世界的なピアニスト・横山幸雄とデザイナー・コシノヒロコの「平成」から「令和」をまたぐ、歴史的なコラボレーションがスタートした。アマゾンファッションウィーク東京(AFWT)の公式スケジュールとして3月22日に行われたヒロココシノの2019-20年秋冬コレクションは、会場となった恵比寿ガーデンホールの中央にスタインウェイのピアノ1台が置かれ、横山幸雄のソロピアノの生演奏でショーが進行。ランウェイはフロアへのプロジェクションマッピングとシンクロして、演奏する横山を中心にモデルがウォーキング。フィナーレにはコシノと横山が大きな拍手に包まれた。「時代が変わろうとするなかでの新しい挑戦。ショーを見るのと同じ次元で音を聴く。その場で得た即興的インスピレーションによる生演奏」とコシノヒロコは説明しており、最近のモードのトレンド“アートとのコラボレーション”をリアルな形で演出した。これは今シーズンのコンセプト「3D→2D→3D」とリンクしており、今回のコレクションの制作工程が演出にもディレクションされたもの。リブ、プリーツ、ダーツ、シャーリングなど最先端の技術で立体感を描きつつ、デザインはミニマム。ドット、アートプリント、タペストリーなどモチーフを2Dと3Dにシンクロさせ、クチュールテクニックをスニーカーで軽やかに表現した。ピアノの生音とラバーソールの静寂のなか、デジタルカメラの無遠慮な連続シャッター音が“時代が変わろうとする”ショーを感じさせた。世界的なシャパニストとして知られる横山幸雄と普段からプライベートでも交流する縁で実現した今回のコラボは、元号が新しくなるゴールデンウィークに第2章が用意されている。5月3、4、5日に東京オペラシティで行われるショパン全作品を演奏する「横山幸雄 “入魂のショパン”」で、横山が着るすべての衣装を、コシノヒロコが新たにデザインすることが発表された。同公演のために約20体のデザインが用意される予定だ。2010年にショパンの166曲を演奏し、同公演はギネス世界記録が認定された同氏は、第10回目となる今回の記念公演はピアノソロだけではなく、オーケストラを含め室内楽、歌曲、ピアノデュオなどショパンが39年に書き残した全240曲を一気に演奏。世界でも初めてといわれる企画に本人も、「僕にとっても初めての企画で、おそらくもう二度とやることはないのではと思う」とコメントしている。コシノヒロコの創作活動はこれにとどまらない。4月末に自身も演奏する歌舞伎座で開催される長唄杵勝会全国大会「抄曲集」に使用される舞台背景画を担当。4月2日より銀座のKHギャラリーでは、その原画となる墨絵の展覧会「コシノヒロコ展 伝統芸能の新たなる創造」がスタートした。同展では自身が直筆で絵付けした着物、漆器なども出展されている。「デザイナー、アーティストとしてわたしはずっと文化の底上げに貢献したいという強い願いと情熱をエンジンに走り続けてきた」というコシノ自身の言葉通り、今年82歳を迎えたそのエネルギーは昭和から平成を超えて、令和の時代を迎えるにあたって勢いを増している。Text by Tatsuya Noda【イベント情報】全240曲・3日間にわたるショパンの全作品演奏会~10周年記念特別公演「ショパン全作品演奏会」3日連続公演横山幸雄“入魂のショパン”会期:8月9日~9月1日会場:東京オペラシティ コンサートホール住所:東京都新宿区西新宿3-20-2時間:5月3日 14:305月4日 13:00、15:30、18:005月5日 9:00、13:00、18:00料金:3日間通し券2万4,000円(5月3日はS席)5月3日S席:1万円 / A席:7,500円 / B席:4,000円5月4、5日の1日通し券1万円、各部券4,000円【展覧会情報】コシノヒロコ展 伝統芸能の新たなる創造~長唄杵勝会第十二回全国大会歌舞伎座公演「抄曲集」舞台背景画制作記念会期:4月2日~6月8日会場:KHギャラリー銀座住所:東京都中央区銀座4-3-13 和光並木通ビルB1F時間:10:30~19:00(4月27日は13:00~)休廊日:日曜日、5月1日料金:無料
2019年04月05日ピアニストの横山幸雄が、3月12日(火)東京・サントリーホールで「東芝グランドコンサート2019」に出演。ファビオ・ルイージ指揮デンマーク国立交響楽団との初共演で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》を弾く。【チケット情報はこちら】ピアノ協奏曲第5番はナポレオンがウィーンを占領した1809年に完成、1811年にドレスデンで初演された、ベートーヴェンの最後のピアノ協奏曲。「ベートーヴェンのピアノ協奏曲といえば《皇帝》でしょ?というぐらいの代表作。若い頃から書き始めて、ついにここに到達したと言える作品だと思います。ベートーヴェンが自分でこれを最後にしようと思っていたかどうかはわからないですけれども、ひとつの到達点として意識して書いたのではないかという感覚は、僕の中にはあります」私たちの持つ「ピアノ協奏曲」のイメージを決定づけたのがこの作品だという。「バロックの時代に、チェンバロとアンサンブルというところから始まって、ベートーヴェンの時代にピアノが飛躍的に発達したことで、ピアノという楽器がソロ楽器として前面に出てくるようになった。ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中でも、特にこの第5番で、楽器としてのピアノの扱いがかなりスケールアップしています。この曲によって、ピアノ協奏曲のあり方、スタイルが確立したと言えるのです」ソナタ全曲演奏や、ピアノ協奏曲全5曲の一挙上演など、ベートーヴェンへのリスペクトをエネルギッシュに解放する横山が、ベートーヴェンと最初に出会ったのは、まだ物心がついたばかりの子供時代だったという。「家にレコードがあって、よく聴いていたのがベートーヴェンでした。だから僕の、音楽との最初の意識的な出会いというのはベートーヴェンが非常に大きかったんですよ。ピアノ協奏曲はブレンデル。ソナタはバックハウス、ときどきリヒテルという感じで。朝起きて、寝る前に、食事のとき……。1日に何度も聴いていました」。まさに「三つ子の魂百まで」!趣味の域を超えたワイン通としても知られる横山。《皇帝》をワインにたとえると?「それは変なことは言えませんね(笑)。どんな演奏かによっても違ってくるかもしれませんし。でもお遊びとしてオーバーラップさせるならば、輝かしさと力強さがあって、わかりやすい。だからといって飽きることもない。でも第2楽章の天国的な美しさがあるので、単純に“力強い”“わかりやすい”だけでもない。いろんな素晴らしさを持ち合わせているということで……。うーん。やっぱり非の打ちどころがない、ロマネ・コンティでしょうか。でも、《皇帝》は演奏される機会も多いから、その意味では、なかなか口にできる機会がないロマネ・コンティとは違うかもしれませんけれども(笑)」軽く100万円を超える最高峰ワインにはなかなか縁がない私たちも、横山幸雄の《皇帝》は聴きに行ける。力強く、高貴なベートーヴェンの最高峰を味わいに出かけよう。取材・文:宮本明
2019年02月18日1月1日よりエントリー開始今年で39回を迎えるスポニチ山中湖ロードレースは、2019年5月26日(日)に開催が決定し、1月1日よりエントリーが始まっています。歴史ある山中湖ロードレースには、全国から1万人以上ものランナーが集まる人気の大会です。山中湖という素晴らしいロケーションを走る山中湖は、富士五湖のひとつで、富士五湖の中で最大の面積を持ち、富士山にいちばん近い湖になります。四季折々の景色を楽しませてくれる山中湖は、関東屈指のリゾート地として人気のある場所です。コースは、山中湖を大自然の山々の新緑、富士山の残雪、山中湖の水面など大自然を感じながら山中湖の周囲を走ります。種目は、山中湖一周(13.6km)とハーフマラソン(21.0975km)に分かれており、高低差が少ない場所を走るので初心者から記録を狙う上級者まで楽しむことができます。(画像はスポニチ山中湖ロードレース公式ページより)【参考】※第39回スポニチ山中湖ロードレース公式ページ
2019年01月09日「蜷川(幸雄)さんには容赦ない厳しさの中にも人の温かさがありました。蜷川さんが呼吸器をつけてまで車いすで稽古場に来てくださるありがたみも胸に迫りましたし。『ムサシ』の初日閉幕後、『溝端で正解だったな』という言葉のうれしかったこと!あの経験は宝物です」 こう語るのは、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞したのをきっかけに、デビューして12年目の俳優・溝端淳平(28)。現在は、故・井上ひさし原作、’16年に亡くなった蜷川幸雄演出の舞台『ムサシ』(2月11~25日/Bunkamuraシアターコクーン、3月3~11日/彩の国さいたま芸術劇場大ホール、3月16~21日/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、3月29~4月1日/上海文化広場)の稽古に余念がない。 本作は宮本武蔵(藤原竜也)と佐々木小次郎(溝端)の「巌流島の対決」の後日談。生き延びた小次郎が武蔵に果たし状を突き付け、再対決に挑む姿を描く。溝端は本作に’13年の再々演時から参加し、今回は2度目の出演。最初にオファーが来た5年前を思い返す。 「初の侍役でしたし、厳しいと聞いていた蜷川さんの演出だけに、不安でした。武蔵役の藤原竜也さんをはじめ、達者な先輩たちの中に飛び込むんですから。でも、プレッシャーに潰されず、集中あるのみでした」(溝端・以下同) とはいえ、先の見えない長いトンネルから抜け出せない時期もあったようだ。その後の蜷川シェイクスピアでは……。 「蜷川さんに『ヘタクソ、おまえなんかやめちまえ』とボロカスに言われ、自信をなくしました。俺、何やってるんだろ、と落ち込んで。千本ノックで鍛えられながら心が折れそうに。でも、いつも諸先輩の支えで乗り越えてきました。吉田鋼太郎さんは、ご自宅で稽古をつけてくださって」 加減や限界を知らずに懸命に声を張り上げ、喉にポリープを作り病院に通いながらも、がむしゃらに立ち向かった溝端。味わった挫折感は確実に武器になっている。 「板の上では先輩も後輩もない。今回も竜也くんを本気でぶっ倒す気で挑みます(笑)」
2018年01月22日*画像はイメージです:月17日、CD585枚を山中に廃棄したとして、福岡県内に住む30代の男性が逮捕されたことが判明。このような不法投棄は紛れもない犯罪ですが、罪の重さや定義などは、いまいちよくわからないのも事実。そこでピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。に、CD投棄事件と絡めて解説していただきました。 ■不法投棄の罪の重さは?「不法投棄は、“廃棄物の処理及び清掃に関する法律”により、不法投棄者は五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金(法人の場合は三億円以下の罰金)に処せられる場合があります。ここで不法投棄とは、同法で定められた処分場以外の場所に廃棄物を投棄することです。もっとも、廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべき、とされています。CDが、直ちに廃棄物に当たるか否かは、そのCDの状態等によって、ということにはなりますが、よほどの新品ではない限り、通常は廃棄物にあたるものと思います。そうでければ、不法投棄しないでしょう」(森川弁護士) 不法投棄者は個人の場合5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、法人の場合3億円以下の罰金に処される場合があるそうです。重罪ですね。不法投棄は絶対にしないようにしてください。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*poosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月30日昨年逝去した蜷川幸雄さんが率いていた高齢者劇団、さいたまゴールド・シアター。巨星を失った劇団の新たなスタートとなる次回作さいたまゴールド・シアター第7回公演『薄い桃色のかたまり』は、過去に2作の戯曲を書き下ろした岩松了さんが作・演出を手がける。「台詞をスラスラ言うのだけが演劇の面白さじゃないと思う」「蜷川さんという人は、演劇のなかで、人がどの立場に立っているかという“場”を重視していた方だと思います。僕はこれまで家庭の中のいびつな世界を描いてきましたが、蜷川さんに託す戯曲に関しては、あえて社会的な問題を意識して書いてきました。そこでなら、お互いが繋がれるような気がしていたんです」その蜷川さんと話していた次回作のモチーフが福島だったという。「いま避難指示解除地域では、家の中にイノシシが入り込んでいるっていう状況があるんですよね。福島が抱える一番の問題は放射能だと思うのですが、放射能を直接的に描くのではなく、イノシシの問題に置き換えて物語にできたらと思ってます」福島を舞台に、住民と、東京から恋人を捜しに来た女、事故を起こした会社側の人間…さまざまな立場から震災後の様子が描かれていく。「今回は、被害者を中心とした話ではありません。被害者側から書けば、どうしたって善悪の話になりますが、それは演劇の役目じゃない。あくまで演劇として、被害者、加害者双方を等価に書くことで、渦中で軋轢を感じている人たちの間に起きているドラマを表したいんです」取材前、稽古を見学させてもらった。言葉の一文字一文字に含まれた微妙なニュアンスが対話に緊張感をもたらしていく岩松戯曲は、台詞を覚えるのもままならないゴールドのメンバーにとってかなり手ごわい。それでも何度も根気強く丁寧に演出をつける姿が強く印象に残った。「確かに台詞を覚え切れないことにジレンマは感じますが、スラスラ言えれば面白いかといったら、そうじゃないですよね。いろんな要素が絡み合って、ある空気が醸し出される。それが演劇だと思っています」いわまつ・りょう劇作家、演出家、俳優。今年5月に上演した舞台『少女ミウ』でも福島をモチーフに。「ひとつの世界をふたつに分けて書いたつもりです」’06年創設時の平均年齢は66.7歳。フランス、香港でも公演し、高い注目を集めた。現在平均年齢78.0歳。『船上のピクニック』(’07年)、『ルート99』(’11年)。共に岩松さんの脚本。さいたまゴールド・シアター第7回公演『薄い桃色のかたまり』9月21日(木)~10月1日(日)与野本町・彩の国さいたま芸術劇場 インサイド・シアター(大ホール内)作・演出/岩松了全席自由4000円(税込み)SAFチケットセンターTEL:0570・064・939※『anan』2017年9月27日号より。写真・土佐麻理子(岩松さん)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2017年09月26日9月23日(土)・24日(日)に山梨県山中湖村のきらら交流プラザで開催される、野外フェス「ONE+NATION music circus in 山中湖」。同フェスのタイムテーブルが発表された。【チケット情報はこちら】同フェスにはBOYS AND MEN 、ヒルクライム、MACO、ファンキー加藤らが出演。富士山をバックにした雄大な景色のステージで、アーティストのライブを楽しめる。チケットは発売中。■「ONE+NATION music circus in山中湖」日時:9月24日(日)開場11:30 / 開演13:00(予定)会場: 山中湖交流プラザきらら (山梨県)出演: SHOW-YA / 荻野目洋子 / 久宝留理子 / 中村あゆみ / ファンキー加藤 / Hilcrhyme / MACO / SOLIDEMO / BiSH / THE HOOPERS / Mary’s Blood / BOYS AND MEN / THE BEAT GARDEN / JEY-J / 電波少女※BOYS AND MEN出演者:田中俊介 / 小林豊 / 辻本達規 / 平松賢人 / 吉原雅斗■「ONE+NATION MUSIC CIRCUS IN 山中湖 」~青空ミュージック~前夜祭日時:9月23日(土)開場15:00 / 開演16:00(予定)会場: 山中湖交流プラザきらら (山梨県)出演: SOLIDEMO / sherbet / ヤンチャン学園 / 木村結香
2017年09月22日東京・品川の「原美術館」では、5月10日(水)~5月19日(金)まで、蜷川実花の個展「蜷川実花 うつくしい日々」を開催する。本展は、蜷川実花が、父・幸雄の死に向き合う日々を撮影した写真約60点で構成されている。「うつくしい日々」が撮影されたのは昨年の春。本展は同じ季節に開催される10日間という絶好のタイミングでの展示となる。原美術館では、2015年に蜷川実花の個展「Self-image」展を開催した。あれから1年の間に写された蜷川幸雄と蜷川実花の“うつくしい日々”は、作家本人が「どうしてこんな写真が撮れたのかわからない」また「逝く人の目で撮った写真」と表現するように、彼女のこれまでの作品とは一線を画すものとなった。人の生死、喜びと悲しみが共存する個人宅であった原美術館が、作品世界とリンクし、その公開に相応しいという思いから、スケジュール上、たった10日間の展示となるが、開催することが急きょ決定された。ぜひこの機会をお見逃しなく。開館時間は、11時~17時。水曜は20時まで。入館は閉館時刻の30分前まで。関連イベントとして、5月14日(日)11時半~13時に「対談 蜷川実花×飯沢耕太郎」を開催。会期中無休。(text:cinemacafe.net)
2017年05月08日近江と琵琶湖の幸が並ぶ発酵食ガストロノミー「星野リゾート ロテルド比叡」は、京都と滋賀にまたがる比叡山にあって、琵琶湖の幸と近江の文化である発酵食“鮒鮓(ふなずし)”をなんとフレンチで楽しむことができるオーベルジュ。そして、延暦寺の敷地内から湧き出る「比叡山の霊水」を使ったスパや延暦寺の早朝のお勤め体験など、この立地だからこそのユニークなアクティビティもあります。天井までガラス張りで陽光が注ぐ開放的なロビーの入り口横には、京の都と琵琶湖・比良山系のモチーフが飾られています。また「サロン・ド・比叡」の中心に置かれた大きなテーブルも琵琶湖をモチーフにしたもの。ここでは、タルトや焼き菓子などと、最澄が持ち帰ったお茶の種子が由来という近江茶を焙煎したほうじ茶のアフタヌーンティーが無料で振る舞われます。(15:30〜17:00)比叡山の霊水スパに早朝のお勤め体験「星野リゾート ロテルド比叡」の比叡山の霊水を使ったスパは、軟水で柔らかい霊水を使いながら、経絡にそって気血を巡らせるオイルトリートメントで、心身ともにリフレッシュできます。延暦寺を開いた最澄が念じて水が湧き出たという言い伝えや、武蔵坊弁慶が延暦寺千手堂(山王院)での千日修行の際に仏前に備える水をここで汲んだという言い伝えもあり、今でも比叡山には多くの霊水が流れています。また、延暦寺の総本堂である根本中堂。国宝にも指定されている建物の中での厳かな早朝のお勤めは、「星野リゾート ロテルド比叡」に宿泊したゲストのみに許されている貴重な体験。凛とした空気の中で仏様に向きあえば、清々しい気持ちにひたれます。スポット情報スポット名:星野リゾートロテルド比叡住所:京都府京都市左京区 比叡山一本杉電話番号:0570-073-022
2017年04月24日約350年の歴史、加賀藩伝統の九谷焼に絵付け体験も九谷焼は、明暦元年(1655年)頃に加賀藩の命を受けて後藤才次郎が有田焼の製陶技術を学んで来て始めたと言われ、約350年の歴史を誇ります。そんな長い歴史を誇る九谷焼の窯・ギャラリーCoCoを「星野リゾート 界 加賀」のすぐ近くで営むのが池島直人・仁美ご夫妻。ご主人は、華麗な古九谷にもインスパイアされた作風、奥様は、自然の中で見つけた植物や鳩を使った優しいモチーフが持ち味。工房では、湯のみやお皿などの絵付け体験も出来ます(1,500円〜、送料別途)。藍のようなきれいな紺色を出す酸化コバルトを使って絵を描いていきます。加賀の思い出にオリジナルの九谷焼を作ってみては。繊細な絵柄ひとつひとつが仕上げっていく様は、まさに芸術! 息を呑んで見とれてしまいます。木をくり抜いて塗りを重ねて手間ひまかけて作る山中塗器美しいフォルムと艶の山中塗器は、一つ一つ木をくり抜いて、塗りを重ねて研ぐという工程で何人もの職人の手がかかっています。最初にろくろを引いて木から形を作るろくろ工房梶原を訪ねました。「星野リゾート 界 加賀」で出て来るかわいいひょうたん形の食器もここでろくろを引かれて、さらに下地・下塗り・上塗りと塗りを重ねて手間ひまかけて作られます。お椀一つでも出来上がるまでは1年間近くかかるという山中塗器。美しい器でいただくお料理は格別です。取材・文/小野アムスデン道子スポット情報スポット名:星野リゾート界 加賀住所:石川県加賀市山代温泉18-47電話番号:0570-073-011
2017年01月22日the pillowsの山中さわお(vo、g)、noodlesのyoko(vo、g)、Radio Carolineの楠部真也(ds)が新バンド、Casablancaを結成。8月29日(月)よりライブ会場・通販限定のアルバム『Another Story』を発売する。【チケット情報はこちら】数々のライブ共演やレコーディング参加などthe pillowsとnoodlesの繋がりは深く、現在も山中が主宰するDELICIOUS LABELのレーベルメイト。楠部は2013年に山中が敢行したソロツアー「Buzzy Roars Tour」でツアー・メンバーを務めた。その3人により結成されたCasablancaのアルバム『Another Story』はベースレス編成で、オルタナティブ・ロックを軸にツイン・ギターが絶妙に絡み合う独特の世界観が秀逸。大半が英語詞で、yokoと山中のボーカルもときにけだるく、ときに妖艶にと様々な表情を漂わせ、それぞれ所属するバンドとはひと味違うオリジナリティで魅了してくれる作品。現在、リード曲『Ghost Town』のMVが公開されている。アルバムはライブハウスでのリリースに先がけて、DELICIOUS LABELの通販サイトで予約受付中。8月17日(水)から順次発送されるのでいち早く入手することも可能だ。8月29日(月)東京・新宿red clothを皮切りにライブも続々と決定しているので、注目の新バンドの全貌をいち早くこの目に焼き付けよう。文:浅野保志(ぴあ)■Casablancaライブ情報8月29日(月)新宿red cloth(東京都)9月14日(水)高円寺HIGH(東京都)9月20日(火)心斎橋KINGCOBRA(大阪府)10月6日(木)下北沢CLUB Que(東京都)
2016年08月09日小栗旬や藤原竜也をはじめ、現在第一線で活躍する俳優・女優たちを厳しくも愛を持って育ててきた故・蜷川幸雄。多種多様なキャスティングと独創的で強烈な演出で“世界のニナガワ”としてその名を轟かせた蜷川さんの傑作舞台「彩の国シェイクスピア」シリーズ全22作品が、映像配信サービス「dTV」にて独占配信中だ。去る5月12日、惜しまれつつも80歳でこの世を去った世界的な演出家、蜷川さん。“演劇界の革命児”とも呼ばれ、国際的にも高く評価された舞台演出家として文化勲章も受賞するなど、数々の功績を残してきた。現在、dTVの「シアターチャンネル」では、そんな巨匠による傑作舞台「ロミオとジュリエット」をはじめとした名作を配信中。さらに、映像配信サービスでは初めてとなる「彩の国シェイクスピア」シリーズ全22作品を独占配信がスタートしている。現在は夫婦となった市村正親と篠原涼子が初共演した名作悲劇「ハムレット」をはじめ、小栗さんが主演を演じ、男性俳優のみが集結した“オールメール・シリーズ”の名作「お気に召すまま」や「間違いの喜劇」、阿部寛、藤原さんらが出演し、シェイクスピア作品の中でも特に人気が高いローマ悲劇「ジュリアス・シーザー」、唐沢寿明、田中裕子、長谷川博己などによる「冬物語」など、数々の名作を名優たちの演技と共にもう一度楽しむことができる。<配信タイトル>(全22作品)「十二夜」「リチャード三世」「ハムレット」「ペリクリーズ」「タイタス・アンドロニカス」「間違いの喜劇」「マクベス」「お気に召すまま」「コリオレイナス」「恋の骨折り損」「オセロー」「リア王」「から騒ぎ」「冬物語」「ヘンリー六世」「じゃじゃ馬馴らし」「アントニーとクレオパトラ」「シンベリン」「トロイラスとクレシダ」「ヘンリー四世」「ヴェニスの商人」「ジュリアス・シーザー」蜷川幸雄「彩の国シェイクスピア」シリーズはdTVにて配信中。(text:cinemacafe.net)
2016年06月16日元AKB48で女優の前田敦子(24)が16日、自身のツイッターを更新し、12日に亡くなった演出家の蜷川幸雄さんへの思いをつづった。2014年に蜷川さん演出の舞台『太陽2068』で舞台に初挑戦した前田は、「2年前に私を新しい世界に優しく手招きして導いてくださった蜷川さんには、一言で言えないくらい本当に感謝しています」と追悼。そして、「教えて頂いた言葉がずっと巡っています。文章には書き表せられない心のなかにだけ止めて置きたい感情も沢山あります」とつづり、「教えて頂いた全てをずっと大切にしていきます」と誓った。
2016年05月17日演出家・宮本亜門が、12日に亡くなった演出家の蜷川幸雄さんに対して、所属事務所を通じて追悼のコメントを発表した。宮本は「日本の創作力をこれほど世界に知らしめた演出家はいません」と蜷川さんの功績に触れた。更に、蜷川さんから「俺はこんな苦労してモノクロで革命を起こしているのに、なんで亜門はカラフルにそれをできるんだ」と言われたエピソードを明かしながら、蜷川さんこそが「日本の魅力を力強く、大胆に、美しい革命を世界に魅せつけたクリエーター」だったと語る。そして、同じ演出家として「蜷川さんが全身全霊で伝えてくれた、生きるパッションとクリエーションの力を、自分なりに精一杯受け継ぎたいと思います」と決意を表明した。■宮本亜門コメント日本の創作力をこれほど世界に知らしめた演出家はいません。「俺はこんな苦労してモノクロで革命を起こしているのに、なんで亜門はカラフルにそれができるんだ」とおっしゃっていましたが、これほど見事に日本の魅力を力強く、大胆に、美しい革命を世界に見せつけたクリエーターはいません。心からご冥福を祈ると共に、蜷川さんが全身全霊で伝えてくれた、生きるパッションとクリエーションの力を、自分なりに精一杯受け継ぎたいと思います。
2016年05月13日俳優・藤原竜也が、12日に亡くなった演出家の蜷川幸雄さんに対して、所属事務所を通じて追悼のコメントを発表した。藤原は「最期に会えて良かったです」と、蜷川さんが亡くなる前日、病院にお見舞いに行ったことを明かした。1997年、蜷川さんの舞台『身毒丸』主役オーディションで抜擢されてデビューした藤原は、「僕を産んでくれたのは蜷川さんです。沢山の演劇人生をありがとうございました」と感謝の言葉を捧げ、「真面目に突き進んでいきます」と思いを表した。藤原の代表作となった舞台『身毒丸』は1998年、2002年、2008年と再演。藤原は更に『ハムレット』(2003年、2015年)、『ロミオとジュリエット』(2004年~2005年)などのシェイクスピア作品や、『唐版 滝の白糸』(2000年)、『下谷万年町物語』(2012年)といった唐十郎作品など、多くの蜷川演出作品に携わっていた。■藤原竜也コメント最期に会えて良かったです。僕を産んでくれたのは蜷川さんです。沢山の演劇人生をありがとうございました。真面目に突き進んでいきます。
2016年05月13日俳優の吉田鋼太郎が、12日に亡くなった演出家の蜷川幸雄さんに対して、所属事務所を通じて追悼のコメントを発表した。吉田は「偉大な演出家であり、最大の恩師であった蜷川さんの訃報に言葉が見つかりません。今はまだこの現実を受け止められておりません」と悲しみを綴った。吉田はシェイクスピア劇、ギリシア悲劇など広く舞台俳優として活動しており、近年はNHK連続テレビ小説『花子とアン』(2014年)、テレビ東京系ドラマ『東京センチメンタル』(2016年)など、映像での活躍も注目されている。蜷川作品においても常連であり、『タイタス・アンドロニカス』(2004年、2006年)、『オセロー』(2007年)、『アントニーとクレオパトラ』(2011年)、『ヘンリー四世』(2013年)などの作品で主演を務めていた。
2016年05月13日俳優の市村正親が、12日に亡くなった演出家の蜷川幸雄さんに対して、所属事務所を通じて追悼のコメントを発表した。現在67歳の市村は「50歳でリチャード三世で初めて演出して頂きました」と、蜷川さんとの初タッグ作品を挙げる。その後、53歳で演じたハムレットについて「イチ(市村)でハムレットをやりたいと言われ、こんなに光栄な事はありませんでした」と綴った。更に市村は「蜷川さんの代表作NINAGAWA・マクベスをやらせて頂きました」と2015年に出演した蜷川作品に触れ、「最後の演出でしたが、ニーナと出会う事が出来て本当に役者としてシェークスピア俳優にさせて頂きました。感謝してもしきれません」と故人への謝意を表しながらも、「悔しいです! 淋しいです!」と思いをにじませた。■市村正親コメント50歳でリチャード三世で初めて演出して頂きました。その後ハムレットを53歳。イチでハムレットをやりたいと言われ、こんなに光栄な事はありませんでした。そして蜷川さんの代表作NINAGAWA・マクベスをやらせて頂きました。渾身の魂からの演出に心から感謝です。最後の演出でしたが、ニーナと出会う事が出来て本当に役者としてシェークスピア俳優にさせて頂きました。感謝してもしきれません。運命を呪います。しかし現実を受け止め、これからは天国からの演出に心を傾けたいと思っています。悔しいです! 淋しいです!
2016年05月13日写真家で映画監督の蜷川実花氏(43)が12日、自身のインスタグラムを通じ、父で演出家の蜷川幸雄さんが同日に亡くなったことを明かした。80歳だった。実花氏は、格子越しに桜が映し出された写真を投稿。「今日、父が逝ってしまいました」と報告し、「最期まで闘い続けたかっこいい父でした。父の娘でいられたことを誇りに思います」とつづった。ファンからは700件を超える追悼コメントが続々と寄せられている。蜷川さんは昨年12月に軽度の肺炎で入院。今年2月から舞台を上演予定だったが、十分に回復しなかったことから延期が発表されていた。
2016年05月12日蜷川幸雄さんや野田秀樹さんからその才能を高く評価され、“演劇”の枠を超えた人気を獲得しているマームとジプシー。いま最もホットな劇団が、新たに誕生するホール「LUMINE 0」のオープニングを飾る。主宰であり作・演出の藤田貴大さんが上演作に選んだのは、「海外に持っていくことを念頭に」作った『てんとてん…』と『カタチノチガウ』、そして「思い入れがある」という『あっこのはなし』の3作。「演劇って、どこか高尚で敷居が高いイメージがありますよね。それをもっとカジュアルにできないかというのが今回のテーマなんです。セレクトショップみたいに、服や化粧品を買ったり、CDを選ぶのと同じ線上に演劇を並べることができないかと思うんです。そういう軽やかさが新しい時代に行く演劇なのかなと」(藤田さん・以下同)近年、東京芸術劇場や彩の国さいたま芸術劇場と組んだ作品づくりなどもおこなっている藤田さん。しかしその一方で、「小さな空間で、かぶりつきで観る演劇ならではの質感とか尊さも大切にしたい」と話す。「正直、3作品を同時に稽古しているわけで、それはすごく大変なことではあるけれど、それと同時に面白さもあるんですよね。ツアー公演の時に、僕らが持っていくのって、せいぜいスーツケースひとつぶん。役者さんが床に線を引いて荷物を広げたら、すぐに芝居が始められるんですよ。今回も、同じ舞台に物が少し置かれただけで作品が変わるわけです。展示替えのように、3日おきに新作が入荷しました、みたいに見えたらいいですよね」◇4月28日(木)~5月8日(日)ルミネ ゼロ4月にオープンしたJR新宿駅直結の複合施設、NEWoMan内。東京都渋谷区千駄ヶ谷5‐24‐551作品4000円マームとジプシーTEL:070・5454・7311mum_gypsy@yahoo.co.jp◇ふじた・たかひろ1985年、北海道生まれ。'07年にマームとジプシーを立ち上げ、全作の作・演出を担当。'11年に岸田戯曲賞受賞。'14 年に野田秀樹作『小指の思い出』を上演し話題に。※『anan』2016年5月4日‐11日合併号より。写真・小笠原真紀インタビュー・文・望月リサ
2016年05月02日富士急山梨バスは12月23日~12月25日の期間、山梨県・山中湖で運行する水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」でクリスマスにちなんだイベントを開催する。「YAMANAKAKO NO KABA」は、3日間連続でそれぞれ異なるイベントを実施。23日は、クリスマスをひとりぼっちで過ごす人のみが乗車できる「クリぼっち号」、24日は恋人が2人きりで貸し切りで利用できる「カップル号」、25日はサンタクロースの仮装をした家族たち限定の「ファミリー号」を運行する。「クリぼっち号」は、12月23日の14:30~16:00に運行。車内では、クイズやビンゴゲームなどの催しが行われる。料金は男性2,200円・女性無料で、参加資格はクリスマスを1人で過ごす予定の"クリぼっち"であること。「カップル号」は、12月24日の15:30~16:00に運行する。「内緒でサプライズをしたい」などのリクエストにもできる限り応じるとのこと。参加は、恋人同士の2人1組限定となる。なお、「カップル号」の応募は既に締め切っている。「ファミリー号」は、12月25日の15:15~16:00に運行。家族全員でサンタクロースの帽子を着用すれば参加でき、料金も無料となる。車内ではファミリー対抗のクリスマスクイズ大会を行い、優勝したファミリーにはプレゼントを用意しているとのこと。なお、「クリぼっち号」と「ファミリー号」の応募は12月22日19:00まで、電話かメールで先着順に受け付けている。詳細は公式サイトにて。※価格は全て税込
2015年12月21日初演から36年が経った伝説の名作『元禄港歌―千年の恋の森―』に、宮沢りえが挑む。『近松心中物語』で知られる秋元松代の戯曲を初演と同じく蜷川幸雄が演出するこの舞台。許されない恋を抱えた瞽女を演じる宮沢は、情感あふれるこの物語にどう命を吹き込むのか。舞台『元禄港歌 -千年の恋の森-』チケット情報物語の舞台となるのは、江戸は元禄の時代の播州の港町。秘密を背負った母子、結ばれない男女など、瞽女の一行と大店の人々をめぐる幾重にも重なった宿命が、哀しく切なく描かれる。「野田秀樹さんや唐十郎さんといった、自分がこれまでやってきた舞台とはまったく異なる世界観の作品。女の情念みたいなものをそのままさらけ出すような、演じたことのない役でもあるので。蜷川さんがまた私にハードルを与えてくださったなと受け止めています」。演じる瞽女の初音は、これまでに太地喜和子や富司純子が演じてきた役。盲目の女芸人として生きる純粋な覚悟や女性としての激しさ、さまざまな情感を体現することを求められる。「目が見えない人間には何が見えるのか。目に映らないものが心にどう映るのか。そういう探求がこれから待っているかと思うとすごく楽しみなんです。深く考えれば考えるほど見えてくるものがあると思うから、その思索を大事にしたいですね」。瞽女一行をまとめる母のような存在を市川猿之助が演じるが、女方の共演はかつて坂東玉三郎と経験している。「女方の表現とどう交われるのかっていうのは、今度も緊張しますけど、だからこそ楽しみです。学ばせていただくこともきっといっぱいあるだろうなと思いますし、私も私なりにお返しできるような表現ができたらいいなと思いますし。ただ、お芝居というのは肉体ではなく魂の問題だと思うから。男性の猿之助さんも女性の私も同じところにいるんじゃないかなと思っています」。まさしくその魂が自由な人なのだろう。「お芝居のなかでは、誰を愛しても殺してもいい(笑)。不思議な仕事だなと思うけど、そういう意味では、お芝居をしているときがいちばん、身も心も自由になれて、深く呼吸ができる気がします」。今の時代にはない人間の関係や感情が描かれるこの舞台でもきっと、自在にあふれるものを見せてくれるはずだ。「今この作品をやる意味、私が参加させてもらう意味というのがあると思うので、それをちゃんと自覚しながら、この時代の人たちの思いを伝えることに試行錯誤したいです」。伝説の舞台は、心震わせるものをもたらしそうだ。公演は2016年1月7日(木)より東京・シアターコクーン、2月6日(土)より大阪・シアターBRAVA!にて上演。現在、ほぼ完売状態の東京公演は、チケットぴあにて立見券を発売中。取材・文:大内弓子
2015年12月11日2015年7月1日は、午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に「8時59分60秒」が存在する日となる。いわゆる「うるう秒」の挿入が実施される日だ。5月15日、日本でのうるう秒の挿入を実施する情報通信研究機構(NICT)は会見を開催し、うるう秒に関する説明を行った。2015年7月1日は、午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に「8時59分60秒」が存在する日となる。いわゆる「うるう秒」の挿入が実施される日だ。うるう秒は、現在の世界的な標準時間の元となる時系「国際原子時(TAI)」を刻む「原子時計」(1967年より秒の単位として採用)と、ミリ秒単位で回転にふらつきがある地球の自転速度により決定される時系「世界時(UT1)」とのズレを1秒を超す前に修正するために実施されるもの。1972年の実施開始から1998年までは毎年1回程度実施されてきたが、それ以降は、徐々に緩やかになってきており、地球の自転速度が変動してきていることが指摘されている。ちなみに、地球の回転速度の計測手法としては、かつては月の動きから計算していたが、現在主流となっているのは、クェーサー(電波天体)の信号を、離れた電波望遠鏡2局で同時観測を実施し、その位置を測定することで導き出すというもので、自転速度の変動については、さまざまな要因が検討されているが、まだ完全に解明されていないという。世界の標準時は世界中にある400台を超す原子時計の加重平均値をもとにして決定(協定世界時:UTC)されているが、これは計算を行う必要があるため、リアルタイムでは算出されていない。では、実際にリアルタイムで用いられる各国の標準時間はどうやって処理しているのかというと、UTCと同期した時計標準機関(日本の場合は小金井のNICT本部が保有)の原子時計が決定している。今回されるうるう秒の挿入は、1972年に同制度が開始されて以降、3年ぶり26回目の実施となる。7月1日に実施されるのは、うるう秒の調整方法などを定義している「ITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)」が実施の日付を1月1日(世界時としては12月末日)もしくは7月1日(同6月末日)を第1優先日としているためだ。NICTの電磁波計測研究所 所長である山中幸雄氏は、「近年のIT機器の増加や、社会情勢の変化などに伴い、時間に関するニーズが高まっている。特にネットワークの発達によるタイプスタンプや金融といった情報通信サービスでの比重が高まっているが、そうしたサービスの背後で動くハードウェア/ソフトウェアがうるう秒に対応しておらず、思わぬ問題を引き起こす可能性も指摘されている。特に今回は(日本では)18年ぶりに平日で、しかも朝の9時というタイミングでの実施であり、NICTとしても慎重に準備を進め、技術的なアナウンスなどに注力していく」と説明。前回の2012年のうるう秒実施の際も世界各所にて、それに伴う問題が発生したことから、注意喚起を促している。また、20年ほど前から、こうしたIT機器の増加にともない、うるう秒の廃止と連続時系への移行が米国を中心に、日本などが提言を行ってきており、ITU-Rにて議論が繰り広げられてきた。2012年には廃止に向けた決議案が提出されたものの、審議の結果、反対と賛成に意見が分かれたことから、2015年11月に開催される「WRC(World Radio communication Conference)」での判断へと先送りされている。2015年春の会議の時点で、うるう秒廃止に賛成している主な参加国としては、米国、日本、フランス、イタリアなど。英国、中国、カナダ、ロシアのほか、アラブ諸国やアフリカ連合諸国などが反対もしくは議論の継続といった立場を示している。各国ともに事情や思惑が異なるため、細かな部分は異なるが、大きく分けて、以下の4つのメソッドに立場が分かれるという。Method A:UTCへのうるう秒調整を廃止し、新たな連続時系を導入するMethod B:現行のUTCの定義を維持しつつ、新たに(うるう秒調整を廃止した)連続時系を導入し、2つの時刻系を共存させるMethod C:現行のUTCの定義を変更しない(連続時系を使用する場合の判断方法が複数存在)Method D:研究の結論が出ていないため、現行のUTCの定義を変更しないもし、うるう秒が廃止されることが決定された場合、新たな連続時系をどうするか、といったことが議論されることになるとのこと。また、実際にうるう秒の挿入が実施される時期も、数年間の緩和措置がとられることが見込まれるため、早くても2022年以降の実施になるという。ちなみに、うるう秒の挿入は、実施予定日の半年前までに発表する必要があるが、地球の回転が一定でないことから、ある程度データが溜まってこないことには実施を決定ができない(近年は2~3年に1度の頻度だが、1998年に実施後は2005年まで実施されていない時期があった)とのことで、仮に2022年よりうるう秒が廃止となった場合でも、近年の実施間隔からすれば2回程度はまだ挿入される可能性があるという。なお、2015年7月1日8字59分60秒の表示を実感したい人に向けてNICTでは、電波時計で9時以降に次の電波受信タイミング前に手動で受信をしてみるといった方法や、NTP(Network Time Protocol)サーバの活用、NICTのWebサイトに掲載されている時刻お知らせを見る、小金井市にあるNICTの本館の時計表示や武蔵小金井駅コンコースの時計表示、福島県田村市および川内村にある時計モニュメントの表示などで実際に目にする、といった方法があると説明している。
2015年05月15日7月、東京・Bunkamura シアターコクーンで上演する蜷川幸雄演出舞台『盲導犬』に、古田新太、宮沢りえ、小出恵介の出演が決まった。1973年に唐十郎が櫻社のために書き下ろし、蜷川幸雄が初めて唐戯曲を手がけた記念碑的作品。石橋蓮司、蟹江敬三、緑魔子が出演した伝説の舞台だ。蜷川は1989年に再び同作を手がけ、この時の出演者にはまだ年若かった木村拓哉も名を連ねた。そして今回、人気・実力を兼ね備えた3人の俳優を得て、24年ぶりに同作を再演する。舞台は新宿。盲人の影破里夫(エイ ハリオ)は、伝説の“不服従”の盲導犬・ファキイルを探し求めている。新宿にもうひとり、開かずのコインロッカーと格闘する女、奥尻銀杏(オクジリ イチョウ)がいる。ロッカーの中には、初恋の人タダハルの手紙が入っているのだが、南国で殺害された夫が鍵を持ったままなのだ。盲人と女、ふたりの魂は自ら求めるもののため、新宿をさまよう。はたして銀杏はタダハルと再会できるのか。そして、破里夫はファキイルに出会えるのか。破里夫に古田新太、銀杏に宮沢りえ、そして破里夫とともにファキイルを探し歩くフーテン少年に小出恵介。3人の舞台巧者がスペクタクル性と繊細な叙情性をあわせ持つ唐十郎作品に挑む。舞台は7月に東京・Bunkamura シアターコクーン、8月には大阪でも公演予定。
2013年02月05日the pillowsの山中さわおが、ソロとしては初のバンドスタイルで全国ツアーを行う事が決定した。ツアータイトルは「Buzzy Roars Tour」。山中はカミナリグモやLOVE LOVE LOVEといった若手バンドとの対バンツアーを行ったり、今年の7月にはCHEMICAL BUMP SHOW!!の一環としてお笑い芸人タイムマシーン3号と一緒に、お笑いと音楽を融合したツアーを開催しているが、ソロとしてバンドスタイルで回る全国ツアーは今回が初となる。来年の1月16日(水)にはソロとして初のシングル『Answer』をリリースする山中。これまではソロ作品では英語詞にこだわっていたが、今作では初めて日本語詞に挑戦し新たな一面を見せているとの事。こちらもツアーと合わせて、気になる方はご確認を。■山中さわお Buzzy Roars Tour3月30日(土)高円寺HIGH(東京都)4月7日(日)渋谷CLUB QUATTRO(東京都)4月10日(水)京都MUSE(京都府)4月12日(金)広島CLUB QUATTRO(広島県)4月14日(日)博多DRUM Be-1(福岡県)4月16日(火)松山サロンキティ(愛媛県)4月18日(木)松江AZTiC canova(島根県)4月20日(土)岡山IMAGE(岡山県)4月22日(月)浜松窓枠(静岡県)5月3日(金・祝)高崎club FLEEZ(群馬県)5月8日(水)郡山CLUB#9(福島県)5月10日(金)青森Quarter(青森県)5月12日(日)札幌PENNYLANE 24(北海道)5月14日(火)仙台CLUB JUNK BOX(宮城県)5月18日(土)新潟CLUB RIVERST(新潟県)5月20日(月)長野LIVE HOUSE J(長野県)5月22日(水)金沢vanvan V4(石川県)5月24日(金)大阪BIG CAT(大阪府)5月26日(日)名古屋CLUB QUATTRO(愛知県)5月28日(火)水戸ライトハウス(茨城県)6月2日(日)Shibuya O-EAST(東京都)
2012年12月12日イスラエルのユダヤ系とアラブ系、そして日本という異なる文化が集まり、演出家・蜷川幸雄のもと3年前からプロジェクトが進められてきた舞台『トロイアの女たち』。奇襲作戦“トロイの木馬”で知られる、ギリシャ軍に敗れたトロイアの王妃と娘たちの行く末を描いたギリシャ悲劇だ。しかしそこに綴られた“憎しみの連鎖”は、2400年前に書かれたとは思えないほど現代社会にも通じる生々しさをもつ。まずは日本で、その後はイスラエルにあるテルアビブ市立カメリ・シアターで上演予定の本作。11月下旬、クリエイトの現場となっている稽古場に立ち会うことができた。『トロイアの女たち』公演情報稽古前、いつものようにさりげなく歩き回り、キャストに声をかけていく蜷川。王妃ヘカベを演じる白石加代子を始め、ユダヤ系とアラブ系のメインキャスト、そして各人種混合のコロスまで、全員がすっかり打ち解けている様子だ。台本を見せてもらうと、右ページにはヘブライ語とアラビア語のセリフが、左ページには日本語と、右ページのセリフをカタカナに直したものが記されている。演者は馴れない外国語のセリフに注意深く耳を傾けなければならず、さらにひとつの動作でさえ、同じ国の人間なら察することが出来るものも、すぐに理解できるとは限らない。この日は地面にひれ伏す動きを見たユダヤ系キャストが「疲れて倒れたのか?」と身体的な質問をし、「哀しみに暮れている様子を表しているんだ」と蜷川が精神的な面を説明するひと幕も。稽古は続けて終幕の部分。夫も息子も殺されて自らも奴隷となることが決まったヘカベが、惨殺された孫アステュアナクスの亡骸をかき抱く場面だ。白石が能を思わせる言い回しで嘆き悲しむと、周囲の空気が一気に張り詰める。取り囲む15名のコロスもそれぞれの文化のリズムで鎮魂歌を歌い出すのだが、和を重視する日本側と、個々で見せようとするイスラエル側との動きが違いすぎて、まとまりを欠くことに。蜷川から「コロスは無名な人たちだけれど、だからこそある意味でこの物語、この歴史の主役。それを意識してほしい」と鋭い声が飛ぶ。うなずいたり考え込んだりといった表情の面々だったが、再びその場面を返すと、今度は個の動きを保ちつつ、少しずつ互いを見合うなどの変化があった。予定調和ではないヒリヒリとした現場の熱に、思わずこちらも引き込まれた瞬間だった。本作の会見で“演劇を通して世界にコミットしたい”と改めて語った蜷川にとって、宗教的・民族的な紛争を今も抱えるイスラエルとの共同制作は特別な意味をもつ。ヘカベ役の白石に向けた、「一元的な悲しみで演じないでほしい。世界にとってこの悲劇がどういう意味をもつかが重要なんだから」という蜷川の言葉。それは演劇と、この普遍的な物語がもつ力を信じる彼の、覚悟の表明でもあるのだろう。公演は、本日12月11日(火)から20日(木)まで東京芸術劇場プレイハウス(中ホール)にて。チケットは発売中。取材・文:佐藤さくら
2012年12月11日島根県の安来市商工会では、島根の戦国武将「山中鹿介(やまなかしかのすけ)」にあやかった「祈月札」を発売している。これから何かに挑戦する人が、逆境に負けない勇気を授かるためのお札だ。「祈月札(きづきふだ)」は三日月に見立てた木札(縦4.5センチ、横3センチ)と、願い事を書く用紙「願い文」がセットになっている。販売価格は300円。JR安来駅の「安来市観光交流プラザ観光案内所」および、「三日月公園」内の「ふれあい館」、「広瀬絣センター」で発売中。祈月札の願掛け方法は以下の通り。・月山富田城跡の鹿介像の前で、三日月型の木札を手に挟み、三笠山に向かって受験や商売繁盛、恋愛運などを祈る ・願い文に思いを記し、千畳平の「尼子神社」の願い箱に収める ・三日月型の「木札」は肌身離さずに身に付け、祈りが通じたら尼子神社に返納する 山中鹿介は自らが仕える主君、尼子氏が毛利氏の攻撃によって衰退するなか、三日月に向かい、「願わくは、我に七難八苦を与えたまえ」と祈り、尼子再興を固く決心したと言われている。そして度重なる戦を乗り越え、幾たびか再興に成功した。詳細は安来市商工会ホームページで確認を。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月06日島根県の東端に位置する、どじょうすくいとヤスキハガネの町、安来市。現在この安来市で宝探しイベント「山中鹿介の埋蔵金を探せ!」を開催中だ。期間は12月31日(月)まで。時は戦国時代、毛利家との攻防の中でひときわ偉才を放った武将がいた。山中鹿介幸盛だ。三笠山の上に光る三日月に向かい「願わくば我に七難八苦を与え給え」と祈り続けた。この鹿介の勇姿とともに地元に残るのが、鹿介の埋蔵金伝説。かつて山陰・山陽11カ国を治めた尼子氏の巨大な軍用金を城下のどこかに埋めたとされる。そんな伝説のある尼子の里、安来市広瀬町を歩き回りながら、謎を解き、キーワードを探すのが「山中鹿介の埋蔵金を探せ!」だ。回答を応募すると、正解者に抽選で特産品が贈られる。参加方法は簡単だ。まず「山中鹿介の埋蔵金を探せ!」パンフレットを安来のどじょう報からダウンロード。パンフレットの物語を読んで、物語に登場する古文書に関係のある場所をめざして、「まちあるき」へ。それぞれの場所でキーとなる数字を探し出し、文字盤にあてはめ、見つけ出した文字を応募用紙に空欄に書き込んで文章を完成させればOK。参加費は無料。この街歩きを手助けしてくれるのが「尼子の里まちあるきMAP」で、市内の主要観光施設で手に入れることができるほか、同サイトからもダウンロードできる。探し出した回答を応募用紙に記入の上、広瀬絣センター、安来商工会(平日のみ)、観光交流プラザ(JR安来駅隣)に設置してある応募箱に投函。応募者全員に「山中鹿介シール」がプレゼント(ただし、なくなり次第終了)されるほか、正解者の中から抽選で20名に山中鹿介Tシャツや城下町広瀬の特産品がプレゼントされる。なお、応募締め切りは来年1月15日(火)まで。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年10月04日鬼才・橋本治が約40年前、作家デビューする以前に書き下ろしたという幻の戯曲『ボクの四谷怪談』。偶然、戯曲を目にした蜷川幸雄が長らく上演を温めていたというその舞台が、豪華な役者陣と、音楽監督に鈴木慶一を迎え、9月17日に東京・シアターコクーンにて初日の幕を開けた。“騒音歌舞伎(ロックミュージカル)”と銘打つ通り、鶴屋南北の有名な歌舞伎『東海道四谷怪談』をベースに、ファッションや風俗を執筆当時の1970年代に置き換え、随所にロックなど多彩な音楽を散りばめた異色作。開演前には、フォトコールと記者会見が行われた。ネオンサインがきらめく舞台に大音響でロックが流れ、ヒッピー風の男や着物姿の女、テキ屋風のオヤジに通りすがりの商売女など、雑多な登場人物が次々に現れては歌うオープニング。次に場面は飛び、「御休処」と書かれた小屋の前。後ろには書き割りの松が立ち、セットは歌舞伎の舞台さながらだ。Tシャツにジーパン姿の伊右衛門(佐藤隆太)が地面に売り物を広げていると、友人の直助(勝地涼)がやってくる。セーラー服が可憐なお袖(栗山千明)を紹介されて直助は喜ぶが、リーゼント姿の直助にお袖は気のない様子。ふたりが去ると、今度はスーツ姿の与茂七(小出恵介)が現れ、「お前、生きてて面白いか?」と伊右衛門を挑発する。敵討ちの計画を得意げに語る与茂七と、「どうだっていいじゃねぇか」とぶっきらぼうに返す伊右衛門。両者の掛け合いはそのまま歌につながり、「生き甲斐」と「死に甲斐」をそれぞれに主張する歌声が交差して広がる。会見では、「伊右衛門はずっとモヤモヤを抱えているので、僕も初めはどう演じたらいいか迷ってしまって。(蜷川と何度も仕事をしている)小出くんにはだいぶ助けられました」という蜷川作品は初参加の佐藤に、隣で小出が照れくさそうにするひと幕も。「蜷川さんは稽古でOKだった演技も、初日でやっぱりダメと言い出したりするから」と暴露する小出に、いつの間にか後ろから見ていた蜷川が「うるさいよ!」と突っ込むなどチームワークは万全の様子。「舞台上でパワーを放出していきたい」(勝地)、「台本がブッ飛んでいるので、驚きつつ楽しんでもらえたら」(栗山)と語るふたりも笑顔だ。その他、尾上松也(お岩役)や三浦涼介、谷村美月ら若手実力派の熱量を、麻実れい、勝村政信らベテラン勢がしっかりと支える本作。高揚感と共に伝わるその面白さは、ぜひ劇場で体感してほしい。騒音歌舞伎(ロック・ミュージカル)『ボクの四谷怪談』は、10月14日(日)までシアターコクーン、10月19日(金)から22日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文佐藤さくら
2012年09月18日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の新作『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』が12月にKERA自身の、そして来年1月に蜷川幸雄の演出でシアターコクーンにて連続上演される。この一大プロジェクトに先駆けて某日、都内スタジオで行われたKERAバージョンの宣伝写真撮影現場に潜入した。『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』KERAバージョンのチケット情報スタジオでは生瀬勝久が撮影中。口に綿を含み、恰幅の良い姿で登場すると、「太った役をすると急にお腹が減る」と軽口をたたいて場を和ませていた。「写真は苦手」といいつつも次々とユニークなポーズをとる生瀬に、KERAからも笑いがこぼれる。本作では横暴で独裁的な市長を演じる生瀬。「たくさんのキャストが出ていても人間関係がつながっていて、それぞれ想いの輪郭が非常にはっきりしたキャラクターが描かれている。今回は僕自身知り合いが多いので、楽しみです」とKERA作品の魅力を語ったかと思うと、「(蜷川バージョンで同じ役を演じる)勝村政信には負けません! 投票してもらって決着をつけたい」と声を張り、スタジオは笑いに包まれた。今回が初舞台となる夏帆が撮影に入ると「あんまり純粋可憐になりすぎないように」とKERAが声をかける。役をイメージして細部にも気を配るKERA。次に撮影したのは2度目のKERA作品参加となる小出恵介。貧しい青年を演じる小出は「もっとおびえている感じだとどう?」というKERAの注文に瞬時に応え、順調に撮影が終了。小出は「出演者の波長が合ってひとつのメロディを奏でるような状態になれば、戯曲が観る方に伝わるはず。いまは何も予想できないし、KERAさんの作品はふたをあけてびっくりすることが多いから、こちらはなるべく柔軟にやっていかなくちゃと思っています」と意気込みを語る。現在、脚本執筆中のKERAに話を訊くと、「この脚本を蜷川さんにも演出していただく、という意識はやっぱりずっとある。実は一度蜷川さんとお会いして話したんだけど、その時の話は申し訳ないことに全く活かされてない」と苦笑。「いつもならこのセリフはこの役者ならこんな言い方をするだろうというシミュレートが頭の中にできているけれど、今回はあて書きをしていない。たとえば犬山イヌコが演じる役を蜷川さんバージョンでは伊藤蘭さんが演じる。そういう全然違うタイプの人が発するセリフをどちらにも寄せ過ぎず、ということをずっと考えていますね」と話す。まだ全貌の見えないこの作品がどんな形で目の前に現れるのか、年末が楽しみだ。KERAバージョン『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』は12月9日(日)から30日(日)まで東京・Bunkamura シアターコクーンにて上演。その後、2013年1月11日(金)から14日(月・祝)まで大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA!にて公演が行われる。チケットは東京・大阪公演ともに10月6日(土)より一般発売開始。なおチケットぴあではインターネット先行抽選・プレリザーブの申し込みを9月19日(水)11時まで受付中。取材・文:釣木文恵
2012年09月12日蜷川幸雄演出による〈彩の国シェイクスピア・シリーズ〉の第26弾として『トロイラスとクレシダ』が上演される。本作はシェイクスピアが戯曲を書いた時代のスタイルそのままに、全キャストを男優が演じる「オールメール・シリーズ」の6作目にして初の悲劇。主演の山本裕典をはじめ、月川悠貴、細貝圭、長田成哉、佐藤祐基、塩谷瞬、内田滋ら若い俳優が多く出演する。7月下旬、熱気溢れる稽古場を訪ねた。『トロイラスとクレシダ』チケット情報物語は古代ギリシアのトロイ戦争が舞台。トロイの王子トロイラス(山本)は、神官の娘クレシダ(月川)に狂おしいほど思いを寄せていた。クレシダの叔父パンダロス(小野武彦)の取り持ちによってふたりは永遠の愛を誓い合い結ばれるが、捕虜交換によりクレシダは敵国ギリシア軍へ送られる。時がたち、軍使としてギリシア陣営に訪れたトロイラスが見たものは、新たな恋人と抱き合っているクレシダの姿だった。「勇気もって、言葉で言葉で!」蜷川の声が、エネルギッシュに鋭く、テンポよく次々と飛んでいる。気持ちの乗っていないセリフには「うそつき!」、手を抜いて演じているとみれば「省エネ!」と厳しい言葉も浴びせるが、そのスピードに役者は落ち込んでいる暇はない。蜷川には今回、若い世代を育てたいという思いがあり「最近の若い俳優たちは、自分の日常生活に近い芝居はできるけれど、シェイクスピアやギリシア悲劇のような、縦軸としての教養を必要とする戯曲は、違和感があってできない。今回のセリフは特に論理的。彼らにとって異質な言語をぶちこむ」と実に意欲的だ。厳しい言葉の裏には若い俳優たちへの愛情と優しさが透けて見える。気になるセリフには一つひとつ、どこを強調するのか、語尾の言い方などを具体的に演出していく。「屁理屈を言うよりもね、具体的で早いでしょ」と話すように、指示は的確で明快だ。稽古場を訪れた日は、トロイラスとクレシダがふたりで初めて朝を迎えたシーンの稽古中。やっていて難しいところはと山本に訊くと「ヒロインとは言え、相手は男性。いちゃつくところは抵抗がないと言えばうそになりますね」と照れ笑い。蜷川とは2回目のタッグとなるが「自分は無知なところがすごくあるので、今回は1から100まで鍛えてもらう感じで挑みます。毎日大変ですが、これを乗り越えれば役者としてまた一歩成長できるのかな」と話していた。稽古を終えた蜷川は「よし、ここは明後日くらいには熟成してくるだろう」とぼそり。多くの俳優を育ててきた蜷川には、すでに完成形が見えているようだ。強い言葉を浴びせながらも、期待に応えようと四苦八苦する若手俳優たちの姿に、蜷川が嬉しそうな表情をみせるのが印象的な稽古場だった。公演は8月17日(金)から9月2日(日)まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場にて上演。その後、大阪、佐賀、愛知を巡演する。取材・文:大林計隆
2012年08月06日