大日本印刷(DNP)は9月30日、総務省家計調査(家計消費調査年報)や国勢調査などのオープンデータを活用してエリアの特性を可視化するサービス「エリアダッシュ」に、新たなレポートメニュー「エリアダッシュV3」を追加したと発表した。このサービスは、年齢・性別・居住形態・家族構成などの属性情報から、生活者を60の属性別集合(クラスター)に分類して地図上に色分け表示するとともに、各クラスターを郵便番号別に抽出。商品やサービスなど約600品目についての購買情報をもとにDNPが独自に構築した家計消費データベース(DB)と、クラスター分析を組み合わせてエリアの特性を抽出できることから、折込チラシやDMなどの効果的な配布エリアの選定が可能となる。今回発売する新しいバージョンには、「商圏設定レポート」「オリジナル商品指数レポート」を追加。商圏調査レポートでは、調査対象の商圏(半径50km以内で任意設定可能)に対し、世代別の人口分布や競合店の位置状況、レスポンス結果などを調査して、その商圏がどのような状態にあるかを考察して分析結果を提供。既存店舗の商圏調査や、今後の出店計画の立案に活用できる。また、オリジナル商品指数レポートでは、訴求対象商品の購入意欲が高いクラスターを分析・特定し、そのクラスター分布状況を表示する。価格は「エリアダッシュV3」の各種レポートが1エリア20万円からとなる(価格は、レポート内容によって変動)。また、同システムをパッケージ化した「エリアダッシュ on MarketAnalyzer」も同日に発売。「エリアダッシュV3」の機能を活用して、自由に地域特有の消費行動や商圏の分析ができる。販売価格は500万円で、初期導入費用10万円、年間保守費用45万円となる。DNPは、エリアプロモーションを積極的に展開する企業に向けて「エリアダッシュV3」の各種レポートメニューと「エリアダッシュ on MarketAnalyzer」を提供し、関連する制作物などを含めて、年間20億円の売上を目指す。
2014年10月01日東京大学は8月4日、物質中に生じるらせん型に配列した電子スピンが、光の進行する向きに依存して光吸収を大きく変化させる機能性を有していることを発見したと発表した。同成果は、同大大学院 工学系研究科の高橋陽太郎特任准教授、木林駿介大学院生(当時)、十倉好紀教授、および理化学研究所 創発物性科学研究センターの関真一郎ユニットリーダーらによるもの。詳細は、英国のオンライン科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。研究グループは、らせん型に電子スピンが配列したとき、ギガヘルツからテラヘルツの周波数帯にエレクトロマグノンと呼ばれるスピンの集団運動が現れることを発見した。さらに、らせん型のスピン配列が持つ"磁性"と"カイラリティ"という2つの性質によって、エレクトロマグノンが巨大な磁気カイラル効果を示すことを明らかにした。そして、磁気カイラル効果により、光の進行方向に依存して吸収係数を最大400%変化させることに成功したという。将来の大容量通信など、さまざまな応用が期待されている高周波のギガヘルツ帯からテラヘルツ帯では、光(電磁波)の制御のための技術開発が行われている。今回の結果は、アイソレータや、物質の光吸収を外部の電場や磁場で操作可能な光(電磁波)制御素子としての展開が期待できるとコメントしている。
2014年08月06日京都大学は7月14日、不斉有機分子触媒の新技術として、ラジカル反応を促進・制御する不斉有機硫黄ラジカル触媒を実現したと発表した。同成果は、同大 理学研究科の橋本卓也助教、川又優博士課程学生、丸岡啓二教授らによるもの。詳細は、英国化学誌「Nature Chemistry」に掲載された。農薬や医薬品などに使われる分子は、実際には立体的な構造をしており、その空間的な広がり方が薬としての作用に決定的な役割を果たす。構造が単純で安価な分子から医薬品などに使えるような、複雑で付加価値の高い分子を作るには、そのような空間的配置をコントロールしながら、分子と分子を繋げることのできる不斉触媒を用いることが効果的である。このような触媒としては、金属を活性中心に持つものが多用されているが、資源量・環境毒性などが懸念されている。そこで、持続型・環境調和型の不斉触媒として、炭素・窒素・酸素といった地球上どこにでもある元素を巧みに利用したメタルフリー有機分子触媒が注目され、目覚ましい発展を遂げている。しかし、この十数年、盛んに研究されてきた不斉有機分子触媒は簡単なイオン反応という形式でしか分子を繋ぐことができず、原料に使える分子・作られる分子(成物)ともに金属触媒の汎用性には遠くおよんでいない。今回、研究グループでは、この現状を打開する手段として、従来の不斉有機分子触媒では利用されてこなかった、ラジカルという化学種を使うことに着目した。具体的には、有機分子である有機硫黄ラジカルに、不斉触媒としての機能を持たせラジカル反応をコントロールしながら、分子を繋ぐという技術の開発である。ラジカル反応は、イオン反応と相補性のある反応形式で、アクリル樹脂のような日用品に含まれる高分子を作る際に使われている。また、ラジカルは元来高い反応性を示す化学種であることから、医薬品など複雑な立体を持つ低分子の合成に使う研究はほとんど行われていなかった。中でも、有機硫黄ラジカルは不安定な化学種であり、安定なジスルフィドという分子に光(紫外線)を当てて、硫黄と硫黄の結合を均一開裂させることで発生させる。しかし、光の照射を止めると、ジスルフィドに戻ってしまうため、この有機硫黄ラジカルを触媒として使うには反応を行っている間、光を当て続ける必要がある。通常の実験では光源として水銀ランプを用いているが、環境調和の観点から太陽光を利用することもできるという。将来的には、この研究を拡張していくことで、不斉有機分子触媒がより汎用性の高い有機合成ツールになると期待される。しかし、現状では未熟な技術であるので、触媒の単純化、触媒量の低減、触媒概念の一般化を検討し、さまざまな化合物の効率的供給ができる技術になるよう、研究を推し進める。また、今回の研究で得られた知見を基に、有機分子触媒と太陽光を組み合わせた新しい環境調和型不斉触媒の発展にも努めていきたいとコメントしている。
2014年07月15日千葉大学は7月1日、螺旋波面とドーナツ型の強度分布を持つ光(光渦)をテラヘルツ波帯で高効率に発生できる螺旋位相板を簡易な機械研磨技術によって開発したと発表した。同成果は、同大大学院 融合科学研究科の尾松孝茂教授、宮本克彦准教授らによるもの。詳細は、米国の物理学協会誌「Applied Physics Letters」のオンライン版に掲載された。光渦は、走査型レーザ顕微鏡の空間分解能を回折限界以下に向上できる光である。これまで光渦の発生は主として可視から近赤外で行われていた。一方、分子の指紋領域と呼ばれるテラヘルツ波帯は、様々な物質が強い吸収を示す波長域である。その特徴を生かした薬物検査やキュリティ検査、分子分光などのイメージング技術(テラヘルツ波イメージング)が近年注目を集めている。しかし、波長の長いテラへルツ波では、空間分解能が実用化に向けた大きな技術的障壁となっている。テラヘルツ波帯で光渦が高効率に発生できれば、テラヘルツ波イメージングにおいて回折限界を超えたマイクロメートルスケールの高い空間分解能を実現できる。また、光渦は、物質を螺旋構造体へ変形できることが知られている。したがって、テラへルツ波帯における物質科学にも貢献が期待できる。今回の研究では、テラヘルツ波帯で光渦を発生させるための螺旋型位相板をTsurupicaと呼ばれるポリマー樹脂を機械研磨することで開発したという。この螺旋位相板はテラへルツ波帯で85%以上の高い透過率を示し、60%以上の高い効率でテラへルツ波を光渦へ変換することができる。なお、研究グループでは、同技術がテラヘルツ波イメージングで問題となる空間分解能を飛躍的に向上できる技術として応用が期待できるとコメントしている。現在、この螺旋位相板はパックスから購入できる。
2014年07月03日慶應義塾大学(慶応大)は、神経細胞を取り囲むように脳に存在するグリア細胞の突起で起こる微小なカルシウムシグナル(カルシウム濃度の変化)を鮮明に可視化できる手法を開発したと発表した。同成果は、同大医学部 精神・神経科学教室の田中謙二 特任准教授、東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻細胞分子薬理学分野の金丸和典 助教、同 関谷敬 助教、飯野正光 教授らによるもの。詳細は「Cell Reports」に掲載された。グリア細胞の一種「アストロサイト」は、神経細胞の情報処理や脳血流の制御などの平常時の脳機能に貢献するだけでなく、神経変性疾患や脳梗塞といった病態の制御にも深く関わることが示唆されている細胞で、その活動の指標とされているのが細胞内カルシウムイオンの濃度変化(カルシウムシグナル)だ。しかし、従来の観察手法は、生きた動物個体におけるアストロサイトのカルシウムシグナルを、細胞の中心部の構造である細胞体で観察するものがほとんどであったため、アストロサイト全体あるいは微細突起でカルシウムシグナルがどのような時空間動態を示すかは明らかになっていなかった。今回、研究グループは、超高感度カルシウムセンサ「YC-Nano50」をアストロサイトのみに発現する遺伝子改変マウスを作製。同センサが発する蛍光により微細な突起を観察することに成功したという。さらに、同マウスに生体内イメージング法を用いて、アストロサイトのカルシウムシグナルを測定したところ、動物の心拍・呼吸・運動といった生体内イメージング法では不可避なノイズの影響をある程度減らすことができることが確認されたという。この結果、アストロサイトのカルシウムシグナルの新しい特性として、アストロサイトの微細突起に限局したカルシウムシグナルが多く、細胞体ではほとんど起こらないことを発見。このカルシウムシグナルは、夜空に瞬く星々を連想させることから「Ca2+ twinkle」と命名したとする。また、遺伝子改変マウス尾部を刺激した際のアストロサイトのカルシウムシグナルを観察した結果、アストロサイトの微細突起の先端部分から生じたカルシウムシグナルが徐々に細胞内部へと広がり、最後に細胞体に到達する様子を鮮明に可視化することに成功したという。今回の手法について研究グループは、アストロサイトの活動の謎を解き明かすための極めて強力なツールとなると説明しており、今後のグリア細胞、ひいては脳のさまざまな生理機能や神経変性疾患・脳梗塞などの病理機能解明に光明をもたらすことが期待されるとしている。
2014年07月02日(画像はプレスリリースより)富士フイルムが断層画像解析システムを開発富士フイルムは光による肌の見え方について研究の際に、肌内部における光の透過・反射により見え方に差が出ると仮説を立てた。今回、特定の波長ごとに可視化できる断層画像解析システムを開発。可視光の波長ごとに肌の断層画面を撮影し、透過・反射光を解析した。研究結果青色光、緑色光、赤色光のうち、赤色光は肌深部の真皮上層まで多くの光が透過し、光を反射する皮膚の領域が広く、また、多くの光を反射することを確認した。赤色光は多くの反射光が得られるため、肌を内側から照らし出し、肌に透明感を与えることが判明。赤色光のシミや毛穴などの凹凸を目立たせずに、肌を美しくみせるのはこのメカニズムに基づくことを解明。今後の展開断層画像解析システムのデータは1回の撮影で奥行きと広がりの情報を瞬時に得ることができることから、ヒトの肌のような生体サンプルでも撮影可能。医学的な応用が期待される。富士フイルムは化粧品の開発にも応用することを発表。このデータは6月26日に開催に「日本光学会主催第39回光学シンポジウム」にて発表予定。【参考】・富士フイルムプレスリリース
2014年06月26日(画像はイメージです)アロエステロール(R)の光老化モデルマウスに対する効果森永乳業は、第68回日本栄養・食糧学会でアロエステロール(R)の皮膚の光老化に対する予防効果を発表した。紫外線照射で誘導される皮膚水分量とシワの深さの変化を予防することを明らかにした。(画像はプレスリリースより)アロエステロール(R)森永乳業はアロエベラゲルから抗肥満効果および抗糖尿病効果を示す有効成分としてアロエステロール(R)を同定。昨年は乾燥肌に女性56名がアロエステロール(R)を含む食品を8週間摂取したところ、無摂取群に比べて腕の皮膚水分変化量の増加傾向が見られ、シワ平均深度が有意に低下することを報告。この水分保持作用はアロエステロール(R)が繊維芽細胞のコラーゲンやヒアルロン産再生能を高めることによると推定。アロエのは古くから傷薬として使われてきたが、その有効成分は主にアロエに含まれる多糖類と考えられていた。今回の実験に用いられたアロエステロール(R)は多糖類ではなく、植物の細胞膜を構成する脂質の一種である植物ステロールであることから、アロエの効果に新しい切り口を発見。アロエステロール(R)が経口サプリメントとして乾燥肌にうるおいを与えたり、日焼けによる皮膚の老化に対するアンチエイジング作用を示したりすることが期待される。【参考】・森永乳業プレスリリース
2014年06月10日オーデリックは5月7日、LEDダウンライト「SERIES Q6」を発表した。非調光・プルレス段調光・連続調光の3タイプがあり、発売は非調光タイプが5月20日、ほかは6月1日に発売される。希望小売価格は3,600円~7,800円(税別)。明るさは白熱灯60Wクラスと100Wクラスがあり、それぞれにφ100mmとφ125mmの埋め込み穴に対応するモデルが用意されている。光色は昼白色と電球色から選択できる。SERIES Q6はリーズナブルな価格もその特徴で、最も価格の安いφ100mmの埋め込み穴に対応した60Wクラスの非調光モデルは、3,600円(税別)となっている。プルレス段調光タイプは、壁スイッチのオン・オフによって段階的に調光が可能なモデル。壁スイッチを1回オンにすると100%の光量で点灯し、1.5秒以内にオフ・オンの操作を行うと50%に、さらに1.5秒以内にオフ・オンの操作を行うと3%の光量で点灯する。壁スイッチは特殊なタイプではなく、既存のものを使用することが可能だ。連続調光タイプは、LED用の調光器を使用するモデル。器具光束は、白熱灯60Wクラスが565lm(ルーメン)で100Wクラスは830lm(いずれも昼白色タイプ)。効率は60Wクラスが86.9lm/Wで、100Wクラスが92.2lm/Wだ。光源寿命は、いずれも50,000時間。
2014年05月07日放射線医学総合研究所(放医研)は1月23日、放射性セシウム(Cs-137およびCs-134)を可視化するカメラ「特性X線カメラ」の開発に成功したと発表した。成果は、放医研 研究基盤センターの小林進悟研究員らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月28日から30日まで開催される応用物理学会・放射線分科会並びに電気学会・原子力技術委員会で共催される研究会「放射線検出器とその応用」で発表される予定だ。東京電力 福島第一原子力発電所(福島原発)の事故による放射性物質は福島県および周辺の地域に飛散し、現在でも除染が必要な状況が続いている。また、福島原発の原子炉廃止措置では放射性物質による汚染を厳重に管理し、作業を進める必要がある。よって、除染作業や汚染管理において、放射性物質の存在を可視化できるカメラは、放射性セシウムの分布状況を把握するための有効な装置の1つと考えられている。これまでさまざまなメーカーや研究機関、大学などにおいて放射性物質を可視化するガンマカメラやコンプトンカメラといった装置の開発が進められ、一部販売もされてきた。Cs-137やCs-134などの放射性セシウムはガンマ線を放出するが、ガンマカメラやコンプトンカメラは、そのガンマ線に感度がある半導体や「シンチレータ」を撮像素子として用いて、ガンマ線を検出することで放射性セシウムを可視化する仕組みだ。シンチレータとは、放射線が物質に衝突した際に物質に移動する放射線の持つ一部のエネルギーを源として、紫外線や可視光線を放出するように成分を調整した物質である。ヨウ化ナトリウムに微量のタリウムを混ぜた「NaI(Tl)」などがその代表。ガンマ線は可視光のおよそ10万から100万倍のエネルギーを持ち、物体を通り抜ける力が強く、検出器に反応せずに透過し、検出されないこともあることから、検出素子を厚くして透過力の高いガンマ線をとらえる必要がある。さらに、視野以外の方向から飛び込んでくるガンマ線を遮ることも必要で、撮像素子の周囲を鉛などの重い材料を使って遮蔽材として囲むことで「ピンホールカメラ」(画像1)構造を取る必要があり、感度の高いガンマカメラは必ず重くなるという欠点があった。ピンホールカメラは、子どもの頃に学校の理科の時間や、科学雑誌の学習教材などで作ったことがある人もいるかも知れないが、簡単にその仕組みを説明すると、箱の中の片側に撮像素子(写真フィルムやCCD)を設置し、反対側に小さな穴(ピンホール)を開けることで構成されている。この時、箱はピンホール以外から光が撮像素子に入り込まないようにするための遮蔽材として働いているというわけだ。写真を撮るということは、光がどの方向から、どのような強度でカメラ(撮像素子)まで到達しているのかを知ることであるが、前者はピンホールの位置と撮像素子が感光した位置を、後者は撮像素子が感光した光の量を測定することで実現できる。このような可視光のピンホールカメラと同様で、ガンマ線を遮る箱とガンマ線に感度のある撮像素子を使えば、ガンマ線で撮像ができるというわけだ(ただし、倒立した画像になる)。福島原発の事故以前から販売されているガンマカメラは一般的に15kg前後と重いが、現地で実用的な感度を得るためには遮蔽材をさらに厚くしなければならず、重いものになると30kgほどになり、機動的な運用を行うのは厳しい状況である。また、重量を増やさずに感度を上げる方法として古くから「コンプトン散乱現象」を利用したコンプトンカメラの研究開発が進められてきた。しかし、コンプトンカメラも短所が存在し、仕組みが複雑なため、実用的な検出素子を製作するとコストの増大を招いてしまうのである。以上のことから、放射性セシウムを可視化することができ、軽量で十分な感度を持ち、さらに低価格といった3つの特徴を兼ね備えたカメラを実現するのは困難だった。放医研は、これまで福島県を中心とした現地でさまざまな活動をしており、その経験から現地に広く普及できるような、軽量、十分な感度、低価格の3拍子そろった放射性物質可視化カメラの開発が重要であると認識するに至ったという。そこで、これまでのガンマカメラやコンプトンカメラの欠点を克服した"第3のカメラ"である特性X線カメラの開発に着手し、現地の関係者や大学などの協力を得て、開発を進めたというわけだ。ガンマカメラやコンプトンカメラは、ガンマ線を検出して放射性セシウムを可視化する。一方で、今回開発された特性X線カメラは、ガンマ線の代わりに、放射性セシウムが放出する「特性X線」を検出することで可視化する原理だ。Cs-137とCs-134の多くはエネルギーが600~800keVのガンマ線を放出するが、32keVの特性X線も放出している。この特性X線はガンマ線と比べると放出量はわずかだが、ガンマ線に比べてエネルギーが低いため、容易に検出したり遮蔽したりできる点に着目したというわけだ。特性X線を検出できる検出素子を厚さ数mmのステンレスなどの遮蔽材で囲うことでピンホールカメラを構成したのが特性X線カメラだ(画像2)。特性X線カメラの特徴は、放射性セシウムからのガンマ線はカメラを透過するようにして、特性X線に対してのみピンホールカメラとして作用するように設計されている点だ。このため、ガンマカメラ(画像3)のように厚く重い遮蔽体や検出素子が必要ないことから軽量となり、特性X線だけをとらえて放射性セシウムを可視化できるというわけである。特性X線カメラとガンマカメラは、遮蔽材の前面に開けられたピンホールを通過した放射線を検出し可視化を行うピンホールカメラであることは一緒だ。ただし前述したように、ガンマカメラの遮蔽材と検出素子は、透過力の高いガンマ線を吸収するように設計されるために重くなる。一方で、特性X線カメラの検出素子および遮蔽材は、特性X線を吸収し、ガンマ線は透過するように設計されている。特性X線は透過力が弱いために、遮蔽材および検出素子は薄くて済むため、特性X線カメラは軽量になるというわけだ。また、放射性セシウムの特性X線(32keV)を高い効率で検出できる検出素子は容易に入手可能である。遮蔽材と同様に、検出素子の種類選択および厚さや大きさ・形状の最適化が行われ、その結果として特性X線を90%以上の効率で検出することが可能となり、ガンマ線への感度は1%以下とされた。これにより、放射性セシウムに高い感度を持つカメラの製作に成功したのである。画像4が試作機で、サイズは225mm×175mm×242mm、本体重量は6.6kgだ。現在除染で使用されているガンマカメラよりも同程度以上に小型・軽量であり、後述のとおりバックグランドと同程度の空間線量率を与える線源であれば5秒前後で識別できる十分な感度を有する。さらに、今回開発された試作機は高価な半導体素子が使用されておらず、入手が容易で比較的安価なシンチレータと「光電子増倍管」(物質に光が当たると電子を放出する「光電効果」を利用した光センサ)を用いることで低コスト化が図られており、販売価格は従来のガンマカメラやコンプトンカメラが1000~3000万円であるのに対し、500万円以下になると見込まれいる。放射線管理区域内(空間線量率0.07μSv/h)において、試験用のCs-137の密封線源(1MBq)を特性X線カメラから約1.3mの距離に置いた場合、特性X線カメラがある位置ではサーベイメータで測定すると空間線量率が約0.05μSv/h増加し0.12μSv/hという測定値が出たことから、放射線管理区域内の空間線量率(0.07μSv/h)と密封線源が与える線量(0.05μSv/h)はほぼ同じ大きさだ。画像5は特性X線カメラの操作パネルを示したもので、左上の屋内風景が前述した条件において5秒間露光したものだ。この条件下では5秒前後で密封線源の方向が探知可能であることが示されている。カメラの使いやすさを考慮して、タブレットPCのタッチパネルから特性X線カメラを操作できるソフトウェアの開発も進められているという。タッチパネル上から、カメラ撮影と保存、放射性物質の分布状況の確認、X線エネルギー情報を確認することが可能だ。これまでの性能評価から現地の居住制限区域(空間線量率3.8-9.5μSv/h)において、直径1.5mにわたり周囲よりも10倍の放射性セシウムが蓄積している場所を、特性X線カメラは3mの距離から10分以内に計測が可能と予測されている。従って、ホットスポットを除染する際の前後で効果の確認に使用すれば有用であると考えられるという。例えば、放医研が開発に携わった高速ホットスポットモニタ「R-eye」によりホットスポットを探索し、特性X線カメラによりホットスポットの可視化と除染後の確認を行うことができると期待されるとした。また、原子炉廃止措置において作業で生じるがれきの汚染確認や作業現場での汚染管理に使用できるものと考えているという。今後は、試作機の製品化に向けて必要な技術の確立を行い、データ解析方法の改善も実施してさらに感度を向上させ、現地での試験を重ねてゆく予定とした。
2014年01月28日東京大学は12月25日、重金属を含まない顔料や光触媒として、その応用が研究されている酸窒化タンタル(TaON)が高性能な半導体材料であることを発見したと発表した。同成果は、同大大学院 理学系研究科 化学専攻の長谷川哲也教授、廣瀬靖助教、鈴木温大学院生(博士課程1年)らによるもの。詳細は、「Chemistry of Materials」に掲載された。金属と酸素(O)、窒素(N)からなる酸窒化物は、重金属を含まない顔料や光触媒材料として、10年ほど前から盛んに研究されている。一方で、合成された酸窒化物が微細な粉末に限られるために、電気的性質の測定は一般に困難で、あまり知られていない。酸窒化タンタル(TaON)は代表的な金属酸窒化物であり、通常は最も安定なバデライト型の結晶構造をとるが、いくつかの準安定な結晶構造をとることが実験や理論計算によって報告されている。これらの準安定構造の中で、アナターゼ型のTaONは、光触媒や透明導電膜として応用されているアナターゼ型酸化チタン(TiO2)と結晶構造と電子配置が同一のため、高い電気伝導性や光触媒活性が期待されている。しかし、準安定な構造を持つアナターゼ型TaONの合成には、マグネシウム(Mg)やスカンジウム(Sc)といった添加剤を多量に加える必要があった。これらの添加剤は、TaONの電気的な性質を大きく歪めてしまう可能性がある。今回、研究グループは、試料の形状や添加剤による影響の問題を解決するために、格子定数の一致する単結晶基板上へのエピタキシャル成長によって、アナターゼ型TaONの合成を試みた。試料の合成には窒素プラズマ支援パルスレーザ堆積法を用い、紫外レーザで気化させた酸化タンタル(Ta2O5)と窒素ラジカルをLSAT(La0.3Sr0.7Al0.65Ta0.35O3)と呼ばれる酸化物単結晶上で反応させた。結晶成長の温度や結晶中の酸素量と窒素量の比などのパラメータを最適化した結果、厚さ約40nmのアナターゼ型TaONの単結晶薄膜を合成することに成功した。合成した薄膜の電気的な特性を評価したところ、結晶中の酸素や窒素をわずかに欠損させることで電子の濃度を調整することができ、優れた電気伝導性を示す半導体であることを発見した。半導体材料における電気伝導性の指標である電子移動度は、室温で約17cm2V-1s-1。透明導電体として応用されているアナターゼ型TiO2と同程度の高い値だった。アナターゼ型TaONは青色の光を吸収するが、可視光領域での屈折率が約3と高いため、シリコン(Si)や化合物半導体との界面での光反射による損失が小さくなる。このため、発光素子や太陽電池などの光デバイスの透明電極として用いると高効率化が期待できる。さらに、高い電子移動度は電子デバイス材料としてだけでなく、水素発生用の光触媒や半導体光電極としての有効性も示唆している。また、今回開発した単結晶薄膜のエピタキシャル成長技術は、他の金属酸窒化物にも適用できるため、これまであまり知られていなかった金属酸窒化物の電気的な特性の理解を深め、顔料や触媒材料として考えられていた物質の中から高性能な電子材料が新たに見つかる可能性が期待されるとコメントしている。
2013年12月27日八千代銀行は12日から、顧客が安心して利用できるようATMタッチパネル画面に光触媒抗菌フィルムを貼付する試みを、川崎市内4店舗にて開始している。この試みは、インフルエンザの拡散や病原性大腸菌O157などによる食中毒の発生などを背景に、近年高まっている抗菌志向への対応策の一環として取り組むもの。対象店舗登戸支店(川崎市多摩区) : ATM4台のうち1台稲田堤支店(川崎市多摩区) : ATM4台のうち1台新百合ヶ丘支店(川崎市麻生区) : ATM3台のうち1台久地支店(川崎市高津区) : ATM3台のうち1台なお、光触媒抗菌フィルムを貼付しているATMには、ポスター及びステッカーの表示を行う。光触媒抗菌フィルムの概要貼付する光触媒抗菌フィルムは、同行の取引先である末吉ネームプレート製作所が、富士通の所有する知的財産(開放特許)「チタンアパタイト」の技術導入により開発した抗菌塗料「SNP-α」を使用して製品化したもの。同フィルムをATMに貼付することにより、抗菌効果に加え、後方等からの覗き見防止効果も高まるという。また同塗料は、2010年度に川崎市が市内の優れた工業製品・技術に対し、その価値を高め、広めていくブランド化支援として推進している「川崎ものづくりブランド」の認定を受けている。同行は、今回の光触媒抗菌フィルムの試行貼付に対する顧客の意見や評価などに基づき、貼付するATMの拡大を検討していくという。このたびの取り組みは、川崎市、取引先及び同行が連携を深めるなかで具体化したものであり、同行は今後とも自治体との連携・協働により、自治体が実施する諸施策との連動性を高め、地元の中小企業の顧客に向けたサポートを行い、地域金融機関として地域との共存共栄を目指していくとしている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月12日前回の可聴範囲を超えた「聞こえない音」に続き、見えない光の話をしよう。代表例は赤外線と紫外線で、人間にとっては可視範囲外なため気にせずに暮らしているが、これらが見えたり認識できる生物は少なくない。もし赤外線や紫外線が人間に見えるようになったらどうなるのか?見えないだけで普段から浴びているのだから、すぐにマズいことは起きないだろうが、便利か不便か、微妙な結論となった。■赤外線で犯罪増加?人間が見える光は、虹の7色に代表される赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の範囲で、一般的に波長830~360nm(ナノ・メートル)と言われている。波長は音の高低のようなもので、赤は低音、紫が高音と言い換えれば分かりやすいだろう。赤よりも長い波長は赤外線と呼ばれ、電磁波として扱われる。遠赤外線協会の資料では、以下の2つに大別されている。・近赤外線( 780~ 3,000nm)…プラスチック、木材、ゴムに吸収される・遠赤外線(3,000~1,000,000nm)…二酸化炭素や水蒸気に吸収される近赤外線は、テレビのリモコンや携帯端末の通信手段に使われ、中でも生体透過性の高い800~1,000nmは「生体の窓」とも呼ばれ、医療器具に活用されている。データセンターや金庫など高いセキュリティが求められる場所では静脈認証装置が設置されているが、これも近赤外線を利用したもので、静脈中の赤血球(ヘモグロビン)が近赤外線を吸収することから、静脈の位置を特定するのだ。近赤外線が見えるようになったら、手相ならぬ静脈占いなんて商売ができるかもしれない。対して遠赤外線は、暖房や調理器具などの熱源に利用されている。生体透過性は低く、皮膚のごく浅い部分で熱に変わってしまうので、「芯までじっくり温まる」的な売り文句はウソである。熱に変わるのとは逆に、熱を発する物体は遠赤外線を放射する。温度の違いを画像化するサーモグラフィーや、遠赤外線を吸収しやすい冬用の衣類もこれを利用したものだ。暗い場所でも鮮明な画像が得られる暗視装置にも、遠赤外線を利用したタイプがある。相手が発する熱を「見る」のだから、こちらから何かを照らす必要はなく、実に便利な装置である。ヘビには、目と鼻の間に熱を感知する器官を備えた種類があり、獲物の発するわずかな体温も識別できるそうだ。そう考えると、武装した宇宙人が体温を手がかりにして人間を攻撃してくるSF映画も、かなり現実味のある話だ。遠赤外線が見えるようになったら、どんなメリットがあるか?身近なところではタバコの消し忘れや過熱した天ぷら油など、火事を未然に防ぐには大いに役立つだろう。体温計を使わなくても一目で健康チェックできる。暗い夜道でもクルマにはねられる心配もなく、平穏な世の中になりそうだ。夜間はどうなるだろうか?明かりのない場所でも見えるのは防犯に役立ちそうだが、これは犯罪者にとっても好条件となるのだから、引き分けだ。今まで通り門灯をつけ、戸締まりをしっかりしてから眠ることにしよう。■紫外線を見るだけで日焼けする?青よりも波長の短い紫外線には近/遠/真空/極端紫外線がある。そのうち人間の生活に直結した近紫外線は、性質の違いから3つに分かれる。・UVA(315~380nm)…地表に届く紫外線の約95%・UVB(280~315nm)…地表に届く紫外線の約5%・UVC(200~280nm)…強い殺菌作用。地上にはほとんど届かない紫外線はビタミンDの合成などに役立つと同時に、過度の日焼けは悪影響を及ぼす。UVBは表皮に、UVAは深い真皮まで到達し細胞にダメージを与える。そのため表皮でメラニン色素を生成し紫外線を防御するのだが、増加したメラニン色素はやがて沈着し、肌の色が濃くなる。これが日焼けだ。昆虫は360nmをピークに、300~600nmが見えるといわれている。誘蛾(ゆうが)灯に紫外線ライトが使われるのもこのためだ。可視領域が異なるため、当然ながら色の感じ方も人間とは異なってくる。紫外線透過フィルムを付けたカメラを使って昆虫目線で見ると、肉眼では白く見えるチョウの羽もオスは黒く写り、黄色いタンポポの花が赤と白に写るぐらいだから、色彩感覚は根底から覆される。もし紫外線が突然見えるようになったら、正常に色を伝えることができるだろうか?歴史的な絵画や芸術品は、忠実に復元できるのだろうか。■まとめ紫外線を見る(正確には目に入る)だけでも肌のメラニン色素が増加する、という研究結果がある。日焼けがそれほど有害なのかと、恐怖すら感じる結果だ。もしも紫外線が見えるようになったら、飛び交う紫外線を見ているだけで肌が褐色になりそうだ。外出時は忘れずにサングラスをしよう。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年09月02日スイス・バーゼルで開催された「BASELWORLD 2012」にて、シチズンは光で発電するエコ・ドライブを搭載し、光で時刻を知らせるまったく新しい時計のコンセプトモデル2機種「Eco-Drive Luna(エコ・ドライブ ルナ)」「Eco-Drive Nova(エコ・ドライブ ノヴァ)」を発表した。どちらもレディスモデルとなる。「Eco-Drive Luna(エコ・ドライブ ルナ)」は秒針を廃し、フェイス外周に60粒のダイヤモンドを、その下層にLEDを配置。1秒に1回、LEDの光がダイヤモンドをきらめかせる仕組みになっている。60粒のダイヤモンドが右回りにきらめきながら1周することで1分となる。時・分は通常の針で表現。発売は未定ながら、ホワイトとブラックの2色が展示されていた。「Eco-Drive Nova(エコ・ドライブ ノヴァ)」は、一切の金属針を廃した大胆なデザインだ。時計表面のドーム型スクリーンに光の粒子がきらめき、流れながらやがて収束し、最終的に光の時分針を形成。時計としてのケースデザインを極限まで削ぎ落としたシンプルなラウンドフォルムが、”躍動的な光=時間の流れ”と余韻を強調する。同モデルはホワイトとブラックの2色を展示していたが、こちらも発売は未定。なお、シチズンブースの名物となっているコンセプトムービー上映は、「Lady of Light」。その名の通り、今回のコンセプトモデル2機種の世界観を表現していた。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月17日キティファン必見のイルミネーションストリート多摩センターイルミネーション2011 毎年人気の多摩センター駅前のイルミネーションは、かわいらしい動物をかたどった光のオブジェたちが出迎えてくれる。>> その他イルミネーション情報はこちら
2011年12月26日1986年に発足し、今年で26回目を迎える仙台の冬の風物詩、『SENDAI 光のページェント』が今年も12月2日(金)より開催される。暗い冬の夜空に光を灯すことで、「小さな光を見て心から美しいと感動したい」「ページェントのあかりの温もりや落ち着きが市民の心を豊かにし、さらに活気あるまちづくりを」と始まったこのイベント。今年は3月に発生した東日本大震災を受け、「鎮魂の光」「命の光」「復興の光」「夢と希望の光」と特別な想いを込めての開催となる。毎年、企業の協賛や街頭募金活動など、幅広い層からの協力で成立してきたこのイベントだが、今年はさらに、LED電球を保管していた倉庫が津波の被害に遭い全損という難局にも直面している。それでも「被災地として復興への希望の灯りをともしたい」との思いがあり、「光の和、想いをひとつに!」のスローガンのもと、今年の開催が決定した。開催は12月2日(金)から31日(土)まで。毎日17時30分から22時まで(31日のみ23時まで)、定禅寺通・東二番丁通~市民会館前の区間がライトアップされる。なお、チケットぴあではこのイベントを支援する募金を一口1000円で受け付けている。
2011年11月16日