『舞妓Haaaan!!!』以来2年ぶり、“家族”の物語『なくもんか』で監督・水田伸生、脚本・宮藤官九郎と再びトリオを組み、2作目の映画主演を飾った阿部サダヲ。前作では稲妻のようなハイテンションな笑いを届けてくれた彼が、今回スクリーンで存分に見せるのは、“笑い”とその裏にある“泣き”。好評中の劇場公開を経て、あらためて阿部さんにとっての“笑い”、そして今年一年をふり返ってもらった。阿部さんが『なくもんか』で演じるのは、お惣菜屋の店主・下井草祐太(山ちゃん)という、どこまでもお人好しな男。前作とは打って変わって、主役でありながら一歩“引いた”役というのは新境地となったという。「今回の役のタイプとかポジションって、鬼塚公彦(『舞妓Haaaan!!!』)が押していくタイプだとしたら、山ちゃんは引いていく、受け入れるタイプだから、全然違うんですよね。鬼塚という人は誰の意見も聞かないですから(笑)。そういうお芝居はこれまで宮藤さんの脚本ではあまりなくて、『木更津キャッツアイ』とか『タイガー&ドラゴン』とか突飛なことをばーっとやる役が多かったんですけど、今回はとにかく人が言うことを全部飲み込んで生きてきた役。そこをどうやって演じるかは悩んだところでもあるし、面白かったところでもありますね。とは言っても、『舞妓Haaaan!!!』みたいにテンション高いものが好きな方もいるし、僕もそういう所をしまい込むのは好きじゃないので、出せるところは出しました」。家族ならではの喜びや悲しみが物語の軸となる本作。悲しい過去を隠すように常に笑顔を振りまいて生きる、祐太の二面性を演じる上でどのようなアプローチをしていったのだろうか?「(弟役の)瑛太くんの台詞で『あいつは笑顔だけど、1ミリも笑ってないんだよ』というのがあるけど、本当の笑顔も本当の泣きも、素を見せてない人ということでずっとやっていかなきゃいけないんですよね、この役って。監督にも、最後のエンドロールでの笑顔が本当の笑顔になればいいって言われていたので、見せ泣きみたいなところから始めていって、最後に本当の涙が出てくればいいんじゃないかと。でもやっている最中は、時間も限られていたので難しかったですね」。「大人計画」を始めとする舞台に映画、TVドラマで、唯一無二の存在感を発揮し、俳優としての才覚を示してきた阿部さん。その“笑い”のセンスはどこから生まれてきたのだろうか?「物心ついて一番よく見てたのは『ひょうきん族』ですね。小学生のとき、ちょうど漫才ブームがあってよく見てました。元々、亀有の方で生まれたので、(ビート)たけしさんとか、下町出身で身近な感じがして、それまでは漫才師というとちょっと遠い存在だったのが、地元のネタとかが出てきて嬉しかったというか。毒舌な笑いというのも新鮮でしたね。僕、ほとんど漫画を読まないので、テレビからなんです。とんねるずとかダウンタウン、ウッチャンナンチャンとかのコントが好きでした。あと、小さい頃に映画館でアニメの『スヌーピー』とか観て笑ってましたね。何で笑ってたか覚えてないんですけど、チャーリー・ブラウンがいつもダメだなーって(笑)」。では、いまの阿部サダヲの“笑い”を支えているものは何なのだろうか?「“勘違い”をするというのが、僕の中で一番大事にしていること」と、阿部さんは話す。「勘違いをすることが面白かったり、役者としても勘違いしてないと演じるのが無理なときもあるんですよね。だからイイ男風の役のときは、自分を180cm位の男だと勘違いしないと出来なかったりするときもありますよ(笑)。今回もハムカツ作るのにいろんな店を見に行ったりしたけど、『いらっしゃいませー』っていう言い方一つ変えるだけでちょっとカッコイイみたいな。そういうのが積み重なってる気がするんですよね。成り切ってる店員さんのはやっぱカッコイイじゃないですか。そういうのが僕は好きなんです」。時に脚本家と俳優として、時にミュージシャン同士として、宮藤さんと絶妙なコンビネーションで新鮮な芝居と音楽、そして笑いを届けてきた阿部さん。映像作品では久しぶりのタッグとなった本作然り、二人ならではというものに対する期待は確実に高まってきている。そこで改めて聞きたい。阿部さんにとって宮藤作品とは、どんな存在なのだろうか?「元々、僕が俳優として知られるようになったのは宮藤さんの作品のおかげもあるし、原作にないような役を描いてくれたりして、僕のプロデュースのようなことをしてくれた気がするんです、すごく。だから僕は宮藤さんが書く台本を、その台本がおもしろいっていう芝居で、いままで知らなかった方にも伝えていきたいというのが大きいです。絶対におもしろいですよ、という芝居が出来る自信があるんです。だっておもしろいですもん。やってそうでやってない題材とか、いらなそうでいる台詞とか。それが後で繋がってもいくんだけど、無駄なことがないと面白くないじゃないですか。最近は主演もやらせていただいてますが、筋にいらない役とかも結構あるんですよ。でもその人がいないといけない、というのが宮藤さんの愛情なんでしょうね」。2009年だけでも、本作以外に映画では『ヤッターマン』や『ぼくとママの黄色い自転車』で父親役という新たな役に挑戦、さらに宮藤作・演出の「メカロックオペラ R2C2」ではロック+演劇という表現の場を広げた阿部さん。最後に、今年一年をふり返ってみての心境を聞いてみた。「『R2C2』は、昔からグループ魂でコントやってた頃からロックオペラというのをやりたくて、やっと形に出来たので嬉しかったですね。昔は宮藤さんのギター1本で、アンプもこれくらい小さかったのが、あんな大きい規模で出来たのだから、すごいなと。映画も3本も出れるなんて、昔はそんなこと思ったこともなかったから幸せですよね。いまふり返ってというのはないのですが、この状態が続けばいいなと…、で、ちょっと劇団公演が増えればいいな(笑)」。■関連作品:なくもんか 2009年11月14日より全国東宝系にて公開© 2009 「なくもんか」製作委員会■関連記事:クリスマス目前!「聖夜を一緒に過ごしたい俳優」1位を岡田将生&玉木宏が二分!報知映画賞『沈まぬ太陽』に栄冠!渡辺謙、瑛太、松たか子、岡田将生ら受賞阿部サダヲ、テンション“アゲアゲ”でグッズ販売員に「24時間テレビみたい」“地球滅亡”予告、やっぱり気になる?『2012』北米初登場1位!ストレス解消法、阿部サダヲは「波乗り」瑛太「水換え」に、竹内結子は「叫ぶ!」
2009年12月16日脚本・宮藤官九郎と監督・水田伸生、主演・阿部サダヲの大ヒットコメディ『舞妓 Haaaan!!!』チームが再タッグを組んだホームコメディ『なくもんか』が、11月14日(土)に公開初日を迎えた。この3人に加え、瑛太、竹内結子、塚本高史、いしだあゆみら豪華キャストが登壇し、笑いあふれる舞台挨拶が行われた。「今日は頑張ってハムカツ色のスーツで来ました!」とこんがり黄金色のスーツにハム色(ピンク)のシャツにソース色(茶)のネクタイをあわせ、気合たっぷりに登場した阿部さん。ハムカツとは、阿部さん演じる祐太が切り盛りする惣菜屋「デリカの山ちゃん」の名物。人情味あふれる商店街が舞台となる本作だが、それに因んで「商店街でお店を開くとしたら?」と尋ねると、「間違いなくハムカツ屋で。ハムカツオンリーで行こうと思います!」とすっかりハムカツに夢中。ほかの登壇陣にも同じ質問が回ったが、瑛太さんは「文房具屋」、竹内さんは「じっくりお茶を飲みながら読める本屋」とのこと。挨拶時からしきりに「インフルエンザが流行ってるので」と繰り返す塚本さんはやはり「薬局」、宮藤さんは「喫茶店。僕が喫茶店にいることが本当に多いので、自分で作っちゃおうと」と、思い思いに理想のお店を挙げていった。そんな中、大ベテランのいしださんは、目を輝かせながら「お惣菜屋さん!」。「高齢の方が簡単に買いに来れるような。私、おかず好きなんです」と告白し会場を沸かせた。続いて、劇中で描かれる祐太のちょっと変わったストレス解消法に因んで、それぞれのストレス解消法が披露された。阿部さんは「僕はストレスはたまらない方なんですが、強いて言えば最近始めた波乗りがいいかな。すげえいい波来てるぜ〜」と嘘八百、すかさず周りから「焼けてないじゃん」とのツッコミが。一方、瑛太さんは「熱帯魚の水換えです。水を換えた次の日は、グッピーのメスは子供を産む確率が高いんです」と淡々と語り笑いを誘った。対照的なストレス解消法を披露したのは竹内さん。「前はよくタオルを折って折って、そこにワーって思い切り大声出したりしてたんですけど」と意外な一面を明かしたが、これが宮藤さんのツボに入ったようで爆笑。自身も思い当たることがあったらしく、「僕もパソコンがよくフリーズするので、そのときはまずワーって叫んでどうしようか考えますね。なぜ保存しなかったんだという自分への怒りです」と明かした。水田監督は「一人で映画館に行ってスクリーンに集中すると嫌なことがふっとなくなる。でもこうやって大勢で観るのも素敵ですよね?」と半ば強引に促すと、会場から盛大な拍手が贈られた。そして最後の記念撮影では、巨大ハムカツのパネルが登場し、阿部さんが一同を代表して、ソース色のペンキで「なくもんか大ヒット!!」という筆入れを行った。観客とキャストが見守る中、時間をかけて丁寧に描かれたタイトルは見事な出来栄え。これを見て「次はペンキ屋でやりますか(笑)?」と、さっそく水田監督から宮藤さんに次回作のお誘いも。『なくもんか』は全国東宝系にて公開中。■関連作品:なくもんか 2009年11月14日より全国東宝系にて公開© 2009 「なくもんか」製作委員会■関連記事:聖なる夜を一緒に過ごしたい俳優は?「MTV」Ituneカードを10組20名様にプレゼント笑って泣けるホームコメディ『なくもんか』試写会に25組50名様をご招待竹内結子が阿部サダヲに“襲われ”て股間蹴りをキメた!?『なくもんか』会見
2009年11月14日映画『なくもんか』の完成披露会見が10月1日(水)、グランドハイアット東京で行われ、ヒロイン役の竹内結子が主演の阿部サダヲを相手に股間蹴りのアドリブ演技をキメたエピソードを明かした。本作は、脚本・宮藤官九郎、監督・水田伸生ら人気作『舞妓 Haaaan!!!』のスタッフが再タッグを組んだホームコメディで、ハムカツが名物の惣菜屋の二代目店主・祐太(阿部さん)とその妻・徹子(竹内さん)、祐太の生き別れの弟・祐介(瑛太)ら“家族”の悲喜こもごもを描く物語。阿部さんは夫婦役で初共演となった竹内さんの印象について司会者から聞かれると「撮影の初日がプロポーズのシーンだったんですが、激しいプロポーズで竹内さんの蹴りが股間の方に。そうするとノッてきますよね!男優的には…」と目尻を下げてニヤニヤ。隣で吹き出しつつ聞いていた竹内さんは、台本に股間蹴りとあったのか?との問いに「いえ、ありません。阿部さんがもの凄い勢いで覆いかぶさってきたものですから、何とか身を守ろうとしまして」とアドリブだったことを告白し、宮藤さんら関係者、共演陣、取材陣を爆笑させた。阿部さんと兄弟という設定の瑛太さんは「最近共演したタレントさんとこの映画の話になり、『阿部さんと似てるよね』と言われました。何人かの方から言われたんです」と報告。阿部さんは「ホント?似てる?どのあたり?さっき鏡見たけどやっぱり似てないよ。俺、直毛だし…。僕は誰にも言われていないなぁ」と一瞬しょんぼり。だが「でも、瑛太さんといると、温度が好きでとても居心地がいいです」と笑顔に。2人で顔を見合わせてうなずき合い、意外な?相性の良さをうかがわせた。一方で、質疑ではタイトルに引っかけた「最近“なくもんか”と思ったことは?」というベタベタな質問が。阿部さんは「この間、何度か共演したタレントさんから『はじめまして』と言われまして」。瑛太さん扮する祐介の相方の芸人・大介役の塚本高史は「夏、ウチのクーラーが壊れたんですよ。しかも2台同時に。なんで夏に壊れるんですかね?売ろうとする作戦ですかね」。祐太の育ての親に扮したいしだあゆみは「ないですね。年を取ると喜怒哀楽が薄くなってくるんですよ」とベテラン女優らしからぬおトボケぶりで取材陣の笑いを誘っていた。『なくもんか』は11月14日(土)より全国東宝系にて公開。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:なくもんか 2009年11月14日より全国東宝系にて公開© 2009 「なくもんか」製作委員会
2009年10月01日