昨夏の公演は全日程完売、大評判となったミュージカル『王家の紋章』。累計発行部数4千万部を誇り、40年間連載が続いている少女漫画界屈指の大ヒット作を、世界で初めてミュージカル化した作品だ。その中で、主人公であるエジプト王メンフィスを演じたのが浦井健治。演技や歌はもちろん、その“ビジュアル力”も評判となった。浦井に、約半年というはやさで再演される『王家の紋章』について話を聞いた。チケット情報はこちら「ありがたいことに、とても大きな反響を頂きました。ひとえにそれは、原作の力であり、細川智栄子先生と芙~みん先生が40年、命をかけて作ってきたものが素晴らしいから、です」と、まずは原作へのリスペクトを口にする。「その大切な作品を僕らに託してくださった。その重みを考えると大変なことでした。でも原作ファンの方からも『いつも読んでいた漫画のメンフィスが目の前に現れた!』といったお手紙もたくさん頂いた。すごく嬉しかったですし、衣裳さんやメイクさんとも一緒に喜びました。嬉しいことに、先生方からも『メンフィスにぴったり』という言葉をもらったんですよ」。演じたメンフィスは、若きエジプト王。絶対的な権力を持つ彼が、現代アメリカから古代エジプトに迷い込んできた少女・キャロルに心を惹かれていく…というのが物語の骨子だ。原作者お墨付き、浦井が扮するメンフィスは雄々しさと美しさ、そして甘さを同居させた、まさに少女漫画から抜け出たようなヒーローだった。「最初はメンフィスは身勝手な人間に見えたのですが、実際に演じてみると“ファラオとして存在しているのだから、人を人とも思えないのは当たり前だな”とわかりました。古代のファラオは、触れてはいけないくらいの偉大な存在ですから。でもひとりの人間としては、素直でまっすぐで、実は優しいというのも見えてきました」と“メンフィス像”を語る。ちなみに、なかなか現代日本で暮らす我々には縁遠い役柄だが「演じていると、だんだん快感になってくるんです。メンフィスの衣裳を着て歩けば、舞台裏でもみんなが道をあけてくれますし(笑)」というエピソードも。さて、約半年の熟成期間を経てふたたび挑むメンフィスは、どういったものになるのだろう。「より高みを目指し、より多くの方に満足していただけるメンフィスを目指したいです。例えば振り返った瞬間に『浦井がいる』じゃなく『メンフィスがいる』と思ってもらえるように」。そして再演ではリーヴァイ氏による新曲も追加され、脚本・演出もブラッシュアップされるという。「いま、スタッフさんたちがかなりの熱を帯びて、総力をあげて練り直しています。僕自身も演者として、初演の自分を超えるのが課題。単なる再演にはなりません!」。メンフィス王が力強く宣言したその言葉を信じ、さらに壮大な愛とロマンが目の前に現れる日を楽しみに待ちたい。公演は4月8日(土)から5月7日(日)まで東京・帝国劇場にて。チケットぴあでは1月26日(木)23:59までWEB先着先行「プリセール」を受付中。5月には大阪公演も。
2017年01月25日宝塚歌劇団星組が今年、ミュージカル『スカーレット ピンパーネル』を上演する。1997年にブロードウェイで初演され大ヒットを記録した作品。宝塚歌劇団にとっては7年ぶり3度目の上演で、今回は星組新トップコンビ・紅(くれない)ゆずる、綺咲愛里(きさきあいり)の大劇場お披露目公演でもある。1月23日、制作発表会見が開催され、紅らが意気込みを語った。宝塚歌劇星組公演『スカーレット ピンパーネル』チケット情報物語は恐怖政治が敷かれるフランス革命後の18世紀末、無実の罪で断頭台に送られていくフランス貴族を助けようと立ち上がったイギリス貴族、パーシー・ブレイクニーが主人公。正体を隠し“スカーレット・ピンパーネル”として暗躍するパーシーや仲間たちの冒険活劇と、大人の男女の三角関係を軸に展開していくドラマチックなストーリーに加え、巨匠フランク・ワイルドホーンが手がけた音楽にも人気が高い作品だ。満を持しての再々演だが、小川友次歌劇団理事長が「『スカーレット ピンパーネル』は日本名にすると『紅はこべ』。紅がこの作品を運んできたんだと思っています」と語り、演出の小池修一郎は「日本初演だった2008年の星組公演で、紅は新人公演(入団7年目までの若手だけで本公演同様の内容を1日のみ上演する、宝塚伝統の公演)で主役のパーシーを演じたが、それが好評を得て今日の彼女(のトップというポジション)に繋がった」と語ったように、紅にとても縁のある作品である。その紅は「星組主演男役としてのお披露目公演で、この作品が出来ることが大変光栄です。私は初舞台から星組で、星組しか経験がない。星組の良さや伝統はよくわかっているので、歴代の素晴らしい上級生から頂いたたくさんの教えを下級生に伝えていくべく、この立場になったと思っています。15年間星組で培ってきたものを、この作品で皆さまの前にお披露目できたら」と“星組愛”を熱く語る。相手役となる綺咲も生粋の星組っ子。「私もずっと星組で育ってきました。下級生の時から紅さんにはたくさんのことを学ばせていただき、今日がある。紅さん率いる星組の一員として、日々精進したい」と意気込んだ。この日は紅、綺咲、星組男役スターの礼真琴の3人による劇中歌披露もあったが、そのパフォーマンスを観て小池は「紅は2002年初舞台。21世紀になって入団した人たちが宝塚のトップスターを担う時代になりました。彼女は21世紀型と言いますか、それまでのスターたちとどこか違うものがある。有名なのはお笑いのセンスだが(笑)、意外と憂いのある感じも魅力になるのではと、今日のパフォーマンスを観て思った。綺咲も一見すると“アイドル性”みたいなところが魅力に思えるが、今日の彼女の歌声や艶やかさに驚いた。ふたりは一般的なトップコンビ像から逸脱したイメージがあるかと思いますが、実際には意外と大人っぽいものになるかも」と、期待を語っていた。公演は3月10日(金)から4月17日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、5月5日(金・祝)から6月11日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。
2017年01月24日昨年、歌とダンスで展開するコンサート『REON JACK』を大好評のうちに終え、そのショーマンぶりが改めて評価された柚希礼音。日本では数少ないショー要素の強いステージをまた観たいという熱い声に応え、早くも『REON JACK2』の上演が決定! 今回は上野水香や大貫勇輔ら国内外で活躍するトップダンサーが集結し、柚希と競演を繰り広げる。『REON JACK2』チケット情報星組トップスター時代に催された武道館コンサート(2014年)、そして退団後、女優に転身してからの『REON JACK』(2016年)。3度目となる『REON JACK2』では「よりアーティスティックな舞台を目指したい」と柚希は話す。「宝塚を退団したことで自分の心情も変わってきていますし、だからこそ難しいことにも挑戦していければ」と柚希。中でも、モーリス・ベジャールら世界的な振付家のもとで踊ってきた上野水香とは「ずっと一緒に踊ってみたいと思っていた」という。「実は(宝塚入団前に)私がバレエのコンクールに出ていた頃、いつも1位が上野さんだったんです(笑)。ただ、そんなスゴい上野さんでもショーのダンスはほとんど初めてのようなので、お互いにとっての挑戦になればいいなと思っています」と意気込みは充分だ。その分、今回の振付と出演も兼ねる大村俊介(宝塚では柚希の代表作『オーシャンズ11』や『ロミオとジュリエット』も担当)らスタッフたちと、ダンスナンバーについても細かく打ち合わせを重ねていると明かしてくれた。一方、楽曲の面でも大きな変化が。「今までは宝塚や海外アーティストの曲を歌っていたんですが、在団中にリリースした『夜空に眠るまで』や、今度出す5曲入りCDの分も合わせて、ほとんど私の曲で構成出来るようになりました。新曲のうち2曲を森雪之丞さんに作詞していただいたり、『夜空に~』でご好評いただいた本間昭光さんに音楽プロデューサーをお願いしたりしているので、これまでとはまた違った柚希礼音を見てもらえるんじゃないかな」と、柚希は笑顔で話した。さて、ダンスと歌の実力に加えて、主役に圧倒的な華がなければ成り立たないといわれるのが“ショー”(ここではコンサートと表記)。柚希は女優になった今も、その希有な道を気負うことなく進んでいる。「歌とダンスのレッスン、それから構成や演出も打ち合わせするから時間はいつも足りないです。『あぁ、ここは(スタッフに)任せてしまいたい』と思うこともあるんですが、結局は『いやいや!やるぞ!』となるんですよね(笑)。ダンスと歌で表現するコンサートは、“今の私”を表現する大切な場所。これからもずっと続けていきたいです」公演は3月23日(木)から26日(日)まで梅田芸術劇場メインホール、30日(木)・31日(金)パシフィコ横浜国立大ホール、4月19日(水)・20日(木)福岡市民会館大ホールにて。取材・文佐藤さくら
2017年01月20日宝塚歌劇団が1月16日、雪組公演『幕末太陽傳』『Dramatic“S”!』の制作発表会見を開催した。この公演はゴールデンコンビとして多くの人に愛されている雪組トップスター・早霧せいな、トップ娘役・咲妃みゆの退団公演。早霧は「いよいよ私と咲妃の退団公演が始まろうとしています。…ですが! さらに身を引き締めて、今まで以上に進化する舞台を務めていきたい」意気込みを話した。宝塚歌劇雪組『幕末太陽傳』チケット情報2014年にトップスターに就任、大劇場のお披露目公演では『ルパン三世』、その後も人気漫画をミュージカル化した『るろうに剣心』や名作映画をもとにした『ローマの休日』など、立て続けに大ヒットを飛ばした早霧。相手役の咲妃とともに、雪組を、そして歌劇団全体を盛り上げた。歌劇団の小川友次理事長も「平成の雪組をひっぱってくれたゴールデンコンビ。我々もふたりのコンビが永遠に続けばと思ったのですが、そうもいかない(笑)。今でしか見られないふたりの姿を見てほしい」と最大限の賛辞を贈ったふたりのサヨナラ公演は、日本映画史に残る日活映画のミュージカル化作品と、ドラマチックなショーの2本立てだ。鬼才・川島雄三監督の代表作である『幕末太陽傳』は、「居残り佐平次」を中心に、複数の古典落語を組み合わせ、幕末の品川宿を舞台に起こる様々な人間模様を描く名作。この日はその世界観をひと足早く伝えるべく早霧、咲妃、そして雪組男役スター・望海風斗がパフォーマンスも披露。早霧は羽織を宙に放り投げてすばやく着る“羽織芸”も。退団公演には珍しい日本物だが「最後の公演が日本物になるとは想像しておらず最初は戸惑ったのですが、もしかしたらこの作品をやるために今まで和物の経験を積んできたのかも。私たち自身、日本人だからこその“和の心”を大切にお届けしたい。映画はとても面白いお話で、そこに宝塚らしさ、華やかさ、雪組らしさを加えたら、お客さまにとても喜んでいただける作品になるんじゃないかなと思いました。そのためには居残り稼業の佐平次がいかに皆さんに愛されるキャラクターになるかが肝になる」と語った。早霧と同時退団する咲妃は「雪組で過ごさせていただく時間にも限りがあります。早霧さん、出演者の皆さまと作品を作り上げられることに感謝して、一日一日を過ごしていきたい」と意気込みを。ふたりを支える望海は「映画では石原裕次郎さんが演じていらした高杉晋作役。このような大きな役をどう作り上げるか悩むこともあると思いますが、楽しんで作っていきたい。今回は早霧さんと咲妃の退団公演であり、初舞台生のお披露目公演でもあります。普段より感情の揺れ幅が大きくなりそうですが、いつもどおり、早霧さん、咲妃が突き進む方向にしっかりついていきたい」と話していた。公演は4月21日(金)から5月29日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、6月16日(金)から7月23日(日)まで東京宝塚劇場にて。
2017年01月18日ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が1月15日、東京・TBS赤坂ACTシアターにて開幕した。ロミオ役は古川雄大と大野拓朗というイケメン俳優がWキャストで演じ、ジュリエット役は乃木坂46の生田絵梨花と、現役女子高生の木下晴香が務めることも話題。同日、作品の一部が報道陣に公開されるとともに、出演者たちの囲み取材が開催された。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』チケット情報作品は、シェイクスピアの古典名作をもとにフランスで生まれ、世界各国で上演している大ヒット作。日本では今回3度目の上演にして、振付・美術・衣裳が一新。キャストもフレッシュな顔ぶれが揃う“新生ロミジュリ”になった。披露されたのは3つのシーン。ロミオをはじめとしたモンタギュー家の若者たちが青春を謳歌するダンスナンバー『世界の王』を、大野、矢崎広、小野賢章らが。続いて同シーンを古川、馬場徹、平間壮一らがパワフルに軽快に魅せる。続いてロミオとジュリエットが愛を語る有名な『バルコニー』のシーンを大野と木下がロマンチックに、そしてふたりの結婚式で歌われる『エメ』を古川、生田が美しく披露。特にダンスはこれまでの公演を上回る激しさになっており、目を見張る。キャスト陣も生き生きとしたエネルギッシュなパフォーマンスをみせ、人気ミュージカルの新たな魅力をアピールした。会見では、若手メンバーでは唯一前回からの続投となった古川が「前回もロミオを演じましたが、千秋楽を迎えたとき「もう一回この役をやるんだ」と、ひそかに強く深く思っていました。その思いを公演にぶつけたい」と力強く語る。一方の大野は「一番好きなミュージカルで、ずっと憧れの舞台でした。舞台稽古が始まり、衣裳をつけてセットの中に入り、ロミオをやらせていただける幸せと楽しさをいっそう感じています」と感無量気味に話した。ジュリエット役の生田は「エネルギーいっぱいの熱い舞台です。それを感じながら、自分もエネルギーを発せられるように、精一杯頑張りたい」、木下は「稽古場で指導して頂き積み重ねて来たものを、舞台上で思い切り発揮できるように精一杯演じたい」とそれぞれしっかりと語った。ジュリエット役はともに10代の若さだが、演出の小池修一郎は「生田絵梨花のジュリエットに、新しい日本のミュージカル女優の誕生を見ました。彼女は忙しいスターなのでこれからミュージカルをどこまでやっていくのかわからないけれど、本気でそちらに向かえば、日本のミュージカルをリードしていく女優さんになる。木下晴香もおそらくこれから大変な活躍をすると思う」と、若きヒロインたちに大きな期待を寄せていた。公演は2月14日(火)まで同劇場にて。その後2月22日(水)から3月5日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて行われる。
2017年01月17日アニメ「プリパラ」から生まれたミュージカル『ライブミュージカル「プリパラ」 み~んなにとどけ!プリズム☆ボイス2017』が、1月26日(木)の開幕に先がけ公開稽古を行った。ライブミュージカル「プリパラ」チケット情報本作は、アイドルテーマパーク「プリパラ」を舞台にアイドルを夢見る女の子たちの姿を描いた同名アニメが原作。昨年2月の初演をパワーアップさせた2017年バージョンで、新キャラクター・ジュルルが登場したり、アニメ3期の新曲をライブミュージカルで初披露するほか、アニメ版エンディングテーマでもおなじみのPrizzmy☆から高橋果鈴(かりん役)、宮崎妃夏(ひな役)も出演&ライブを披露するなど新要素も盛りだくさん。もちろん主人公たち6人を演じるのは、初演に引き続き原作アニメの声優陣。茜屋日海夏(真中らぁら役)、芹澤優(南みれぃ役)、久保田未夢(北条そふぃ役)、山北早紀(東堂シオン役)、澁谷梓希(ドロシー・ウェスト役)、若井友希(レオナ・ウェスト役)が、アニメと同じ声で各キャラクターを演じる。ストーリーは、主人公・らぁら(茜屋)が過去にタイムスリップしてしまう舞台オリジナル版。らぁらは未来を変えないために、舞台オリジナルキャラクターの青井めが姉ぇ(高柳明音/SKE48)、青井めが兄ぃ(畑中智行)の邪魔をかわしながら、未来のらぁら(久家 心・石井心愛/Wキャスト)と協力してみんなを導いていく。“そらみスマイル”や“ドレッシングパフェ”の結成シーン、ファルル登場シーンなど次々と再現される名シーンの数々は、原作ファンには嬉しく、初めて観る人も「プリパラ」をイチからおさらいできる内容となっている。この日、披露されたのは一幕の通し稽古。舞台は全員による『Make it!』の歌&ダンスでスタート!アニメそのままの歌声に華やかで可愛らしいダンスは息ピッタリで、一気に「プリパラ」の世界に引き込まれた。劇中では、お馴染みそらみスマイルの『Pretty Prism Paradise!!!』、ドレッシングパフェの『No D&D code』、ファルル(澪乃せいら)の『0-week-old』などを次々と披露。アイドルらしいキャンディなどの小道具や、布などを使った演劇的な演出も取り入れられ、舞台ならではの華やかさで盛り上げた。舞台上はもちろん稽古場全体が明るい雰囲気。Prizzmy☆のふたりによる歌&ダンスが繰り広げられる舞台袖で茜屋や澁谷がノリノリで踊る姿など、楽しそうな様子が印象的だった。公演は1月26日(木)から29日(日)まで、東京・Zeppブルーシアター六本木にて。毎公演異なる「プリパラ」のアニメキャラクターの声優によるスペシャルミニライブも開催される。取材・文:中川實穗
2017年01月13日大人計画主宰・松尾スズキ演出のミュージカル『キャバレー』が、1月11日(水)に開幕。それに先駆け、前日に公開稽古と会見が行われ、松尾をはじめ、長澤まさみ、石丸幹二、小池徹平、小松和重、村杉蝉之介、平岩紙、秋山菜津子が登壇した。ミュージカル『キャバレー』チケット情報本作は、1966年に初演されてから世界中で繰り返し上演されている傑作ミュージカル。日本でもさまざまな演出、さまざまなキャストで上演されているが、松尾演出の『キャバレー』は、2007年以来10年ぶりの再演。舞台は1929年、ナチス台頭前夜のベルリン。キャバレー「キット・カット・クラブ」は、毎夜毎夜、退廃的なショーと刹那的な恋の駆け引きが繰り広げられるバラ色の場所。そこで出会ったショーの花形・歌姫サリー(長澤)と、アメリカからやってきた駆け出しの作家・クリフ(小池)はたちまち恋に落ち、一緒に暮らし始める。個性的な人々との賑やかな毎日の中に、いつしかナチズムの足音が高く聞こえ始め――。公開稽古前の会見で松尾が「こういう会見で演出家が何を言ってもコメントとして使われることはない」と語り始めるとキャスト陣は大笑い。「長澤さんに言ってほしい言葉を言います。“松尾さんの独創的な演出により芸術的かつ娯楽性の高い素晴らしい作品になったと思います”」。それを聞いた長澤が「もう一回言ってもらっていいですか?」と松尾にお願いするなど和やかな雰囲気。その長澤は今作がミュージカル初挑戦だが「ここにいる先輩方に支えられて稽古も今日まで乗り切ってきました。初めてのことなんだけれどすごく楽しく稽古ができていたので、稽古場と同じ気持ちをお客さんに届けられたら」と笑顔を見せた。「キット・カット・クラブ」で妖しい魅力でお客を惹きつけるMC役を演じる石丸は「ご覧の通り普通の人間ではないですが(笑)。こういう役どころですので、日常にない世界に飛び込んで演じてみたいなと思っています」。長澤演じるサリーの恋人・クリフを演じる小池は「すごく空気のいい素敵なカンパニーに入れていただいたなという気持ちでいっぱいです。長澤さんとはべったりしたシーンやドキドキするシーンもあるので、ぜひ早く皆さんに観てほしいです!」。公開されたのは一幕。きらびやかで妖しくゴージャスな「キット・カット・クラブ」のショーでは長澤がセクシーな衣装で華やかなダンス&歌を披露。恋や欲望、情熱、そして喜びが描かれた一幕の終わりに迫るナチスの脅威。二幕で広がる世界はどうなるのか…期待したい。公演は1月22日(日)まで東京・EXシアター六本木にて、その後、横浜、大阪、仙台、愛知、福岡を巡演。撮影・取材・文:中川實穗
2017年01月12日宝塚歌劇月組の新トップスター・珠城(たまき)りょうのお披露目公演『グランドホテル』『カルーセル輪舞曲(ロンド)』が1月1日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。宝塚歌劇月組『グランドホテル』/『カルーセル輪舞曲(ロンド)』チケット情報第一幕の『グランドホテル』は1989年にブロードウェイで上演され、トニー賞5部門を受賞した作品。宝塚歌劇では1993年に涼風真世を中心とする月組で日本初演され、今回が24年ぶりの再演となる。特別監修にはブロードウェイで演出・振付を手掛けたトミー・チューンを迎え、新たな構成で上演されている。舞台は1928年のベルリンにある高級ホテル。登場するのは多額の借金を抱える青年貴族、引退を前にした伝説的バレリーナとその付き人、余命わずかな老会計士、映画スターを目指すタイピストなど。悩み、不安、焦り…それぞれに影を持つ人たちがホテルを訪れ、偶然に出会い、それぞれの人生が変わっていく様を描いた物語だ。回転扉と椅子の配置を巧みに変えることでシーンが展開するというシンプルながらもテンポ感のある演出が印象的で、人間ドラマも色濃く浮かび上がってくる。お金に困窮するフェリックス男爵役の珠城はトップ娘役・愛希(まなき)れいか扮するバレリーナ、グルーシンスカヤと出会い、恋に落ちる。手足が長く舞台映えする珠城はプロローグから存在感たっぷりに演じるが、“影”を表す繊細な演技でも魅せる。愛希は旬を過ぎたバレリーナの悲哀を大人の色気をまとわせて演じ、円熟味を感じさせる。一方でフェリックスと出会い輝きを取り戻すときには可愛らしく、柔軟な演技力を活かして演じている。また、老会計士オットー役の美弥(みや)るりかは、背中を丸め、重苦しい空気を全身から漂わせる。そんな彼がフェリックスと出会い、徐々に変化していく様を見事に演じている。第二幕の『カルーセル輪舞曲(ロンド)』は、宝塚レヴュー『モン・パリ』の誕生90周年を記念して作られたステージ。白い衣裳をまとったスターたちによる華やかな幕開きから、ニューヨーク、メキシコ、ブラジルなど、さまざまな国をイメージしたシーンを展開。エネルギッシュに、男っぽく、アクロバティックに…と、彩り豊かな演出で観客を惹きつけて離さない。フィナーレには『モン・パリ/吾が巴里よ』に乗せて男役は黒燕尾、娘役は純白ドレス姿で美しく見せる。入団9年目でトップに就任した珠城を中心とする新生月組が、フレッシュながらも落ち着いたステージを展開。これからが楽しみになる幕開けとなった。兵庫・宝塚大劇場公演は1月30日(月)まで。チケットは発売中。そして東京宝塚劇場では、2月21日(火)から3月26日(日)まで上演。1月15日(日)10:00よりチケット発売開始。取材・文:黒石悦子
2017年01月06日韓国で人気を博したミュージカル『フランケンシュタイン』が日本に初上陸する。あの有名なフランケンシュタインの物語を大胆にアレンジし、メインキャスト全員が一人二役で演じる手法にも注目が集まる。メインキャストのひとりは、舞台をはじめ、映画やテレビドラマで味のある演技を見せる、ベテラン俳優の相島一之。「ミュージカルコメディの経験はありますが、シリアスなミュージカルは初めて」という相島にその思いを聞いた。ミュージカル「フランケンシュタイン」チケット情報「今回は、『ザ・ミュージカル』ですよ。『ザ』ですよ、ザ(笑)。本当に僕でいいの?と何回、念を押したことか」と豪快に笑いながら、オファーを受けた心境を語る。19世紀のヨーロッパを舞台に、死人の命を甦らせ、「生命創造」の研究に身を捧げる科学者ビクター・フランケンシュタインが主人公だ。ビクターは、友人のアンリを無実の罪で亡くしたことから、アンリにその研究成果を注ぐが、誕生したのはアンリの記憶を失った「怪物」だった。「死者を生き返らせるという物語はiPS細胞やクローンなど、21世紀の医学の進歩で突拍子もない話ではなくなってきた。観客は色々なことを思い巡らせるはず。また、登場人物が救いを求め、人間の生きる意味を問う姿は話に深みを与えます。そこに壮大でドラマティックな音楽が入ると、物語がさらに勢いよく立ち上がり、本当に素晴らしいんですよ」と熱を込める。相島は、第一幕でビクターの婚約者ジュリアの父・ステファン、第二幕でギャンブル闘技場に出入りするフェルナンドを演じる。社会的地位や名誉があるステファンと、金の亡者で裏社会とも繋がるフェルナンド。一方、研究熱心なビクター役の中川晃教、柿澤勇人(Wキャスト)は、ギャンブル闘技場を営む悪党のジャックに豹変する。あまりにも正反対なキャラクターは、一人二役というものの、実は同じ人間ではないかと思わせる。どんな人間にも光と闇があるように。「まさにそうですね。脚本と歌詞を手掛けたワン・ヨンボムさんが意図して書いているのだと思います。一人二役は役者にとっては、苦労より楽しみのほうが大きい。振り幅の大きい違う役をやればやるほど、バッと弾ける。その生き生きとした役者の魅力が芝居全体の高揚感にも繋がり、物語自体が大きく揺れる。Wキャストだと揺れ方もそれぞれ違うはずです」役者のほか、立川志らくと落語会をしたり、自身のブルースバンドのライブでブルースハープを吹いて熱唱したりする。また、長男は5歳、長女は2歳とかわいいさかり。50代にして人生花盛りの様子だ。「いえいえ(笑)。でも、異業種に挑戦して確実に分かったのは、僕は俳優以外の何物でもないということです」。きっぱりとそう言い切った。公演は、1月8日(日)から29日(日)まで東京・日生劇場、2月2日(木)から4日(土)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。その後、福岡、愛知でも公演あり。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2017年01月05日12月12日、都内のホテルにて、市村正親主演のミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』の製作発表記者会見が行われた。報道陣と約200人のオーディエンスが注目するなか、市村をはじめとする出演者たちが舞台への意気込みを語った。ミュージカル「紳士のための愛と殺人の手引き」チケット情報冒頭でカンパニーキャストによるナンバー「なぜよく死ぬのかダイスクイス」が披露されると、プリンシパルキャストのウエンツ瑛士、柿澤勇人、シルビア・グラブ、宮澤エマ、春風ひとみが登壇。最後に現れた市村正親は、市村の顔の仮面をつけた7人の登場人物を率いての堂々たる姿だ。その7人の姿を見て市村は、「気持ち悪い……」と渋い表情を見せ、会場の笑いを誘った。日本初上陸となる本作は、2014年トニー賞4冠に輝いたブラックコメディの傑作だ。舞台は1900年ごろのイギリス。貧乏な青年モンティは、自分が大富豪の伯爵の8番目の爵位継承権を持つことを知り、莫大な財産を手に入れようと、奇妙キテレツな手を使って継承順位上位の人々を殺していく。殺されるのは、牧師や陸軍少佐、舞台女優など実に様々だが、その8人を演じ、8回殺されるのが、ただひとりの俳優、市村正親というわけだ。「ウエンツ君と柿澤君とのトリプル・キャストと聞いていたんだけど」と再び笑いを誘い、「年とともに大変な役が増えてきた。今回は正直、どうなるのか自分でも見当がつかない。コメディですが、笑いをとりに行くような作品ではなく、それぞれの道を必死に生きている、そのこと自体が端で見るとおかしい、というもの。“これは市村さんにしかできない”と言ってくださった方たちの期待を裏切らないよう、しっかり演じ、楽しいミュージカルを創れたらと思います」と抱負を述べた。「楽しく死ねたらいいな」と笑う市村を、実に8回も殺すことになるモンティ役は、ウエンツと柿澤のダブルキャストだ。「まさかレジェンドの市村さんと共演できるとは思ってもみませんでした。ダラスでこの作品を観た印象では、モンティ役は“受けの芝居”。人を殺していくなか、人との出会いのなかで心情も変わっていく。丁寧にやっていきたいと思います」(ウエンツ)、「殺人鬼、人を追い込む役を演じることが多いのですが、今度はどんな役?と尋ねたら、“人を殺します”と(笑)。でもコメディですから、たくさん笑って帰っていただきたいですね」(柿澤)。演出の寺﨑秀臣は、「日本でやる以上は、ブロードウェイでやったものをそのままやるのではなく、オリジナリティ、市村さんの良さを出していきたい。作品のもつ面白さプラスアルファで、圧倒的に面白いものができあがる、そんな期待をこめて演出していきたい」と語った。公演は2017年4月8日(土)から30日(日)まで東京・日生劇場、5月4日(木・祝)から7日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、その後福岡、愛知でも上演。東京、福岡公演のチケットは発売中。大阪1月15日(日)、愛知2月4日(土)一般発売開始。取材・文:加藤智子
2016年12月28日シェイクスピアの名作をフレンチロックに乗せて描き出す、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。2001年にパリで初演し大ヒット、世界各国で上演されている。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」チケット情報日本では、2010年に小池修一郎の潤色・演出により宝塚歌劇団で初演、その後、日本オリジナルバージョンとして2011年、2013年に上演した。鉄骨組みの舞台セットに囲まれた舞台で、妖しく美しい“死”のダンサーが登場する演出。この小池版「ロミオ&ジュリエット」の初演を3回、再演を1回観て、「ミュージカルの中で1番好きな作品」と語る大野拓朗。今年は前期NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」に出演、ウザカワいい青柳清を好演し、注目された。「2度目のミュージカルで主演、しかも大人気の演目で、憧れのロミオ役で。本当にうれしい!」。終始笑顔で、体中から“幸せオーラ”を発散させながらの会見だった。「全曲好きなミュージカルに初めて出合いました。シェイクスピアの世界観、ロミオとジュリエットの美しさ、歌もダンスもレベルが高く、衣裳もカッコイイし、若いエネルギーがものすごく大きくてワクワクする。すべてがボクにマッチしました」。2012年、同じ小池演出『エリザベート』のルドルフ役で出演して以来、4年ぶりのミュージカルだ。この4年間、レッスンを続けながら「ガチで毎日聴いて、毎日歌ってました。だからロミオだけじゃなく、全曲歌えます」。移動中も車の中で歌いながら、飽きない自分に驚いていた。ところが稽古に入ると「難しい。今やっと自分の歌になってきたかなと感じています。ダンスは『けっこう、かっこよく踊れると思います』って、胸を張って言えるぐらい成長してると思います。楽しみにしていてください」。今回の目標は「この世界に入って初めての“ザ・恋愛もの”、“ザ・2枚目”。大野拓朗史上初の色っぽさを、お客様に感じてもらえたら。お客様からのパワーをいただきながら、ロミオとしてどんどん成長していきたいと思います」。ロミオ役は、パーソナリティが真逆の古川雄大とのWキャスト。「どちらの楽しさも感じてもらいたいので、両方観てほしいです!この作品を最大限に楽しんでいただき、この作品自体を愛してもらえたらいいな」。座右の銘は“いつでも笑顔でいられますように”。「笑顔でいることが好きだし、周りにも笑顔でいてもらいたいし、ボクを見ているみなさんが笑顔になってくれたらいいな、という思いがあって、この仕事をさせていただいているんです」。では、今の気持ちは?「主役の重みより喜びの方が大きいですね。憧れの役でしたし、主役の重みを感じることが出来て、幸せいっぱいです!」と、サイコーの笑顔を見せた。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、1月15日(日)から2月14日(火)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、2月22日(水)から3月5日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:高橋晴代
2016年12月27日ミュージカルアニメ「Dance with Devils」を原作にした、ミュージカル「Dance with Devils~D.C.(ダ・カーポ)~」が、12月21日に開幕。それに先がけゲネプロが公開された。本作は今年3月に上演された舞台化第1弾のミュージカル「Dance with Devils」(通称:デビミュ)をパワーアップさせた第2弾。ミュージカル「Dance with Devils」チケット情報名門・四皇學園で絶大な人気を誇る生徒会メンバーの鉤貫レム(神永圭佑)、楚神ウリエ(神里優希)、南那城メィジ(吉岡 佑)、棗坂シキ(安川純平)は実はアクマ。人間界で、すべてを支配する力を持つ『禁断のグリモワール』を探す彼らは、同校の生徒・立華リツカが手がかりを握っていることを突き止める。しかし、レムたちの前にはリツカの兄・立華リンド(萩尾圭志)が立ちはだかり――。ゲネプロ前の取材で自身の役の見どころを問われ、神永は「僕は笑わないところ。キャストのアドリブにも負けずに笑わないところは自信があります!」、萩尾は「真っ直ぐなところ。妹のリツカのこととなると止められないのがリンドなので、それは誰にも負けないんじゃないかな」、新キャスト・神里は「美しさ。バラを持ってるくらいなので!」、吉岡は「オラオラなんですけど所作は優雅。全員舎弟にするつもりでやっていきますのでよろしくお願いします!」、安川は「気持ち悪さでは誰にも負けないかな。そこを大切にしていきたい」、内藤大希は「普段は犬の姿なんですけど、犬の声もやらせてもらってます!」とアピール。今作の特徴は2種類のエンディング“Ending A―Dear My Devil Rem(レムエンド)”、“Ending B―Dear My Exorcist Lindo(リンドエンド)”が用意されていること。それぞれの魅力について神永は「リンドエンドは切なくて、観ている方はギュッと胸が締め付けられるようなものがあると思います。前回レムエンドを観てくださった方は、今回また違う感動、違う涙が出るような感じになっているかなと思っております」、萩尾は「リンド派、レム派も生まれてくると思います。いろんなところに楽しめる要素、泣ける要素もあるんじゃないかな」と話した。劇中では原作アニメの楽曲『EMOLIAR』や『KETTO~譲れない、せめぎ愛~』のアレンジバージョンや、今作のために書き下ろされた新曲など全25曲を歌唱(公演後のミニコンサート含む)。加えて前作でレムとリンドのみだったアクマ衣裳が、今作では新たにウリエ、メィジ、シキ、ローエン(内藤)も着用。さまざまな部分がパワーアップしている。公演後にミニコンサートも行われる本作。最後の最後までデビミュの世界に浸れそうだ。公演は12月27日(火)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて。取材・文:中川實穗(c)グリモワール編纂室/デビミュ製作委員会 (c)グリモワール編纂室/Dance with Devils製作委員会
2016年12月26日2017年夏に日本初演を迎えるミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』。その主人公・ビリー役として、1年以上に渡るオーディションを経て選出された4名(加藤航世、木村咲哉、前田晴翔、未来和樹)のお披露目会見が行われた。本作は、2000年公開の映画『BILLY ELLIOT』(邦題『リトル・ダンサー』)を、映画に引き続きスティーヴン・ダルドリーが演出、楽曲をエルトン・ジョンが手掛け、2005年にロンドン・ウエストエンドで初演されたミュージカル。10年以上のロングラン公演を行い、2009年にはトニー賞で10部門を受賞するなど、世界5大陸で上演されてきた大ヒット作。待望の日本初演となる今作は、全キャストが海外クリエイティブスタッフによるオーディションで決定。ビリー役以外にも、父親役を吉田鋼太郎・益岡徹(Wキャスト)、ウィルキンソン先生役を柚希礼音・島田歌穂(Wキャスト)、ビリーの祖母役に久野綾希子・根岸季衣(Wキャスト)、ビリーの兄・トニー役に藤岡正明・中河内雅貴(Wキャスト)、ボクシングコーチ役に小林正寛、大人版ビリー役に栗山廉(Kバレエ カンパニー)・大貫勇輔(Wキャスト)が発表された。会見の冒頭ではホリプロ代表取締役社長の堀義貴が、ロンドンで公演を観劇した際に「打ちひしがれて泣き崩れた。こんなすごいもの日本では作れない、でもできたらどうしてもやりたいと思った」と振り返った。さらに、海外クリエイティブスタッフであるルイーズ・ウィザーズ、サイモン・ポラード、スティーヴン・アモス、トム・ホッジソンが登壇。ルイーズは「本当に特別な子たちです」、サイモンは「4人は全く違うビリーになってくれると思います」と語った。1346名から選ばれた4人のビリーは、緊張しながらも「スタート地点に立つことができたので、引き続き努力してがんばりたい」(加藤)、「合格発表を聞いたときはすごく嬉しかったです。落ちた人たちの分までしっかりがんばっていきたいです」(前田)と挨拶。オーディション中に辛かったことを問われ「バレエでできない技があって、みんなに追いつくのはちょっと辛かったけど、もっとがんばらないとビリーにはなれないと思ったからがんばりました」(木村)と話した。オーディション中の思い出を「熊本から来ているので、路線図を片手にレッスン場に行ってたのですが、ある日、急いで電車に飛び乗って振り向いたらお母さんがホームにポツンと立ってました(笑)」(未来)と話し、取材陣を笑わせた。公演は7月19日(水)から東京・TBS赤坂ACTシアターで上演されるプレビュー公演を皮切りに、11月4日(土)までの3か月間、東京、大阪にて上演。取材・文:中川實穗
2016年12月22日2010年に宝塚歌劇団で日本初演され、大ヒットしたフランス産のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。シェイクスピアの悲恋の名作を、アクロバティックな激しいダンスと印象的な音楽で、若さと愛と情熱をロックに乗せて描き出した。2011年と2013年には、小池修一郎の潤色・演出により日本オリジナルバージョンを上演。鉄骨組みの舞台セット、クラシカルモダンなデザインの衣裳、そして、ロミオたちに影のように寄り添う妖しく美しい“死”のダンサーなど、物語をさらにドラマチックに彩る演出が大きな話題を呼んだ。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」チケット情報今回、4年ぶりに新キャスト、新バージョンでの上演が決定。オーディションにより、ほぼ全配役が新たになる中、前回と同じロミオ役を続投するのが、古川雄大。「今はどんな作品に出来上がるんだろうと、すごく楽しみです」と語る彼が、稽古開始直後に来阪、再挑戦となる作品への意気込みを語った。「新演出で衣裳も変わり、舞台セットも違うし、キャストも一新。台本も少し変わるらしいので、新作のつもりでやっています」と古川。時代は近未来となるらしい。「『エリザベート』のルドルフから、いきなりロミオという重みがのしかかってきた感じ」だった前回。「歌の技術が劣っていて、悔しい思いもしました。だから、もう一回やりたいとずっと思っていたので、今回はリベンジです」。衣裳では色、ダンスではスタイルの違う振付で、対立するそれぞれの家などを表現。「ロミオのモンタギュー家は、ヒップホップ系のダンス。僕はほぼ初めてですが、踊ることは好きなので大丈夫です」。古川の恋愛観は「恋愛に真剣になったら、仕事したくないとかって思っちゃうタイプだと思います。だから、周りが見えなくなったりするロミオの気持ちは少しわかります」。その大恋愛の末に死んで結ばれる役。毎日演じ続けて、どんな気持ち?「幸せの最高潮と地獄の絶望の幅がすごくて、精神的に大変でした。気分が落ちてしまうので、ダウンタウンとかさまぁ~ずのDVDを何回も見て、笑って忘れてました(笑)。で、次の日、頑張って気持ちを上げる。毎回、新鮮に純粋に反応したいというのがモットーなので、一度気持ちをフラットに戻してから臨みたいと思っていて。今回も続けます(笑)」。Wキャストでロミオを演じる大野拓朗とは、『エリザベート』のルドルフ役でもトリプルキャストで一緒だった。「仲いいです。一緒に頑張ろうという感じ。でも、もし、大野くんの舞台と僕のと迷って1回しか観れないなら、僕の方を観に来てほしいけど(笑)。今回は、この作品に賭けたい、ロミオとして思いっきり生きて、ロミオを演じ切りたいという気持ちなので、楽しみにしていてください」。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、1月15日(日)から2月14日(火)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、2月22日(水)から3月5日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:高橋晴代
2016年12月21日来年1月に上演されるミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の稽古場が、12月19日、報道陣に公開された。劇中歌3曲が披露されるとともに、ロミオ役の古川雄大と大野拓朗、ジュリエット役の生田絵梨花(乃木坂46)と木下晴香(ともにWキャスト)が意気込みや見どころを語った。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』チケット情報作品は、言わずと知れたシェイクスピアの名作をもとに2001年にパリで初演され、世界で500万人以上を動員している大ヒットミュージカル。日本では宝塚歌劇団で2010年に初演、また男女混合キャストでも2011年、2013年に上演されているが、今回は振付・美術・衣裳が一新された“新バージョン”として登場するということで、注目を集めている。この日まず登場したのは古川と木下で、まだ出会う前のロミオとジュリエットが運命の恋への憧れを歌う『いつか』。若者特有の、明るい未来を信じているキラキラとしたナンバーを、古川と木下がフレッシュに歌い上げる。続けて大野、生田が登場し有名な『バルコニー』のシーン。恋に落ちたロミオとジュリエットの甘い語らいが、美しい歌声でロマンチックに奏でられた。そしてロミオがモンタギュー家の仲間たちと軽快に歌う『世界の王』を、古川に加え馬場徹、平間壮一らが披露。シーンを通した後、キャストたちが肩で息をするほどアクロバットなダンスナンバーで、新バージョンでもこのシーンは大きな見どころのひとつとなりそうだ。引き続き行われた囲み取材では、古川が「キャストも入れ替わり、新演出となり、新しい“ロミジュリ”が生まれようとしています。出来上がっていく段階がいまとても楽しい。すごくいいものが仕上がっている」と自信のほどを。今回初参加の大野は「初演も再演も何度も観にいった。今までに一番回数を見たミュージカルです。今度は自分がロミオとして歌えることがとても光栄ですし、幸せなこと。“ロミジュリ”の一ファンとして、進化したこの作品を届けられる日が楽しみ」と話した。現役アイドルとして活躍する生田は、今回ラブシーンもあるが「この作品にはアイドルとして参加するわけではないので、そこの部分はしっかり身を委ねたい。ファンの方は心配されているかもしれませんが、私には応援の言葉や、体調や声を気遣う言葉をかけてくれています。その分、自分も何かを返していけるように頑張れたら」ときっぱりと話す。一方、現役女子高生ながらヒロインに抜擢された木下は「毎日生田さんと相談しあいながら作り上げています。公演が始まっても、千秋楽まで毎日確実に前進していけるように頑張りたい」と意気込んだ。公演は2017年1月15日(日)から2月14日(火)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、2月22日(水)から3月5日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて行われる。チケットは発売中。
2016年12月20日7年ぶりの来日公演となる「『RENT』 20th Anniversary Tour」が12月15日、東京国際フォーラム ホールCで開幕した。『RENT20周年記念ツアー来日公演』チケット情報初演から20年経っても、未だにこんなに愛され、熱く語られるミュージカルは他にはないだろう。イースト・ヴィレッジの若者の暮らし、ドラッグやAIDSの蔓延など、ストーリーは初演時の21世紀末の世相を色濃く反映している。にも関わらず改めてゲネプロを観たら、古びた感じか全くしない。それどころか、人間関係が脆くなり、災いがいつ起きるかわからない不安定な今だからこそ、響くものがたくさんある。根底のメッセージ“人生を愛の数で数えよう”だって、ほんとその通りで、みんながただ素直に愛を育みつつ生きられれば、もっと良い社会になる。RENTを観るたびに反省するし、もっともっと大きな愛を育てなきゃ…と帰り道にしみじみ。演出は初演オリジナルのマイケル・グライフ版。舞台上手の大きなクリスマスツリー、ぼんぼりのような照明、「La Vie Boehme」の長机など、定番的安心感。もちろん細かいマイナーチェンジもあちこちなされている。RENTが古びないもうひとつの理由は、断然、楽曲の良さだ。2幕頭の名バラード「Seasons of Love」はCM等でよく耳にするはず。キャストが1列に並び、美しいハーモニーが劇場を満たす。象徴的なこのシーンはぐっと来る。他、疾走感たっぷりのロックチューン「Rent」「What You Own」、ミミとロジャーが出会う「Light My Candle」、エンジェルとコリンズが愛を告白し合う「I’ll Cover You」、モーリーンの元彼マークと今カノのジョアンがタンゴを踊る「Tango Maureen」、モーリーンとジョアンのカップルが揉めて攻めぎ合う「Take Me or Leave Me」、若者たちの主張たっぷりの馬鹿騒ぎ「La Vie Boehme」など、名曲&名シーンづくし。1曲が短編ドラマのように完成している。今回は20代前半が集まった若いカンパニー。ロジャーはいかにもアメリカの街にいそうな、長髪タトゥで新鮮。マークは響く歌声とマークらしいニュートラル感が魅力。コリンズは器が大きくシビれる低音ヴォイス。ベニーはさりげなく、でも存在が光る良いベニー。ジョアンはパンチのある歌声が素敵。エンジェルは佇まいがエンジェルそのもので愛らしい分、後半は泣かされる。ミミはチャーミングで表現力たっぷり。モーリーンは髪色が個性的ながら、親しみやすい。劇中にクリスマスや新年のシーンが出てくるので、「クリスマスイブ9PM公演」や「ニューイヤーカウントダウン」に参加したら、日常とシンクロできるに違いない。RENTを知れば、人生は変わる。出会って、思い出に残る年末に!「『RENT』 20th Anniversary Tour」は12月31日(土)まで、東京国際フォーラム ホールCにて。取材・文/三浦真紀
2016年12月19日12月13日に『ギンザめざましクラシックス vol.78』が銀座・王子ホールで開催された。『めざクラ』は来年20周年。今回は20周年通し企画の第2弾として、vol.21から40までを振り返る。高嶋ちさ子(ヴァイオリン)とフジテレビアナウンサーの軽部真一のトーク、演奏、ゲストの新妻聖子の歌など、盛りだくさんの内容で繰り広げられた。【チケット情報はこちら】公演にはサプライズゲストとして、ミュージカル『RENT』のキャスト9名が登場。『めざクラ』20周年を祝って、代表曲『Seasons of Love』を披露してくれた。奇しくも『RENT』も伝説の初演から今年20周年で、ツアーカンパニーがアメリカから来日したばかりだ。なんと、冒頭を「52万5千600分♪」、「How about Love?」を「愛はどう?」と、日本語で歌ってくれたのにはビックリ。彼らの気持ちに心温まる。アリア・ホッジ(ソリスト)が声量たっぷり伸びやかな歌声でソロパートを歌い、アーロン・ハリントン(コリンズ役)がパワフルな低音で引き締める。素晴らしいコーラスに、客席はうっとり。一瞬にして、ニューヨークに飛んだ気分になった。歌唱後、日本で年越しする感想を聞かれると、「ワクワクしてるよ!!ニューイヤーカウントダウン公演があって、開演が12月31日の夜10時15分。ちょうど劇中で、観客の皆さんと一緒にカウントダウンができるんだよ。地元を離れての年越しは初めてなんだ」とエンジェル役のデヴィッド・メリノ。繊細な空気をまとい笑顔が愛らしいデヴィッドは現役大学生。いかにもエンジェル!の佇まいだ。日本人キャストもいるRENT。「アメリカで生まれましたが、父と母は日本人です」とアンサンブルのフタバ・シオダ。日本で公演に出るのは初めてで、「広島からおじいちゃんとおばあちゃんが観に来ます」と嬉しそう。「言ってみれば、凱旋公演だね」と軽部。最後にコリンズ役のアーロン・ハリントンが「どの人種、どの文化、どの国の人も、愛を歌うことで心が通じ合えるミュージカルです。日本での上演が楽しみです」とメッセージをくれた。高嶋は「もっと聴きたかったですね!」と興奮冷めやらぬ様子。ああ、『RENT』開幕が待ち遠しい。一気に期待が高まった。『RENT20周年記念ツアー来日公演』は、2016年12月15日(木)から31日(土)まで、東京・東京国際フォーラムCで開催。チケットは発売中。取材・文:三浦真紀
2016年12月15日世界的に有名なゴシックロマンの名作を大胆に解釈した韓国発グランドミュージカル『フランケンシュタイン』の日本版が2017年、年明け早々に待望の幕を開ける。メインキャスト8人全員が一人二役を演じること、個性の異なるWキャストの顔合わせの妙でも話題の注目作だ。12月初旬、開幕まで約1か月という段階の稽古場を訪ねた。ミュージカル『フランケンシュタイン』チケット情報物語は、19世紀のヨーロッパ。天才科学者のビクター・フランケンシュタインは友人のアンリ・デュプレと“生命創造”の研究に挑んでいた。しかし殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため身代わりとなり、アンリが命を落とす。ビクターは研究の成果を用いてアンリを蘇らせるが、誕生したのは“怪物”だった……。この日の稽古は一幕の後半、六場から。Wキャストのビクターとアンリは、まず中川晃教と小西遼生コンビが登場。そこは法廷。殺人を犯したと告白したアンリを裁くシーンで、アンサンブルたちが「死刑にして!」と口々に叫び、激しく歌うM8『殺人者』が迫力だ。演出の板垣恭一は少し場面を進めては止め、段取りを修正し立ち位置を確認。そのたびにあちこちで役者たちもディスカッションを活発に行っている。続いて濱田めぐみ、音月桂、鈴木壮麻3人の場面ではこの切迫した状況が主に歌詞によって語られていくのだが、さすが実力派揃い、話の流れがごく自然でわかりやすく伝わってくる。さらに場面変わってそこはビクターの部屋。M9『僕はなぜ?』を歌い、苦悩するビクターを中川はナイーブかつエキセントリックに演じ、その存在感には常に目を奪われる。短い休憩をはさむと、ビクターとアンリは柿澤勇人、加藤和樹コンビに交代。先ほどと同じ場面を何度も稽古するうち、流れはみるみるスムーズになっていく。中川が生まれながらの天才肌なビクターなら、柿澤は理系の秀才型のようにも見え、アンリも小西は心優しげ、加藤は冷静沈着な印象に見える。ビクターの「どうして……!」というセリフひとつとってもまるで雰囲気が違う。人間の弱さも生々しく表現され、心情がほとばしるような柿澤の歌に胸を打たれる。ストーリー展開が興味深く、楽曲は非常にドラマティックで、Wキャストの面白さと同時に一人二役のギャップも堪能できるという仕掛けも楽しい。抜群の歌唱力と表現力を併せ持つツワモノ揃いのキャスティングで、あらゆる才能のきらめきが味わえるのも大きな魅力だ。こうして同じ場面を繰り返し見学することで各自の魅力が浮きたち、すべての組み合わせで見比べてみたくもなった。東京公演は日生劇場にて2017年1月8日(日)から29日(日)、その後、大阪、福岡、愛知でも公演あり。取材・文/田中里津子
2016年12月13日シリーズ最終章を迎える『Club SLAZY The Final invitation~Garnet~』が、12月7日に開幕した。本作は、2013年9月からスタートした『Club SLAZY』シリーズ6作目。最終章となる本作では、Bloom(太田基裕)、Cool Beans(米原幸佑)、Deep(加藤良輔)、End(井澤勇貴)、Q(法月康平)、Odds(藤田玲)、Doo Bop(倉貫匡弘)という、これまでのシリーズに登場してきたキャスト達が勢揃い。深い悲しみを持った女性のみがたどり着ける“Club SLAZY”を舞台に、歌やダンスのパフォーマンスと、笑いあり涙ありのストーリーを繰り広げる。初日を前にした囲み取材でのコメントは以下。倉貫は「見どころは炒飯。細かい部分までこだわってるということで…(笑)」藤田は「この作品が大好きなので、Finalに関われて本当に嬉しいです。精一杯みんなで駆け抜けていこうと思っています」法月は「Final invitationと謳っておりますが、変わらずに最後まで同じことをやり抜きたいと思います。なのでみなさん、楽しみにしていてください」井澤は「初演から携わらせていただきまして、こうしてFinalを迎えられるということが光栄でもあり、寂しさもありますが。このFinal、ステージの魅力がたくさん詰まった作品ですので、最後まで全力をぶつけたいと思います」加藤は「今回はFinalですけど、いつも通りSLAZYらしく、みなさんにすみずみまで観てもらって、細かい部分まで楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。最後までみんなと一緒にがんばりたいと思います」米原は「初演からずっと同じ役をやってきて、この『Club SLAZY』自体が(役柄の)Cool Beansと一緒でおうちというか、稽古場に帰ってくるとホームに帰ってきたなと感じがいつもしていました。それがFinalというのは寂しい気持ちもありますけど、またいつか別の形でお会いできたらいいなと個人的には思っております。このFinalをぜひ最後まで楽しんでもらえたら」太田は「今回はFinalということでやっぱり見どころは炒飯じゃないかなと思っておりますけど(笑)、それがSLAZYらしさといいますか。僕も1作目からやらせていただいて、6作目まで続いて、本当にたくさんの方に愛されるような作品になりました。今回はFinalということで、SLAZYのファンの方々にたくさんの感謝と愛をこめて素敵なステージをみせれたらなと思っております。千秋楽までどうぞよろしくお願いします」公演は12月13日(火)まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて。
2016年12月09日山崎育三郎が主演するミュージカル『プリシラ』が、12月8日、東京・日生劇場で開幕した。初日公演に先駆け同日、山崎をはじめ出演するユナク、古屋敬多、陣内孝則、演出の宮本亜門が取材に応じ意気込みと見どころをアピールした。ミュージカル『プリシラ』チケット情報1994年に公開されたオーストラリア映画をもとにしたミュージカル。ロンドン、NYでも大ヒットした作品が日本に初登場する。物語はティック(山崎)、アダム(ユナクと古屋のWキャスト)、バーナデット(陣内)という3人のドラァグクィーンによるドタバタ珍道中を描くものだが、ゴージャスでユニークな衣裳の数々、マドンナやシンディ・ローパーなど往年のヒットソング満載の音楽も必見の作品となっている。ドラァグクィーン役……ということで、この日も山崎、ユナク、古屋はド派手かつ露出度の高い衣裳で登場。現場が一気に花が咲いたかのような華やかさになったが、演出の宮本曰く「(本番は)派手さも露出度もこんなものじゃない。本当にお客さんは観て驚くと思います!」とのこと。山崎も「僕の役は、男なのか女性なのかというところでわりと迷っているのですが、こういう衣裳を着ると、ふたり(アダムとバーナデット)に負けないくらい華やかに演じます。この格好をすると、自然とそういう気持ちになりますね」とノリノリの様子。一方でエレガンスなマダム風衣裳に身を包んだ陣内は「出来るだけエレガントにと宮本先生に言われています」と楚々と話すも、途中から「私なんか毎日Tバックよ~! きっと渡辺謙だったらやらないと思うわ!」等々、次々と裏側事情もぶちまけ、記者たちから爆笑を誘っていた。「一生分の女装したんじゃないかってくらいです。ダンスも普段のヒップホップ系のものとは違って、ボディラインを見せる感じのもので、楽しいです」(古屋)、「アダムの登場シーンが派手で良いです。『Material Girl』(マドンナ)という曲で、エロいダンスがあります、頑張ります!」(ユナク)とアダム役のふたりもそれぞれアピール。終始、笑いに溢れた楽しい会見だったが、宮本からは「本当にこれは覚悟しないと出来ない役。みなさんの覚悟がすごいんです。実はだいぶ厳しい稽古で、限界を超える挑戦で、皆さん苦しんでました。でもよくここまでやった…」と、キャスト陣へリスペクトの言葉が語られていた。公演は12月29日(木)まで同劇場にて。チケットは発売中。
2016年12月09日12月11日(日)に開幕する劇団四季の海外新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』。初日を目前に控えた8日、公開舞台稽古が開催され、その全貌がひと足早く報道陣に披露された。四季『ノートルダムの鐘』チケット情報『ノートルダムの鐘』は15世紀末のパリを舞台に、ノートルダム大聖堂の鐘楼に住む異形の青年カジモド、彼を世話する大聖堂大助祭フロロー、警備隊長フィーバス、その3人が同時に愛するジプシーの娘エスメラルダを中心に紡がれる物語。2014年にアメリカで開幕したこのミュージカル版は、1996年に公開されたディズニー長編アニメーションに基き、アニメで使用された名曲の数々も多数登場する。アニメ版でも印象的だったナンバー『ノートルダムの鐘』から始まり、哀愁溢れるメロディがグッと物語の中へ観客の心を誘うオープニング。だがアニメでは描かれなかったフロローの暗い過去やカジモドとの関係性、フィーバスの心の傷なども描かれ、よりディープな“大人のための演劇作品”となっている。大きなセット変換などはなく、木組みで作られたカジモドの住む鐘楼が、ベンチや柵を効果的に動かすことで、街中やジプシーたちの隠れ家へと変化していく。出演者も、ローブを脱ぎ着することで、どんどん違うキャラクターになっていく。シンプルだが演劇的で、想像力をかきたてられる演出が印象的だ。何よりも、シンプルだからこそ作品の要である音楽の良さも際立ち、役柄の感情を歌にぶつける出演者たちの熱唱が耳に残った。この日のカジモド役は、『キャッツ』のラム・タム・タガーや『リトルマーメイド』のエリックなど、これまでも劇団で主要な役を務めてきている飯田達郎。内にこもっていたカジモドの心が、物語が進むにつれ外に溢れ出していく、その感情の流れが見事だった。その飯田は「この作品では、愛にまつわる4人の関係を描きながら、“人間は、自分と異なる他者に接したときにどうすべきか”というメッセージも提起されています。15世紀末の中世パリでの出来事ですが、まさにこれは現代を映した嘘偽りない人間ドラマです。カジモドという役を通して、その本質的なメッセージをお伝えすることができたらと願っています」とコメントした。『ノートルダムの鐘』は12月11日(日)に東京・四季劇場[秋]にて開幕、東京公演は6月25日(日)まで。チケットは発売中。その後2017年7月には京都劇場でも上演されるが、さらに2018年4月からKAAT神奈川芸術劇場での上演も発表された。
2016年12月09日『わたしは真悟』は楳図かずおの漫画を原作に、フランス人演出家・振付家フィリップ・ドゥクフレが演出を手がける意欲作だ。ドゥクフレはアルベールビルオリンピックの開閉会式を30歳で手がけ、現在、米ブロードウェイで上演中のシルク・ドゥ・ソレイユ『PARAMOUR』の演出も手がけている。12月2日、KAAT神奈川芸術劇場で行われたゲネプロの様子をレポートする。ミュージカル『わたしは真悟』チケット情報ミュージカルと銘打っているが、古典的なミュージカルとはひと味もふた味も違う。独創的なダンスと音楽、芝居が見事なバランスで三位一体となった、今までにない味わいの作品といえるだろう。物語は小学生のふたり、ランドセル姿の真鈴(高畑充希)と悟(門脇麦)が東京タワーのてっぺんに登るところから始まる。結婚して、子供を作ろう。ふたりの無垢な想いは、タワーから飛びおりるという、とんでもない行動へと駆り立てる。街の人々の慌てふためく様子が、ドゥクフレらしい直線的な群舞で表され、緊迫した音楽が冒頭からググッと観客を物語に引きずり込む。町工場では、アーム型産業用ロボット(成河)が命を得る。赤いロボットはダンサーにより動かされるが、まるで生き物のよう。成河はロボットの心を演じ、その身体表現が胸に迫る。ロボットはしずか(大原櫻子)らの助けを得て壊そうとする人たちから逃れ、自分は何者なのかを探り始める。記憶を辿るうちに、真鈴と悟の子・真悟であることを確信する。しかし真鈴はロンドンの病院に入院し、フィアンセを名乗るロビン(小関裕太)と会う。悟も転居し、三者は離れ離れになっていた…。高畑は無邪気な子供から、思春期の繊細な少女へと変化する真鈴を熱演。高畑の可憐な歌声に、想像力が掻き立てられる。門脇は一途な男の子で、ごく自然体に見えるのが素晴らしい。手の振りなど原作漫画を思わせる動きが盛り込まれているのにも注目だ。大原はませた女の子役で魅了、歌手の時とは違う歌声がチャーミング。小関はストーカーのような男の役で、物語をダークに激しく彩った。成河はロボットながら、まっすぐで純粋。その秀でた表現力で抽象世界をリアルに伝えてくれる。踊りのダイナミックさ、ダンサーと一体化する映像はドゥクフレの得意技で、物語が宇宙規模の広がりを持つことを予感させる。音楽はデジタル中心だが、どこかほのぼのした味わい。オープンリール録音機が楽器として使われているのも効果的だ。子供と大人、コンピュータと人間、記憶と意識、テクノロジーと未来…。ドゥクフレは理屈では捉えきれない原作の凄みや煌めき、リスペクトをきちんと埋め込んだ上で、オリジナリティ溢れる舞台へと昇華させた。脱帽だ。公演は浜松、富山、京都を経て、2017年1月8日(日)から26日(木)まで東京・新国立劇場 中劇場にて。取材・文:三浦真紀
2016年12月06日全世界で1億冊以上読まれている大ベストセラー官能小説をパロディ化したミュージカル『フィフティシェイズ!~クリスチャン・グレイの歪んだ性癖~』が11月28日に開幕した。主演は関西ジャニーズJr.の浜中文一が務め、演出と上演台本は河原雅彦が手掛ける。公演初日を観劇した。ミュージカル『フィフティシェイズ!』チケット情報官能小説『50 Shades of Grey』をパロディ化し、2014年にオフ・ブロードウェイで上演された作品。若く有能だが心から人を愛せないサディストの青年実業家・グレイ(浜中)と、うぶで恋すら知らない女子大生・アナ(玉置成実)との歪んだ愛のかたちを過激な性描写で描いた原作を、“悪乗り×変態×コメディ”200%というスーパー・エロティック・ワールドを描く、R-15指定のコメディミュージカルとなっている。関西ジャニーズJr.として幅広く活躍する浜中、相手役にブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』での好演も記憶に新しい玉置、という爽やかな組み合わせだが、「劇中、信じられないほど下品な場面がごまんとありますが、お忘れください」というアナウンスで開幕した本作。バンドの生演奏の中、明星真由美、安田カナ、佐藤仁美が演じる主婦3人組が『50 Shades of Grey』を読書するという形で進行役となって物語は進んでいく。コミカルな芝居と美しい歌声で紡ぎ出される台詞や歌詞は…とにかく過激!浜中が普段であればなかなか声に出せないような言葉の並ぶ歌詞を軽快に歌い上げ、玉置が変態プレイについて語り、ふたりで腰を振り、股を開き、キレッキレで踊るというかなり振り切れた表現に、客席には大笑いしている人もいれば、驚きのあまりかたまっている人も。本作の元であるオフ・ブロードウェイの演出すらパロディにしているシーンもあり、もう何が何やらという状態だ。2幕は1幕以上にアブノーマルな世界に突入していき、「そんな恰好まで見せる!?」というようなシーンも。大澄賢也演じるメキシコ人や安田演じるアナの友人もかなりの存在感で笑わされる。最後まで息つく暇がないが、最後まで目が離せないミュージカルだった。公演は12月11日(日)まで東京・新宿FACEにて。その後、12月28日(水)・29日(木)に大阪・サンケイホールブリーゼにて。取材・文:中川實穗
2016年12月02日日本でも大ヒットした同名映画が原作のミュージカル『キューティ・ブロンド』が来年3月に上演される。日本では今回が初演となる本作は、ミュージカルとしてもブロードウェイでトニー賞7 部門ノミネート、ウエストエンドではオリヴィエ賞3部門受賞した超人気作。その主人公で、恋もお洒落も全力投球な女子大生・エルを演じる神田沙也加に話を聞いた。【チケット情報はこちら】「ニューヨークでミュージカルを観ていたので、やっと日本に来るんだって嬉しさがあります。それに今でもこの映画が一番好きっていう女の子が多いので『エルやるんですね』ってすごく言ってくれて。嬉しかったです」と出演の喜びを語る神田。自身が演じるエルの魅力について「絶対的ヒロインの可愛らしさと説得力を持ちつつ、何をやってもいろんな意味で人の心をキャッチする素質を持っている人だと思います」“歩くバービー”と言われるエル。「お衣裳もすごく楽しみ!ビジュアルにはかなり力をいれて作るんじゃないかなと思います。最初にカツラ合わせをしたときに、『キューティ・ブロンド』というタイトルなので、演出の上田(一豪)さんをはじめ、みんなブロンドの色味にすごくこだわっていたんですよ。やっぱりエルは舞台上に出てきたときに特別なブロンドでなくてはいけないから、と」原作の映画は「何度も観てますが、さらにここからすごい回数を観ると思います。私は、元々キャラクターのイメージが皆さんの頭に強くある場合は、それを完コピすることに価値を感じるタイプなので。仕草とか目の動き方とかそこまで完コピするために、めちゃくちゃ観ると思いますね」コメディ要素の強い本作。日本での上演については「日本人の風貌で日本語でやったときに、テンションをどこまでキープできるかなっていうのが課題だと思っています。コメディ要素を“落ち着かせる”という方法を取らずにどこまでスライドできるかというのが、かなり勝負どころではないかと」。そのためにはプライベートも作品に捧げるという。「やっぱり日本人でもあるし、役柄のテンションと温度感にギャップを感じると思うんですよ。そのギャップを常に埋めておくにはどういう生活を送ったらいいかなっていうことは考えてます。だからちょっとピンクの服は買っておこうと思って(笑)」「かわいいもの好きな女子はもちろんですし、実力ある諸先輩方がいらっしゃいますからミュージカル好きさんにもぜひ観に来ていただきたいです。入口広くお待ちしています!」(神田)公演は3月21日(火)から4月3日(月)まで東京・日比谷・シアタークリエにて。その後、全国7か所を巡演。チケットぴあでは12月3日(土)よりプレイガイド最速先行を受付開始。取材・文:中川實穗
2016年12月02日11月25日、日本初演30周年記念公演『レ・ミゼラブル』の新キャストお披露目会見が行われた。すでに公式HPで発表されていたキャストに加え、この日、新たに相葉裕樹と小南満佑子が加わり、9名がお披露目となった。様々なジャンルから集まった個性豊かな新キャスト陣が緊張した面持ちで、抱負やオーディションの様子を語った。生田絵梨花(コゼット)「中学生の頃からコゼットを演じたいと思い始め、声楽を学び、目標にしてきました。オーディションでは、『あなたは本当に楽しそうに歌うのね』と言われました。本番でも楽しむことを忘れず、光のような存在でありたいです」小南満佑子(コゼット)。2015年からアンサンブルに参加。「コゼットは清純なイメージでしたが、演出家に芯の強い女性だと教えていただいて。私らしいコゼットを演じたいです」内藤大希(マリウス)「ミュージカル俳優のステイタス的な作品。オーディションでは松原さんと役を替えて歌ってと言われ、立ち位置を変えたら冗談でした(笑)」橋本じゅん(テナルディエ)「小学生の時、先生の『ああ無情』の読み聞かせを聞き、テナルディエは大っ嫌いでした(笑)。でも今回、明日への活力を分かち合える役だと実感しました」鈴木ほのか(マダム・テナルディエ)。1987~91年日本初演でコゼット役、1997~2001年ファンテーヌ役。「レ・ミゼラブルに帰ってきたことを心から感謝します。オーディションで鳳蘭さんの動きをそのままやったら、なぜ本番みたいに動けるのかと不思議がられました」唯月ふうか(エポニーヌ)「オーディションでは『エポニーヌは切ない気持ちの他に、強い気持ちも持っている。見つけてみて』と言われて何度も歌ったのですが、その時は見つけられず、悔しい思いをしました。本番では絶対にエポニーヌを見つけて、自分ならではの役を作り上げたいです」松原凛子(エポニーヌ)「コゼットとエポニーヌで受けていました。エポニーヌを演じたら、演出家の方から『色気のあるエポニーヌ。それはありだね』と」相葉裕樹(アンジョルラス)「20代のうちに帝国劇場に立ちたくて挑戦。オーディションでは『君の熱はどうやったら上がるんだい?』と言われ試行錯誤。自分でも見たことのない表現ができました」二宮愛(ファンテーヌ)「エポニーヌで受けましたが、最終で『ファンテーヌやってみてよ』と突然言われ、歌いました。色黒で体も強靭な私が?とびっくり」『レ・ミゼラブル』は2017年5月25日(木)から7月17日(月・祝)まで、東京・帝国劇場にて。プレビュー公演は5月21日(日)から5月24日(水)まで。取材・文:三浦真紀
2016年11月29日12月に開幕する劇団四季の海外新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』。その稽古の様子が11月24日、報道陣に公開された。劇団四季『ノートルダムの鐘』チケット情報『ノートルダムの鐘』は15世紀末のパリ、ノートルダム大聖堂の鐘楼に住む異形の青年カジモドを中心とした物語。カジモドと、彼を世話する大聖堂聖職者フロロー、警備隊長フィーバス、その3人が同時に愛する娘エスメラルダの間で繰り広げられる人間ドラマが描かれていく。ミュージカル版は1996年に公開されたディズニー長編アニメーションに基き、アニメと同じ楽曲も使用されるが、ストーリーとしてはヴィクトル・ユゴーの原作小説に回帰し、人間それぞれが抱える光と闇に焦点を当てている。この日の稽古場では3つのシーンが披露された。まずはカジモドが鐘楼の外への世界への憧れを歌うナンバー『陽ざしの中へ』を、カジモド役候補の海宝直人が力強い声で歌う。異形の存在であるカジモドは、背を丸め、脚をひきずり、話す声も絞り出すようなもの。しかし歌いだすと一変、彼の内面の美しさが発露されるように、美しい歌声だ。体当たりの演技を見せる海宝の姿に、報道陣も集中して見入る。続けてエスメラルダ、フィーバス、フロローらメインキャラクターが勢ぞろいする“道化の祭り”のシーン。エスメラルダ役候補の岡村美南の健康的な色気、長い手足が映える美しいダンスがひときわ目を引く。さらに聖職者の身でありながらエスメラルダに邪な感情を抱いたフロローの葛藤を歌うナンバー『地獄の炎』へと。ここではベテランの芝清道が、魂をぶつけるかのような大熱唱。このミュージカルの見どころのひとつであるクワイヤ(聖歌隊)とともに、ドラマチックかつ荘厳な世界観を表現していた。またシーン披露の合間には、演出のスコット・シュワルツが俳優たちのそばに行き、1曲の中のキャラクターの心情の変化を丁寧に、身振りを交えてアドバイスをしている姿も印象に残った。稽古場披露後は、カジモド役候補の海宝、飯田達郎、田中彰孝の3人と、シュワルツ氏の合同取材も開催。本作の演出意図をシュワルツ氏は「実際の原作は、非常に残酷で痛々しい作品であり、ディズニー作品ではなかなか取り上げない領域。でもその中核にはやはり希望があり、闇を排除する光が表現されている。劇場版を作るにあたり、ユゴーが描いた闇を忠実に表現しつつ、それでも望みを諦めないといった点を意識した」と説明。カジモド役候補の3人は、「カジモドはピュアで、まっすぐ。それゆえに傷付き傷付けられる。そういう繊細さがありながら肉体的にはパワフル。そこをきちんと表現したい」(海宝)、「僕は作品の中心(主人公)の役どころをするのが、今回が初めて。未知の領域ですが、俳優としても人間としても大きく一歩前に出れる役になると思っています」(飯田)、「楽曲はアニメ版と同じものを使っている部分がありますが、その中で歌われている感情は、より原作に近づいていたり、よりお客さまに対して生の感覚をぶつけるものになったりしています」(田中)と、それぞれ心境や意気込みを語った。『ノートルダムの鐘』は12月11日(日)に東京・四季劇場[秋]にて開幕。
2016年11月25日あべ美幸の同名漫画が原作のミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章が、11月23日に開幕した。本作は、犬塚信乃や犬川荘介ら8つの玉に導かれた若者たちが、それぞれの真実の願いや戦う意味をみつけていく冒険ファンタジー。2015年8月に上演された初演の続編で、今作では犬阪毛野や犬山道節との出会いや、琥珀とのエピソードを描く。『八犬伝―東方八犬異聞―』二章 チケット情報前作に引き続き、演出・音楽は浅井さやか(One on One)、脚本は空想組曲のほさかよう。犬塚信乃役の坂口湧久ら続投メンバーに加え、犬川荘介役の松村龍之介、犬坂毛野役の安里勇哉(TOKYO流星群)、犬山道節役の山本一慶、九重役の帆風成海、琥珀役の岡村さやかが今作から出演する。舞台は全員での歌唱で幕を開けた。感情の温度まで伝わってくるような一人ひとりの歌唱はもちろん、全員で歌ったときのハーモニーも美しく印象的。劇中のコーラスもすべて出演者が袖で歌っているという。歌もナチュラルで聴きやすく、ミュージカルが苦手な人でも入り込みやすいはず。浅井によるオリジナルの楽曲はどれもキャラクターに寄り添うような温かさを感じた。ストーリーに妖や異形のもの(刀、動物)が登場する本作だが、前作同様、映像は使わずにマイムやダンスなど肉体のパフォーマンスで表現。村雨(天羽尚吾)の常に舞っているかのような軽やかな動きや、荘介と完全に動きをリンクさせた四白(美木マサオ)は本作の魅力のひとつだ。布やロープを使った演出も幻想的だった。ゲネプロ後の会見では「それぞれのキャラクターの“生きる意味”が違う形で描かれている。その“生きる意味”を大切に皆さんに届けられたら」(山本)、「オープニングやクライマックスは演じていても鳥肌が立つ。ぜひ観ていただきたい」(畠山遼)、「これほどまでに全員が一丸となって作っているカンパニーも珍しい」(三上俊)と本作の魅力をアピール。最後に松村が「この舞台に立てたことを光栄に思います。原作の世界を尊敬しつつこのメンバーでしかできないものを皆さんにお届けできるよう精進します」、坂口が「またこの作品に参加できることがすごく嬉しいです。前回よりもいい『八犬伝』、前回よりもかっこいい信乃が演じられるように頑張ります」と挨拶した。ミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章は、11月27日(日)まで東京・全労済ホール/スペース・ゼロにて。取材・文:中川實穗
2016年11月24日1973年のデビューから舞台に立ち続けて43年、さまざまな役に挑んできた市村正親が来年春、ミュージカル・コメディ『紳士のための愛と殺人の手引き』に出演する。そこでまた前代未聞のチャレンジをするそうで、チケットの発売を前に話をうかがった。ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』チケット情報本作は2014年トニー賞で作品賞、脚本賞ほか4冠に輝いた大ヒット作。今回、満を持しての日本初上陸だ。物語の舞台は19世紀初頭のイギリス、伯爵継承順位8番目の男、モンティ(ウエンツ瑛士・柿澤勇人Wキャスト)が莫大な遺産を手に入れようと、とんでもない計画を思いつく。それは継承順位上位の者をすべて消すこと。その殺される役、8役すべてを演じるのが市村だ。「全部ね、殺される役ですよ、要するに僕は邪魔者(笑)。オープニングのコーラスから始まって、次から次へと殺されるのを全部やるという、まさに、僕のために作られた作品です(笑)」。『クリスマス・キャロル』では登場人物54役をひとりで演じたのだから、8役はお手のもの?「いやいや、歌があるし大変です。普通は殺されたらもう楽屋に戻れるんだけど、今回はまたメイクを変えて、次の人。それを8回、体力勝負ですよ。なんで引き受けたんだろう? って(笑)」。貴族に陸軍少佐、女優に牧師など老若男女ばらばら、筋トレ中に、ハチに刺されて、転落死あり、舞台の本番中にと、殺され方も奇妙キテレツだ。そんなドタバタの騒動が軽快な音楽とともに描かれ、ドキドキハラハラ、抱腹絶倒!「8役扮装を変えて撮影するだけで4時間かかりました。それぞれどんな風に演じるのかは、これから、あぁでもない、こうでもないと試行錯誤していくんですが、演じるっていうのは役を体に入れること。何回も、何回も稽古して、自由自在にセリフが出てくるようになったら力も抜けて、自然と演じ分けられるようになるんです」。大変だと言いながらもどこか楽しそうな演劇界のレジェンド、今回は若手との共演も楽しみだと言う。「ウエンツとはね、前から何か一緒にやりたいね、と話していてやっと実現しました。カッキー(柿澤)とは『スウィーニー・トッド』で一緒だったし、アンサンブルメンバーもみんなパワフル。知り合いばっかで楽しみだね。来年、本番を迎えて、あぁ引き受けて良かった!と思えるように頑張ります」。公演は2017年4月8日(土)から30日(日)まで、東京・日生劇場にて。チケットは12月10日(土)一般発売開始。チケットぴあではインターネット先行抽選を実施中、11月28日(月)午前11時まで受付。取材・文:大西美貴
2016年11月24日トップスター明日海(あすみ)りお率いる宝塚歌劇花組の宝塚舞踊詩『雪華抄(せっかしょう)』、トラジェディ・アラベスク『金色(こんじき)の砂漠』が11月11日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。本公演でトップ娘役・花乃(かの)まりあが退団する。宝塚歌劇花組『雪華抄(せっかしょう)』/『金色(こんじき)の砂漠』チケット情報第一幕の舞踊ショー『雪華抄』は「花鳥風月」をテーマに季節の移ろいが表現されている。幕開けは、暗転の中で拍子木の音を合図にパッと照明が舞台を照らす演出“チョンパ”。梅の花に彩られたステージに華やかな衣裳をまとった組子たちがズラリと並び、優雅に舞い踊る様は壮観で、一気にその幻想世界へと引き込まれる。そして専科・松本悠里による花椿の舞へと続いた後、熊鷹と狗鷲の激しい戦いを明日海と柚香光(ゆずか・れい)が、歌舞伎のように見得を切りながらカッコよく魅せる。また彦星と織姫がしっとりと歌い踊る「七夕幻想」、海にちなんだ民謡を粋に歌いつないでいく「波の華」、明日海と花乃が激しい情愛を表す「清姫綺譚」が繰り広げられ、フィナーレでは桜の花が舞い散る中で総踊り。豪華絢爛で日本の美の素晴らしさを改めて感じさせてくれる構成だ。丸山敬太デザイン・監修による衣裳も繊細で美しく、舞台に華やかな彩りを与えている。上田久美子作・演出による第二幕の『金色の砂漠』は、砂漠の王国を舞台にした“愛と憎しみ”の物語。明日海が花乃演じる王女の奴隷役という関係性が面白い。王女タルハーミネの奴隷として育てられたギィは、王女の身の回りのことをすべて世話し、災いがあれば身代りになる。王女に「奴隷は砂や土と同じ」と言われ、自分の背中を踏み台替わりに差し出すことも常識の世界。王女に思いを寄せるギィはいつか王女を自分のものにしたいと考えるが、「侮辱をするな」と突っぱねられる。しかし王女も次第に自分の気持ちに気付き始めて…。立場の違いという大きな壁がふたりを引き裂き、愛は憎しみに変わる。明日海はその愛情も憎しみも沸々と感情を高ぶらせて見せ、花乃は誇りに縛られた傲慢な王女を、ときには切なさを交えながら演じる。また、ギィと対照的な存在で、自身の立場を冷静に見つめる第二王女の奴隷ジャー役の芹香斗亜(せりか・とあ)、タルハーミネの婿となるテオドロス役の柚香らの好演もドラマを色濃くする。明日海・花乃コンビが集大成に見せる壮絶な愛の物語。ふたりの燃えたぎる情熱に感情を激しく揺さぶれるはずだ。公演は、12月13日(火)まで兵庫・宝塚大劇場、2017年1月2日(月・祝)から2月5日(日)東京宝塚劇場にて上演。11月23日(水・祝)11:00まで東京公演の先行抽選受付を実施中。取材・文:黒石悦子
2016年11月18日世界中で上演され、日本では1992年に初演以来、再演を繰り返してきた人気ミュージカル『ミス・サイゴン』。ベトナム戦争を背景に、ベトナムの少女キムと米兵クリスの出会いと別れを描く物語で、主人公のキムを過去5回にわたって演じたのは、知念里奈だ。その知念が今回は、クリスを愛するもうひとりの女性、妻のエレン役に挑戦している。その心境を聞いた。ミュージカル「ミス・サイゴン」チケット情報「2年前の『ミス・サイゴン』の公演で、キムを初めて演じてからちょうど10年が経ちました。いつも彼女を近くに感じながら生きてきましたが、年齢を重ね、私の人生も大きく変化して、17歳の女の子を演じるのが難しくなってきたんですね。2年前に、『やれることは全部やり切った。寂しいけれど大好きなこの作品とはお別れだ』と思って千秋楽を迎えたんです」。一度、サヨナラしたはずの作品だったが、日本側のスタッフからエレン役のオーディションを受けてみないかと誘われた。ベトナム戦争のさなかキムとクリスは結ばれるもサイゴン陥落の混乱の中引き裂かれる。アメリカに帰還したクリスは、新たな人生を始めるためアメリカ人のエレンと結婚する。「お客さまにとっても私はキムのイメージがあるから、あまり時間も経たずにアメリカ人になって登場するのはどうかと(笑)。色々悩みましたが、エレンに興味もわき、やってみたらと言われたら、やっぱりやりたくなったんです(笑)」オーディションを勝ち抜き、エレン側から物語を語る立場になった。「クリスはひどい人という女性は多く、そういう面もあるかもしれない。でもクリスを支える奥さんの身としては、クリスが悪いのではない。悪いのは戦争で、誰も悪くないんだと思います」。2012年の新演出版から、クリスとキムとの間に息子のタムがいると知ったエレンが胸中を歌う「メイビー」という楽曲が新しくなった。「『望むのなら彼女(キム)の元へ、私忘れてくれていいの』という歌詞があるんですが、キムがエネルギッシュで能動的なら反対にエレンはすべてを許すことができる受け身の役。そこまで言えるってすごい人だなと思います。ある日の公演でキム役のキム・スハちゃんと対峙した後、メイビーを歌って楽屋に戻ったら涙が止まらなくて。しばらく楽屋でブルブル震えていました」。エレンの苦しみとキムへの思いが激しく去来したという。今年でデビュー20周年を迎えた。「15歳のときにひとりで上京して、寂しかったですね。今は子供を交えて家族でご飯を食べているなんて、そのころは想像もできなかった。もう歌手よりも舞台での生活のほうが長いんです。今回、『キムだったのに何故、エレンに変わるの』という人もいたんですが、やりたいんですよね。やっぱり舞台が好きなんです」と幸せそうにほほ笑んだ。11月23日(水・祝)まで東京・帝国劇場にて上演中。その後、岩手県民会館 大ホール、鹿児島市民文化ホール 第1ホール、福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、大阪・梅田芸術劇場メインホール、愛知県芸術劇場 大ホールで上演。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2016年11月15日