山田洋次監督の最新作『東京家族』の製作報告会見が5月30日(水)、東京・成城の東宝スタジオで行われ、山田監督を始め、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優が出席した。同日、日本最高齢の映画監督だった新藤兼人監督(享年100歳)が亡くなったことが報じられ、山田監督は「仰ぎ見る先輩がいなくなるのはさみしいこと。地を這う思いで映画を作り、スクリーンから“肉声”が聞こえてくるような監督だった」と追悼の意を表した。山田監督にとって81作目のメガホンにして、監督生活50周年を記念した『東京家族』。当初は2011年4月のクランクインを予定していたが、東日本大震災の発生を受けて、山田監督の意向で撮影が延期されていた。小津安二郎の『東京家族』(1953)にオマージュを捧げ、震災後の2012年5月の東京を舞台に、老夫婦と次男坊の絆を通して、観る者に普遍的な家族愛を問いかける。山田監督は「延期は正しかった。3.11は無視できない大惨事だし、もしあのまま製作を始めたら、とても後悔していたはず」と述懐し、「日本という国がこの先どうなるのか…。作品の最後に提示できればと思った。本質的には人間喜劇」と確かな手応えを感じている様子だ。実力派俳優が顔を揃える本作だが、意外にも蒼井さんを除き“山田組”には初参加。主人公の老夫婦を演じる橋爪さんと吉行さんは「思いもよらない大役」(橋爪さん)、「大緊張の毎日」(吉行さん)とそれぞれふり返る。次男を演じる妻夫木さんは、山田組への参加を先輩俳優の永瀬正敏に報告したと言い「永瀬さんから『良かったな、勉強になるぞ』とメールをいただいた。大切にしたのはフィーリング」と満足そうな笑顔を見せた。一方、山田組に関しては“先輩”にあたる蒼井さんは「私だけロケ参加が1か月遅かったんですが、その間にすっかり抜かされていて、焦りました(笑)」と苦笑しきり。演じるヒロインの紀子は、往年の大女優である原節子が演じた役柄とあって「紀子は、私には重過ぎる名前。意識してしまうと家から出られなくなるので、新鮮な気持ちを心がけた。寛大な心で受け止めてください」と控えめなアピールながら、やはり自信をのぞかせた。『東京家族』は2013年1月、全国にて公開。■関連作品:東京家族■関連記事:山田洋次監督が「第二の故郷」柴又を練り歩き!『東京家族』製作は来年春に再開
2012年05月30日少子高齢化が叫ばれて久しいが、その加速化に伴い日本ではいま1,000万人以上の人が介護に携わっており、様々な介護の問題と日々向き合っている。誰にとっても無視できないこの日本の介護に関する問題を浮き彫りにする、家族の物語『「わたし」の人生(みち)~我が命のタンゴ~』が公開されることがこのほど決定した。メガホンを握るのは、精神科医であり高齢者の臨床に携わる和田秀樹。病を通して家族と向き合う人々のリアルな苦悩と希望を描き出す。主人公は子育てを終え、自らの長年の夢である大学教授への道を歩み始めようとしていた主婦、百合子。その矢先、彼女の父で元大学教授の修次郎が痴漢行為で警察に保護されたとの一報が入る。父の異変を心配した百合子が病院へ連れていくと、そこで診断されたのは「認知症」だった。病気の進行と介護に対する不安が増す中、百合子は同じ状況の家族が集う「家族の会」の存在を知る。そこで出会った患者たちと共に、アルゼンチンタンゴを習い始めた父・修次郎にも次第に変化が訪れ…。突然の認知症の宣告と介護によって強いられる生活の変化に不安になりながらも、希望を見出していく主人公・百合子を演じるのは、ベテラン女優の秋吉久美子。認知症を患いながらも、新たな出会いを通して変化を見せていく父・修次郎を橋爪功が体当たりで演じる。そして自ら手がけた原作を基に、メガホンを取った和田秀樹監督。20年以上にわたって老年医療の経験を積んできたスペシャリストである。一方で、4年前には癌宣告を受けたカリスマ塾講師と高校を中退した一人の少女の東大合格までのドラマを描いた『受験のシンデレラ』で映画監督デビューも果たしている和田監督。デビュー作にして第5回モナコ国際映画祭で最優秀作品賞を含む主要4部門を受賞するなど世界で高く評価されている異才である。認知症の高齢者が全国で250万人、介護のために仕事を辞める介護離職者は全国で50万人以上いるという現実を見つめ、医療に携わる者としてのミッションを映画という形で伝えていく和田監督。「今後、さらにそれが増え続ける中で、中高年の女性が『生きていく』ことの意味を、家族の意味を、老年精神科医の目から見つめ直して撮った、私の職業人生のすべてを投影した渾身の一作です」と並々ならぬ意気込みを寄せている。『「わたし」の人生(みち)~我が命のタンゴ~』は8月、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開。■関連作品:「わたし」の人生(みち)~我が命のタンゴ~ 2012年8月、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開© 2012「わたし」の人生製作委員会
2012年04月05日子供たちはいま、自分たちがこれ以上ない絶景を望む場所に立っていることを気づいているだろうか?いや、気づく必要なんてないのかもしれない。そんなことは気に留めず、彼らは隣の友達と些細なことで泣いたり笑ったりしながら、必ず起こるに違いない“奇跡”を信じて歩き続ける――。ドキュメンタリーを思わせる瑞々しさで、現代版『スタンド・バイ・ミー』とでも言うべき子供たちの旅を切り取った、是枝裕和監督最新作『奇跡』。主人公の兄弟を演じるのは、小学生の兄弟漫才コンビとして活躍する「まえだまえだ」の前田航基と旺志郎の2人。ひと夏の冒険を経て、彼らが得たものは――?航基「是枝監督の説明って、ホンマだいたいなんです(笑)」両親の離婚により離れて暮らす航一(航基くん)と龍之介(旺志郎くん)。もう一度、家族4人で元通りに暮らしたいと願う航一は学校で、まもなく開通する九州新幹線のあるうわさを耳にする。博多と鹿児島をそれぞれ出発する一番列車がすれ違う瞬間を目撃すると、どんな願いも叶うというのだ。奇跡に立ち会うべく航一と龍之介は旅の計画を立てるが…。何より、子供たちの自然な演技が素晴らしい本作。2人揃って映画に出演するのは初めてだったが、役柄や演技について航基くんが「普段の自分そのまんまの感じの役だったので、本当にそのまんまいつもの感じでいました」と言えば、映画出演自体初めての旺志郎くんも「演技しているというよりも普通の生活をしているみたいやった。こういう場面になったら、旺志郎たちも同じことするだろうな…って思いました」と何ら気負いなく演技に臨んだようだ。是枝監督は『誰も知らない』などで子供たちを演出したときと同じように、台本を渡さずに、撮影の直前に口頭で状況の説明とセリフを伝えるという手法を用いた。加えて、本作に関してはキャスティングが決まってから、役柄や脚本を2人に合わせて変更していったという。例えば劇中、航一も龍之介も自分のことを“僕”でも“おれ”でもなく名前で呼ぶが、これはまえだまえだの2人が普段からそうしているから。そうやって俳優に合わせつつ、カメラの前でその魅力を最大限に引き出し、断片をつないで物語にしていく監督に、航基くんはすっかり心酔した様子。「監督の事前の説明って細かくなくて、ホンマにだいたいなんです(笑)。それでこっちもやってみるんですが、完成した映画を観たら『なるほど、そういうことか!』って何度も思いました。やっぱり映画監督、というか是枝監督ってすごいんだなと思いました」。いやいや、“だいたい”の説明だけで監督の要求に応えてしまう2人こそ、すごいと思うが…。食は渋好み?九州の名産品を堪能!2人の年の差は2つ。小学校高学年から中学にかけてという、たった1年で心身ともに急激な変化を迎えるこの時期。普通、たった1年の差でも大きな開きのように思えてしまうものだが、2人の間には年齢差やいわゆる“兄”と“弟”といった関係性があまり見えてこない。航基くんは「兄弟というよりは友達。親友よりももう一歩深く奥に入った関係」と表現する。先述のように、映画の中からも普段の2人の素顔が垣間見えるが、改めて“相方”について語ってもらおう。航基くんは旺志郎くんについてこう語る。「旺志郎は、何でも気楽にサーッと受け流す、あっさりしたヤツですね。こだわり過ぎずにいい意味で適当な半面、それが雑という悪い部分で出てくることもあるんですが(笑)」。まさに、劇中の龍之介といったところ。では、旺志郎くんから見た兄、そして相方の航基くんはというと…。「いろんなこと考え込みますね。ひとつのことに興味持つと、そればっかりになって、ほかのことしなくなる。1回ハマると抜け出せない(笑)」。サラリと核心を衝く弟の指摘に航基くんは「あかんと思いつつ…人間、なかなか直らんもんですね…」。少し渋い顔をしていたが、九州のおいしいものは食べた?と尋ねると、たちまち笑顔に。「シシャモがおいしかったです。シシャモって卵を持っていない方が実は脂が乗っていておいしいと聞いたんですが、めっちゃおいしかったです!」と本当に12歳?と思える渋好みだ。一方の旺志郎くんは「明太子でご飯を食べるシーンがあるんですが、すごくおいしかったです。馬肉?監督に食べに連れて行ってもらいました!お土産に馬肉せんべいまで買って(笑)、新幹線で食べて帰りました」。ご当地のおいしいものと言えば、橋爪功が演じる祖父が作る鹿児島の伝統的な銘菓“かるかん”は?劇中では、2人は微妙な反応を見せるが…?「おいしいですよ。あんことは違ってほんのりとした甘さで。あっさりしてるけどお腹にたまるから朝ごはんにもいけるし」(航基くん)、「生地はもっちりしてて蒸しパンみたいです」(旺志郎くん)と、グルメレポーター顔負けのコメントでアピールしてくれた。“奇跡”の瞬間の葛藤――2人が得たものは?学校へ、駅へと全力で駆ける航一の姿や博多と鹿児島でそれぞれ離れて暮らす2人の電話でのコミカルなやり取り。オダギリジョー扮する飄々とした父親や、離れて暮らしても息子を思う大塚寧々演じる母親と、彼ら以上に大人びた子供たちの言動など、思わずクスリと笑ってしまう見どころが満載だが、何と言ってもクライマックスは、一番列車が行き交う轟音の中で、思い思いの“奇跡”を願い、叫ぶシーンだ。どんな気持ちであのシーンに臨み、その結果をどう受け止めたのか?航基くんはこう説明する。「最初、航一は何が何でも家族4人が元通りになることを望んでいたけど、旅をするうちに微妙な気持ちの移り変わりがあったんでしょうね。ギリギリまで葛藤があって、一度、口に出したら取り返しがつかなくなる、という思いもあって…。そう考えているうちに新幹線がすごいスピードで通り過ぎて行って、むなしさとか悔しさとかいろんなことを感じたと思う。あれだけ苦労して、みんなで協力して努力して辿りついて、きっと人生の厳しさを学んだのかな」。願えば全てが叶うほど人生は甘くないし、二度と取り戻すことのできない“何か”を失いながら人間は大人になっていく――この物語が少年たちに示すのは、そんな人生のしょっぱさかもしれない。それでもこの映画は断じて悲しい映画ではない。是枝監督は、2人にオーディションに接して「生きていくことに対してポジティブな力をもらった」と明かしたが、おそらく監督が感じたものと同じものをこの映画は与えてくれる。少しだけヒリヒリした心を抱えて映画館を出つつ、こう思えるはずだ。「大人になることはそう悪くもない」と。(photo/text:Naoki Kurozu)■関連作品:奇跡 2011年6月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2011『奇跡』製作委員会■関連記事:シネマカフェ読者ゴコロなんでもベスト5(第15回)憧れるリアル父親俳優は?本木雅弘&内田也哉子の娘が祖母・樹木希林と共演親は渋ってた…?是枝裕和監督の最新作!!『奇跡』完成披露試写会に50組100名様ご招待まえだまえだが是枝裕和最新作に主演!大塚寧々&オダギリジョーが両親役
2011年06月07日米倉涼子主演の人気ドラマシリーズの劇場版『交渉人〜THE NEGOTIATOR THE MOVIE〜』。本作の最大の謎である、劇中の一連の事件を陰で操る黒幕1名を含む、ゲスト俳優陣6名が明らかに!反町隆史、林遣都、成宮寛貴、柳葉敏郎、橋爪功、津川雅彦という錚々たる面子が、新たに本作に名を連ねることになった。舞台を高度1万メートルを飛ぶハイジャック機に移して繰り広げられる頭脳戦に加わることになったこちらの6名。しかも、このうちの1名は事件を陰で操る正真正銘の黒幕なのだ。今回、明らかにされた人物設定によれば、反町さんはハイジャック機の乗客。林さんはショッピングモールのアルバイト店員、成宮さんは乗客でありITベンチャー企業の若き社長、柳葉さんはハイジャック機の機長、橋爪さんは経済産業大臣、そして津川さんは元ジャーナリストという役どころ。10代にして数々の話題作への主演・出演が続く林さんから、来年お正月で御歳70歳!米倉さんを「ヨネヨネ」と呼んで可愛がっているという津川さんまでずらりと並んだ各世代の名優たち。全員が怪しく思えてくるが…。彼らと宇佐木玲子との絡みも楽しみだが、当の米倉さんは「初めて台本を読んだとき、いったい誰が犯人か分からなかったし、台本を読めば読むほど驚きの連続でビックリしました!まさかあの人だったとは…」ととことん思わせぶりなコメント。現在、地上波ではドラマ版の「シーズン2」が放送中。2月11日(木・祝)の公開に向け、これからさらに詳細が明かされていくはずだが…果たして真の黒幕は誰なのか?『交渉人〜THE NEGOTIATOR THE MOVIE〜』は2010年2月11日(木・祝)より全国にて公開。■関連作品:交渉人〜THE NEGOTIATOR THE MOVIE〜 2010年2月11日より全国にて公開■関連記事:来年の東映は『ゼブラーマン2』セクシー衣裳から『桜田門外ノ変』まで注目作ズラリ!米倉涼子、コスプレ&パンツも脱ぐ!?陣内孝則の決めゼリフはあの人の「ハチ…」?アンジーに並ぶ“ハードボイルド女性”誕生?米倉涼子主演「交渉人」が映画化
2009年11月27日