スタジオコロリドが手掛けるアニメ映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』が、2024年5月24日(金)より劇場公開される。スタジオコロリドの長編アニメ映画第4弾スタジオコロリドは、初の長編映画『ペンギン・ハイウェイ』で日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞したのをはじめ、『泣きたい私は猫をかぶる』『雨を告げる漂流団地』といったアニメ作品を世に送り出してきた新進気鋭のクリエイタースタジオ。長編第4弾となる新作アニメ映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』は、少年と鬼の少女が紡ぐ“ひと夏でひと冬”の青春ファンタジーだ。頼まれごとを断れず、親友もいない少年・柊が、泊まるあてがないという鬼のツムギを助けるところから物語はスタート。2人で物心つく前に別れたツムギの母親を探す旅に出る。本当の気持ちを隠してしまいがちな柊と、“想いを口にすることが大切である”がモットーの鬼の少女・ツムギがどのような旅を繰り広げるのかに注目だ。主演は小野賢章&富田美憂主演は、小野賢章と富田美憂が務める。映画『ハリー・ポッター』シリーズのハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)をはじめとする吹替や、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』など多彩な作品で活躍する小野賢章は山形県に住む高校生の八ッ瀬柊役を、『子供はわかってあげない』の劇中アニメやアニメ「かぐや様は告らせたい」シリーズにも参加している富田美憂は鬼の少女・ツムギ役を演じる。主人公・八ッ瀬柊(やつせ・ひいらぎ)…小野賢章山形県に住む高校1年生。“周りと上手に過ごしたい”“人に嫌われたくない”という想いから、気づけば頼まれごとを断れない性格に。自ら進んで“誰かのために”を一生懸命にやってみるも、何かが上手くはいかず、親友と呼べる友だちもいない。季節外れの雪が降った夏の日にツムギと出会う。主人公・ツムギ…富田美憂人間の世界に母親を探しに来た、ツノを持つ鬼の少女。出会った柊を旅の道連れに。天真爛漫で自分勝手、柊とは正反対で周りの目を気にしない性格の持ち主。故郷は“隠の郷(なばりのさと)”。監督は『泣きたい私は猫をかぶる』の柴山智隆監督を務めるのは、『泣きたい私は猫をかぶる』で長編監督デビューを果たした柴山智隆。スタジオジブリを経て、スタジオコロリドにて数多くのCMや映像作品に参加してきた。脚本はTVアニメ「ちはやふる」シリーズやTVアニメ「薬屋のひとりごと」を手掛けた柿原優子が担当。キャラクターデザインは横田匡史、キャラクターデザイン補佐は近岡直が手掛ける。主題歌&挿入歌はずっと真夜中でいいのに。映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』の主題歌、挿入歌を担当するのは、「ずっと真夜中でいいのに。」。ともに約1年ぶりの新曲となる。主題歌「嘘じゃない」は、“本当の気持ち”をテーマとする映画のメッセージを表現した楽曲。柊やツムギ、そして鑑賞した人の思いに友人のように寄り添う楽曲となっている。映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』あらすじ高校1年生の柊は、気づけば頼まれごとを断れない性格に。毎日“誰かのために”を一生懸命やってみているのに、親友と呼べる友だちがいない。ある夏、やっぱり何かが上手くいかない柊は、泊まるあてがないというツムギを助けるが、その夜、事件が起きる。部屋で居眠りをしていた柊がふと寒さで目を覚ますと、部屋が凍りついていた。柊は謎の化け物に襲われ、助けに来たツムギとふたりで部屋を飛び出す。ツムギは自分が“鬼”で、物心つく前に別れた母親を探しにきたという。そして、柊から出ている“雪”のようなものは、本当の気持ちを隠す人間から出る“小鬼”で、小鬼が多く出る人間はいずれ鬼になるのだと……。柊はツムギの「お母さん探しを手伝って欲しい」という頼みを断り切れず、一緒に旅に出ることに。しかし、時を同じくして、ツムギの故郷でも事件が起きていてーー。【詳細】映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』公開日:2024年5月24日(金) 劇場公開※同日よりNetflixでも世界独占配信監督:柴山智隆脚本:柿原優子、柴山智隆出演:小野賢章、富田美憂、浅沼晋太郎、山根綺、塩田朋子、斎藤志郎、田中美央、ゆきのさつき、佐々木省三、日髙のり子、三上哲、京田尚子
2024年03月19日長編アニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』を手掛けたスタジオコロリドが、Netflixと共同で9月16日公開予定の『雨を告げる漂流団地』を含む3作品を制作し、Netflixで全世界独占配信することを27日、発表した。スタジオコロリドは、2018年に長編アニメーション映画の第1弾として公開した『ペンギン・ハイウェイ』でカナダ・モントリオールのファンタジア国際映画祭・最優秀アニメーション賞にあたる今敏賞の長編部門を受賞。また、2020年には『泣きたい私は猫をかぶる』をNetflixで配信し、30の国や地域でTOP10入りを果たすなど注目を集めた。今回、9月16日公開の『雨を告げる漂流団地』を皮切りに、全3作品を公開。『泣きたい私は猫をかぶる』の柴山智隆監督が手掛ける新作映画も、2024年に配信される。Netflixが複数年にわたってアニメーションスタジオとタッグを組むのは、初の試みとなる。コメントは以下の通り。■スタジオコロリド代表取締役 山本幸治氏僕たちの目標は、コロリドらしい映画を作ることです。その目標に向かって僕たちなりに努力し前進してきました。これまで日本の映画は世界に出られないことが多かったけれど、Netflix映画という形で世界に発信することが可能になりました。Netflixが世界中のユーザーと日本の映画をつないでくれるのです。この先の10年も、自信を持ってコロリドらしいオリジナル映画を作り続けたい。創業から10年を迎えたこの節目をひとつのきっかけに、僕たちはNetflixとの取り組みを通して、そんな“コロリドらしい映画”を世界中に届けていきます。■Netflix コンテンツ部門 バイス・プレジデント 坂本 和隆日本の長編アニメーション映画の歴史は深く、国内外で何世代にもわたって愛され続けています。『泣きたい私は猫をかぶる』をNetflixで公開後、世界中の視聴者がその独創的なストーリーと高品質なアニメーションに魅了されました。『雨を告げる漂流団地』に続き、2024年以降も新作映画を一緒に開発し、世界中の視聴者へお届けできることを楽しみにしております。Netflixは、引き続き他に類を見ない長編映画ラインナップの充実を目指し、日本国内のアニメーション制作スタジオとの継続的な協業を行ってまいります。
2022年04月27日アニメーション制作会社「スタジオコロリド」が、設立10周年を記念したオンライン映画祭を開催。同社制作の作品7本をYouTubeにて期間限定配信する。温もりのある、親しみやすいビジュアルと、ダイナミックな映像演出を特徴としたアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」。最新作となる映画『雨を告げる漂流団地』は、「Netflix」にて全世界独占配信と劇場公開が予定されている。今回の映画祭では、第42回日本アカデミー賞にて優秀アニメーション作品賞を受賞した初の長編映画『ペンギン・ハイウェイ』や、「Netflix」で配信され世界30か国以上で再生回数の多い映画ランキングTOP10に入った、志田未来、花江夏樹ら出演の『泣きたい私は猫をかぶる』。久保帯人原作の映画『BURN THE WITCH』など、7本を期間限定配信する。『ペンギン・ハイウェイ』さらに期間中は、これまでの作品に出演したキャスト陣からのコメントや、監督・スタッフ描き下ろしのスペシャルイラストなどが、スタジオコロリド公式Twitterアカウントにて公開される予定だ。「スタジオコロリドオンライン映画祭」は5月6日(金)、7日(土)開催。(cinemacafe.net)■関連作品:ペンギン・ハイウェイ 2018年8月17日より全国にて公開© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会泣きたい私は猫をかぶる 2020年6月18日よりNetflixにて全世界独占配信© 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会BURN THE WITCH 2020年10月2日より2週間限定イベント上映(C) 久保帯人/集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会
2022年04月23日『ペンギン・ハイウェイ』『泣きたい私は猫をかぶる』が世界的にも賞賛を浴びたアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」。その待望の新作長編アニメーション映画第3弾『雨を告げる漂流団地』の主題歌&挿入歌は、アニメ作品初のタイアップとなる「ずっと真夜中でいいのに。」に決定、挿入歌の「夏枯れ」PVが解禁となった。本作の主題歌&挿入歌を決定については、「ずっと真夜中でいいのに。」自身初のさいたまスーパーアリーナ単独公演ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」にて大々的に発表。「ずっと真夜中でいいのに。」は、作詞・作曲・ボーカルのACAねを中心に活動する音楽バンドで、YouTube総再生回数6億回超え、チャンネル登録者200万人突破など、若年層から絶大な支持を集めている。また、「ずっと真夜中でいいのに。」がアニメ作品の楽曲を担当するのは今回が初めてとなる。合わせて、書き下ろしの新曲・挿入歌「夏枯れ」PVが公開。ノスタルジーを感じさせるような心地よいリズムに合わせて、海を漂流する子どもたちの様子が描かれている。PVには本作『雨を告げる漂流団地』の制作過程の映像が使用され、より高まるような仕上がりとなっている。「ずっと真夜中でいいのに。」ACAねは、「制作にあたり石田(祐康)監督から物語としての想い/ヒントをいただき、すぐさまメモやら何やら広げながら取りかかると普段の自分とも繋がりました。季節が暮れるたび枯れるたびに想いを馳せてしまうような作品に浸りながら新たな夏の曲を作らせていただきました。(もともと団地の纏うもの懐かしさやたた住まいがとても好きで監督と盛り上がれて嬉しかった)主題歌と挿入歌として交わることができて感謝です。。」とコメントを寄せている。『雨を告げる漂流団地』は2022年、Netflixにて全世界独占配信&全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-雨を告げる漂流団地 2022年、Netflixにて全世界独占配信&日本全国にて公開予定©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
2022年04月16日『ペンギン・ハイウェイ』、『泣きたい私は猫をかぶる』に続くアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」の新作長編アニメーション映画第3弾『雨を告げる漂流団地』の公開・配信が決定。公式スペシャルイベント「TUDUM: A NETFLIX GLOBAL FAN EVENT」にて、“Netflix映画”として製作されることが発表された。小学6年生になった幼なじみの航祐と夏芽は、最近、お互いを避け、ギクシャクしている様子。夏休みのある日、2人の姿は取り壊しの決まった団地にあった。その団地は、2人がかつて育った思い出の場所。航祐たちが団地で遊んでいると、突然不思議な現象に巻き込まれ、気づくとそこは、あたり一面の大海原に。航祐たちを乗せ、団地は謎の海を漂流する――。本作は、小学生たちが取り壊し前の団地に入り込んだことから始まる、夏の終わりの冒険ファンタジー。監督は、『ペンギン・ハイウェイ』にて長編監督デビューを果たし、これが長編映画2作目となる石田祐康。キャラクターデザイン及びキャラクターデザイン補佐も、『ペンギン・ハイウェイ』『泣きたい私は猫をかぶる』の永江彰浩と加藤ふみが再タッグを組む。公開決定と併せて、特報映像とキービジュアルも到着。大海原を漂流する団地や、そこに迷い込んでしまった航祐たちが描かれ、彼らの冒険に期待高まるものとなっている。『雨を告げる漂流団地』特報映像団地に惹かれたという石田監督は「この映画に登場するある少女は団地をかけがえのない場所と思っています。しかし周りは理解できません。オンボロ団地だのオバケ団地だの言いたい放題です。取り壊しさえ始まってしまいます。少女の思いなど、関係なく。きっと誰にでもある大切な場所は往々にして他人にとっては他人事。でもだからこそ”自分だけの特別な体験”がそこにあったはず。そういう個人的な体験を他人に伝えるのは難しい事ですが、そこから飛び出てくる熱量を前にすると、せめて自分だけでも信じてやれないものかとなって…。この映画はそういうことを信じた結果、タイトルにしてしまうほど団地に思いを寄せた作品となりました」と製作の経緯を明かし、「自分にとっても一つの挑戦となります。分かりやすく学校にするなどの意見もありました。苦しんで、悩んで、それでも信じるままに!逆に皆で一緒になって知恵を絞りつつ!…団地を船出させることになりました」とコメントしている。『雨を告げる漂流団地』は2022年、Netflixにて全世界独占配信&日本全国にて公開予定。(cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2021年09月25日映画やドラマ漬けの生活を送っている人にとって、過去の名作をじっくり鑑賞するのというのは楽しみ方のひとつですが、いっぽうで新作を待ちわびるときのドキドキ感も何にも代えがたいもの。そんななか、話題のアニメ『泣きたい私は猫をかぶる』がいよいよNetflixにて全世界独占配信スタートとなります。そこで、本作についてこちらの方にお話をうかがいました。主演を務めた女優の志田未来さん!【映画、ときどき私】 vol. 303新進気鋭のアニメーションスタジオとして注目を集めている『スタジオコロリド』の最新作は、かぶると猫に姿を変えることができる不思議なお面を手にした中学生の少女とクラスメイトの少年との物語。劇中で志田さんは、「ムゲ」というあだ名で呼ばれている主人公・笹木美代の声を担当しています。今回は、アニメファンであり、『借りぐらしのアリエッティ』や『風立ちぬ』などでも声優を務めた経験のある志田さんに、作品の魅力や見どころについて語っていただきました。―まずは、脚本を読んだときの印象から教えてください。志田さんお面をつけて猫になり、好きな人に会いに行くというストーリーだけで、気持ちがワクワクしました。しかも、日常の風景がありつつ、ファンタジーな要素もあるので、すごくおもしろい作品になるだろうなと思いました。―演じられたムゲについては、いかがですか?志田さんすごく明るいけど、ちょっと空回りしている部分もあるのかな、と最初は感じました。でも、実は登場人物のなかで一番大人な考えを持っているキャラクター。想いを寄せる日之出に対する気持ちがまっすぐなところも、すごくステキだなと思います。―そんなムゲと志田さんの声は見事にリンクしていたと思いましたが、演じるうえで意識したのはどのあたりですか?志田さん収録の前に、1日リハの時間を作っていただいたので、そこで監督から「声を作りすぎないように」など、いろいろなアドバイスをいただけたのはよかったです。あとは、普段の私は声が低めなので、少し若々しい女の子の感じを出すように意識して演じました。いままでにない難しさを感じることもあった―今回は、ムゲが変身した猫の太郎のパートも演じられていますよね。これまで声優のお仕事をされたなかでも、動物の役は初めてだったのでは?志田さん台本をいただいたときは、まさか自分が声を入れるとは思ってもいなかったので、リハのときに、監督から「猫の声も練習してきてね」と言われて初めて知り、すごく驚きました(笑)。家でもかなり練習しましたが、かなりハードルは高かったです。―その際、何かを参考にして練習されたのですか?志田さん猫の映像を見たとかではなく、これまで声のお仕事をしたときと同じように、自分の声を録音して聞く、という方法で練習しました。とはいえ、最初に「ニャー」と言ったときは、緊張と恥ずかしさから、正直これでいいのかなと……。でも、監督から「いいね」と言っていただけたので、よかったです。―猫の声以外にも、苦労したシーンはありましたか?志田さんムゲが家族に対して感情を爆発させるシーンがあるんですけど、そこは「もう猫のままでもいいや」と思ってしまうきっかけであり、大切に演じなければいけない場面だったので特に難しかったです。声に感情を乗せるという意味でも、1人で感情を爆発させなければいけないという意味でも苦労しましたが、それを時間内に収めなければいけない難しさも同時にありました。何度か録り直したあと、最後は映像なしで自分の気持ちに向き合って録るという方法にも初めて挑戦したほどです。―これまで声優としていろいろな役を演じてきた志田さんでも、それほど苦労したシーンだったんですね。実際に完成した作品を見たときのお気持ちはどうでした?志田さん映像がとにかくきれいなので、どのシーンも印象的だなと感じました。そのなかでお気に入りを挙げるなら、日之出が太郎を抱きかかえるシーンで見せる崩れた笑顔。本当にステキで、すごく好きです。感謝や好きな気持ちを表すのは大切なこと―日之出くん、カッコイイですよね!ちなみに、日之出くんのようなタイプの男の子がもしクラスにいたら、気になりますか?志田さんなりますよね(笑)。日之出は大人びているように見えて、実はそうではなくて、いろんなことに葛藤があって迷っている子ですから。あと、ムゲに見せるクールな感じと、太郎に見せる優しい顔の表情にもギャップがあって、かわいいなと思います。―ただ、日之出くんのように、なかなか思っていることを口に出さない男性というのはどうですか?志田さん私は自分のことでいっぱいいっぱいですし、気持ちを察したりとかもあまりできないので、できれば口に出してほしいなと思います。やっぱり言葉にしないとわからないこともありますから。―そういう意味でも、この作品で思っていることを口に出すことの大事さを改めて感じましたか?志田さんそうですね。ムゲのように本当は違うのにマイナスの方向に受け止めてしまったり、自分のなかだけで考え込んでしまうこともありますが、感謝を伝えたり、好きだという気持ちを表すことの大切さを今回、改めて感じました。―ムゲも一見言いたいことを言えているようで、本当に言いたいことは言えない葛藤を抱えていました。志田さんは言いたいことは言えるタイプですか?志田さん私も中学生のときはムゲのように言えなくて、モヤモヤが自分のなかで募って、家族に当たってしまうこともありましたが、いまは結構言いたいことは言えてると思います。―年齢や経験を重ねたのもあると思いますが、そういうふうになれたきっかけはありますか?志田さん自分が思っていることを言ったことによって、必ずしも嫌われるわけではないと考えられるようになったことがきっかけだったかもしれません。学生のときはみんなからわがままだと思われるのが嫌で言えなかったんですけど、周りの人たちが自分に対してしっかりと愛を持って接してくれていることがわかったので、それからは自分の気持ちもきちんと出せるようになりました。家族や友達と話しているときに幸せを感じる―それはステキな気づきですね。ちなみに、学生時代はどんな子でしたか?志田さんムゲのようにやんちゃな子というよりも、わりと淡々と目の前のことをこなしていくような感じだったかなと。忙しかったのもありますが、おそらく自分のやりたいことがまだあまりわかっていなかったのかもしれないですね。そのあと学校を卒業して、学生という肩書に甘えられなくなってから、心境が変わったところはあったと思います。―なるほど。それでは、タイトルの『泣きたい私は猫をかぶる』にかけておうかがいしますが、志田さんが泣きたいときはどうやって乗り越えていますか?志田さん私は泣きたいときは、泣きますね(笑)。こんなに悲しくてつらいんだというのを誰かにわかってもらいたい気持ちがあるので、家族の前で泣くことはあります。―それを家族が受け止めてくれることで、嫌な気持ちも解消されるんですね。志田さんそうですね。もともとすごく泣き虫だというのもありますが、誰かにわかってもらえて、言葉をかけてもらえれば安心できますし、それによって周りに支えられていると感じられて、自分自身の気持ちを持ち上げることもできるので、あまりひとりで抱え込んだりはしないです。―では、ムゲのようにお面で何かになれるとしたら、何になりたい?志田さんいまは鳥になって空を飛びたいです。自由に動き回りたいので(笑)。―確かに、空なら何の心配もないので鳥はいいですね!そんなふうに、こういう状況だからこそ、心境の変化があると思いますが、いま一番幸せを感じる瞬間は?志田さんなかなか会えない家族や友達とテレビ電話をしているときに感じます。これまでは、必要なことがあるときに連絡するのが多かったですが、最近は今日あったことを話したり、近況報告をしたり。そういうことを言い合えることが幸せですし、目の前にはいなくても、つながっている感じがするのもいいですよね。家にいる時間で自分を知ることができた―そうですね。そのほかに、ストレスが溜まったときにしていることといえば何でしょうか?志田さんあまりストレスは溜めないほうなのですが、天気のいい日にベランダに椅子とテーブルを置いて、外でご飯を食べて、カフェのテラス席にいるような気分を味わったりしていました。そういうことが、もしかしたらストレス解消につながっているのかもしれないです。―体を動かすのもお好きだそうですが、健康のために心がけていることはありますか?志田さん友達がトレーナーをしていて、筋トレメニューを送ってくれたので、それを一生懸命黙々とひとりでこなしています(笑)。そうすると、けっこう汗をかきますし、家の中にいても運動している感覚にはなりました。―運動は大事ですよね。新たに始めたことやハマっていることもあれば、教えていただきたいです。志田さん掃除を念入りにするようになりました。いままで手行き届かなかったぶん、意外と汚れてるところがあったので……。おかげで家がすごくきれいになって、居心地もよくなりました。あとは、いままでまったくしてこなかったお菓子作りを始めました。ケーキやクッキーを焼いたりしていますが、いつかオシャレなお菓子を作れたらいいなと思うので、もう少し極めてみようかなと。そんなふうにいままでできなかったこともできるようになったという意味では、自分を知れる時間になったと感じています。多くの人の癒しとなる作品であってほしい―それでは最後に、作品を楽しみにしている方々へ向けてメッセージをお願いします。志田さん今回は劇場での公開が延期になり、Netflixでの独占配信となりましたが、映画は観てくださる方がいてはじめて完成するので、もともとの公開日に近い日程でみなさんにお届けできることをうれしく感じています。しかも、日本だけでなく全世界での配信。海を越えてひとりでも多くの方にご覧いただけるのは、光栄なことでもあります。人と人とのつながりや人の優しさ、愛といったことについて描いているので、みなさんにとって癒しになればいいなと思いますし、大切な方と一緒に観ていただきたい作品です。あとは、映像のきれいさとムゲが猫になったときのかわいさも、ぜひ楽しんでください。インタビューを終えてみて……。癒し系の笑顔が印象的で、どんな質問も気さくに答えてくださる志田さん。今回苦労したという猫の声は、誰もがキュンとしてしまう悶絶級のかわいさです。さすが志田さんと言わずにはいられないほど、はつらつとしたムゲの声とのギャップとともに、ぜひ注目してみてください。日常生活で沸き起こる感情に共感!思春期だけでなく、大人になっても、泣きたいときやすべてを投げ出したくなってしまうときはあるもの。そんなときにこそ、自分に素直になって、相手に気持ちを伝える大切さを教えてくれる本作は、きっと新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれるはずです。ストーリーいつも明るくて、陽気な中学二年生の美代。空気を読まない言動で周囲を驚かせ、クラスメイトからは「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれていたが、実は周りに気を使い、自分の感情を抑えて日々を過ごしていた。そんなムゲが、熱烈に想いを寄せるのは、クラスメイトの日之出賢人。毎日果敢にアタックをするも、まったく相手にしてもらえないままだった。ところが、ムゲにはある秘密があった。それは、かぶると猫に姿を変えることができるというお面で猫の太郎となり、日之出の家に通っていること。そんな生活を楽しんでいたムゲだったが、徐々に猫と自分との境界があいまいになってしまうことに……。引き込まれる予告編はこちら!作品情報Netflixアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』6月18日(木)より、Netflixにて全世界独占配信出演:志田未来花江夏樹小木博明山寺宏一監督:佐藤順一、柴山智隆脚本:岡田麿里企画:ツインエンジン制作:スタジオコロリド製作:「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員© 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
2020年06月17日気鋭のアニメ制作会社「スタジオコロリド」。近作としては、同スタジオにおいて最長の劇場アニメーション『台風のノルダ』を制作し、少年たちの友情の物語と、タイトル通り「台風」を正面から描いた、迫力ある風雨の表現などで注目を集めた。同スタジオでは現在、デジタル環境を積極的に取り入れてアニメを制作している。スタジオ内を見回せば、液晶ペンタブレットが鎮座したデスクや、PC上で描いたレイアウトのプリントアウトなど、"アニメ制作会社"らしからぬ風景が目に留まる。まだまだ紙と鉛筆が大きな存在感を見せ、今まさに「デジタル化」の過渡期を迎えているアニメ業界において、「スタジオコロリド」は、いち早くデジタル環境を整備している制作会社のひとつだ。そんな同社がデジタル化にかける思いについて、『台風のノルダ』で監督を務めた新井陽次郎氏と、同社でデジタル整備を担当している栗崎健太朗氏にお話を伺った。最終回となる第三回は、両名が制作に参加した劇場アニメーション『台風のノルダ』の表現、そしてこれからアニメ業界を目指すにあたって大切なことをお話いただいた。○スタジオコロリドの制作環境――現在のコロリドの制作環境について、公開できる範囲でお教えいただけますか?新井:コロリドの場合、原画・動画の工程を「Stylos」で作業していて、原図に関しては、同じセルシスの「CLIP STUDIO」で描いています。使い分けているのは、Stylosで描く線が整ったしっかりとしたものになるので、鉛筆でするように薄く描いたその上から濃く描き足したりするなど、イラストを描くような感覚で描きたいからです。栗崎:CLIP STUDIOを使われてる業界関係者は多いと感じています。また、CLIP STUDIOにアニメーション機能が搭載されるということで、弊社もベータテストに参加しました。新井:弊社では基本的にStylosで制作していますが、CLIP STUDIOだけでなく、新しいアニメーション機能を栗崎さんが触って確かめたりしているので、他にいいソフトが出てきたとなれば、導入する可能性もあるかと思います。ですが、どんなにいいソフトでも、スタッフの一部だけが使えるというのはすごくもったいない感じがします。後から入った方も含めて使えるようなソフトでないと教えることもできないですし。一番望ましいのは、誰でも使えて、誰でも買えるようなソフトであって、スタジオ全体がそれを共有できるという状況です。そういう点で言うとやっぱりStylosはいいと思うんですよね。みんなでつくるというところに特化しているので。栗崎:とはいえ、今のワークフローが完璧というわけでもないので、改善は検討し続けていきます。たとえばCLIP STUDIOとStylosをまたいで作業すると、CLIP STUDIOで書き出した画像をStylos専用の拡張子にする作業が発生することがあって、紙に印刷してまとめるほどのことではないものの、手間が発生してしまいます。なので、レイアウトの描画からアニメーションの動き付けまでがひとつのソフトでできるという意味で、CLIP STUDIOのアニメーション機能に期待しています。業界全体としても、CLIP STUDIOのアニメーション制作への対応には興味を持っている人が多いです。ですが、Stylosは今のコロリドのワークフローにすごくマッチしているソフトなので、両者がうまくかみ合って働くような状態になればと思っています。○台風のノルダで見せた表現の裏側――ここまでスタジオコロリドでの制作環境についてお聞きしてきましたが、最後に『ノルダ』関連のエピソードをお伺いします。冒頭でノルダが屋上に立ち尽くして雲を見つめるシーンがかなり印象的でしたが、同作の中でデジタルツールを効果的に使われた場面やエピソードがあれば教えていただきたいです。新井:今挙げていただいた冒頭のシーンは、まさに一番はじめにCLIP STUDIOでキャラクターデザインの方に描いてもらったカットですね。あの場面のレイアウトをお見せすると、いろんな方に驚かれます。本当にデジタルで描いたのかと。それくらいいわゆる手描きの質感を出せた1枚で、CLIP STUDIOでのレイアウト制作を紹介する際の定番の作例になりつつあります。あの絵がきっかけで、原画の方たちがCLIP STUDIOを触るようになったりもしました。また、この作品は学校が舞台で、建物を描くことが多くあったので、CLIP STUDIOのパース定規が大変便利でした。窓のサッシはパース定規で引くことができて、これはもう手描きには戻れないと言っていた人もいましたね。――多くの場合、アニメ作品は晴れているシーンが基本だと思うのですが、本作は「台風」とタイトルにある通り、雨風ですとか光と影が効果的に描かれる場面が多くありました。作画の労力はいかばかりかと感じるのですが、どのように実現されたのでしょうか?栗崎:ノルダに関しては、おっしゃる通り、アニメで表現すると"えらいことになる"要素をふんだんに入れています。台風に見舞われ、常に髪がなびいているような状況なので、カットごとになびき方が違ったりすると、見た時に悪い意味で引っかかる部分ができてしまいます。こうした「なびき」の動作にこだわれるのは、やはりデジタルならではですね。ラフを描いて再生して、調整を繰り返す。そういうところで、利点を発揮できたかと思っています。――最後に、今まさにデジタル化の過渡期にあるアニメ業界にこれから進もうとしている方に対して、今、デジタルを活かしながら作品制作をされているお二人からのメッセージをお願いいたします。栗崎:まずは色んなものを見て、いろんなものを描いてみることだと思います。業界に入ったら、ある種「そればっかり」やっているという状況になってしまいがちですし、コロリドの社員同士で日頃話していると、結構、いろんな経験をされている方が多いです。もちろんアニメを見ることも大切ですが、それ以外のことにも興味がある人の描くアニメーションは、すごく説得力があります。物の見方を広げて、「こういうものを作りたい」という視点を得てから、それに対してはアナログでやった方がいいのか、デジタルでやったほうがいいのか、適した方法を考えるのがいいと思います。新井:栗崎さんの言うとおり、デジタルかどうかっていうのは単なる手段なので、アニメを作ろうと思う人たちの「引け目」が無くなることが一番大切だと思っています。僕が見てきた限りでは、個人差は当然ありますが、紙でずっと描いてきた人の方が、デジタルにとっつきにくい印象を持っているように感じていて。先入観だけで「自分はアナログでしかやれない」と決めつけてしまうと、覚えが遅くなってしまったり。逆に、デジタル作画をやってきた人と話してみると、「鉛筆で絵が描けない」ということに引け目をもっていたりもする。なので、アナログからキャリアを始めた方は"ちょっと"デジタルをやってみたらいいと思いますし、逆にデジタルから作画を始めた人は、手描きをやらないと…という後ろめたさは置いておいて、デジタルでとことんやってみればいいと思います。「自分ができないこと」に負い目を感じる必要はなくて、もっと「自分が今できること」を強化していく方に向けていけたらいいですよね。○劇場アニメーション『台風のノルダ』現在『台風のノルダ』の「Blu-ray豪華版」および「DVD通常版」が発売中。映像特典は同様で、共通の封入特典は特製ブックレット。「Blu-ray豪華版」には特製三方背ボックス、オリジナルサウンドトラックCD、アートブック01(絵コンテ集)、アートブック02(美術・設定・原画集)が付属します。
2015年10月30日気鋭のアニメ制作会社「スタジオコロリド」。近作としては、同スタジオにおいて最長の劇場アニメーション『台風のノルダ』を制作し、少年たちの友情の物語と、タイトル通り「台風」を正面から描いた、迫力ある風雨の表現などで注目を集めた。同スタジオでは現在、デジタル環境を積極的に取り入れてアニメを制作している。スタジオ内を見回せば、液晶ペンタブレットが鎮座したデスクや、PC上で描いたレイアウトのプリントアウトなど、"アニメ制作会社"らしからぬ風景が目に留まる。まだまだ紙と鉛筆が大きな存在感を見せ、今まさに「デジタル化」の過渡期を迎えているアニメ業界において、「スタジオコロリド」は、いち早くデジタル環境を整備している制作会社のひとつだ。そんな同社がデジタル化にかける思いについて、『台風のノルダ』で監督を務めた新井陽次郎氏と、同社でデジタル整備を担当している栗崎健太朗氏にお話を伺った。第二回は、アナログ作画の「味」の消失など作画面の問題のほか、デジタル化による作画「以外」のワークフローを考える重要性を語っていただいた。○原画はあくまで「アニメの素材」――作画のデジタル移行にあたって、これまで取材した他の事例で、アナログならではの「線画の味」が話題になることがあったのですが、デジタル制作を今本格的にやられているお二人から見て、アナログ製作のときの線と、今デジタルで作られている線の「味」というか、見栄えや雰囲気に何か大きな変化はありましたか?新井:基本的に、原画はアニメを構成する「素材」のひとつだと思っています。紙に描かれた鉛筆の線って、すごくいいんですよね。でも、その原画が描かれた後は、動画さんがトレースして間の動きの部分を描いて、次はスキャンされてデータになって、二値化(アンチエイリアスをかけない、白と黒のみの線に変換)されるんです。そうなると、結果的に原画マンが紙の上で表現した描線のノイズ感や情報量というのは、その後の工程でそぎ落とされて、完成した作品にはなかなか残らないんですよ。今の日本の商業アニメの作り方では、最終的にその「味」はなくなってしまうものなので、その土俵の上で、原画に芸術性を求める必要はないと思っています。――鉛筆で描くアナログ制作では、やはり絵に対する思い入れが強くなりがち、という面もあるのでしょうか?新井:それはあると思います。最近はアニメの原画展も多く行われるようになってきて、一枚絵としての原画が見られる機会も増えていますし、目にするとやはり作品としてのすごみも感じます。デジタル作画のメリットは、すぐに動きをプレビューできるという事です。一枚の絵の完成度を上げるというより、流れで「動きの面白さ」を追求していけると思います。また、デジタル制作でも線のノイズを表現することはできると思っています。鉛筆の筆感みたいなものを表現する作風でも、例えばTVPaintというアニメ制作ソフトがあるのですが、それを使うと手書きのようなラフな描線も使えます。(アナログ線画のノイズを生かす工夫をするより)ノイズ感をデジタル作画で描いてしまったほうが、手間が少なくなるだろうと想定しています。――デジタル制作を推し進めているスタジオコロリドですが、現状、アナログ制作とデジタル制作の割合はどれくらいですか?新井:ケースバイケースなので『ノルダ』に限定してお話すると、原画に関して、半分以上は社内でデジタル制作したのですが、動画に関しては、6~7割がアナログ制作でしたね。栗崎:社内では動画もほぼデジタル制作していたのですが、『ノルダ』は弊社の作品の中でも一番尺の長い作品で、他社との連携が不可欠でした。デジタルで動画制作をしている会社にも頼んではいましたが、総数がデジタルで受注いただける枚数をはみ出る計画になったこと、また他社ではアナログ制作の方が多いということで、デジタルで作った原画を紙に印刷し、アナログ制作で動画を作っていただくことになりました。――当然ながら原画より動画のほうが総枚数は多くなるので、個人的に動画からデジタル化が進むような流れもあるかと考えていたのですが、まだまだ動画制作では紙の方がメジャーという状況でしょうか。栗崎:そうだと思います。新井:とはいえ、アナログ制作からデジタル制作に切り替えるのは難しいですよね。デジタル制作に変えるとなると、慣れもともかくとして、もろもろの機材やソフトをそろえないといけない。コロリドはそういう経済的なリスクを押してでも積極的にデジタル制作を進めているのですが、多くの場合、ここまで思い切れないと思われます。現状できあがっているワークフローをいきなり変えるって、難しいんじゃないかなと思います。○アナログ/デジタルの混在は、"誰か"に苦労を強いる栗崎:ただ、僕は現状のアナログとデジタルが入り乱れた制作環境は、到底良い状態とは言えないと思っています。例えば原画をデジタル作画で描いた場合、当然ながら「原画をスキャン」する工程は無くなります。ですが、動画を外部の企業にお願いするときには先ほどお話しした通りアナログ制作で請けていただくことも多く、そうなると"デジタルの原画を印刷して、穴を空けてタップを付けてまとめる作業"が発生します。この例だけでなく、アナログ制作を挟むことによって、デジタルで描いた利点がなくなり、誰かが苦労しなければならないんです。一貫してデジタルで制作できれば、こうした作業も発生せず、アナログからデジタルへ作業を移す際に発生するスキャンデータのゴミを取る作業、指定の色えんぴつの線を消す作業などもなくなります。――デジタル原画のデータを紙に出力するというのは切ないというか、おっしゃるとおりもったいない感じがします。ところで、制作進行の方が原画・動画の紙の束を回収するというアニメ業界の慣例がありますが、コロリド社内に限って言えば、そういった状況は少ないということでしょうか。栗崎:コロリドに入って1カ月くらいの制作進行の方を例に挙げると、素材の紙を運ぶことはほぼ無いですね。メールやデータ転送ツールで、原画や動画といった素材の回収を行っています。その方は別の会社でも制作進行を務めていたのですが、毎日外回りに出て素材を運んで、夜中に車の中で待機して仕上がりを待つこともあったそうなので、今と比べて負担は大きかったと思います。デジタル制作のお話になると、やはり作画のセクションに注目が集まるのは当然と思うのですが、そこだけがパワーアップするのではなく、作画工程をデジタル化することで、アニメのワークフロー全体が変化していくことが重要だと考えています。また、アニメの現場は多くの人が仕事を分担して動いていますが、細かく分担されているが故に、自分の領域の仕事を終えたら、素材がその後どうなるかがわからない状況は多いです。コロリドではいろんな工程のひとたちと密に話し合ったりする機会が多く、自分の仕事が終わったら、次の工程の手伝いに入れるスタッフが多くいます。この会社に移ってきて、「自分は自分の仕事だけやっていればいいんだ」という意識ではなく、「この作品を作っているんだ」という意識に変わったのは、すごく大きいですね。○他社との連携における現状――「絵を描いて終わりではない」というご指摘は、とても重要な点だと感じます。次に、業界全体の現状について、デジタル化への取り組みは個別の企業ごとに異なっているのでしょうか? 特に大作では連携されることも多いので、各社連携のためのルール決めみたいなことも行われているのでしょうか?新井:耳にする限り、どのスタジオも使っているソフトが全く違うので、そこを統一するのは難しいと思うんです。そこが今、問題になっているところだと思います。グラフィック業界で言えばPhotoshop、Illustratorみたいな、デファクトスタンダードといえる存在が現状ないですね。栗崎:ソフトの違いも難しい点のひとつですが、同じソフトを使っていたとしても、会社ごとに仕上がり、データ作成時の手順やルールが違うという問題もあります。しかし、テレビシリーズや劇場向けの長編を作ろうものならば連携は必須になるので、各社のいい所を活かしつつ、共通のルールが見つかればという段階です。そういう意味で、デジタル制作のフローを「企業秘密」にするより、みんなできちんとしたワークフローを作りあげるという風な流れにしたいですし、そうできたら理想的ですよね。
2015年10月29日気鋭のアニメ制作会社「スタジオコロリド」。近作としては、同スタジオにおいて最長の劇場アニメーション『台風のノルダ』を制作し、少年たちの友情の物語と、タイトル通り「台風」を正面から描いた、迫力ある風雨の表現などで注目を集めた。同スタジオでは現在、デジタル環境を積極的に取り入れてアニメを制作している。スタジオ内を見回せば、液晶ペンタブレットが鎮座したデスクや、PC上で描いたレイアウトのプリントアウトなど、"アニメ制作会社"らしからぬ風景が目に留まる。まだまだ紙と鉛筆が大きな存在感を見せ、今まさに「デジタル化」の過渡期を迎えているアニメ業界において、「スタジオコロリド」は、いち早くデジタル環境を整備している制作会社のひとつだ。そんな同社がデジタル化にかける思いについて、『台風のノルダ』で監督を務めた新井陽次郎氏と、同社でデジタル整備を担当している栗崎健太朗氏にお話を伺った。第一回の今回は、アナログ作画からデジタル作画へと移行した両名の体験談を中心に聞いていく。――最初に、普段お二人が担当されているセクションについてお聞かせください。新井:作品ごとに役割は異なりますが、僕は主に原画、監督(演出)などをやらせていただいてます。栗崎:私は原画を描くこともありますが、主に動画(原画と原画の間を描く)、動画検査(最終的な動きのチェック)、そしてデジタル制作ワークフローの選定などを行っています。弊社では、セルシスの「RETAS STUDIO(レタススタジオ)」に収録されているデジタル作画ツール「Stylos(スタイロス)」を中心に制作を行っているのですが、例えば新作を作るときに、今回はどういう構成のファイルで進めようかなど、そういった部分を決めたりしています。また、最近はさまざまなデジタル作画ツールがリリースされているので、それらについて、商業アニメーションのワークフローに組み込むことができるかを見たりしています。――お二人はいつごろからデジタル作画に取り組まれているのでしょうか?栗崎:約3年ほど他の会社で動画を描いてまして、そのときはアナログ制作でした。コロリドに入って最初に参加した作品が『陽なたのアオシグレ』で、最初は手書きで動画をやっていたんですけれど、後半に激しいアクションシーンがあり、そこはデジタル作画を主体に作ろうということになり、デジタルに移行しました。石田さん(同社の石田祐康氏)の指導のもと、液晶ペンタブレットの使い方から教わりました。――新井さんはいつ頃からデジタル作画に取り組んでいたのですか?新井:僕も、コロリドに来てからですね。それまではアナログ人間だったので。そもそもデジタルという部分に抵抗があったのですが、一度やってみたら、一週間くらいでそれなりにできるようになりました。――かなりのスピードで習得されたんですね。新井:ある程度は、1週間から2週間くらいでできるようになると思います。栗崎:鉛筆と液晶ペンタブレットは全然違うので、アナログから移行して"同じように"すんなり描ける人はほぼいないんです。なので、「デジタルではどうしたらうまく線が引けるか」という感覚を見つける時間が、最初は必要になります。「これなら行ける」というようになるまでが、だいたい1~2週間だと思います。とはいえ、新井さんの1週間は早いケースですけど、平均的に2週間ぐらいでみなさん「コツ」をつかんでいるのではないかな、と思います。――新しくコロリドに入ってくる方は、やはりここにきてデジタル制作を習得する方が多いのでしょうか。栗崎:そうですね。特に、『台風のノルダ』(以下、ノルダ)の時はその傾向が強かったです。新井:『ノルダ』の時はアニメーター経験者に参加していただいたので、それまで「紙」で描かれてきた方がほとんどでした。社内で参加いただける方に関しては、デジタル作画をいちから勉強していただきました。一部、今回の作品から新人として採用した、アニメーターの経験がない方もいました。栗崎:先ほどお話ししたように、デジタル制作を行っていると「これは紙とは別物なんだな」と実感する人も多くて、紙は紙の、デジタルはデジタルのやり方がある、と割り切らなければならない部分がほとんどです。各人が独自に自分のコツみたいなものを作って行くものなので、アナログ制作とデジタル制作を行ったり来たりするとその「コツ」を忘れてしまうこともあり、あまりデジタル作画とアナログ作画の間を行ったり来たりするのはオススメしません。
2015年10月28日