした。それは、日本人の国民性によるものでしょう。古くは日本ではお金は不浄のものと考えられ、家庭の話題に上げない、子どもは口を出すべきではないものとされてきました。お金に対してそういう感覚を持たされ育てられたのがいまの親世代です。ところが、ここ数十年でお金をめぐる状況は一変しました。最近ではキャッシュレス決済が急激に拡大しています。小学生でもスマホを手にしているいま、塾に行くにも「Suica」「ICOCA」などの電子マネーを使って電車に乗る。コンビニでちょっとしたお菓子や飲み物を買うにも電子マネーで支払う。子どもが使うお金を親がコントロールするためです。また、わたしのような60代くらいの世代だと、クレジットカードにはまだ若干の抵抗感があるもの。つい「借金」と考え、罪悪感があるわけです。でも、いまの親世代にとって、クレジットカードはひとつの決済ツールに過ぎません。借金だとは考えず、スーパーで500円の買い物をするにもクレジットカードを使います。こうして、子どもだけではなく、親世代にも現金が見えにくくなっているのです。もちろん、利便性という点ではほんの20年あまりの間に飛躍的に進化したと見ることができるでしょう。でも、まともにマネー教育を受けてこなかった世代が親になっているわけですから、その利便性の裏には子どもに対する大きな危険も潜んでいます。かつては「金融商品」なんて言葉は存在しませんでした。「株取引をしている」などというと、ギャンブル的な意味合いをもってさげすまれるような印象すら持たれたものです。ところが、ネット証券が広まって「金融商品」という言葉が一般的になり、最近では仮想通貨なんてものも出てきた。「マネーゲーム」という言葉も使われるほどです。それこそ、現金が見えにくくなっている時代に育った子どもがゲーム感覚でマネーゲームに走るようになったらどうするのか――。こうしてようやく日本でも、国策としてマネー教育を進めていこうとする動きが出てきたわけです。マネー教育開始は早ければ早いほどいいしかも、子どもたちがお金をめぐる問題に巻き込まれる危険性はこれからさらに拡大することも考えられます。その要因は成年年齢の引き下げです。明治時代から約120年にもわたって20歳だった成年年齢は、2022年4月から18歳に引き下げられます。18歳になれば高校生であっても自由に契約をすることができる、クレジットカードをつくることもできる時代になるのです。それを受けて、新しい学習指導要領は、高校卒業までに子どもたちに契約意識を持たせる内容になっています。ただ、新学習指導要領に基づく教育がはじまるのは小学校で2020年から。中学校では2021年、高校では2022年からです。高校を卒業してすぐに成人となる2019年度の高校1年生からは前倒しでその教育かおこなわれることになっていますが、それでもやはり遅すぎるように感じるのです。マネー教育をはじめるのは早ければ早いほうがいい――。それがわたしの考えです。それこそ、小学校でマネー教育がはじまる前から家庭ではじめておくべきでしょう。ものの価値もわからない、自分で買い物をした経験もないのに、小学校で売買契約の基礎を教えるといっても難しいというものです。しかも、幼い子どもにマネー教育をするにも現金を使うべきですね。実際に小銭を持って、10円玉10個が100円玉と交換できるものだということを感じたり、あるいは自分で買い物をして支払う金額を間違ったりする経験によって、お金がどういうものかを実感できるようになるからです。実体験としてお金を使ってみないとわからないこともあるはずです。学校でマネー教育をはじめるといっても、教室でシミュレーションするのではピンとこないこともあるでしょう。「魚が切り身のかたちで泳いでいると思っている子どもがいる」という笑い話がありますが、マネー教育も内容次第ではそれに近いことも起こり得るはずです。マネー教育不足が引き起こすさまざまな問題仮にマネー教育をまったく受けないまま大人になると、さまざまな問題に見舞われることが考えられます。何枚もクレジットカードをつくって多重債務を抱えて破産するというのもそのひとつかもしれません。また、現在、大きな問題として取り上げられるのが「奨学金破産」です。連帯保証人になっていた親が病気になるなどして、親が破産するというケースも見られます。まして少子高齢化がますます進むこれからは、老後の生活をイメージして個人でも年金をつくらないといけない時代になる。いま、大企業で必ず導入しているのが確定拠出年金です。個人型だろうと企業型だろうと、その企業に就職すれば必ず加入することになる。大学を卒業した途端に資産運用について選択を迫られることになるのです。どの投資信託にするのか、元本保証の預金にするのか、それとも別の選択肢にするのか……。それぞれがどういうものか理解できなければ、自分の将来を自分で決められないことになってしまいます。あるいは、振り込め詐欺の片棒を担ぐようなことにもなりかねません。「簡単に稼げる」といった犯罪の誘いに乗ってしまうのは、地道に稼いだお金を有効に使うとか、ある程度節約した生活をして計画的にお金をためるといった長期スパンでお金のことを考える姿勢が身についていないからです。公教育でマネー教育がはじまるのはこれから。その教育に臨む姿勢をつくってあげるのは家庭に他なりません。そのために大切だとわたしが考えているのが、「お手伝いの対価としておこづかいをあげる」ということ。責任を持って手伝いという自分の仕事(役割分担)をしてはじめてお金を得る。その経験を幼い頃からさせるのです。「まだ子どもだから」とお金に関する話を子どもに対してシャットアウトしてはいけません。むしろ、子どもだからこそ、きちんと導いてお金に触れさせてあげるべきです。そうでないとお金に対する正しい意識が育たず、将来、自立できない人間になってしまうことを親御さんには意識してほしいと思います。『子どもにおこづかいをあげよう!』藍ひろ子 著・西村隆男 監修/主婦の友社(2014)■ 横浜国立大学名誉教授・西村隆男先生 インタビュー一覧第1回:「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ第2回:遅れが著しい日本の「マネー教育」。日本の子どもは“社会のなかで自立”できるのか?(※近日公開)第3回:「会議・交渉・契約書」で自己肯定感が育つ。子どもをぐんと伸ばす“おこづかい”のあげ方(※近日公開)【プロフィール】西村隆男(にしむら・たかお)1951年生まれ、東京都出身。横浜国立大学名誉教授。経済学博士。高校教諭を経て、横浜国立大学教育学部で25年教壇に立つ。研究テーマは金融教育、消費者教育、パーソナルファイナンス(家計財務管理)など。金融広報中央委員会委員、金融経済教育推進会議委員、前日本消費者教育学会会長。著書に『消費者教育学の地平』(慶應義塾大学出版会)、『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』(祥伝社)、『子どもとマスターする46の金の知識』(合同出版)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月28日ベストセラー書籍 『お母さん! 学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』 の著者、のじまなみさんにインタビュー。性教育アドバイザーでもあるのじまさんは「セックスを伝えることは最大の防犯になる」と断言しています。最大のタブーを親子間で共有することは、後々のコミュニケーションにも役立つはず。子育ては長期間に及ぶものなので、リスク管理は欠かせません。第二回目の記事では「具体的な性教育の仕方」をお伝えしましたが、なかなかハードルは高いけれど、それでもトライするメリットが多大にあるということはおわかりいただけたのではないでしょうか。そして今回は、「性教育によってもたらされるもの」についてです。のじまなみ さん性教育アドバイザー。「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」理事長。防衛医科大学高等看護学校卒業後、看護師として泌尿器科に勤務。自身にも三人の娘がおり「子供達が危険な性の情報に簡単にアクセスできる世界にいる」ことに危機感を抱き、2016年「とにかく明るい性教育【パンツの教室】アカデミー」を設立し、その後協会を立ち上げ、国内外のお母さんたちに性教育を伝えるべく、日々飛び回っている。 とにかく明るい性教育 パンツの教室協会 のじまなみ ブログ ■性教育は最大の防犯教育である「セックスは素晴らしいもの。でも不用意な妊娠を防ぐためには、避妊の方法も同時に伝えなければいけません」とのじまさん。男女関係なく、性被害は起こりますが、妊娠については、男の子側と女の子側と受けるダメージは違ってきます。前回の記事でもお伝えしましたが、なぜ不用意にセックスをしてはいけないのか、若いうちに妊娠するとどうなるのか、と言うことも含めて包み隠さず話すことが大切です。セックスに対して興味を持つのはごく当たり前のこと。「興味本位ではなくて、セックスの先に伝えたいことを考えるといいと思います。性教育は子どもの笑顔と未来を守るものであり、恥ずかしいことではない、とお母さんが自身に言い聞かせながら、やってみてください」のじまさんによると、性教育を受けている子はセックスの初体験の年齢が上がるというデータもあるそうです。聞けば聞くほどに重要性を持つ性教育ですが、ここで素朴な疑問をもう1つ、のじまさんにお聞きしました。―― これまではお母さんが行うことを基本としてお話が進んできましたが、では、お父さんは性教育にどのように関わってもらえばよいのでしょうか?「ここまでお話ししてきたことからもお分かりいただけるように、性教育は“待ったなし”です。私自身は父親に性教育を受けましたが、基本的にはお母さんが取り組んだほうが良いと思っています。なぜなら、それが一番の近道だからです。繰り返しますが、性教育は“待ったなし”です。いつ我が子が性トラブルに巻き込まれるか分からないのです。 これまで私は4,000人のお母さんに性教育の手ほどきをしてきましたが、親からきちんと性の話を受けたことがあるのはたった4人、つまり全体の0.1%です。お父さんはそれ以上に性教育を受けてきていません。今のお父さんたちは『いずれ知るだろう』というスタンスで、内心子どもを心配していても言えることがない。お母さん自身が、性教育のハードルを乗り越えることに加えて、お父さんの意識まで変えようとするのは、正直言ってなかなかしんどいです。つまり“時間がかかるの”です。まずはお母さんから性教育をはじめれば、自然と家庭内で性教育に対する前向きな意識が育っていくでしょう。もちろん、お父さんが積極的に性教育に関わるのに越したことはありません。でも、最初は“参加してくれたらラッキー”くらいに構えているとよいかもしれませんね」なるほどの意見! 過剰に期待せずに、でんと構えてもらい、夫婦として基本的な考えを合致しておけば、子どもも安心ですね。ちなみに、すでに独自で性教育している方で、今回お聞きしたお話のようにできていなかったと言う方もいらっしゃると思いますが「心配はありません」と、のじまさん。「マイナスの性教育をしてしまった場合は、2倍の性教育をして肯定してあげることです。何しろ自己肯定感を育てることが大切です」自己肯定感を育むということは、子育てにおいては肝となるべきこと。「性」だけを切り抜かず、子育て全体の中のひとつとして捉えて見てはどうでしょうか。■性トラブルは身近にゴロゴロ転がっている!性教育については、ちょっと怖い話も伺いました。「これまでは知らない人からの危険を回避する、というお話でしたが、実は知っている人からの性トラブルも多いという現実があります」。これはなかなかに怖い話。身近な人間からの性トラブルは、子ども自身、母親に話すことを躊躇してしまいそうですが、日頃からなんでも話せる関係性を作っておけば回避できそう。子どもにとって、味方なのだ、ということを常に伝えておくことで安心させるといいのかもしれません。また、ネットが発達した最近では、ライン婚やSNS婚なども増えてきているのだそう。人と人との可能性、出会いも広がりましたが、気軽に人間関係も繋がれるということは、リスクもその分強まったことにもなります。危険はあちこちに転がっているということ。決してそれは、他人事ではないのです。母親として未然にトラブルを防ぐこと。性教育は必須の教育なのだということがわかるでしょう。■アイデンティティーの強要社会性教育の話の延長で、のじまさんが現代の「子育て」の変化について実感していることも話してくれました。「ここまでは子どもへの話でしたが、デジタル時代になって生きづらくなったのは大人も同じ。SNSが広がったことで、得られる情報は増えたけれど、余計な情報も知ることになりました。そのことによって、人は無理やり『アイデンティティ』を持たないといけなくなった。それは子育て中のお母さんにとってマイナスになることもあります」支持されるのは、“素敵なお母さん”。おしゃれなファッションをして、スタイリッシュな家具に囲まれ、家事も上手で、教育にも熱心。比べてはいけない、と思いつつ自分と比べてしまうのが人間の心理というもの。このような必要性が問われる情報が、母親自身の自己肯定感をも奪ってしまう、とのじまさんは指摘しています。筆者も育児と仕事の両立で悩んで挫折した経験があるのですが、その頃はまだそんなにSNSを使ってない時代でした。あの時にSNSがあったらと思うと正直、ゾッとすることもあります。「気にしない」「私は私!」と強い自分を持つこと。そのままの自分を認めてあげること。子どもを大切にできるのは、自分を大切にすることができるお母さんなのではないでしょうか。そういう意味でも、性教育から「自己肯定感」を育むことは、お母さんにとっても得るものはとても大きい。■お母さん同士で共感する時代へ!性について、セックス、生理、命が生まれること。今回ののじまさんのお話は、どれをとっても心を掴まれる事柄ばかり。堂々と性教育していきたいものです。確かに、性教育をすぐにしようと思っても、いくつものハードルがあり、なかなか手がけられないというお母さんもいるかもしれません。日々、性教育の他にたくさんやらなければならないことがあり、なんでもお母さんへ負担がのしかかってしまっている現実はありますが、こういう時こそ、お母さん同士で繋がり、必要なことをシェアしてみてはどうでしょうか。タブーなことからは見て見ぬ振りをして、踏み込まなかった時代から、タブーを打ち破り、共感しあう時代へ。今こそ、お母さんの意識改革の時なのかもしれません。
2019年03月25日性教育アドバイザーで、 「お母さん! 学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!」 の著者であるのじまなみさんに、「性教育」についてお話を伺いながらご紹介する連載の2回目です。前回は日本の性教育の実態を伺い、なぜ性教育が必要なのか、その危険性について述べました。今回は、具体的な性教育の実践法についてご紹介したいと思います。のじまなみ さん性教育アドバイザー。「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」理事長。防衛医科大学高等看護学校卒業後、看護師として泌尿器科に勤務。自身にも三人の娘がおり「子供達が危険な性の情報に簡単にアクセスできる世界にいる」ことに危機感を抱き、2016年「とにかく明るい性教育【パンツの教室】アカデミー」を設立し、その後協会を立ち上げ、国内外のお母さんたちに性教育を伝えるべく、日々飛び回っている。 とにかく明るい性教育 パンツの教室協会 のじまなみ ブログ ■性教育は、子どもの「自己肯定感」を育むために必要まずは前回触れた、のじまさんによる性教育の3つのメリットについてお話ししていきましょう。1、自己肯定感が高まり、自分も人も愛せる人間になる2、性犯罪の被害者・加害者にならない3、低年齢の性体験・妊娠・中絶のリスクを回避できる1、自己肯定感が高まり、自分も人も愛せる人間になる1 についてですが、日本の子どもは、世界有数の先進国であるのにも関わらず、自己肯定感が低いと問題視されています。深刻なのは、10代の死因のトップが自殺であること。背景にあるのがこの自己肯定感の欠如だ、とのじまさんは指摘しています。「性教育を通じて、あなたは奇跡が重なって生まれてきたのだ、ということを伝えると、子どもは『愛情』を受けとり、エネルギーにしていくことができます。そして、子どもの自己肯定感を育むことで、親子間のコミュニケーションがスムーズになり、深い絆で結ばれるようになります」2、性犯罪の被害者・加害者にならない2 の性犯罪については、筆者が 「SEIJUKU」 (セイジュク)という性教育ワークショップを始めた理由とも重なっています。社会のトラブルの根幹にあるのは性問題。そのことから身を守るには、きちんと性について知ることが親子で必要だと考え、興味のある方同士でセッションを始めたのですが、この中でよく話題に上るのがいつ自分の子どもが加害者に、被害者になるかわからないという不安についてです。「まだまだ子どもだから」と思っているうちに、子どもはどんどん外からの情報を得て、親が感知できない知識を増やし、危険な領域に入っていきます。善悪を見極められるようになるまで、大人が正しい知識を持ってストップをかけなければいけません。「覚えておきたいのは、性犯罪の被害者は女の子だという思い込み。実は被害者の4割は男の子だという事実です。男の子を好む小児性愛者は一定数おり、とても陰湿です。性犯罪にあった子の精神ダメージは計り知れません。お母さんが積極的に防犯に関わり、女の子も男の子も性犯罪から、身を守る方法を教えてあげてください」3、低年齢の性体験・妊娠・中絶のリスクを回避できる3 の不用意な妊娠については、誰もが避けたい大きな関心事ではないでしょうか。ただ、ここで重要なのはセックスを語らずに性教育はできないということ、とのじまさん。「セックスについては常に説明できるように準備しておく必要があります。そして、今どうしてセックスをしてはいけないのか、デメリットとメリットをお母さんの口から伝えることが重要です。思春期のセックスへの興味本位による行為を防ぐためにも、きちんとした知識を、明確に伝えてください」■性教育は、何歳の時に、何から始めるか3大メリットについては子育てにおいてとても重要であることはご理解いただけたと思います。早速始めいところですが、気になるのが性教育をスタートする年齢です。のじまさん曰く性教育をスタートさせるのに適しているのは「3歳」だというから驚き。「私は、子どもたちが、まだうんこ、おっぱい、ちんちん、が大好きな年齢である3歳から10歳の下ネタ全盛期の時に行うべきだと考えています」性を本格的に意識しないうちに始めるというところがポイント。のじまさんによると、精神分析学の創始者として知られるフロイトが研究した発達段階から考えても3歳から10歳は性教育の適齢期に当てはまると言います。「フロイトの説では、母乳などから栄養を得ることが快感の『口唇期』をへて、幼児はトイレトレーニングがうまくいくようになる『肛門期』に移ります。そして、幼稚園から小学校入学前くらいになる『男根期』を迎え、男の子と女の子の体の違いに気づく。男の子が自分のおちんちんを触ったり、興味を示す頃ですね。この子どもが自分の体に興味を持った時にこそ、声をかけましょう」ここで、のじまさんにある疑問をぶつけてみました。―― 家族構成や、兄弟の有無、一番めか二番目か、そして気になる男の子と女の子では、性教育の仕方は変えたほうがいいのでしょうか?「男の子と、女の子でも基本的には同じことを話します。男の子の体と女の子の体の違いをお互いに知らないと、相手のこともいたわれませんし、自分の身も守れません」男女の違いで大きいのはちんちんとおっぱいなど、体のつくりが違うこと。そして、外せないのが生理のことでしょう。お母さんの中には、異性である男の子に生理の話をするのを躊躇してしまう、という方もいると思います。けれど、生理があって初めて子どもができるのです。そのことを知らずに、ナプキンを持っている女の子をからかうようになっては、お互いに傷ついてしまい、生理が『悪者』として捉えかねません」「よく性教育のデメリットを気にされるお母さんもいらっしゃいますが、性教育を知らない子ほど、外で大人をからかったり、他人との距離を測りかねて、土足で踏み込んだりします。パーソナルゾーンに入ってしまうのは知らないからです。女の子には毎月の生理を楽しみにさせられるのはお母さんの力です。男の子には、毎月生理が女の子にはあり、いたわるように教えてあげる。お互いのことをきちんと理解できれば、やさしい子どもたちに、そしてなんでも話せる親子関係を築くことができますよ」■性教育の伝え方にも順番がある!性教育は、男女の体の違いから、同じことを男の子にも女の子にも始める、ということはお分かりになったと思います。その後は、どんな順序で伝えていけばいいのか、のじまさんに伺ってみました。「まずは体の違いそして次に命の話、最後に防犯の話。この順序ですね。命の話というのは『赤ちゃんはどうやってできるか』というセックスの話です。最初はわからないことも多いと思いますが、話をしているうちに、ちゃんとそれぞれが繋がるようになり、自分で理解できるようになります」性教育を実践するには、まずはお母さんがペニスやセックス、膣といった言葉を恥ずかしがらずに言える必要があります。そのほかに、男の子のマスターベーションや精通についてもお母さん自身が理解していなければいけません。生理や精通を迎えるということは、体の成長の証でとても喜ばしいこと。とはいえ、あれこれ一気には伝えられませんから、焦らず少しずつ伝えていってみてください。「体の話の時に、ぜひ伝えていただきたいのが体にはプライベートな大切な場所・水着ゾーンがあるということです。人には見せても、触らせてもいけない大事な場所があるということを具体的に説明することで、身を守る基準を教えることができます。もし突然身の危険が迫っても、子ども自身がはっきりと『NO』と断ることができるように教育することが大切です。見知らぬ人だけでなく、友達同士でも水着ゾーンに対しては踏み込んではいけないということも教えてください」ちなみに私が娘二人に性教育を始めたのはお風呂の時間です。とっても大事なところである『おまた』を洗おうというデリケートゾーンコスメを使うところから始めました。私はついついお風呂にこだわって話していましたが、「お風呂でももちろんよいと思いますが、場所やシーンは特にこだわらず、日常的に話ができるようになると、性教育のハードルも下がると思いますよ」とのじまさん。ご飯を食べている時や、くつろいでいる時など、さりげない日常に挟み込むことができるようになれば、お母さんの方もよし、やるぞ! と構えなくて済むようになりそう。また、のじまさんは繰り返し伝えることが重要だと言います。「いろんなパターンで、やるなら徹底的に行うことです。1度で済む話ではないので、繰り返し行い、子どもの中で繋がるように話していくことが大事です」性教育をしていくイメージ、少しは浮かんだでしょうか。難しく考えることはなく、わかりやすく少しずつ、長い時間をかけて伝えるということだと思います。そして、この性教育というのは、現代社会を生きるお母さんにとっても実は大きな意味のあることなのです。このことについては、次の3回目で詳しく述べたいと思います。
2019年03月24日先日、実に興味深い本が発売されました。それは 「お母さん! 学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!」 というショッキングなタイトル。これは、父親から性教育を受け、パンツの教室協会理事として日々奔走していらっしゃるのじまなみさん著書による性教育の本です。これが今、売れに売れているのだそう。表立っては「悩んでいる」とは言えない。けれど、この本を手に取る人がたくさんいると言うことは、つまり、のじまさんが投げかけたこの言葉、この不安要素は、子育て中のママの核の部分に刺さった、ということではないでしょうか。のじまなみ さん性教育アドバイザー。「とにかく明るい性教育【パンツの教室】協会」理事長。防衛医科大学高等看護学校卒業後、看護師として泌尿器科に勤務。自身にも三人の娘がおり「子供達が危険な性の情報に簡単にアクセスできる世界にいる」ことに危機感を抱き、2016年「とにかく明るい性教育【パンツの教室】アカデミー」を設立し、その後協会を立ち上げ、国内外のお母さんたちに性教育を伝えるべく、日々飛び回っている。 とにかく明るい性教育 パンツの教室協会 のじまなみ ブログ ■「性教育」は子どもたちを危険から守る手段情報氾濫時代。私たちは今、インターネットを通して、あらゆる情報に常に囲まれ、監視し、されながら日常を過ごしています。これはここ10年くらいのこと。スマホやパソコン、タブレット、ゲーム機などは、もはや現代人には欠かせない生活必需品です。でも、ここからどんどん「性」に対しての情報は発信されています。こんなに身近に「性」に対するモノやコトが手に入ってしまうのは、じつはとても怖いこと。特に、子育て中のママたちにとって、これは驚異以外の何者でもありません。一方で、私たちはその「リスク対策」をきちんと取れているでしょうか? そのために今、必要なのは、これまで“なあなあ” にされてきた「性教育」という教育です。これが、親自身にとっても子どもたちにとっても「危険から守る手段」になるのです。子育ての一般常識が30年前とは全く違うように、性教育もまた、新たなステージにきています。■「まだ早い」は「もう遅い」! 性教育は何歳から?筆者は、小さい頃から二人の娘に性教育をし始め、数年前から性教育ワークショップ「SEIJUKU」と言うグループを主宰しています。性教育に関心が高いママたち同士で、性教育についての情報をシェアする活動を行なっているのですが、そのセッションでも、それぞれのママが非常に不安を抱えていることが浮き彫りになっています。ママ自身が受けてきた性教育もバラバラ、性教育の指針がなく、どうやって伝えてよいのかわからない、迷っている人がとても多いという現状は、思ったよりも深刻なのでは? と感じています。ちなみに、のじまさんの話によると、ユネスコが2009年に発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では「性教育の開始年齢」が設定されており、なんと5歳だといいます。そして、のじまさんが行なっているパンツの教室では、「3歳から10歳の間に行うべし!」と伝えています。この年齢を聞いて、みなさんはどう思いますか?そんな世界の指針を尻目に、日本の性教育の現状といえば、全く進んでいない、と言ってよいでしょう。1990年に入りHIV問題が起きた時に、慌てて性教育を推進する動きが始まりましたが、すぐにバッシングが起こって、それ以降は後退する一方。政府も統一した指針は示さず、学校によって応対もバラバラ。熱心に性教育しようとする先生がいれば、それが問題視されると言うネガティブな方向へ進んでしまう。人の前では性教育の話はしてはいけない、それは学校でも同じ。タブー視されているのが「性教育」なのです。「日本でまだまだの性教育事情。なのに、その一方で日本は『性産業先進国』と、なんとも恥ずかしい汚名をいただいています。世界のポルノの6割は日本で生産されており、コンビニでは子どもの目線の高さに堂々とHな本が置いてあります。活発になったインターネットは、子どもと誤った性の情報を簡単につなぎ、子どもが性の対象になった事件を伝えるニュースは、毎日のように聞こえてきます。ママたちも一度はヒヤッとした経験があるのではないでしょうか?」と、のじまさんは警鐘を鳴らします。■「うちの子に限って」が起こり得るスマホやタブレット、ゲームは子育て中のママにとってはありがたいツールです。働きながら子育てをして家事も担って、そして最近では受験する子も増えています。何もかもがママたちの肩にのしかかってきて負担が大きい今の社会で、『ちょっと子どもに動画を見てもらってひと休みする』ことをダメだとは言えないでしょう。しかし、ここに恐ろしいリスクが潜んでいると言うことも自覚しなければいけません。のじまさんによると、2歳でもYouTubeからアダルトサイトに飛んでHな動画を目にしてしまった、と相談してくるケースはたくさんあるといいます。わずか2歳。「まだまだ赤ちゃんだから」と、うかうかしてはいられません。「それだけではありません。自分の裸の動画を撮って相手に送る、と言ったトラブルも多数報告されています。もちろん、撮りたくなるような仕掛けをされているので、子どもにはなんの罪もありません。子どもは面白いからやってしまう。そこにどんな危険があるか知らないから、そうしてしまうだけ。気をつけることができるのは、身近なお母さんしかいないんです」これらはなぜ起こってしまうのか?「交通ルールと同じです。教わっていないから。誰かがストップをかけて、イエス、ノーの判断を教えなければならないのに、教えられる大人が少ないんです」学校で教えられる性教育は20年前から何も進んでいないと言われています。また、教える内容も学校によってバラバラだし、4年生の保健体育では時間数も少なく、肝心なことは教えてくれません。そう、そもそも“母親が性教育について何も知らない状況では、何も始まらない”ということなのです。「性教育にはメリットしかありません!」とのじまさんは力強く断言します。その3大メリットは以下の3つ。1、自己肯定感が高まり、自分も人も愛せる人間になる2、性犯罪の被害者・加害者にならない3、低年齢の性体験・妊娠・中絶のリスクを回避できる子育てに悩むすべての女性が、どきっとさせられる事ばかりです。この3つを読むだけでも、性教育の必要性を感じていただけたのではないでしょうか。詳しくは2回目の記事で「では、性教育を具体的にどう行なっていくべきか」を含め、詳しく触れます。
2019年03月24日「先行きが見えない」といわれる時代だからこそ、「子どものために」と考えて塾に通わせることはもちろん、子どもにあれやこれやと習い事をさせている親御さんは多いはず。でも、もしかしたら……自覚しないままに、「教育虐待」をしてしまっている可能性も否定できません。そう語るのは、育児や教育に関する執筆活動の他、各種メディアで活躍する教育ジャーナリストのおおたとしまささん。教育虐待の実態から、現在の家庭教育がはらむ問題点を解説してくれました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまとむかしの「教育虐待」のちがい教育虐待という言葉は新しいものではありますが、きっとむかしから似たようなことはおこなわれていたはずです。子どもに過剰に勉強をさせようとする、いわゆる教育ママは何十年も前から存在しましたよね。ただ、かつての教育虐待と現在のそれはニュアンスが若干ちがってきているようにも思います。かつての厳しい家庭教育には、わかりやすい「ゴール」がありました。目指すのは東大をはじめとした難関大学に入学すること。そのゴールに達すれば、その後の子どもの一生が保障されると親は考えていたのです。だからこそ、勉強させることについてはどこまでも厳しく徹底していた。テストの点が良くなければ、手を上げることもあったかもしれません。でも、逆にいえば、テストの結果が良ければ文句はいわない。そういうシンプルな構造のものでした。一方で、いまは「学歴が役に立たない」ともいわれる時代です。それはつまり、かつてのゴールがゴールではなくなったわけです。もちろん、「学歴が役に立たない」といっても、決して「学歴が必要ない」時代になったわけではありません。学歴はいまも一定の武器になることはたしかです。でも、なかには高学歴を得たうえで、英語ができないといけない、プログラミングができないといけない、コミュニケーション能力が高くないといけない、プレゼンがうまくないといけない……といったさまざまな情報を鵜呑みにしてしまった親もいます。そういう親が子どもをスケジュール漬けにしていることが、現在の教育虐待です。でも、子どもをそんなスーパーマンみたいな人間に育てようとすることは、果たして現実的でしょうか?習い事の本来の意義を知る重要性そういう親は、そもそも習い事を子どもにさせることの意義を取り違えています。習い事とは、子ども自身が求めるものをすることによって、夢中になり、達成し、挫折を味わい、そして壁を乗り越えることで、「やり抜く力」を育ててくれるものであり、なんらかのスキルを得るのは副次的な成果です(インタビュー第3回参照)。子どもにプログラミングを習わせたとして、子どもが大人になったときに現在のプログラム技術が通用するでしょうか?断言できますが、「絶対に通用しない」といっていいでしょう。でも、子ども自身が「プログラミングを学びたい」というのなら話は変わります。徐々に難しいレベルのプログラミングを学びはじめるうち、子どもは「どうしてもわからない」という壁にぶつかります。そこで、考えて考えて「こうすればいいんだ!」という「突き抜け体験」をする。その体験こそが子どもの力になるのであって、スキルそのものに意味があるものではないのです。子どもにさまざまなスキルを身につけさせようとすることは、必要かどうかもわからないアプリをスマホにいくつも入れようとしているようなものです。本当に子どものためを思うのなら、スマホそのものの性能を上げる、つまり子ども自身の力を伸ばしてあげることを考えなければなりません。壁に穴が空いたら赤飯を炊け現在の教育虐待のやっかいなこととして、「親も子どもも無自覚」という点も挙げられます。なかには、コーチングまで学んで子どもを完全にコントロールして勉強や習い事をさせている親もいます。コーチングの本来の使い方ではなく、広い意味ではこれも教育虐待につながる可能性がありますが、当然、親は「子どものため」だと思っています。一方で、うまく操作されているがために、子どもにも「虐待されている」という自覚はありません。だから、思春期を迎えても反抗期が訪れない。「いい子に育った」と思ったら大間違いです。そういう子どもは成人しても誰かに指示を与えられないと落ち着かず、つねに自信を持てない、なにをやっても楽しくないという人間になる。なぜなら、「自分の人生を生きたことがない」からです。むしろ、むかしからいわれる「壁に穴が開いたら赤飯を炊け」じゃありませんが、子どもが中高生になって反抗期が訪れたら、よろこばしいことだととらえるべきです。現在の教育虐待には、「親自身の不安を解消しようとしている」という構造があります。親が持つ「この子はちゃんと生きていけるのだろうか……」という不安を解消するため、親が思う解決策を与えようとしているわけです。でも、子どもはこれから親の価値観を超えた世界で生きていかなければなりません。親が与える解決策はあまり意味がないといっていいでしょう。まずは「親は無力である」と親が自覚することが大切です。子どもは親が思っているよりもたくましいものです。子どもの生きる力を信じてあげましょう。いまの子どもには「ぼーっとする時間」が足りないそして、あれやこれやと習い事をさせる代わりに、「ぼーっとする時間」を与えてあげてください。少しでも時間があればなにか習い事を詰め込もうとする親がいるために、いまの子どもたちにはその時間が圧倒的に足りていません。この「ぼーっとする時間」は人間の成長にとても重要なものです。そういう時間があって、「暇だな」「なにをして過ごそうかな」と子どもははじめて自発性を発揮します。そして、「じゃ、本を読もう」「映画を観よう」などと考える。そこで、「なにをしているときに自分は幸せなのか」と知る。それが「人生の羅針盤」になるのです。その羅針盤を持たないまま成長すると、人生のあらゆる場面で進むべき方向を自分で決められない人間になってしまいます。たとえどんなに優れた能力を秘めた人間であっても、その能力を使うこともできないでしょう。塾や習い事にこれだけ多くのレパートリーが出てきている時代、わたしは皮肉を込めて「そのうち、『ぼーっとする時間』を売る塾というものができる」といっています。「子どもメディテーション教室とかね(笑)。仮にそんなものができても利用することなく、子どもが本当に「ぼーっとできる時間」を大切にしてあげてください。『中学受験「必笑法」』おおたとしまさ 著/中央公論新社(2018)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている第2回:「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び第3回:学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ第4回:「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学校・高等学校卒業、東京外国外大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。株式会社リクルートを経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。著書は『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)など50冊を超える。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月14日2008年の金融危機リーマンショック以降、世界で金融改革が行なわれ、マネー教育の重要性も高まっています。著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、「子どもたちは、金融知識や実践能力を、読み書き同様早い段階で身につけるべきだ」と言っています。また、イギリスでは「7歳の時の金銭感覚が一生続く」と言われているそうです。日本では、“お金の話” は触れにくいトピックで、家族間でも敬遠されがちな傾向がありますよね。海外でも、人にむやみにお金の話を持ち出すのはもちろんNGですが、家庭内では健全なマネー教育が早くから行なわれているようです。しっかりとした金銭感覚を持った賢い大人になるために、今後は早めのマネー教育が必要だと、日本でも認知され始めてきています。今回はマネー教育のポイントをご紹介しましょう。家の貯金は1万円!?日本のマネー教育の現状■家庭でのマネー教育日本の家庭でのマネー教育は、お小遣い制を中心に行なわれているようです。小学校入学時に始める家庭が多く、知るぽると・金融広報中央委員会(2015年度調査)によると、7割強の小学生がお小遣いをもらっています。低学年の約6割の家庭が「時々」親が必要と判断したときにあげ、中学年以降は月1回など定期的お小遣い制に移行、そのほかにもお手伝い制やお年玉も子どもがお金を手にする機会となっています。親はお小遣いの使い方で金銭感覚を身につけてほしいと願っていますが、お小遣い帳をつけている子どもは少なく、3割にも届きません。せっかくのマネー教育の機会なのに、お金の使い方や価値を十分に伝えきれていない印象です。また、あるテレビ番組での「家の貯金はいくらあると思いますか?」という子どもたちへのインタビューの答えは――「1万円?」「1億円!!」など。戸惑いながら答える子も多く、金銭感覚がなかなか育まれていない現状が垣間見えました。■学校でのマネー教育学校での現状はどうでしょうか。「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」(日本証券業協会・金融経済教育を推進する研究会調査2014年調べ)によると、中学1~2年で金融教育の時間が全く取れていないと回答した学校が6~7割に達しています。教員は金融教育の必要性を認識していながら、時間不足と教員自身の知識不足を問題点としてあげています。日本証券業協会が中学生以上向け教材として「株式学習ゲーム」を提供するなど、意識は徐々に高まっていますが、学校での教育もまだまだこれからといったところのようです。また2008年の金融広報中央委員会調査では、「金融・経済の仕組みに十分知識があると思う」人はわずか6.7%しかいませんでした。日本のマネー教育不足は明確な問題として浮かび上がっているのです。マネー教育大国では小学校低学年から「お金」を学ぶ海外はどうなのでしょうか?マネー教育大国と言われているイギリスとアメリカの例を見てみましょう。【イギリスのマネー教育】イギリスでは、1990年前後の年金改革や個人年金がらみの問題で国の財政を圧迫した経験があり、それ以降金融教育に力を入れてきました。2014年から「数学」と「市民教育」の科目として金融商品、マネー管理、税金などを含む「金融教育」がカリキュラム化され、小学校低学年から学び始めます。知識のベースができる14~16歳には金融システムを学ぶ経済が必修科目となっています。また、子どもの将来のための資産形成を目的とする「ジュニアISA」では、16歳から子ども自らの運用が認められているのです。学んできたことが実践できる仕組みはとても有効ですね。【アメリカのマネー教育】アメリカの青少年への金融教育の始まりと言えるのは、1997年ジャンプスタート連盟(NPO団体)が公表した「K-12対象のパーソナルファイナンス教育の全国基準」と、全国経済教育協議会発表の「経済教育における任意の全国基準」でした。さらに、2001年の教育改革により、金融経済教育が特別推奨分野のひとつに指定されたことで、取り組みが広がります。全米共通のカリキュラムはないながらも、その重要性を訴える提言が何度か政府になされており、学校、NPO単位で積極的なパーソナルファイナンス教育が行なわれています。家庭でも、投資について教えることが珍しくなく、早くから実践として株の運用を始める子どもも少なくありません。バフェット氏が関わる子ども向け金融教育アニメや金融アメフトゲームなどのツールも充実していて、楽しく学べる土壌が育っています。このように、国の経済状況などによってベースに違いはあるものの、両国ともマネー教育に積極的ですね。日本も学ぶべき点は多いのではないでしょうか。家庭でのマネー教育には「5つのポイント」がある雇用や年金問題などを抱えるなか、日本でもマネー教育の必然性は確実に高まっています。早い段階で子どもの金銭感覚を養うために家庭でもできることを、プロのアドバイスからご紹介しましょう。(1)始めるタイミング小学生低学年~中学年のお小遣い制に切り替えるタイミングが多いようです。もしくは、子どもがお金に興味を持って質問をしてきたときもチャンス。例えばファイナンシャルプランナーの竹谷希美子氏の場合、消費者ローンのテレビCMを見て「お金を借りる」ことについて興味を持ったお子さんに、ローンの仕組みを説明、住宅ローンについても話し、家にたくさんのお金がかかることを知ってびっくりしていたそうです。子どもの興味を逃さないこともポイントですね。(2)マネー教育のステップ竹谷氏のお子さんは中学生の時から投資を始めたそうですが、そうなるまでには学ぶ順番が大事とおっしゃっています。つまり、お小遣いの管理(=義務教育)から始め、投資(=高等教育)に進むこと。限られたお小遣いをやりくりすることで、忍耐力とマネージメント力が培われ、お金の管理に自信がつきます。投資はそれからです。(3)お小遣いシステムの決め方子どもの性格によって、あげ方を変えることも考えましょう。竹谷氏の場合、コツコツタイプのお子さんは月額制に、行き当たりばったりタイプのお子さんには年棒制にして必要なときに現金を渡し、残高が減っていくシステムにして計画性と忍耐力を育む工夫をしたそうです。画一的な方法ではなく、親が見極めて最適な方法を見出してあげることはとても重要ですね。(4)お小遣い制のルールを決めるポイントは3つ。「あげっぱなしにしない」「お小遣いで買うものの範囲を決める」「使い方は子どもに任せる」。お小遣い帳をつける習慣をつけ、定期的にお金に関する相談に乗るようにしましょう。また、「お菓子はお小遣いから買う」、「勉強に必要な筆記用具は親が買う」など、用途の線引きをはっきりさせておきましょう。範囲内の使い方に口出しはNG。もし計画通りにいかず困るようなら問題点を話し合うことは大切です。(5)お金の使い方を学ぶお金の管理に慣れてきたら、使い方にフォーカスしてみましょう。アメリカの投資教育では貯金箱に4つの口があるそうです。「SAVE(貯める)」「EXPEND(欲しいものに使う)」「INVEST(投資)」「DONATE(寄付)」。使い方の違いでお金の活かし方が変わり、それにより社会貢献もできることに気づかせる目的があります。これはさすがに難しいとしても、お金を使う際にそれが「必要」なのか、ただ「欲しい」だけなのかを、意識させることが重要なのだそう。購入後しばらくたって、お小遣い帳に記された “モノ” を改めてみて、親が「あれ、使ってる?」と聞くなどして、それは本当に必要だったのか、それとも単に欲しかっただけだったのかの確認を繰り返すことで、needとwantの違いがわかるようになります。そうなると、お金の使い方にも変化が現れるでしょう。子どもに手ほどきすることで、大人もとても勉強になりそうですね。***経済評論家の川口一晃氏は、「子どもたちに知ってほしいのは、“貯め方や殖やし方” よりも “使い方”」とおっしゃいます。「夢を実現するためにはお金が必要。どうやって貯めようか?」この流れがとても大切。お金は “よく生きるための手段” なのだという意識が、お金に縛られない生き方へと誘います。こう考えると、“お金のことを話すのはタブー” という意識も自然となくなるのかもしれません。お金に対して偏見を持ってしまう前に、早めのマネー教育が肝心のようですね。(参考)EL BORDE(野村證券)|あなたは子どもに「お金教育ができる?」知っておきたいマネー教育5つのポイントPRESIDENT Online|「一生、お金で苦労しない子が育つ」家庭のマネー教育Woman Excite|「お小遣い」でお金の教育子どもの年齢別・金融教育法Woman Excite|英国では3歳から!子どものお金の教育のために、ママにできることベネッセ教育情報サイト|子供に金銭感覚を身につけさせる教育方法とは?日本証券業協会|株式学習ゲーム日本証券業協会|「海外における金融経済教育の調査・研究」報告書Forbes|ビジネス|日本の子供に金融教育が必要な理由REUTERS|金融知識は「子供時代に身に着けよ」=バフェット氏国立社会保障・人口問題研究所|【特集:各国における所得保障の動向】イギリス年金制度の歴史的展開と近年の改革の流れ斉藤美彦氏知るぽると|「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回)2015年度調査知るぽると|「金融に関する消費者アンケート調査」(第3回)の結果東洋英和女学院大学学術レポジトリ|パーソナルファイナンスと パーソナルファイナンス教育について
2019年03月10日2018年4月から、小学校では道徳が「特別な教科」になりました。子どもたちの“心の教育”や“倫理観”は、これからますます重視され、学校だけではなく家庭や社会全体でも考えなければならない重要な問題になっていくでしょう。今回は、なぜ道徳を学ばなければいけないのか、そして家庭でも取り入れたい道徳教育についてお話します。なぜ今『道徳』に注目が集まるのか?まず、道徳が教科化された背景や目的について振り返ります。従来、小中学校では「道徳の時間」が週1回、教科外活動として設けられていました。親御さんの多くも記憶に残っているのではないでしょうか。その後、2015年には学習指導要領が一部改訂され、道徳は「特別の教科」(道徳科)になります。そして小学校は2018年から、中学校では2019年から全面実施されることが決定されたのです。■道徳教育が重要視されるようになった理由社会のグローバル化によって、今後ますます多種多様な文化や価値観を持った人と接する機会が増えます。お互いの違いを認めて受け入れることが求められる時代に、道徳教育は避けては通れない課題となりました。また、急速に発展したインターネット社会において、コミュニケーションの方法や倫理観にも大きな変化や新しい価値観が発生しました。そのため、対人関係の構築の仕方も家庭内の「しつけ」だけにとどまらず、社会全体で考えなければいけない教育の問題へと変化したのです。また、教科としての道徳教育を早急に推進していくにあたり、大きな影響を与えているのは「いじめ問題」です。従来の道徳教育では、「いじめは許されない」と発表させたり書かせたりするだけで、やや表面的な教育に終始していました。しかしこれからは、客観的な意見を出し合うよりも、「自分だったらどうするか」と真正面から問題に向き合うことが重要であり、現実のいじめ問題に対応できる資質や能力の育成が求められるようになったのです。■授業内容と評価基準教科外活動から「特別の教科」になった道徳。その授業内容はどのように変化していったのでしょうか。学習指導要領には、「自分の考えを基に話し合ったり書いたりするなどの言語活動を充実すること」と記載されています。つまり、従来の読んだり聞いたりするインプット重視の教育から、自分の考えをアウトプットすることを重視する方向へとシフトしているのです。道徳の授業を通して、「考える力」「議論する力」が求められるようになっていることも特徴だといえるでしょう。また道徳は「特別な教科」ということで、数値での評価はありません。道徳科における評価は他教科とは異なります。「他人の考えをしっかり受け止めている」など子どもが成長した様子を担任が見定め、「励まし、伸ばす」文章を書いてもらうことが評価となるのです。その際、ほかの子どもと比較することはせず、「規則の尊重」や「家族愛」など、内容項目ひとつひとつを評価しない、という決まりになっています。心の教育を軽視するとどうなる?道徳教育を考えるとき、東京都独自のある取り組みが参考になります。それは平成12年に策定された『こころの東京革命』です。■『こころの東京革命』とは?親と大人が責任を持ち、次代を担う子供の正義感や倫理観、思いやりの心を育み、自らが手本となりながら、人が生きて行く上で当然の心得を伝えていこうという取り組み。その中で、大人が子どもに伝えるべき大切なことをまとめているので、要約してご紹介します。また、その大切なことが身についていないとどうなってしまうのか、あわせてお伝えします。○社会の「きまり」や人との約束を守るみんなで決めた「きまり」や約束を守ることは、人との信頼関係を築き、維持するための基本であり、社会のなかで自分らしく生きていく上で欠くことができません。・きまりを守れないと秩序を乱して周囲から孤立してしまいます。その結果、自分には価値がないと思い込み、自己肯定感の低下につながります。○思いやりをもつ多様な人々と共に生きるためには、自分だけでなく他人にも心を配らなくてはいけません。思いやりとは、自分の欲しないことを他人にもしないという基本的姿勢から生まれてくるものであり、他人を愛する心をもつことが大切です。・他者への思いやりがないと自分を大切にすることもできません。すると、何事にも無気力で投げやりになってしまいまいます。○自らを律する時と場合に応じて我慢をし、かつ目標を見失わずに粘り強く物事をやり遂げることで、自らを律することの大切さと達成の喜びを感じられます。・我慢ができないと自分の要求を力づくで通そうとします。すぐに結果を求めるようになり、諦めが早くなります。○責任感、正義感をもつ自分に与えられた役割を果たし、自分の行為に責任をとるとき、人は大切な存在として尊ばれます。公平公正に対応しようとする態度、善悪の判断がしっかりでき、人として許されないことにはノーと言える強い意志をもつことが大切です。・責任感と正義感の欠如は、すぐに投げ出したり逃げたりすることにつながります。自分の判断基準が曖昧だと人に流され、決断力も身につきません。○人々や社会のために役立つことに喜びを見いだす人々や社会のために役立つことを自ら積極的に行い、また、さまざまな人々との関わりを通して何かをやり遂げることは、社会を豊かにするとともに、自分自身の充実感を高めることにもつながっていくものです。・人のために行動ができないと、自己中心的で他者の気持ちが理解できない人間になります。家庭でできる道徳教育道徳教育は、学校で学ぶだけで身につくものではありません。子どもたちが育つ環境、つまり家庭における役割がとても重要であることは言うまでもなく、親としてどのようにして子どもに道徳心を教えるのかは重要な課題です。そこで、家庭でも取り入れやすい道徳教育をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。■ピグマリオン効果を利用して絵本から道徳心を学ぶ時代を超えて語り継がれてきた物語には、「悪いことをすれば自分にかかえってくる」「正直な人にはよいことがある」といった道徳的な概念を学ぶのに適した内容が多いのが特徴的です。絵本スタイリスト®︎景山聖子さんも、「Study Hacker こどもまなび☆ラボ」の人気連載「絵本読み聞かせコーチング」で、子どもの道徳心を育む方法を紹介しています。たとえば「お友だちと仲良くしてほしい」「困っている人に手を差し伸べるような子になってほしい」と望むのなら、そんな“理想の行動”をしている人物が出てくるお話を読み聞かせるのです。(中略)そして絵本を読み聞かせてから、お母さんは子どもにこうなってほしいという思いを込めて「○○ちゃんみたいだね」と言い、後は子どもを信じ続けてください。このプロセスを何度も繰り返すだけで、期待が現実化し、子どもの行動が変わっていきます。(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|100回叱るより1冊の絵本。「ピグマリオン効果」を引き出す読み聞かせで、幸せを現実のものに)これは「ピグマリオン効果」を利用した方法です。ピグマリオン効果とは、相手に期待することで、相手もこちらからの期待に応えようとするため、最終的に「期待通りの結果」を得られる現象のこと。絵本に限らず、普段から「○○くんはお友だちの気持ちがわかる優しい子だね」と語りかけてあげるだけで、その効果は実感できるはずです。■役割を与えて責任感や自信を植えつける子育てや教育、社会問題などの記事を多数執筆するシアトル在住のアイネズ・モーベーン・ジョーンズ氏は、日本ならではの優れた教育に着目しています。それは、掃除や給食、動物の世話係に至るまで、さまざまな「役割」を子どもたちに課していること。そして、それらの活動を通して子どもたちの道徳心や倫理観は育まれる、と述べています。仲間と協力し合うこと、責任感を持つこと、あとの人のことを考えて行動すること、ズルをしたら必ず誰かに迷惑がかかること。日々の学校生活の中で、子どもたちは自然とそれらを学び、無意識のうちに身につけているのです。もちろん家庭でも取り入れることができます。「これは○○ちゃんに任せようかな」「これからは玄関のお掃除係になってね」と、子どもでもできる簡単なことから任せてみましょう。すると、自分に与えられた役割をきちんとこなそうと努力し、褒められた喜びが自信につながり、さらに家族を喜ばせようとポジティブな行動力が芽生えます。■親子で一緒に「答えのない問題」について考える家庭での道徳教育にぜひ活用してほしいのが、こちらの本です。『答えのない道徳の問題どう解く?』(ポプラ社)この本は、これからの時代を生き抜く力を育むために、対話から子どもの本音を引き出すことを目的としています。・ついていい嘘と、ついちゃいけない嘘ってどう違うの?・どうして正義のヒーローは、悪者を殴ってもいいんだろう?・ネット上の友だちと学校の友だち、どっちが本当の友だち?これらの疑問に対して、教育評論家の尾木直樹さんや詩人の谷川俊太郎さん、卓球の水谷準選手などの著名人が真剣に向き合い、独自の回答を提示してくれます。正解のない問いを親子で一緒に考える良いきっかけにもなりますね。***答えがない道徳教育だからこそ、ぜひ親子で一緒に考えてみませんか?深く話し合ってみると、大人が思っている以上に子どももいろいろなことを考えているとわかり、お子さんの意外な一面を発見できますよ。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|道徳教育の必要性とは?「特別の教科」になった本当の理由Study Hacker こどもまなび☆ラボ|“心の教育”忘れてない?確かな学力・健やかな体の基盤になる『道徳力』を育てるヒント東京都|「こころの東京革命」行動プラン ~大人が変われば、子供も変わる~Study Hacker こどもまなび☆ラボ|100回叱るより1冊の絵本。「ピグマリオン効果」を引き出す読み聞かせで、幸せを現実のものに東洋経済ONLINE|外国人が感じた日本の「道徳教育」のすごみ文 やまざきひろし/絵 きむらよう・にさわだいらはるひと(2018年),『答えのない道徳の問題どう解く?』,ポプラ社.
2019年03月06日「現在、孫や子どもへの教育資金を贈与する場合、1,500万円まで非課税という特例があります。しかし、この特例は今年の3月末で、見直されるんです」そう解説してくれたのは、円満相続税理士法人代表で相続専門税理士の橘慶太さん。’13年4月に始まった教育資金一括贈与の特例。現在、使うことができる代表的な5つの“特例”、「教育資金贈与の特例」「結婚・子育て資金贈与の特例」「住宅取得資金贈与の特例」「夫婦間贈与の特例」「相続時精算課税の特例」のひとつで、子・孫が30歳になるまで、用途を教育費に限って贈与できる。高齢者の資産を若い世代に移すことで、世代間格差を是正しようというのが教育資金一括贈与の特例の“建て前”だが、じつはこれ、相続税の節税にも効果がある。「相続税は財産が大きくなればなるほど、税率も高くなる累進課税です。だから、生前贈与であらかじめ財産を減らせば、相続税も減らすことができますが、贈与税の基礎控除額は年間110万円まで。これを超えた額には贈与税がかかってしまいます。1,500万円を贈与しようと思えば、贈与の対象が20歳以上で366万円、20歳以下の場合は450万5,000円の贈与税がかかります。でも、この特例を使えば、贈与税はゼロ。つまり、即効性のある節税対策ができるのです」(橘さん・以下同)ただし、使用の条件は厳しい。「これは、30歳未満の子どもや孫の教育資金として使うなら非課税となる制度。信託銀行などに専門口座を開設し、教育資金として使われた証拠になる領収書を提出しなければいけません」ここでいう教育資金とは、幼稚園や学校、職業訓練学校の入学金や授業料。さらにPTA会費、修学旅行費、ユニホーム代もOK。塾や水泳教室、自動車学校などの習い事代、寮費用も含まれる。「ただし、留学費用としての渡航費はOKだけど、ホームステイ代はダメ。学校に直接支払われるものは、1,500万円まで非課税だが、業者などに支払うものは500万円までなど、細かいルールがあるので、気を付けなければなりません。領収書の提出を忘れると、教育費用として加算されないので注意が必要です」30歳までに使い切れなかった場合、残額に贈与税がかかることに。「上限いっぱいの1,500万円を贈与されて、公立中高、国公立大学と進んだ場合、使い切るのは難しいかもしれませんね。また、非課税枠は子ども1人あたり1,500万円なので、両方の祖父母からもらって計3,000万円などとすることはできません」使途は教育費に限るうえに、お金の管理は孫や子ども名義の専用口座で行わないといけないなど、制限が多いこの制度。橘さんは、ある条件のもとであれば、有効な制度だと語る。「死期が近くて、いますぐ相続税を減らしたい人には有効です。それから、『そのつど、教育費を払うね』と約束していても、子育て、孫育ては長期間。その間に、もし認知症になれば贈与が認められなくなりますので、元気なうちに確実に渡すため、制度を利用するという考え方もあるでしょう」
2019年03月04日特別支援教育のくふうを取り入れると、どんな子どもにもわかりやすくなる『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。「特別支援教育は、発達に課題や凸凹がある子だけが受ける特別な指導」であると、一般的には思われているかもしれません。でも、私はそうではないと考えています。私は30年間、幼児や小学生を指導する現場で仕事をしていました。そこでさまざまな子どもたちと接してきました。また、自閉症のある息子は小学校入学時から特別支援教育を受けてきました。そしてその中で、できることが増えていったことを実感しています。その経験から、どんな子どもにも有効なくふうが、特別支援教育の中にはあるのではないかと感じています。そこで、「子どもが大人の話に集中できる環境づくり」「子どもを飽きさせないための“演技力”」「子どもに指示を出す時のくふう」の3つの観点から、特別支援教育のさまざまな場面での有効性を具体的にご紹介します。子どもが大人の話に集中できる環境づくり例えば、狭い喫茶店にいる時、隣の席に座る見知らぬ人の会話が丸聞こえ…ということがあります。でも、目の前の友人と話を始めたとたん、隣の席での会話は不思議と気にならなくなりますよね。私たちには、自分に向けられている声の主の言葉を「選択的に拾おう」とする脳のシステムがあるようです。ところが、これが難しく、自分に関係のない音がドンドン入ってきてしまうという特性がある子どももいます。例えば、教室で窓際の席に座っていると、校庭で行われている体育の授業での号令が聞こえてきてしまい、気になって仕方がありません。でもこれは、気になる程度は違っても、障害がない子どもにだって同じことが言えるのではないでしょうか。私は保育園の中でひらがなを指導する仕事をしていました。授業中、隣のクラスから音楽や歌い声が聞こえてくると、字の練習をしながら歌を歌う子がちらほらいました。こんな時は指導者側が「隣のクラスが静かな学習をしている時は、歌ではなく絵画制作をする」などのくふうをする必要があると感じました。このことは、家庭生活にも応用することができます。例えば子どもに何かを伝えたい時、兄弟姉妹が遊んでいる声やテレビの音が耳に入ってくると、子どもは集中して話を聞くことができません。こういう時は、テレビを消して物音がしないところに行き、子どもが話だけに集中できる環境を用意するとよいでしょう。聴覚だけでなく、視覚にも同じことが言えます。視界に関係のない情報が入ってくると、子どもは「今はどれを見なくてはならないのか?」と迷ってしまいます。例えば、これは小学校1年生に算数を教える時に使ったホワイトボードの画像です。どちらが集中できますか?Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子後者ですよね。「ホワイトボードを見ましょう」と言われても、そこに関係ないたくさんの情報があると、子どもたちは意識して「今、見るべきもの」を探さなくてはなりません。ADHD(注意欠陥・多動性障害)の傾向がある子どもは、さまざまな刺激に影響されやすいという特性があります。関係ない情報がたくさんある中から、必要な情報を選び取ることが難しいので、「ここを見ましょう」と言われても、全く違う場所を見てしまうこともあります。でも、障害の有無に関わらず、子どもは低年齢であるほど、興味があること以外には集中が続かないものです。教室の壁面や黒板いっぱいに飾りつけをしている学校・幼稚園がありますが、その中で何かを指示しても、子どもは選択的に見るべきものを探せないかもしれないので、くふうが必要です。必要のないものはかくし、必要なものだけにして見せる。シンプルであることが大切です。この考え方も、家庭生活に応用することができます。机の上に物が散乱していたり、部屋に子どもの好きな玩具が散らかっていたりする中で、何かを伝えようとしても、子どもは話に集中することが難しいかもしれません。そういう時は、普段は使っていない(ものが少ない)部屋に連れて行くなどして、気が散らない環境をつくったうえで子どもに話をするほうが話に集中してもらえるでしょう。子どもを飽きさせないための“演技力”幼稚園・保育園時代は、保育者がピアノを弾いて歌を歌ってくれたり、手遊びをしてくれたりします。けれども、小学校ではそういう訳にはいきません。1クラス35名程度の大勢の子どもたちを集中させるには、内容そのものよりも、教師の声の出し方や身体の動き、小道具の使い方などがポイント。ここで「飽きさせないくふう」が必要になります。どんなに良い内容の授業をしていても、モゴモゴ話していたり、話し方にリズムテンポがなかったりすると、集中の続かない幼い子どもにはうまく伝わりません。それでも子どもたちは「授業中45分間はじっとしていなくてはならない」とがんばるのですが、だんだん集中が切れて、よそ見をしたりモゾモゾ動き出したりします。こういう時は、子どもたちに「真面目に授業を受けなさい」と言うよりも、まずは教師側に「退屈させないくふう」が必要だと思います。「発達障害がある子どもは扱いにくい」と言われることもありますが、私はむしろ「こういう子どもたちを集中させることができる教師は、指導力や技量もきっと高いのだろう」と感じます。これも、家庭で取り入れることが可能です。言葉の内容だけで言うことを聞かせようとするのではなく、声のトーン、スピード、テンポにも気を配る。服装も、エプロンを外したり、きちんとした格好をするなど、「いつもと違う」という雰囲気を出すと、子どもは「ああ、聞かねばならない」と察するのです。Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子子どもに指示を出す時のくふう「早くしなさい」「きちんとしなさい」日常生活の中でこうした言葉を発する場面は少なくありませんが、この曖昧な言い方も、もっとわかりやすく変えることができます。例えば大人だって、病院が混雑している時に「もう少しお待ちください」と言われても、10分なのか30分なのかもわからず、すごく待たされている気持ちになってしまいます。でも「診察まで待ち時間あと20分」と言われたら、見通しが立ってわかりやすいので、待つことができます。まだ人生経験が浅い子どもには、漠然とした言い方では伝わりません。「早くしなさい」と言うよりも、具体的にいつどんな行動をするのか写真で示すと伝わりやすくなります。自然と時計も読めるようになり、親に「早く、早く」と急かされなくても自主的に行動するようになるのです。Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子部屋が散らかる原因のひとつは、物の指定席が決まっていないことにあります。片づけをしていない子に「ちゃんと片づけなさい」と言うのではなく、入れてほしいおもちゃの指定席の写真を貼って「同じように入れてね」と伝える方が、どの子にとっても断然わかりやすいと思います。これは、ある保育園でされていた道具箱のくふう。中身が整理整頓された状態の写真を、箱の裏に貼ってあります。保育士がいちいち指示をしなくても、子どもたちが自分で写真を見て整理整頓できるようくふうされています。このように見える化すると、やるべきことがわかりやすくなり、子どもは自分で考えて行動することができるようになります。Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子どんな子どもにもわかりやすく、伝わりやすいくふうを「住みやすい社会を作るためには、社会的立場の弱い人に話をきくのが一番確実」だとよく言われますが、私も子どもや障害がある人が安心して暮らせる社会は、どんな人にとっても快適で、安心して暮らすことができると思います。特別支援教育の中で使われる方法には、さまざまなくふうが織り込まれています。それは、障害がある子どもだけでなく、どんな子どもにとってもわかりやすいものです。幼児教育に携わり、また障害がある子どもを育てる中で、その実感は確かなものになっていきました。ぜひどんな子どもに対しても、活用してみてください。
2019年03月02日「先行きが見えない」と異口同音に語られる時代。これから長い人生を歩まなければならない子どもたちは、どんな力を身につけておくべきなのでしょうか。V-net教育相談所を主宰し、さまざまな独自教育メソッドを開発している松永暢史さんは、子どもたちに必要なものとして、7つの力を掲げています。そして、そのなかでも根幹となり得るのが「感受性」だといいます。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「判断力」と「創造力」の礎となる「感受性」子どもに必要な力として、わたしはまず「判断力」と「創造力」を挙げます。判断力がなければ、知識を持っていたとしてもそれを正しく使うことができません。それから、「他の誰もやっていないことをやりたい」「つくりたい」「描きたい」といった願望はいつもわたしたちのなかにある。いわば、創造力は、人間らしくあるための力といえるでしょう。ただ、それらふたつの力に先行して必要なものが「感受性」です。ものを感じ取る力がなければ、正しい判断もできないし、新しいものを生み出すこともできません。判断力、創造力、それに先立つ感受性――この3つが、子どもにとってもっとも大切な力です。それらに加えるなら、「観察力」「探究心」「着想力」「思考力」も大切な力になります。観察は目だけでなく頭でもおこなうもの。言葉がなければ、鋭く深い観察はできません。動物は、人間が仕掛けた罠を観察して見破るということはそうできませんよね?でも、人間なら「あれは罠じゃないか?」と言葉で考えて罠の存在を見破ることができる。動物よりはるかに優れた観察力を持つのが、人間という生き物なのです。そして探究心。ものごととは、目に見えている部分ではなくその下に重要なものが埋まっているものです。だとすれば、なにかに興味を持ったら立ち止まってとどまりそれを突き詰める必要があります。着想力は創造力のベースになる力です。なにかをつくりあげる力があったとしても、そもそもその「なにか」を思いつく力がなければつくる課程に進めません。そして、いうまでもなく、考える動物である人間には思考力が求められます。「7つの力」を伸ばすには家庭環境が重要でも、残念ながら、いまの学校教育はこれらの力を伸ばそうとしているようには思えません。何十人かでまとめてクラス分けされ、先生の話をちゃんと聞くことが求められ、たくさんの宿題を課される。わたしには、近い将来AIに取って代わられる仕事の訓練をされているように見えるのです。では、先に述べた「判断力」「創造力」「感受性」「観察力」「探究心」「着想力」「思考力」はどんなものかというと、これらは「AIが持てない力」です。「AIにできないことはなにか」と考えたわけではありません。「これからの人間にとって大切なものはなにか」と考えると、結果的にAIにできないことに行き着くのです。そして、これらの力を学校教育で伸ばしてくれないのであれば、家庭環境の在り方こそが重要になります。たとえば、感受性というものは、誰かに壊されることなくゆっくり育まれて徐々に良くなるものであって、ある教育によって突然良くなるものではない。「これから感受性を伸ばす教育をします」といった具合に伸ばすことはできません。ということは、子どもの感受性を向上させることは親にしかできないことなのです。感受性を伸ばすには「甘いお菓子」はNG!?子どもの感受性を伸ばしてあげたいのなら、まず「甘いだけのお菓子」をあげることをやめましょう。甘みというものは強烈な味覚ですから、甘いものを口にし続けると他の味を感じる力が鈍くなってしまいます。同じ甘みを持つものでも、果物だったらどうでしょうか?甘いけど酸っぱさも含むなど、味わいが多重です。そういった複雑さを感じ取れる力こそ感受性でしょう。子どもの感受性を伸ばすには、甘いお菓子ではなくて果物を与えるべきです。もちろん、これは一例です。他のさまざまなことについても、刺激が強いものを受け取って反応するのではなく、できるだけ余計な刺激物がない、いい自然環境に触れることが大切です。たとえば、同じことが聴覚についてもいえます。人間の耳は20キロヘルツまでの音しか聞き取ることができません。でも、自然界には20キロヘルツ以上の高周波の音がたくさん存在します。じつは、人間というものはこれらの高周波音を肌で感じ取っているのです。そして、その経験が豊かであるほど感受性も豊かになります。そう考えると、土があって草が生えていて海や川から心地いい風が吹くような環境に子どもを置いてあげる必要がある。ただ、特に都会の子どもだとそういう場所にひとりで行くことはできるものではありません。つまり、自然に囲まれた場所に子どもを連れて行ってあげるのが親の重要な役割なのです。『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』松永暢史 著/すばる舎(2015)■ 教育環境設定コンサルタント・松永暢史さん インタビュー一覧第1回:“AIに勝つ力”は学校教育では育たない。親にしか伸ばせない子どもの「7つの力」第2回:国語力は“〇〇の音読”で爆発的に伸びる。読むだけで子どもの頭がよくなる名作本の選び方(※近日公開)第3回:思考と行動、男女の違いを徹底解説。“男の子らしさ”“女の子らしさ”が伸びる教育方針(※近日公開)第4回:学力を伸ばすコツは男女で違う!子どもの性別で見る学習傾向と、勉強法のひと工夫(※近日公開)【プロフィール】松永暢史(まつなが・のぶふみ)1957年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。V-net教育相談事務所主宰。教育環境設定コンサルタント、学習アドバイザー、能力開発椅子トラクター。「サイコロ学習法」「ダイアローグ法」「抽象構成作文法」など多数の教育メソッドを開発。子どもの個性に合わせてどのような教育をすることが正しいかを導き出し、学習計画、教育機関利用法、進学計画等を提案する。個人授業では国語を担当。『頭のいい小学生が解いている 算数脳がグンと伸びるパズル』(中経出版)、『落ち着かない 話を聞けない マイペースな 小学生男子の育て方』(すばる舎)、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『新 男の子を伸ばす母親は、ここが違う!』(扶桑社)など、教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年02月28日最近、話題となっている不適切動画や詐欺アプリ、情報漏洩。このようなことを避けるため、子どものスマホリテラシーやネットリテラシーは上手に醸成させたいものですね。親世代とは異なり、物心がついた時からスマホが身近にある今の子どもたち。子どもに使いすぎを注意したいものの、自分自身もスマホがなくてはならない存在となっている親世代も多いでしょう。株式会社NTTドコモは「学生のスマートフォン(以下、スマホ)事情」をテーマに、日本全国の高校生・大学生300名を対象にした調査を実施。デジタルネイティブな高校生や大学生の、リアルな実情が見えてきました。■ いまどきの高校生はYoutuberを知らないとアウト?学校の友人と会話をすることが多い話題は?「スマホで見たSNS・動画・アプリなどの話」が約8割(78%)にのぼりました!これは、「TVで見た番組の話」(58%)、「雑誌で見た記事や漫画の話」(30%)を大きく上回る結果。学生の間では、すでにTVや雑誌の存在感は影を潜め、スマホで見るコンテンツが共通の話題となっていることがわかります。友達との会話にあがることがより多い話題は?YoutubeやSNSをTVドラマやファッション誌と比較してもらった結果は以下の通り。学生たちにとってスマホは娯楽だけでなく、あらゆる物事の情報源となっているようです。さらに、高校生にTVタレントとYoutuberで、どちらが友達との会話にあがる方が多いかを聞くと、「TVタレント」(33%)よりも「Youtuber」(37%)の割合が多くなりました。また、Youtuber、Vtuber(バーチャル・ユーチューバー)、TikToker(「TikTok」ユーザー)をはじめとした人気動画クリエイターについての知識がなければ「友人との会話についていけないと思う」と答えた高校生も31%と約3人に1人にのぼりました。高校生活においてTVや漫画の話題で持ちきりだった親世代と、今の高校生はまったく異なることがわかります。■ デジタルネイティブ世代でも気になる、スマホの料金そこで、あらためて「学校の友人とコミュニケーションをおこなう上で、スマホは必須アイテムだと思いますか?」と聞いたところ、高校生・大学生の約7割が(67%)が「そう思う」と回答。デジタルネイティブな高校生・大学生の生活にとって、スマホは「あったら便利なもの」ではなく「なくてはならないもの」であることがわかります。さらに「友人とスマホで動画を見ながら会話をすることがある」と答えた学生は実に半数以上となる53%にのぼっています。また、「友人とスマホで動画を撮影・投稿して楽しむことがある」人も約4割(39%)という結果でした。一方で、一日中動画を見たりネットを使ったりすれば気になるのが、スマホの料金。高校生は特に、親が契約しているとは言え、使いすぎによって取り上げられたり禁止されたりすることもあるでしょう。それは学生たち自身も理解しているようで、「学校の友人とコミュニケーションを十分に楽しもうとすると、スマホの料金が高くなりやすい」と答えた学生は約4人に1人(24%)でした。また、現在のプランではスマホのデータ通信料が足りないと考えている高校生や大学生も少なくありません。kou / PIXTA(ピクスタ)また、「スマホの料金プランは、学校の友人とのコミュニケーションに影響すると思う」と答えた学生も3割(30%)となっています。スマホを通じたコミュニケーションを楽しもうとするほど、料金が気になるというジレンマをかかえる学生は少なくないようです。■ 無料Wi-Fi、詐欺アプリ…万全ではない子どもたちのリスク管理Graphs / PIXTA(ピクスタ)今や当たり前になりつつある、交通機関やカフェなどで利用できるフリーWi-Fi(無料Wi-Fi)。スムーズに動画を視聴でき、またデータ通信料を節約することができるので、お金がない学生たちの強い味方です。今回の調査でも、「無料Wi-Fiの利用経験」がある学生の割合は、90%にものぼりました。また、利用頻度も「週に1回以上」と答えた人が63%に。「週に4回以上」と答えた割合も、全体の約4人に1人(24%)にのぼっており、常日頃から無料Wi-Fiを利用している学生が多いことがわかります。しかし意外と知られていないのが、こうした無料Wi-Fiのセキュリティ面。個人情報やクレジットカード情報の漏洩、ウイルス感染などにつながる可能性があるので、万全な対策を取りたいところ。den-sen / PIXTA(ピクスタ)今回、このような「無料Wi-Fiのセキュリティリスクを知っていたか」を学生たちに聞いたところ、24%と4人に1人が「知らなかった」と回答。リスクを理解することなく、無料Wi-Fiを使用してしまっている学生は少なくないことがわかります。■ 今一度、親子で確認したいスマホの使い方さらに近年では「詐欺アプリ」を通じたスマホユーザーの詐欺被害が増えており、高額なサービス料金を請求されるケースもあります。詐欺アプリの存在についても、今回の調査では約3割と認知度は低く、また知っていても「具体的な対策はできていない」という学生が7割近くにのぼりました。今回の調査では、高校生や大学生といったデジタルネイティブ世代は、スマホに慣れ親しんでいるが故に、かえってリスクに無頓着になってしまっている面が浮き彫りとなりました。携帯キャリア各社がスマホ料金の値下げを予定している2019年。スマホがさらに使いやすくなる今だからこそ、親子でその使い方を確認してみるいい機会かもしれません。【参考】※高校生の会話ネタで多いのは「TVタレント」よりも「YouTuber」!「スマホありき」の学生生活を送るデジタルネイティブたち
2019年02月22日子どもが成長する中で、自分の性別を認識し、異性との違いを把握するなど、「性」への目覚めを実感する人もいるでしょう。そうなってくると、悩ましいのが「性教育」の方法。そもそも必要なのか、先生か親どちらがするべきなのか、どこまで教えるべきなのか、難しいところですよね。今回は、パパやママ自身が子どものころに教えてほしかった性教育について聞いたアンケート結果をもとに、考えてみたいと思います。■「教えてほしかった性教育」がある人は半数以上アンケートでは、性教育について子どものときに教えてほしかったことがあるかどうか答えてもらいました。Q.性教育について、子どものときに教えて欲しかったことはありますか?ある 56.8%ない 38.9%その他 4.3%その結果、「ある」と答えた人が56.8%となり、半数以上の人は子どものころに受けた性教育に、何らかの物足りなさを感じているようです。一方で、「ない」と答えた人は38.9%と4割を切る結果になりました。■「妊娠、出産、不妊」正しい知識を教えてほしいそれでは、アンケートに「ある」と答えた親たちのコメントについて、具体的に知りたかった性教育の内容別に見ていきましょう。▼詳しい避妊方法や性感染症の予防方法について「生理中は妊娠しないと思っていたので、避妊しなかったら妊娠してしまいました。排卵と妊娠しやすい時期について教えてほしかった」(神奈川県 40代女性)「初めてできた彼氏が避妊してくれなくて病気をもらったりして、1人で悩んだことがある。もっと知識があればよかったと後悔した」(千葉県 30代女性)知識がなかったせいで、心や体が傷つく経験をしてしまったママも実際にいるようです。ほかにも「無計画で授かり婚をして、その後離婚してしまった」という声も寄せられていました。こうした経験から、「避妊の方法についてしっかりと教えてほしかった」と考えるのも無理はないのかもしれません。▼不妊について不妊治療を経験したママたちからは、女性の体の機能についてきちんと教えてもらいたかったという意見が集まりました。「学生の頃からもっと自分の体のことを知っていれば、不妊治療で苦労しなかったかもと、少し後悔しています」(神奈川県 30代女性)「年齢とともに卵子も衰えて妊娠しづらくなることや、高齢出産のリスクについては無知すぎたので、今かなり後悔している」(東京都 40代女性)「男性の不妊についても知りたかった」という声もあり、不妊にまつわるさまざま知識について教えておいてほしかったという思いが大人になってから生まれているようです。■子どもが性犯罪に巻き込まれないようにするために子どもが性暴力の被害者となるニュースが流れるたびに、怖い思いをしている親も多いことでしょう。被害者、加害者になるために、性教育でできることはあるのではないかと考えるパパママもいるようです。▼性交渉による精神的・身体的な苦痛について性交渉による身体的・精神的な負担について教えてもらいたいという意見も多く見られました。とくに男の子に、性交渉によって女性は心と体が傷つきやすいものであること、女性を大切に扱うことを伝えてほしいという声は多いようです。「女の子は自分の身体を大切にすることを、男の子は相手を大切に扱うことを、もっと伝えてほしい」(奈良県 40代女性)「安易な性交渉が女性に与える精神や身体への影響や、男性の責任など、リアルなところを教えてもいいんじゃないかな」(北海道 30代男性)また最近は、一番最初にインターネットで過激な動画や画像に触れてしまう場合もあり、その結果それが正しいと思いこんでしまうことへの心配の声もありました。筆者も2人の男の子のママですが、女性を大切にする心は小さいうちから少しずつ養っていきたいなと感じているところです。▼性犯罪について性犯罪は女の子に限らず、男の子も被害にあう可能性があります。また、時には加害者にもなりうるため、子どものときからの教育が必要だと感じるパパやママから意見が寄せられていました。「性犯罪の危険性や対処方法など、必要なことは教えてほしい。私の頃はさらっと流す感じでしか教わらなかったので」(茨城県 40代女性)「小学校低学年の時に、近所の中学生にレイプまがいなことをされてトラウマになりました。性教育をするのであれば、間違った方法を取ると相手はどれだけ傷つくのか教えてほしい。性犯罪をするとどうなるのか、された方の恐怖心を教えていただきたいです」(鳥取県 30代女性)子どもは知識がなく、それが犯罪だとわからないうちに巻き込まれてしまうこともあるため、問題意識を持つ親は少なくないようですね。■性教育、その裏に隠された思いとは 一方、教えてもらいたかったことは「ない」と答えた人も約4割いましたが、その人たちはどのような思いを抱えているのでしょうか。「性に関することはプライバシーの最たるもの。そんなことを他人から、ましてや親から教えてほしいなんて思わなかった。今は性教育を親がするものと言われるけど、なんか釈然としません」(茨城県 30代女性)「女性ですから、たくさん嫌な思いを経験してきました。でも、小中学生の時にそんな教育をされることもストレスです」(東京都 40代女性)「性に関しては学校じゃなく各家庭で 教えるべきでしょう。なんでも教育現場に押し付ける考えや風潮はおかしい」(徳島県 40代男性)性教育への思いは本当にさまざまで、教育をされること自体が本人の苦痛につながることもあるようですね。ほかには、「時が経てば自然とわかった」という意見も寄せられていました。筆者は、子どものときに親から性教育を受けた記憶はなく、ドラマのラブシーンになると気まずくなるような家庭で育ちました。しかし、「教えておいてほしかった」と思うことは不思議とありません。私自身はあのとき、性教育については話したくなかったと思うとともに、それが自分の家族の形だったのだと納得しています。おそらく、ここで「ない」と答えたパパやママの多くも同じような思いでいるのかもしれませんね。■学校での性教育の現状とその課題そもそも、現在学校ではどのように性教育が行われているのでしょうか。中学生の保健体育の学習指導要領によると、中学1年生は「心身の機能の発達と心の健康」について学びます。この学習では、次のように明記されています。受精・妊娠までを取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする出典: 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説「保険体育編」 つまり、妊娠に至る過程については取りあつかわないことが明記されているのです。また、3年生では「健康な生活と疾病の予防」について学ぶのですが、エイズなど性感染症の予防については次のように記載されています。その主な感染経路は性的接触であることから、感染を予防するには性的接触をしないこと、コンドームを使うことなどが有効であることにも触れるようにする出典: 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説「保険体育編」 ただし、「性的接触」の具体的な内容や、コンドームの使い方については言及されておらず、細かい指導内容は現場に任されている現状です。2016年度の未成年者の人工妊娠中絶件数は14,666件で、1,000人あたりに5人の女子が、望まない妊娠による中絶を経験していることがわかっています。さまざまな要因があるのでしょうが、適切な性教育を行うことの大切さを実感します。どの親にとっても性教育については、他人事とは言えない現状があるようです。■子どもにはどんな性教育を受けてほしい?親たちは自分の経験をもとに、子どもたちにどのような性教育をしてほしいと考えているのでしょうか。いくつか、パパやママたちの意見をご紹介したいと思います。「男女別に教えるのをやめたらいいと思います。その時々の体や心の変化を双方が理解し合わないと」(千葉県 30代女性)「当時の担任の先生が“この人とならと思える人とだけしてください”と、とても真剣な顔で言ったので、興味本位でしてはいけないんだと小学生ながらに感じました。大人は大事な子どもを守るために、ちゃんと教えなきゃいけないんですよね」(千葉県 30代女性)「子どもへの性教育は難しいですが、相手の気持ちを考えることが大前提だと言う事は伝えたいです」(千葉県 40代女性)「今の時代は、情報に溢れた時代。我が子には、自分で学び、自分で正しい判断をしてほしいです」(青森県 40代女性)理想の性教育については、多種多様な考えがあるようです。どの意見が正しいという正解はわかりませんが、性教育について、親として子どもにどう向き合うか考えるうえで、ヒントになるかもしれませんね。ここまで、性教育について、パパやママたちの思いを探ってきました。「教えてほしかったことがある」と「ない」とで意見が分かれ、どのような性教育が理想かという答えもさまざまでした。このような「多様性」こそが、性教育のあるべき姿なのかもしれません。また今回のアンケートではあまり触れられませんでしたが、「性」としての教育は、LGBTといったセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)も今後議論が進んでくることでしょう。そもそも、「性」についての認識は人それぞれ細かに異なっています。そうした多様性を認めたうえで、子どもへの性教育の方法についても考えてみるとスムーズに進められるかもしれませんね。また家庭で性教育をする場合での最大のメリットは、子どもの特性を見定めて最適な時期を選ぶことができることかもしれません。なかには性教育に対して拒否反応を持つ子どももいるかと思うので、そういった子どもの場合にはより慎重さが求められるでしょう。家族でどのように性教育と向き合うか。まずは、日ごろから家族間のコミュニケーションを適度にとるなどして、相手の気持ちを考えることを教えることからなのかもしれません。性別や年齢にかかわらず、相手を思いやって行動することの大切さを子どもたちにも伝えていきたいところですね。【参考】・文部科学省: 中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 保健体育編 (PDF:3130KB)・厚生労働省: 平成28年度衛生行政報告例の概況 (PDF:360KB)Q.性教育について、子どものときに教えて欲しかったことはありますか?アンケート回答数:4268件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2019年02月10日子どもの心の教育のひとつとして大切なのが、「倫理観を育てる」ことです。倫理観を育てるためには、敏感期と呼ばれる時期の過ごし方が大きく関わっています。今回は、倫理観と敏感期の関係や、倫理観を育てるための具体的な方法についてご紹介しましょう。「自分さえよければいい」という行動倫理観とは、「人として守るべき社会的な秩序や規律に対する考え方」を指します。倫理観が欠如してしまうと、自己中心的な考え方になってしまったり、「自分さえよければいい」と、相手の気持ちや周囲の人々との関係性を全く考えない行動を起こしたりするようになってしまいます。また、善悪の判断がつかなくなってしまうこともあり、最悪の場合は犯罪に走ってしまうことも。昨今、問題視されているSNSに非常識な行動をアップするという行為や、「SNS映え」のために所かまわず写真を撮るといった行為も、倫理観の欠如が関わっているといわれています。そうならないためには、敏感期に倫理観を育てる必要があるのです。子どもの吸収力が非常に高い時期は?敏感期とはモンテッソーリ教育に基づいた考え方で、子どもが母親のお腹の中にいる7ヶ月の胎児期~6歳前後までの間にさまざまな物事に興味を持ち、ある一定のこだわりが強くなる時期を指します。この敏感期は、子どもの吸収力が非常に高い時期なので、親は子どもが興味を持った物事を肯定的に見ることが大切です。・胎児7ヶ月~3歳前後【話し言葉の敏感期】子どもはこの間に聞いた言葉や音をもとにして話し始める・生後6ヶ月〜3歳前後【秩序の敏感期】物の位置や順序などにこだわりを持つ・0~3歳前後【運動機能の発達の敏感期】歩く・座る・持つ・運ぶといった動きの獲得※3~6歳になると今度はそれらの動きよりもさらに高度な運動を獲得するための敏感期が訪れる・4~6歳前後【数の敏感期】数字に対して興味を持つ【文化の敏感期】生き物、地理や歴史に興味を持つイヤイヤ期と考えないで!子どもの倫理観を育てるためには、上記の中でも「秩序の敏感期」が重要となってきます。場所に対して強いこだわりを見せる時期なので、自宅のダイニングテーブルで自分の定位置以外の席に座ることを嫌がる子が多いようです。また自分が座る位置はもちろん、家族がいつもと違う席に座ることにも抵抗を感じます。ほかには、おもちゃの置いてある場所がいつもと変わったというだけで大泣きすることも。このとき、親は単なるワガママやイヤイヤ期だと考えてしまいがちですが、子どもとしては場所が変わったことに対する抵抗の背景に「秩序を守りたい」という意識があるのです。子どもはまだまだ、この世の中がどんなふうに回っているのか、どんな仕組みになっているのかわかりません。そのため、毎日自分が慣れている場所や物事(秩序)を確認します。そして、その通りになっていないと、途端に不安になってしまうのです。逆に、場所や物事が一定だと、安心して生活を送ることができたり、新しいことに挑戦できたりするようになります。ゆえに、場所へのこだわりを認めてあげることは、物事に正しい道すじがあることへの理解や自分の中での基準を作ることにつながり、倫理観を育てるのに非常に有効なのです。子どもの倫理観を育てるには?子どもが場所へのこだわりを見せるようになったら、以下のポイントに注意しながら生活してみてください。「秩序を守りたい」という子どもの気持ちを優先することで、「イヤイヤ!」や「ダメー!」といった行動が改善されるかもしれません。そして、秩序を守ることが、子どもの倫理観を育てることになるでしょう。■何事も一定を保つ自宅のダイニングテーブルの席などはもちろん、洋服や靴を置く場所、おむつを替える場所など、できる範囲で位置・場所を決めておきましょう。子どもにとっての「ここは○○をする場所だ」という秩序を守ってあげることで、倫理観を育てることはもちろん、日々の行動がスムーズになりますよ。「○○はここに片付けようね」と導いてあげれば、子どもが率先して片付けをするように。■変更時には理由を説明する自宅の場合はある程度、子どもの秩序を守った場所を決められるものの、外出先などではそれが難しいこともあるでしょう。そうした場合は「なぜ今日はいつもと違うのか」についてしっかり説明し、子どもの不安を取り除いてあげることが大切です。大人にとっては些細な変化でも、子どもにとってはパニックになってしまうほどの大きな変化だということを理解してくださいね。***場所の敏感期の子どもは、イヤイヤ期と混合されるような行動も多いため、親としてはストレスが溜まったり、イライラしてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、場所の敏感期の過ごし方は、子どもの倫理観に大きく影響します。敏感期の仕組みを理解して、倫理観を育てるチャンスを逃さないようにしましょう。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|家でもできる「モンテッソーリ教育」のコツ東洋経済オンライン|超厄介な2~3歳児にイライラしない人の心得日経 xTECH|第12回・価値観力を高めるためにStudy Hackerこどもまなびラボ|モンテッソーリ教育に学べ!子どもの才能が伸びる「敏感期」に親がするべきこと。社会福祉法人 聡香会 きたしば保育園|言語敏感期はいつごろから
2019年02月10日小さなお子さんをお持ちだと、「モンテッソーリ」という横文字を目や耳にすることが多いかもしれません。ご存知の方も多いでしょうが、これは「モンテッソーリ教育(モンテッソーリメソッド)」の通称。日本において、小学校入学前から子どもの能力を伸ばそうとする「幼児教育」の分野で人気です。皆さんの中にも、「子どもにモンテッソーリ教育を受けさせたいな」「モンテッソーリってどんな教育なんだろう」と考えている方は少なくないでしょう。そこで今回は、モンテッソーリ教育の特徴についてご説明します。モンテッソーリとはいわゆる「モンテッソーリ」とは、イタリア出身の医師マリア・モンテッソーリ(1870~1952)によって生み出された教育法です。モンテッソーリは、女性として初めてローマ大学の医学博士号を取得した才女。大学卒業後は知的障害を持つ子どもの教育に取り組み、知能を向上させることに成功しました。知的障害を抱えた子どものための教育を、障害を持たない子どもの教育にも活かせると考えたモンテッソーリは、1907年に貧困層向けのアパート内で開設された保育施設「子どもの家」の監督・指導に従事します。そこから生まれた教育法が、モンテッソーリ教育なのです。モンテッソーリ教育は21世紀の現代でも多くの人に支持されています。日本の有名人だと、中学生でプロデビューした高校生棋士・藤井聡太氏の通っていた幼稚園がモンテッソーリ教育を導入していたということで、近年はモンテッソーリ熱が高まっているようですね。モンテッソーリの思想とキーワードモンテッソーリを語るにあたって、避けて通れないキーワードがいくつかあります。マリア・モンテッソーリの思想とともにご紹介しましょう。自主性(independence)モンテッソーリにおいては「自主性(independence)」が非常に重視されています。とはいえ、「勉強しろと言わなくてもすすんで勉強できる子どもに育てる」といった程度ではなく、子どもが身の回りのことを自分でできるようにさせるのが大事なのです。モンテッソーリは著書において、自主性について以下のように述べています。子どもというのは、無力さという生来の特性のため、また社会における個人という特質のため、行動を制限する枷(かせ)に縛られています。自由(liberty)を基礎とする教育法というものは、子どもがこれら多様な障害を乗り越えるのを助けるべく、関与しなければならないのです。言い換えると、子どものトレーニングは、合理的な方法において、子どもの行動を制限する社会的な束縛を軽減するようなものでなければいけません。いかなる教育的活動も、幼児のトレーニングにおいて有効であろうとするならば、この自主性という道程において子どもが前に進むのを助けるものでなければいけません。私たちは、彼らが支えなしに歩き、走り、階段を上り下りし、落ちているものを拾い、自分で服を脱ぎ着し、自分で風呂に入り、はっきりとしゃべり、自分が必要としていることを明確に表現できるようになるよう、子どもたちを手伝わなければならないのです。子どもたちがそれぞれの個人的な目的と欲求を満たすことができるような助けを与えなければなりません。これら全てが、自主性のための教育を構成するのです。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:Maria Montessori (1912), The Montessori Method, translated by Anne E. George, New York, Frederick A. Stokes Company.)モンテッソーリ教育を導入している「愛珠幼稚園」(世田谷区)の園長・天野珠子氏も、子どもの自主性を以下のように強調しています。「教具」についてはのちほど説明しましょう。子どもの自主性を尊重し、それを大人が気づき、手伝うことで子どもの自立につなげていく、ということをモンテッソーリ教育では大切にしています。そのためのひとつの手段として、さまざまな専用の教具を使うことが特徴の一つです。子どもたちは時期に合わせた教具を自由に選び、遊ぶことで、発達と自立をしていきます。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)敏感期(sensitive period)子どもは大人の手を借りず、ひとりで物事をこなしてみたくなる時期があるもの。モンテッソーリ教育において、何をやってみたくなるのかは子どもの発達段階によって異なると考えられ、そのような時期は「敏感期(sensitive period)」と呼ばれています。環境心理学などを研究し、『幼児教育のための空間デザイン―モンテッソーリ教育における建築・設備・家具・道具―』(風間書房、2018年)を著した高橋節子氏によると、子どもは生まれつき「発達の法則」を持っているとモンテッソーリは考えていたそう。そしてその法則に基づいて、さまざまな敏感期が訪れるのだそうです。敏感期には以下のような例があります。言語の敏感期では、子どもは単語だけではなく、細かい文法も一緒に習得する。そして、発達の計画が目指した通りに言語を獲得すると、言語の敏感期は終わり、新たな別の能力を獲得するための敏感期が始まる(太字による強調は編集部が施した)(引用元:J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――)例えば1歳半の子どもが階段を何回も何回も上ろうとすることがあり、危ないからと下ろしてもまた上る。これは「足腰の敏感期」で、自分の足の筋肉を発達させて動き回るために必要な行為なのです。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)整えられた環境(prepared environment)上述したとおり、モンテッソーリ教育では子どもの自主性が重視されています。そして、教育者の役割は子どもに知識を詰め込んだり命令に従わせたりすることではなく、「整えられた環境(prepared environment)」を用意して、子どもが自主性を養えるようにしてあげることだと考えられているのです。教師は「積極的(active)」であるよりも「消極的(passive)」でなければならない、とモンテッソーリは述べました。子どもたちを積極的にリードすることではなく、子どもが自主性を発揮できる環境(教室)を整えてあげることが教師の仕事なのです。北米モンテッソーリセンターによると、「整えられた環境」には6つの原則があるそう。「知的な環境」を作り出すには、自由で美しい空間が必要なようですね。1.自由:子どもが好奇心をもって自由に移動でき、そこでどんな活動をするか選べる。2.構造と秩序:宇宙における「構造と秩序」が反映されるようにする。3.美しさ:見た目に美しく、リラックスできる場所にする。4.自然さと迫真性:プラスチックよりも、木やガラスの素材を用いる。5.社会的環境:子ども同士が交流できるようにする。6.知的環境:上記5つの条件を満たさなければ、せっかくの知的環境が目的を果たせない。モンテッソーリ教育の活動上記のような特徴を持つモンテッソーリ教育ですが、具体的にどんなことを行っているのでしょう?高橋氏によると、モンテッソーリ教育における活動は「教具の練習」「日常生活の練習」「社会性の獲得」に大別できるそうです。順に見ていきましょう。教具の練習モンテッソーリといえば教具、というほど有名です。教具(material)とは、モンテッソーリ教育において使われる、何度も使うことによって子どもの感性の発達を目指す専用の道具。多くは木製で、一見おもちゃのように見えます。ひとつひとつの教具には目的が設定されています。ジャンルは「日常生活の練習」(後述)のほか、「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」の5種類です。特に有名な教具が、大きさの異なるピンク色の木製ブロックが10個セットになった「ピンクタワー」。「感覚教育」の教具に分類され、五感のなかでも特に「視覚」を刺激するものです。三次元の立体物を見たり持ったりすることで、「大きい」「小さい」という概念を理解させるという目的があります。モンテッソーリは著書のなかで、「ピンクタワー」について以下のように述べています。1つ目のブロックは一辺が10cmで、ほかのブロックは1cmずつ小さくなり、いちばん小さいのは一辺が1cmです。活動においては、これらピンク色のブロックを緑のカーペットの上に出し、いちばん大きいキューブを最下部に、ほかのブロックを大きさ順に積み、てっぺんに1cmのキューブを載せて、小さなタワーを作ります。子どもは毎回、緑のカーペットの上にばらまかれたブロックのなかから「最も大きい」ブロックを選ばなければいけません。このゲームをいちばん楽しむのは2歳半の子で、小さいタワーを作り上げるとすぐ手で軽く払って壊し、ピンクのキューブが緑のカーペットの上に散らばっているのをうっとり眺めます。そして再びタワーの建設を始め、作っては壊しを一定回数繰り返すのです。(引用元:Maria Montessori (1912), The Montessori Method, New York, Frederick A. Stokes Company.)子どもたちが教具で遊ぶ様子が目に浮かんできそうですね。このように、モンテッソーリ教育においては、教具で遊ぶことにより教育が行われるのです。日常生活の練習モンテッソーリ教育は、子どもを天才・秀才に育てることを目的としたものではありません。そもそも貧しい地域で始まったモンテッソーリの「子どもの家」に集まってきた子たちは、貧しい家の出身でした。彼らは親からじゅうぶんな教育や世話を受けられず、不衛生な状態だったようです。モンテッソーリ教育において、「しつけ」とは、大人の言うことを聞かせることではなく、子どもが自分のことを自分でできるように導くことを指します。「しつけられた」人間というのは「自分の主人(master of himself)である」人なのです。これは、上に挙げた「自主性」というキーワードとも大きく関わっています。モンテッソーリ教育の目的とは、自主性を持つ子どもを育てること。そして自主性のある子どもとは、身の回りのことを自分でできる子どもなのです。モンテッソーリによると、「子どもの家」に来園した子どもたちが毎朝することは「日常生活の練習」でした。まず先生は、子どもたちの爪や歯がきれいかどうかチェックします。そして服のボタンが取れていたり靴が汚れていたりすれば、子どもの注意をそちらに向けさせます。このようにして、自分の姿を観察することに慣れさせ、人からどう見えるのか興味を持たせるのだそうです。そして手や耳の正しい洗い方を教え、子どもが体を清潔に保てるようにするのです。そのあと、子どもたちはエプロンをつけて教室の掃除を行います。まず、教具が正しく置かれて綺麗な状態かどうか確認。雑巾やホウキの使い方を教わって、みんなで掃除します。身なりをきちんと整えたり、掃除を自分ですることは、日本の小学校でも教えられていますが、モンテッソーリ教育においてはそれを小さい頃から教えているのですね。社会性の獲得モンテッソーリにおいて、子どもに社会生活(social life)への準備をさせてあげることは非常に重要だとされています。社会とは、年齢や立場の違うさまざまな人が暮らしている空間。そして「社会性」を獲得するため、モンテッソーリ教育では異なる年齢の子どもたちが同じクラスで学びます。年齢によってクラスを分けることは不自然であり、社会性の発達に悪影響だと考えられたからです。年齢の異なる子どもたちが同じクラスで学ぶと、年上は年下の面倒を見て、年下は年上を見習うという教育効果があります。前述の高橋氏は、モンテッソーリ教育における「社会性の獲得」について以下のようにまとめました。すなわち、子どもたちは社会生活と同様に異年齢の仲間の中で、個別の活動をしながらも、互いを尊重し、調和し、助け合いながら活動し、問題が起きたときには子ども同士で解決することで、真の意味での社会性を身につけるとされたのである(太字による強調は編集部が施した)(引用元:J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――)モンテッソーリを家庭で取り入れるにはここまで読んだら、ご自身のお子さんをモンテッソーリの保育園や幼稚園に通わせたくなったかもしれませんね。けれど、もう別の施設に通っていたり、近くに施設がなかったりする場合も。そんなときは、モンテッソーリ教育のエッセンスを家庭に取り入れてみてはいかがでしょうか?手軽な方法をお教えします。まずは、ハーバード大学教育学部長で、モンテッソーリの著書に「前書き」を書いたヘンリー・H・ホームズの言葉をご覧ください。モンテッソーリの教具を自宅で保有することは、おそらく教具そのものに対する害を別にすれば、何の害もないだろう。しかし教具を教育的効果のあるものにするならば、適切な指導のもとに用いなければならない。加えて、教具はモンテッソーリ教育における最も重要な要素では絶対にないのだということを忘れてはいけない。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:Maria Montessori (1912), The Montessori Method, New York, Frederick A. Stokes Company.)モンテッソーリの教具は、あくまで手段にすぎないというのです。では、モンテッソーリ教育における最も重要なこととは何なのでしょう?前述の天野園長は以下のように話します。子どもの自主性を尊重し、それを大人が気づき、手伝うことで子どもの自立につなげていく、ということをモンテッソーリ教育では大切にしています。たまに誤解を受けることがありますが、教具で学ぶことだけがモンテッソーリ教育でありません。例えば愛珠幼稚園では、ほかの普通の幼稚園と同じように体育や音楽の時間もあります。ですが、指導方法は決して命令口調ではなく、子どもたちが自発的にやりたくなるような雰囲気をつくることを重視します。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)子どもの自主性を尊重し、それが育つような環境を用意することなら、家庭でもできそうですね。たとえば以下のような方法があります。1.身じたくを自分でさせる。親がやってあげようとしたら拒否するようなことは、どんどん子どもにやらせてあげればいいですね。子どもが一人でレインコートを着るとします。やっと着られたと思ったら、ボタンがずれている。その時、せっかく一人で着られたものを親が勝手に外してはいけません。モンテッソーリ教育では、まず鏡を見せることにしています。子どもが自分の姿を見て自己訂正させる機会をつくってあげるのです。それで、子どもが外してほしいと言えば外してあげればいいし、自分でやるといえばやらせればいい。それでうまくできなかったとしても、自分でやったほうが、次から自分で注意をするようになります。人がやってくれたら、どこが間違っていたのか自分で気づくことなく終わってしまうでしょう。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自分でできるという自信が学習意欲につながる。「モンテッソーリ教育」成長のためのヒント【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】)2.家事を手伝ってもらう。ごはんの時間は子どもに配膳を手伝ってもらいましょう。子どもは食事の時間が楽しみ。「野菜を洗う」「配膳を手伝う」などかんたんなことから始めさせるのがおすすめ。配膳を手伝ってもらう場合には、食器は子どもの手が届く位置に収納し、お皿やお箸などを自分で選んでもっていける配置にしておきましょう。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|特別な環境がなくても大丈夫!家庭で実践できるモンテッソーリ教育)3.家庭の一角に子ども用の「コーナー」を設ける。たとえば、身支度を自分でできるよう、子ども用の「身支度コーナー」を作るなどがおすすめ。身支度コーナーには、小さな鏡、くし、髪留めなどを並べて置いておき、自分で身支度を楽しくできる環境を作ってあげるのです。そのスペースは子ども専用。物をしまう場所や、レイアウトも自分で決めさせてください。(太字による強調は編集部が施した)(引用元:同上)4.自宅の内装を美しく魅力的に整える。物理的環境は魅力的で豊かでなければならないとされた。その例として、花や絵画などの装飾や、テーブルクロスの使用について述べている。また、家具も魅力的なものであるべきだとし、例えば子どもが日常的に使用する木製のイスは魅力的、あるいは洗練されたものであるべきだとし、籐のイス、肘掛けイス、ソファを置くのも良いとするなど、家具にも多様性をもたせる必要があるともしている(太字による強調は編集部が施した)(引用元:J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――)モンテッソーリの「教具」を買いたい!モンテッソーリ独自の教材として知られる「教具」。教具を使うこと自体が最も重要ではないのだといっても、やはり教具のデザインやそれに込められた思想は魅力的です。知育玩具として購入し、家庭で使いたいと思うのも無理はありません。日本でも、複数の通販サイトで個人的に教具を購入することができます。すでに述べたように、教具にはそれぞれ意図が設定されており、「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」の5種類。さらに、0歳児~3歳児向けの簡単な教具もあります。せっかく教具を買うのなら、気にしてほしいのが「棚」についてです。「子どもの家」において、教具は専用の教具棚に収納されます。子どもが自分で出し入れしやすいよう、高さは低く、横に長いのが特徴です。大抵のご家庭において、棚をはじめとする家具は大人が使いやすいように選ばれたもののはず。長く使うことを考えれば仕方ないのですが、そうした家具は大きくて重いため、子どもには使いづらいという欠点があります。一方でモンテッソーリ教育において、家具や教具は子どもが使いやすいように設計された「子どもサイズ」です。そのような道具を使うことによって、子どもは無理なく「日常生活の練習」を行うことができます。日々のお片付けもやりやすくなるはずです。なので、教具を買うにしても買わないにしても、モンテッソーリ教育の考えをとりいれてみて、子ども用の「棚」を検討してみてはいかがでしょうか?子どもが使いやすいサイズの棚を用意して、おもちゃの数はそれに収まるように留めるのです。「新しいおもちゃが欲しいなら、ほかのものを手放す」ルールを作れば、取捨選択することも学べます。国際モンテッソーリ教師の資格を持つ田中昌子氏によると、「全体がよく見え、いつも決まった場所に決まったものがある」ことが大事だそう。つまり、棚は子どもでも見渡せるくらいに低く、しかも棚に物を置きすぎてはいけないのです。このような基準でおもちゃの収納棚や本棚を選んでみてください。「無印良品」や「ニトリ」のカラーボックスを使って、子ども用の収納棚を手作りしている人もいるようですよ。日本にモンテッソーリの学校はある?家庭でいろいろ工夫してみるのも大事ですが、やはり子どもにモンテッソーリ教育を受けさせるなら、教具が豊富にそろっている施設に通わせるのがいちばん。保育園・幼稚園・小学校・中学校から1つずつご紹介します。●モンテッソーリ学芸大学子どもの家(目黒区)2004年に開園した、東京都の認証保育園です。まるでイタリアの邸宅のような、黄色い壁と美しい庭が特徴。保護者も過ごしたくなってしまう魅力的な環境です。教具がそろっているのはもちろん、リトミックや外国人講師による英語のレッスンも行われます。●愛珠幼稚園(世田谷区)1934年に設立されたという私立幼稚園です。モンテッソーリ教育を導入したのは1974年。教具を用いる活動や外遊びだけでなく、地域との交流やボランティア活動も大切にしているそう。本記事にも登場した天野珠子園長のもとで、毎日ワクワクする生活を送れそうです。●マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクール(横浜市)6~12歳の子どもは知的好奇心にあふれているという前提のもと、教具を使いながら幾何学や生物学を学んだり、農業や工業など学校外の専門家から話を聞いたりといった学習活動を行っているそう。ネイティブの先生による英語教育にも力が入っています。●The Montessori School of Tokyo(港区)2歳~15歳の子どもが学ぶインターナショナルスクール。33カ国・150人以上の子どもたちが集まっているとのこと。中等部のカリキュラムは、さまざまな文章を書いたり口頭発表を行ったりといった言語活動がメインになり、やや一般的な学校に近づくようです。モンテッソーリを知る本モンテッソーリについて大まかに紹介してきました。もっと詳しく知りたいと思ったら、関連書籍を読んでみるのがいちばんです。インターネットで購入したり、図書館で探したりしてみてください。●佐々木信一郎『子供の潜在能力を101%引き出すモンテッソーリ教育』(講談社、2006年)入門書として人気の、気軽に読める新書です。モンテッソーリの理念が具体的に分かりやすく説明されているとして好評を得ています。●マリア・モンテッソーリ著、 AMI友の会NIPPON訳・監修『子どもから始まる新しい教育 』(風鳴舎、2017年)モンテッソーリ自身による講演や文章をまとめて再構成したもの。国際モンテッソーリ協会公認のブックレットです。提唱者によって語られる生き生きとした言葉とじかに向き合えば、モンテッソーリの本質に近づけるはず。***日本でもますます注目されている幼児教育。モンテッソーリ教育の恩恵を多くの人が受けられるようになるといいですね。(参考)Maria Montessori (1912), The Montessori Method, New York, Frederick A. Stokes Company.J-STAGE|子どものための物理的環境とは何か――モンテッソーリ教育の場合――StudyHackerこどもまなび☆ラボ|モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違いは?理念と方法論を徹底比較StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自分でできるという自信が学習意欲につながる。「モンテッソーリ教育」成長のためのヒント【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|特別な環境がなくても大丈夫!家庭で実践できるモンテッソーリ教育NAMC Montessori Teacher Training Blog|The Six Principles of the Montessori Prepared Environment Explained学研モール|モンテッソーリ教具学研モール|ピンクタワーHarvard Graduate School of Education|Henry Wyman Holmes, 1880-1960講談社絵本通信|子育て相談 モンテッソーリで考えよう!モンテッソーリ学芸大学子どもの家愛珠幼稚園マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクールThe Montessori School of Tokyo
2019年02月02日藤井聡太七段(*)が幼いころ受けていたことで注目を集めている『モンテッソーリ教育』。その歴史は古く、とくに海外では優秀な人材を育てる教育法として確固たる地位を築いています。一方で、「興味はあるけど、近所にモンテッソーリ教育の幼稚園や保育施設がない……」と諦めている方もいるのではないでしょうか?たしかにモンテッソーリ教育は、専門の知識を身につけた教員のもと、専用の教具を使わなければ学ぶことが難しいと思われがちです。しかし、自宅でもその要素を取り入れて遊ぶことは可能なのです。今回は、モンテッソーリ教育を取り入れた遊びの紹介と、それによって子どものどんな能力が伸びるのか、詳しくご説明します。*…2019年1月現在自立心と自己肯定感が育まれる独自の教育メソッドまずは、モンテッソーリ教育について簡単におさらいしましょう。■モンテッソーリ教育とは?女性医師であり教育家でもあったマリア・モンテッソーリによって、20世紀初頭にイタリアで考案された、子どもの自発性を重視する教育法。「子どもには自分を育てる力(自己教育力)が備わっている」という考え方が根本にあり、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことがモンテッソーリ教育の目的。40年以上にわたりモンテッソーリ教育を実践している『愛珠幼稚園』の園長・天野珠子先生は、「子どもの自主性を尊重し、それを大人が気づき、手伝うことで子どもの自立につなげていくことを大切にしています」と話します。つまり、親がすべきことは、「手取り足取りフォローしてあげるのではなく、挑戦する心を育てて応援すること」なのです。天野先生は「一人でできることが増えるほど、子どもの自己肯定感は育ちます」と述べています。モンテッソーリ教育とは、子どもを自立へと導き、自分で考えて物事に対応できるようになる、いわば“生きる力”を育む教育法でもあるのです。■モンテッソーリ教育の特色子どもは、その時期の発達に沿って「一人でやりたいこと」が出てくる。それは、“ある時期”に“ある行為”のみに現れることがわかっており、その時期を『敏感期』と呼ぶ。敏感期には、その時期に合わせた専用の教具を使って遊ぶ。それらの教具を使ったあらゆる学習活動を『お仕事』と呼び、子ども自身が自由に選んで遊ぶことで発育と自立をうながす。天野先生によると、「敏感期に合わせて、夢中になることを満足するまでやらせてあげるという経験が子どもの成長には必要」とのこと。敏感期に適切な環境に出合うと、子どもは集中現象を起こします。そして、集中現象が次々に満たされていくと心が満足し、お腹が空いたのも忘れるほど夢中になるらしいのです。私たち大人は、子どもが夢中になって何かに取り組んでいる様子を見守りたい反面、時間の都合や周囲への遠慮などから「さ、もう充分遊んだでしょ?」と切り上げてしまうことがよくあります。しかし、子どもの“夢中”は、大きな成長につながる重要な鍵です。時間や状況が許す限り、満足するまでとことんやらせてあげましょう。続いて、『敏感期』と『お仕事』について詳しくご説明します。敏感期に寄り添う優れた教育プログラムまず、本格的な『敏感期』に入る前に幼稚園で最初に行うのは【日常生活の練習】です。これはモンテッソーリ教育の基礎にもなるので、しっかりと身につけなければなりません。その後、【感覚教育】【言語教育】【算数教育】【文化教育】と続きます。■日常生活の練習大人のまねをしたがる「模倣期」と、身体が発達する「運動の敏感期」を利用して、自分の体を意志通りにコントロールする能力を身につけることが目的です。・ボタンをかける・室内を掃く・洗濯をする・ものを磨く・縫うなど、日常生活で行うさまざまな動作を大人がお手本を見せながら練習します。「自分のことを自分でできるようになる」という自立心や独立心のベースを築くことができます。■感覚教育言語・算数・文化教育という知的教育分野の基礎となります。感覚器官を使ってさまざまなことを練習し、感覚を洗練させることで、外界からより繊細な情報を収集できるようになり、知性や情緒が発達します。・対にする・段階づける・仲間分けするという3つの操作法が組み込まれた教具を使うことで、「ものを観察する能力」と「ものを考える方法」が身につきます。■言語教育絵カードや文字カードを使い、ことばの発達段階に合わせてきめ細やかなステップを踏んで、語彙を豊富にしたり文法を覚えたりします。「日常生活の練習」や「感覚教育」と合わせて行うことで、自然と文字の読み書きができるようになります。■算数教育算数教具を手で扱いながら、数の概念の基礎、十進法から簡単な計算までを学びます。ビーズを使い、数の具大量や十進法で桁が上がることを体感したり、数種類の切手を交換して掛け算を覚えたりします。■文化教育「ことば」と「数」以外の幅広い分野を学びます。世界地図パズルや時計などの教具に触れながら、子どもの知りたいという要求に応えるのです。分野を統合した「総合学習」のようなものです。幼稚園や教育施設で使用される教具は360種類にものぼり、すべて体系的につながっています。赤、青、黄の三原色をベースにした色鮮やかなものが多く、優れた教育的効果を発揮するだけではなく、子どもが思わず触りたくなるような魅力あふれるものばかりです。モンテッソーリで学ぶ子どもの「お仕事」モンテッソーリは著書の中で、「大人の仕事が生産的労働であるならば、子どもの仕事は人間を形成すること」と述べています。「つまみたい」「並べたい」といった衝動も、子どもの内面からあふれる自立への強い欲求であると言えるでしょう。つまり、家庭の中での自立や人間形成につながる事柄はみんな、子どもが自分自身を創るための「お仕事」でもあるのです。「モンテッソーリのメソッドを家庭で取り入れるためには、何よりも大人の子どもに対する接し方を重視する必要があります」と語るのは、モンテッソーリ教育施設「吉祥寺こどもの家」園長の百枝義雄先生。まずは、子どもをよく「観察」することから始めましょう。親にとっては不可解に見える子どもの行動にも、子どもが大きく成長するヒントが隠されているのです。子どもの “こだわり” と “伸びる能力” の関係性は以下です。同じことを同じ順序で繰り返したい「順序へのこだわり」→段取り力へ発展同じことを同じようにしたい「習慣へのこだわり」→集中力を育てる同じ場所に同じ人がいないと気持ちがわるい「場所へのこだわり」→倫理観へ発展高いところに乗って歩きたい「運動へのこだわり」→バランス感覚をつける3本指を使いたい「指先運動へのこだわり」→器用な手先をつくる(引用元:東洋経済ONLINE|家でもできる「モンテッソーリ教育」のコツ)このように、「こだわりを満足させることで伸びる能力」について理解できていれば、家庭でもモンテッソーリのメソッドを取り入れやすくなるはずです。家庭で子どもの能力を引き出すポイント次に、モンテッソーリ教育を取り入れた簡単な遊びをご紹介します。おすすめは「親指・人差し指・中指」の三指を使うお仕事です。【あけ移し】トングなどを使って豆や石を一方の容器からもう一方の容器に移します。100円ショップでも手に入るシュガートングが、子どもの手にはちょうどいいですよ。慣れてきたらピンセットを使って、大きめのビーズのあけ移しにも挑戦してみましょう。仕切りのあるケースを使えば、色別に分けて入れることもできます。色を認識し、判断して選り分けるという工程が生まれるので、難易度もアップしますよ。【お料理のお仕事】玉ねぎの皮むきや茹でたじゃがいもの皮むき、またはゆで卵の殻をむく、など「むく」という作業は料理を始める最初のステップとして非常に有効です。指先を使うだけの作業なので危険度が低く、すぐに達成感が得られるのもいいですね。また、前出の百枝先生による『「自分でできる子」が育つ モンテッソーリの紙あそび』(PHP研究所)では、モンテッソーリ園と同じ「お仕事」を自宅で再現する方法が紹介されています。この本を参考に、ハサミやのり、とじ針と毛糸などの道具を用意すれば、付属の型紙を使って気軽に「お仕事」に挑戦できます。たとえば、型紙を写して線に沿って「切る」、線に沿って一定間隔で描かれた点を目印にして「穴をあける」または「縫う」など、モンテッソーリのメソッドに基づいた手法で遊ぶことができるのです。そして、あの藤井七段が子どものころ100個作ったことで話題になった「ハートバッグ」の型紙と編み方も載っています。最後に、子どもが興味を抱き「やってみたい!」となったとき、親は次の点に注意しましょう。・親のお手本を子どもが見ているときには話さない・説明するときは動きを止める・手出しや口出しはしない・子ども自身が試行錯誤するチャンスを奪わない・出来ばえを評価しない穴をあける道具(「かるこ」など)や、抜い差し用の針は、初めて使わせるとき「危なくないかな?」と心配になるかもしれません。使うときは危なくないように見守ったり、子どもの手でも扱いやすい小さめの道具を用意したりと、「どうしたら子どもがうまく使えるか」ということを考えて取り組ませるといいでしょう。『「自分でできる子」が育つ モンテッソーリの紙あそび』(PHP研究所)***モンテッソーリ教育を家庭でも取り入れるには、道具を揃えるより先に「親の心がけ」が必要です。子どもが夢中で取り組んでいる様子を黙って見守り続けるーー簡単なようで難しいですよね。しかし、子どもには大人が思っている以上の能力が備わっています。子どもの自己教育力を信じて、見守ってあげましょう。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|藤井聡太六段、Amazon共同創立者ジェフ・ベゾスが幼児期に受けていた「モンテッソーリ教育」とは?日本モンテッソーリ教育綜合研究所|モンテッソーリ教育についてStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】Study Hacker こどもまなび☆ラボ|子どもたちが自ら育つ力を応援する「モンテッソーリ教育」のメソッド【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】産経WEST|天才・藤井四段も学んだ「モンテッソーリ教育」とはー集中力と自分らしさ、周囲に流されず「好きなことをとことん追求する子供」に『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.東洋経済ONLINE|家でもできる「モンテッソーリ教育」のコツ百枝義雄・百枝知亜紀 著(2018年),『「自分でできる子」が育つ モンテッソーリの紙あそび』,PHP研究所.
2019年01月29日ウーマンエキサイトをご覧の皆様あけましておめでとうございます!!今年もどうぞよろしくお願いいたします♪今日はわが家の「習い事」事情についてのお話です。■習い事は1人1つ! そのワケは…わが家は小2、年中、1歳と3人の子どもがいますが、今のところ習い事をしているのは上2人だけです。長女は小2で始めたピアノ、長男は最近始めたサッカーと、基本的に習い事は一人一つだけ、と決めています。その理由はというと、経済的なこともありますがなによりも…わたしの周囲には、3人きょうだいでそれぞれ2つずつ習い事をしていたり、ほとんど毎日何かしらの習い事で毎日送り迎えしていたり、というご家庭もあるのですが…。わたしのキャパが無理だと言っている…グフッ(吐血)子どもの習い事をさせるってことは、セットで「母親が送迎をする」「付添をする」ということも、もれなくついてくるわけなんですよね!!なかには送迎付きや、付添不要の習い事もありますが…。■母の身にもこたえる習い事の現実それでも、自分の子どもが「やりたい!!」と言ったことは応援してあげたいものですよね。子どもの可能性を伸ばしてあげたいのが親心…。そのためなら頑張れるもの!!だけど…夫にこう簡単に言われるとイラッとします!!「習い事の負担は全部ママ」となりがちですが、2人の大事な子どものことです。ぜひパパも一緒に考えて欲しい!! と思うわたしなのでした。
2019年01月20日