「カメラに愛されているんだよね…」――。嬉しさと感嘆、そして、演出家として何も付け加えることがないことへの悔しさが混ざったような口調で是枝裕和監督は語る。その視線の先にいるのは『三度目の殺人』で、『海街diary』以来の是枝作品への出演を果たした広瀬すず。わずか数年で、その姿を見ない日はないほどの人気女優となった。是枝監督の目に、彼女の成長や変化はどのように映ったのだろうか?是枝監督のオリジナル脚本による本作は、殺人事件を巡るサスペンス。弁護士・重盛(福山雅治)は、解雇された工場の社長殺害の容疑で逮捕され、ほぼ死刑が確実の三隅(役所広司)の弁護を担当することになる。裁判に勝つためには真実など二の次というスタイルの重盛だったが、二転三転していく三隅の供述や被害者遺族との関係に翻弄され…。果たして真実はどこにあるのか?広瀬さんは被害者の娘で、三隅と意外な接点を持つ咲江を演じている。『海街diary』の撮影時から数えると、約3年。10代のうちに再び、是枝組への参加がかなった広瀬さんは「(『海街』が)ちょうど高校に入るときで、今回は高校卒業のタイミング。この感じは、“いま”しかないんだなと感じた」とふり返る。咲江は、事件の被害者の娘であり、常識で考えれば、容疑者の三隅は彼女にとって、父を殺した憎むべき存在。だが、咲江はある秘密を三隅にだけは打ち明けるなど、事件前から三隅と接点があり、事件の様相が大きく覆る事実が徐々に明らかになっていく。是枝監督が今回、カメラに収めようとしたのは「黒すず(笑)」。脚本を書いた是枝監督から見ても、非常に難しい表現が必要とされる役柄だった。「内面に抱え込んでいる感情、その表現の仕方が今回はすごく複雑なんです。(感情を)秘めたまま、爆発させないから。語尾だけでいろんな感情を見ている人間に感じさせないといけない」。だが、そんな難しい役柄にもかかわらず、是枝監督から見て、広瀬さんの演技は「(一発目から)完璧だった」という。「今回は現場で微調整もほとんどしてない。『これだ』というものが最初から出てきてるから。役について話したのは、最初に『この(咲江の)母親(斉藤由貴)は、被害者意識でできていて、娘は被害者なのに、むしろ加害者意識を自分のアイデンティティとして持っている。対照的な母娘なんだ』ということくらい。(広瀬さんは)現場で台本を開かない。セリフが入っているというより、役が入っているから、(台本の)文字に戻らなくてよかったんでしょうけど…。それにしても大したものだと思います」。『海街diary』のときは15歳。是枝監督独特の手法で、台本を渡されず、現場で是枝監督が口頭で広瀬さんにセリフを伝え、相手が何を言い、どんな行動をするかもわからない状況で演じた。その後、『ちはやふる』の小泉徳宏監督、『怒り』の李相日監督など、異なる監督の下で、様々な役柄を演じてきた。そんな広瀬さんから見た是枝組とは?「構えなくていいというか…。前回、セリフも知らず、どんなシーンを撮るのかもわかっていないから、フラットな状態で現場に行けて、それがやりやすくて自分にすごく合っていたんですよね。そのフラットな感じが、今回もあったんだなと感じます。安心感みたいなものがすごくあるんですよね」。加えて、今回、すんなりと咲江という役柄に入れたのは、彼女に対して感じる、距離の近さも大きかったという。「(思いを)言葉にしないで抑えるという役は、これまであまりなかったけど、元々、自分はそっちの性格なので、似ていると思うし、感覚がわかるんですよね。そういう意味で、気持ちが楽でした。どちらかというと、いつもの言葉にする役のほうが大変なので」。「あんまり、“才能”という言葉は使いたくないけど…」と前置きしつつ、是枝監督が口にしたのが、冒頭で紹介した「カメラに愛されている」という言葉。例として挙げたのが、カメラが福山さん演じる重盛の視点で、ドラッグストアの棚越しに咲江を追いかけるという、セリフのない短いシーン。「撮影の中で、いろんな瞬間の偶然があるんです。風が吹いたり、陽の光だったり、それは狙ってできるものじゃないんですけど。ドラッグストアをひとりでぶらっと歩き、ちょっとだけ目線が動き、小さく何かをつぶやく。そのひとつひとつの仕種のタイミングも素晴らしいんですけど、一歩間違えると全然、うまくいかないんです。カメラと役者と、棚のコラボだから、どんなに演技がうまくても、棚をも味方につけないといけない。いや、冗談じゃなく、本当に(笑)。こればっかりは、持ってるものなんですよ」。もちろん、自然現象や棚だけではなく、ほかの共演陣とのやりとりにおいても、彼女の存在感はしっかりと画面を通して伝わってくる。特に印象的なのが、斉藤由貴さんとの母娘のシーン。是枝監督曰く斉藤さんは「やってみないとわかんないタイプ(笑)」。同じシーンでも毎回、テイクごとにセリフはおろか、感情のピークの持っていき方さえも、変わってしまうのだという。まさにどんな球種が投げられるのか、わからない相手とのキャッチボールだが、広瀬さんは見事に全てを受け切った!広瀬さんはこうふり返る。「本当に斉藤さんは、何を発するのかわかんない(苦笑)。台本を読んで、セリフもわかってるんですけど、何が飛んでくるのか…。咲江の、お母さんに対する見方や感情もあるんですけど、(斉藤さんの)ひとつひとつの仕種が見たくないものだったり、『なんでそんな目ができるの?』という視線で…。一緒にやってて怖かったです」。なぜ、このタイミングで再び広瀬さんと?そんな問いに、是枝監督は「僕は、(広瀬さんを)成長と共に撮り続けていきたいって思ってる。『是枝さんは、もういいかな』って嫌がられない限りね(笑)」と語る。何が是枝監督、いや、多くの映画監督にそう思わせるのか?「そりゃもう、女優としてのポテンシャルの高さを引き出したいという、演出家の欲を掻き立てる対象なんじゃないですか?(自身が撮ることで)もっと出てくるんじゃないか?って」。あと1年足らずで広瀬さんは20歳を迎えるが、是枝監督は早くも「20代のどんなすずを撮ろうかな?って考えてます」と笑う。学生から大人の女性、母親…いったい、どんな広瀬さんの“いま”を切り取ってくれるのか?楽しみに待ちたい。(photo / text:Naoki Kurozu)
2017年09月11日現在開催中のヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、公式上映も話題を呼んだ是枝裕和監督の最新作『三度目の殺人』。本作で『そして父になる』に続いて是枝監督とタッグを組み、裁判に“勝つこと”最優先のクールな弁護士・重盛を演じたのが福山雅治。今回は監督も大絶賛を贈る、福山さんの眼差しの演技に注目した。『そして父になる』から4年、是枝監督とは2度目のタッグとなった福山さん。ミュージシャンや写真家としても活躍しながら、同作では日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を受賞するなど、多方面で才能を発揮している。『そして父になる』では、一見、冷徹に見える超エリートの父親・良多を演じていたが、本作でも超エリートで、裁判に勝つためなら真実は二の次と考える弁護士・重盛役を熱演。劇中では、重盛が弁護することになった容疑者の三隅(役所広司)の二転三転する供述に大きく揺さぶられ、真実を求めていくうちに、三隅の深い闇に飲み込まれていく姿を鮮烈に演じている。是枝監督は、今回4年ぶりの再タッグとなった福山さんについて、「『そして父になる』でも思っていたのですが、福山さんはただ“見てる”ときの画がすごく強い人。何かを“見てる眼差し”や“見てる表情”から、いろんな感情が読み取れる。ですから、黙っているシーンをどう魅力的に撮るかということを考えました」と語る。セリフ以外の場面でも感情が滲み出る福山さんの眼差しの演技を大絶賛する是枝監督は、「そんな福山さんを、役所さんの力を借りて、どう揺さぶっていくか、どういじめていくかというのが今回のコンセプトです(笑)」と明かす。最初の本読みの段階から、福山さん演じる重盛と役所さん演じる三隅がガラス越しに会話を交わす接見室のシーンのやりとりを目の当たりにした是枝監督は、身体的な動きが制限される場面にも関わらず、2人がお互いを揺さぶり合い、感情や立場が大きく動いていく様に、圧倒的な面白さを感じ、ゾクゾクしたという。その結果、接見室でのやりとりのシーンを、当初より大幅に増やすことにしたのだとか。是枝監督をも魅了する福山さんの眼差しの演技と、その目で真実を問いかける三隅との接見室のシーンは、必見ポイントの1つといえそうだ。『三度目の殺人』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)
2017年09月10日第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品されている是枝裕和監督の最新作『三度目の殺人』。現地時間の9月5日、本作の公式上映が行われ、主演の福山雅治をはじめ、役所広司、広瀬すずと是枝監督が現地入り、本作の音楽を手掛けるルドヴィコ・エイナウディも加わり、記者会見、フォトコール、レッドカーペットに参加。公式上映では6分ものスタンディングオベーションに包まれた。カンヌ、ベルリンと並ぶ世界三大国際映画祭の1つであり、国際映画祭の中でも最古の歴史を誇るヴェネチア国際映画祭。今年の審査員長は『20センチュリー・ウーマン』の女優アネット・ベニングが務めている。福山さんと広瀬さんは今回が初参加、役所さんは『十三人の刺客』以来、7年ぶり2度目、是枝監督は第52回(1995年)で「金のオゼッラ賞」を受賞したデビュー作『幻の光』以来、実に22年ぶり2度目となった。まず、涼しく爽やかな風が吹く、美しい水の都イタリア・ヴェネチアに、颯爽と登場した福山さん。イタリアの有名ブランド「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」のスーツ姿。役所さんは「ジョルジオ・アルマーニ(GIORGIO ARMANI)のスーツで貫禄たっぷり。また、広瀬さんも同じく「アルマーニ」のドレスと「プラダ(PRADA)」の靴で大人っぽい装い。同じく「アルマーニ」のスーツに身を包んだ是枝監督も記者会見会場に登場。250人収容の会見場は報道陣で満員となった。フォトコールにも数多くのメディアが集まり、「是枝!」という歓声も。世界の「コレエダ」の最新作であり、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『そして父になる』の福山さんとの再タッグである本作への注目度の高さがうかがえた。会見では、特に近年の作品とは全く違った作風となったことについて質問を受けた是枝監督は、「新しいことをやった意識ではない」と話しつつ、「ただこの10年ぐらいホームドラマを続けて人間のデッサンを鉛筆で書いていたようなそういう意識なのです。今回はやや“家”から“社会”へ視野を広げて油絵で描くようなタッチを変えた作画をしている」とコメント。さらに「社会に目を向けたときに、人が人を裁くことについて考えてみたいと思ったことがスタートとしてありました」と語った。また、福山さんは監督について「原案、脚本、監督、編集をやられていて、全ての工程を俳優として参加しながらその現場を一番近くで見られるというのは僕にとってこの上ない贅沢な経験です。贅沢な経験であると同時にすごく刺激を受ける現場です」と真摯にコメント。役所さんは、「監督から『だれか嫌いな人を2~3人殺す練習をしたらどうですか…』、なんて言われたりはしませんでしたけど(笑)」と冗談めかしながらも「撮影の最終日まで脚本が変更になって、監督がどの方向に私たち俳優を導いてくれるのかというのが手に取るようにわかりましたので、それを1つの手掛かりになんとかやりきることができました」と語り、広瀬さんは、「少女だからこそ見える大人の方の言葉、行動、母への思いなど色んなものを客観的に見ていました。お母さん(斉藤由貴)が話す言葉を一字一句聞き逃さないように、ずっと話を聞いて、徐々にニュアンスが変わっていったり、どこか自分をかばうように話す姿を見て、また感情が生まれたりしていました」と撮影当時をふり返っていた。そして、快晴のレッドカーペット会場には、福山さんらキャストと監督をひと目見ようと、大勢の観客とマスコミ陣であふれた。「ドルチェ&ガッバーナ」のタキシードと「ジバンシィ(GIVENCHY)」のシャツ、「クリスチャン・ディオール(ChristianDior)」の靴に身を包んだ福山さん、「ジョルジオ・アルマーニ」のタキシードの役所さんとともに、広瀬さんは日本のブランド「WITH A WHITE」のエレガントな白いロングドレスにイタリアのブランド「ジュゼッペ・ザノッティ(GIUSEPPE ZANOTTI)」のハイヒールを合わせて登場。その姿にはイタリア人女性からも「カワイイー!」といった声もあがり、それぞれ、観客やメディアからの大歓声に応えて手を振ったり、ファンのサインに応じたりする様子が見られた。公式上映は、キャパシティ約1,030席が満席に。観客は是枝監督が描く緊迫感あふれるサスペンスに、息をのむように引きこまれた様子で、上映終了後には6分にも及ぶスタンディングオベーションが!福山さんらキャスト陣は手を振ってそれに応え、是枝監督はベネチア国際映画祭フェスティバルディレクターであるアルベルト・バルベーラと熱い握手を交わしていた。上映を終え、福山さんは「監督の作品を心待ちにしているファンの方、メディアの方のたくさんいらっしゃる」と感じたと言う。「上映が終わった瞬間、思っていたよりも早い段階から拍手が巻き起こって、すごく、良い届き方をしたな、と思いました。そのとき、監督がちょうど隣だったんですが、監督が僕の膝に手を置いてくださったんです」と明かす。「『監督が安堵されている!』と。でも、それが一番嬉しいことなんですよね。さっき移動の車で広瀬さんと話してたんですけど、『監督はやっぱり凄く可愛いよね』ということで、監督のあんな姿初めてみたと嬉しそうなんですよ、すずちゃんも」と語った。海外プレスからは、「すごい緊張感があって引き込まれた」「(俳優たちは)パーフェクトだった」「実際今回観た中で一番よかった」「俳優と監督のコラボとエンディングがよかった」といった声が聞かれた本作。本映画祭のコンペティション部門では、本作を含む計21本の中から最高賞「金獅子賞」を競い、結果は現地時間9日(日本時間10日午前1時から)の授賞式で発表される。『三度目の殺人』は9月9日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年09月06日是枝裕和監督が主演に福山雅治を迎え、法廷心理サスペンスに挑んだ『三度目の殺人』。劇中で得体のしれない殺人犯役を怪演し、弁護士役を演じる福山さんのみならず、初タッグとなった是枝監督までも揺さぶった名優・役所広司について、監督からコメントが到着した。本作で、勝ちにこだわる弁護士・重盛(福山さん)が担当した殺人事件の容疑者・三隅を演じる役所さん。1996年公開の大ヒット作『Shall we ダンス?』をはじめ、『眠る男』『シャブ街道』ではその年の主演男優賞を独占し、翌97年の故・今村昌平監督のカンヌパルム・ドール受賞作『うなぎ』、社会現象となった『失楽園』などで日本映画界を代表する実力派として地位を確立。『SAYURI』(’05)や『バベル』(’07)といったハリウッド映画にも立て続けに出演し、10kgの減量を成功させて挑んだ中島哲也監督の『渇き。』(’14)ではシッチェス・カタロニア国際映画祭で日本人初の最優秀男優賞を受賞するなど、世界中でその実力を見せつけている。そんな役所さんは、意外にも是枝監督作品は本作が初出演。接見のたびに供述を変え、まるで別人のような表情を見せる得体のしれない殺人犯・三隅という男を怪演しており、福山さん演じる弁護士・重盛を事件の真相の闇に呑み込んでいく。今回の豪華タッグが実現した経緯について、「役所さんとはなんとなく将来的に作品をやりたいねっていう話はしていたんですけど、去年役所さんから突然年賀状が来たんですよ。手書きで、“そろそろですね”って書いてあって(笑)。だからそろそろなのかなって。やるからには、演出家として相当覚悟がいる役者なので、本当に胸を借りるつもりで今回は入っていただきました」と、撮影現場でのインタビューでふり返っていた是枝監督。また、劇中で殺人についての供述をコロコロと変えていく役所さんの演技については「役所さんを見ていると、本当にやったんだろうなっていう瞬間と、もしかしたらやってないかもしれないっていう瞬間があって、どちらも本当にそう思うんですよね。すごいなと思って、改めて衝撃を受けました」と、福山さん演じる重盛と同様、監督自身もその演技に揺さぶられていたことを明かしている。脚本を執筆しながら撮影を進行していった是枝監督は、役所さんの圧倒的な演技に物語の結末を書き変えようかと何度も悩んだという。果たして、役所さん演じる殺人犯・三隅はなぜ殺したのか?本当に殺したのか?その結末と共に、監督までをも揺さぶる怪演っぷりをスクリーンで目撃してみて。『三度目の殺人』は9月9日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年09月04日アイドルグループ・関ジャニ∞にそっくりなパペットサラリーマングループ・プレキン∞が、9月25日よりプレミアムフライデー応援ソング「プレキン節 ~替え歌ofスーダラ節~」をMVを公式サイトで公開することが25日、わかった。プレミアムフライデーとは、月末の金曜日は早めに仕事を終えて豊かに過ごすという新しい取り組みで、関ジャニ∞がナビゲーターを務めている。プレキン∞は同グループにそっくりなキャラクターで、全員が月末金曜株式会社に勤務し、プレミアムフライデーを楽しむサラリーマンだという。パペットのデザインは、イラストレーターであり、多くのこども番組で20年以上キャラクターデザインを手がける藤枝リュウジが担当。メンバーが披露する振付はラッキィ池田が担当し、楽しく唄って踊れる楽曲に仕上がった。メンバーのきんご(村上信五にそっくり)は「プレミアムフライデーの楽しみ方は無限大(∞)ですよ! みなさんが、『プレキン節 ~替え歌ofスーダラ節~』で一緒に盛り上がってもらえたらうれしいです! 完成を楽しみにしててください!」と、意気込んだ。○プレキン∞メンバー・すばきんイメージカラー:プレミアムレッド、好きなもの:プレ金に聴くロック、得意なこと:瞑想・まるきんイメージカラー:プレミアムオレンジ、好きなもの:プレ金に放つギャグ、得意なこと:空気づくり・くらきんイメージカラー:プレミアムグリーン、好きなもの:プレ金に食べるカレー、得意なこと:おかわり・ゆーきんイメージカラー:プレミアムブラック、好きなもの:プレ金にやり込むゲーム、得意なこと:いじり・にしきんイメージカラー:プレミアムイエロー、好きなもの:プレ金に食べる焼きそば、得意なこと:スマイル・やすきんイメージカラー:プレミアムブルー、好きなもの:プレ金に潜る海、得意なこと:意味深なイラスト・きんごイメージカラー:プレミアムパープル、好きなもの:プレ金に観るサッカー、得意なこと:友だちになる
2017年08月25日福山雅治を主演に名優・役所広司を迎えた是枝裕和監督の最新作『三度目の殺人』。このほど、同じく是枝監督の『海街diary』でずば抜けた演技力を披露し、女優として大きく注目されることとなった広瀬すずの新たな場面写真が公開された。姉の広瀬アリスとともに雑誌「Seventeen」で人気モデルとして活躍するかたわら、2015年『海街diary』に出演すると、日本アカデミー賞新人賞をはじめとする数々の賞を受賞した広瀬さん。その後、等身大の女子高生を新鮮に演じた『ちはやふる―上の句・下の句―』や、李相日監督の元で体当たりで挑んだ演技が絶賛された『怒り』など、話題作に立て続けに出演し、わずか19歳ながらに着実に女優として進化を遂げている。是枝監督と2度目のタッグとなる本作では、役所さん演じる三隅に父親を殺害された娘の咲江を熱演。公開された場面写真では、『海街diary』で4姉妹の末っ子を演じた初々しい無邪気な姿から一転、決意を持ったような力強い眼差しや、憂いの帯びた表情を見せており、数々の作品を経て成長した広瀬さんによる新境地が感じられる。事件の鍵を握る存在ともいえる咲江が福山さん演じる弁護士の重盛と、三隅の対峙をどのようにかき乱していくのか、物語の展開において目が離せなくなるはずだ。先日、大塚製薬「ファイブミニ」のCMで再タッグを組んだことが話題になったものの、広瀬さんと映画で仕事をするのは約2年ぶりとなる是枝監督は、撮影現場でのインタビューにて「堂々たる役者に成長されていて末恐ろしい感じがします。すごく嬉しいんですけど、短期間の間にこんなに。今回は、事前に脚本を渡していたりと、前作とは撮り方が違うので、『海街』のような関わりとはちょっと違うのですが、ここまでできるのか…と驚いています。役者としてはやっぱり、相当太いんですよね…持っているものが」と激白。広瀬さんの女優としての成長ぶりに驚きを隠さない。また、撮影中の演出については「登場人物が動かないシーンでは、とにかく目線の勝負だと思っているので、どう目線を作るかっていうことだけは指示しようって思っていました。最初指示したときに、目線の動きが速かったので、倍にしようかって言ったんです。すると、ちょっと遅かったので、“1.5”って指示を出したんですよ。言ったことに対する反応が非常に的確なので、そういう意味では指示を間違えたときを考えると逆に怖い。すごいですね彼女は」と振り返り、細やかな演出も柔軟に適応していく広瀬さんの演技力に大絶賛を贈る。本作は、是枝監督が近年描いてきたホームドラマから一転し、かねてより挑戦したいと考えていた法廷を舞台にした心理サスペンス。是枝監督との再タッグのみならず、福山さんや役所さんとも初共演となる広瀬さん。まさにいま、実力派女優への階段を着実に上りつつある彼女がベテランの2人とどのような演技合戦を繰り広げるのか、期待がかかる。『三度目の殺人』は9月9日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年08月22日女優の広瀬すず(18)が、是枝裕和監督が演出する大塚製薬・ファイブミニの新CM「恋よりセンイ。」編に出演する。2人は映画『海街diary』(15年)以来のタッグとなり、撮影と照明も同作と同じく瀧本幹也氏、藤井稔恭氏が担当した。CMは、今春高校を卒業したばかりの広瀬の等身大を描く。仕事を一生懸命がんばりながらも、地元の友人と自分とのギャップに葛藤。自宅の屋上ですっぴんになり、自分と向き合いながら東京タワーを見つめ、大きく息をつく。CMソングは、シンガーソングライター・Charaが今回のために書き下ろした「Sympathy」。撮影を終えた広瀬は、「役になりきるのではなく、"広瀬すず"として演じてもらいたいと監督から言われました」と明かし、「それが今までにない感覚で、自分がそのままCMに出ているというのが、恥ずかしいというか、でもすごくおもしろい体験でした」と振り返る。また、「映画での是枝監督しか知らなかったけど、動きなどもどんどん追求していく姿が映画と変わらない」と実感。是枝監督を「お父さんみたいな存在」と受けとめ、「ずっといつも見守っていてくれているんだろうなぁって想像ができるような言葉をかけてくださいます」と変わらぬ魅力を伝える。一方の是枝監督は、「あまりCMで見ない、すずの表情を撮りたいなという気持ちで作成しました」と説明し、「決して、ドキュメントではないですが、ちゃんと女優さんとして撮ろうという気持ちで撮っていました。いい横顔が撮れたと思います」と手応えを感じている様子。久しぶりの再会で「思っていた3倍くらいのスピードで今、階段を駆け上っていて、きっとこのままの勢いで10代を終えるんだろうなと思います」と成長を肌で感じ、「だからきっと女優としては20代が勝負になるのかな。本当は30代が勝負だけど、20代でいろいろな役をやって多少立ち止まって違うものをやってみたり、チャレンジして、失敗も経験して、良い30代を迎えてほしい」とその将来に期待を寄せていた。映画『海街diary』は、第39回日本アカデミー賞で作品賞ほか、4部門で最優秀賞を受賞。その年の映画賞を総ナメし、第68回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出品された。広瀬は同作での演技が高く評価され、日本アカデミー賞の新人俳優賞はじめ数々の映画賞を受賞した。
2017年05月18日福山雅治が勝利至上主義の弁護士を演じ、是枝裕和監督とタッグを組むことが決定している最新作のタイトルが、この度『三度目の殺人』に決定。また共演に広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介らの出演が決定した。勝利にこだわる弁護士重盛(福山雅治)が、やむをえず弁護を担当することになったのは、30年前にも殺人の前科がある三隅(役所広司)。解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴されている。犯行も自供し、このままだと死刑はまぬがれない。はじめから「負け」が決まったような裁判だったが、三隅に会うたび重盛の中で確信が揺らいでいく。三隅の動機が希薄なのだ。彼はなぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?重盛の視点で絡んだ人間たちの糸をひとつひとつ紐解いていくと、それまでみえていた事実が次々と変容していく――。第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、2013年に全国公開し、国内興行成績32億円の大ヒットを記録した『そして父になる』の是枝監督と福山さんがタッグを組む本作は、是枝監督がオリジナル脚本で描く法廷心理サスペンス。福山さん演じる弁護士・重盛に対峙する殺人犯・三隅には、是枝組初参加の名優・役所広司が演じ、福山さんと役所さんの初共演が実現した。そして今回、新たにキャストが発表!物語の鍵を握る少女で被害者の娘・山中咲江役に、映画やCMなどいま引っ張りだことなっている広瀬さん。『海街diary』以来、是枝作品2作品目の出演となる。また、被害者の妻・山中美津江役に斉藤さん、重盛と事件解明に奔走する司法修習の同期弁護士・摂津大輔役に吉田さん、重盛の事務所に所属する若手弁護士・川島輝役に満島さんが出演。「是枝さんの作品の中で生れる時間が凄く幸せ」と話す広瀬さんは、「どんなシーンでも咲江が見ているもの、感じていることを私と同じ感覚で感じてくださって、言葉をくれる監督はやっぱりとても心強く、凄く気持ちがいい」と語り、「少女だからこそ見える世界を大切に、強く立っていたいです」と意気込んでいる。また斉藤さんは「卑怯と残酷と愛を併せ持つ女性の役で、演じるのがとても難しいです。けれど、是枝監督の静かで穏やかな演出を受けると、沈黙の静謐の中に宿る答えに辿り着けそうに感じることが出来ます」とコメントしている。さらに、重盛の弁護士事務所の事務員・服部亜紀子を松岡依都美、検察官・篠原一葵を市川実日子、重盛の父親で、30年前に三隅が関わった事件の裁判長だった彰久役を橋爪功が演じる。<以下、キャスト陣コメント>■斉藤由貴今回、是枝さんの映画に参加させていただくこと、とても楽しみにしておりました。いただきましたのは、卑怯と残酷と愛を併せ持つ女性の役で、演じるのがとても難しいです。けれど、是枝監督の静かで穏やかな演出を受けると、沈黙の静謐の中に宿る答えに辿り着けそうに感じることが出来ます。得難い演技経験を積めることに感謝しています。■吉田鋼太郎数々の賞を受賞し、国内外で高い評価を得ている是枝監督とご一緒できるという事で大変光栄に感じると同時にどのような現場になるのか多少の緊張を感じつつ撮影に入りました。 作品の世界観が監督の中でしっかりと出来上がっていて、それを的確に役者に演出してくださるので、いつの間にかその世界に引きこまれていました。まだ撮影中ですが、本当に出来上がりの楽しみな作品です。■満島真之介是枝監督の新たな挑戦を直に体感できること。 福山さんはじめ、最高の大先輩方とご一緒させてもらえること。身が引き締まります。 映画の世界にいる喜びと、感じられる人生の大切なこの時を、思い切り楽しみたいと思います。■松岡依都美是枝監督とは『海よりもまだ深く』以来2作品目となります。「是枝作品」に再び出演する事が1つの大事な目標でしたので今回のお話を頂いた時は本当に嬉しかったです。監督と素晴らしいキャスト、スタッフの皆様と共に最高の作品をお届け出来るように楽しみながら頑張りたいです。■市川実日子事件や裁判を、自分とは別世界のことのように思っていたけれど、実は、自分も関係していることなのかもしれない。初の裁判見学へ行った日に、なぜかそう感じました。 初めて参加させて頂く是枝組は、なんというか、とても紳士的な空気が流れています。現場で静かに、じーっと耳を澄ませていらっしゃる是枝監督。是枝監督、事件、裁判。どんな作品になるのか、今、緊張でいっぱいですが、観客としてもたのしみです。■橋爪功是枝監督とは過去に『奇跡』『海よりもまだ深く』でもご一緒させて頂いていますが、今回の現場も静かに進行しながらも、心地の良い緊張感に包まれています。本作の脚本を読んで、法廷心理サスペンスではありつつも、心の奥を垣間見る人間ドラマだと感じました。役柄(主人公・重盛の父親役で元裁判官)も少し難しくあるのですが、演じながら今からとても出来上がりが楽しみな作品です。『三度目の殺人』は9月、全国にて公開予定。(cinemacafe.net)
2017年02月21日アーティストで俳優の福山雅治が主演し、是枝裕和監督がメガホンをとる映画『三度目の殺人』(9月公開)の出演者が21日、明らかになった。同作は、第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『そして父になる』以来2度目となる福山×是枝監督タッグのオリジナル脚本作品。福山は勝利にこだわる弁護士・重盛を演じ、役所広司演じる殺人犯・三隅と対峙することになる。今回発表された出演者は、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功の7名。是枝監督の『海街diary』(2015年公開)で「第39回日本アカデミー賞新人俳優賞」「第89回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞」を受賞した広瀬は、再び是枝作品に出演することとなる。『海街diary』の際、広瀬には台本が渡されず、現場で是枝監督の口述によりセリフを入れるという子供への演技指導の手法がとられたが、今回は女優として台本を持って挑戦する。物語の鍵を握る、被害者の娘・山中咲江という役を演じることとなるが、広瀬は「どんなシーンでも咲江が見ているもの、感じている事を私と同じ感覚で感じてくださって、言葉をくれる監督はやっぱりとても心強く、凄く気持ちがいいです」と語った。一方、是枝監督は広瀬について「女優としての成長を作品ごとに感じているのでもう一度きちんと自分の作品の中で向き合ってみたいと思いました」と起用の理由を明かした。広瀬が演じる咲江は「背負ってるものが多いにも関わらず、人のせいにしない、被害者としてではないあり方をする、今の時代に希有な強さをもった少女」であり、広瀬の「芯の強さ、何者にも寄りかからず自分の足で立っている感じ」に期待を託した。斉藤は、咲江の母親であり被害者の妻である山中美津江を演じる。是枝監督は斉藤について「30年前から部屋にポスター飾るほど憧れた女優さん」と熱い思いを明かした。是枝監督は「念願叶って映画に出演いただきます」と喜び、撮影では斉藤の「役がおりてきたときの入り込み方と、その一方でご自身の演技を冷静にみている姿」にすごみを感じたという。そして「斉藤さんと広瀬さんはよく通る、少し影のある声質が似ていて、母娘役に選んだ理由のひとつです」と2人の共通点を語った。また、吉田は福山演じる重盛と司法修習で同期だった弁護士・摂津大輔役としてともに事件解明に奔走し、満島は重盛の事務所に所属する若手弁護士・川島輝役で福山と初共演する。さらに松岡は重盛の弁護士事務所の事務員・服部亜紀子役、市川は事件の担当検察官・篠原一葵役、橋爪は重盛の父で元裁判官の重盛彰久役に決定した。
2017年02月21日是枝裕和監督と『そして父になる』でも組んだ福山雅治と、是枝組初参加となる名優・役所広司の豪華初共演が実現した最新作が、9月に公開されることが決定。福山さんが勝利至上主義の弁護士、役所さんが前科のある殺人犯を演じることが分かった。勝利にこだわる弁護士・重盛(福山さん)が、やむをえず弁護を担当することになったのは、30年前にも殺人の前科がある三隅(役所さん)。解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴されている。犯行も自供し、このままだと死刑はまぬがれない。はじめから「負け」が決まったような裁判だったが、三隅に会うたび重盛の中で確信が揺らいでいく。三隅の動機が希薄なのだ。彼はなぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?重盛の視点で絡んだ人間たちの糸を一つ一つ紐解いていくと、それまでみえていた事実が次々と変容していく――。本作は、第66回カンヌ国際映画祭審査員賞に輝き、国内興行成績32億円の大ヒットを記録した『そして父になる』や、日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞受賞作『海街diary』、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」正式出品『海よりもまだ深く』などの是枝監督がオリジナル脚本で描き出す最新作。弁護士・重盛の目を通して、弁護を担当する殺人犯・三隅の底意を見つめていく法廷心理サスペンスとなっている。主演を務めるのは、是枝監督とは『そして父になる』以来2度目のタッグ、2018年にはジョン・ウー監督の『追捕-MANHUNT』が控える福山さん。また、福山さんに対峙する殺人犯には、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『うなぎ』やモントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ『わが母の記』をはじめ、『蜩ノ記』『バケモノの子』など日本を代表する名優・役所さんが務め、是枝組に初参加を果たす。是枝監督は、本作品の開発にあたり、弁護士や検事たちへの取材に加え、弁護士たちの協力のもと、実際に作品の設定通りに弁護側、検事側、裁判官、犯人、証人役に分かれて模擬裁判を実施。そこで出てきた各立場からのリアルな反応や行動、言葉などの要素を脚本に取り込み、反映させる作業を行っているという映画タイトルは現在のところ未定。クランクインは1月中旬、撮影は3月まで行われる予定だという。<以下、コメント>■福山雅治初めてご一緒させていただく役所さんとの読み合わせは、とても緊張感のある時間でした。より深く、さらに研ぎ澄まされた是枝監督の演出に応えられるよう精一杯演じられたらと思っています。■役所広司準備段階での是枝監督の丁寧な映画作りの姿勢に触れ、すでに緊張しています。福山さんはじめ素晴らしいキャスト皆さんとの仕事を楽しみにしています。■是枝裕和監督福山さんにオファーをするにあたり、近年描いてきたホームドラマに一度区切りをつけ、かねてより挑戦したいと考えていた法廷劇を選びました。そして福山さんに対峙する殺人犯役を、監督としてはある種の覚悟が必要な俳優である役所さんにお願いしました。弁護にあたり真実を知る必要はないと考えていた主人公が、犯人と交流していくうちに事件の真実を知りたいと思うに至る過程を描く心理劇です。役所さんの胸を借りるかたちで、福山さんをいじめ、揺さぶっていきたいと思います。福山さんと役所さんの本読みで感じた「この2人の組み合わせは新鮮で面白い」という、ドキドキした僕自身の感触をどう本編に刻んでいけるか、悩み苦しみ、楽しみにしながら脚本の最終仕上げを現在行っているところです。是枝裕和監督最新作(タイトル未定)は9月、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年01月10日映画『海よりもまだ深く』のBlu-ray&DVD発売記念トークイベントが11月26日(土)、都内にて開催され、是枝裕和監督と俳優の池松壮亮が登壇。お互いの印象や、撮影エピソードを語った。同作は、15年前に文学賞を一度とったきり、息子としても、夫としても、父親としても情けない良多(阿部寛)が主人公の人間ドラマ。池松さんは、良多が「小説のための取材」と称して勤めている探偵事務所の相棒・町田健斗役を演じる。第69回カンヌ国際映画賞「ある視点」部門に出品され、北欧ノルウェー最大の国際映画祭である第26回フィルムズ・フロム・ザ・サウス映画祭でグランプリに相当する「シルバー・ミラー賞」を受賞するなど注目を集めている同作を、是枝監督は「ひと区切りになる作品」とふり返った。続けて、池松さんを起用した経緯を尋ねられると、是枝監督は、池松さんが出演するテレビCMを見た際に「この子、会いたい」と思ったエピソードを回顧。一方の池松さんは、10代のころから是枝監督の作品をたくさん見ているそうで、「『自分は俳優をやる』と決めた時点で、『この人の作品に出なかったら嘘だな』というくらい…」などと是枝作品への憧れを言葉にした。MCが「先ほど楽屋で、『現場でもお2人は、まだあまりしゃべったことがない』と聞きましたが、今日は、“初対面デート”みたいな感じです」とジョークを交えてイベントを盛り上げ、トークは佳境に入った。是枝監督は、撮影現場の様子を、「それほど(池松さんと)言葉を交わさなくても、『なるほど、こういう解釈で来たのだな』というようなキャッチボールは裏側ではできていたと自分では思っています」と述懐。池松さんは、「台本の見開き1ページめに、成りたい大人にみんな成れるわけじゃない、という一文が入っていて、掴まれたといいますか…」などと、同作に引き込まれた様子を紹介した。池松さんの印象を質問された是枝監督は、「色っぽいよね。若いのに」と回答。「あと、決して自分の生理を越えて声を張ったりとかは一切しないですから」とも。池松さんは「僕だってちゃんと声を出すことはあるのですよ」と突っ込みを入れたが、是枝監督のもとでは「嘘をつかなくてもよい環境をいただけるので」と感謝の言葉を口にする一幕もあった。他にも、“自己実現できなかった大人”というテーマに対する是枝監督の考えや、池松さんが自身のことを「敗者」だと思っているエピソードなどが語られ、ファンは2人の話に熱心に耳を傾けていた。イベントの最後、マイクを持った是枝監督は「現場よりはずっと2人で話ができたので、ちょっと交流が深まったかな」とコメントし、笑いを誘った。映画『海よりもまだ深く』のBlu-ray&DVDは、発売中。(映画『海よりもまだ深く』Blue-ray&DVD発売記念トークイベント)
2016年11月26日是枝裕和監督が公開中の最新作で団地を舞台にした映画『海よりもまだ深く』について、団地をこよなく愛し、活動する「団地団」の大山顕、佐藤大、速水健朗、山内マリコと5月26日(木)、上映後のトークセッションに出席。団地について熱く語り合った。映画は作家崩れのダメ中年の主人公が、別れた妻、妻に引き取られたひとり息子と共に、団地でひとり暮らしをする老母の元を訪ね、台風のひと晩を過ごすさまを描き出す。「団地団」は写真家の大山さん、アニメ脚本家の佐藤さん、「ラーメンと愛国」「フード左翼とフード右翼食で分断される日本人」などの著書で知られる速水さん、「ここは退屈迎えに来て」で鮮烈なデビューを飾り、「アズミ・ハルコは行方不明」が蒼井優主演で映画化されることも決まっている作家の山内さんら、団地を深く愛する異業種の面々で結成されたグループで、団地にまつわるトークイベントや著書の刊行を行なっている。大山さんは本作を「最高の団地映画!」と団地という観点から称賛。「安易な“団地あるある”で描かれておらず、あざとさがない」と語る。大山さんいわく、団地を舞台にした映画では、往々にして「いまの団地にはないよね」というものや描写が多く存在するそうだが、本作で“ジップロック”という現代的な台所用品が登場する点に言及し、きっちりと“現代の団地”が丁寧に描かれており「感動しました」と語る。是枝監督はこれについて「固有名詞を出して『ジップロックを…』と言ったわけではないけど、団地の部屋の時間の積み重ねを見せないといけないと思った」と説明する。また、団地ならではの“狭さ”を映像の中できちんと描き切っていることについても、団地団メンバーからは絶賛の声が上がる。佐藤さんは「冷蔵庫を開けるとき、よけないといけない!(描写が)細かい!」と語り、大山さんは、主人公の姉の家族も部屋にいる状態での会話シーンについて「姉の夫や娘が後ろにいることが感じられる。団地の狭さが感じられて感動しました」と感激を口にする。これらのシーンは実際の団地での撮影とセットを組んでの撮影を組み合わせて作られたそうだが、是枝監督は「スタジオで撮る場合も、カメラを部屋の広さよりも外に出して、引いて撮らないというルールを決めてました。それじゃウソになるから」と明かす。また、阿部寛が約190cmの巨体を縮めて入るお風呂のシーンに関しても、本物ではなくセットであることを明かした上で「(団地用のお風呂の中で)一番古くて小さいタイプのものを選びました」と語った。山内さんは、狭い空間に複数の人間がいるが故の、会話や動きの多さについて言及。「室内が狭いから、人の距離が近くて、会話が増えているのでは?」と指摘する。監督は自身の経験を踏まえ「ああいう状況だと母親は喋り続け、動き続けるんですよね(笑)。基本的に、(母親役の)樹木希林さん(の動き)をいかに止めないかを重視しました」と語った。映画の最後で、主人公たちを老母が団地の階段から見送るという画も団地ならでは。速水さんは、この樹木さんを「団地の妖精のよう」と語り、大山さんも「トトロみたいに見える」と表現。会場は笑いに包まれたが、是枝監督は納得とばかり深くうなずいていた。このほか、団地団からは団地に存在する「分譲組」と「賃貸組」の静かな対立や格差、遊具、団地ならではの人工的な緑地などについて、様々な視点から質問や指摘が飛び交い、是枝監督は鋭い分析に時に驚きつつ、嬉しそうな笑みを浮かべていた。『海よりもまだ深く』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)
2016年05月27日『海街diary』の脚本執筆のさなかの2013年の夏、是枝裕和監督は以前から温めてきた、団地を題材にした脚本の第一稿を書き上げた。執筆の時点で、団地にひとりで暮らす老いた母として、樹木希林をイメージしていたという。2人が初めて作品を共にしたのはお盆に両親の家で顔を揃えた家族の姿を描いた『歩いても 歩いても』(’08)。その後も『奇跡』、『そして父になる』、『海街diary』において、主人公たちの祖母、義母、大叔母という立場で、出演シーンは多くないが絶妙な存在感を見せてきた。『歩いても 歩いても』は、いしだあゆみのヒット曲「ブルー・ライト・ヨコハマ」の一節を用いたタイトルだが、今回の最新作につけられた『海よりもまだ深く』というタイトルもまた昭和歌謡の名曲でテレサ・テンの「別れの予感」の歌詞に由来しており、阿部寛が息子役を演じているという点も同様!作家崩れで探偵として暮らすダメ中年の良多とそんな息子をそれでも愛する母、良多に愛想をつかし彼の元を去った元妻と妻に引き取られた息子の4人が、台風の一夜をひとつ屋根の下で過ごすことになるが…。約8年の歳月の中で是枝監督はどのように変化し、5本もの作品を共にした樹木さんは何を感じたのか――?――脚本の執筆段階で樹木さんをイメージしていたそうですが、ここで描かれる団地に住まう母親には、是枝監督ご自身の亡きお母さまが反映されているのでしょうか?是枝監督:似てる部分はあります。ただ、『歩いても 歩いても』のときもそうだったけど、「僕の母親を演じてほしい」とお願いしたわけじゃなく、あくまでキャラクターとして別人格で作られてます。僕の母のいろんなところ――すごく“世間”であるところや“毒”である部分になっていただいてるのは間違いないですね。――樹木さんは、是枝作品における“母親像”について、どのようにお感じですか?樹木:私も監督の母親として捉えているわけじゃなくて、女の人、母親であれば誰もが持っているであろう、かわいらしさとちょっと意地悪なところ、そういうのを含めて「母親になるとああなるんだろうな」と感じるところはあります。――映画の中では、真木よう子さんが演じた良多の元妻を例に「いまの母親」について少し批判的な部分もありますが…樹木:女の人の生活力が上がるのは素晴らしいことだけど、その分、自由になるので、昔の「食べていけないので我慢する」ということの良い部分まで捨てているんだなとは感じますね。自分の意思通りに進むことで、逆に女の人が持つ忍耐強さが磨かれないままに終わってしまうところもある。それを含め、女性の地位が向上するというのは、良いことであり、一方で損している部分もあるのかもしれませんね。是枝監督:ただ、映画はそれが正しいとか間違っているとかジャッジするわけじゃなくて、そういう育ち方をしてきた老いた母親は、おそらくいまの若い母親たちをそう見ているんだろうという描き方をしています。――監督が最初に本作を構想したのは2001年とかなり早い時期だったそうですが…是枝監督:「団地を撮りたい」と考えたのはそれくらいですね。――『歩いても 歩いても』以降、『奇跡』『そして父になる』『海街diary』とほぼ一貫して“家族”の物語を紡いでいますが、2001年に頭に浮かんだ団地の物語をいまこのタイミングで形にしたのは…是枝監督:この作品のノートを作り始めたのが2009年で『歩いても 歩いても』の公開のすぐ後なの。その段階で(キャストは)阿部さんと樹木さんだったんだけど、実際に、きちんと物語になったのは撮影の1年前くらい。その間に、僕も阿部さんも父親になったというのが、一番大きいと思います。『歩いても 歩いても』は息子から見た親の話で、原田芳雄さんが演じる父が生きてたけど、そこに父親から見た息子という視点を加えたのは、やはり僕が父親になったからでしょう。――『歩いても 歩いても』以降のご自身の各作品の影響、テーマの連続性という部分はありますか?是枝監督:ほかの作品との関連付けは観る側がすることで、自分の中で、別の作品を引き継いだりというのはあまりないんですよね。テーマや関連性は意識してというより、自然に出てくるんですよね。樹木:時代背景とか、あとは誰が映画製作にお金出してくれてってところで作る順番が変わったりもするからね。結果的にこうなったというもんなのよ。是枝監督:そう(笑)。ただ、『海街diary』の脚本と並行してこの作品も書いていたので、向こうは原作があり、僕がそこにどうコミットするかという作業だったし、あっちは背筋を伸ばして生きようとする人たちの物語だから、自分の中のバランス感覚として、こっちは背中を丸めた人たちの話をやりたいというのはあった気がします。樹木:あっちは憧れの美人女優がいっぱいいて背筋が伸びたっていう夢の映画作りで、こっちは(現実の世界に)密着した映画作りなの(笑)。――樹木さんは、作品ごとに監督を見ていて変化は感じますか?樹木:それは感じないけど、ただ、監督にも失敗作ってあるわけですよ。本人は「全部が代表作」とか言うかもしれないけど。是枝監督:言ってませんよ(笑)!樹木:私は「この作品はちょっと…」なんて文句を言うんですけど、ただ、そうは言っても、その都度、人間を見る目というのは成熟してるなと感じますね。上から目線ではなく、(登場人物たちの目線にまで)下がって一緒に生活しているというか。一緒に物を作っているという感覚が魅力的ですよね。――役者に対する接し方に関しては…樹木:それは最初から変わらず平等です。子どもだろうが、何十年やっている役者だろうが、態度が豹変することもない。それは人間として基本的なことだけど、そうじゃない監督、現場って多いから。そういう意味で信用が置けるんです。ただね、時々、私のような何十年もやってるに人間に遠慮がちなことがあるから、もっとズバっと言ってくれていいわね。この顔立ちじゃ、いくらいばっても偉そうになんて見えませんから。もっと大胆にね。是枝監督:なるべく子どもにも、橋爪(功)さんにも、希林さんにも同じように接したいと思ってるけど、それは希林さんがまさにそうですからね。誰にでも同じなんです。樹木:子どもと本気でケンカしてるから!是枝監督:全然、遠慮しないですから。かっこいいんです、それが。それがかっこいい大人なんだって、希林さんを見てると思います。――『歩いても 歩いても』と同じように昭和歌謡が出てきますが、最初の構想の段階から歌ありきで?それとも物語が先だったのでしょうか?是枝監督:歌ですね。樹木:好きなんですって、あの曲(テレサ・テン「別れの予感」)。私は初めて聞いたんだけど、なかなか覚えられなくて(苦笑)是枝監督:どこかのタイミングで、映画の中で一曲かけるってことを決めたんです。そことは全然関係ない、探偵のシーンから書き始めたんだけど、どうやってテレサ・テンにたどり着くのか?自分でも楽しみにしながら書いてました。樹木:へぇ、そんな書き方するのね?――監督の中で、そもそも昭和歌謡が好きというのが大きいんですね。ちなみに一番お好きな曲は?是枝監督:沢田研二かな(笑)?樹木:「壁ぎわに寝がえりうって背中できいている」って是枝監督:そう、やっぱり「勝手にしやがれ」ですかね。子どもの頃に見てかっこいいなって。かっこよかったんですよ、あの頃の沢田研二やショーケン(萩原健一)。子ども心に「色っぽいな」ってわかったんだよね。※余談だが、向田邦子脚本のTVドラマ「寺内貫太郎一家」で樹木さん演じる祖母が沢田研二の大ファンという設定で、壁のポスターに向かって「ジュリー!」と叫ぶ名シーンが!――ではあの当時のTVドラマなども?是枝監督:「前略おふくろ様」、「傷だらけの天使」(どちらも萩原健一主演)で育ってるからね。原点だね。――本作の中には、何気なく発せられるセリフに深い含蓄があります。子どもが口にする「フォアボールを狙ってる」や「パパはなりたいものになれた?」といった言葉にドキッとさせられたりします。脚本段階で樹木さんにあて書きしたということですが、樹木さんに「これを言ってほしい」という思いで書いたセリフなどはありますか?是枝監督:セリフありきではなく、書いていくうちに出てくるんですよね。だから最初から「このセリフを言ってほしい」というのはなかったかな…?ただ「みんながなりたかった大人になれるわけじゃない」というのは、阿部さんがどこかで言うと決めてました。でも、ジーンと来るような感じで言いたくないので、笑っちゃうようなシチュエーションでと決めてました。――あえて、あのひどいシチュエーションで…(笑)?樹木:それはね、そういうもんなの。いいセリフほどそうなのよ!是枝監督:あのセリフは、よくない状況で言わないと。樹木:「さあ、いいセリフを言うぞ!」ってわかってて言うのは…高倉健にしかできないわよ!是枝監督:あの状況はひどいでしょ?ひどいからいいんだよね。阿部さんが言った後、隣にいる池松(壮亮)が吹いちゃう(笑)。「お前がそれ言うか?」って感じで。あのシーン以外でも、希林さんが良いセリフを言った後で「私、いまいいこと言ったでしょ?」と言う。そこは崩さないと、本当にいいこと言ったと思っちゃうから。自分でいいことを言った後に崩すのが、あのお母さんの品なんだよね。樹木:品なのよ、そこは。余談だけど「寺内貫太郎一家」で(自身が演じた)ばあさんが、食べてる最中にグシュっとやったり、汚いことするの。でもそれをその中にいる人間が「きたねーな、ばあちゃん!」って言う。そう言わせないと、作品自体が下品になっちゃうのよ。中の人間に言わせて解決する。それが日常生活のシーンの鉄則なの。是枝監督:面白いですね。――逆に、監督ご自身が書いたセリフなのに、樹木さんが現場で発することで、イメージを超えたものになったシーンなどはありますか?樹木:それはないわよ。やっぱり台本の段階でしっかりと…是枝監督:ありますよ(笑)!孫が「宝くじが当たったら、またみんなで一緒に暮らしたい」と言うところ。書くときはサラッと書いたけど、お芝居でそのひと言が出てきたら、自分で書いたセリフなのに、ウッときたんだよね。樹木:へぇ…。是枝監督:それは、希林さんもそうなのか…あの映画の中のおばあちゃんもウッときてるんだよね。「こんな風にセリフが立つのか!」と思いました。孫はどこかでそれを信じたくて、でもおばあちゃんはそんなこと起きないってわかってる。でも、そのズレを孫に気づかせちゃいけないと思ってて、そうやって互いに間接的に思いやっている様子がすごくよかった。樹木:あれは孫のいる女優じゃなきゃできなかったかもしれないわね…。是枝監督:ああいうこと、あるんでしょうね。そんなに深く考えていない孫のひと言にグッときちゃうことが。――阿部さんが演じた良多は、これまでの是枝監督の作品の中でも、類を見ないほどのダメ男として突出しているように思います。監督の中でいつも以上に踏み込んだという意識は?是枝監督:ギリギリまで攻めてみようかと。樹木:ただ、私は「あそこまで」と特別なものとは感じなかったわね。もっとすごい人を周りでいっぱい見てきたし…。是枝監督:いろんなことを時代のせいにして、背中を丸めながら生きてる男。――ただ、そこまで特別な悪い男という思いは…是枝監督:なかったかな…。ひとつひとつの行動を撮りだすと、息子としても、父親としても、夫としても弟としてもダメなんだけど…。――子どもへのプレゼントを無理やり値切ろうとしたり…結構、サイテーですが…(苦笑)是枝監督:でもね、そこまではやるよ、きっと(笑)。樹木:誰でもそういうところ、持ってますよ。是枝監督:高校生から金をゆすろうとするのが、行為としては一番最低かもしれないけど…。無理やり値切ろうとするというのは、人間の“小ささ”としてはあるかな。樹木:ありますよ。――「悪さ」ではなく「小ささ」?是枝監督:そう、人間の小ささ!樹木:自分を見つめていけば、ある種の状況に置かれたら出てくるものですよ、みんな。是枝監督:でもね、そこは確かに難しいところでもあった。自分ならどこまで可能か?「あるな、これくらいは」と思えるのはどこまでか?すごく微妙なところで、女の人が見てどこまで許せて、どこから「ナシ」なのか?いや、そもそも「ナシ」なのはいけないのか?――せめぎあいが…是枝監督:阿部さんもそこは苦労してやってました。真木さんに触れるシーンで、最初脚本には「足首に触る」ってあったんです。阿部さんは「足首かぁ…」ってずっと言ってて「おれの体の大きさで、小柄な真木さんの足首に触るってどう見えるのかな?」って。考えた末に、ひざのあたりにスッと行ったんです。それが笑えるんだけど、足首だったらまた芝居が違ってたかもしれない。そこはすごく考えて、自分の役のキャラクター、大きさ、おかしみとか…ギリギリまで攻めたり、やめたりして面白かったです。――最後に「団地」について監督なりの想いを聞かせてください。是枝監督:どちらの想いもあるんですよね。「なりたいものになれなかった」哀感もあるし、でも、そこで20年を暮らして、団地は原風景でもあるから、無機質なものでは決してない。いろんな情感、表情、陰影があって、それをきちんと愛をもって撮りたかったんです。樹木:最初はね、団地に当選するってすごくラッキーだったわけですよ、当時。NHKのニュースになるくらい。団地に住むのが憧れの的だった時期もあったんですから。是枝監督:良い悪いってジャッジじゃないんですよね。小3の9月に引っ越してきて、台風が来て、家族で喜んだの(笑)。「今年はどんな大きいのが来ても、鉄筋コンクリートだから大丈夫だ」って。翌朝、台風が去って、外に出た時、すごくキレイだったんだよね。そういう読後感のある映画にしたかったんです。あそこであの母親は死んでいくんだろうし、息子があそこに戻ってくることはないだろうけど、それでも台風がやってきて、翌朝の芝生がキレイで…そういう映画がいいなって。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年05月20日第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、阿部寛、樹木希林、真木よう子、そして是枝裕和監督が参加する予定の『海よりもまだ深く』。その正式上映を前に、本作の主題歌「ハナレグミ」による「深呼吸」のミュージック・ビデオが完成。こちらは、阿部さん演じる主人公の“相棒”を演じた池松壮亮が主演を務め、是枝監督自らメガホンをとった映画のサイドストーリーとなっていることが分かった。叶わぬ夢ばかり追い続け、息子としても、夫としても、そして父親としても情けない主人公・良多を、阿部さんが愛嬌たっぷりに、ときに哀愁たっぷりに演じる本作。元妻の響子(真木さん)にも愛想を尽かされ、息子・真悟(吉澤太陽)の養育費も満足に払えない日々。そんな彼らが、台風の日に団地でひとり暮らしをする母の淑子(樹木さん)の家に集まることに――。そんな本作で、良多が小説家になるための取材と称して勤めているのが探偵事務所。池松さんは、その事務所で良多の相棒となる町田健斗役を演じている。今回解禁となったハナレグミのニューシングル「深呼吸」のミュージックビデオは、映画の撮影を進めていくうちに是枝監督の中で町田のバックボーンが膨らんでいったこと、いち早く映画を観た人たちから「彼の背景を知りたい!」という声が多く上がったこと、さらに製作スタッフの間で「もっと池松さんを撮りたい!」という声が多かったことから誕生したという。劇中の穏やかな空気感はそのままに、映画のサイドストーリーとして、池松さん演じる町田を主軸にした、温かくも切ない“もうひとつの家族の物語”が描かれており、「ハナレグミ」の歌唱・演奏シーンも必見となっている。主題歌「深呼吸」をエンドロールで初めて聞き「鳥肌がたちました」という池松さん。「是枝監督の作品世界を代弁するような、とてもさりげなくて、作品と共にある感じがすごくいいなぁと感じました」と印象を語る。「僕自身大好きな曲なので、今回こうしてMVという形で、是枝監督と『ハナレグミ』さんというタッグにご一緒させていただけることは本当に嬉しいです。映画よりも町田というキャラクターにもう一歩踏み込んだ内容になっているので、映画とMVと両方を見ていただき、あわせて面白がっていただけたらと思います」とコメント。『海よりもまだ深く』については、「傑作だと思います」と太鼓判を押す。「ちょっとビックリしました!こんなにさりげなく、人の人生の真髄をついてくるような作品を僕は観たことないなと思いましたし、是枝節が炸裂でしたね」と、是枝監督の手腕に感嘆の声を寄せる。今回、そんな是枝組に初参加となったが、「映画学校にも通っていたような僕からすると、是枝監督はスターだし、最初はものすごく緊張しました。現場では、知らぬ間に料理されていたような感じで、決して何か沢山演出された覚えはないのですが、たまに投げかけてくださるひと言が全てを言い得ていて、監督の現場は面白いなぁと感じました」とその感想を明かしてくれた。また、是枝作品の阿部さんは特に大好き、という池松さん。本作での“相棒”役に「是枝監督に最初にお会いしたときに『今回、阿部さんを見守ってあげてください』とひと言言われて、『あぁ、それだけで全部いけるな』と思いました。阿部さんは想像していたよりもやわらかくて、すごくチャーミングな人で、今回の現場はそういう居方をされていたのかもしれないのですが、人としても、役の阿部さん(良多)もすごく好きになりました。阿部さん演じた良多のダメ男ぶりは、嫌いじゃないです!」そんな阿部さん演じる良多をはじめ、夢見た未来と少し違ういまを生きる人々の物語が、世界の観客にどう響くのか、カンヌでの上映にも期待が高まる。(text:cinemacafe.net)
2016年05月18日是枝裕和監督最新作『海よりもまだ深く』の母の日トークイベントが5月8日(日)に開催。主演の阿部寛、その母を演じた樹木希林、音楽を担当した「ハナレグミ」の永積タカシ、是枝監督が制作過程や母の日にまつわるトークを繰り広げた。『海よりもまだ深く』は、是枝監督が実際に子どものころから20代後半まで暮らしていた清瀬市の団地で撮影された。ギャンブル好きのダメ中年男の良多は別れた妻に引き取られた息子を連れ、老いた母がひとりで暮らす団地へ行く。折しも台風が近づいており、別れた妻も合流し、4人はひと晩を過ごすことになるが…。母の日のイベントということもあり、樹木さんを中心にトークは展開するが、この日も樹木さんは独特の物言いで会場をわかせる。開演前から会場の前に行列ができているのを見たそうだが「観終わって、元が取れなかったらごめんなさいね」とこれから映画を観る観客を前に先回りで謝罪!是枝作品出演は今回で5回目となるが「最初の『歩いても歩いても』はともかく、2作目(『奇跡』)、3作目(『そして父になる』)、4作目(『海街diary』)はみんな、忘れてるでしょ?自分も忘れてるから」と言ってのける。それでも、是枝監督の現場は心地が良いよう。「誰もとがってない。私ひとりがとがってました。(作品を)作ろうという目的に向かっていくところがいい。『私をこう撮って』とか『この衣裳は気に入らない』なんて言う女優がいなかったから。私の衣裳なんて、寝巻か普段着か区別がつかない」とユーモアたっぷりに語っていた。「ハナレグミ」の永積さんは音楽および主題歌「深呼吸」について「(監督に)いろいろ質問したんですけど、ニコニコしてて、何も答えてくれない。『いい感じでいけるでしょ?』といつもいなされてました(笑)」と口にするが、監督は「イメージを決めつけて書いてほしくなかったからあいまいにしていた」と説明。しかし、「深呼吸」のメロディを聞いて「この歌で終わるのかと思うと嬉しかった」と称賛した。ここでも樹木さんは、エンディングで流れた「深呼吸」の感想を問われると「ボーっと聴いてました。こういうのが好きなんだ…と」とそっけない感想で、慌てて阿部さんが「僕は感動しましたよ!温かい歌でした」とフォロー。さらに、阿部さんが樹木さんとの共演について「狭い団地で至近距離でガッチリと共演し、いつまでも息子がかわいい母に温かい気持ちになったし、この距離感が嬉しかった」と語るも、樹木さんは「私は圧迫感がありましたよ」と言い「こんな大きな似ても似つかない息子が来て、狭い団地の小さな風呂にぎゅーっと入って。ローマ風呂に入ってたのにかわいそうに…」とブツブツと語り、会場は笑いに包まれた。この日は、男性陣から樹木さんに200本のカーネーションをプレゼント。樹木さんは「こんな金があるなら…」とボヤキつつも「でもありがとう」と語り、多すぎる花をステージを降りて観客に1本ずつプレゼントするサービスまで行なった。『海よりもまだ深く』は5月21日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)
2016年05月08日是枝裕和監督最新作『海よりもまだ深く』の完成披露試写会が4月24日(日)に開催。是枝監督に主演の阿部寛、真木よう子、吉澤太陽、樹木希林が上映後の舞台挨拶に出席した。『海街diary』で日本アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞に輝いた是枝監督が、同作の撮影の合間を縫って制作した本作。台風が通過する夜、興信所の探偵として働くダメ中年の良多とそのかつての妻、2人の息子、良多の母の4人が、良多の母が暮らす団地で夜を明かすことになるが…。阿部さんは映画>『歩いても 歩いても』、ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」に続き、是枝作品で主人公の“良多”を演じることになったが「ここまでダメダメな男は初めて(笑)」と語りつつ「でもどこか憎めず、かわいく思えた。多かれ少なかれ、僕もダメなところはたくさんある。せこいところや弱いところは共感を覚えました」と思い入れを口にする。真木さんは本作を「大好きな作品になりました」と語る。撮影は、是枝監督が実際に子ども時代を過ごした団地で行われたが、真木さんは「小さいころ、全く同じようなアパートに住んでました。(樹木さん演じる良多の母が作る)カルピスのアイスも懐かしかった」としみじみ。樹木さんは、舞台上でも劇中と同じく、息子を愛する母そのまま!映画の中で、阿部さんが大きな体を丸めて、団地の小さな風呂に浸かるシーンがあるが「あんな団地の小さな風呂じゃなく、ウチの息子はローマ風呂に入ったんだし、エヴェレストにだって登ったんだから!芽が出ないのは世間のせい!」とかばう。また良多が“ダメな男”と紹介されることについても「ダメじゃない!私の周りにはもっとすごい人たちがいっぱいいますよ」と語り、会場は笑いに包まれていた。このほかにも随所に“希林節”は健在。ここ数年の是枝作品への連続出演について尋ねられると「義理でね」と言い放ち、本作のカンヌ国際映画祭への出品に関し、現地に赴く阿部さんが「プライベートでは行ったことがあったんですが」と語ると「誰と行ったの?」と問いただすなど不規則発言を交え、たびたび客席をわかせていた。『海よりもまだ深く』は5月21日(土)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年04月24日山梨大学や北海道大学、熊本県立大学などの研究者で構成される研究チームは2月11日、野生の竹がなぜ節をもつのか、その謎を科学的に解明したと発表した。同成果は、山梨大学 環境科学科の島弘幸 准教授、北海道大学の佐藤太裕 准教授、熊本県立大学の井上昭夫 教授などによるもの。詳細はアメリカ物理学会発行の学術雑誌「Physical Review E」に掲載された。竹は中身が空洞で、ところどころに節を持つことが知られているが、多くの植物の中で竹だけがこうした特徴を有していた。今回、研究チームは、野外調査で得た測定データと、構造力学理論に基づく数理解析を活用して調査を行った結果、互いに隣り合う節と節の間隔が、ある一定のルールに従うよう絶妙に調節されており、結果として、野生の竹が「軽さ」と「強さ」を併せ持つ理想的な構造を「自律的に」形成していることを突き止めたとする。なお、今回の論文は、同誌の注目論文(Editor’s Suggestion)に選ばれているが、島准教授によると、「同じような推論は過去にも提案されたことがあったが、竹林の測定データと、理論的な考察をもとに、『定量的に』その推論を検証したのは我々の成果が初となるはず」とのことで、そうした研究の視点のユニークさと、物理学・工学・森林科学を跨ぐ学際的な研究手法が高く評価された結果によるものだといえる。
2016年02月13日昨年の1、2月に放送され大きな反響を呼んだ「岩井俊二のMOVIEラボ」のシーズン2の放送が決定。進行役の千原ジュニアをはじめ、堤幸彦、是枝裕和、長澤まさみといったゲストが登場する。最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』の公開を控える映画監督の岩井俊二が主宰を務める本番組。シーズン2の今回は、1回の放送ごとにそれぞれ「走る」「闘う」「恋をする」「嘘をつく」のテーマを設け、古今東西の映画から名シーンをセレクト。ゲストとともに、そのシーンがどうように撮影され、監督たちがどんなことを表現しようとしたのかを探求する。第1回及び第2回のゲストには、昨年『天空の蜂』を手がけた映画監督の堤監督とアクション・コーディネーターの諸鍛冶裕太が登場。第3回及び第4回のゲストには、第39回日本アカデミー賞で作品賞ほか最多12部門受賞『海街diary』の是枝監督と、同作で優秀助演女優賞を受賞した長澤さんが登場する。撮影の裏話はもちろん、岩井監督とどのような対話が繰り広げられるのかに期待がかかる。また、会場にはプロの映像クリエイターを目指す若者が聴講生として参加。「1分スマホ映画ロードーショー」として、彼らにスマホを使った1分間のミニ映画を制作してもらい、その優秀作品を講師陣が講評していく。新しい才能に対して、監督たちがどんなコメントするのかが楽しみだ。「岩井俊二のMOVIEラボ」のシーズン2は、2月4日(木)よりEテレにて毎週木曜日23時から全4回放送。(text:cinemacafe.net)
2016年01月22日俳優の阿部寛(51)が、是枝裕和監督の最新作『海よりもまだ深く』(2016年5月21日公開)で主演を務めることが25日、明らかになった。阿部が是枝監督とタッグを組むのは本作で3度目となる。阿部が演じるのは、小説家を目指すも一向に才能が開花せず、生活費のために探偵事務所に勤める男・良多。バツイチでギャンブル好き、夢ばかり追いかけ続けるダメ中年でありながらも、憎めないキャラクターだ。その母親役は、樹木希林。劇中では、「大器晩成…って時間かかり過ぎですよ」「ミカンの木、花も実もつかないんだけど、あんただと思って毎日水やってんのよ」など歯に衣着せぬ物言いの親子の会話を繰り広げる。良多の前妻・響子を真木よう子が演じるほか、探偵業務の相棒役の池松壮亮、探偵事務所社長役のリリー・フランキー、良多の姉役の小林聡美、樹木の憧れのクラシックの先生役の橋爪功なども出演する。阿部は、良多のキャラクター像を、「ある種とてもダメな男。夢を追い続けているけれど、うまくいかず、嫁や子供から見放されてしまった男」と説明。続けて、「こういう役を演じるのは初めてなので、新鮮で楽しい経験でした」と笑みを浮かべながら、「"いつまでも夢を追いかけている人間"の甘えを演じることで、今までにない、面白い人間味を出せたのではないかと思います」と自信を見せる。それも、「実際、僕も10代の頃などは、夢に打ち破れ、それでも何とかやっていくような毎日の連続でした」と話す通り、阿部自身の経験にも基づいているからだ。これらを踏まえ、「強がっているのに非常に弱い、そんなダメだけど愛おしい良多を、皆さんに見ていただけたらうれしい」とアピールしている。そんな良多の母親役の樹木は、「背が高すぎて苦労した時代が長かった阿部さん、ローマ風呂だけじゃない居場所を見つけたのね」と、過去の阿部の主演作『テルマエ・ロマエ』(12年)を思わせるコメントを寄せた。別れた元妻役の真木は、響子を「将来を見ている女性です。子どもや自分の将来を見据え、それを行動に移せるしっかり者」と表現。「だから、阿部さんが演じた良多のような、夢見がちな男性が寄ってきてしまうし、反対にそういう男性を好きになってしまうのではないかと思います」と指摘する。また、阿部の出演作を多数見てきたと明かし、「ここまで"ダメ男"の役は初めてな気がします。でも、すごくハマっていらっしゃいました(笑)」「役を演じ分けられる能力がとても高くて素晴らしい俳優さん」と称賛した。映画は、2016年5月21日公開。樹木演じる母親が暮らす団地のシーンをはじめ、実際に是枝監督が9歳から28歳までの19年間住んでいたという、東京都清瀬市の旭ヶ丘団地を主な舞台として物語が展開する。(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ
2015年12月25日『そして父になる』『海街diary』の是枝裕和監督の新作映画『海よりもまだ深く』が来年5月21日(土)から公開されることが決定した。阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、樹木希林らが出演し、現代を生きる家族の姿を描くという。その他の画像本作で阿部が演じる良多は、15年前に1度だけ文学賞をとった売れない作家で、現在は“取材”と言い訳しながら探偵業をしている大人になりきれない男。息子がいるが、妻と離婚しており、母は団地でひとりで暮らしている。そんなある日、たまたま母の家に集まった良太と元妻、息子は台風のために翌朝まで帰れなくなり、夜が明けるまで“家族”として過ごすことになる。是枝監督は「この映画に登場する、阿部寛さん演じる息子も、樹木希林さん演じる母親も、真木よう子さん演じる別れた元嫁も、みな『こんなはずじゃなかった』という思いを抱きながら、夢見た未来とは違ってしまった今を生きています。そして、映画の主な舞台になる公団住宅も、建設された当時は思いもしなかったであろう、老人ばかりの現在を生きています。今回の映画は、そんなどうしようもない現実を抱えながらも、夢を諦めることも出来ず、だからこそ幸せを手に出来ないでいる、そんな等身大の人々の今に寄り添ったお話です」と説明。「なんというか、僕が死んだ後に、神様か閻魔様の前に連れて行かれて、お前は下界で何をしたんだ、と問われたら、真っ先にこの『海よりもまだ深く』を観せると思います。集大成とか、代表作といった言葉がふさわしいわけではないのですが、自分の今を一番色濃く反映出来た作品であることは間違いないです」と語っている。また主演の阿部は「是枝監督の現場は初めてではありませんが、監督は僕らの演技をしっかりと見ていてくださるので、すごく安心感があります。監督の判断にゆだねれば絶対大丈夫だという安心感。作品を最良のものにするための監督の精神は、本当に尊敬しています」と語る。劇中に登場する団地のシーンは、是枝監督が9歳から28歳まで住んでいた東京都清瀬市の旭が丘団地で行われ、樹木は「撮影中、子供時代を知ってる方々にすれちがう、我が団地の出世頭『コレエダ!』わたしは忘れものしても、とりに戻らない。さてこの映画、まあまあなのか上出来なのか、蓋をあけてみるのが楽しみ」とコメントを寄せている。『海よりもまだ深く』2016年5月21日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
2015年12月25日『そして父になる』『海街diary』などで国内外から高い評価を得る、是枝裕和監督のオリジナル最新作『海よりもまだ深く』が2016年5月、劇場公開されることが決定。二度目の親子役を演じる阿部寛&樹木希林ほか、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮らの出演が明らかとなった。団地で気楽な1人住まいを満喫中の淑子(樹木さん)。長男の良多(阿部さん)は、15年前に文学賞を一度とったきりの売れない作家。いまは探偵事務所に勤めているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳している。そんな良多に愛想を尽かして離婚した元嫁、響子(真木さん)。11歳の息子・真悟(吉澤太陽)の養育費も満足に払えないくせに未練たらたらの良多は、探偵技で響子を“張り込み”し、彼女に新しい恋人ができたことにショックを受けている。そんなある日、たまたま淑子の家に集まった良多と響子と真悟は、台風のため翌朝まで帰れなくなり、ひとつ屋根の下でひと晩を過ごすことに。こうして、偶然取り戻した、夜が明けるまでの束の間の“家族”が始まるが――。さまざまな“家族のカタチ”を描いてきた是枝監督が、いくつになっても大人になりきれない男と、そんな息子を深い愛で包み込む母の姿を中心に、夢見た未来と少し違ういまを生きる家族を描く本作。主演の阿部さんと是枝監督がタッグを組むのは、映画では『歩いても 歩いても』『奇跡』に続き3作目。そして阿部さんと樹木さんは『歩いても歩いても』でも親子役を演じており、今回も劇中で、阿部さんの身長に掛け「大器晩成…って時間かかり過ぎですよ」と言ったり、「ミカンの木、花も実もつかないんだけど、あんただと思って毎日水やってんのよ」と歯に衣着せぬ物言いの親子の会話を披露するなど、息の合った演技で魅せ、笑いを誘う場面も登場する。別れた元妻役を真木さんが務めるほか、探偵業務の相棒役には池松さん、探偵事務所社長役にリリーさん、阿部の姉役に小林さん、樹木さん憧れのクラシックの先生役に橋爪功など、キャストには豪華実力派俳優たちが名を連ねている。また、樹木さんが演じる淑子が暮らす団地のシーンは、実際に是枝監督が9歳から19年間暮らしていた、東京都清瀬市の旭が丘団地で撮影されたとのこと。撮影中は、監督の幼少期を知る住民が現場をあたたかく盛り上げるひと幕もあったという。そんな思い入れの強い作品となった本作について、是枝監督は「どうしようもない現実を抱えながらも、夢を諦めることも出来ず、だからこそ幸せを手に出来ないでいる、そんな等身大の人々の今に寄り添ったお話です」とコメント。「僕が死んだ後に、神様か閻魔様の前に連れて行かれて、お前は下界で何をしたんだ、と問われたら、真っ先にこの『海よりもまだ深く』を観せると思います。集大成とか、代表作といった言葉がふさわしいわけではないのですが、自分の今を一番色濃く反映出来た作品であることは間違いないです」とその想いを語った。そして、「下町ロケット」での熱血社長ぶりも記憶に新しい阿部さんが、本作で演じるのはまるで正反対、バツイチでギャンブル好き、夢ばかり追いかけ続ける“ダメ中年”だ。「こういう役を演じるのは初めてなので、新鮮で楽しい経験でした。”いつまでも夢を追いかけている人間”の甘えを演じることで、今までにない、面白い人間味を出せたのではないかと思います。実際、僕も10代の頃などは、夢に打ち破れ、それでも何とかやっていくような毎日の連続でした」と過去の自分を振り返りつつ、真木さんとの共演についても「強くてドライな女性像を演じてくださったので、僕もいままでの役との変化を出せてとても充実していました」と手ごたえを感じた様子。対する真木さんも、「私が今回演じた響子は、将来を見ている女性です。子どもや自分の将来を見据え、それを行動に移せるしっかり者。だから、阿部さんが演じた良多のような、夢見がちな男性が寄ってきてしまうし、反対にそういう男性を好きになってしまうのではないかと思います。阿部さんは色々な作品で拝見していますが、ここまで“ダメ男”の役は初めてな気がします。でも、すごくハマっていらっしゃいました(笑)」と“ダメ男”阿部さんを絶賛した。また、樹木さんとの共演について阿部さんは、「親子を演じるにあたり、最高の環境をいただいたと思っています。演技の合間に作品のことだけではなく、色々なお話をしてくださって、そういう時間を一緒に過ごすうちに、自然と親子の空気が生まれていきました。樹木さんは、もともとそれを考えて下さったのかな、とも思います。あと、樹木さんだからこそ言えるセリフと言うのがあり、本当に面白いんです。是枝監督が樹木さんにしか言えないセリフを書き、それを“バチーン!!”と演じられる樹木さんがいる。そういう場面が見られる現場は、本当に貴重な経験でした」と感嘆の声を上げる。真木さんも「なかなかご一緒できる機会もないので、現場で盗めるだけ盗んでやろうと思っていました(笑)。一言一句台本に忠実に演じていらっしゃるのに、樹木さんらしさがキャラクターに滲み出ているのがとても印象的で、改めて尊敬する女優さんだなと感じました」と語るなど、日本が誇る演技派女優に改めて魅了されたよう。一方、そんな樹木さんからは、「背が高すぎて苦労した時代が長かった阿部さん、ローマ風呂だけじゃない居場所を見つけたのね。あの時代は憧れだった団地、70過ぎた婆さんにとってエレベーターのない団地の撮影はヨッコラショ。『僕は9才から28才までそこに生活してたんですよ!』撮影中、子ども時代を知ってる方々にすれちがう、我が団地の出世頭『コレエダ!』。わたしは忘れものしても、とりに戻らない。さてこの映画、まあまあなのか上出来なのか、蓋をあけてみるのが楽しみ」と独特の感性あふれる、樹木さんならではのコメントが到着している。数々の作品で活躍する名優たちが厚い信頼を置く是枝監督の最新作の続報に、引き続き注目していて。『海よりもまだ深く』は2016年5月21日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年12月25日浦和レッズにとって、最終節・ヴィッセル神戸戦は勝利が至上命題だ。『明治安田生命J1リーグ』2ndステージ第16節では、得点ランクトップの大久保嘉人を欠く川崎フロンターレを相手に引き分けに終わった。痛恨のドローが響き、年間1位のサンフレッチェ広島に勝点2差をつけられる2位に甘んじている。浦和レッズ×ヴィッセル神戸 チケット情報「今年こそ」の浦和サポーターの思いは、「今年も」叶わないのか。昨季の最終節を思い出してほしい。第33節にガンバ大阪が1位に躍り出て、得失点差7差で浦和は2位となった。G大阪の最終節の相手は早々にJ2降格が決まった最下位の徳島ヴォルティス。G大阪絶対有利の中、19勝5分9敗のG大阪は3勝4分26敗の徳島を崩せないまま、スコアレスドローに終わった。時を同じくして、浦和は名古屋グランパスに1-2で敗れた。G大阪0-0徳島の知らせを聞き「もし勝っていれば、再逆転優勝だったのに……」と嘆いたのは後の祭りだった。そう、勝負事は何が起こるかわからない。広島は最終節で対戦する湘南ベルマーレに1stステージは引き分けたが、その前まで8連勝を飾っている。それでも、湘南は侮れない。湘南は第14節・FC東京戦、第15節・鹿島アントラーズ戦、第16節・アルビレックス新潟戦と年間3位争い、2ndステージ優勝争い、J1残留争いの最中にいる相手に3連勝を飾っている。湘南が広島を相手に何かを起こす可能性はないとは言い切れない。何かを起こすためには、神戸に勝たないことには始まらない。だが、浦和にとって、神戸は厄介な相手である。神戸はここ2試合でJ1残留争いを展開していた松本山雅FC、モンテディオ山形を相手に連勝している。『天皇杯』4回戦で横浜F・マリノスを1-0で下すなど、チーム状況は上向きである。しかも、相手は『天皇杯』準々決勝で対峙する浦和だ。年間12位、2nd11位の神戸だが、モチベーション低下の心配はない。直接対決の成績では浦和が15勝5分11敗とリードするが、2010年以降、6勝2分1敗と神戸が圧倒する。GK・西川周作、DF・槙野智章、MF・柏木陽介は『W杯 アジア2次予選』の疲労もあるだろう。苦しい局面には、昨年、一昨年に失速した嫌なシーンが脳裏をよぎることがあるかもしれない。事実、10月以降は1勝2分1敗と今年も失速している。だが、ここで勝たなければ、過去2年間の教訓は生きない。もちろん、勝利したとしても、広島がすんなり年間1位の座に輝く可能性は高い。それでも、最終節を勝利で飾るのと、敗戦か引き分けで『明治安田生命2015Jリーグチャンピオンシップ』へ突入するのでは、雲泥の差がある。浦和レッズ×ヴィッセル神戸は11月22日(日)・埼玉スタジアム2002でキックオフ。試合当日は16年間在籍したMF・鈴木啓太の退団セレモニーも実施される。チケット発売中。
2015年11月20日綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが姉妹を演じる、是枝裕和監督の『海街diary』。この度、スペインで開催された第63回サンセバスチャン国際映画祭にて観客賞を受賞したことが分かった。鎌倉で暮らす幸、佳乃、千佳の三姉妹は、15年前、家を出ていったきりの父の葬儀で、初めて異母妹のすずと出会う。身寄りのなくなった彼女が葬儀の場で毅然とふるまう姿に、幸は別れ際、とっさに「いっしょに暮らさない?4人で」と口にする。こうして、鎌倉での四姉妹の生活が始まった――。今回、世界の映画祭で評価をされた作品などでスペイン未公開作を上映するパールズ部門出品の13本に選ばれていた本作。本年度カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した『黒衣の刺客』などもエントリーされていたが、10点満点中平均8.53点と最高点を記録した『海街diary』が見事受賞した。会場では、公式上映後も帰らない観客たちが劇場入口で拍手喝采で是枝監督を取り囲み大盛り上がり。過去には『奇跡』(’11)では脚本賞、『そして父になる』(’13)では観客賞を受賞している是枝監督。受賞を受けて監督は、「上映後に劇場から出てきたお客さんの表情がとても穏やかで、晴れやかだったので、それだけでも沢山幸せを頂いたと思っていたのですが、観客賞を受賞したと聞き、本当に嬉しいです。『そして父になる』に続いて2作連続の受賞というのも誇らしい限り。愛されてるなあ、としみじみ感じています」と喜びのコメントを寄せた。(text:cinemacafe.net)■関連作品:海街diary 2015年6月13日より全国にて公開© 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン小学館東宝ギャガ
2015年09月28日映画『海街diary』の是枝裕和監督と本作を含む是枝組常連の樹木希林が6月24日(水)、上映後のトークイベントに出席。次々と観客からの質問に答えた。吉田秋生の人気漫画の実写化で、鎌倉に暮らす3姉妹とかつて彼女たちを捨てて家を出た父が遺した腹違いの妹が共に暮らし始めての1年の月日を描き出す。樹木さんはこの日の上映を客席で鑑賞したが、完成した映画を見るの自体がこれが初めてで「大変、完成度の高い映画になっていました」と語り、会場は温かい拍手に包まれる。特に役名と同じ“すず”という名の広瀬すずについて樹木さんは「この子に出会ったのがこの映画のポイントですね」と語り、是枝監督も「『誰も知らない』の時も、柳楽優弥に出会って映画が動き出しましたが、今回もすずに出会って『広瀬すずが浅野すずだ』と思った」とうなずく。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆の3姉妹をはじめ、豪華俳優陣が競演している本作だが、キャスティングの苦労を尋ねられると、監督より先に樹木さんが「このくらいの(大物の)監督になると『あの人がいい』と言えばみんな出てくれるんです」と答え、「そんなことない!」と監督が苦笑する一幕も。ほかにも、監督が原作の映画化を熱望した理由について、樹木さんが監督が答える前に「キレイな女の人が4人出てくるのが好きなのよ」と断言するなど、樹木さんペースでトークは進む。キャスティングに関し、綾瀬さんと長澤さんは、それぞれ10代の時にドラマ版と映画版の「世界の中心で、愛をさけぶ」で同じヒロインを演じているが、その2人が本作では正反対の性格の長女・幸と次女・佳乃を演じている点について質問が飛んだ。是枝監督はキャスティングに際し「いままでにやった役はあまり関係ない」と語り「綾瀬さんは、お会いした印象では、メディアで見せる天然の印象と違い、凛とした古風な感じがして、所作も美しかった」と説明。そして「綾瀬さん(長女)が“静”で、佳乃はその正反対。『奇跡』でもご一緒した長澤さんに迷わずお願いしました」と語った。その綾瀬さん演じる幸が終末医療を担当する看護師で、長澤さんの佳乃が信用金庫に勤めている点について是枝監督は「死」と「お金」というテーマに触れ「法事のシーンでは原作でも、死んだ人間を悲しむだけでなく、生臭いお金がらみの話が必ず出てくる」と指摘。樹木さんは「人間の生活で避けて通れないことだけど、それが自然とすっと入ってきた」と改めて是枝監督の作り上げた世界を称賛する。また樹木さんは4姉妹について「だんだん成長していき、人間として器が広がっていくのが見て取れました」と絶賛。さらに「この映画のテーマは『家は女で土台が作られる』という気がしてます。女の出来がナンだと、家が苦しむ。あの大竹しのぶさんを(4姉妹の)母親にしたキャスティングは大変上手。存在しているだけで『壊れていくな、この家は』と感じさせる」と思うがままに語り、会場は爆笑に包まれた。是枝監督は「ありがとうございますと言っていいのか…」苦笑し「(大竹さんの放つリアリティは)お芝居でね!」と必死でフォロー。そんな是枝監督だが、樹木さんについては「書いたものを樹木さんに読んでいただき、現場に来ていただき、現場を見ていただく――大好きな役者さんだからというのは勿論ですが、大変厳しい方なので、(樹木さんを前に)ちゃんとしたい。ちゃんとした監督でありたいという気持ちがある」と自らを律するためにも大事な存在であると語る。「また出てください」と樹木さんにお願いし、会場は再び温かい拍手に包まれた。『海街diary』は公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:海街diary 2015年6月13日より全国にて公開© 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン小学館東宝ギャガ
2015年06月25日公開中の映画『海街diary』の上映後のトークセッションが6月21日(日)に開催され、是枝裕和監督とリリー・フランキーが登場。映画に隠された“仕掛け”や続編への期待などについて語った。吉田秋生の現在の連載中の人気漫画を映画化した本作。鎌倉を舞台に、古い日本家屋に暮らす幸田家の3姉妹と突然、彼女たちと一緒に暮らすことになった、死んだ父が遺した腹違いの妹の姿を静かに描き出す。リリーは、姉妹たちを知る喫茶店「海猫亭」のマスターを演じており、出番は決して多くないながらも4姉妹や風吹ジュンらと味のあるシーンを作り出している。是枝監督は前作『そして父になる』に続いての起用となるリリーさんについて「何もしないでそこにいることが一番難しいけど、それができるといちばん強い――それを最初から分かってて、プロの役者からしたら『困るな』という人」とその存在感を評する。リリーさんから「ストーリーがガッツリある漫画の映画化はやりやすいか?やりづらいか?」と質問されると監督は「どちらかと問われるとやりにくい。最初は苦労しました。僕も原作が大好きなので、何が好きなんだろう?原作は何を言おうとしてるんだろう?と読み取る作業があり、吉田さんの気持ちに入っていった」と述懐。例えば原作は長澤まさみ演じる次女・佳乃が恋人の部屋のベッドで目を覚ますシーンで始まり、映画もオープニングで同じシーンが描かれるが、この点について監督は「原作ではいろんなテーマが並走してるけど『居場所を探す』というのが大きなモチーフ。誰がどこに――誰の隣に居場所を見つけるのか?原作では佳乃の部屋は出てこない。最初は(佳乃の居場所は)朋章(※恋人/坂口健太郎)だったけど、それが変わっていく」とその意味するところを説明した。この長澤さんのベッドのシーンを含め、リリーさんは「四季を長澤さんが肉体で表現している。見終わってちょっとHな映画を見たような気持になった」と述懐。これについて是枝監督は「法事が3回も出てくる映画なので、死を巡るエピソードにくるまれると美しく哀しい話になってしまう。“肉体”と“食べること”という死と対極をきちんと体現したかった。次女(長澤さん)にエロスを、三女(夏帆)に食を担ってもらった。最初から長澤さんには『露出が多くなるかも』と伝えていた」とリリーさんの反応は狙い通りであったことを明かした。また、喪服などの衣裳でも姉妹それぞれ違いを出したそうで「衣裳の伊藤(佐智子)さんが繊細に考えてくれた。衣裳合わせの段階で『(姉妹の)下着から決めたい』と下着が(表に)出てくるわけじゃないのに言ってくれた」と語った。リリーさんはこのエピソードに興奮気味に反応し「幸(綾瀬はるか/長女)は上下バラバラッぽい。三女はボクサーパンツをはいてそう。すず(四女/広瀬すず)はお腹が冷えないパンツをはいていてほしい(笑)」と語り、是枝監督は「次女は日本のじゃないのをはいてます」と設定を明かし、リリーさんは「そうあってほしい!」と喜び(?)を口にする。会場は笑いに包まれるとともに、改めて是枝監督の繊細な映画作りに感嘆の声が漏れた。リリーさんは改めて4姉妹を演じた女優陣を絶賛。「主役を張れる綾瀬さん、長澤さん、夏帆さんが姉として、すずをあぶりだすようなお芝居をしている。カメラが回ってなくても姉としてすずに接していた」と証言する。是枝監督は嬉しそうにうなずき「(背の高さを記録する)柱の傷のシーンで、綾瀬さんがすずの髪を撫でるけど、あれは台本でも指示がないアドリブ。こういうことが自然にできる関係で、2人があそこにいるというのが素晴らしい」と称賛を送った。リリーさんは「続編が見たい」と語り、会場からは期待を込めた拍手が起こる。是枝監督は「みんなで『続編が見たい』と言ってもらえるくらいヒットすればいいねと話していた」と語り「これからお客さんが入って(続編の企画が)具体的になれば嬉しい」と現時点では白紙ながらも意欲をのぞかせていた。『海街diary』は公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:海街diary 2015年6月13日より全国にて公開© 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン小学館東宝ギャガ
2015年06月22日それは熱望という以上の強い感情だった。現在の邦画界にあって、オリジナル脚本での映画作りを許されている数少ない映画監督の一人である是枝裕和監督。実際、長編映画デビュー作『幻の光』こそ宮本輝の小説の映画化であったが、2作目『ワンダフルライフ』以降はほぼ一貫してオリジナル脚本を自ら執筆しており、非オリジナル脚本作品は『空気人形』のみ。これとて原作となった業田良家の漫画はごく短いもので、監督自身が物語を膨らませることで長編映画に仕上げた作品である。そんな是枝監督が第1巻の最初の1話を読みながら自らの手で映画化したいと強く思った――いや、当人の言葉を借りるなら「これは絶対に誰かが映画化するって言い出すぞ。いやだ!撮られたくない!と思って手を挙げた」のが、吉田秋生の人気漫画である「海街diary」(小学館刊)である。物語の中心となる4姉妹に上から綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずを配し、原作の舞台である鎌倉での撮影を敢行し完成した映画『海街diary』。いまなお連載の続く漫画をどのように料理し、組み立て、新たな是枝作品は出来上がったのか?是枝監督にじっくりと話を聞いた。鎌倉の古い木造一軒家に姉妹3人で暮らす幸、佳乃、千佳。そんな彼女たちの元に、かつて家族を捨てた父親の訃報が届く。山形で行われた葬儀で3人は、父が遺した腹違いの妹・すずと出会い、幸のひと言で彼女を鎌倉の家に引き取ることになり…。「1巻の最初に3人が父親の葬式で山形に行って、(すずを加えた)4人が高台に登って街を見下ろす。そこですずが泣くんだけど、そこで4人のシルエットが重なって蝉時雨が…というシーンが素晴らしくて、やられちゃった(笑)。ここ、カメラは絶対にクレーンアップだし、音楽ももう鳴ってたもん(笑)。映像になるために描かれた画だったんです」。実は、そのタイミングでは、すでに原作の映画化権は別の人間に押さえられていた。「だから1回、あきらめたんですよ。そうしたら、(権利を)手放したという連絡が入って、じゃあ今度こそって。そこまでするのは初めてでしたけど、あきらめた後もずっと、いち読者として漫画は追い続けていたんですよ。読みながらいろいろ考えていたものが、もう一度できそうだということになって、思いのたけをぶつけてみようと。熱いんですよ、今回は(笑)」。映画化が決まり、脚本にしていく過程を是枝監督は「吉田さんの中に深く潜っていく感じ」と表現する。「何を考えて吉田さんはこういうシーンにしたのか?読み解いていきました。他人の作品をこんなに読んで、読んで、読んで…というのはなかなか。そこからスタートして、でも途中からは(綾瀬さんらキャスト)4人を選んだので、この4人をどう動かしていくか?という演出家の視点にシフトしていきました。例えばですが原作の1話目は、なぜ佳乃が恋人の部屋のベッドで目を覚ますところから始まるのか?家から始まってもいいはずなのになぜなのか?そんなことを考えていくところから始まりました」。「不在者」と「残された者」、「死」と「記憶」――海外映画祭の常連でもある是枝監督の作品について語る上で頻出するキーワードと言えるが、この脚本執筆の思考の過程でまさに、こうしたテーマとぶつかった。「原作者の吉田さんには『お任せします』と言われたんですが、唯一、『アライさんだけは出さないでください』と言われたんです」。アライさんとは原作にも幾度となく出てくる人物で、看護師である幸の後輩なのだが、連載を通じてなぜか幸をはじめ他人の会話の中でその存在が語られるばかりで、本人の姿は一度も登場しない。「それを深く考えていくと、この物語は、出てこない人間が重要な役割を果たす作品なんだと改めて思い直しました。そう思って読み直すと、キーになる人物――4人の父親やすずの母親などの姿は出てこないんですよね。その人たちを意識しながらみんな、生きている。生きていない人間を回想で出さずに、どうやって生きている人間に重ねながら生きていくか?すごくアクロバティックなことを要求されているんだなと受け止めて、細かい積み重ね、どうやっていない人を感じさせられるか?やれるだけやろうと覚悟が決まりましたね」。そうした作業の中で是枝監督は、原作漫画にはない映画オリジナルのシーンをいくつも加え、溶け込ませていった。その理由、それぞれのシーンの作られ方も千差万別である。例えば、3姉妹の母親でいまは再婚して離れて暮らす都(大竹しのぶ)とすずが顔を合わせる鎌倉での法要のシーン。都にとって、すずは夫を奪い、家族を壊した女の娘であるわけだが、ここで原作にはない、都とすずの2人だけのシーンを加えた。「(原作のまま)グループショットで押すというやり方もあったけど、一度、あそこですずを単独にしておいて、家に戻ってからの流れ(※帰宅後に起こる姉妹と母親たちの騒動)のために、彼女に強めの“圧”をかけておいた方がいいと思って、意地悪で書きました(笑)。あえて、そうやってバランスを崩すために加えたものもあります」。また、撮影が始まってから女優陣の芝居を見て急遽、新たなオリジナルシーンを加えたことも。「病院で幸と二宮(風吹ジュン)がバッタリ会って『最近、胃の調子がね』というやり取りを撮っていて『また来てちょうだいよ、お店』と二宮さんが言って、幸が『懐かしいな』と言うんですが、その顔を見て、幸は律儀な子だから、実際にお店に行くだろうと思ったんです。あの店には、(自分たちを捨てた)父親の記憶もあって、おそらく意識的に行ってなかったんでしょうけど、そう言われたら行く気がした。だから、原作に4人であの店に行くというシーンはないんですが、それで描いてみると『あ、このシーンがあれば最後のシーンも成立するな』とか、描いていく中で骨格が見えてきた。そういうことは今回、意外と多かったです」。キャスティング、オリジナルシーン、原作から削除されたシーン、世界観etc...人気漫画であればあるほど、連載が長いほどに映画化には賛否がつきまとう。是枝監督は完成した作品について「原作と映像の関係で言うとうまくいったと思う」と自信をのぞかせるが、その手応えの理由を語る上で口をついて出たのが、夏帆さん演じる三女・千佳の存在である。ちなみに幸ら姉妹のそれぞれの特徴や演出について語る文脈で、是枝監督は三女・千佳についてこんなことを語っていた。「撮影前に何組が3姉妹を取材したんですが、どこの家でも長女と次女は洋服の貸し借りをするけど、三女は趣味が変わってるからしないの。『あいつの服は借りられない。あいつの音楽の趣味もわかんない』って(笑)。上の2人を見て、違う道を行くんだよね。原作でも千佳は一人だけ違う服着て、髪型もアフロ。上の2人と違うノリとリズムで生きていて、2人の対立に左右されない子がいることで、対立が深まり過ぎないというバランスの取り方をしてるんです」。その上で、映画では千佳をアフロにはしないことにした。それを、監督は映画化の成功の“勝因”のひとつに挙げる「それは判断として大きかったと思う。アフロであるってどういうことか?と考えると、やはり姉たちとは違う美意識で生きてるということ。池田(貴史/※千佳の恋人)さんはアフロだけど、そのアフロのオヤジの隣に居場所を見つけているということ――つまり、趣味がきちんとそこにリンクしているのであれば、別にアフロじゃなくても行けるし、アフロにしてしまうとコミックをなぞる感じになって、人間としてむしろわかりやすくなっちゃう。だから、そこを一度、捨ててみようと思ったし、むしろ夏帆さんであればアフロにはしないだろうと思った。アフロにせずとも姉2人と違う感じが出せれば、映画としてはその方がいいんじゃないかという方向性に行けたのがよかったんじゃないかと思います」。改めて、吉田さんによる現在進行形の原作を是枝監督は「少女漫画の枠を超えてすごく“大きなもの”を描いていると思う。それは人間ではなく、街だったり、時間だったりしていて、だからこそ、これは『鎌倉4姉妹物語』ではなく『海街diary』なんだと思う」と評する。さらに、こうも続ける。「よく『この作品を撮って家族観が変わったか?』と聞かれますが、そもそも、自分に確固たる家族観があったのかがよくわからない(笑)。ただ、なぜこの原作漫画が面白いのかと言うと(同じく吉田作品の)『櫻の園』は『過ぎ去った時間はもう戻ってこない…』というある種の残酷さを描いているんだけど、この『海街diary』は『過ぎ去った時間が時と共に自分の中で形を変えていく話』を描いていると思うんです。特に幸にとっては。反発していた母親に久しぶりに会う。嫌って否定していた父親がすずを残してくれた。そうやって、幸の中で過去が書き換えられていくことが、彼女の成長になっていくというのが、すごく大人の人間描写だと思うんです。時間が彼女の中でどう変化するのか?それは見えないけど、この原作の豊かさなんだなと。それを何とか映画で描きたかった。自分が父親になったことで、もう亡くなってずいぶん経つ父親のことを思い返している自分がいるんですよ。この年齢のとき父は…と考えてる。疎遠だったんだけど、自分の中でちょっとずつ形を変えている。自分が子供と接する中で、そういうことが自分の中で起きているから、映画を撮りながら幸の変化にすごくシンパシーを感じていたんです」。美しき原作に、私小説のように監督自身の思いを編み込みながら、4姉妹と共に紡ぎ上げていった『海街diary』。観客がどのように受け止めるのか?是枝監督は静かにその反応を待つ。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:海街diary 2015年6月13日より全国にて公開© 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン小学館東宝ギャガ
2015年06月12日是枝裕和監督最新作『海街diary』公開を前に、是枝監督の前作『そして父になる』に続いて本作のカメラマンを務めた写真家の瀧本幹也が撮影の過程を収めた写真集「海街diary」が発売。5月27日(水)、是枝監督、瀧本さん、主演の広瀬すずによるトークイベントが開催された。現在も連載が続く吉田秋生の人気漫画の実写化で綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆という豪華女優陣が広瀬さんの腹違いの姉を演じている。育ての親の祖母亡きあと、鎌倉の家で暮らす3姉妹の元に、かつて彼女たちを捨てた父が亡くなったという知らせが届く。その葬儀の席で出会った腹違いの妹を鎌倉の家に引き取り、4人は一緒に暮らし始めるのだが…。先日閉幕した「カンヌ国際映画祭」に出品され、是枝監督、瀧本さん、そして広瀬さんを含む4姉妹が現地を訪れたが、是枝監督は「4人をカンヌに連れて行くことができて幸せな時間でした」と笑顔で語る。広瀬さんも「楽しかったです。映画の街だなというのが印象的でした。思ったよりも緊張することなく、お姉ちゃんたちとレッドカーペットを歩けたのが楽しかったし嬉しかったです」とニッコリ。カンヌ滞在の様子は日本でもTV番組などで紹介され、カンヌの常連である是枝監督のおすすめのパンナコッタを食べる様子なども映っていたが、広瀬さんは「いままで食べたデザートの中で一番おいしかったです!」と嬉しそうに語っていた。今回の写真集の写真は、瀧本さんが撮影の合間やセットチェンジの時間に撮影したものが収められている。広瀬さんは「映画の中で食事しているシーンでも、カットがかかっても4人ともずっとそこで食べ続けてるんです、おいしいから(笑)。そこで自然な世界に生きているのを感じたし、そういうところを撮られてる」と語る。是枝監督も「4姉妹のこの時しかない瞬間――特にすずは、そういう瞬間を切り取られています」と瑞々しい一瞬が収められていると強調する。瀧本さんは、4姉妹が暮らす古い民家の縁側に惹かれたようで、そもそも、そこに佇む姉妹の姿に写真家として刺激され、撮影が始まってから写真集という形で記録を残すことを考えたとのこと。「セットチェンジのときでも普通は控室に戻るのに、そのままみんな、縁側に座っていた」と述懐。広瀬さんはその時の会話について「あそこの食べ物屋さんがおいしいという話か、監督や瀧本さんの話もしてましたよ」といたずらっぽい笑みを浮かべていた。写真集「海街diary」(青幻舎刊)は発売中。『海街diary』は6月13日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:海街diary 2015年6月13日より全国にて公開© 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン小学館東宝ギャガ
2015年05月27日現在開催中の第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門のトップバッターとして『海街diary』が上映されたカンヌの常連・是枝裕和監督が、かつて同映画祭で審査員賞を受賞した『そして父になる』で主演を務めた俳優・福山雅治と豪華再タッグを組んだJCBオリジナルシリーズの新TVCM「かけがえのない毎日」篇。このたび、本CMカットとメイキング画像が解禁された。今年でデビュー25周年を迎え、8月には自身史上最大規模となるスタジアムライヴツアー「福山☆夏の大創業祭 2015」を開催予定、さらに6年ぶり、3度目となる故郷・長崎県の稲佐山での凱旋ライブ開催も決定し、ミュージシャンとして不動の人気を誇る福山さん。音楽活動だけに留まらず、ラジオパーソナリティやカメラマンなど多彩な活躍ぶりで人気を集め、俳優としても唯一無二の存在感を放つ。2010年にはNHK大河ドラマ「龍馬伝」で主演を務め、フジテレビ系ドラマ「ガリレオ」シリーズではドラマが連続最高視聴率を記録したほか、シリーズ映画『真夏の方程式』が2013年上半期の邦画実写興行収入1位を獲得。さらに主演作『そして父になる』は第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にて審査員賞を受賞し、日本を代表する俳優として各国から注目を浴びた。本CMでは、「AKB48」のミュージック・ビデオや、主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で史上最年少の最優秀男優賞を受賞した『誰も知らない』を手掛けた是枝監督が、監督・脚本・編集を担当。一本のストールを巡った家族の絆や幸せを描き、“さりげない1日の中に、実は幸せが詰まっている”ことを表現している。撮影は、3月下旬とは思えないほどの暖かさの中、神奈川県横浜市内にて敢行。既に作品を作り上げたことがある福山さんと是枝監督なだけに、現場では互いの考えをすぐに理解し撮影に挑む場面が見受けられ、ほとんどNGも出ることがなかったそう。解禁されたメイキング写真でもにこやかな2人の様子が写っており、撮影が順調だったことが伺える。また、本編CM映像より、キーアイテムとなるストールを巻く福山さんや、家族で並んで歩く後姿が微笑ましく印象的なCMカット画像も解禁。映像では、是枝監督の心の動きを追う優しさあふれる演出や繊細な映像、そして全体を包む優しい音楽が揃い、まるで一本の映画のような仕上がりになっているようだ。気になる本CMのストーリー全貌が楽しめる80秒映像は、JCBオリジナルシリーズサイトにて限定公開中。また本CM「かけがえのない毎日」篇は、5月23日(土)より全国にてTV放映予定だ。(text:cinemacafe.net)
2015年05月23日女優の綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが4姉妹を演じる是枝裕和監督映画『海街diary』(6月13日公開)が、5月13日から24日まで開催される第68回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に正式出品されることが16日、明らかになった。本作は漫画家・吉田秋生が漫画雑誌『月刊フラワーズ』(小学館)で2006年8月号から不定期連載中の同名漫画を原作に、一昨年の第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受けた『そして父になる』(2013年)以来の新作となる是枝裕和監督がメガホンを取った作品。鎌倉の祖母が残した家を舞台に、"異母妹"を加えた4姉妹のリアルな家族の絆を描いている。今回出品されるコンペティション部門は、最高賞パルムドール他賞を競う部門であり、本年度の審査委員長は 『ノーカントリー』(2007年)、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(2013年)などで知られるジョエル&イーサン・コーエン監督に決定。是枝監督作品としては前作『そして父になる』以来2年ぶり、『DISTANCE/ディスタンス』(2001年)、『誰も知らない』(2004年)を含む4回目のコンペティション部門出品となる。出演作が海を渡ることについて綾瀬は、「日本の海街、四季の美しさとそれに見守られるようにそれぞれに悩みを抱えながら、時にぶつかりながらも仲むつまじく暮らしている四姉妹の物語を海外のみなさんにもぜひたくさん見ていただきたいです」とコメント。長澤も「四人姉妹の物語を描いた『海街diary』を通して、海外のみなさんにも日本女性の美しさや強さを見てもらえるとうれしいです」と期待を寄せる。マイペースな三女を演じた夏帆は、「鎌倉の美しい四季の移ろいのなか、四姉妹を中心とした女性たちの物語を丁寧に描いた作品です。きっと国籍など関係なく、たくさんのひとに届く作品だと思います」と作品の持つ普遍性に言及。四女としてみずみずしい演技を見せた広瀬は、「自分が出演させていただいた作品が、海外映画祭に招待されるというのは初めてのことなので、今、正直オドオドしています」としながらも、「あらためて、この作品に参加させていただけて、本当に幸せです」と語った。前作『そして父になる』が、自身9年ぶりのコンペ出品でであった是枝監督は、「今回また選ばれたことは、正直驚きでした。素直にうれしいです」と喜ぶ。その上で、「国際映画祭はゴールではなく、より多くの人々に映画を届けるためのスタートだと考えていますし、中でもカンヌはその出発点としては最高の場所だと思っています」と気を引き締め、「一見すると、穏やかな春の海のようなこの映画があの場所でどのように受け止められるのか? 今から楽しみです」と現地での反応を心待ちにしている。(C)2015吉田秋生・小学館/「海街diary」製作委員会
2015年04月17日吉田秋生の人気コミックを綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの共演で実写映画化する『海街diary』の最新映像が公開になった。世界で高い評価を集めている是枝裕和監督が映画化を熱望した1作だ。最新映像映画は、2006年から月刊フラワーズで連載を開始した吉田秋生のコミックを原作に、鎌倉で暮す3姉妹と、彼女たちと一緒に暮すことになった“異母妹”の日常を通して描く家族の絆の物語。綾瀬が長女の幸を、長澤が次女の佳乃を、夏帆が三女・千佳を、広瀬が四女のすずを演じ、大竹しのぶ、堤真一、加瀬亮、風吹ジュン、リリー・フランキー、樹木希林らが出演する。このほど公開になった新映像は、長女の幸がすずに「一緒に暮らさない?4人で」と声をかけるシーンから始まる。三姉妹とすずは、遠く離れた場所で暮らしていたが、三姉妹は父親の不在を感じ、すずは田舎で孤独を感じていた。映画は4人が鎌倉で新生活をはじめながら少しずつ“家族”になっていく過程を四季の変化を背景に描き出していくもので、新映像にも四姉妹の表情の細やかな変化や美しい風景がしっかりと描かれている。『海街diary』6月13日(土)全国ロードショー
2015年02月06日