「是枝裕和」について知りたいことや今話題の「是枝裕和」についての記事をチェック! (1/18)
iPhone 16 Proを用いて全編撮影された是枝裕和監督の短編映画『ラストシーン』がApple Japan公式YouTubeチャンネルにて公開された。本作は、鎌倉を舞台にした是枝監督初のタイムトラベル・ラブストーリー。仲野太賀、福地桃子が主要人物を演じ、黒田大輔、リリー・フランキーも出演している。撮影監督は瀧本幹也が務めた。是枝監督は「自然でありのままの映画にしたいと思い、本当に、日常生活の中にあるつかの間の瞬間、当たり前だと思っている大切なものを撮影しました。私は、登場人物たちがレストランから鎌倉へ、そして観覧車へと向かう、穏やかで、温かい人間性あふれるビジュアルを心に描きました。iPhoneのカメラ機能のおかげでストーリーに深みが出て、普通のものが特別になりました」とコメント。また、Vaundyの書き下ろし楽曲「まじで、サヨナラべぃべぃ」が主題歌として使用されており、Apple Musicで空間オーディオにて配信中である。さらに、Apple Musicのラジオ番組「Tokyo Highway Radio」では、DJみのが是枝監督とVaundyをゲストに迎え、本作について語るエピソードを配信している。また、Apple TVアプリでも本編と舞台裏映像を楽しむことができる。(シネマカフェ編集部)
2025年05月10日Appleが、iPhoneのみを使って写真や映像を撮影するキャンペーン「iPhoneで撮影 ー Shot on iPhone」の一環として、是枝裕和監督が全編iPhone 16 Proで撮影した短編映画『ラストシーン』を公開した。本作は、鎌倉の街を舞台にした是枝監督初のタイムトラベルラブストーリー。「未来に何が残り、何が消えるのか」をテーマに、テクノロジーなどが進化する中で、50年後にも残したいものとは何か。日々の小さな選択によって、どんな未来が作られていくのか。観終えた後、観客のひとりひとりが自身の選択について考えさせられる物語となっている。ストーリーの主要人物を演じるのは、是枝作品に初出演する仲野太賀、福地桃子、黒田大輔、是枝作品に長く携わるリリー・フランキー。製作陣は、長年にわたって是枝監督作品に携わってきた、写真家の瀧本幹也が撮影監督を務め、主題歌にはVaundyの書き下ろし楽曲「まじで、サヨナラべぃべぃ」が起用された。iPhone 16 Proのカメラが、海の街鎌倉に広がる美しい空や海の色、動き、絶妙な細部のみならず、俳優陣の微妙な表情の変化や複雑な感情の交差をも捉え、魅力的な27分の短編映画が完成した。本作をiPhone 16 Proで全編撮影したことについて、是枝監督は「自然でありのままの映画にしたいと思い、本当に、日常生活の中にあるつかの間の瞬間、当たり前だと思っている大切なものを撮影しました。私は、登場人物たちがレストランから鎌倉へ、そして観覧車へと向かう、穏やかで、温かい人間性あふれるビジュアルを心に描きました。iPhoneのカメラ機能のおかげでストーリーに深みが出て、普通のものが特別になりました」とコメントしている。『ラストシーン』本編『ラストシーン』の舞台裏
2025年05月09日Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」より本編シーンが解禁。さらに相関図も公開された。1月9日(木)より配信がスタートする本作は、向田邦子の名作を是枝裕和が監督し、宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが四姉妹を演じる注目のドラマシリーズ。この度解禁されたのは、本作の物語の軸となる「父親の愛人問題」が発覚する第1話の重要シーン。次女・巻子(尾野真千子)の自宅で家族会議が開かれ、三女・滝子(蒼井優)が父親の秘密を暴露する。長女・綱子(宮沢りえ)も次女・巻子(尾野真千子)も「他の人ならともかくうちのお父さんにそんな」と茶化し、四女・咲子(広瀬すず)も同様に滝子の話を真剣に取り合おうとしない。さらには、巻子の夫・鷹男(本木雅弘)も「お父さんに彼女ね~」と軽くあしらう。しかし、滝子が「見たんだもん私」と、父と愛人、さらには子どもの3人を実際に見かけたと打ち明けると、その場にいた全員がようやく事の重大さに気づき始めるのであった…。さらに併せて公開された相関図では、物語のメインとなる竹沢家の四姉妹とその両親を軸に、それぞれに渦巻く人間模様が入り乱れる。幸せそうに見えた四姉妹に、突如訪れた家族の不穏の行方は?豪華キャストによる壮絶で見応えのある人間ドラマに、期待が膨らむ。Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」は1月9日(木)より世界独占配信(全7話)。(シネマカフェ編集部)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2025年01月08日Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」の写真集「写真 阿修羅のごとく」が発売決定した。「阿修羅のごとく」は、向田邦子の名作を是枝裕和監督が令和に蘇らせた、宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが四姉妹を演じる物語。竹沢家の四姉妹が久しぶりに集まり、父親の秘密を知ることから始まり、長女・綱子(宮沢)、次女・巻子(尾野)、三女・滝子(蒼井)、四女・咲子(広瀬)が、家族の葛藤や秘密に向き合う姿が描かれる。Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」は2025年1月9日(木)より世界独占配信今回の写真集は、ドラマの撮影を担当した写真家・瀧本幹也によるもの。是枝監督作品の撮影を数多く手掛けており、今回もその才能を発揮。写真集には、四姉妹の表情や1979年の舞台を感じさせる場面写真が収められており、ドラマを観た人もそうでない人も楽しめる内容となっている。「写真 阿修羅のごとく」は2025年1月下旬発売予定。Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」は2025年1月9日(木)よりNetflixにて世界独占配信(全7話)。(シネマカフェ編集部)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2024年12月15日向田邦子の最高傑作として名高いドラマシリーズ「阿修羅のごとく」がプロデューサー・八木康夫の企画、是枝裕和の監督・脚色により、Netflixシリーズとしてリメイク。宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが物語の中心となる四姉妹を演じ、世界観をひと足先に味わえるオープニング映像も公開された。エッセイを多数発表し、小説では直木賞を受賞するなどキャリアの最盛期にあった1981年、飛行機事故によって突然生涯の幕を閉じた向田邦子。だが彼女の影響は後世に広く及び、没後40年を経てもなお、その人気はいまだ陰りを見せない。そんな数ある向田作品の中でも、最高傑作として名高いドラマシリーズ「阿修羅のごとく」を、かつて仕事をともにしたTBSドラマの黄金期を支え、ホームドラマの名作を数多く手掛けてきた八木康夫(「パパはニュースキャスター」「団地のふたり」)が企画プロデュース。そして、かねてから敬愛する脚本家の1人として向田邦子を挙げていた是枝裕和(『万引き家族』『海街diary』)が監督・脚色・編集を務める。昭和を代表する家族劇の傑作「阿修羅のごとく」の時を経ても色褪せない魅力がそのままに令和に甦る。是枝裕和監督 Photo by Borja B. Hojas/Getty Images■阿修羅のように、ときに争い、ときに笑う四姉妹ときに争い、口汚く罵り、泣きわめき、かと思えば、抱き合って高らかに笑う。女は阿修羅だ――。向田氏が描いた「阿修羅のごとく」は、年老いた父の愛人問題をきっかけに大きく揺らぎ、四姉妹それぞれが抱える葛藤や秘密が次々とあらわになる。恋愛観も違えば、生き方も違う4人の姉妹が、対立し、感情をぶつけ合いながら、心底では互いを気にかけ、やがて手を取り合う。その泣き笑いが細やかに描かれる、最上級の人間ドラマ。今回の本編で描かれるのは、原作と同じく1979年が舞台。主人公である四姉妹を演じるのは、夫を亡くし、活け花の師匠として生計を立てる長女・綱子に宮沢りえ。宮沢りえ会社員の夫や子どもたちと一見平穏に暮らす、専業主婦の次女・巻子に尾野真千子。尾野真千子図書館で司書を務める、恋愛に不器用な三女・滝子に蒼井優。蒼井優喫茶店のウエイトレスで、ボクサーの卵と同棲する四女・咲子に広瀬すずと、名だたる俳優たちのかつてない華やかな競演が実現。広瀬すず昭和が舞台でありながらポップな世界観を生み出している本作には、撮影に瀧本幹也(『そして父になる』『海街diary』)、衣装デザインに伊藤佐智子(『海街diary』「舞妓さんちのまかないさん」)、フードスタイリストに飯島奈美(『海街diary』「舞妓さんちのまかないさん」)、音楽にfox capture plan(ドラマ「カルテット」「コンフィデンスマンJP」)など、錚々たるスタッフが勢揃いした。このたび制作発表と併せて公開されたティーザーアートは、四姉妹の一見平穏な表情の裏に隠された“秘密”が垣間見えてくるような、なんとも言えないヒリついた空気感が漂ってくるビジュアル。また、解禁となったOP映像も、昭和レトロなデザインとスタイリッシュな音楽にのせて、憂いや穏やかな表情から感情を剥き出しにする静と動の四姉妹とあわせて、インパクト大の映像となっている。彼女たちの心の奥底に秘められた葛藤や本音が露わになるとき、この4人が織りなす物語がどう展開していくのか…。■「今の時代のドラマになった」八木康夫プロデューサー監督・脚色・編集を務めた是枝氏は、「会話で交わされる表面上の毒と、その背後に隠された愛、その両方があるから向田邦子のドラマは豊かなんです。それは人を描くうえで大事なところだし、言葉になっているセリフを伝えるだけでは芝居じゃない。今回、四姉妹を演じた4人はみんなそれができる人たちだったので、撮っていて面白かったです」とコメント。企画プロデュースを手掛けた八木氏は「時代設定はオリジナルと同様で当時のままですが、是枝さんのお力で今の時代のドラマになったと思います。ドラマにもっとも必要な三要素は、キャラクター、セリフ、ストーリーです。その3つの魅力がすべて詰まった作品ができました。“ディス・イズ・ドラマ”、これこそがドラマだと言って差し支えない作品ができたかなと思います」と自信をのぞかせた。「みんな、ひとつやふたつ、うしろめたいとこ、持ってるんじゃないの」――鋭い人間洞察から生まれたセリフの数々が浮き彫りにするのは、人間の愚かさ、そして愛おしさ。人間の本質を突く普遍的なテーマを備えた物語は、国内のみならず、これまで向田作品を知らなかった海外の人たちをも惹きつけ、魅了するに違いない。Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」は2025年1月9日(木)より世界独占配信(全7話/一挙配信)。(シネマカフェ編集部)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2024年11月12日株式会社K2 Picturesが日本発の映画製作ファンドを設立し、岩井俊二、是枝裕和、白石和彌、西川美和、「MAPPA」、三池崇史ら、志を共にする世界で活躍するクリエイター陣を発表。カンヌ国際映画祭開催中のフランス・カンヌにて、記者会見を実施する。■日本発の映画製作ファンド“K2P Film Fund I”立ち上げK2 Picturesは、“日本映画の新しい生態系をつくる”べく、日本発の映画製作ファンド「K2P Film Fund I(読み:ケーツーピー フィルム ファンド ファースト)」を立ち上げ。本ファンドの映画製作では、新たな国内外投資家の日本映画産業への参入、クリエイターへの利益還元を推し進めていく。K2 Pictures近年、日本コンテンツの活躍は目覚ましく、本年の米国アカデミー賞で『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞し、配信業界でもNetflix「忍びの家 House of Ninjas」、Disney+「SHOGUN 将軍」など日本文化を描いた作品の人気が高く、アニメや漫画なども世界での人気は右肩上がりと、コンテンツは国内産業の中でもトップクラスの一大産業に発展している。しかしながら、まだまだ日本の映画製作では、その生態系は長らく変わっていない状況があり、その1つに海外法人や国内においても新しい投資家が参入しにくい現状がある。そこで、現状の日本の映画製作における新たな選択肢として、日本コンテンツに興味がありながら接点を持てなかった国内外の会社が参加しやすいように、スポーツ・エンタメ領域やファンド領域を専門とする弁護士や、エンタメ領域を得意とする会計事務所・ビズアドバイザーズ株式会社のサポートのもと、海外からの投資を想定した法律・会計基準をもつ、このファンドを練り上げた。さらに、日本映画製作におけるクリエイターへの利益還元は十分に行われているとは言い難い状況にあり、本ファンドではクリエイターや制作に関わるスタッフに対する利益還元の仕組みを取り入れる。それによって、多くの才能が映画産業に夢を持ち続けられる体制を整えていく。映画に欠かせない投資家・クリエイターにおける新たな生態系を本ファンドでつくることにより、日本映画をさらに活気ある産業にしていくこと、そして世界の市場に向けて展開していくことが大きな目標。そんなK2 Picturesが思い描く映画制作の形やビジョンを形にした、ファンド組成について詳細を発表すべく、世界中の映画業界の関係者が多く集まるカンヌ国際映画祭が開催中であるフランス・カンヌの場で記者会見を行う。■岩井俊二、是枝裕和、白石和彌、西川美和、MAPPA、三池崇史らと映画製作が進行中日本映画の新しい生態系をつくるという、K2 Picturesが目指すこれからのビジョンに賛同し、ともに映画製作を進めていくクリエイターも合わせて発表。日本のみならず、特にアジアでの人気が高く、欧米、中国での映画製作の場を広げている岩井俊二、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭・パルムドールを受賞し、本年のカンヌ国際映画祭では審査員を務める是枝裕和。毎年のように新作を発表し、最新作『碁盤斬り』は先日イタリアで開催されたウディネ・ファーイースト映画祭で批評家により選出されるブラック・ドラゴン賞を受賞した白石和彌、監督2作目の『ゆれる』がカンヌ国際映画祭監督週間で正式出品され、その後もオリジナル作品を中心に精力的に作品制作を続けている西川美和。「呪術廻戦」「チェンソーマン」など海外でも人気の高いアニメーション制作を行う株式会社MAPPA、その新作は常に海外からも注目され、カンヌ国際映画祭をはじめ幾度となく様々な映画祭に招待されている三池崇史など、日本はもちろんのこと、海外でも活躍の場を広げ続けている監督とK2 Picturesは世界市場を目指した映画製作を進めていく。■5月18日(土)フランス・カンヌにて、記者会見開催決定そんなK2 Picturesが思い描くビジョンやファンド組成について詳細を発表すべく、現地時間5月18日(土)に開催中のカンヌ国際映画祭メイン会場に程近いJWマリオット・カンヌにて、K2 Picturesが掲げるビジョンと共に今回立ち上げるファンドを世界に向けてプレゼンテーションをするため、記者会見を実施。『孤狼の血』シリーズや“村”シリーズ(『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』)、『初恋』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『THE FIRST SLAM DUNK』『キリエのうた』などを手がけてきたK2 Pictures代表取締役CEO・紀伊宗之、共に作品製作をしていくクリエイター・三池崇史、西川美和も登壇。さらに、監督デビューをする大型新人監督もこの会見で発表される。クリエイター陣よりコメント(五十音順)・岩井俊二紀伊宗之のやりたいことなら絶対に応援したい。それがこのプロジェクトに参加した僕の純粋なる動機だ。プロデューサーとしての彼は無類に頼もしい。彼にかかったら開かない鍵なんかないかのようだ。彼とする仕事は無類に楽しい。それは彼に人を信じる力があるからだと思う。いつの時代も破天荒な発明家が時代を塗り替えて行く。今回、彼は僕らのために新しい乗り物を作ってくれた。K2 Pictures。それは自動車のようでもあり、船のようでもある。飛行機にも潜水艦にもなり得る。山に登ればそれはピッケルとアイゼンに変身してくれる。そんな変幻自在、臨機応変なしなやかさがK2 Picturesの持ち味になることだろう。そんなチームだったらフィルムメーカーだって本気で頑張れる。僕も思いつく限りのアイディアを投じてこの恩に報いたい。どんな冒険が僕らを待ち受けているだろう。10年後、どんなチームに成長しているだろう。とにかく今から何もかもが待ち遠しくて仕方がない。・是枝裕和30年映画を作って来て感じていた既成の作り方への疑問や、違和感をどうしたら改善出来るか模索している途上で、紀伊さんたちの取り組みに出会いました。このチャレンジが成功して、映画界に良い風が吹き、新しい才能にチャンスが開かれる。そんな未来を実現しようとしている心意気に共感して、仲間に加えて頂きました。共闘を楽しみにしています。・白石和彌K2 Picturesの勇気ある船出に心から拍手を送ります。日本の映画界に革命を起こし、見えない壁を壊して下さい。今までの日本映画では実現不可能だった企画や、突出したユニークな才能が生まれることを期待しています。私も並走して世界を驚かせる映画を作りたい。よろしくお願いします。・西川美和日本の映画の世界でキャリアを重ねながら抱くようになったのは、なぜか自信や希望よりも行き止まりのロープにつんのめるような感覚でした。これ以上映画を撮るのはなんとなく怖いような気がしていました。それで「映画」から背を向けるように、従来の映画会社や出資者が決して歓迎しないような話を書いていたんです。すると紀伊さんという人が立ち上げたK2 Picturesが新しい投資で資金繰りしてそれを映画にする、と言ってくれた。本気だろうか、と思いました。しかも若い作り手の独創的な企画にもチャンスの扉を開いているという。安全牌で固める発想ではなく、新しい人やきわどいものに必要十分な資金と環境で機会を作ることを目指すK2 Picturesの挑戦には乗ってみる価値があると思いました。ある意味、K2 Picturesのファンドや新しい配給の仕組みは、危険な冒険にも思えます。実際、一筋縄ではいかないこともあるでしょう。でもそれが映画作りだし、どうせ映画を作るなら私は冒険をするチームと組みたい。それがこれから先に日本で映画を作っていく人たちの、新しい活路になっていく可能性があるならば尚更です。・MAPPA「K2 Picturesの挑戦を応援したい」という想いで、このプロジェクトに参加させていただきました。私たちも、アニメーションスタジオとして何ができるのかを精一杯考えながら、映画製作のパートナーとして力を尽くしたいと考えております。・三池崇史『K2 Pictures』。そして紀伊という怪しげな男について紀伊=誠実な破壊者。私はこう見ている。とてもパワフルだ。そして、そのエネルギーの源は、優しさだと思っている。「もっと面白い映画を創って、もっと幸せになろうよ」紀伊さんの笑顔に、そんなシンプルなメッセージを感じる。だから私は『K2 Pictures』を信じている。(シネマカフェ編集部)
2024年05月10日今年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で審査員を務めるメンバーが発表された。昨年度、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で数々の賞を受賞したリリー・グラッドストーン、『ダーク・シャドウ』のエヴァ・グリーン、「Lupin/ルパン」のオマール・シー、2014年にパルム・ドールを獲得した『雪の轍』の脚本家エブル・ジェイラン、2018年に審査員賞を受賞した『存在のない子供たち』のナディーン・ラディキー監督、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のフアン・アントニオ・バヨナ監督、イタリア人俳優のピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、2018年に『万引き家族』でパルム・ドールを受賞した日本の是枝裕和監督の7名。審査員長は昨年末、『バービー』のグレタ・ガーウィグに決定したことが発表されていた。審査員に決まったメンバーに対し、映画ファンの感想は「才能豊かな面々だし、多様性のある人選」「カンヌ史上最高のメンバーかもしれない」「ますます今年のカンヌが楽しみになってきた!」と好評。海外ファンも多く抱える是枝監督については、「是枝監督に審査員長を務めてほしかった」という声も多数上がっている。第77回カンヌ国際映画祭は5月14日に開幕する。(賀来比呂美)■関連作品:万引き家族 2018年6月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2018フジテレビジョンギャガAOI Pro.
2024年04月30日是枝裕和監督、西川美和監督、内山拓也監督らが所属する「action4cinema」(日本版CNC設立を求める会)が、「制作現場でのハラスメント防止ハンドブック」を制作、WEBサイトにて配布がスタートした。内容は昨年、同会が発表した「現場責任者が講じるべきハラスメント防止措置ガイドライン草案」を、メンバーの西川美和監督を中心に制作現場で働く全ての関係者向けに再編集、台本に刷り込みが可能な形式に整え、本日より同会WEBサイトにて配布を開始した。縦書きのデザインはグラフィックデザイナーの大島依提亜氏、イラストは朝野ペコ氏が担当。また、台本印刷大手の三交社の協力により、問い合わせにより台本への刷り込みが可能となっている。すでに当会所属の映画監督・是枝裕和、内山拓也の新作撮影現場では、台本への刷り込み、撮影前にスタッフ間での読み合わせなども実施されている。今後は、映像関連の各団体とも連携し、多くの作品に刷り込んでいただけるよう普及に努めていくという。西川美和監督西川美和監督「安全な現場づくりが広がっていくきっかけに」西川監督は「韓国では、映画監督組合(DGK)が『性暴力防止のための行動綱領』を台本に印刷していると聞き、日本の現場でも、全てのスタッフの手元に届くハラスメント予防のハンドブックを作れないかと思いました」と作成の意図を語る。「映像の制作現場は、様々な職種・年齢・立場の人が入り混じり、密な人間関係のもとに緊張感の続く仕事場です。時代の移り変わりとともに『かつてのやり方』では持続しないと多くの人が自覚しながらも、ハラスメントについて学ぶ機会や相談窓口は十分に整っていません」と語り、「オーディションや性的な表現の撮影など、映像制作現場に特有な例も挙げながら、誰でも、いつでもハラスメント予防の基礎を見直せるもの」を目指したといい、全12ページにまとめられた。「台本のどこにでも挟める縦書きデザインを大島依提亜さんが、やさしいイラストを朝野ペコさんが添えてくださいました。また、起きてしまったハラスメントの再発防止について、臨床心理士・公認心理師の中村洸太さんがコラムを寄せてくださっています」と語り、「このハンドブックを現場で活用してもらい、折にふれて読み直してもらうことで、安全な現場づくりが広がっていくきっかけになればと思っています」という。「現在全7話のドラマを撮影中」という是枝監督は「このハンドブックを7話全ての台本の末尾に印刷しています」とコメント。「もちろんそれだけで何かが改善されたり解決したりはしません。しかし、日々働く現場で、台本を開くと必ずこのハンドブックの文言やイラストが目に入ります。それが、毎日積み重なるだけで、スタッフそれぞれの意識は確実に変わるはず」と言い、「映画製作の環境改善への取り組みとしては小さな一歩かも知れませんが、この一歩が、業界全体に広がれば確実に風向きは変わるはずだと信じています」と語った。また、内山監督は「先に撮影した『若き見知らぬ者たち』の現場で台本に印刷する形で使用し、クランクイン前の全体ミーティングでもスタッフ全員で確認し合いました。導入にあたり、プロデューサーや、関係各所と連携を取りながら進めましたが、その対話をする時間そのものがまず大切で、意義深いものだったと感じています」と語る。「手引きとなるようなハンドブックがあることを喜ぶスタッフ・キャストがいたり、他現場からも使用したいという声をいただきましたが、これは現物として手元にあったからこそ生まれた声だと思うので、制作したことを前向きに捉えています。実装効果があったかどうかは、監督の一視点だけでは到底語れませんが、現場として一度冷静になって立ち戻れる場所があること、身を引き締め、意思統一が出来たこと、それらが士気を高めることには繋がったと思っています」と手応えは確かにあったと語っている。「制作現場でのハラスメント防止ハンドブック」制作・発行:action4cinema/日本版CNC設立を求める会ハンドブックの内容(見本ページ)や印刷の刷り込み方法、料金などは本会サイトにアップされている。(シネマカフェ編集部)
2023年12月22日韓国を代表する俳優であるに止まらず、NETFLIXのドラマ「Sence8」(15~18)や是枝裕和監督と組んだ『ベイビー・ブローカー』(22)などの海外作品にも積極的に出演し、独自のキャリアを築いてきたペ・ドゥナ。『アーミー・オブ・ザ・デッド』(21)のザック・スナイダー監督が長年にわたって温めてきた構想を映像化したSFスペクタクル大作『REBEL MOON』では、主人公と共に戦う人物ネメシスに扮し、華麗なアクションを披露。俳優としての可能性をさらに広げた。国境と言語を越えて表現できること――宇宙を支配する巨大帝国マザーワールドに挑む戦士コラと彼女の仲間たちの戦いを描く『REBEL MOON』への出演を決めた理由を教えてください。私は基本的に規模の小さい映画や、人間の内面を描くような映画が好きですが、ファンタジーもとても好きです。それまで誰も見た頃もない、想像の中にしかなかったイメージを具現化して見せるというのも、映画というジャンルの持つすばらしい特徴のひとつだと思うからです。自分がその世界の中にいるのもとても楽しいです。『REBEL MOON』へ出演することは、SF大作を作ってきた歴史の長いハリウッドのCGI技術を自分の体で感じることができるチャンスだと思いました。いったい、どんなふうに撮っているのだろうか、それを学んでみたいという気持ちが強かったんです。好奇心を刺激されたのが大きかった気がします。――日本では今年、実際に起きた事件をモチーフとし、ペ・ドゥナさんが刑事役を演じた韓国映画『あしたの少女』(22)も公開されました。『REBEL MOON』とは規模もジャンルもまったく違う作品ですが、俳優として撮影に臨む際に違いはあるのでしょうか。演技をする時、特に国境を越えて何かを伝えようとする場合に大事なのは、すべての人間が持っている“心”というものが通じ合えるかどうかだと思います。もちろん、言語も大事ですが、心を伝えられるキャラクターかどうかを第一に考えます。日本の監督と組んだ『空気人形』(09)や『リンダ リンダ リンダ』(05)のときもそうでしたけれど、日本語があまりうまくなかったとしても、なんとか自分の気持ちを日本の観客に伝えようとしました。今回も、国境と言語を越えて自分がうまくできるところがあると思ったので選びました。もし、「感情のない役をやってほしい」と言われたり、ワンシーンにしか登場しないような役をオファーされたりしたら、やらなかったと思います。私が演じたネメシスの物語は、『REBEL MOON パート1:炎の子』よりも4月から配信される『REBEL MOON パート2:傷跡を刻む者』の方でより詳細に描かれていきます。あと、基本的に、静かで憂鬱な役を演じると、次の作品ではより活動的で楽しいものにひかれます。キャラクターを考え、衣装に自ら意見も――『REBEL MOON パート1:炎の子』の中でネメシスは、卓越した戦闘能力を発揮しますが、同時に、自らが倒したモンスター、ハーマーダの死を悼むような言葉を口にするような人物でもあります。彼女の背景をどのように理解して演じましたか。上半身が女性で下半身が蜘蛛の姿をしたハーマーダは、人間たちのせいで子どもが産めず怒りを抱いていますが、ネメシスはそんな彼女に母として共感しているんです。なぜなら彼女自身も母親で、傷を抱えた人物だからです。パート1だけだと少し背景がわかりにくいのですが、パート2を見ていただくと、彼女にとって母親としてのアイデンティティがどれだけ大きく、ハーマーダになぜそこまで同情したのかという理由もわかると思います。――ペ・ドゥナさんが韓国人であることは、ネメシスというキャラクターにどれくらい反映されていますか。特に意識して演じたことはありません。映画をご覧になって韓国っぽさを感じるとすれば、それは衣装のせいかもしれません。ネメシスが被っているつばの広い帽子は、韓国の伝統的な帽子“カッ”をもとにデザインされたものです。衣装合わせに行ったときに、すでに部屋に置かれていたので聞いてみると、私がキャスティングされたと聞いて衣装デザイナーのステファニー・ポーターが「韓国的なものを衣装に取り込もう」と考えて調べ、帽子に興味を持ったそうです。この帽子は朝鮮時代に両班(ヤンバン)と呼ばれた支配階級の男性が被っていたものです。私が出演したドラマ「キングダム」でも、王の息子が被っていましたね。あのドラマではとても低い身分の女性を演じていたこともあり、今回、この帽子を被ったときにはすべてを超越したような爽快感がありました。そのほか、上着も伝統的な韓服の上着チョゴリに似ています。私が意見を出したのは、ボトムスについてです。もともとは裾が短く、足首が見えていましたが、ネメシスが剣を使うキャラクターなので、剣道着のように裾を長くしてはどうかと言いました。足が見えないほうが、動きがわかりにくくなり、より高段者のように見えるのではないかと思ったので。――完成された映画を観てどのように感じましたか。本当にびっくりしました。私たちはロサンゼルスのスタジオを中心に撮影していましたが、スクリーンに映し出されたものはまったく違いました。CGも加わっていたし、背景の描写もすばらしく、脚本を読んだり撮影をしたりしていたときには想像できなかった映像でした。自分の格闘シーンを見ても「こんなことをやっていたのかな?」と驚いたほどです。監督のザックがポストプロダクションで工夫してくれたおかげでとてもかっこよくなっていました。みなさんに観ていただくのが待ち遠しいです。(text:佐藤結/photo:You Ishii)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2023年12月22日第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、「脚本賞」及び日本映画では初の「クィア・パルム賞」を受賞した監督・是枝裕和、脚本・坂元裕二、音楽・坂本龍一の映画『怪物』。2024年2月21日(水)にBlu-ray&DVDがリリースされることが決定した。6月2日(金)より全国341館で公開されると、興収21.1億円(2023年9月10日現在)を記録した本作。カンヌでの受賞の際には、「繊細な詩、深い思いやり、そして見事なテクニックで、登場人物の経験のあらゆる面に敬意を表した作品」と評価され、世界でも注目を浴びた圧巻のヒューマンドラマ。出演は、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら変幻自在な演技で観る者を圧倒する実力派と、2人の少年を瑞々しく演じる黒川想矢と柊木陽太。そのほか、高畑充希、角田晃広、中村獅童など多彩な豪華キャストが集結。『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝監督が、「今一番リスペクトしている」と語る脚本家の坂元さんと初タッグ。坂元さんは『花束みたいな恋をした』やTVドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」などで圧倒的な人気を博す、常に新作が待ち望まれる脚本家。また音楽は、『ラストエンペラー』や『レヴェナント 蘇えりし者』など、海外でも第一線で活躍した坂本龍一という奇跡のコラボレーションが実現した。Blu-rayとDVDの豪華版は、特製アウターケース&デジパック仕様。豪華版に収録された特典にはクランクインの撮影風景や撮影現場でのキャストのコメントなどの秘蔵映像が含まれたメイキングや完成披露舞台挨拶、初日舞台挨拶などイベント映像集が収録されている。ブックレットが同封される。『怪物』Blu-ray&DVDは2024年2月21日(水)よりリリース。<『怪物』リリース情報>Blu-ray豪華版7,700円(税込)DVD豪華版6,600円(税込)DVD通常版4,400円(税込)※Blu-ray&DVD同日レンタル開始発売・販売元:東宝株式会社(シネマカフェ編集部)■関連作品:怪物 2023年6月2日より全国にて公開©2023「怪物」製作委員会
2023年11月23日是枝裕和監督と韓国を代表する俳優たちのコラボレーションが話題を呼んだ『ベイビー・ブローカー』(22)で、違法に養子斡旋をするブローカーたちを追う刑事に扮したペ・ドゥナ。地味な衣装に身を包み、静かに彼らを見守るキャラクターを初めて見た人は、彼女が韓国だけでなく海外作品にも多数出演しているトップ俳優であることにもしかしたら気づかなかったかもしれない。それほど彼女は、どんな作品の中でも、演じている役そのものとして存在している。1979年生まれのペ・ドゥナは雑誌モデルからキャリアをスタート。学園ドラマや日本映画をリメイクした映画『リング』(99)で俳優としての活動を始め、00年に「演技に対する心構えを変えた」と後に振り返ることになる作品『ほえる犬は噛まない』と出会う。この作品でデビューを果たしたポン・ジュノ監督は「自分だけの世界を演技面でも実際の生活面でも持っている独特な人」と感じて新人だったペ・ドゥナを主演に起用。他人に対してとことん親切で“町のヒーロー”になることを夢見ながら地道に日々の仕事をこなす団地の管理室職員を生き生きと演じた彼女は、同時代の若者をリアルに演じられる映画俳優として注目されるようになった。ちなみにこの作品でメイクをせずに演技をしたペ・ドゥナは、感情にしたがって変化する顔の色が隠されてしまうことを嫌い、以後の作品でも基本的にノーメイクを通しているという。ポン・ジュノ監督とは『グエムル-漢江の怪物-』(06)でも組んでいる。Photo by Kristian Dowling/Getty Imagesその後、チョン・ジェウン監督の『子猫をお願い』(01)、パク・チャヌク監督の『復讐者に憐れみを』(02)に出演したペ・ドゥナは日本でも知られるようになり、05年には山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』に出演。さらに09年には是枝裕和監督の『空気人形』(09)で「意思を持つようになったラブドール」という難しい役柄を彼女にしかできない透明感で見せた。そして、その印象的な姿が、ラナ&アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクバの『クラウド アトラス』(12)につながっていった。この作品以降、ペ・ドゥナのフィールドはハリウッドにも拡大。NETFLIXのドラマ「Sence8」(15~18)のような海外作品と韓国映画やドラマを行き来することで、俳優としてのバランスを保つことができているという。「センス8」Merie Wallace/Netflixそんな彼女の最新作で、日本でも8月25日に公開される『あしたの少女』は実際の事件をもとにしたヒューマンドラマだ。高校からの斡旋で大手通信会社の下請けとなるコールセンターで実習を始めた高校生ソヒが顧客からの暴言と厳しいノルマに疲弊し貯水池に身を投げてしまった後、担当刑事であるユジンが事件の背景を調べていく。ペ・ドゥナ自身もここ数年、韓国社会に生きる10代に対して高い関心を持ってきたということだが、はつらつとした若者の代表だった彼女が歳を重ね、若者を苦境へと追い込んだ大人たちの代表として、社会の構造的な問題に迫っていく姿に感慨を覚える。前作『私の少女』(14)に続いて出演を依頼したチョン・ジュリ監督からは「これまで演じたすべての人物の中で一番、暗くしてほしい」とだけ言われたそうだが、静かな中にも強い意思が感じられる魅力的なキャラクターとなっている。おもしろいことに、ペ・ドゥナは『私の少女』以降、ドラマ「秘密の森」シリーズ(17&20)、『ベイビー・ブローカー』、『あしたの少女』と、警察官役を続けて演じているが、いずれもわかりやすい “正義の味方”ではなく、アウトサイダー的な人物なのが彼女らしい。『あしたの少女』©2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.時代劇とゾンビもの掛け合わせが新鮮だったドラマ「キングダム」シリーズ(19&20)、俳優チョン・ウソンがプロデュースしたことも話題となった映画『静かなる海』(21)など、NETFLIXオリジナル作品への出演も多いペ・ドゥナの次回作は黒澤明監督の『七人の侍』(54)にインスパイアされたSFドラマ『Rebel Moon(原題)』。こちらでは体を鍛え上げ、アクションも披露しているとのことで、12月の配信開始が楽しみだ。『あしたの少女』の韓国公開を控えて行われたインタビューで「自分がどんな作品にも普遍的によく似合う俳優だとは思わない」と語っていたペ・ドゥナ。自分自身の個性を見極めながら作品を選び、淡々と独自の道を進む彼女の歩みがアジア人俳優の新たな可能性を開いていく。『あしたの少女』©2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.(佐藤結)
2023年08月21日6月2日より全国341館で公開した是枝裕和監督による映画『怪物』が、7月24日に興行収入20億円を突破。また、9月7日(木)より開催される第48回トロント国際映画祭にて北米プレミア上映されることになった。是枝監督作品で興行収入20億を超えたのは、第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『そして父になる』(13)、第71回カンヌ国際映画祭最高賞のパルム・ドールを受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートも果たした『万引き家族』(18)に続き3本目。本作は、是枝監督と脚本家の坂元裕二、さらに音楽:坂本龍一という日本最高峰の才能が集結して描いた1作として注目を集め、5月に開催された第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞したことでもさらに話題を呼んだ。公開後は、40~50代の映画ファンや20代カップルを中心に幅広い層の観客が劇場を訪れ、映画レビューサイトでも高評価が続くなど好評を得ており、本作では2度3度と鑑賞するリピーター客も多い。鑑賞後に感想や見解について語り合いたい、確かめ合いたいという声も多く届き、上映後に直接、是枝監督や出演キャストに作品についての質問ができるティーチイン付き上映も各地で計12回実施、活況を呈している。また、公開を迎えたアジア各国での成績も好調で、香港では『万引き家族』の最終成績を塗り替えるなど、世界的にも話題を呼んでいる中、現地時間9月7日(木)~9月17日(日)の期間で開催される第48回トロント国際映画祭スペシャルプレゼンテーション部門へ出品決定。北米でプレミア上映される。是枝監督作品のトロント国際映画祭への出品は、2019年の『真実』、2022年の『ベイビー・ブローカー』での同部門出品に続くもので、同部門は最高賞にあたる観客賞の選考対象ともなっている。『怪物』は全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:怪物 2023年6月2日より全国にて公開©2023「怪物」製作委員会
2023年07月25日是枝裕和監督×脚本・坂元裕二×音楽・坂本龍一による映画『怪物』の興行収入が20億円を突破したことが25日、明らかになった。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。6月2日より全国341館で公開した同作は、7月24日に興行収入20億を突破(動員:1,455,470人 興行収入:2,000,920,610円)。是枝裕和監督作品で興行収入20億を超えたのは、第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『そして父になる』(13/福山雅治主演)、第71回カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドール受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートも果たした『万引き家族』(18/リリー・フランキー、安藤サクラ主演)に続き3本目となる。公開後は40~50代の映画ファンや20代カップルを中心に幅広い層の観客が劇場を訪れ、映画レビューサイトでも高評価が続くなど好評を得ている。2度3度と鑑賞するリピーター客も多くみられ、鑑賞後に感想や見解について語り合いたい、確かめ合いたいという声も多く届き、各地で計12回実施しているティーチイン付き上映も、活況を呈しているという。すでに公開を迎えたアジア各国の成績も好調で、香港ではすでに『万引き家族』の最終成績を塗り替えるなど、世界的にも話題を呼んでいる。現地時間9月7日 ~ 9月17日の期間で開催される第48回トロント国際映画祭スペシャルプレゼンテーション部門への出品も決定し、北米プレミアを迎える。是枝監督作品のトロント国際映画祭への出品は、2019年の『真実』、22年の『ベイビー・ブローカー』での同部門出品に続くものとなり、最高賞にあたる観客賞の選考対象となる。(C)2023「怪物」製作委員会
2023年07月25日是枝裕和監督が19日、都内で行われた映画『怪物』(公開中)の大ヒット御礼舞台挨拶に登壇。同作の音楽を担当し、今年3月28日に亡くなった坂本龍一さんへの思いを明かした。同作は是枝監督と脚本家・坂元裕二氏によるオリジナル作で、第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。この日のイベントには是枝監督のほか、主演を務めた安藤サクラと永山瑛太が参加。観客動員数100万人を目前に控えている同作だが、その反響について是枝監督は、「周りに若い監督たちが仲間として同じ空間にいるんですが……」と切り出す。続けて、「彼らから、“いつもよりも演出に迷いがない”“編集のキレがいい”“もう自分で脚本書かない方がいいんじゃないか”という温かいメッセージを頂いております」と周囲の正直な感想を明かし、笑いを誘った。これに安藤が「それを聞くとどんな気持ちになるんですか?」と反応すると、是枝監督は「悔しい気持ちもなくはない」と吐露。その一方で、「『坂元さんと一緒にやったことを自分で吸収して、次は無駄のない脚本を書こう』という気持ちになってます」と前向きにも捉え、次回作への糧としても受けとめている。また、印象的なシーンについてトークが展開すると、安藤と永山が互いの身体表現を賞賛し合う。是枝監督も「役者さんは究極的に言うと、運動神経だと思います」と持論を明かし、「それはスポーツができるとかではなくて、体をコントロールしていく能力が高い役者さんが優れた役者だと思うと、この2人はとてもそれが優れているから、演出をしていて楽です」と、安藤と永山の秀でた部分を解説した。念願叶ってタッグを組んだ坂本さんについて聞かれると、是枝監督は「う~ん、これがいちばん言葉にしづらい」と言いよどむ。「全部の音楽をお願いできたわけではないですが、一緒に同じスタッフロールの中に名前があるというのは本当に嬉しく思っています」と感慨深げな表情を浮かべた。脚本を書きながら使用する音楽を想像することで知られる是枝監督。ロケハンのときから音楽は坂本さんにお願いすると決めていたそうで、「脚本をもらって、コンテを書いているときには坂本さんの音楽をかけていましたし、自分の中で一体化してしまったもんですから、そこから離れるのは難しかった」と強いこだわりで坂本さんへオファーをしたことを振り返る。そして、「本当に断られなくてよかった。ちょっと無理をさせたんじゃないか……という気持ちはありますが、引き受けていただいて感謝しています」と坂本さんへの思いを語っていた。
2023年06月19日映画『怪物』(公開中)の大ヒット御礼舞台挨拶が19日に都内で行われ、安藤サクラ、永山瑛太、是枝裕和監督が登壇した。同作は是枝監督と脚本家・坂元裕二氏によるオリジナル作で、第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。今週末にも観客動員数100万人を突破する勢いの同作。集まった観客の中には5回以上観たという人もいたことから、安藤は「えぇ~!」と驚きのリアクションを見せる。日々、影響力の大きさを感じているようで、「聴いているラジオで次々に『怪物』の話をされるので、すごいんだなと……だんだん私よりもご覧になった皆さんの方が細かいことをご存じなんじゃないかと思い始めていて、しゃべるのが怖い気持ちになってます」と予想外の反響に戸惑いも。瑛太のもとにも感想が届いているようで、「2回以上観たという方々はこの映画の感想のニュアンスが違ってくるなという印象を受けました。いちばん多いのは、『言葉にならない』と(いう感想)。会って話がしたいと、連絡が来たり」と話す。「(この作品を)どういう風に語っていいか、わからなくなった。サクラがおっしゃっていたように、お客様の方がこの映画のことを理解しているような気がして。僕自身も言葉にできない」と現在の心境を明かした。また、同作が190以上の国と地域で展開されることについて、安藤は「国内でも様々な角度からの感想があるというのを公開されて感じたので、文化が違う中で、この映画が(世界に)広がったら、またその角度が増えるんだろうな。おもしろいんだろうなと思います!」と笑顔を見せ、瑛太も「想像できないですけど、すごいこと。カンヌ以外の方々の感想も聞いてみたいですね」と語った。一方、是枝監督は「すごい……すごいですね。190も国があるんだと最初に驚きますけど(笑)。カンヌにそれだけの国・地域の方がいたわけではないと思いますが、カンヌでも街を歩いでいると声をかけてくれて。あんな風にいろんな国でこの映画について、会話がつながっていくといいなと思います」とカンヌ滞在中のエピソードを披露しつつ、世界中でのさらなる広がりにも期待を寄せていた。なお、瑛太にとってこの日は、弟で俳優の永山絢斗が16日に大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕されて以降、初の公の場。逮捕当日、マスコミの直撃取材を受けて「俺は許さない」などとコメントしていたが、イベントでは弟の事件について触れることはなかった。
2023年06月19日東京・早稲田大学で10日に行われた授業「マスターズ・オブ・シネマ」で映画『怪物』がテーマとなり、是枝裕和監督、坂元裕二、岡室美奈子教授(聞き手)が登壇した。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。シングルマザー・早織(安藤サクラ)の息子・湊を演じた黒川想矢、同級生・依里を演じた柊木陽太の演技も話題となっている同作。是枝監督作品では、子役が撮影現場で口伝えでセリフを言っていく手法でも知られているが、今回は大人の役者と同じ手法を使ったという。是枝監督は「この2人は圧倒的に読んできた方が上手だったの。それも決め手の一つではありました。マンホールに耳を当てて『さけどころうえだの自販機でコーラ買ったことある?』というやりとりをやってもらって、1カ月くらい過ぎて2回目のオーディションに呼んだ時に、事前に告知せずに『前やったところをもう1回やってもらっていい?』とやってもらったんですけど、柊木くんはほぼ完璧に覚えてたんですよ」と明かす。さらに「『いつも覚えてるの?』と聞いたら、台本をもらったら頭の中で写真に撮るんですって。撮って覚えてるので、それを頭の中で引っ張り出す。『いつもこんなふうに覚えるの?』と聞いたら『すぐ忘れちゃう台本もありますね』と言って、彼の中でも坂元さんの台本は特別だったんだと思うんだけど。時々いるんですよ、ある種の特殊能力を持っている子」と感心。「耳から覚えた方が覚えやすいという子もいて、学校の授業でなかなか教科書が読めないけど、音の理解は早くて的確だったりする。通常のやり方だとそういう子の方が僕の演出に馴染むので。今回は全く違うアプローチの仕方でした」と説明した。
2023年06月12日東京・早稲田大学で10日に行われた授業「マスターズ・オブ・シネマ」で映画『怪物』がテーマとなり、是枝裕和監督、坂元裕二、岡室美奈子教授(聞き手)が登壇した。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。同作で第76回 カンヌ国際映画祭 脚本賞を受賞した坂元だが、「監督が書いたセリフがところどころにあって、それがオセロをひっくり返すように素晴らしい。それがなかったら全然違う印象を受けたんじゃないかというシーンがいくつかあって、中でもジャングルジムに登りながら宇宙が破裂する話をしていて、最後の締めに『じゃあ準備をしなきゃね』というのが後から足したセリフなんですよ。あるかないかで、映画の面白さ全然かわるんですよ」と絶賛。「僕がハッとして、『あのセリフめちゃくちゃすごいですね』という話をしたんですけど、どれだけ違うのか考えてもらえると」と映画の道を志す学生にアドバイスする。さらに坂元は、是枝監督が足したセリフについて「『神崎先生はいい先生でした』というところとか、ないと学校に対する見方も変わる。監督から『足したい』と書かれていて、なんでかなと考えたんだけど、上がってみたもの見ると、『このセリフ大事だったな』とはすごく思いましたね」と感心。是枝監督は「校長室にいる先生たちの中でも濃淡があった方がいいなと思ったんですよ。セリフを足すというよりは目配せだけでお芝居をしてて、神崎先生が褒められている、それを校長先生と教頭はお前だけ褒められやがって的な目で見て、褒められてるのに逆にいたたまれない感じは、台本ではなくて。あの空間の中で台本を触らずにやる演出で、そういうのが好きです」と明かした。坂元は「監督はそんなに注文出されなくて『ここがいいよね』とお手紙をくださるんですけど、意地悪な言い方をすると、手のひらの上に乗せられているというか、『ちょっとここのボタンを押すだけでお前の書いたものは変わるんだぞ』とマジックを見せられたような気分でやっていました。『ここもここも直せ』というのって、誰でもできるじゃない。でも『ちょっとここに塩を入れればいいんだよ』『あ、うまくなってる!』みたいな、そういうのが1番すごい」としみじみ。「是枝さんを語る時に『ドキュメンタリータッチ』とか『即興』ということが言われるんですけど、僕はこんなに日本一脚本がうまい映画監督はいないと思ってて、何冊も台本を読んだことがあるんですよ。ハリウッド脚本術みたいなセットアップがきっちりとあって、教科書的なものが全て網羅されていて、こんなにしっかりとした脚本はないんですよ。現場で作られてるにしても、前もって書いてあるにしてもこんなにも脚本がいい映画はない。それを何もかも現場でアドリブで作ってるドキュメンタリータッチだというのは、ご本人がやって誘導してるのか、世間の誤解なのか僕が思ってる実態とは違うなと思ってる」と主張する。是枝監督は「ありがとうございます」と照れつつ、「たぶん、映画で見て自然だと思われることほど、裏で不自然なことをやらないと自然に感じないんですよ。子供達が自然に見えるのはしっかり演じているから。『好きにしてね』と言って自然に見えるかというと、絶対にそんなことはない」と語った。
2023年06月10日東京・早稲田大学で10日に行われた授業「マスターズ・オブ・シネマ」で映画『怪物』がテーマとなり、是枝裕和監督、坂元裕二、岡室美奈子教授(聞き手)が登壇した。【※この記事は作品の結末についての記述を含みます】同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。これまでの脚本作などについて触れながら今作について話が及ぶと、坂元は「どうすれば自分が加害者になって、お客さんに加害者の主観になって体験してもらうことができるだろうか、そんなことをずっとぼんやりと十何年考えてたんです。どのように落とし込めば、お客さんに体験してもらうことができるるだろうか。その形として、自分が加害者としての主観を持ったものを作りたかったのが、このお話の構造なんです」と明かす。「三部構成がそうなんですが、初めはシングルマザーである安藤サクラさんの早織という役が『自分の息子がいじめられてるんじゃないか』と動き出すんですけど、瑛太くん扮する保利先生からはまた違ったように見えて、それぞれに自分が見えないままで誰かを傷つけていたという物語の構造ということですね」と説明した。「横断歩道で前のトラックが動かないからクラクションを鳴らしたら、実はトラックが車椅子の歩行を待っていた」という経験談も交えながら話す坂元。今作を描くにあたって「勇気がいったのでは」という岡室教授の質問には、「加害者の話も、彼らの話も僕は自分の経験をベースに作っているので、とにかく自分の中にあるものを『この人に届けたい』という1人の人を想定してその人に向かって届ける、それがすべて。自分の中では嘘はついていないし、子供の頃に感じた感情、いくつかの出来事、友達との関係、全て思い返しながら書いたので、勇気というよりは自分のことをいつものように書いていました」と語る。また、是枝監督は「最初にプロットを渡された時に、(坂元作品の)どの系譜に連なるものだろうかとは考えました。僕の中では『わたしたちの教科書』かもしれない。『世界を変えることはできますか』という問いが重要なものとして出てくるでしょう。この映画にはそのセリフは出てこないけど、多分そういう問いかけがあの2人を通してこちら側に投げかけられているんだろうなと考えたんですよ。台本の中にセリフにすることはないけれども、ページを開いたところに『世界が生まれ変われるか』という一文を咥えさせてもらったんです。その一言を、作り手である自分に常に問いかけよう、というのがスタンスの一歩目でした」と振り返った。同作の結末について「子供2人は死んでしまったのではないか」という説があることに対しては、坂元が「これは最終意見じゃなくていちスタッフの意見だけど、全然、一択。彼らはこのまま生きているとしか僕は思えなかったですし、映画を見た時に別の世界に行ったとは受け取らなかった。フジテレビの人からメールが来て『彼らは生きてますよね?』と言われた時に、何を言ってるんだろうと思ったくらい一択でした」と感想を述べる。是枝監督も「彼らが自分たちの生を肯定して終わろうとは、台本の段階から共通認識としてもっていました。多様な読みを否定するつもりはないし、そういう悲劇を見たいという人もいるだろうし、見ようとすると光に満ちてることがやや現実から離れて見えるのはわからなくはないので、目くじら立てるつもりはないんだけど」と同意。さらに是枝監督は「最後に光につつまれるものを、もう少しおさえましょうかみたいな意見はなくなかったんですよ。現実だと思われなくなるのではないかと。でも2人の心象風景だと思ったらあそこは嵐の中で光に満ちていた方がいいだろうと僕は考えました」と演出意図を明かす。「坂本龍一さんの『Aqua』という曲を使わせていただいて、火で始まって水で終わる話だと思ってたんですよ。あの曲は映画とは関係ないかもしれないけど、何かを寿いでいる歌で、子供達がもう一度自分たちとして生き始めることを祝福して終わる話だと思った。祝福されてる子供達の世界から、僕らは置いていかれるということだと思ったんです。嵐の中に残されてるけど、子供達は光に包まれたところに走り出したというものにしようかと思ったから、2人にはちゃんと伝えました。とにかく叫んでくれて構わない、喜びで叫んでくれ。でもなかなか叫べない。恥ずかしかったりもするから、『もっとやっていい』『もっと跳ねていい』と言って、結構撮り直していました」と振り返った。一方で、最後の子供達の姿が是枝監督&坂元に重なり「2人で次のステージに行く」姿に見えたという指摘も。2人は照れつつ、坂元は「妻にも言われました」と告白する。大人にも救いがあるかという問いには、坂元が「大人の希望というか、早織という母にも、保利という先生にもどこか罪があって、その罪について気付き考えていく時間がここから生まれるわけなので、それは見た方にも伝わるといいなと思ってるんですけどね」と語った。授業では学生からの質問も飛び出し、「社会的なメッセージのある映画をプロパガンダにしないためにはどうすればいいか」という質問には、是枝監督が「どんな映画も社会的なメッセージを持っていると思う」と回答。「まず作り手が考えて、僕もこの脚本をもらって一緒に考えてみる。この2人の幸せを阻害しているのはなんかのか、作品の世界ときちんと向き合ってみないと。作品の世界と登場人物と向き合う前に、作品が孕んでいるだろう社会的なメッセージを世界に向かって投げかけても、多分届かない。よくない態度かなと思います」と語り、坂元も「まあ社会派ではないんですが、メッセージを生み出していないとも思っていない。作品はメッセージをはらんでしまうんですよ」と頷いていた。
2023年06月10日是枝裕和監督×脚本・坂元裕二×音楽・坂本龍一による映画『怪物』が、2日から公開されている。豪華タッグが実現し、第76回カンヌ国際映画祭でも話題を呼んでいる同作が公開される。大きな湖のある郊外の町に住む、息子を愛するシングルマザー・早織(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師・保利(永山瑛太)、そして早織の息子・湊(黒川想矢)と同級生・依里(柊木陽太)……よくある子供同士のケンカに見えた事件は次第に社会やメディアを巻き込んで大事になり、ある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。今回は、公開後に気になる作品の結末を含む話について、是枝裕和監督にインタビュー。編集で変わったラストシーンや、作品に含まれるテーマ、撮影するための環境づくりについても話が及んだ。【※このインタビューは作品の結末についての記述を含みます】○■「この映画を作りたい」と目指した姿に――改めて作品について、坂元さんとはどのようなことを話し合ったのでしょうか?最後に関しては、編集で「こういう形でどうだろうか」という提案を僕からさせていただきました。ちょっとしたことで、観た後の感じがずいぶん変わってしまうんですよ。言い方が難しいですけども「2人は死んじゃったのかな」という形に見える編集のパターンもある。本当に、途中で一言セリフを足すか削るかで2人のラストの見方が変わってくるような状況だったんです。僕も坂元さんも「2人が死んじゃったようには見せたくない」というのが共通の認識だったから、どういう形で着地させるか、0号から初号の間で、最後の15分の編集をずいぶん変えました。坂元さんにも見ていただいて「こんなに編集で変わるもんなんですね」と言っていただいたので、今の形になりました。最初に「この映画を作りたい」と思ってみんなが目指した後味に、1番近いと思います。――テーマとして、性の揺らぎ、少年たちの同性愛の関係が含まれると思います。作品にするにあたって、どのように臨まれましたか?非常に今日的な題材ですし、繊細な扱い方を求められるテーマなので、LGBTQのこどもたちの支援をしている専門家の人にも脚本を読んでもらって、意見をいただきました。彼らの感情にどう寄り添うのか、2人に対していろいろと専門家の方にレクチャーをしていただいたり、スタッフの勉強会を開いたりしながら、やってみました。ただ今回の湊と依里に関しては自らをゲイだとかクィアというような自認はまだ出来ていないという設定にしました。自らのアイデンティティをそうやって客観的には名付けられないからこそ「怪物」と自ら名付けてしまうという設定です。そのあたりはレクチャーで学んだことを反映させました。自分の中に得体の知れないものを感じる時期ですし、周りの大人たちの“普通”や“男らしく”という言葉が、当人は決してネガティブに使ってないのに、ある種の暴力、ある種の怪物として彼らに迫ってしまうのはあり得ることですし、そこはちゃんと描くべきだと思いました。僕が脚本を読んで最初に感じたのは、「この2人は『銀河鉄道の夜』のジョバンニとカンパネルラだ」ということでした。なので2人にも最初に「読んでほしい」と『銀河鉄道の夜』の話をしたのを覚えています。――だから廃電車が出てくるんですか?それが、電車はプロットの最初からあったんです。坂元さんがどこまで意識してたかはわからないですけど。――これまで、子役には台本を渡さず口伝えの形で撮影をされていましたが、今回は台本も渡しての撮影方法と伺いました。今までは本人のパーソナリティに沿う形で撮ることが多くて、瞬間瞬間をちゃんと生きてくれればいいという感じだったんだけど、今回はやっぱり抱えているものが非常に重く、その場で言ってできるものでもないとは、感じていました。事前に湊が抱えているものを本人も認識して納得した上で、ちゃんと演じてもらう必要があるなと思いました。きっと2人は今後も役者を続けていくと思います。黒川くんは撮影中も、もう僕やサクラさん、瑛太さんに「お芝居ってなんですか?」「気持ちってどうやって作るんですか?」って、それは熱心に聞いてたんです。僕も「気持ちはここ(胸)にあるわけじゃない、頭にもないよ。もっと体のいろんなとこにあるよ」という話をしていました。――そういう問いが出てくる現場ということだったんでしょうか?それはやっぱり、サクラさんや瑛太さんの芝居を間近で見てたら、感じることがあるんだろうと思います。「なんだろう?」と思うんじゃないかな? すごくいい勉強の場だったと思います。■是枝裕和監督1962年6月6日、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。2014年に独立し制作者集団「分福」を立ち上げる。1995年に『幻の光』で監督デビューし、その後も『誰も知らない』(04)、『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)等、数々の作品を世に送り出す。2018年の『万引き家族』は、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート、そのほか多くの映画賞を受賞した。2019年の『真実』は国際共同製作作品として海外の映画人とのセッションを本格化させ、2022年には初の韓国映画となる『ベイビー・ブローカー』で、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品、エキュメニカル審査員賞を受賞。また主演のソン・ガンホが韓国人俳優初となる最優秀男優賞を受賞した。(C)2023「怪物」製作委員会
2023年06月10日先ごろ閉幕したカンヌ国際映画祭で脚本賞、クィアパルム賞に輝いた映画『怪物』が公開されている。本作の監督・編集を手がけたのは『万引き家族』『真実』『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和監督。本作では長編デビュー作『幻の光』以来、久々に自身ではなく、坂元裕二が書いた脚本で創作にあたった。是枝監督はこれまでに『誰も知らない』『そして父になる』など数々の作品を手がけているが、ある時期から意図的に自身の創作のルーティンを良い意味で壊し、開かれた創作の場をつくることに力を注いできた。時には映画において、画家でいうところの“絵筆”にあたる撮影監督を変え、時には海外に渡るなど、創作の環境が固定化し閉じてしまわないような試みがなされてきた。2018年には初めてタッグを組む撮影監督・近藤龍人、初めて迎えた俳優・安藤サクラをはじめとする俳優陣、スタッフと共に手がけた『万引き家族』がカンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞。さらに変化し、さらに先へ……そのタイミングで本作の企画が持ち込まれたようだ。「最初にプロデューサーから『坂元裕二さんと進めている企画があるのでプロットを読んでほしい』と言われたのは2018年の暮れでした。僕としてはプロットを読む前からこのオファーを受けると決めていたんです。きっとそういうタイミングなんだろうなと思いましたし、これでまた次の扉が開くと思ったんです」そこから長期間にわたる脚本づくりが始まった。「一緒にキャッチボールをしながら脚本づくりを3年ほどやりました。それが本当にいい時間だったんですよ。そこでかなりの試行錯誤をした上で、撮影に入っているから、いい意味で撮影に入ってからの迷いはなかったです」とは言え、これまでの是枝作品では、是枝監督が撮影されたばかりの素材をすぐに編集し、時には編集されたもの、それまでの撮影で得たものを反映して脚本が繰り返し監督の手で修正・更新されてきた。「そのルーティンについては変わりました。変わったんですけど、そこには違和感は感じませんでしたし、これまでやってきた有機的な感覚もまったく失われずにやれたと思います」さらにいうと、これまで是枝監督は多くの作品で、子どもが出演する際にはあえて台本を渡さず、撮影現場で状況を説明して撮影に臨んできたが、本作では子どもたちにも事前に台本が渡され、リハーサルを行なってから撮影が開始された。「それについても何かに“縛られている”という感覚はまったくなかったです。完成された脚本を渡されて“これで撮ってください”と言われたわけではないですから。ただ、俳優と向き合ってやっていく上では試さないといけないことがあったので、子どもたちには台本を渡して、ちゃんとリハーサルもやって現場に入りました。撮影しながら編集もしていくというスタイルもこれまでと変わらずです。ただ、編集しながら、修正していく量が本当に少なかったんですよ。結果として、子どもたちを観ながら『このシーンは電車の中でやるよりは外で撮った方がいいな』とか『いいロケ地が見つかったからそこで撮ろう』とかアレンジは加えていっているんですけど、セリフ自体を変えたいとは思わなかった」『怪物』の舞台は大きな湖のある町。そこではクリーニング店で働きながら息子を育てるシングルマザーや、生徒想いの教師、子どもたちが暮らしている。しかし、ある日、学校で子どもたちのケンカが起こり、教師が生徒に暴力を振るったのではないかという話が持ち上がる。それぞれの主張は食い違い、小さな出来事は次第に大きくなっていく。本作は可能な限り、事前に情報を入れずに真っさらな気持ちで観た方が楽しめるため、具体的な内容については触れないが、作品は大きく複数のブロックに分かれており、ある一定期間で起こる出来事をそれぞれのブロックで異なる視点、語り口で描いていく構造になっている。興味深いのは、それぞれのブロックで物語を語るリズム、映像のルック、カメラの動きが驚くほど異なっていることだ。(劇中で明示されるわけではないが便宜上、本稿ではこのブロックを一章、二章、それ以降の章を終盤の章と記載する)。「最初に一章と二章の脚本を読んだ時に“これは自分には書けないな”と思ったんです。坂元裕二、恐るべき才能だと思いましたね。何かが起きそう、という不穏な感じがずっと続いていて、それだけで物語が進んでいく」その結果、本作の一章と二章はこれまでの是枝作品にはない語りのリズム、カット数、アングルが選択されている。「たぶん、脚本がそのようなリズムを求めていたんだと思います。だからそこは自分なりの脚本に対するアプローチのしかたで、一章・二章のリズムと終盤の章のリズムを変えるということは意識していました。それに一章と二章はセリフも、キャラクターの輪郭も、際立ち方も自分がこれまでにつくってきたものとはまったく違う。そこは面白かったです。僕は自分自身の作家性というか、そういうものがあまり好きではないので、消せるものなら消したいと思っていますから、そういう意味では一章と二章は自分の作家性とかどうでもよくて、この脚本をどうしたら面白くなるか、その目線で見たときにいろんなことがクリアになった。結果としてこの脚本の良さを自分なりには引き出せたつもりです」そして訪れる終盤の章を是枝監督は「ここは自分にしか撮れないな、と思えた」と語る。「だから、来たるべき終盤の章のことを視野に入れると、一章と二章のもつ特殊性というか、不穏なトーンにあまり乗っかり過ぎてしまうと断絶が起こってしまうので、そこは気をつけました。演出的にはすべての章がシームレスにつながっていないといけないわけで、一章と二章は確かに面白いんだけど、面白がりすぎてはいけない。その“ギリギリ”を攻めたという感じです。章によって視点が違って、キャラクターの見え方が違ってもいいんですけど、それをやりすぎてしまうと映画がバラけてしまう。そこは丁寧にやったつもりです」俳優の“動き/運動”を描き出す先に言っておくと本作は複数のブロックに分かれてはいるが、章が進んでいくことで“提示されていた謎が解ける”わけではないし、“章によってキャラクターの見え方が違う”というほど単純な内容ではない。確かにこれらの章は異なるトーンとリズムで構成されている。物語が進んでいくと新しい情報がもたらされることもある。しかし、これらはひとつの世界で起こっている。むしろ“このような事態が別々ではなく同じ世界で発生していること”が重要なのだ。「撮影監督の近藤(龍人)さんと最初に話したのは“一章、二章、終盤の章の映像のトーンをどれぐらい変えるか?”ということで、カメラワークも含めて章によって変えていこうという話になりました。サイズをシネスコにしたのは近藤さんからの提案です。“視界を狭めたい”という意図でした。全体が見えていない形にしたいのでシネスコでやってみたい、と」さらに本作ではロケ地の選定、登場する部屋の装飾などプロダクションデザインの完成度の高さに驚かされる。本作ではある一定期間の出来事を複数のブロックでそれぞれ描くため、シーンによっては同じ場所が視点を変えて繰り返し描かれることになるが、本作ではそれに耐えうるロケ地、セット、美術が揃った。「この映画は一歩間違うとすごく観念的な話になってしまうので、あの町とそこで暮らす人と風景はちゃんとリアルに描かないといけないと思っていました。あの場所から少年たちがどのように浮上するのか、という話なので。だから、今回の映画で一番最初におさえたスタッフは後藤一郎くんといって『万引き家族』で見えない花火を見上げるシーンを撮った家を見つけてくれた人でした。この映画はロケ場所がすごく大事で、さらにコロナ禍で学校を舞台に撮影するのもかなり難しい。でも、彼が苦労してロケ地を見つけてきてくれて、地域の方々の全面的な協力体制を敷いてくれて、環境を整えてくれたので撮ることができた。そこは一郎くんの力が本当に大きいですし、美術の三ツ松(けいこ氏。日本を代表するプロダクションデザイナーのひとり)さんとチームの力も本当に大きかった。その点ではそれぞれのスタッフが、最高のレベルの仕事をしたなというのが今回の僕の実感です」さらに異なるトーンと語りをもつ複数のブロックをさらにシームレスにつなぐものがある。それは俳優の“動き/運動”だ。本作では、これまでの是枝作品よりもさらに丁寧に俳優の動きが描き出される。俳優の運動によってキャラクターが立ち上がる、確実に“そこにいる”と感じられる。「安藤サクラという役者をどう評価するかは人によっていろいろだと思います。感情の表出のしかたの瞬発力や集中力が高いのは『万引き家族』でも感じたことですが、改めて思ったのは、彼女は身体能力が高い、ということ。綾瀬はるかも高いけど、彼女とは違った身体能力の高さが安藤サクラにはある。そこはこの映画でちゃんと撮ろうと思っていました。そのことで“動かない田中裕子”との対比になる。ふたりが揃うことで対比が生まれ、緊張感のある瞬間が生まれる。動いていたものが止まる瞬間、止まっていたものが動き出す瞬間……そこは撮っていて本当に面白かったですね」それは劇中に登場する子どもたちも同様だ。彼らは大人ほど多くを語れるわけではない。時には想いを秘めている。しかし、彼らが駆け出す、跳ねる、どこかをゆっくりと覗き込む……すべての運動=アクションがどんなセリフよりも雄弁にキャラクターを表現するのだ。「子どもたちを動かすことは徹底的にやろうと思っていました。セリフが魅力的なことはわかっていたし、あのふたり(黒川想矢、柊木陽太)が優れた俳優であることもわかっていたから、リハーサルの段階から動きながらセリフを言ってもらって、どのセリフも”何かの動きのついで”に言ってほしいといいました。劇中のグリコ(じゃんけんグリコ:じゃんけんをして勝った方が階段などを進んでいく遊び)のシーンもリハーサルの段階からやっていたんですけど、最初は本読みをして表に出てやってもらったら、グリコをやり終わってからセリフを言うんです。で、セリフを言い終わったらグリコに戻る(笑)。だから、『いや、そうじゃなくてセリフとグリコは同時にやっていいんだよ』って言ったら、柊くんはその直後からできるようになった。それはすごいことで、大人でもなかなかできなくて、やりたがらない役者もたくさんいるんです。想矢も最初はセリフに集中したいのか、なかなか馴染まなかったけど、柊木くんとリハーサルをやるうちにどんどんほぐれていった。どうやって(意識を)散らしていくのか、ということをリハーサルでやっていったので、結果的にふたりのシーンはとても動的なものになりましたし、撮影ではなるべく座って喋るシーンもなくしたので、撮影の後半ではふたりも楽しそうにしていましたね」信頼できる脚本家と、信頼できるセリフを得た是枝監督は本作で新たな語り口、リズム、映像のルックを得た。そして、これまで以上に俳優の運動を丁寧に描き出している。映画『怪物』は、もしかしたら是枝監督が初めて手がける“アクション映画”なのかもしれない。「近藤さんのカメラと、この脚本をもらって作りながら学べたことがすごく大きかった。これを経験して次に自分が脚本を書く時に俺、変わるぞと思っていますし、変わるだろうなと。それぐらい坂元さんの脚本づくりには影響を受けました。だから次をまた楽しみにしていてください」『怪物』公開中
2023年06月07日是枝裕和監督×脚本・坂元裕二×音楽・坂本龍一による映画『怪物』。豪華タッグが実現し、第76回カンヌ国際映画祭では脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に住む、息子を愛するシングルマザー・早織(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師・保利(永山瑛太)、そして早織の息子・湊(黒川想矢)と同級生・依里(柊木陽太)……よくある子供同士のケンカに見えた事件は次第に社会やメディアを巻き込んで大事になり、ある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。今回は是枝監督にインタビュー。脚本を担当した坂元氏とのタッグは前々から熱望していたというが、実際に組んでみてどうだったのか。また、同作に出演する実力派俳優、そしてオーディションで選ばれた子役のすごさについて、話を聞いた。○■カンヌ脚本賞受賞、坂元裕二には「いろいろ勉強になりました」――今回念願の坂元さんとのタッグとのことでしたが、改めてどのような印象でしたか?いろいろ勉強になりました。特に前半40分、描写自体は「何かが起きそうだ」という不穏な感じだけでずっと引っ張る力があるんです。僕は基本的には「スライス・オブ・ライフ」という、人生のある瞬間を切り取って描写していくタイプが好きで、ストーリーがない作品を作っているつもりはないけれども、今回はやっぱり坂元さんの物語の推進力が強い。そこが勉強になりました。――是枝監督でもまだ「勉強になる」ということがあるんですね。話し合いの中で変化していったことはありますか?僕がプロットをいただいた段階で構成自体はもうこの形でした。ただ、校長先生の存在はこんなに大きくなくて、田中裕子さんという名前が挙がった点で膨らんできたし、保利先生もやっぱり瑛太さんに決まってからディテールが書き込まれて、面白かったなあ。「どこまで見せるのか」みたいなことは意見を交換していきました。○■子役を探すのはとても大変――子役のお二人はオーディションとのことで、どのようにして選ばれているんですか?直感なんですよね、キャスティングって。2人はお芝居が抜群だったんです。いろんな組み合わせがあって、時々別の役をやってもらったり逆転させたりと試してみたら、あの2人の依里と湊の組み合わせが一番しっくりきました。柊木くんはほっとくとずっとひとりでお喋りしている子で、直感で役をつかんでしまうタイプ。黒川くんは非常にナイーブで、ひとつひとつ言葉を選んで話すタイプでした。役者としては全く真逆のタイプですけど、そこがまた良かったかもしれないです。――観ていても真逆の雰囲気は感じていました。黒川くんは感情で作っていき、柊木くんは理知的で「はいはいはい、そういうことですね。わかりました〜」って、人生4周目ぐらいかな?(笑) いろんな状況を俯瞰して見てますよね。自分が置かれてるつらい状況も含めて、俯瞰して見られるタイプ。今回の2人を見ると、本当に役とぴったりでした。自分が映画を撮り始めた時と比べて、あの年齢の子供たちの演技力というのは、相対的に上がっていると思います。ただ、男の子は小学校高学年から中学生の年齢層が薄いんですよ。部活が始まってサッカーとか野球がしたくなって一度辞めてしまう。女の子は4〜5歳で「女優さんになる」と言ったらそのまま維持されることが多いんですけど、男の子はいったん減って、高校生くらいで多分戻ってくると思うんです。ですから、探すのがとても大変なんです。――大人の方達もすごい方ばかりでした。監督から見て、安藤さんと永山さんはどのようなところがすごいと思いますか?サクラさんは役に入りながら完全に俯瞰でも作品を見ている、両方の目を持った役者です。コントロールの能力がすごく高い。あと、あんまりそう見えてないかもしれないけど、身体能力が高い方なんです。いろんな意味で筋肉が柔らかくて、軽やかで、女優さんとしての才能だと思います。瞬間瞬間のつかみが素晴らしい方です。それからお二人とも、いろんな意味で脚本の理解力が高いです。特に今回は瑛太さんの坂元脚本に対する理解力の高さを目の当たりにして、「瑛太さんじゃなかったらこのセリフは成立しないかもしれない」というギリギリのところを、坂元さんが攻めてたんじゃないかと思います。例えば母親との面談の途中で飴を食べ始めるようなシーンも「瑛太さんだったら、ここまで書いても成立させるだろう」という気持ちを感じて、おそらくお互いが攻めているんじゃないかと。こういう役者を持った脚本家と、ああいう脚本家持った役者、その中に僕も参加させていただきまして、幸せですよね。――やっぱり演技において、作品を俯瞰で見ることは重要でしょうか?必ずしも全員が俯瞰して見なくてもいいと思います。役者さんによって、設計図を持ってお芝居を組み立ててくる方もいますし、瞬発力がいい方もいますし、色々な方がいて面白いです。■是枝裕和監督1962年6月6日、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。2014年に独立し制作者集団「分福」を立ち上げる。1995年に『幻の光』で監督デビューし、その後も『誰も知らない』(04)、『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)等、数々の作品を世に送り出す。2018年の『万引き家族』は、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート、そのほか多くの映画賞を受賞した。2019年の『真実』は国際共同製作作品として海外の映画人とのセッションを本格化させ、2022年には初の韓国映画となる『ベイビー・ブローカー』で、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品、エキュメニカル審査員賞を受賞。また主演のソン・ガンホが韓国人俳優初となる最優秀男優賞を受賞した。(C)2023「怪物」製作委員会
2023年06月07日現在公開中の映画『怪物』より、是枝裕和監督から本作の劇伴を担当した坂本龍一への感謝のコメントと制作エピソードが公開された。本作は『万引き家族』の是枝監督、『花束みたいな恋をした』の脚本家・坂元裕二、そして『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞した坂本という3人のコラボレーションで紡がれるヒューマンドラマ。出演者には安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、と豪華キャストが集結。先日開催された第76回カンヌ国際映画祭では坂元が脚本賞を受賞し、独立部門「クィア・パルム賞」と合わせて2冠を獲得した。これまでは脚本を執筆する際に聴いていた音楽をもとに、まず楽器のイメージを固め、それから音楽家に曲を依頼するケースが多かったという是枝監督。以前から坂本に音楽を依頼する機会を伺いながらも具体化することがなかったが、「今回は自分で脚本を書いていないので、その段階では音楽のイメージがなかったんです。ただ撮影中や編集中に、ホテルの部屋で坂本さんのピアノ曲をかけながら作業していたら、これしかないなと思って」と確信し、今作でオファーすることを決意。そして坂本へ音楽を依頼したい旨をしたためた手紙と、坂本の楽曲を仮に当てて編集した映像を送ったところ、「お引き受けしますが、スコア全体を引き受ける体力はない」という回答とともに、「思い浮かんだ曲が1、2曲ある」という返事があったという。最終的に書き下ろしの2曲と、坂本の最新アルバム『12』からの曲、そして過去の曲により、本作の音楽は構成されることになった。是枝監督は「坂本さんに断られていたら、根本から発想を変えるしかなかった。音楽も、それ以外の活動も尊敬している坂本さんに音楽をお願いすることができて、本当に嬉しかったです」と喜びをあらわにした。坂本龍一また、先日開催されたカンヌ国際映画祭の日本用囲み会見で、坂本とのエピソードを聞かれた是枝監督は、「観た直後に音楽室のシーンがすごく好きだと言ってもらい、あのホルンとトロンボーンの音を邪魔しない音楽を作ろうと思った、という意見をもらいました。映画の中から聞こえてくるような曲になったんじゃないかなとおこがましいけれど思いました」と坂本とのやりとりや本作のために書き下ろされた楽曲について振り返った。なお、坂本が音楽を担当した本作のサウンドトラックは現在発売中だ。<リリース情報>サウンドトラック『怪物』■アナログ盤&CD発売中ブックレット:是枝裕和監督コメント掲載■配信リンク:【販売形態】アナログ盤/CDDL ※バンドル配信のみサブスク ※Aquaは除く6曲で配信【収録曲】1. 202202072. Monster 13. hwit4. Monster 25. 202203026. hibari7. Aqua<作品情報>映画『怪物』公開中公式サイト:
2023年06月05日映画『怪物』(6月2日公開)の公開初日舞台挨拶が2日に都内で行われ、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、角田晃広、中村獅童、坂元裕二(脚本)、是枝裕和監督が登場した。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。今回のカンヌについて、是枝監督は「最高の滞在でした。オープニングの上映だったこともあってまるまる15日間映画祭に行って、こんなに長く行ったのは初めてだったんですけど、上映から時間が経つに従って口コミが広がって、街中で声をかけていただくことが増えていって、歩いていると呼び止められて質問されるんですよ。広がっていってるな、届いてるなという感じがとても強かったです」と振り返る。坂元も「30年前に遊びに行ったことがありまして、その頃は遠巻きにレッドカーぺとを眺めて素敵だなと思っていたのですが、今回監督に連れていってもらえて実際にそこを歩くことができて、忘れていた夢を叶えることができて感無量でした」と喜びを表した。是枝監督は「日本からの参加もとても多くて、感動したのが、(北野)武さんの上映を観させていただいて、終わった後にご挨拶に行って2ショット写真を撮っていただいたんです。そこで立ってる自分が、学生に戻ったみたいな立ち方をしていて、出ちゃってるんですよね。不思議ですね」としみじみ。「長くいたものですからヴェンダースさんも、ケン・ローチさんにもご挨拶に行って、会いたい人には大体会えたかなという感じです」と明かした。北野監督の映画『首』でカンヌに行っていた獅童は「是枝監督に会えたら嬉しいなと思っていたら、映画の取材で歩いてる時に監督と偶然お会いできて嬉しかったです」と現地で会うこともできたという。「『首』のアフターパーティーでは、さっき監督もおっしゃってましたけど、武監督と是枝監督と2ショットを遠目から見て『すごい2ショットだな』と言って感動してました」と語った。
2023年06月02日映画『怪物』(6月2日公開)の公開初日舞台挨拶が2日に都内で行われ、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、角田晃広、中村獅童、坂元裕二(脚本)、是枝裕和監督が登場した。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。今作で小学校の教頭を演じた角田。同作のカンヌ受賞については「『でしょうね』と思いました。わかってましたよ。読ませていただいた時からすごい映画だなと思いましたので、試写会で映像になって黒川くんも柊木くんも本当に素晴らしくて、こりゃもう、案の定でした」とコメント。東京03のメンバーの反応について聞かれると「そういうニュースが流れたとき3人で仕事してたんですけど、楽屋のテレビで見ながら、飯塚(悟志)さんは『すごいね。改めてすごい作品に出させてもらったね』みたいなことを言ってましたし、豊本(明長)さんはうんって言ってたので、同じ思いでいてくれうんだろうなと思いました」と明かした。撮影については緊張していたとはいうものの「現場の雰囲気、是枝監督の出す空気が穏やかで、ご丁寧で優しいんですよ」と感謝。一方で、安藤が「本番中にめっちゃ笑かしにきてましたよね」とツッコミ、獅童が「ふざけてるんですか?」と詰め寄る一幕も。是枝監督は「お笑いされてる方の中ですごくお芝居が上手な方が時々いるんですけど、角田さんはその一人。もちろんセリフの間合いの取り方もすばらしいでんすけど、画面の中のポジション取りがすごく上手なんですよ。的確なところにちゃんと動くし、タイミングよくフレームに入ってくる、天性のものだと思いますけど、素晴らしかったです」と絶賛し、角田は「本当ですか? 本当にもったいないことを、ありがとうございます」と恐縮していた。
2023年06月02日第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した映画『怪物』(6月2日公開)のプロデューサー裏話が31日、明らかになった。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。今回、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝監督が、「今一番リスペクトしている」と熱く語る脚本家の坂元とタッグを組むという、監督自身と映画ファンの夢を叶える企画が実現した。坂元は映画『花束みたいな恋をした』やTVドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』などで圧倒的な人気を博す、新作が待ち望まれる脚本家だ。是枝監督が他者に脚本を委ねるのは、デビュー作『幻の光』以来となる。今まで実現してこなかった奇跡のコラボレーションが結実した背景には、山田兼司・川村元気という、2人のプロデューサーの存在があったという。山田プロデューサーはテレビ朝日入社後、報道局を経て、10年以上映画・ドラマプロデューサーとして勤務。以前から坂元とドラマを制作したいと考え、やりとりを続けていたのだが、中々実現しなかった。2018年、連続ドラマ『anone』が最終回を迎え坂元が「これにてちょっと連ドラはお休みします」とInstagramに投稿した頃、山田は東宝に移籍し、映画のプロデュースに軸足を移すことを考えていたこともあり、映画の脚本に興味はないか打診したところ、坂元から前向きな返答があった。坂元と山田プロデューサーによる長編映画の企画開発が始まり、ほどなく監督・脚本家・プロデューサーと多方面で活躍の場を広げる川村プロデューサーがそこに加わり、進んでいくこととなった。その後、3人の総意として、同作を任せたい人に是枝監督の名前が挙がり、川村プロデューサーが是枝監督に企画を持ちかけることに。是枝監督は「坂元さんが書く人間には、僕の書けない人間が何人もいるんですよね。だから話をいただいたとき、すごく嬉しかったです」と振り返り、ロングプロットを読む前から監督を引き受けることを決めていたという。こうして2人のコラボレーションが実現し、盤石の布陣で制作されたという経緯が、今回明かされている。(C)2023「怪物」製作委員会
2023年05月31日フランスの南東部、地中海沿岸のコートダジュールに面した高級リゾート地カンヌで開催していた第76回カンヌ国際映画祭。5月27日(現地時間)にカンヌ国際映画祭のクロージング セレモニーにて、是枝裕和監督作品「怪物」の主演女優を務めた女優の安藤サクラがシャネルを纏い登場しました 。©CHANEL©CHANEL女優の安藤サクラは、2022/23年秋冬 オートクチュール コレクション ルック34から、ブラック シークインとシルクチュールが印象的なロング ドレスを着用し、ハイジュエリー<コレクション 1932>より、18Kホワイトゴールドとダイヤモンドの「 プリュイ ドゥ コメット」リング、ハイジュエリー<コメット>より、18Kホワイトゴールドとダイ ヤモンドの「コメット コレクション」リング、18Kホワイトゴールドとダイヤモンドの「リュバン ドゥ シャネル」イヤリング、シャネルのシューズをコーディネートしました。Photo by Virgile Guinard/©CHANELPhoto by Virgile Guinard/©CHANEL
2023年05月30日映画『怪物』(6月2日公開)の第76回 カンヌ国際映画祭凱旋記者会見が29日に都内で行われ、是枝裕和監督、脚本家の坂元裕二が登場した。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。親、教師、子供と3つの視点からなる構成となっている同作だが、この理由を聞かれた坂元は「私が以前経験したことなんですが、車を運転して赤信号で待っていた時、前にトラックが止まっていて。青になったんですが、そのトラックがなかなか動き出さない。しばらく待っても動かないものですから、前の車がちょっとお休みしてるのかなと思って、クラクションを鳴らしたんですね。それでもトラックが動かなかったので、何をしているんだろうと思っていると、ようやく動き出した後に、横断歩道に車椅子の方がいらっしゃるんです。そのトラックが車椅子の方々れるのを待っていたんですが、トラックの後ろにいた私はそれが見えなかったんです」と、自身の体験談を振り返り始める。坂元は「それ以来、自分がクラクションを鳴らしてしまったことを後悔し続けておりまして、このように世の中には普段生活していて見えないことがある。私自身、自分が被害者だと思うことにとても敏感ですが、自分が加害者だと気付くことはとても難しい。どうすれば、自分が被害者に対してしていることに気づくことができるだろうか。そのことを常にこの10年あまり考え続けてきて、その一つの描き方として、この方法を選びました」と説明した。そういった構成の関係上、宣伝時にはストーリーに踏み込まず、今回クィア・パルム賞を受賞したことで驚かれることともなった。是枝監督は「子供たちが抱えた葛藤を『ネタバレだから言わないでくれ』と言っていると囁かれたりしていると耳にしているんですけど、観た方の感想で『なるべく先入観なく観た方がいい』というのは間違いない。決して彼らが抱えた葛藤をネタとして扱ったつもりはありません」ときっぱり。「構成上、むしろ自分が当事者として子供達と向き合うためには、できるだけ脚本に振り回された方が、観終わった後にどこに着地するのかわからない方がいいのではないのかなと思っておりますので、そこは誤解のないようにと宣伝にも伝えております」と語る坂元は改めて「2010年に『Mother』、2011年に『それでも、生きてゆく』というドラマの脚本を書きました。その時からずっと抱えていた問題が自分の中にあって、加害者というものをどのように書けばいいのか、それが私にとってこの12年間の長い課題というか、考えていきたいテーマだったんです」と明かす。「加害者がどのようにすれば、被害者の存在に気付くことができるか? 被害に対して考えることはよくあるんですが、自分自身の加害という行為に関して考えること、気付くことは難しい。それをどうすればいいんだろうか、ということが長年のテーマだったんですが、加害者が被害者の存在に気づいていく道のりを、自分なりに現状書けるものがこれだったという。これで一つ、自分なりの道筋というものになってるといいなと思うんですが、答えが出るのかどうかわからないのですが、現状、これです」と表した。
2023年05月29日映画『怪物』(6月2日公開)の第76回 カンヌ国際映画祭凱旋記者会見が29日に都内で行われ、是枝裕和監督、脚本家の坂元裕二が登場した。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。カンヌでレッドカーペットを歩いた監督とキャスト陣だが、その時にかかった音楽は北野武監督の映画『菊次郎の夏』テーマである「Summer」だった。是枝監督は「事前に音楽を『何にしますか?』と聞かれました。坂本龍一さんの今回の『怪物』のテーマ曲をお願いしますと伝えました。かかったら、久石譲だったんですよ」と驚きの展開に。「これは何だかわからない。何かを間違ったんだと思うんです。当然坂本さんの曲だと思って歩きはじめたんですけど、違いました。で、上映後出てきてもまたかけたので、大好きな曲なんですけども、なぜあれがかかったのかわかりません」と苦笑。さらに是枝監督は「わかりませんけれども、授賞式でレッドカーペットを歩いても『タケシ!』って声かけられましたので、もしかするとどこかで何か違ったいろんなことが伝わってくるかもしれない」と明かした。また映画『PERFECT DAYS』に主演し同映画祭で最優秀男優賞を受賞した役所広司について聞かれると、是枝監督は「役所さんの名前が呼ばれた時に、僕と安藤(サクラ)さんが一番叫んで歓声を上げていると思います。それくらいかっこよくて、本当に嬉しかったです、役所さんがあの場所で評価されるということが」と振り返る。「裏で記念写真を撮って、役所さんも恥ずかしがり屋さんなので、あんまり受賞した喜びを裏で言葉にするみたいなことはなくて、今後の日本映画をどうしていくか、日本映画界をどういう風に良くしていくか、みたいなことを戻ったらまた話し合いましょうねと。僕らがやっていることをずっと応援していただいているので、そのお礼を伝えて、日本に戻ったらまた話しましょうという話をしました」と語った。
2023年05月29日映画『怪物』(6月2日公開)の第76回 カンヌ国際映画祭凱旋記者会見が29日に都内で行われ、是枝裕和監督、脚本家の坂元裕二が登場した。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。最後まで映画祭に参加し、2時間前に帰国したという是枝監督が、一足先に戻っていた坂元にトロフィーを渡す。是枝監督は「本当に素晴らしい評価をいただいたなと思っております。無事に坂元さんにお渡しすることができてほっとしています」と心境を表した。坂元は「実感は正直あまりありません。受賞を初めて聞いた時に寝ていたものですから、第一報を聞いた瞬間、まだ夢を見ているのかなと思いました。その後続いているようで、今も夢の中にいるような思いと、重み自体をこの作品の責任感だと感じますので、私自身手にも背中にも乗っかった大きな責任だと感じております」と胸の内を明かす。「最近映画の脚本を書くようになりましてほぼ2本目のようなものなんですが、まだ監督の力、プロデューサーの力を借りながらゆっくりと進んでいるものですから、今回含めて周りの方のお力によるものだと考えています」と感謝した。受賞の知らせについては着信に気づかず、「ニュースをご覧になった別の方からショートメールが来て音が鳴って気づいて見たところ、プロデューサーや監督から『受賞しました』というお話を聞きまして、あまり感情の起伏がないものですから『嬉しい』とか『やったあ』という気持ちよりはズシンという思いが訪れて、水を1杯飲みました。それが最初の行動でしたね」と振り返る。感情の起伏が少ないとはいうものの「周りの方から『おめでとう』と言われた時に、初めてうれしくなります」と明かし、さらに「1番うれしかったのはジョン・キャメロン・ミッチェル監督から昨日メッセージが届きまして、タクシーの中にいたんですが、涙が出ました」と語る。カンヌで賞をもらうことは「考えたこともありませんでした。カンヌに呼んでいただけたことが幸せだった」という坂元だが、「チームの1人として好きになれた作品でしたので、これが評価を受けるとうれしいな、それくらいの気持ちでした。自分のことはまったく考えてませんでした」という。どこが評価されたのかという質問には「出来上がった作品から脚本を評価していただいたんだと思うので、それはもちろん作品の素晴らしさで、脚本に関しては自分ではなかなか評価しづらいんですが、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督が『人の命を救う映画になっている』と言ってくださったので、もしそれが誰かの心にあるならうれしいことだなと思っています」と語った。
2023年05月29日映画『怪物』(6月2日公開)が、第76回カンヌ国際映画祭にて脚本賞を受賞したことが27日(日本時間28日)、明らかになった。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。第76回カンヌ国際映画祭にて、フランス時間5月17日(水)コンペティション部門の公式上映を無事に終え、9分半ものスタンディングオベーションで称えられた『怪物』(インターナショナルタイトル:MONSTER)。独立部門「クィア・パルム賞」の受賞に続き、現地時間5月27日20時30分(日本時間28日3時30分)から開催された授賞式で、脚本賞を受賞した。授賞式では、審査員長のリューベン・オストルンド監督をはじめ、ジュリア・デュクルノー監督、ポール・ダノ、ブリー・ラーソンらが選ぶ脚本賞を受賞。是枝監督が壇上で「ありがとうございます。一足早く日本に帰った坂元裕二さんに、すぐ報告します。僕がこの脚本の基になったプロットを頂いたのが2018年の12月なので、もう4年半前になります。そこに描かれた2人の少年たちの姿をどのように映像にするか、少年2人を受け入れない世界にいる大人の1人として、自分自身が少年の目に見返される、そういう存在でしかこの作品に関わる誠実なスタンスというのを見つけられませんでした。なので、頂いた脚本の1ページ目に、それだけは僕の言葉なんですけども、『世界は、生まれ変われるか』という1行を書きました。常に、自分にそのことを問いながら、この作品に関わりました。一緒に脚本を開発した川村さん、山田さん、作品に関わっていただいたスタッフ、キャストの皆さん、みんなの力でこの賞を頂けたと思っております。ありがとうございました」とスピーチした。また、現地メディアの中継で是枝監督は、受賞後すぐに坂元に報告したところ、「夢かと思った」と返事が来て、そのあと続けて「たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です」と喜びを寄せたことを伝えた。カンヌ国際映画祭において日本映画の脚本賞の受賞は、2021年の第74回カンヌ国際映画祭にて濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が受賞して以来2年振り、是枝監督作品のカンヌ映画祭でのコンペ部門での受賞は2022年の『ベイビー・ブローカー』に続き2年連続となる。授賞式後の日本メディア用囲み取材では、「最初にいただいたプロットからこの三部構成の形でした。読み進めても読み進めても、一体何が起きているのかわからない、という本がとてもわくわくしました。これをどういう風に映像にしていくんだろうというのを、演出を任される前提でプロットを読ませていただいて、相当チャレンジをしている、方法論的にも、題材的にもかなり攻めてるなと感じたので、これはちゃんと色んなものと向き合ってちゃんと勝負しようという風に考えました。それぐらいやっぱり自分には書けない本でしたし、ストーリーテリングというものがとても無駄がなくて、とても面白かったと僕は思いました。カンヌがどう評価したかはわかりません」と脚本についてコメント。受賞後の坂元の「たった一人の孤独な人のために書きました」という言葉については、「今回はそのことについて僕と坂元さんで、これは誰に向かって書いたとかみたいなやりとりとかは一切してないんです。多分、川村さんも山田さんも聞いていなくて。完成披露試写会の舞台挨拶で初めて坂元さんが子供の時に出会った男の子のことを書きましたという話が出て『そうだったんだ』と驚きだったんですけど、僕は僕であまり特定はしたくないんですけど、1人の男の子のためにこれは作ろうと思いました」と明かす。また、映画『PERFECT DAYS』で最優秀男優賞を受賞した役所広司については「本当に嬉しいですよね、役所広司さんが……。もっと早く獲ってても良かった、絶対に」と語る。「もっと世界的な評価があっていい役者さんだと思っていました。それが、ここでこういう形で結実してとても良かったと思います。なんだろうな、ずっと一緒に、日本映画界をどうしていくみたいな話も、とても応援していただいて、会うと大体、本当は次の作品の話がしたいんですけど、『どうなってる?』って心配して声をかけていただいて、少しでも若い役者、若いスタッフがどうやってこの後、日本の映画界でちゃんと映画が撮れるようになるのかというのを気にかけていただいているので、そんな話を裏でして、写真を撮って、西川美和に送りました(笑) 喜んでました」と説明した。受賞した盾を持っての撮影には「僕がもっちゃって……。本当は坂元さんにお渡ししたいですね」と苦笑しつつも、「さっき役所さんがここで評価されてとてもうれしいと言いましたけれど、坂元裕二という名前も、もちろんドラマの作家としては、アジアではもう相当名前は浸透していると思うのですが、映画ファンにはまだ発見されていない脚本家なのではないのかなと思いますので、これを機に彼の書くものとか、彼の過去作とか、いろんな形で注目が集まるといいなと思っています。それは僕が別に企んでいるわけではないですが、いいきっかけになるといいなと思います」と期待を寄せた。(C)2023「怪物」製作委員会
2023年05月28日