『吸血鬼ドラキュラ』や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのサルマン役で知られるイギリスの名優、クリストファー・リーが7日(現地時間)、ロンドンの病院で亡くなっていたことが明らかになった。享年93。リーは呼吸器系の問題と心臓疾患のため、チェルシー・アンド・ウェストミンスター病院に3週間前から入院していたが、先月27日(現地時間)には病室で93歳の誕生日を祝ったばかりだった。1940年代から俳優として活動してきたリーは、1958年に『吸血鬼ドラキュラ』でドラキュラ伯爵を演じて人気を博し、『ウィッカーマン』(73)、ジェームズ・ボンドの敵役・スカラマンガを演じた『007黄金銃を持つ男』(74)などに出演。80歳を過ぎても『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、ドゥークー伯爵を演じた『スター・ウォーズ』シリーズ、『チャーリーとチョコレート工場』(05)や『アリス・イン・ワンダーランド』(10)などティム・バートン監督作などに出演。90代を迎えて以降も現役で活躍を続け、昨年はなんとヘヴィ・メタルのEP「Metal Knight」をリリース。先月半ばには、11月から撮影開始を予定している『The 11th』(原題)への出演決定が報じられていた。映画の遺作は『ホビット決戦のゆくえ』(14)になる。(text:Yuki Tominaga)
2015年06月12日ナーズ(NARS)がデザイナーのクリストファー・ケイン(Christopher Kane)とコラボしたコレクション「Christopher Kane for NARS Collection」を、5月15日に数量限定で発売する。スコットランド出身のクリストファー・ケインは、モダンな洞察力で女性らしいルックを創り上げる、ファッション界において最も注目されているデザイナーの1人。06SSシーズンにロンドンのファッションウィークで自身のショーを発表して以来、スコットランドのデザイナー・オブ・ザ・イヤーを2回受賞。その他、「BFC ブリティッシュ・コレクション・オブ・ザ・イヤー」や「BFC ヴォーグ デザイナー・ファッション・ファンド」など数多くの賞を受賞している。09年には「アトリエ ヴェルサーチ(Atelier Versace)」のディフュージョンライン「ヴェルサス(Versus)」のクリエイティブディレクターに就任した。今回のコレクションはナーズの大胆な美の哲学に、ケインの意外性とエッジィさを生み出す美学を反映したもの。ルックをリバイブさせるエネルギーとして、ネオンカラーを積極的に使用。そこに、力強さとスタイルを共存させながら、ヌードカラーとのバランスによってネオニュートラルなスタイルを生み出した。コレクションについて、ケインは「僕らのシグネチャーデザインである、過去のコレクションから集めた作品をベースにしているよ。これらの作品は当然、クリストファー ・ケインの3つのテーマカラー、僕らの規範である大胆なネオン、ブランドの色とも言えるヌードと、それからフューチャリスティックな輝きのイリデッセンスを取り入れている。これらの色はそれを最も純粋な感覚で表現したかったんだ」と語っている。アイシャドーはローズとゴールドのグリッターが輝く「NARS シングルアイシャドー 2095」(2,500円)と、ピンクライラックとバイオレットの2色を合わせた「NARS デュオアイシャドー 3903」(4,200円)の2アイテムを用意。一方、マットテクスチャーのブラッシュは、ソフトベージュの「NARS ブラッシュ 2056」(3,000円)とネオンピンクの「NARS ブラッシュ 4057」(3,000円)が展開される。更に、ケインの15SSコレクションショーでキーアイテムとして使用された、ヴァイオレットカラーの「イルミネイティング マルティプ」(4,800円)も登場。目もとやチーク、リップにシアーな光沢感を与えてハイライト効果を発揮する。その他、リップグロスはネオピンクの「N 5602」、桜貝色のピンクの「N 5603」、フューシャの「N 5604」、ネオンコーラルの「N 5605」の全4色(各3,000円)が登場する。
2015年04月02日15SSコレクションのランウエイから、今春夏メイクのヒントを紹介するシリーズ。5回目は「クリストファー・ケーン(Christopher Kane)」。デザイナーのケーンが学生時代の恩師に捧げた、過去と現在をつなぐコレクションは、セクシーでコンテンポラリーだが、同時に伝統を重んじる気品に溢れている。バレリーナのようなソフトなチュールや、深みのあるブラウンレッドのドレス、トランスペアレントなブラウスなど、その美しさに目を奪われる。メイクもコレクションに合わせて、フレッシュで光り輝くイメージ。透明感のあるシンプルな色使いで、その人が本来持つ個性を引き出してくれる。モイスチャークリームで保湿をした後、肌に輝きをもたらす美容液「NARSskin オプティマルブライトニングコンセントレート」を使用。メイクを長持ちさせる効果のある美容液は、なめらかでキメの整った艶肌へと導く。次に、UV効果のあるモイスチャライザーをオン。しみや毛穴など気になる部分はカバーしつつ、質感はナチュラルに。さらにルースパウダーを重ねて美しい光をプラス。仕上げにクリストファー・ケーンが「ナーズ(NARS)」とコラボレーションした「ザ マルティプル Violet Atom」を、ハイライトとして鼻筋などの顔の高い位置に軽くたたき込む。淡い紫のカラーが虹色の輝きを放つ。頬骨からこめかみにかけてもCラインを描くように指で広げ、同様にまぶたや口元にも乗せる。光を受けて輝く肌は、見る角度によって揺らめくように色を変える。女性としての自信が静かに満ち溢れるフレッシュなメイキャップは、エレガントなスタイルにフィットする。リードアーティストはナーズのルチア・ピエローニ(Lucia Pieroni)。主な使用アイテムは、「NARSskin ルミナスティックモイスチャークリーム」「ピュアラディアント ティンティッドモイスチャライザー」「ライトリフレクティングセッティングパウダー」「ザ マルティプル Violet Atom:Christopher Kane for NARS Collection)[2015年5月限定発売]」(すべてナーズ)など。
2015年03月21日ニューヨークを拠点に活躍するアーティスト、トム・クリストファー(Tom Christopher)の個展が、6月19日より大阪のホテルニューオータニ内「ギャルリーためなが」にて開催される。1993年にニューヨークで開催されて以来、パリ、東京、大阪など合わせて18回目となるギャルリーためながでの個展。今回は最新作を含む30点を展示。摩天楼やイエローキャブ、自転車メッセンジャー、行き交う人々など、写実性をベースにわずかなデフォルメを加えたニューヨークの姿を描き出す。クリストファーは1952年カリフォルニア州ハリウッド生まれ。81年よりニューヨークを描きはじめ、作品はニューヨーク市立美術館やCBS社、タイムワーナー社に収蔵される。95年にロックフェラーセンター壁画、98年にタイムズ・スクエアに巨大壁画を制作。2001年にはワールドトレードセンターを描いた作品が話題となった。米国のみならずスイスやドイツなどでも個展を開催している。【イベント情報】トム・クリストファー展―サムシング アバウト ニューヨーク シティ(Something about New York City)―会場:ギャルリー ためなが 大阪住所:大阪市中央区城見1-4-1ホテルニューオータニ大阪1階会期:6月19日から7月13日時間:11:00から20:00入場無料
2014年06月11日『ダークナイト ライジング』の日本公開を来月に控える鬼才クリストファー・ノーラン監督が、ウォリー・フィスターの監督デビュー作で製作総指揮を務めることとなった。フィスター監督は『メメント』(’00)、『バットマン』3部作、『プレステージ』(’06)などで撮影監督を務めたノーラン組の常連スタッフで、『インセプション』(’10)ではアカデミー賞撮影賞に輝いた人物。ノーランと妻でプロデューサーのエマ・トーマスは待望の監督デビュー作となる彼のスリラー作品(タイトル未定)に製作総指揮として参加する。ノーラン夫妻が2002年のスリラー作品『インソムニア』でタッグを組んだアルコン・エンターテイメント社が本作の資金調達を担当する。同社のプロデューサー、ブロデリック・ジョンソンとアンドリュー・A・コソーヴの2人は「ノーランとエマは映画作家、コラボレーター、ストーリーテラーとして大掛かりなことから細かいことに至るまで、非常に優れた才能があり、また2人と一緒に働けるのが嬉しいです」とコメントした。リージェンシー・ボイスが共同プロデュースを務め、ジャック・パグレンが脚本を担当する同作は、ストーリー内容と出演者は未定で、クランクインは今年の年末を予定している。■関連作品:ダークナイト ライジング 2012年7月28日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
2012年06月15日第84回アカデミー賞授賞式で、『人生はビギナーズ』のクリストファー・プラマーが助演男優賞を獲得した。マイク・ミルズの実体験を基に、晩年に突然ゲイであることをカミングアウトする父親と息子の愛と人生の再スタートを描いた本作。クリストファーは、自身に正直に自由を謳歌する父親をユーモアたっぷりに演じている。現在82歳、その俳優歴は半世紀以上にのぼる大御所中の大御所。『サウンド・オブ・ミュージック』(’64)のトラップ大佐役など数々の作品で名演を見せてきた彼だが、意外にもオスカーノミネートは2009年の『終着駅-トルストイ最後の旅-』が初めてで、今回の受賞は同賞において最高齢での初受賞となった。今回の助演男優賞部門は、同い年のマックス・フォン・シドー(『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』)や、ニック・ノルティ(『Warrior』)などベテラン勢が揃ったが、クリストファーがこれまでの映画賞レースと順当の強さを見せた。手にした金のオスカー像に向かって「あなたは私より2歳しか年上じゃないんだね。母の種にいたときからこのスピーチを予定してました」と冗談を飛ばすや、ほかの候補者に称賛を贈り「(共演の)ユアン・マクレガーとこの賞を共有したい」と語った。特集:第84回アカデミー賞 Harbaugh / ©A.M.P.A.S.■関連作品:第84回アカデミー賞 [アワード] 2012年2月26日(現地時間)、ハリウッド・コダックシアターにて授賞式が開催© AMPAS人生はビギナーズ 2012年2月4日より新宿バルト9、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2010 Beginners Movie, LLC. All Rights Reserved.■関連記事:【アカデミー賞】華麗なるレッドカーペットファッション!~クラシック編~【アカデミー賞】華麗なるレッドカーペットファッション!~セクシー編~【アカデミー賞】華麗なるレッドカーペットファッション!~ホワイト&メタリック編~【アカデミー賞】最高栄誉はハリウッド愛を贈るフランス映画『アーティスト』へ!【アカデミー賞】会場総立ち!メリル・ストリープが3度目のオスカー受賞!
2012年02月27日タレント、はるな愛が9月29日(水)、東京・港区のシネマート六本木で行われた映画『シングルマン』(トム・フォード監督)の男性限定試写会でトークイベントを行った。16年一緒に暮らしたパートナーを失った悲しみから人生に終止符を打とうと決意した男(コリン・ファース)の姿を描く物語。グッチ、イヴ・サンローランで活躍したカリスマデザイナー、トム・フォードが初メガホンを取り、クリストファー・イシャーウッドの同名小説を基に自身の体験も織り込んだヒューマンドラマ。劇中のジュリアン・ムーアに触発され、ニューヨーク発の人気ブランド、ベッツィ・ジョンソンの黒い膝丈ワンピースで登場したはるなさんは、「恋愛って切ないし悲しい別れが来るから嫌だけど、最近深い恋愛をしていないので早くしたいな」と乙女心を吐露。プライベートではデートの相手が「3人くらいいるんですけど、本当に愛のことをちゃんと老後まで愛してくれる人を見つけたいから、いまちょっとずつエグイところを見せています。それでもついてきてくれる人がいい」と人生の伴侶探しの真っただ中の様子。何歳までに結婚したい?の問いに、現在38歳だが「女の子になってから20なので22までには」。エグイところって?と取材陣から聞かれると、「朝、歯磨きしてウエッってしたり…いろいろあるじゃない〜」と豪快に笑った。一方で、はるなさんが来場した男性から事前に気に入った3人を選び、その中からさらに1人を選ぶ、“花婿探し”イベントも開催。3人中2人から「彼女がいます」と言われてガッカリしたはるなさんだが、27歳のモデルというサッパリした顔立ちの男性を選び「パッチリした二重の二枚目よりこういうわんちゃんみたいな感じが好き」と腕を組み、男性の腕に頬をすりよせてゴキゲン。最後は「今度こそ彼氏と結婚します会見したいわ〜」と結婚会見を“予告”しながら退場した。『シングルマン』は10月2日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:シングルマン 2010年10月2日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2009 Fade to Black Productions, Inc. All Rights Reserved.■関連記事:美しき男たちvol.3(最終回)『シングルマン』の美しすぎる男たち『シングルマン』コリン・ファースにトロントで新たな注目!日本との意外な繋がりも美しき男たちvol.2『シングルマン』から見えてくる“時代”美しき男たちvol.1『シングルマン』を彩るファッションと美学あの『アバウト・ア・ボーイ』の子役のニコラス・ホルトが『シングルマン』でヌードに
2010年09月29日2009年のヴェネチア国際映画祭。一人の新人監督の作品が注目を集めました。監督の名前はトム・フォード。映画界では新人ですが、ファッション界では知らない者などいない大物。グッチやイヴ・サンローランといった、老舗ながら勢いを失いつつあったブランドを再生させたファッションデザイナーとして知られ、いまでは自らの名を冠したブランドも持つ人物です。元々、映画通としても有名で、彼が展開するブランドの戦略(広告キャンペーン、CMなど)はすぐに「映画好きだな」と分かるものばかり。ですから、彼が監督デビューしたいらしいという噂を聞いても、「そうだ!監督でもやってみよう」などと、思いつきでメガフォンを取るわけではないことは分かっていました。さらに、2004年には映画製作会社を立ち上げたあたりから、“本気だな”とは思っていましたが、まさかファッション業界でも数々の功績を残し、現在もばりばりに活動中の彼の映画がこんなに早く観られるとは。そこで、ファッション界のみならず、映画界をも賑わわせている彼のデビュー作の話題を、3回シリーズでお届けしたいと思います。題材は、1980年代に出会っていたというクリストファー・イシャーウッドの小説「A Single Man」。若き日とは違い、愛する者を失い人生の意味を見出せなくなった中年の男に訪れた精神の危機を描いています。そんな物語を彼なりのフィルターを通して描いた映画『シングルマン』は、トム・フォード自身の内面を投影した作品になったのだそう。これまでは、彼がどんな服をデザインしているかにばかり興味があったけれど、この作品を観ると、彼がどんな人物なのか、どんな哲学を持ったクリエイターなのかということに俄然、興味がわきました。「私がどんな経歴でどんな人間か、先入観を持ってこの映画を観た人の多くが驚くと思う。私はとてもロマンティックだし、しょっちゅう孤独を感じている。でもみんなそうだよね?映画は、普段の私のイメージとは違うかもしれない。だからこそ一番自分らしい作品と言えるだろう。ファッションは束の間だが、映画は永遠だ。映画は人に挑んでくる。考えさせてくれる。主人公のジョージの中には、私自身が大きく投影されている。多くの人に訪れる中年の精神的危機のようなものだ。私は若いときに物質世界でかなり成功した。経済的安定、名声、仕事の成功、必要以上の物質的所有物…。私は私生活を満喫していたよ。23年間連れ添った人生最高のパートナー、2匹の素晴らしい犬、多くの友人。だがなんとなく自分の道を見失っていたんだ。ファッションデザイナーとして、実際に店頭で売り出される数年前から未来のコレクションをデザインする毎日。我々の文化は物質で何でも問題が解決できると、我々に信じさせようとしている。私は完全に人生の精神面をおざなりにしてきた自分に気づいたんだ」とトム・フォード。舞台は1960年代。主人公は、最愛の恋人を失った大学教授。「几帳面でなにもかもコントロールしたがる。そういう性格は、僕の性格とも似ているんだけど」と監督はとあるインタビューで話しています。こんな話を聞いてしまうと、隅々までに彼の美学が浸透している本作だけに、さぞ独裁者ぶりを発揮したのだろうと思っていました。当然ながら衣裳は全て自らが手掛けているでしょうと。でも驚いたのは、監督自らがミラノで作らせたのは、主演のコリン・ファースとニコラス・ホルトの衣裳だけ。初監督作品なら、自分が最も得意とする分野については特にこだわりを寄せてしまうのが常。ところが彼は、手放すべきところは手放し、優秀な信頼できるスタッフに任せているのです。これも、限られた時間で最高のものを生み出すための“潔さの美学”、“リーダーの美学”なのでしょう。例えばコスチュームデザイナー。「衣裳担当のアリアンヌは、本当にいろいろな意味で私をサポートしてくれたよ。彼女は衣裳に限らず、物を見分ける素晴らしい目を持っている。優れた衣裳デザイナーだ。少ない時間と予算で完璧な時代衣装を準備してくれた」。美意識が高いトム・フォードに彼の専門分野である“服”を任されるとは、一体どんな気分だったのでしょう。でも、アリアンヌ・フィリップスだって、『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』、そしてトム・クルーズ&キャメロン・ディアスの新作『ナイト&デイ』でも活躍する売れっ子。2人のコラボの成功は、トムが彼女を信頼し任せることができなければ実現しなかったはずなのです。デザイナーとして偉大な功績を持つトム・フォードはこれまでに、グッチやイヴ・サンローランと歴史ある(=ひと筋縄ではいかない)メゾンを率いてきた成功者。つまり、真のクリエイターであり、きちんと仲間を信頼できるリーダーなのです。考えてみれば、哲学のあるコレクションを仕上げていくデザイナーの仕事と、良質な映画を創り上げていく監督の仕事とは、規模の違いこそあれ、とても似ているものなのかもしれません。何もないところからイメージを築き上げ、それを現実のものとするスタッフとともに、ひとつの世界観を作り出す。この作品は、例えるならば、トム・フォードが心血を注いだ渾身のコレクションであり、一着の最高に美しいタキシード。彼が創り上げたもうひとつのマスターピースと言えるでしょう。さて、そんなトム・フォード作品ですから、衣裳はもちろん、温か味のあるミッドセンチュリー的インテリア、主人公の心情にあわせて変わる色彩など、ビジュアルはすこぶる素晴らしく、彼の美意識の集大成としても一見の価値アリです。でも、それだけではないのが彼の“本物”たる所以。きっとビジュアルばかりにこだわったように見えたら、先入観も手伝って、トム・フォードが自ら作ったブランドのイメージビデオに見えたかもしれません。そんなリスクを免れたのは、彼が持つ映画的な言語センス。音楽の選び方、セリフの粋、適切なキャスト…。全てに総合的な芸術センスが感じられるのです。そのシーンが単に見かけだけ美しいわけでなく、どんな意味を持ち、何を含んでいるのか、未来への暗示をきちんと表現しているあたりに、思わずニヤリ。例えばそれは、監督自らがミラノでこれだけは作らせたという、コリン・ファースとニコラス・ホルトの衣裳からも分かります。2人は、物語を運んでいくキーパーソンです。そして、教授と生徒、老いと若さ、硬と柔、陰と陽、過去と未来を象徴するキャラクターでもある。こういった対比を体現するファースとホルトは、着ているものも対照的です。几帳面で折り目正しいダークなスーツを着るファースに対し、彼の人生に射す光のような役のホルトは、白くふんわりとしたモヘアのセーターを着ています。明るく眩しいほどの色味と質感からは主人公にとって実際にそうであるように、天使のような優しい存在感を感じさせます。うーん、美しい。この2人が並んでいる姿を見ると、監督が、どうしてもこの二人に関しては衣裳を任せなかったこだわりも伝わってくるというものです。いやいや、大変な新人監督が登場しました。早くも次が楽しみです。さて、ここに登場した俳優たち。コリン・ファースはおなじみでしょうが、「ニコラス・ホルトって誰よ」と思った方、『アバウト・ア・ボーイ』の少年を思い出してみて…。驚きですよね。ニコラスをはじめ、キャストについては3回目のコラムでじっくり取り上げますので、お楽しみに。vol.2 9/21 coming soonvol.3 9/27 coming soon(text:June Makiguchi)■関連作品:シングルマン 2010年10月2日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2009 Fade to Black Productions, Inc. All Rights Reserved.■関連記事:あの『アバウト・ア・ボーイ』の子役のニコラス・ホルトが『シングルマン』でヌードに【シネマモード】2010年 映画ファッションのいままでとこれから【アカデミー賞】ファッションチェック!〜番外編<セレブカップル>〜オスカー主演男優賞のゆくえクルーニー&フリーマンの戴冠阻むは“過小評価の男”?本家オスカーを控え激戦、混戦!英国アカデミー賞で『ハート・ロッカー』6冠
2010年09月14日