理化学研究所(理研)は10月15日、小児慢性疲労症候群(CCFS)の患児の脳では、2つ以上のことを同時に進行するときに前頭葉が過剰に活性化し、非効率な脳活動状態となっていることを明らかにしたと発表した。同成果は理研ライフサイエンス技術基盤研究センター健康・病態科学研究チームの渡辺恭良 チームリーダー、水野敬 上級研究員らと、大阪市立大学、熊本大学、兵庫教育大学、および生理学研究所との共同研究グループによるもの。9月10日付けのオンライン科学誌「Neuroimage: Clinical」に掲載された。慢性疲労症候群は原因不明の疲労・倦怠感により半年以上も正常な社会生活が送れなくなる病気で、主に20~50代の患者が多いことが知られている。一方、CCFSは不登校児童や生徒に多く、3カ月以上持続する疲労・倦怠感、睡眠リズム障害などの症状が現れる。今回の研究ではCCFS患児15名と健常児13名を対象に、平仮名で書かれた物語を読ませ、母音の拾い上げと物語の内容理解の同時処理を要求する仮名拾いテストと呼ばれる注意配分課題を実施し、二重課題および一重課題(母音拾い上げ、または内容理解のどちらか一方)遂行中の脳活動状態をfMRIで測定した。その結果、CCFS患児と健常児いずれも二重課題遂行中は一重課題遂行中に比べて前頭葉の一部である脳の左側の下前頭回背側部と頭頂葉の一部である左側の上頭頂小葉が活性化しており、2つの部位が二重課題の遂行に必要な脳領域であることがわかった。また、疲労と脳の活性化の関係を調べたところ、健常児では疲労度が高いほど左側下前頭回背側部の活動度が高く、また物語の内容理解度が低い場合も活動度が高いことがわかった。これは、疲労していると脳の活動が活発化するものの、それが課題成績には結びつかないことを示す結果だという。一方、CCFS患児と健常児の脳活動を比較すると、二重課題および、一重課題のいずれにおいても、CCFS患児では右中前頭回が特異的に活性化しており、その活性度は内容理解度と正の相関関係にあった。さらに、二重課題では右中前頭回に加え前帯状回背側部と左中前頭回も健常児に比べ、特異的に活性化していたことから、健常児の場合は疲れていても疲れていなくても、注意配分時に左下前頭回のみの活性で情報処理するのに対し、CCFS患児の場合は右中前頭回と前帯状回背側部を活性化させ、内容の理解度を高めようとすることがわかった。これらの過剰な神経活動は、前頭葉の非効率な活動状態を示すだけでなく、精神的な負荷となって疲労増強の原因となる可能性がある。同研究グループは、CCFS患児は疲労により脳が活動しにくくなっているというよりも、脳の機能低下を補うために脳を過剰活動させていると考えており、今後、健常児の疲労およびCCFSにおける慢性疲労により引き起こされる前頭葉の過活動が疲労回復または治療により低減するかどうか研究を続けていくとしている。
2015年10月16日国立循環器病研究センター(国循)は9月9日、開心手術が困難な重症僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療の国内第一症例治験に成功したと発表した。僧帽弁閉鎖不全症とは、左心房と左心室の間にある僧帽弁の閉鎖機能が悪くなり、本来の血液の流れとは逆に、左心室から左心房に血液が逆流してしまう状態のことで、進行すると左心室の動きが悪くなり心不全につながってしまう。心不全の状態になると、弁逆流を治療する手術の必要性が高くなるが、左心室の動きが悪い中での手術は危険性が高く治療が困難である場合があった。今回、僧帽弁閉鎖不全症で心不全を繰り返す開心手術が困難な80代男性に対して、同センターのハートチームが、AVJ-514というカテーテルによる治療を実施。僧帽弁逆流の程度を重度から軽度に改善することに成功した。AVJ-514は、カテーテルを使って足の静脈から僧房弁に到達し、「クリップ」で弁をつかんで引き合わせることにより、逆流量を減らす治療法。体にかかる負担が少ないため、年齢や合併症などのために、手術を断念せざるを得ない症例に対しても治療が可能となる。同治療法は近年、欧州などで外科的手術が困難な症例に対し使用されており、海外での試験では開胸手術と同等の弁逆流および心不全の改善が得られたと報告されている。
2015年09月10日京都大学は7月22日、急性腎障害マウスにヒトiPS細胞から作製した腎臓の前駆細胞を移植することで、腎機能障害や腎組織障害が軽減することを発見したと発表した。同成果は京都大学iPS 細胞研究所(CiRA)の長船健二 教授グループとアステラス製薬によるもので、7月21日に「Stem Cells Translational Medicine」でオンライン公開された。同研究では、ヒトiPS細胞から「OSR1」と「SIX2」というタンパク質を指標に腎臓の前駆細胞を作製する方法を確立し、その細胞が腎臓の尿細管様の3次元の管構造を作る能力を持ち、腎臓の前駆細胞として十分に機能することを明らかにした。さらに、この方法で作製した腎臓の前駆細胞を、腎障害マウスの腎皮膜下に移植した結果、移植した細胞はマウスの腎臓に一部にはならなかったが、腎機能の検査値である血中尿素窒素値や血清クレアチニン値が、細胞を移植しなかったマウスとくらべて顕著に低下していることがわかった。また、腎臓の組織切片を観察したところ、尿細管の壊死や線維化など、腎臓が障害を受けた時に発生する現象もかなり小さく抑えられていた。この成果について同研究グループは「腎移植を必要とするような人工透析を受けている慢性腎不全の方の場合、腎臓の細胞がほとんど壊れているため、治療には腎臓そのものを作製して移植することが必要であり、今回の方法だけでは治療は困難です。しかし、急性腎障害を負った方の腎機能を回復し、腎障害の慢性化を防げる可能性を示しており、腎疾患にも細胞移植を使った治療が適応できることを示唆しました。」とコメント。今後は、今回の方法を活用した臨床応用の可能性を探りながら、慢性腎臓病や慢性腎不全の治療に向けた研究も進める予定だとしている。
2015年07月22日九州大学(九大)は7月21日、アトピー性皮膚炎に伴う慢性的な痒みのメカニズムに、「アストロサイト」と呼ばれる細胞が関わっていることを発見したと発表した。同成果は同大学大学院薬学研究院ライフイノベーション分野の津田誠 教授、白鳥美穂 学術研究員らの研究グループによるもので、7月20日(現地時間)に米科学誌「Nature Medicine」オンライン版に掲載された同研究では、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用い、マウスが引掻く皮膚と神経でつながっている脊髄後角で、神経系を構成する非神経細胞であるグリア細胞の一種「アストロサイト」が長期にわたって活性化していることを発見した。さらに、このアストロサイト内では、遺伝子の発現を促すタンパク質「STAT3」が働いていて、その働きを阻害することで、アストロサイトの活性化と引掻き行動が抑えられることを確認した。また、アトピーマウスの脊髄の遺伝子を調べたところ、活性化アストロサイトが、炎症に応答して産生されるLCN2というタンパク質を作り出し、それが脊髄後角ニューロンでの痒み伝達物質の作用を強めてしまうことも判明した。慢性的な痒みはこれまで主に皮膚を中心に研究されてきたが、今回の研究でアストロサイトの重要性が明らかになったことで、痒みのメカニズムの解明だけでなく、アストロサイトを標的とする新たな治療薬の開発につながることが期待される。
2015年07月22日季節の変わり目は、疲れやすいものです。上着がいらないぐらいの暖かさかと思えば、コートが必要なほど寒い日もあったり。でも、もしあなたの疲れが慢性化しているなら、何かほかに原因があるのかも。毎日の習慣を見直してみるべきでしょう。疲れ知らずの健康体質をつくるポイントをご覧ください。【食事】水分や鉄分補給はだいじょうぶ?わたしたちの体内の60~65パーセントは水ですが、水分量がたった2パーセント減っただけでも体内の機能が低下してしまうそうです。汗をかきやすいこれからの時期は、水分補給をしっかりしないと、疲れやすくなるだけでなく、熱中症や脱水症状の原因にも。利尿作用のあるカフェインを含むコーヒーや紅茶よりも、水を飲んだ方が効果的!水が苦手なら、水分補給に加えてビタミンなども効率よく摂取できるデトックスウォーターを飲んでみてはいかがでしょう?また、「鉄分不足」もよくありません。体がだるく感じたり、イライラしたり、貧血の原因に。牛肉の赤身や大豆製品、豆類、卵やゴマ、ナッツなどを積極的に食べましょう。なかでも、青のりやひじきなどの海草類は、100g当たりの鉄分含有量がレバーよりも多いので、たっぷり摂るようにしたいですね。みそ汁の具や、煮物にしてみましょう。鉄分の吸収率は、ビタミンCと合わせることで高まりますよ!【休息】スマホのチェックは、就寝1時間前までについつい見たくなってしまうスマホは、ベッドに持ち込まない方がよさそうです。スマホやタブレット、PCやテレビなどの強い光源は、睡眠ホルモン「メラトニン」の働きを邪魔してしまうのだとか。ぐっすり休むためにも、スマホのチェックは就寝1~2時間前を目処に切り上げるようにしましょう。どうしてもという時には、スクリーンとの間隔を35cm程度に保つようにすれば、睡眠へのダメージは少ないそうですよ。【職場・プライベート】「できません」と言えるようになって!心苦しいときもあるかもしれませんが、時にはきちんと断るのも大切なことです。うまく断ることができなければ、ストレスや疲れは溜まる一方。わたしは以前、勤めていた会社の社長に、「1日1時間でも、好きなことに費やす時間は大切。自分の時間を削ってまで気乗りのしない誘いに付き合ったり、ムダな残業をする必要はない」と言われて以来、困ったときには彼の言葉を思い出すようにしています。この発言、的を得ていると思いませんか?「できない」「やらない」と断ることも、時には必要です。無理をしないようにしましょうね。疲れを翌日に持ち越すと、仕事のパフォーマンスも下がります。一日の疲れはその日のうちに解消して、ハッピーな毎日を過ごしましょう!※関連記事ストレスで肌がボロボロに…!! 春、キレイになるための「心のケア」って?
2015年04月27日原因がわからないというのは本当に人を不安にさせますよね。慢性疲労症候群もなかなか診断が難しい病気の1つと言われています。どのような症状があるのか、治療方法は? 今回は、慢性疲労症候群の実態に迫ります。睡眠で疲労が回復しない寝ても寝ても疲れがとれないときってありますよね。起きてまだだるさが残っているときの絶望感といったらもう……。なんで、しっかり睡眠とったのに回復しないんだよ! 私の体! と朝から叫びたくなります。でも、叫んだところでどうなるものでもありません。むしろ、このようなときは注意が必要。というのは、慢性疲労症候群という病気の可能性があるからです。これは日本全国で約30万人の患者がいると言われている病気で、ずっと体の不調が続いて、最悪の場合、寝たきりにもなるというもの。不調が続くときは何かのサインかもしれませんね。慢性疲労症候群とは?ある人は、体の不調があったものの原因がわからずに、病院で処方してもらったいろいろな薬を服用していました。しかし一向によくならず、その状態のまま数年が経過してしまったそうです。症状はよくなるどころか、むしろ悪化する一方……。転機が訪れたのは知人の紹介で睡眠の専門医を受診したことでした。慢性疲労症候群は診断されるまで数年かかることが多く、また診断できたとしても治療できる病院は現在、非常に少ないそうです。診断のためには、睡眠時活動度検査や心理チェック、酸化ストレス検査、疲労度チェックなどの項目検査があると言われています。あせらずゆっくり自分のペースで前出の人は、体に不調を感じてから数年が経ってようやく慢性疲労症候群と診断され、そこから治療がスタートしました。その内容は、薬とサプリメントの組み合わせやリハビリテーションの指導。慢性疲労症候群の人は少しでも回復すると、それまで溜まってしまったことを一気に片づけて、また疲れて不調に陥るということがあるそうです。回復したら遅れを取り戻そうとするのではなく、少しずつ元のリズムを取り戻すことが大切です。Photo by Allie Holzman
2015年02月28日東北大学(東北大)と慶應義塾大学はこのほど、便秘症の治療薬として使用される「ルビプロストン」という薬剤に、慢性腎臓病の進行を抑える効果があると発表した。同成果は東北大学大学院医学系研究科および医工学研究科病態液性制御学分野の阿部高明 教授と、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣 特任准教授、同 曽我朋義 教授ら研究グループによるもの。12月18日(現地時間)付の米腎臓学会学術誌「Journal of the American Society of Nephrology」に掲載された。慢性腎臓病は、腎機能が慢性かつ進行性に低下する病態で、最終的には末期腎不全に陥るだけでなく、脳心血管疾患の発症率や死亡率を高めることで知られるが、高血圧や糖尿病に対する治療を行う以外治療法が無い現状がある。これに対し、腎臓が働かないために、体内に溜まってしまった尿毒素による各種腎臓への悪影響を抑えることが腎臓病の進行を抑制する手段として期待されている。また、腎臓病で蓄積するさまざまな尿毒素のうち、最も有害といわれているインドキシル硫酸などの産生には腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:体内の細菌群が作り出す生態系)が関わっていることが知られており、近年、慢性腎臓病では腸内環境全体が悪い方向に変化していること明らかとなっていた。この背景から研究チームは、腸内細菌叢を慢性腎臓病の新しい治療ターゲットとして腸内環境および腸内細菌叢に注目して研究を続けていた。今回の発見では、腸内環境を変化させる薬剤として、一般には便秘症の治療薬として使用されるルビプロストンの効果を検討した。同剤は腸液の分泌を増加させ、腸管内容物の移動を促進させる効果を持つ。研究チームが慢性腎不全状態のマウスに同剤を投与し、腎臓病の進行に対する効果を検証したところ、ルビプロストン投与マウスは投与していないマウスに比べて、腸液の分泌が増えたことにより、腎不全時における腸壁の悪化が改善されていた。さらに、腸内細菌叢を解析したところ、善玉菌の減少も改善していた。また、腎不全時に血液中に蓄積する尿毒素などの代謝物濃度を網羅的に解析した結果、ルビプロストン投与マウスではインドキシル硫酸や馬尿酸などの物質の血中濃度が減少すすることが判明した。これらの結果から、腸管は尿、血液透析とならぶ第3の尿毒症物質排泄経路で、便秘症の治療薬であるルビプロストンが、慢性腎臓病の新しい治療薬として適用できる可能性が示唆された。今後、人への応用に向け、副作用の少ない低容量かつ腸で解ける製剤の開発や、対象となる腎不全患者の選定方法などについて検討を行っていく。
2014年12月19日NTTデータはこのほど、レセプト(診療報酬明細書)データ等を活用した糖尿病性腎症重症化予防対策を埼玉県にて開始したことを明らかにした。糖尿病は現在、1,000万人が罹患(りかん)している病気だが、初期は自覚症状が出にくく、医療機関を受診しない人が4割近くいるという。そのまま放置して病状が進むと、目のかすみや手足のしびれ等の症状が出るだけではなく、重症化すると人工透析等のリスクも高まる。人工透析に移行すると週3回(1回当たりの治療時間4~5時間)ほどの頻度で治療をする必要が生じ、QOL(生活の質)が低下する可能性もある。さらに重症化すると、失明や壊疽(えそ)による足の切断などのリスクも高くなる。糖尿病の重症化を予防することは、生活の質を維持するとともに医療費適正化の効果もある。そこで埼玉県下18市町(※1)在住の国民健康保険の被保険者約100万人を対象に、糖尿病性腎症重症化予防対策事業を行う。すでに10月から糖尿病の重症化リスクが高い人を抽出する準備を進めており、今後、医療機関未受診者や治療中断者に対する受診勧奨および通院中の方に対する食事・運動等の生活指導を行う。このように、レセプトデータ等を活用して複数の市町村が共同して実施する糖尿病性腎症重症化予防対策事業は、全国で初となる。※1川越市、所沢市、飯能市、狭山市、羽生市、鴻巣市、上尾市、草加市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、八潮市、三郷市、日高市、鳩山町、幸手市、さいたま市の計18市町(入間市は市単独で4月から同様の事業を行っている)。
2014年11月26日睡眠時間を削って深夜までネットをしているネット依存の人が年々増えているそうです。今回は、その現状と対策法をご紹介します。ネット依存の恐怖を知って、慢性睡眠不足にならないように一人一人の意識を変えていきましょう。「ネット依存」5年前の1.5倍にまで増加厚生労働省研究班が2013年に行った「インターネット依存」に関する調査で「ネット依存」が5年前の1.5倍にまで増加していることがわかりました。数字で見ると、421万人だそうです。スマホが普及したことで、誰とでもいつでも連絡がとれるようになったり、ネット上のコンテンツが充実していくことで、気付いたら何時間もインターネットをしていたり。インターネットの普及はメリットも多いものの、身体を壊しかねない恐ろしいデメリットがあるのです。これは、慢性睡眠不足を引き起こす原因にもなります。まずは、自分自身の生活を見返してみましょう。「ネット依存」で増える慢性睡眠不足な人々「ネット依存」とは、ただネットを使いすぎるということだけでなく、それが原因で健康や暮らしに影響が出る状態のことを言います。ネット依存という意識がない人でも、気がつくと思っていたより長時間ネットをしてしまっていたり、睡眠時間を削ってまでネットに没頭してしまったことがあったり、ネット依存予備軍に当てはまる人は多くいます。特に20~30代の男女に、ネット依存傾向にある人が目立つようです。健康や暮らしに影響はないから、といって軽視するのではなく、自分に大きく関わってくる問題だと考えるべきでしょう。特に、気付かぬところで睡眠時間を削ってしまっている可能性もあります。慢性睡眠不足の実態とは慢性睡眠不足は、なかなか気付きにくいものです。徐々に睡眠不足感が減っていき、睡眠をとらなくてもなんとかやっていけてしまう状態になってしまう可能性があります。しかし、慢性睡眠不足によって、体や心などに悪影響を与えているのは間違いありません。時間を区切ってネットをやるのは問題ありませんが、長時間没頭しすぎるのはデメリットが多すぎます。インターネットのコンテンツの充実により、今後もネット依存が増えることが考えられます。自分自身や身近な人がそうなる前に、自分自身で環境を変えていきましょう。特に慢性睡眠不足だという自覚がある人は要注意です。Photo by Federico Morando
2014年10月26日午後や夕方になると、足がむくんでツライ…。多くの女性が経験したことのある、足のむくみ。そして、足がむくむことによって引き起こされるだるさや痛み、重量感、そして、手の指で、ふくらはぎやくるぶしを押すと、くぼみができて戻りにくかったりする場合、慢性静脈不全(静脈還流障害)といわれる、静脈の病気である可能性も。大人の女性の2人に1人が感じるという足のむくみ、実は、軽く考えてはいけないのです。女性の約半数が、足のむくみや違和感があるのに、それを、病気だと思っているのはほんの1割という結果もあります。むくみの原因は冷えじゃない!?大きな原因は、下肢(足)にあるのだとか。足の静脈は、正常ならば、下から上に向かって流れています。もともと下肢は、心臓から遠く離れた場所に位置し、しかも重力に逆らって血液を心臓まで戻す必要があるため、むくみが出やすい部位。しかし、水分を心臓に戻すルートである足の静脈に“通過障害”や“血流の逆流”があると静脈圧が高まり、血管から血漿成分が浸出して細胞間質に水分がたまってしまうのだとか。これが、静脈還流障害による“血管性むくみ”が引き起こされている状態で、水分の取りすぎや長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの状態でいても引き起こされます。一時的ならよいのですが、症状が何日も続く場合は、慢性静脈不全の状態になってしまいます。こうなると、下肢静脈瘤などを引き起こす恐れも秘めているのだそう。最近、耳にする下肢静脈瘤ですが、足の静脈の弁の機能が何らかの原因で低下し、血流が逆流してしまうことによっておこる足の血管の病気です。足の静脈には弁があり、血液の逆流を防ぐ働きをしていますが、立ったまま、座ったままの姿勢を長時間続けていると、その弁が壊れ、血液が逆流し、足に血液が溜まってしまうのだとか。結果、足の血管が透けたり、浮き出たり、コブのようなものができてしまうんですね。むくみと冷えの関係とは?静脈還流が低下すると、身体全体の血液の循環が悪くなると同時に水分の循環もうまくいかなくなるので、足のむくみや水太りを引き起こします。そのため代謝も低下し、冷えを感じることになるのだとか。そのため、静脈還流を改善すると、足のむくみが改善するだけでなく、なんと冷えも改善されてくると考えられているのだそう。 あなたの足は大丈夫? 自己チェックで確認!かんたん足のむくみ予防法もご紹介! >>続きを読む 自己チェックしてみよう!今の自分の状態をチェックしてみましょう。≪足のむくみに隠れる慢性静脈不全(静脈還流障害)チェック項目≫□ 足にむくみがある(すねを指で5秒以上押して離した後にくぼみが残る)□ 重量感、だるさ、つっぱる、痛いなどの自覚症状がある□ 長時間、同じ姿勢(立ったまま・座ったまま)で過ごすことが多い□ 加齢とともに足のむくみがひどくなってきた□ ほとんど運動をしない□ 足のむくみや重量感、だるさなど自覚症状が起床後も取れない、または何日も続く□ 家族に足のむくみや静脈瘤を経験した人がいる□ 肥満傾向(BMI値25.0以上)にあるチェックした数が多いほど、既に慢性静脈不全(静脈還流障害)の可能性、 または、将来かかってしまう可能性が高いそう。該当する人は、足の静脈の血流を改善するための対策が必要だといわれています。毎日実践! 簡単にできる足のむくみ予防法深刻な状態でなければ、ちょっとした足のストレッチや運動することで、静脈の血液循環を促進し、足のむくみは予防できます。まずは、体を動かすこと。同じ姿勢をとり続けないことです。仕事中などに、あまり大きく体を動かせない人も、足を動かして、ふくらはぎにある筋ポンプを働かせばOK。特に、足首を動かすことが効果的です。≪かんたん足のむくみ予防法≫・立った状態で…。足を並行に開き、まっすぐ立つ。できるだけ、かかとを上げてつま先立ちし、しばらくの間、キープ。その後、かかとをもとの位置に戻す。これを数回繰り返す。・座った状態で…椅子に腰かけ、まず、足首を伸ばしたり、曲げたりする。 次に、足を地面から少し浮かせて、片足ずつ足首を回す。この時、 膝をかかえて実施するとよい。 まず一方向に回し、続いて、逆方向にも回す。そのほか、足のむくみを改善する内服薬(西洋ハーブ薬)も発売されているので、薬局やドラッグストアで薬剤師に相談してみるのも良いかもしれません。・ 静脈還流障害(慢性静脈不全)WEBサイト
2014年10月06日カネカは3月31日、貧血を発症した猫のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の改善を目指した猫用の貧血治療薬の開発を本格的に進めていくことを発表した。医療技術の発達により人間に高齢化社会が訪れたように、犬や猫などのペットも獣医療の発達などにより寿命が延びるようになってきた。しかし、猫は高齢になると腎不全を発症することが多く、長寿命化により、その発症数が増加している。また、腎不全に起因する貧血(腎性貧血)を発症することも知られているものの、人間のような有効な治療薬は販売されていなかった。今回の取り組みは、ヒトの腎性貧血患者用に開発された「エリスロポエチン」のようなタンパク質医薬品を遺伝子組換え技術を活用することで、猫用の「エリスロポエチン」へと改良する技術を活用することで進められる。すでに同技術は確立されており、現在、猫用エリスロポエチンの商業製造の検討および薬事開発が進められており、動物用医薬品としての製造販売承認の取得を目指した取り組みが進められているという。なお同社では今後、すでに販売している動物用サプリメントのラインアップを増やすとともに動物用のタンパク質医薬品の研究開発を進めていくことで、アニマルヘルスケア分野への展開を強化していきたいとしている。
2014年03月31日九州大学(九大)は2月19日、「神経障害性疼痛」の慢性化に「二次リンパ組織」である脾臓における免疫細胞の1種「樹状細胞」のリソソーム酵素「カテプシンS」の働きによる抗原特異的なリンパ球の1種である「CD4+T細胞」の活性化が重要であることをマウスによる研究で明らかにし、活性化したCD4+T細胞は「脊髄後角」へ浸潤し、「インターフェロン-γ(IFN-γ)」を産生分泌することで「ミクログリア」の活性化をさらに深化させることが疼痛の慢性状態への移行に極めて重要であることを突き止めたと発表した。成果は、九大大学院 歯学研究院の中西博教授らの研究チームによるもの。研究は科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の一環として行われ、詳細な内容は米国東部時間2月19日付けで米神経科学会誌「Journal of Neuroscience」に掲載された。神経系における損傷または機能障害によって持続的な痛みが発生する神経障害性疼痛は、モルヒネも奏効しない難治性疼痛として知られている。近年、神経障害性疼痛の慢性化において、リンパ球の1種であるT細胞が関与することが示唆されていた。しかし、その詳細なメカニズムについては不明な点が多く残っている。「単核食細胞」に特異的に発現するリソソーム性システインプロテアーゼの1種カテプシンSは「抗原提示細胞」の1種である樹状細胞において、抗原提示を行う「MHCクラスII分子」に結合している「インバリアント鎖」(MHCクラスII分子が抗原以外のペプチドとの結合するのを防ぐために結合したペプチド)の最終段階の分解に関与し、抗原提示機能の発現に重要な役割を担っている。なお抗原提示細胞とは、抗原をT細胞に提示することで、T細胞を活性化させる役割を持つ。またMHCクラスII分子とは、抗原提示細胞の「エンドソーム」(細胞小器官の1種で、細胞内に存在する細胞外物質を取り込む小胞)内に存在するタンパク分子で、抗原を結合すると細胞膜表面に移行しCD4+T細胞に抗原を提示することで活性化させる働きを持つ。中西教授らの研究チームは、これまでカテプシンS欠損あるいは脳移行性のないカテプシンS特異的阻害剤「Z-Phe-Leu-COCHO(Z-FL)」が、神経障害性疼痛の発症にはほとんど影響することなく慢性化を有意に抑制することを見出していた。そこで研究チームは今回、カテプシンSが二次リンパ組織(リンパ球の抗原提示による活性化に関与する脾臓やリンパ節などの組織)での抗原提示によるT細胞の活性化に関与し、神経障害性疼痛の維持・慢性化において重要な役割を担っている可能性を検討することにしたのである。神経障害性疼痛モデルマウスは、脊髄神経を腰神経レベルで切断することで作成された。野性型マウス(DBA/2系統)では神経障害に伴い、二次リンパ組織である脾臓の肥大化が認められ、T細胞などが産生分泌するサイトカインの1種であるIFN-γを発現したCD4+T細胞(Th1細胞)の増大が確認された。また、脾臓に分布する樹状細胞においてカテプシンSが増大することも明らかとなったのである。一方、カテプシンS欠損マウス(DBA/2系統)ではこれらの変化やインバリアント鎖の最終段階の分解は生じず、神経障害性疼痛の維持・慢性期における疼痛の有意な緩和が認められた(画像1)。また、野生型マウスにおける脾臓摘出によっても神経障害性疼痛の維持・慢性化が有意に抑制されることが確かめられたのである。画像1のグラフでは、カテプシンS欠損マウスにおける神経障害性疼痛の有意な緩和が確認可能だ。グラフの見方は、PWT(g)は機械刺激に対する疼痛閾値で、「+/+」は野生型マウス、「CatS-/-」はカテプシンS欠損マウス。ipsiは神経障害側後肢への機械的刺激を表す。そして、contraは反対側後肢への機械的刺激だ。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001は野生型マウスの疼痛しきい値との比較である。そこで次に神経障害性疼痛を発症した野性型マウスの脾臓よりCD4+T細胞を単離し、神経障害5日目のカテプシンS欠損マウスあるいは脾臓を摘出した野生型マウスに腹腔内投与が行われた。その結果、投与直後から3日間に渡ってこれらのマウスにおいて疼痛の有意な増強が認められたのである。さらに免疫組織化学的解析の結果、IFN-γを発現したT細胞の神経障害側の脊髄後角(末梢知覚神経から送られてくる痛覚情報を上位中枢へ中継する脊髄の部位)への浸潤が確認された(画像2)。これは末梢神経障害に伴って「血液脊髄関門」(血液から脊髄への物質の移行を制限する機構)の透過性が一過性に増大するという報告と一致するという。(画像2)さらに、脊髄後角に浸潤したTh1細胞がIFN-γの産生分泌により脊髄ミクログリア(脳脊髄に存在し免疫機能を担う中枢神経中のグリア細胞の1種)を刺激し、ミクログリアの活性化をさらに深化させている可能性が検討された。IFN-γ受容体の下流シグナルである「STAT1」のリン酸化が調べられたところ、リン酸化STAT1はミクログリアの核に局在することが認められ、転写因子としての活性化が確認されたのである(画像3)。なおSTAT1とは、IFN-γ受容体の活性化によりリン酸化され、核内に移行して転写因子として働くタンパク分子のことだ。以上の結果より、二次リンパ組織である脾臓における樹状細胞のカテプシンSの働きにより、抗原特異的に活性化したTh1細胞の脊髄後角への浸潤、ならびにIFN-γ を介した脊髄後角ミクログリアの活性化のさらなる深化が、疼痛の慢性状態への移行に極めて重要であることが明らかとなった(画像4)。今回の成果により、神経障害により脾臓などの二次リンパ組織の樹状細胞におけるカテプシンSに依存したIFN-γ陽性CD4+T細胞(Th1細胞)の活性化が引き起こされ、活性化したTh1細胞の脊髄後角への浸潤によりIFN-γを介した脊髄後角ミクログリアの活性化状態のさらなる深化が引き起こされることが明らかになった。このことからカテプシンSの二次リンパ組織での働きが神経障害に伴う疼痛の慢性状態への移行に極めて重要であることが示唆されるという。また今回の研究により、カテプシンSが神経障害性疼痛に対する治療薬開発における新たな標的分子となることが提示された形だ。一方で、神経障害に伴う二次リンパ組織における免疫応答にはマウス系統間での差異が認められ、C57BL/6系統マウスでは神経障害に伴うTh1細胞の活性化が認められていない。このように末梢神経障害に伴って脾臓のような二次リンパ組織において分化した成熟T細胞は末梢血中に移出し、脊髄を含む体組織に浸潤すると考えられる。そこで今後は、神経障害性疼痛を発症した患者の末梢血におけるT細胞サブセットの詳細な解析を行うと共に、カテプシンS特異的阻害剤ならびに免疫抑制剤の神経障害性疼痛に対する治療薬としての有効性について検討を行う予定とした。
2014年02月20日磁気と健康の研究会は9月26日・27日の2日間、30~45歳の男女210人を対象に、「肩こりと磁気に関する意識調査」を実施した。同調査は、慢性肩こりの人(週に一度以上肩こりを感じている人)126名、肩こりのない人84名を対象に実施。最初に、睡眠の質やその低下による日常生活への弊害について調査。その結果、6つの項目において、慢性肩こりの人が睡眠障害やそれによる日常生活の影響を感じていることが分かった。特に「寝つきが悪いことが多い」は慢性肩こりの人は肩こりなしの人と比べて2倍、「夜中に何度か起きてしまう」という中途覚醒は1.6倍だった。さらに日常生活においても、慢性肩こりの人は「集中力が途切れがちでイライラする」ことが2倍多いことが明らかとなった。続いて、疲れやすさについて調査。残暑が厳しかった今年の夏時期の疲れについて尋ねたところ、慢性肩こりの人は肩こりなしの人と比べて、5倍も食欲をなくすほどの夏バテを感じていたことが分かった。慢性肩こりの人は睡眠障害を抱えている傾向があることから、より疲れやすく夏バテになりやすいと考えられる。肩こりと見た目に関する調査では、「実年齢よりも老けて見られるか」「顔色が悪いと言われるか」「猫背であるか」という質問全てで、慢性肩こりの人はその傾向が強いことが分かった。特に「実年齢よりも老けて見られる」は肩こりなしの人と比べて約1.7倍多く、肩こりは見た目の印象にも影響していることが明らかとなった。慢性肩こりの人に磁気治療器について尋ねたところ、使用経験がある人は3割程度で、半分以上が磁気治療器を正しく理解していないことが分かった。磁気治療器は血行を改善してコリをほぐす効果があるが、それとは反対に「磁気治療器は体の負担をかける」と誤解している人も多いようだ。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月21日スイスのノバルティスファーマは、米食品医薬品局(FDA)が、結節性硬化症(TSC)に伴う腎血管筋脂肪腫のうち、直ちに外科手術を必要としない成人患者に対する治療薬として「アフィニトールR」を承認したことを発表した。結節性硬化症とは、重要な臓器に良性腫瘍を引き起こす可能性のある遺伝性の疾患。世界で約100万人から200万人の患者がいると推定されている。腎血管筋脂肪腫は結節性硬化症患者の最大80%で発生する症状で、腫瘍は時間の経過とともに大きく増殖。重度の内出血を引き起こす、塞栓(そくせん)術や腎摘出といった緊急の外科手術が必要になるなどのほか、腎不全を引き起こす可能性もある。「アフィニトールR」は、こうした患者の治療に対して初めて承認された薬剤となる。日本では根治切除不能または転移性の腎細胞がんに対する治療薬として2010年4月より販売されており、2011年12月に膵神経内分泌腫瘍の治療薬として承認されている。結節性硬化症に対しては現在申請中となっている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年05月15日ドイツの製薬企業・ベーリンガーインゲルハイムグループの日本法人、ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社は、28週間の治療後に、肝硬変を有するC型慢性肝炎患者で、最大71%がウイルス学的著効(薬効を示すこと)を達成したことが新たなデータで明らかにされた、と発表した。この結果は、ベーリンガーインゲルハイムが開発中の、インターフェロンを併用しない2つの直接作用型抗ウイルス剤を含む併用療法を受けた、C型慢性肝炎患者(ジェノタイプ1b型)において示されたもの。肝硬変は、肝細胞が破壊され消失して瘢痕(はんこん)組織となるものであり、発症すると肝機能が徐々に低下し、肝臓がんおよび肝移植のリスクが高くなる。インターフェロンによる副作用は重度になることもあり、その副作用には、心不全、敗血症、白血球減少症、失明などがある。インターフェロンは現行の治療選択肢のすべてで併用されており、その負担を軽減するためには、インターフェロンを併用しないで済む治療法が渇望されている。ジェノタイプ1型(ジェノタイプ1a型、ジェノタイプ1b型)はC型慢性肝炎の最も一般的なタイプで、インターフェロンを併用した治療レジメンでは最も治療困難なタイプでもあり、また、肝硬変患者は従来から治療への反応が不良で、特にインターフェロン治療では効果が認められなくなっている。今回の結果では、インターフェロンを併用しない28週間の治療後、最大でC型慢性肝炎患者(ジェノタイプ1b型)の71%がウイルス学的著効を達成した。今回のデータは、肝硬変を有するC型慢性肝炎患者という特定の患者集団に対してインターフェロンを併用しない治療法で、高いウイルス学的著効率が示された初めてのデータで、治療期間が大幅に短縮される可能性も示されている。この結果は世界で推定3,400万人の、肝硬変を発症する20%のC型慢性肝炎患者にとって意義あるものとなった。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月26日