多忙な学校現場に投じられた「個別の支援」というミッション出典 : 年以上も前のことですが、日本にも発達障害の概念が広まり、学校で個別の支援についての研修がさかんに行われだした頃、大学教員である私も、研修会の講師として各地へ頻繁に出かけていました。子どもの状態を正しく評価し、その子に応じた支援計画を立て、学内外と連携し、たとえ障害があっても活き活きと生きられるように支援するのだと、学校の先生に向けて話して回っていたのです。そんな中、受講した教師の言葉が風の便りに聞こえてきました。「大学教員は新しいことをやれやれと言うが、実際に行うのは自分たち教師だ。日常業務で多忙な中、評価だ、個別の支援計画だと次々に言われたらパンクする。無責任にあれやれこれやれと言わないで欲しい」表立って口には出す人は少ないけれど、多くの現場の教員は心の中で叫んでいたことだと思います。今思えば、発達障害についてよく理解していない上に誰も助けてくれない中で、個の特性に応じた教育をと言われても、ただただ難題を突きつけられただけだったのかもしれません。現場の教員への負担の軽減や、育成体制の充実などは、今も残る課題の一つです。しかし、子どもたちのための新たな教育を開発するためには、やはり多少のストレッチというか、現場の先生たちの自己変革がなければ前進しないと思います。そして実際に、心ある教師はこの10年間にその知識とスキルを目覚ましく発展させてきています。先生たちがフランクに話せる場所が生まれると…出典 : 今回の記事では、私が関係した心ある教師たちの進化と実践を紹介したいと思います。地方の中高一貫校の教育相談担当教員に事例検討会の助言を頼まれた時のことです。2週間に1回の割合で夕方2時間くらい教育相談室に行き、学校教員と子どもたちの事例について話し合うという内容でした。参加は自由、途中参加、途中退席可で始めましたが、最初はだれも来ず教育相談担当教員とよもやま話で時が過ぎてしまったこともありました。そのうち、だんだんと若い教員が顔を出すようになりました。「クラス運営がうまくいかない」、「保護者からきつい言葉をいただいた」などと、初めはほとんど、グチをこぼすために集まっていうるようなものでした。ですが、そうした弱音も含めてフランクに吐き出せる場を続けていくと、いつしか真剣な生徒指導上の議論も飛び交うようになりました。先生同士で話せる場があれば、問題解決の根拠を見い出しやすくなる出典 : 事例検討会が軌道に乗ってきたそんなある日、赴任して間もない若い男性中学教員が会に顔を出しました。そしてクラスの女子生徒のことについて話し始めました。大柄なその女子生徒が教室の中で口論になりカッとなって木製の椅子を持ち上げ床にたたきつけて粉々にしたというのです。「もしその椅子が他の生徒に当たったらと思うとぞっとする、どうしたらよいだろうか」という相談を持ちかけたのでした。その教員は生徒との面談の内容も話してくれました。「幼稚園児の頃から体が大きく力が強かった。カッとなりやすい性格で、一度カッとなったらすぐ相手を殴ってしまうので、みんなから乱暴者と言われていた。小学校もずっとそんな調子だった。」生徒はこのようなことを話してくれたそうです。その学校は私立でした。地元では評判が良くなく受け入れられていないと感じる子が、地元の公立ではなく遠く離れた知り合いのいない私立の学校に進学するケースがよくありますが、この生徒もそのような子でした。ですが、相談してくれた担任教師自身が彼女に対して抱いている印象は、「乱暴者には見えない、自分のことをきちんと言える生徒」ということでした。普段の姿と暴力的な姿とのギャップに戸惑いを感じて、対応に悩んでしまったのです。「カッとなりやすい生徒」を多角的な視点で見てみると…出典 : みんなで良い知恵を出そうと話し合いましたがなかなか妙案が出てきません。その生徒のイメージがつかめないのです。私は教員と話し合い助言する立場ですので、直接生徒や保護者と会うことはまれでした。しかしこのケースではもう少し生徒の状態を知りたいと思ったので、私も直接面談させてもらうことにしました。一番気になったのは、カッとなったら頭が真っ白になり、自分がしたことを覚えていないということでした。もしかしたらてんかんなどの意識障害があるのではないかと疑ったのです。担任が面談を設定してくれてその生徒から話を聞きました。しっかりと話のできる生徒でした。内容はほぼ担任から聞いたことと同じでした。「カッとなってからのことは覚えていない。気がついたら目の前にばらばらになった椅子がある。でも、カッとなって自分が何かをしでかしそうになるところまでは覚えている」と、話してくれました。議論の場があったからこそ発想できた、生徒のストレスを発散させる妙案出典 : 生徒から聞き出したことをヒントにして考え、再び事例検討会に臨みました。この生徒には、・カッとなった自分を内省する力はある・しかし、ひとたびカッとなると感情を自分で抑えることは難しいという特徴が見られます。そこで、「カッとなったと思ったときは、その場を離れてストレスを発散させられるようにすれば良い」のだと話しました。すると担任教師は、「教室を出たところの階段を昇れば広い場所がある。そこに教材が置いてある。今は紙粘土がたくさんある。それを板に投げつけさせるのはどうか」と提案しました。皆もいい案だと言い、早速担任が中心となり実行させることになりました。次の事例検討会で、その後の経過を聞きました。担任が生徒に、「カッとなったら教室を出て教材置き場に行き、そこで紙粘土を気が済むまで板壁に投げつけるように」と言うと生徒は了解し、実行したとのことでした。これを行うことによって教室での暴力沙汰は無くなりました。生徒を見守るチーム体制ができ、保護者と学校の関係性にも変化が出典 : 私はこの生徒がカッとなった後に意識が無くなることをまだ気にしていました。親が正しく子どもの状態を学校に伝えないことが多いからです。そこで担任に親から直接精神的、身体的なことを聞きたいと言い、親と会う設定をお願いしました。母親が来て私と担任が会いました。母親は看護師でした。幼児の頃から乱暴だと言われていたところから話していただけました。肝心の記憶がない、意識がないということについては、脳波検査を受けたが異常はなく、てんかん等の神経学的異常は認められなかったとのことです。その話を聞いたので、「お呼びだてしてすみません。娘さんの指導が間違っていないかどうかを確かめたくて来ていただきました。お忙しいのにすみません。」と丁重にお礼を述べようとしたのですが、まだ私が話し終わらないうちに、母親がすっと立ち深々とお辞儀をし、「これまでの学校の中で一番子どもをよく見てもらっています。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」とおっしゃいました。問題を起こす子どもの親が学校に呼び出されると、苦情を言われていると思って嫌な気持ちになることを知っていたので、その言葉には驚きとともに安堵し幸せな気持ちになりました。「すばらしい担任ですからご安心ください。」と伝え、私は面談を終えました。担任の先生の果たした大きな役割出典 : それからひと月ほど経った事例検討会の時、担任にまだ紙粘土投げは続いているかと尋ねました。担任は、「実はもうそれをやっていない、紙粘土も乾いてしまっているし…。」と歯切れ悪く答えました。よくよく聞くと紙粘土投げを何度か行った後、カッとなって階段を上って教材置き場に向かう途中、気持ちがスーと落ち着いて教室に戻ると生徒が言うというのです。もはや紙粘土を投げる必要はないのではないか、すると、乾いた紙粘土の代わりにほかのストレス発散の手段を考える必要はないのではないかとその担任は思い悩んでいたのでした。私が「それは自分の気持ちをコントロールできるようになったという証拠。もうストレス発散は止めても良いと思います」と伝え、この対応を終わりにしました。なぜその生徒が、こんなにも早く気持ちのコントロールができるようになったのか、理由は定かではありませんが、こう推測できます。一つには中学2年生になり気持ちをコントロールする機能が成熟したことが考えられます。もう一つは担任が親身になり、対応策を考え生徒に実行させたこと自体が、生徒の自信や安心につながったことが考えられます。あるいはこの二つの相乗作用として、成熟しつつあったコントロール機能が、担任の親身な寄り添いと手段によって加速されたということかもしれません。また、子どもが落ち着いてきたことによって親子関係が良くなったり、クラスメートのからかいが減少したことも影響しているのかもしれません。いずれにしても事例研究会での相談事からはじまり、知識とスキルを発展させ、生徒の問題解決に収斂させていった担任の果たした役割は大きかったと思います。まとめ出典 : 発達障害児の概念が生まれ個別の支援が叫ばれるようになってから、教育現場では上記のような取り組みをはじめ様々な取り組みを試みています。個の教育的ニーズ(必要性)に合った教育というスローガンが空々しくならないように、教育する側も努力する必要があると思います。そのためには教師や学校に根拠に基づいて助言できる人材を増やさなければならないように思います。現在は特別支援学校に在籍する教員が各学校を回って助言する巡回コーディネータを務めていますが、さらに発達障害児童のための専門的な教員を増やすよう文部科学省も動いているようです。障害を正しく理解し正しく支援できる人が増えてみんなの知恵と力で一人一人が大切に教育される社会が作り上げられることを願っています。
2016年12月07日昨日12月6日、年金制度の新ルール化を盛り込んだ「年金制度改革関連法案」が参議院厚生労働委員会で審議入りしました。11月末、衆議院の本会議で賛成多数によって可決となっており、いよいよ大詰め段階に入っています。この法案は「現役世代の負担減・年金制度そのものの安定化に繋がる」という声もある一方、「現在もしくはこれから年金を受給する高齢者の年金減額に繋がる『年金カット法案』だ」という批判の声もあります。とはいえ、そもそも年金の金額というのはどのような仕組みで決まっているのでしょうか?また、どうしてこの法案は「年金カット法案」だとして批判を浴びているのでしょうか?Q.「年金カット法案」と言われている理由は?*画像はイメージです:.物価が上昇しても、賃金が下落すれば年金額が下がってしまうため現在の制度でも年金額は「賃金・物価」の影響を受けるため、実はこれらの増減によって年金額は毎年微妙に変動しています。ただ、今の制度では「特例措置」として、物価が上昇していても賃金が下がっている場合は、年金額は「減らさない」というものが採用されています。しかし、今回の改革法案ではこの特例措置を無くすようになっているため、物価上昇時に賃金が下がる場合、年金額も下がることになってしまうのです。その場合、当然年金生活者にとっては生活が厳しくなることが想定され、この部分が「年金カット法案だ」と言われる理由なのですね。一方、賃金の情勢はいわば年金制度の「財源(収入)」にあたるため、この部分を優先させることは、年金制度の継続性を重視した改正案だと見ることもできるのです。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*和尚 / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月07日成年後見制度とは?出典 : 成年後見制度とは2000年4月より開始した制度で、知的障害や精神障害、認知症などにより判断能力が十分でない人の法律行為を支援する制度のことをいいます。例えば、銀行の手続きや遺産分割、不動産の売却などが挙げられます。成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人等を選任し既に判断能力が低下している人に対して支援する法定後見制度と、あらかじめ本人が任意後見人を選び近い将来に備え支援者と支援内容を決めておく任意後見制度の2つがあります。申立てには一般的に1~2ヶ月かかるといわれています。児島 明日美、村山 澄江/著 『今日から成年後見人になりました』2013年 自由国社/刊成年後見制度の活用例をご紹介します。精神障害のあるご家族をお持ちの方のケースです。精神障がいの場合~法定後見~Q 私の妹(21歳)は精神障がいで、日常会話は何とか分かりますが、時間の経過がわからず、また、お金を使って買い物をしたりすることもできません。最近、携帯電話を勝手に契約してきましたが、通話料が必要であることは理解できません。今後、勝手にクレジットカードを作って他人に使われたりしないか心配です。良いアドバイスをお願いします。A 精神上の障がいにより判断能力が不十分である方のために、家庭裁判所が適切な保護者を選び、本人を保護するための制度が成年後見(法定後見)制度です。本人の判断能力に応じて、家庭裁判所が適切な保護者(成年後見人・保佐人・補助人)を選びます。選ばれた保護者(成年後見人・保佐人・補助人)は、本人の希望を尊重しながら、財産管理や身の回りのお手伝いをします。妹さんの場合も、成年後見(法定後見)制度を利用することで、妹さんが勝手にしてしまった契約を取り消したり、契約の無効を主張することができるなど、妹さんを法的に保護することができるようになります。(成年後見Q&A | 公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート大阪支部)本人の判断能力は人によりさまざまですので、成年後見制度では、一人ひとりにあったサポートを利用することができます。成年後見制度の目的出典 : 成年後見制度は判断能力が不十分な方々の権利を守り、法的に保護・支援することを目的とした制度です。近年は精神疾患のある人や1人暮らしの高齢者といった判断能力の乏しい方が、悪質な訪問販売員に騙されるような悪徳商法が後を絶ちません。 このような場合は成年後見制度を利用することによって契約を取り消し、被害を未然に防ぐことができます。認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。(「成年後見制度~成年後見登記制度~」 | 内務省)成年後見制度の背景出典 : 成年後見制度の成立には、「ノーマライゼーション」の考えと、「自己決定権の尊重・残存能力の活用」という考えが背景にあります。一体どのような考え方なのか、それぞれ見ていきましょう。■ノーマライゼーションノーマライゼーションとは、日常生活に必要な範囲の行為は本人が自由にするという考え方です。障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作るという考えが広がりを見せています。■自己決定権の尊重・残存能力の活用自己決定権の尊重・残存能力の活用とは、判断能力が乏しいとはいえ本人の意思を尊重し、その能力を最大限生かして生活を送ることができるよう支援する考え方のことをいいます。どのようなときに成年後見制度を使えるの?出典 : どういった場合に成年後見制度を利用することができるのでしょうか。成年後見制度を利用することに決めた、きっかけの上位5位をご紹介します。【きっかけベスト5】第1位預貯金等の管理・解約第2位施設入所等のための介護保険契約第3位身上監護第4位不動産の処分第5位相続手続き圧倒的に多いのが、本人の預貯金等の管理のためです。この他にも、保険金の受取や訴訟手続等のために成年後見制度を利用するケースが増えています。(成年後見関係事件の概況 -平成26年1月~12月- | 最高裁判所事務総局家庭局)成年後見制度は、金銭的なやりとりや契約の取り決めをきっかけに利用を検討する方が多いようです。成年後見制度には家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して支援する法定後見制度と、あらかじめ本人が任意後見人を選び近い将来に備え支援者と支援内容を決めておく任意後見制度の2種類があります。違いとしては、後見人の選出方法、サポート内容、報酬、サポートの内容があります。両者には具体的にどのような違いがあるのか、どのような方を対象にしているのか、なにができるのかを詳しくご説明していきます。法定後見制度とは?出典 : 法定後見制度とは、現時点ですでに判断能力が低下している方を支援する制度です。認知症や精神疾患のある方といった現時点で判断能力が低下している方は生活を送る上で、色々な困難さがあります。お金を自分で管理することが難しい場合や悪徳商法に巻き込まれてしまうことが少なくありません。そういった支援を必要とする人を本人(それぞれを成年被後見人・被保佐人・被補助人という)、支援する人をそれぞれ成年後見人・保佐人・補助人と呼びます。本人の判断能力の度合いに応じて、後見、保佐、補助の3類型に分かれています。■後見: 自分ではほとんど物事を判断できない場合・家庭裁判所は本人のために成年後見人を選任します・成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができます・成年後見人または本人は、自ら行った法律行為に関しては日常行為に関するものを除いて取り消すことができます■保佐: 判断力が著しく不十分な場合(簡単なことは自分でできますが、法律行為は全く判断できません)・家庭裁判所は本人のために保佐人を選任します・保佐人に対して当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権を与えることができます・保佐人または本人は本人が自ら行った重要な法律行為に関しては取り消すことがができます■補助: 判断力が不十分な場合(大体のことは自分で判断できますが、難しい事項については手伝いが必要です)・家庭裁判所は本人のために補助人を選任します・補助人には当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権または同意権(取消権)を与えることができます支援を必要とする人(本人)を、それぞれ成年被後見人・被保佐人・被補助人といい、支援する人を成年後見人・保佐人・補助人と呼びます。成年後見人、保佐人、補助人とは家庭裁判所に選ばれ、本人に代わって法律行為など定められた行為を行う人をいいます。成年後見人は本人にどのような保護・支援が必要かといった事情に基づき、家庭裁判所が最も適任と判断する人物を選任します。ただし、希望通りになるとは限りません。そのような場合でも、申請を取り下げることはできないので、注意が必要です。成年後見人には、本人の子どもをはじめとする親族や、法律・社会福祉士の専門家、福祉関係の公益法人が選ばれる可能性があります。また、成年後見人は1人だけ選ばれるとは限りません。専門職の後見人を置きつつ、身の回りの法律行為については親族と役割分担する場合もあります。成年後見人、保佐人、補助人のすべてに共通する役割には、大きく分けて財産管理、身上監護、報告の3つがあります。■財産管理財産管理とは、証明書・契約書などの保管や法務手続きを行い、生活費を管理することです。一般的には多額の現金や預貯金は成年後見人が管理し、必要な分のみ本人が持つという形をとります。定期的に家庭裁判所にお金の動きを表す収支予定表を提出し、指示指導を受ける必要があります。これを後見監督といいます。このために領収書を常時管理し、金銭出納帳に記録することが求められます。■身上監護(しんじょうかんご)身上監護とは、本人の体調や環境を考慮の上で、適切な医療・看護を受けられるよう手配を行うことです。例えば住居・生活環境の確保や整備、介護や入院の手続きなどが挙げられます。ただし、成年後見人自身が本人を介護することは意味しません。専門職の方が後見人に選ばれた場合は親族が協力することがあります。■報告報告とは家庭裁判所から要請がある場合に、後見事務に関する報告書を家庭裁判所に提出することをいいます。これは義務付けられており、一般的に1年に1度行います。法定後見制度を利用するにはどのような手続きをしたらよいのか、ご説明します。1. 申し立ての予約をしましょう家庭裁判所に対して申し立ての予約をします。電話もしくは郵送で行うところがありますので、事前に確認しましょう。2. 申し立てをしましょうお住まいの地域の家庭裁判所にて申し立てを行います。申し立ては本人のほかに配偶者、四親等内の親族などができます。3. 面接を受けましょう家庭裁判所が関係者に事情を聴きます。面接に必要な書類は事前用意しておきましょう。また面接には本人、申し立て人、後見人候補などが出席する必要があります。医師による精神鑑定などの鑑定をする場合があります。その場合は別途、鑑定料がかかります。4. 家庭裁判所による審判が行われます主に後見人が必要かどうか、誰を後見人にするのかの2点を中心に協議されます。5. 審判の告知と通知裁判所から審判書が送られます。申立書に記載した成年後見人候補者がそのまま選任されることが多くあります。しかし家庭裁判所の判断により弁護士・司法書士などが選任される場合もあります。不服の場合は2週間以内に不服申し立てを行います。ご本人、配偶者、四親等内の親族のみが可能です。承認の場合は後見開始の審判が確定し、正式に後見人となります。手続きは自治体により異なる場合があります。詳しくは自治体のホームページをご確認ください。成年後見制度~成年後見登記制度~ | 法務省成年後見制度完全マニュアル | いなげ司法書士事務所法定後見制度の手続きには、いくつかの資料を準備する必要があります。東京家庭裁判所を一例にご紹介します。・申立書類・戸籍謄本・住民票(世帯全部、省略のないもの)・登記されていないことの証明書・診断書(成年後見用)、診断書付票・知的障害の場合、療育手帳(愛の手帳・みどりの手帳・愛護手帳)のコピー・総合判定の記載のあるページのコピーも必ず添付してください。上記の資料を提出する際には個人番号(マイナンバー)の記載がない書類を提出することが求められます。法定後見制度の申請には費用がかかります。なお,手続費用については,申立人が負担することが原則ですが,この手続を 行うことが本人の保護となりその利益になると考えられることから,東京家庭裁 判所では,申立手数料,後見登記手数料,送達・送付費用及び鑑定費用について, 本人負担とする裁判をする運用です。審判確定後,選任された後見人等に対し, 本人の財産の中から本人負担とされた手続費用の償還を求めることができます。【手続費用】・ 申立手数料(後見・保佐・補助共通) 800円 (代理権又は同意権の付与) 各800円・ 登記手数料 2,600円・ 送達・送付費用 3,200円又は4,100円・ 鑑定費用 実費(通常は裁判所に予納した金額(平成28年7月(電子版)成年後見申立ての手引 ~東京家庭裁判所に申立てをする方のために東京家庭裁判所東京家庭裁判所立川支部)鑑定を要する場合は別途、鑑定費用が5~10万円かかります。また申立てを弁護士や司法書士に依頼する場合、費用は自己負担となり別途お金がかかります。依頼する専門家により報酬は異なるので確認しましょう。成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル本人の財産や事情などに基づき、適当な額を家庭裁判所が決定し、本人の財産の中から報酬を受け取ることができます。申し立てがある場合は審判で決定されます。任意後見制度とは?出典 : 任意後見制度とは、本人十分な判断能力があるうちに、判断能力が不十分な状態になったときに備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人、公証人または任意後見人に代理権を譲渡し、契約を定める制度をいいます。これにより本人の意思に基づいて財産管理や支援を行うことができます。公証人の作成する公正証書によって契約を結びます。本人の判断能力が低下したら家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで初めて効力が発生します。任意後見監督人のもと、任意後見人は本人を代理して契約などを行います。任意後見人とは、本人に判断能力があるうちに、契約内容をあらかじめ取り決めてお願いする人物をいいます。近い将来に判断能力が低下した時のことが不安な方におすすめです。任意後見監督人とは、任意後見人を監督する人物をいいます。任意後見人は大きな権限を与えられるため、成年後見制を悪用してしまう可能性が少なからずあります。そのため、任意後見人をチェックするという意味で任意後見監督人がいます。任意後見人には特に法律的な資格は要求されず、誰でもなることができます。家族、友人、弁護士、司法書士等の専門家など信頼できる人を選びましょう。ただし、任意後見人には大きな権限が与えられるので慎重に選びましょう。それに対し、任意後見監督人は家庭裁判所が選任します。一般的に、第3者である弁護士や司法書士、社会福祉士、税理士や法律、福祉に関わる法人などが選ばれることが多くなっています。任意後見制度の利用は本人の判断能力の状況により、3つのかたちにわけることができます。判断能力の増減に応じて支援内容を変更することができます。■将来型現在は元気で判断能力があることから、将来判断能力が不十分になったときに効力を発生させます■即効型現在、体力・判断能力ともに衰えがあることから、任意後見契約の直後に契約の効力を発生させます■移行型現在は体力の衰えがあるが判断能力はあることから、できる範囲は自分で管理を行います。しかし自己の判断能力の低下後は、任意後見監督人の監督の下で任意後見人に事務処理を行ってもらいます。任意後見制度の手続きをご紹介します。お住まいの自治体により手続きが異なることがあります。詳しくは自治体のホームページをご確認ください。1. 公正証書での任意後見契約の締結をします本人の判断能力が十分にあるうちに任意後見人と具体的な支援内容を話し合い、公正証書という文書の形で契約を締結します。2. 任意後見契約内容の登記契約内容は法務局で登記されます。その内容は法務局にて後見登記記事証明書で確認できます。3. 家庭裁判所への任意後見監督の選任申し立て本人の判断能力が低下したら、本人は家庭裁判所に申し立てを行います。申し立ては本人(任意後見契約の本人)もしくは配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者ができます。これにより、家庭裁判所が任意後見監督人の選任を行います。そして任意後見制度の効力が発生し、あらかじめ決められた契約内容に基づき任意後見監督人の監督のもと支援が開始されます。任意後見制度の手続きには、いくつかの資料を準備する必要があります。東京家庭裁判所を一例にご紹介します。・申立書類・戸籍謄本・住民票(世帯全部,省略のないもの)・後見登記事項証明書(任意後見)・後見登記されていないことの証明書・任意後見契約公正証書の写し・診断書(成年後見用)■任意後見制度の申請任意後見制度の申請には主に次のような費用がかかります。・公証役場の手数料・法務局に収める印紙代・法務局への登記委託料・郵送費・正本、謄本の作成手数料など■効力が発生するとき及び効力が発生したあと効力が発生したとき及び効力が発生したあとには主に次のような費用がかかります。・任意後見監督人の選任申立て費用・任意後見契約で定めた、任意後見人に対する報酬・任意後見監督人の報酬任意後見制度は必ず公証人役場で公正証書を作成する必要があります。公正証書を作成する費用は以下のとおりです。(1)公正証書作成の基本手数料⇒1万1,000円(2)登記嘱託手数料⇒1,400円(3)登記所に納付する印紙代⇒2,600円この他にも当事者に交付する正本等の証書代や登記嘱託書郵送代がかかりますが、詳しくは公証人役場に聞いてみるのがよいでしょう。(成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル)任意後見人に対する報酬は本人との話し合いで自由に報酬を決められます。請求があった場合、家庭裁判所の判断に基づき本人の財産から支払われます。任意後見監督人に対する報酬は家庭裁判所が決定します。弁護士もしくは司法書士などに依頼することができます出典 : 成年後見制度は大変複雑で、必要な書類を集めるだけでも一苦労です。そこで弁護士もしくは司法書士に成年後見制度の手続きを依頼することにより、提出書類の作成にかかる時間と手間を大幅に節約することができます。また専門家に相談することができ、本人の状況にあった支援内容を決めることができます。弁護士は本人に代わって申請を進めることができます。他方、司法書士は制度や申立手続きの相談などをおこなうことができます。目的に応じてどちらにお願いするか判断するとよいでしょう。依頼先により報酬は異なりますので、事前によく確認することが求められます。成年後見制度のメリット・デメリット出典 : これまで成年後見制度を法定後見制度と任意後見制度の2つにわけ、それぞれの制度の内容や手続きの流れをご紹介しました。では、成年後見制度を使うと、本人には具体的にどんなメリットやデメリットがあるのかご紹介します。■悪徳商法の被害を防止判断力不足により結んでしまった不利・不当な契約を、一方的に取り消すことができます。これにより悪質商法などの被害を防ぐことができます。■財産管理家庭裁判所が財産管理に関与する、親族や第三者などが本人の意思に反して本人の財産を使っている場合、それらを防ぐことができます。■財産管理の自由度の限定後見人が本人の代わりに財産管理をするため、本人が管理する自由度が減ります。■資格・役職の制限成年後見制度を利用すると判断能力がないと判断されることから、本人は会社の社長・役員や弁護士、医者など一部の資格を必要とする仕事に就くことができません(法定後見人の補助を除く)。また選挙権・被選挙権、会社の役員などに就くことができず、また印鑑登録ができなくなります。■財産の移転や相続に関わる行為の制限成年後見制度を利用すると、生前贈与や生命保険契約、養子縁組といった行為に制限がかかります。・生前贈与成年後見制度を利用すると、財産の移転は本人の財産を減らすことを意味するため、認められていません。財産の移動は家庭裁判所に定期的に報告し、そこで家庭裁判所の監督を受けます。・生命保険契約遺産相続が発生すると、場合によっては多額の相続税を納める必要があります。しかし、いきなり多額のお金を準備するのはたやすいことではありません。そうしたとき、亡くなった直後すぐに死亡保険金を現金で受け取ることのできる権利が生じる生命保険契約を活用することでスムーズに対応することができます。ただ成年後見制度を利用すると、生前贈与と同様に財産の移転は本人の財産を減らすことに当たり、生命保険契約は認められない可能性が高いです。・養子縁組養子縁組により相続税の基礎控除額の基礎控除枠を増やすことができます。しかし成年後見制度を利用すると、本人の意思を尊重することや家庭裁判所の監督がある点から、養子縁組での相続税対策はすることができません。■投資・貸し付けの禁止投資や親族に貸し付けるのは禁止されます。援助や冠婚葬祭費の利用を行う場合は家庭裁判所に相談しましょう。また住宅用不動産を処分する場合も同様です。後見人になったら気をつけたいポイント出典 : 成年後見人になるとき、いくつか気をつけたいことがあります。「財産の不正利用」と「成年後見制度が続く期間」、「成年後見人の解除方法」の3点をご説明します。■財産の不正利用万が一不正に財産を利用した場合は、民事上の責任として解任されます。さらに刑事上の責任として損害賠償請求・業務上の横領の罪に問われます。■成年後見制度が続く期間成年後見制度は原則的に判断能力が回復するもしくは、亡くなるまで続きます。なので後見人の業務が場合により長期間に及ぶことがあるので、後見人の仕事を長い間続けることができるか確認することが必要です。■成年後見人の解除方法不正な行為がある場合や後見人としての品位に欠けると判断される場合などは、本人の親族、検察官の申立てまたは職権により後見人を解除することができます。しかし後見人が気に入らないからといって簡単に解除できるわけではありません。解任後は家庭裁判所が新たな後見人を選任することになります。■後見人が遺産の相続をする場合後見人自身も遺産相続人である場合は、家庭裁判所で特別代理人を選定する必要があります。成年後見制度がよく分かる、おすすめ書籍出典 : これまで成年後見制度の目的や支援内容などを紹介してきましたが、さらに詳しい情報が必要な方は次のような書籍をおすすめします。出典 : 児島 明日美・ 村山 澄江/編著『今日から成年後見人になりました 』自由国民社 (2013)出典 : のん/編著『マンガでわかる 私は父の成年後見人です』(自由国民社, 2014年)まとめ出典 : 障害者や高齢者といった判断能力の乏しい人の法律行為や契約をサポートするのが成年後見制度です。悪質商法から本人を守ったり、不利益になる契約を締結してしまうリスクがなくなります。その一方サポートが長期間に及ぶことや定期的に家庭裁判所に報告することを考えると、後見人への負担は少なくありません。本人と相談し、必要性の有無を話し合いのうえ申請しましょう。”何かあったとき”のために、成年後見制度の利用を考えてはいかがでしょうか。児島 明日美、村山 澄江/著 『今日から成年後見人になりました』2013年 自由国社/刊成年後見制度~成年後見登記制度~ | 法務省成年後見制度詳しく知っていただくために | 家庭裁判所成年後見申立ての手引 ~東京家庭裁判所に申立てをする方のために~ | 東京家庭裁判 所東京家庭裁判所立川支部成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル成年後見制度の問題点&できないこと&解任方法 2016年度版 | 遺産相続 弁護士相談Cafeここが知りたい日常生活自立支援事業なるほど質問箱 | 社会福祉法人全国社会福祉協議会福祉サービス利用援助事業について | 厚生労働省社会・援護局 地域福祉課社会福祉リカレント講座「自立支援における権利擁護と成年後見制度」講演録 | 明治大学 法学部教授 星野 茂いざという時のために知って安心成年後見制度成年後見登記 | 法務省民事局
2016年09月18日障害年金とは?出典 : 「障害年金」とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、働く上で、あるいは日常生活を送る上で困難がある人に支払われる公的年金の総称です。業務時や通勤時による障害を補償する労災保険の障害年金もありますが、今回は、国民年金法、厚生年金保険法等に基づき日本年金機構が運営業務を行っている障害年金について紹介します。障害年金の種類出典 : 日本年金機構の障害年金には2つの種類があります。1.障害基礎年金障害基礎年金とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(初診日)に、すでに国民年金に加入していた人が受給することができる障害年金です。また、国民年金に加入前、20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人にも給付されます。2.障害厚生年金障害厚生年金とは、初診日にすでに厚生年金に加入していた人に支給され、障害基礎年金に上乗せするものとして給付される報酬比例の年金です。障害年金を受けるための条件出典 : 障害年金を受給するためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいいます。病気やけがにおいての初診日であり、その病院での初診日ということではないので注意してください。障害年金の受給希望となったきっかけである病気やけがの初診日が、いつ、どこの病院だったかを特定する必要があります。その際、診断書などの裏付けができるものも必要です。ただし、知的障害に関しては先天的な障害とされているので、初診日の証明は必要はありません。アスペルガー症候群や自閉症にもこの例外は広がりつつありますが、まだ発達障害全般には保障されていません。初診日に国民年金や厚生年金保険などの年金制度に加入している必要があります。しかし、初診日に住所が日本国内にあったならば、初診日に20歳未満、あるいは60歳以上65歳未満でも国民年金に加入していたのと同じ扱いになります。20歳未満は国民年金に加入できないことから、20歳に達した時に障害等級に該当していれば加入要件は必要ありません。つまり、20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人にも年金制度の対象となります。以下の2つのどちらかに当てはまっている必要があります。1.初診日の前々月までの年金加入月数の3分の2以上が保険料納付済みか免除されている月であるとき2.初診日の前々月までの年金加入月数の12カ月すべて保険料納付済みか免除を受けた月であるとき障害等級に該当している必要があります。障害等級とは、障害の状態を分けたもので、重いものから1級、2級、3級とされています。1~2級は国民年金法施行令で、3級および3級より軽度の障害状態は厚生年金保険法施行令で定められています。この場合の障害等級は労災保険の障害年金のものとは違うものです。厚生年金に加入している場合は1級~3級のいずれかに該当しているならば障害厚生年金を受給することができます。また、障害等級が3級に達していなくても条件に該当しているならば、障害手当金という一時金が支払われます。国民年金に加入している場合は、1級と2級に該当しているならば障害基礎年金を受給することができます。しかし、障害基礎年金には障害手当金はありません。障害年金を受けるための障害認定基準出典 : 障害年金に関わる(年金額の)等級も、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳などの障害者手帳も「1級、2級」と、等級の表し方は同じのため混同しやすいのですが、障害年金の障害認定基準は障害者手帳の障害認定基準と異なります。そのため障害者手帳で1級でも、障害年金では異なる場合があります。精神障害における障害認定基準は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されていました。しかし、精神障害と知的障害の認定において、地域でその基準に違いがあるという状況が明らかになってきました。こうした、認定における地域差を改善するため、厚生労働省は新しいガイドライン(『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』)を作成し、2016年9月1日より実施しています。精神障害と知的障害においての等級は、「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の評価の平均をもとに認定されるようになりました。等級目安などの詳細は下記のリンク先にあります。ただし、てんかんにおいては、発作の重症度や頻度などを踏まえて等級判定を行うことを障害認定基準で規定しています。そのため、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて、等級認定を行います。『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』|日本年金機構身体障害の障害認定基準についても下記のリンク先でも紹介しています。平成28年6月1日に、障害基礎年金、障害厚生年金の障害認定基準の一部が改正されているので確認してみてください。国民年金・厚生年金保険|日本年金機構障害認定基準|横浜障害年金申請サポート不安なことやわからないことがあったら、お近くの年金事務所に問い合わせてみましょう。全国の相談・手続き窓口|日本年金機構障害年金はいくら支給されるの?出典 : 日本年金機構によると、障害年金は以下のように計算され毎月支給されますが、支給額はその年度の経済状況で変動があります。また、子どもの数による加算額は児童手当との兼ね合いで支給額が調整されます。下記は2016年度の金額です。現段階でいくら支給されるのか、目安として参考にしてください。1級の場合の年額:780,100円(老齢年金の満額)×1.25+子の加算2級の場合の年額:780,100円(老齢年金の満額)+子の加算※子の加算…第1子・2子は一人につき224,500円。第3子以降は一人につき74,800円。この時の子どもは下記の要件を満たしている必要があります。・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子・20歳未満で障害者1級または2級の障害がある子Upload By 発達障害のキホン障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構1級の場合:(自分の老齢年金) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕2級の場合:(自分の老齢年金) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕3級の場合:自分の老齢年金額または最低保障額 585,100円※1級・2級の場合障害基礎年金も加わるUpload By 発達障害のキホン障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構障害基礎年金と障害厚生年金を比較した図が以下のものになります。Upload By 発達障害のキホン障害年金の支給が停止する場合出典 : 障害年金は支給が停止する場合があります。たとえば、1年ごとや3年ごとなどに提出する診断書をもとに障害の状態が要件に当てはまらないとされたときなどがあります。一方、複数回診断を受けても障害の状態変化があまりなく、固定状態が証明されている身体障害においては、診断書の提出の必要がない場合もあります。障害厚生年金においては、業務上の病気やけがでも障害年金を請求することはできますが、労働基準法の規定による障害給付を受け取る権利があるときは、6年間障害厚生年金を受け取ることができません。また、労働者災害補償保険法の規定による障害給付を受け取るときは、労働者災害補償保険法の給付の一部が減額されます。1世帯(扶養親族なし)の所得額が360万4千円を超える場合には年金支給額の2分の1が支給停止となり、462万1千円を超えると年金支給額の全額が支給停止になることがあります。障害年金の申し込み方法出典 : 障害年金請求方法として主に以下の2つがあります。障害認定日とは障害の程度を認定する日で、初診日から1年6カ月経過した日、あるいはその病気やけがが治った場合は病状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を指します。何らかの理由で請求が遅れてしまっても、障害認定日の時点から3カ月以内の診断書の添付ができます。その際に症状が障害等級に該当するものだとしたら、さかのぼって過去の分の年金を請求することもできます。基本的に、障害年金受給の権利は条件を満たしてればいつでも得ることができますが、実際にさかのぼって請求できるのは過去5年分のみです。障害認定日時点の診断書の取得や当時の症状を証明できるものが必要なため、複雑に感じる人もいます。しかし、申請が受理されると、障害認定日の翌月分から障害年金を受給することができることは大きな利点であると言えます。Upload By 発達障害のキホン事後重症請求は、障害認定日の障害の程度が障害等級に該当していなくても、その後症状が悪化し、その症状が1級~3級に該当した場合に適用します。しかし、65歳までに障害認定基準に該当している必要があり、請求書は65歳前に提出しなければなりません。請求が受理されると、認定日の翌月分から受給できますが、障害認定日請求とは違い、さかのぼって過去の分を請求することはできないものになっています。Upload By 発達障害のキホン一人の人に複数の障害があった場合ですが、日本年金機構によると、特別、複数の障害があった場合の請求方法はないそうです。ただし、請求する際にはすべての障害に関する診断書が必要なため、手続き過程において複数の障害があることは確認されます。その人の障害の状態や重なりによって、その後の対応は変わるため、まずは窓口で相談するか、診断書を提出して審査をしてもらいましょう。障害年金の申請に必要な書類出典 : まずは、初診日や障害の状態を証明できる診断書や障害者手帳を持って年金事務所や市役所の国民年金窓口へ行くことをおすすめします。そこで必要な書類などの相談ができます。下記は参考として見てみてください。・年金請求書(居住地の市区町村役場、または近くの年金事務所または街角の年金総合センター窓口に備え付けられています)・年金手帳・戸籍抄本・医師の診断書・受診状況等診断書・病歴・就労状況等申立書・受取先の金融機関の通帳等・印鑑※18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合・戸籍謄本・世帯全員の住民票・子の収入が確認できる書類・医師、または歯科医師の診断書障害基礎年金を受けられるとき|日本年金機構・年金請求書・年金手帳・戸籍抄本・医師の診断書・受診状況等診断書・病歴、就労状況等申立書・受取先金融機関の通帳等・印鑑※18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合・戸籍謄本・世帯全員の住民票・配偶者の収入が確認できる書類(これは障害厚生年金のみです)・子の収入が確認できる書類・医師、または歯科医師の診断書障害厚生年金を受けられるとき|日本年金機構困ったら社労士に相談を出典 : 障害年金を利用したくても、申請などの手続きが大変なことから申請を諦めてしまう人もいます。その複雑さを軽減してくれる人が、社会保険労務士(通称、社労士)です。社労士とは、労働・社会保険に関する法律や人事・労務管理の専門家として、私たちの採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題、さらに年金の相談に応じる人のことです。障害年金についての無料相談や申請書作成の代行も行っています。まずは各地域の社労士会に無料相談をしてみましょう。社労士会リスト|全国社会保険労務士会連合会まとめ出典 : 以上、障害年金について制度の概要を解説しました。障害年金を受け取るためには、年金を納めていることが必要である点に注意してください。また、納めていても申請が複雑で面倒ということから申請を諦めてしまう方もいます。もし手続きに不安を抱えていたら社労士に早めに相談し、申請のサポートを受けることをおすすめします。
2016年09月08日特別支援学校とは出典 : 特別支援学校とは、心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。基本的には幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準じた教育を行っていますが、それに加えて障害のある児童・生徒の自立を促すために必要な教育を受けることができるのが大きな特徴です。学校教育法第72条では、特別支援学校の目的は以下のように定められています。視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること特別支援学校は、2007年までは「ろう学校」「盲学校」「養護学校」と区分されていました。ですが、2007年の法改正により、これらすべてが「特別支援学校」へと一本化されました。こうした経緯もあり、学校名の末尾が「ろう学校」「盲学校」「養護学校」となっている学校も多くありますが、これらは現在すべて特別支援学校に含まれます。この法改正は、特別支援学校が複数の障害がある子どもの教育ニーズに応えること、近隣の小・中学校に在籍する子どもの指導・支援にも積極的にかかわるセンター的機能を担うことを目的としてなされました。また、2015年の文部科学省の調査によると、特別支援学校の数は全国で1096校、在籍している幼児・児童・生徒の数は135,617人(幼児・児童・生徒全体に対する割合は0.9%)で、その数は増加傾向にあります。文部科学省特別支援教育資料(平成26年度)【第1部集計編】特別支援学校の対象出典 : 特別支援学校の支援対象となる障害の程度は以下の通りです。これは就学基準と呼ばれ、学校教育法によって定められているものです。以前までは子どもの障害の程度がこの就学基準に該当していれば、原則は特別支援学校に入学することとされていました。ですが現在は、就学基準に該当していても就学先が特別支援学校に限られることはなく、その他の進学先も検討することができます(後述する、「特別支援学校への入り方・相談方法」も参照してください。障害の程度が就学基準に達しない子どもについては、特別支援学級・通級による指導を受けるか、通常の学級に在籍して支援を受けることになります。両眼の視力がおおむね0.3未満の方、または視力以外の視機能障害が高度の方のうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度の方両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上の方のうち、補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが不可能、または著しく困難な程度の方①知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度の方②知的発達の遅滞の程度が、①に掲げる程度に達しない方のうち、社会生活への適応が著しく困難な方①肢体不自由の状態が、補装具の使用によっても歩行、筆記などの日常生活における基本的な動作が不可能または困難な程度の方②肢体不自由の状態が、①に掲げる程度に達しない方のうち、常時の医的観察指導を必要とする程度の方①慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患および神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が、継続して医療または生活規制を必要とする程度の方②身体虚弱の状態が、継続して生活規制を必要とする程度の方文部科学省障害のある児童生徒の就学先決定について特別支援学校の教育環境出典 : 特別支援学校では、障害のある子どもたちが学習しやすいような環境やシステムが整えられています。また、通常学級の子どもたちと触れ合える機会が設けられるような配慮もされています。1クラス当たりの人数は平均で3人であり、少人数教育が行われています。特別支援学校の教員は、通常の教員免許に加えて特別支援学校の教員免許を持っています。様々な障害について基礎的な理解があり、また特定の障害について専門性を持った教員が子どもの指導にあたります。交流及び共同学習とは、障害のある人と障害のない人が互いに理解を深め、尊重し合える社会をつくるために、障害のある子どもたちと障害のない子どもたち、地域社会の人たちとがふれ合い、共に活動する機会を設ける活動をいいます。小・中学校、高等学校や特別支援学校の学習指導要領などにはこの交流及び共同学習を積極的に推進するよう示されています。例えば、小学校と特別支援学校の間での交流会が行われたり、特別支援学校の生徒が小学校の音楽・図画工作の授業や給食、昼休みや遠足などの学校行事に参加したりするなどの取り組みが行われています。また、地域社会の人たちとの間では、文化祭などの学校行事に地域の人たちを招いたり、地域での行事やボランティア活動に特別支援学校の子どもたちが参加したりするなど、地域や学校ごとに様々な工夫がされています。文部科学省交流及び共同学習ガイド障害の状態が重度であったり、もしくは重複していて特別支援学校に通学して教育を受けることが困難な子どもに対しては、特別支援学校の教員が家庭、児童福祉施設、医療機関等を訪問して教育を行っています。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(4)訪問教育における指導特別支援学校には、日常的に医療的ケアを必要としている子どもが多く在籍しています。医療的ケアは看護師などが行うことが原則ではありますが、保護者の同意や医療関係者による適切な管理など、一定の条件が満たされていれば、特別支援学校において教員がたんの吸引、経管栄養(胃ろう・腸ろう)、自己導尿の補助を実施することができるようになりました。これによって、医療的ケアの必要性から特別支援学校に通うことができなかった子どもも、特別支援学校への通学が可能になりました。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(3)医療的なケアを必要とする子どもへの対応具体的な教育内容出典 : 以上のような特別支援学校の特徴を踏まえて、具体的にどのような内容の教育が受けられるのかを詳しく見ていきましょう。特別支援学校では独自の学習指導要領が定められており、それに従った指導が行われます。特別支援学校の大きな魅力のひとつに、子どもの障害や発達の度合いに合わせたきめ細やかな指導がうけられることがあります。具体的な例として、「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」の立案・実行、自立活動、教科書についての配慮をご紹介します。■「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」の立案・実行「個別の指導計画」とは、障害のある子どもに指導を行うためのきめ細かい計画です。子どもの一人ひとりの教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法を盛り込んであります。単元や学期、学年等ごとに作成され、それに基づいた指導が行われます。特に、後述する「自立活動」の指導は、この計画に基づいた内容になっています。「個別の教育支援計画」とは、他機関との連携を図るための計画をいいます。乳幼児期から学校卒業後までの一貫した長期的な計画である点が「個別の指導計画」との違いです。学校が中心となって作成しますが、教育・福祉・医療・労働などの関係機関と連携し、保護者の意見を聴くことなども求められています。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(4)個別の指導計画と個別の教育支援計画■自立活動自立活動とは、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するための指導を行うための時間です。「個別の指導計画」に基づいて子ども一人ひとりにあった指導目標が設定され、その目標を達成するような指導が行われます。例えば、身体の動きに困難のある子どもに対してはそれを改善するための指導が、コミュニケーションに不安のある子どもに対してはそれを支援するための指導が自立活動の時間に行われます。具体的な内容は子ども一人ひとりに合わせたものになっています。文部科学省特別支援学校学習指導要領解説自立活動編■教科書についての配慮特別支援学校では、小学校、中学校、高等学校と同じ教科書のほか、子どもの障害の状態に合わせて作成された教科書などが使われています。文部科学省が作成している教科書には、視覚障害者用の点字教科書、聴覚障害者用の言語指導や音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数、音楽の教科書があります。また、これらの教科書以外でも、必要であれば他の教科書で学習することができます。例えば、知的障害のある子どもが、下学年の教科書を使って学習することも可能です。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(5)教科書子どもの障害や年齢によって、特別支援学校で行われる教育の内容は異なります。例えば、高等部では就職に向けての支援として、様々な職業訓練が行われているのが特徴的です。■視覚障害小・中学部では、小・中学校と同じ教科などを視覚障害に配慮しながら指導がされます。目が見えない子どもたちへは、よく触って物の形や大きさなどを理解したり、音やにおいなども手がかりとして周りの様子を予測したり確かめたりする学習や、点字の読み書きなどの学習をします。また、白杖を使って歩く力やコンピュータなどで様々な情報を得る力を身に付けるための学習も行っています。弱視の子どもたちには、ものの見える状態や程度に合わせて対象を拡大したり、白黒反転したりした教材を用意して学習します。高等部では、普通科での教育に加えて、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、理学療法士などの国家資格の取得を目指した職業教育を行っています。■聴覚障害小・中学部では、小・中学校に準じた教科学習を行うとともに、書き言葉の習得や抽象的な言葉の理解を目指します。さらに、発達段階に応じて指文字や手話を活用するなど、自立活動の指導にも力が注がれています。高等部では、普通科のほかに産業工芸や機械、印刷、被服、情報デザイン等の多様な職業学科が設置されています。最近では、聴覚障害者・視覚障害者の方を対象とした国立大学である筑波技術大学などへの進学を目指す生徒や、理容師、歯科技工士、調理師などの資格を取得して職業の自立を達成する生徒もいます。■知的障害一人ひとりの言語面、運動面、知識面などの発達の状態や社会性などを十分把握した上で、生活に役立つ内容を実際の体験を重視しながら、少人数の集団での学習を行います。小学部では、基本的な生活習慣や日常生活に必要な言葉の指導などが行われます。中学部ではそれらを発展させ、集団生活や円滑な対人関係、職業生活についての基礎的な事柄の指導などが行われています。高等部においては、家庭生活、職業生活、社会生活に必要な知識、技能、態度などについての学習が中心になります。それに加えて、木工、農園芸、食品加工、ビルクリーニングなどの作業学習を実施し、特に職業教育の充実が図られています。■肢体不自由子ども一人ひとりの障害の状態や、発達段階を十分に把握した上で、小学校、中学校、高等学校に準じた学習を行っています。それに加えて自立活動に力を入れており、身体の動きの改善を図ることやコミュニケーションの力を育てる指導などを行っています。また、病院で機能訓練を行う子どもやたんの吸引などの医療的ケアを必要とする子どもが多いことから、医療との連携を大切にした教育が進めてられています。高等部では、進路指導が重視しされています。企業や社会福祉施設と連携し、卒業後の生活を具体的に体験できるような実習が積極的に取り入れられています。最近は福祉施設への入所が多くなっていますが、企業に就職したり大学に進学したりする生徒もいます。■病弱小学校、中学校、高等学校とほぼ同じ教科学習が行われます。また、必要に応じて入院前の学校の教科書を使用して指導しています。また、自立活動の時間では、身体面の健康維持だけでなく、病気への不安感や自信の喪失などに対するメンタル面での健康維持のための学習を行っています。治療等で学習に空白がある場合は、グループ学習や個別指導による授業が行われます。病気との関係で長時間の学習が困難な子どもについては、学習時間を短くするなどして柔軟に学習できるような配慮がされています。文部科学省特別支援教育について(4)それぞれの障害に配慮した教育発達障害のある子は特別支援学校に入学できるの?出典 : 発達障害のある子どもに関してですが、知的障害の診断がなくても、就学相談の結果によっては特別支援学校への入学は可能です。秋田大学によるアンケート調査によると、回答のあった313校の特別支援学校のうち45.0%である141校に発達障害のある子どもが在籍していました。同研究によると、特別支援学校における発達障害のある子どもへの支援として、個別の対応による丁寧な対応や、ソーシャル・スキル・トレーニングを活用した支援などが行われています。一方で、特別支援学校での発達障害のある子どもに対する教育については、子どもの障害の特性に合わせた教育内容の編成の必要性や、教員の人員不足などが課題となっています。熊地需・佐藤圭吾・斎藤孝・武田篤「特別支援学校に在籍する知的発達に遅れのない発達障害児の現状と課題―全国知的障害特別支援学校のアンケート調査から―」特別支援学校と、特別支援学級・通級との違いは?出典 : 義務教育が始まる小学校入学の前に、お子さんをどの教育環境で育てるか迷う保護者の方は多いと思います。障害のある子どもの教育環境として、通常学級・通級・特別支援学級・特別支援学校の4つがあります。それぞれの対象となる障害の程度に明確な基準はありませんが、一般的に通級・特別支援学級・特別支援学校の順に障害への支援量は大きくなります。そのため、障害が軽度の場合は通級、より専門性の高い支援が必要な場合、特別支援学級や特別支援学校を検討する場合が多いと言えます。Upload By 発達障害のキホン通級とは、通常学級の学校に籍を置いて、通級指導の時間のみ通級指導教室に通って支援を受けるという制度です。子どもが在籍する学校に通級指導教室が無い場合は、通級指導教室がある他の学校に通って通級始動を受ける場合もあります。また、担任は通常学級の先生が受け持ちます。Upload By 発達障害のキホン特別支援学級に通う場合は、特別支援学級が設置されている学校に籍を置きます。基本的に特別支援学級で授業を受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。担任は特別支援学級の先生が受け持ちます。Upload By 発達障害のキホン特別支援学校に通う場合は、通学する特別支援学校に籍をおきます。また、通級・特別支援学級は通常の教員免許のみでも受け持つことができますが、特別支援学校の教員は通常の教員免許に加え、特別支援学校の教員免許を取得しています。通級・特別支援学級・特別支援学校のメリット・デメリット教育システムの違いから、通級・特別支援学級・特別支援学校それぞれにメリット・デメリットがあります。お子さんの学校選びの参考にしてみてください。■通級・通常学級での子どもとコミュニケーションをとる機会が比較的多い・学習面で通常学級の授業が受けられる・必要なフォローを受けられる・通常学級から離れる時間が気分転換になることもある■特別支援学級・給食の時間や昼休みなどは通常学級での子どもとのコミュニケーションなどの経験ができる・発達の程度に準じたカリキュラムで指導を受けられる・学校と相談しながら通常学級との行き来ができるようにもなる■特別支援学校・個々人の障害の程度に合わせたカリキュラムで、専門性を持った先生からきめ細かい指導が受けられる・高等部では職業教育が受けられる■通級・特別支援学級・在籍基準があいまい・すべての学校に通級指導教室や特別支援学級があるわけではない・高校では通級制度はまだ整えられておらず、特別支援学級も設置されていないのが現状(ただし、2018年度から高校でも通級指導を始めるよう文部科学省が準備を進めている)・学級数や受け入れ可能人数などに地域差が大きい・通常学級との行き来がお子さんのストレスになることもある■特別支援学校・通常学級の子ども、同世代の子どもと触れあう機会が少ない・転学・転校は可能だが手続きが必要・障害の程度によっては入学できない可能性がある・特別支援学校高等部を卒業しても、通常の高卒資格は得られない(ただし大学入学資格を得ることはできる)・地域差、学校差がある特別支援学校への入り方・相談方法出典 : 小学校へ入学するまでの流れは以下のようになっています(あくまで一例ですので、詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください)。■年中期~6月ごろ:情報収集お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、ホームページを参照して、地域にある特別支援学校や、小学校の特別支援学級の有無などについて情報を集めましょう。また4月から6月ごろにかけて、教育委員会が幼稚園や保育園、発達支援センターや療育センターに「個人調査票」「就学に関する調査票」の作成を依頼します。通常の学級・学校に就学することに不安があると思われるお子さんについて、園やセンターは保護者の了承を得て調査票を作成します。そして該当のお子さんをもつ保護者向けに、教育委員会が就学についての説明会を行います。説明会では小学校全体および各種学級、特別支援学校ではどのような支援が行われているのか、就学指導・就学相談の流れ、手続きの方法などがアナウンスされます。ただし、私立や認可を受けていない保育園や幼稚園は教育委員会の管轄外なのでこういった情報が回ってこない可能性があります。その場合はご自身で市区町村の教育委員会に問い合わせをして、就学相談を受けることをおすすめします。■7~9月ごろ:就学相談園やセンターの調査票がなくても、市区町村の教育委員会へ連絡すれば就学相談を受けることができます。就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談(複数回のこともあります)を通して子どもにとって最適な就学先を決めます。子どもの状態を把握するための検査が行われたり、相談員がお子さんの在籍園・在籍校に赴いてお子さんの様子を確認することがあります。障害の状態、障害に基づく教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などを考慮して、就学指導委員会がお子さんにとって良いと思われる就学先を決定します。この決定に保護者の方が同意をすれば就学先が決定します。もし同意できない場合はその旨を教育委員会に申し立て、再度就学相談を受けることもできます。最終的には保護者の方の意向が尊重されます。就学相談では、子どもの状態を正確にしっかりと伝えることが大切です。医療機関で受けた診断書や療育手帳などがあれば持参することをおすすめします。臨床心理士による子育てのヒント|発達の気になるお子さんに発達障害就学指導・就学相談について■10~11月:就学時健康診断と小学校の選択就学時健康診断とは、小学校に入学する前に行われる健康診断のことであり、身体検査に加えて発達検査、知能検査等があります。お子さんの障害や発達の遅れについて、この健康診断によって初めて気づく場合があります。特別支援学校の対象で示した就学基準にお子さんが当てはまると思われる場合、就学相談・就学指導を受けることを教育委員会からすすめられます。就学基準に当てはまると必ず特別支援学校に入学しなければいけないわけではありません。就学基準に該当していても、学校教育法に定められている認定就学者(就学基準に該当する児童生徒で市町村の教育委員会が小・中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認める者)として小・中学校に入学、通級や特別支援学級に在籍するという選択肢もあります。出典 : 小学校は通常の学校に通っていたお子さんのなかには、実際にはもっと専門性の高い支援が必要であった場合などもあり、中学校や高校からは特別支援学校に通うということもあります。小学校から特別支援学校や特別支援学級で教育を受けていたお子さんが、特別支援学校の中学部に進学する場合、同じ学区域内であれば、小学校と中学校の先生、特別支援教育コーディネーターを通して教育内容が引き継がれます(特別支援教育コーディネーターとは、保護者からの相談の対応や福祉機関などの関係機関との連携・調査を行う教職員のことです)。お子さんが不安なく充実した学校生活を送れるように、お子さん本人の意思も尊重しながらよく話し合うことが大切です。進路に迷った時は、スクールカウンセラーや学校の先生、特別支援教育コーディネーターやかかりつけのお医者さんに相談してみましょう。まとめ出典 : お子さんの教育環境に悩まれている保護者の方はたくさんいらっしゃいます。大切なのは、お子さんが不安なく、のびのびと学校生活を送ることです。お子さんの性格や障害・発達の度合いにもよりますが、特別支援学校の良い点・悪い点を把握したうえでひとつの選択肢として考えることは、十分価値のあることでしょう。学校によっては見学会や説明会を行っているところもあります。また、文化祭などのイベントに行くことでも雰囲気や様子をつかむことができます。うちは中学から支援学校でお世話になりました。学校見学会には何度も行きましたし、文化祭にも行きました。夫と見学会に参加した時、うちの息子と似たようなタイプのお子さんがいて、その子がニコニコ顔で作業をしているのを見ました。そのまま息子が重なり、息子が笑顔でいる姿がすぐに想像できました。カンでしかないですが、そのカンを信じて、我が子を入学を決めました。今でもそのことは良かった、と思います。中高6年間で伸ばしていただきました。特別支援学校か、地域の学校か、ではなく「我が子が笑顔でいられる場所はどこか」で考えてみてください。ひとりで悩まずに、お子さんと学校へ見学に行ったり、周りの学校の先生やお医者さんなどに相談しながら、お子さんにとって最善の教育環境を考えてみると良いのではないでしょうか。文部科学省特別支援教育について文部科学省特別支援教育の推進のための学校教育法等の一部改正について(通知)
2016年07月20日仕事もきっちりしたいけれど、子どもとの時間も大切にしたい。仕事と家庭の両立は、働くママにとって永遠のテーマですよね。ちょうどこの4月から「女性活躍推進法」も施行され、女性活躍推進の意識が高まっているところ。近年は、多様な人材を登用し活用する「ダイバーシティ経営」を推し進める企業も増えてきました。また、女性管理職登用を積極的に推進したり、社内の支援制度を充実させる企業も増えています。実際に女性は働きやすくなっているのでしょうか?6割以上が「自分の会社にダイバーシティ推進の制度がある」と回答先ごろ、P&Gの「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)啓発プロジェクト」が、一般のビジネスパーソン2000名を対象に「ダイバーシティに関する潜在意識調査」を行いました。その中で「あなたの勤務先では、“ダイバーシティ推進のための制度・施策”を実施していますか?」という問いに、「実施している」と答えた人は65.8%に上りました。具体的な施策として上位を占めたのは、「積極的な女性登用」(35.0%)、「障がい者雇用」(33.0%)、「時短勤務」(30.8%)、「育児休暇」(29.4%)など。“制度はあるが風土がない”ダイバーシティ推進の実態ところが「ダイバーシティ推進のための制度・施策がある」と回答した人のうち、約半数(47.0%)の人が、「自分の勤務先は、ダイバーシティの理解や取り組みが“進んでいない”」と答えています。その理由のトップ3は以下のとおり。1位:企業文化としてダイバーシティ活用の考えが根付いていない(42.6%)2位:社内の支援制度が充実していない(34.3%)3位:社内の支援制度を利用しにくい雰囲気がある(27.8%)1位や3位の回答を見ると、制度はあっても風土として浸透していないために制度を利用しづらい会社が多いことがわかります。このあたりにダイバーシティ推進の課題があるといえそうですね。 せっかくの制度が不満や不公平感のモトに支援制度の導入が、逆に職場に不満や不公平感を生んでしまうこともあります。同調査でも、育児休業・時短勤務・在宅勤務といった制度に対して、いろんな声がありました。■働くママの声・所属部署によって、制度の活用しやすさに大きな差がある(30代女性 会社員)・時短勤務や在宅勤務で楽をしていると思われ、特に同性の同僚からの視線が厳しい(30代女性 会社員)■制度利用者の周囲の人の声・育児休業 を取得した人の周囲で業務負担が増えている(40代男性 会社員)・「社内の育児制度を活用するなら、退職して育児に専念すべき」という雰囲気がある(50代女性 会社員)■男性社員の声・男性社員が制度を利用することに対して、職場で消極的な雰囲気がある(50代男性 会社員)・必要以上に女性が優遇されていて、資質や能力に関係なく管理職に登用されていると感じる(50代男性 会社員)こうした声から見えてくるのは、社内の制度を整えるだけではなく、社員の理解を深め、制度を利用しやすい環境を整えることも必要であるということです。ダイバーシティ推進の要は管理職!それではダイバーシティ推進には何が必要なのでしょうか? 同調査で「ダイバーシティ推進のために重要なこと」の第1位に挙げられたのは「管理職の理解・努力」(55.3%)でした。調査を実施したP&Gでは、1990年代から経営戦略の一環として「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)」を推進しています。多様な社員の違いを認めて尊重し、さらにビジネスなどに活用すれば、さまざまなアイデアが生まれ、消費者の多様なニーズに応えられ、結果的に企業の競争力アップにもつながるとの考えからです。ここでのポイントは、“女性”や特定の人だけを尊重するのではなく、“すべての社員”の個性を尊重していることにあります。2012年には、多様な社員の多様な働き方を実現するために、フレックスタイムや時短勤務、在宅勤務などの制度を組み合わせ社員一人ひとりに合った働き方を可能にする「フレックス・アット・ワーク」を導入。組織内風土を醸成するために管理職が率先して活用することで、多くの社員が利用しやすい環境を整えました。みなさんの職場の状況はいかがでしょうか? ダイバーシティ推進や女性活躍推進のための制度を整えるだけでなく、職場の風土づくりのための取り組みなどもあわせて行うことで、女性だけでなく、さまざまな状況にある社員が働きやすい職場になるのではないでしょうか。PR:プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社
2016年05月20日こんにちは。教育ライターのyossyです。近年、奨学金制度に関する報道を新聞・ニュース等で見かけることが増えました。学生時代に学費が払えずに貸与型の奨学金を利用したけれど、卒業後も返済ができずに苦しむケースが増えているというのです。では、どうして困る若者が増えているのでしょうか。その背景や、検討中の新しい奨学金制度に関してご紹介します。●奨学金問題が起こっている背景に子どもの貧困&雇用の不安定日本の学費は世界的にみても比較的高い水準にあると言われています。しかし、平均給与は下がっており、子どもの貧困が問題になっている状態。「大学まで行って学びたい」と思うと、重い負担を強いられることになるのです。教育費に困ったときに、まず思い浮かべるのが「奨学金制度」ですよね。特に、日本学生支援機構の奨学金が有名です。文部科学省によれば、実に学生等の約4割が利用している とのこと。奨学金には一部に給付型(返済の必要がないもの)もありますが、多くの人は貸与型(返済する必要があるもの)を利用しています。しかし、近年非正規雇用者が増加していることも問題になり、雇用が不安定。誰もが「卒業して働き出せば返せる」という時代ではなくなってしまいました。日本学生支援機構によれば、平成26年度末時点で、1日以上返済を延滞している人は全体の約9%。延滞のきっかけが家計の収入低下や支出増加である場合が多く、継続して延滞している理由として“本人の低所得”を挙げる人が半数以上います。少しでも状況を打開するため、日本学生支援機構は大学別に未返済率を公表することも発表(2017年度より)。奨学金返済に関して物議を醸しているのです。●所得に連動して返済額が変わる? 新たに導入が検討される奨学金制度のポイントこういった状況をふまえて、国は新たな奨学金制度の創設を検討しています。マイナンバー制度が導入されたことも手伝って、いわゆる『新所得連動返還型奨学金制度 』に関する議論を重ねているのです。いったんは、平成29年度の無利子奨学金新規貸与者から導入することを目指しています。しかし、現在でも一定の条件を満たせば、・家計が厳しい世帯の無利子奨学金を受けている学生が、卒業後に一定収入を得るまでは返済期限を猶予する制度(所得連動返還型無利子奨学金制度)・返済額を減額して返済期間を延長する制度(減額返還制度)などの救済措置があります。これでは不十分なのでしょうか?『所得連動返還型無利子奨学金制度』と『新所得連動返還型奨学金制度』は名前が似ていますね。何が違うのか、ポイントをみていきましょう。●(1)『所得連動返還型無利子奨学金制度』(現行制度)・年収300万円を超えると、収入に関わらず一定額で返還開始(一部控除あり)・学生時代の世帯(主に父母)が低所得の場合のみ適用される●(2)『新所得連動返還型奨学金制度』(平成29年度より導入が検討されている制度)・学生時代の世帯の所得状況は関係しない・所得が一定額を超えるまでは最低返還月額の2,000円を返還・一定額を超えると、所得に応じた返還額とするこれまでは、世帯の収入(主に両親の経済状況)によってそもそも適用にならないという人もいました。新制度が開始すれば、本人の経済状況のみで返済額が決定される ようになります。また、年収300万円というラインを少し超えただけで、「家計が苦しいのに定額返済しなければいけない」という状況が改善されるというわけですね。----------新制度はまだ検討中で、解決しなければいけない問題も多くありますが、困っている学生や卒業後の若者たちが、少しでも楽になってほしいものです。【参考リンク】・新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について(第一次まとめ) | 文部科学省()・平成26年度奨学金の返還者に関する属性調査結果 | 日本学生支援機構()●ライター/yossy(フリーライター)
2016年04月30日こんにちは。メンタルケア関係を中心に執筆しているメンタルケア心理士の桜井涼です。平成27年4月からスタートした『子ども・子育て支援新制度』のことはご存じの方が大半だと思います。この制度の中にはさまざまな種類の支援がありますが、中身を詳しく知っている人や実際に利用したことがあるという人は少ないのではないでしょうか。“子ども・子育て支援制度”には、一時預かりや妊婦健康診査などのサービス以外にも、“ファミリー・サポート・センター”もあります。こうした支援制度を知っておくことで、孤独になってしまいがちな子育てママの心の支えになるはずです。●地域によってさまざまな子育て支援サービス自治体によって、子育て支援サービスの内容には差があります。そうなってしまう理由は、『計画および実施の主体は自治体にあるが、制度自体は義務ではない』ということにあります。そのため、子育て支援を積極的に行っている地域とそうでない地域があるのです。しかし、その地域に住んでいなくても、近隣に住んでいるママなら利用できるという場合もあるので、自分が住んでいる地域だけでなく近隣の支援サービスにも目を通しておくようにしましょう 。地域で行われている支援の一部をご紹介します。・公共施設での“子育てひろば”の開催(青森市)・役所内に“子育てコンシェルジュ”がいる(千葉市)・NPO法人の訪問支援(役所が委託)(大阪府熊取町)・臨床発達心理士による発達・育児相談(静岡県清水区)・ミニイベント(ランチDAY・リトミックなど)の開催(愛媛県砥部町)こういった子育て支援を積極的に行っているところが769市区町村(厚生労働省:平成27年の統計)あります。これからもっと増え続けることでしょう。「子育てがしにくい」、「育児で悩んでいる」という方に少しでも手を差し伸べるために地域は少しずつ動いています。●ファミリー・サポート・センターとは厚生労働省は、ファミリー・サポート・センターを次の通りに説明しています。**********ファミリー・サポート・センター事業は、乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として、児童の預かりの援助を受けることを希望する者と当該援助を行うことを希望する者との相互援助活動に関する連絡、調整を行うものです**********わかりやすく言うと、支援を受けたい人と支援を行いたい人を結ぶ役割をする事業 ということです。どのようなサポートが受けられるかと言いますと、・保育施設までの送迎・園や学校終了後に子どもを預かる・保護者の病気や急用等の場合に子どもを預かる・病児・病後児の預かり・早朝・夜間等の緊急預かり・就学前の乳幼児がいる家庭への訪問サービス・育児相談・子育てサークルの支援などがあります。この中には費用がかかるサービス(預かり保育など)もあります。有料のサービスについては、有資格者や指定した講習を受講し終了している方がみてくれるので安心できます。●支援サービス情報の見つけ方「住んでいる地域にファミリー・サポート・センターがあるのかどうかわからない」「どうやって調べればいいの?」と情報が流れてこないという人もいるでしょう。利用できるかを知るためには、役所に電話をして確認を取ることが一番の近道 です。その他には、・ショッピングセンターなどの掲示板・自治体の公共施設の掲示板・町の広報誌などに情報が出ていることが多いです。また、ある地域では郵便局にチラシが置いてありました。買い物に出かけた際にでも、掲示板を見ておくのも一つの手だと思います。それ以外に、住んでいる地域名(周辺の大きな地域など)と「子育て支援」「ファミリー・サポート・センター」といった言葉を入れて検索をしてみましょう。これでもかなり出てきます。情報を見つけたら、一度電話をして利用状況や利用の仕方を問い合わせてみましょう。●おわりに核家族が約8割になってきている現在、誰にも頼ることができずに、お母さんが子育ての悩みを抱えている家庭が多くあることがわかっています。親に頼ることができない家庭も多いでしょう。そんなとき、力になってくれるのが地域の人たちです。昔から大事にされてきた、「子どもを地域みんなで育てる」という意識をこれからも大事にし、一緒に子どもを守り育てることに加わっていきましょう。子どもは国の宝です。その子どもを育てているお母さんもまた宝です。一人で悩まないで、みんなの手を掴んで欲しいと思います。【参考リンク】・子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)について | 厚生労働省()●ライター/桜井涼(フリーライター)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2016年04月13日何かとお金がかかる子育て世帯には、自治体によるさまざまな支援制度が存在することをご存じでしょうか。児童手当や出産育児一時金だけではなく、不妊治療や資金贈与、独自の助成制度を設けている自治体もあります。けれども、あまり積極的なPRをしておらず、申請も必要なため「知っていれば利用したのに」と悔しい思いをすることも…。そうならないために今回は、知っておくと役に立つ「子育てお助け制度」についてご紹介しましょう。地域関係なし! 国が定める助成制度<特定不妊治療助成金>厚生労働省は不妊に悩んでいる人のため、「体外受精」「顕微授精」といった高度不妊治療の治療費助成制度を設けています。国がすすめている事業なので、日本に住んでいる人なら、全国どこでも対象です。ただし、所得や年齢制限、申請期限などがあるために事前確認が必要。自治体によっては国の制度で上限額を上回った分をさらに補助する制度のあるところも。住んでいる自治体の不妊治療制度についても事前にチェックをいれておくといいですね。・ 不妊に悩む夫婦への支援について|厚生労働省 <教育資金贈与の非課税制度>おじいちゃんやおばあちゃんが孫のために教育資金を提供したい…。そんなときに助かる制度が教育資金の非課税贈与です。通常お金を贈与すると贈与税という税金がかかってしまいますが、この制度を利用すれば教育費に限り、1,500万円まで非課税にすることができます。平成31年3月までと制度が期間限定であることや、贈与された子どもや孫は30歳になるまでに教育資金として使いきらなければいけないなどの点に注意が必要ですが、ムダな税金を抱えないという意味では検討の余地がありそうです。・ 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 : 財務省 あなたの住んでいる地域にもあるかも? 地方自治体独自の助成制度<引っ越し費用の助成金(東京都新宿区)>新宿区の「子育てファミリー世帯居住支援」では新宿区の内外から区内への引っ越し(ただし、民間賃貸住宅の利用に限る)で「契約時の礼金、仲介手数料の合計を最大36万円助成」「引っ越し代の実費最大20万円助成」などの制度を設けています。意外とかさんでしまう引っ越し費用を助成してくれるのはうれしいですね。・ 子育てファミリー世帯居住支援(転入転居助成):新宿区 <三世代同居の支援(千葉県千葉市)>千葉市の「三世代同居等支援事業」では「親と子と孫」を基本とする三世代家族の同居に必要な費用の一部を助成しています。貸家の場合は賃貸借契約に、持家の場合は新築・改築・購入に必要となる費用が対象です。・ 千葉市:千葉市三世代同居等支援事業 <子どもの通学費援助(東京都八王子市)>八王子市では通学区域内の学校を対象に、徒歩での通学が困難なケースや、身体的理由などでバスや電車などの交通機関を利用している小・中学生の保護者に対し、交通費を補助しています。通学定期運賃の3分の2までが補助され、対象者には学校から申請書が配付されます。学校配布の場合は申請忘れの心配がなくていいですね。・ 交通機関等利用児童・生徒通学費補助金|東京都八王子市Webサイト こうした制度の利用は申請のタイミングが事前・事後のどちらなのか、所得や家族状況が条件に見合っているかどうかなどをしっかりとチェックする必要があります。そのうえで条件を満たしていることを確認し、上手に制度を利用しましょう。
2016年03月19日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。介護保険制度というのは社会的にも定着してきている現代ですが、「そもそも介護保険制度って何なのか」ということがよくわからない人もいると思います。高齢者が増えてきている日本においては、 非常に重要な制度であることは理解しておくといいでしょう。介護保険制度を理解していく上で重要になるのが、“保険者 ”“被保険者 ”“制度を利用したサービス ”になります。保険者は、主に国や市町村と考えておいて問題はありません。被保険者は、第1号保険者(65歳以上の人)、第2号保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)になります。制度を利用したサービスというのは、特定の介護施設や介護サービスなどになります。被保険者と保険者の関係は、被保険者から保険者に向けての保険料の支払いや介護保険の申請になり、保険者から被保険者に向けて保険証の交付や申請に対する認定ということになります。被保険者と制度を利用したサービスの関係は、サービスの提供と利用料の支払いになります。そして保険者と制度を利用したサービスの関係性は、保険者から介護報酬の支払いを受けるという関係になります。この3つの関係が成り立つことで、介護保険制度は社会的に機能していることになります。●介護保険制度の複雑な面は“制度によるサービス”が影響介護保険制度を利用していく場合、被保険者と保険者の関係というのはわかりやすいことが多いのですが、“制度によるサービス”に対して理解が難しくなってしまうことがあります。それは、“制度によるサービス”に関する施設やサービスが多種多様にあり、似たような名前になってしまっていることが多いからです。これを理解していくためには、ある程度、専門的な知識が必要になります。“制度によるサービス”で迷ってしまった場合、頼りになるのがケアマネージャーであり、このケアマネージャーを探したいと思った場合、市区町村の窓口 に相談をするか、地域包括支援センター という場所に相談をすることになります。【参考リンク】・介護保険制度の概要 | 厚生労働省()●ライター/yoshi
2016年03月08日東京商工リサーチは2月26日、「社会保障・税番号(通称:マイナンバー)制度に関するアンケート調査」の結果を発表した。これによると、マイナンバー制度に対する認知は高まったが、利活用が進んでいない実態が明らかになった。同調査は、2016年1月19日から1月29日にかけてインターネットによるアンケートを実施し、有効回答を得た7887社の回答を集計・分析したもの。マイナンバー法の内容についてどの程度知っているかを聞いたところ、「概ね知っている、よく知っている」が5046社(構成比64.0%)で約6割を占めた。これに「少し知っている」(2513社。同31.9%)を合わせると、「知っている」と回答したのは7559社(同95.8%)あり、9割以上に認知されていることがわかった。続けて、自社にとってマイナンバー制度の一番のメリットは何かを聞いたところ、「メリットはない」が最多の5881社(構成比74.6%)で約7割を占めた。これに、「情報管理の利便性向上」が637社(同8.1%)、「公平性が徹底される」が552社(同7.0%)と続いた。「メリットなし」は前回調査(同65.9%)より8.7ポイント増加しており、マイナンバー制度の導入とともに、メリットなしと判断した企業の比率が高まっているという。一方、「その他」の中には「まだ(社内で運用されていないから)わからない」「始まったばかりで、わからない」といった回答が145社あり、一部ではまだ把握できていないことも垣間見えるようだ。逆に、マイナンバー制度の最大のデメリットを聞いたところ、「情報漏洩のリスク」が最多の3194社(構成比40.5%)で約4割を占めた。これに、「業務の煩雑化」が1809社(同22.9%)、「業務の増加」が1802社(同22.8%)、「コスト増加」が548社(同6.9%)、「デメリットはない」が344社(同4.4%)、「その他」が156社(同2.0%)、「公平性が解消できない」が34社(同0.4%)と続いた。前回調査でもデメリットは「情報漏洩のリスク」(同53.3%)が最多だったが、構成比は12.8ポイント下がった。この結果について、同社は企業がセキュリティ強化に努めたことや、行政による広報活動で安全性への認識が広がっていることがうかがえるとしている。
2016年02月29日ストレスチェックやマイナンバーなど、人事業務に大きく関わる制度の義務化が進められている。2016年上半期において人事担当者はどういった準備をし、どういった対応をしておくべきなのだろうか? 特定社会保険労務士の小岩和男氏に話を伺った。――昨年の12月から、ストレスチェック制度の実施が義務付けられるようになりました。従業員のメンタル不調を未然に防ぐための制度ですが、いま導入しようとしている企業からはどのような悩みが聞かれますか?この制度ができる前から先進的にストレス対策を講じていた企業に、混乱があるようです。例えば「これまでやっていた対策をストレスチェックに変更しなければならないのか?」といった質問をよく聞きます。ストレスチェック制度では、本人の同意を得なければ会社は結果を知ることはできません。また、ストレスチェックは従業員にとっては任意であり、強制はできません。こうしたことが、踏み込んだ対策をしたい会社にとっては悩みのタネになっているようです。ですが、ストレスチェック制度とは別の労働安全衛生法第69条第1項による任意の取り組み(トータルヘルスプロモーションプラン)であることを明確にすれば、従来実施していたメンタル調査などもストレスチェックとは別に実施することが可能です。――ストレスチェック制度では、医師などによる面接指導の実施が求められるようになります。こちらの準備については、どのような相談が寄せられていますか?「自社の産業医がメンタルの専門ではないのでどうしたらいいのか?」という相談を受けることがありますが、必ずしも産業医と面談しなければいけないわけではありません。別の専門医からも面接指導を受けることができます。ただし、その場合は自社の事業場の状況を把握していない場合も考えられますので、産業医からも就業上の配慮に関する意見聴取をしておきましょう。――これからストレスチェック制度の実施に向けて準備をしていく企業に、アドバイスをいただけないでしょうかストレスチェックをいつ・どのように実施していくか、具体的な導入手順については、企業の衛生委員会等で審議する必要があります。衛生委員会等は、従業員50人以上の事業場に設置が義務付けられているものです。今回のストレスチェック制度義務化を契機に、委員会をきちんと運用して労働環境改善に役立てていきましょう。――今年の1月からは、マイナンバー制度の運用もスタートしました。こちらはどのような状況でしょうか?マイナンバーは社会保障・税・災害対策の行政事務で必要となります。企業実務で一番早く運用されているのは雇用保険で、1月1日入社からマイナンバーが必要です。安全管理措置体制を整え適切に取得しましょう。――人事担当者以外の一般社員にも、マイナンバー制度の理解は浸透しているのでしょうか?全国民に必要になる重要な制度なのですが、まだまだ理解は薄いと思います。ですから、人事担当者のみなさんには説明会の実施をお勧めしています。内閣官房が運営しているマイナンバーのWebサイトに20分ほどの紹介動画がありますから、部内ミーティングなどのタイミングで見てもらうとよいでしょう。――マイナンバーの管理については、セキュリティが非常に重要だと思いますが、情報の取り扱いについてはどのようにしていくべきでしょうか?マイナンバーガイドラインに記載されている事業規模に応じた管理体制を取りましょう。いかに漏洩しない体制づくりをしていくかがポイントです。アナログ的ですが、従業員から番号を収集する際は、100人程度の規模でしたら書面を用いることを提案しています。従業員は所定書式に自身と扶養家族の番号を記載し封入して直接人事担当部門に持参。人事担当部門は書式を鍵のかかる書庫等へ収納。マイナンバー事務処理ごとに取り出し、終了後は定位置に戻す。またその事務処理ごとの記録をきちんと取っておく。これが最も漏洩リスクが少ないやり方でしょう。また、提出されたマイナンバーが正しいかどうかを確認するために「通知カードのコピーをとっていいのか」という質問が多いのですが、これは国がOKを出しています。ただし、コピーも厳重に管理することが必要です。会社によっては、人事担当部門で確認したのちに、コピーを当人に返却しているところもあります。また、書面で回収できないような大規模企業であれば、ITシステム会社へアウトソーシングという手もあります。マイナンバー法には委託する側に監督責任があると明記されていますので、安全管理措置が適切に記載されている契約書を交わしておきましょう。――2016年の上半期において、人事担当者はどのような点に注意して業務を進めるべきでしょうか?当面はストレスチェックとマイナンバーが主な取り組み課題になりますので、この二つを粛々と進めていきましょう。また、労働基準法や雇用保険法など、大きな制度改正の動きもありますから、こちらについても情報のアンテナを立てておくことが重要です。
2016年02月15日IoT検定制度準備委員会は2月5日、IoTの普及と知識スキルを可視化する策として検定制度を開始することを発表した。同検定は技術的な視点だけでなく、マーケティング担当、サービス提供者、ユーザーなどの視点から必要となるカテゴリー、スキル要件を網羅し、それぞれの立場でIoTのシステムを企画・開発するために必要な知識があることを証明できるものとなっている。主な受験対象者は、IoTを取り入れる組織の経営者および管理者、IoT化を推進するプロジェクトの企画担当者、IoTを活用しデータ分析などを行う利用者、IoTシステムの構築・保守運用に携わるエンジニア。検定分野は、企画推進・戦略立案のための基礎知識やプロジェクトマネジメントに関する知識を問う「戦略とマネジメント」、産業システム・スマート製品に関する知識やIoT関連の標準化に関する知識を問う「産業システムと標準化」、通信関連の法律に関する知識を問う「法律」、データ送信プロトコルやWAN、LANなどに関する知識を問う「ネットワーク」、電子工学やセンサ技術に関する知識を問う「IoTデバイス」、クラウド環境や分散処理システム利用に関する知識を問う「プラットフォーム」、データベースや機械学習に関する知識を問う「データ分析」、暗号化や攻撃対策に関する知識を問う「セキュリティ」を予定している。3月より希望者および有識者に対してベータ試験が実施される予定で、詳細については後日発表される。
2016年02月05日メルカリは2月1日、新人事制度「merci box(メルシーボックス)」の導入を発表した。2月1日に創業3周年を迎えた同社は、これまでも副業の推奨やフレックス制度の導入など、各種支援を行ってきたが、今後さらなるメンバーの採用や、出産・育児をはじめとしたライフイベントを迎えるメンバーへの支援をより拡充するため、同制度の導入を決定したという。新人事制度「merci box」の概要は以下の通り。社員の家族を含めた環境の支援産休・育休支援の拡充産休・育休期間中の給与を会社が100%保障する制度。女性は産前10週+産後約6カ月間の給与を100%保障、男性は産後8週の給与を100%保障。育児・介護休暇の有償化子どもの看護および家族の介護で休暇を取得する場合は、5日間を特別有給休暇とし最大で10日間まで休暇取得が可能(1年あたり)。万が一の時のセーフティライン病気やけがの時のサポート病気やけがにより仕事ができない期間、経済面も安心して入院や治療に専念できるよう支援。全社員の死亡保険加入メルカリで働く全社員に対して死亡保険に加入することで、万が一の時に社員の家族を最大限(数千万円~)支援する。ライフイベントのサポート結婚休暇&お祝い金結婚にあわせて、特別有給休暇(5日間)とお祝い金(5万円)を支給。出産休暇&お祝い金子どもの出産にあわせて、立会いに十分な特別有給休暇(3日間)とお祝い金(10万円)を支給。慶弔時の支援万が一の不幸があった場合には、特別有給休暇(3日~7日)や弔慰金(5~10万円)でサポート。
2016年02月02日MM総研は1月21日、企業のマイナンバー制度に対応にしたシステム・サービスの導入実態に関する調査結果を発表した。同調査は同社が2015年12月4日~7日にかけて、全業種の企業においてシステムやサービスの導入にあたり決裁権があるか選定に関与する立場にある担当者を対象に、Webアンケートで実施したもの。有効回答数は729人。マイナンバー制度対応に向けた社内の進捗状況を尋ねると、「既に取り組んでいる(社内のみ)」が45.5%、「既に取り組んでいる(外部組織に委託)」が24.4%であり、既に何らかの取り組みを行っている企業が計69.9%を占めた。このほか、「どのように対応するか計画中」が26.1%あり、マイナンバー制度に向けて取り組みは着実に進んでいる。業務ごとの対応状況を見ると、最も対応が多かった業務は「人事・給与」に関するもので49.1%だった。この業務は従業員への給与・報酬の支払いや保険料の徴収においてマイナンバーの対応が急がれるため、多くの割合を占めていると同社は推察する。続いて「マイナンバーの保管・管理」が43.0%、「マイナンバーにアクセスする権限の管理」が38.9%だった。それぞれの業務において、「検討している」と回答した企業はいずれも3~4割だった。マイナンバー制度対応に向けたシステムやサービスについて不安に感じていることを質問したところ、「情報漏洩リスク」が66.5%と最多であり、以下「業務量の増加」(42.8%)、「コストの増加」(38.8%)と続いた。マイナンバー情報を漏洩すると最高で4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金といった罰則が科せられる上、企業名を公表されるなど社会的なイメージダウンにつながってしまうため、懸念が高まっていると同社は分析している。今後、重視・期待する機能について複数回答で尋ねると、「セキュリティへの対応力の高さ」が44.7%と最も多く、「操作性の良さ」が34.7%、「導入コストの安さ」が32.7%、「既存システムとの連携のしやすさ」が31.7%だった。誤操作や管理ミスなど、人的ミスによる情報漏洩を防ぐ機能が求められていると同社は指摘する。
2016年01月22日●ストレスチェック制度にどう対応していくか?いよいよ今月からストレスチェック制度が施行となった。とはいえ、すでにストレスチェックを実施したという企業は少ないだろう。むしろ、これから準備を進めていくという企業がほとんどかと思われる。従業員50人以上の事業場では、2015年12月1日から2016年11月30日までの間に、1回目のストレスチェックを実施するよう義務付けられたが、「まだ時間はある」と悠長に構えているほどの時間はない。もし、まだストレスチェック制度に対する対応方針や実施時期が決まっていないようであれば、すぐに取りかかった方がよいだろう。というのも、同制度は実施体制や運用フローが非常に複雑化しており、マイナンバー制度への対応よりも大変なように感じられる。まだ準備を進めていない企業は、これからどのように進めていけばよいのか? 11月にキーポート・ソリューションズ(KPS)は同制度に関するセミナーを開催。セミナーでは、ストレスチェック対策をより効果的にサポートする同社のソリューションと、産業医である三宅琢医師が「本音で教えるストレスチェック活用法」が紹介された。○ストレスチェック制度とは?まず、そもそも「ストレスチェック」とは何か? 厚生労働省によると、「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票(選択回答)に従業員が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査であるとしている。「労働安全衛生法」という法律が改正されて、従業員が50人以上いる事業場では、2015年12月から毎年1回、この検査を全ての従業員に対して実施することが義務付けられた。「企業としてやらなければいけないことは実施義務。従業員にアンケートに回答してもらうよう案内することが義務ということ。その結果、アンケートに回答してもらえなかったとしても、それは企業の義務ではない。そこが健康診断との違い。実施していない企業は罰則の対象となる」(三宅医師)ストレスチェック制度は従業員が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合は医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったり、職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みである。三宅先生は同制度を「会社の元気度を測るもの」と述べた。同制度への実施手順として、厚生労働省からは以下の流れで進めていくように示されている。○どう運用すればよいのか?実施方法など社内ルールの策定から、ストレスチェックの実施、必要がある場合の医師による面接指導、集団分析など、やらなければいけないことはたくさんある。まず、ストレスチェック制度の導入前には事業所の衛生委員会で、ストレスチェック制度の実施方法などを決める必要がある。話し合う必要のある主な事項として、厚生労働省では下記の8点をあげている。ストレスチェックは誰に実施させるのかストレスチェックはいつ実施するのかどんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのかどんな方法でストレスの高い人を選ぶのか面接指導の申し出は誰にすれば良いのか面接指導はどの医師に依頼して実施するのか集団分析はどんな方法で行うのかストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのかまた、実施体制や役割分担を決めることも必要だ。厚生労働省では実施体制の例として、下記をあげている。制度全体の担当者事業所において、ストレスチェック制度の計画づくりや進捗状況を把握・管理する者ストレスチェックの実施者ストレスチェックを実施する者。医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要がある。外部委託も可能。ストレスチェックの実施事務従事者実施者の補助をする者。質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務を担当。外部委託も可能。面接指導を担当する医師質問票に関しては、厚生労働省から57項目からなる職業性ストレス簡易調査票が公表されているが、「ストレッサー(ストレスの原因に関する質問項目)」「サポート(労働者の周囲のサポートに関する質問項目)」「ストレス反応(ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目)」の3つの要素があれば、この質問票以外のものを使用することが認められている。「簡単に説明すると、『ストレッサー』は過去、『ストレス反応』は現在、『サポート』は未来の評価に分けられている。この中で、国が一番重要視するように言っているのが、ストレス反応である。今、頭痛がしたり、食欲がないなど、現在の状態をハイスコアとして扱うように言われている」(三宅医師)高ストレス者の選出方法については、「何点以上の人は面接する」という基準を、企業が考えなければいけない。記入が終わった質問票は、医師などの実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が回収する必要がある。ここで注意すべき点は、実施事務従事者は、人事権を持つ職員が携わってはいけないということ。また、結果(ストレスの程度の評価結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否か)は、実施者から直接本人に通知される。つまり、結果は企業には返ってこない。さらに、この結果は医師などの実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が第三者に閲覧されないように保存することになっている。「実施事務従事者は事業所の中から選ぶこともできるが、作業や管理などが多岐にわたり、さらに守秘義務を負うことになるため、実際にはなかなか難しいだろう。事務の担当が倒れることがないよう、外注を利用していくことがポイント」(三宅医師)また、実施事務従事者だけでなく、ストレスチェックの実施者を誰に依頼するかといった問題もある。通常であれば、自社の産業医に依頼するところであろうが、医師によっては断られるケースも想定される。これに対し三宅医師は、「いい産業医か、使えない産業医か、判断する機会になった」と言う。今回の法改正によって、産業医の職務は「労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査の実施ならびに面接指導の実施およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること」が定められた。「ストレスチェックの実施をしぶるような医師は、職務を理解していないということ」と三宅医師は指摘した。これらのフローをふまえて、ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされた従業員から面接の申し出があった場合は、企業は医師に依頼して面接指導を実施する流れとなる。では、そもそもストレスチェックは何のために実施されるのだろうか? その解について、三宅医師は次のように回答した。「従業員にとっては、自分の健康状態を知るため。しかし一番は、企業が組織診断を行って、職場改善を行うためだ」(三宅医師)ストレスチェック制度は年に1回以上実施することが求められているが、年1回だけの実施なのであれば、職場分析が非常に重要になってくるという。この職場分析は努力義務となっており、ストレスチェックの実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど原則10人以上の集団)ごとに集計・分析してもらい、その結果から職場環境の改善を行うことが推奨されている。職場分析の重要性について、三宅医師は次のように述べた。「欝病は移る。なぜかというと、一人の従業員が休むことによって周囲にそのしわ寄せが生じる。だから組織分析が重要」(三宅医師)●産業医が教える、ストレスチェック活用法三宅医師は「風邪と一緒で年に1回測っても、ストレスチェックの意味がない。いつ実施するのかで、値が変わってくるからだ」とストレスチェック制度の問題を指摘する。○今からできる、ストレスチェック対策「組織全体が沈んでいる部門は何かが起こっているということ。早くレスキューしないと一人の問題ではなく、全体に広がっていく」(三宅医師)また、企業はこれまで以上に安全配慮義務が必要になってくるという。「労災の対象となった従業員が訴訟の対象とするのは、社長と上司。この2本立てが法曹界では当たり前のパッケージ商品となっている。つまり、自分の部下の健康状態を把握していないと、民事裁判に巻き込まれるケースがあるということ。上司が部下にしなければいけない義務が安全配慮義務である。この義務は、予見義務・結果回避義務と言われていて、『そのまま働かせていたら倒れるのはわかりますよね?』という義務。こういう義務がある以上、企業は労働者の健康状態に配慮することが必要となってくる」(三宅医師)ところが、忙しいと部下のパフォーマンスを把握することはなかなか難しい。三宅医師は「今後メンタリティやモチベーションの見える化が必要。そうでないと、安全配慮義務を守れない」と言うが、では一体、どうすればよいのだろうか? 三宅医師は今からできる予見法として、次のようにアドバイスした。「ストレス不調を起こす人は必ず、当日の遅刻・欠勤の連絡が続く。また、個人スペースがすごく汚れていたり、逆にいつも汚れているのに急にきれいになったりする。そのほかにも気分の浮き沈みなどもチェックするポイントとしてあげられるが、これらを毎日チェックしていくことは難しい。そこで、今日から始められるストレスケアの一番簡単な方法は、あいさつ。毎日あいさつをすることによって、その人の変化に気付くことができる」(三宅医師)また三宅医師は、まわりを助けるよりも、まずは「自分が元気であることが大切」と話した。「私が産業面談で社員をケアする時に聞くポイントは、『食う』『寝る』『遊ぶ』の3つ。この3つの変化しか聞かない。この3つをチェックしていれば、ほとんどの人のメンタルケアができる。自分のストレスをケアする上で大事なことは、食事や睡眠に変化がないか、また趣味を持ってもらうこと。趣味はストレス発散にもなり、また趣味をしていても楽しいと感じない時は、ストレス値が高くなっているサインになる。年に1回ではなく、日頃から自分に問いていかないと、ストレスのレベルはわからない。自分が元気でいることが、一人でもストレス値の高い社員を出さないために一番大事なこと」(三宅医師)○メンタリティを可視化するには?三宅医師が推奨する「メンタリティやモチベーションの見える化」について、KPSでは8月に、個人と組織の「気持ち」を可視化・数値化する「Willysm(ウィリズム)」の提供を開始した。同ソリューションで従業員がすることは大きく分けて3つ。まず、毎日決められた時間に自分の気持ちを「Excellent」「Well Done」「Not So Good」の3つから選択し、その日にあった幸運・幸福な出来事を3つ記入、さらに同僚に感謝の気持ちを伝えるメッセージ・プレゼントをあげる、といった3つの行動から、従業員のモチベーションを可視化するだけでなく、気持ちを前向きにする仕組みとなっている。これにより、例えば「Not So Good」が続いている従業員がいれば、年1回のタイミングでなく、適宜ストレスチェックを促し、早期改善を図ることが可能となる。12月1日からは、同ソリューションにストレスチェック制度へ準拠した「ストレスチェックサービス」機能が追加された。KPS ビジネスイニシアティブユニットのシニアコンサルタントである稲田勇祐氏は、同ソリューションについて次のように説明した。「Willysmは前向きな改善の機会、健康経営による企業価値向上につなげる一つの有効な施策と位置付けている。健康で前向きな個人を増やしていくことによって、重大疾病予備軍を減らし、休業者も減らしていくことができると考えている」(稲田氏)***組織分析から職場改善まで実施するとなると、2016年11月まで時間の余裕がないことは感じてもらえただろう。今回のストレスチェック制度を、「義務だからやる」だけではなく、ぜひ前向きに経営戦略の一つとして、しっかり考えて取り組んでもらいたい。
2015年12月21日保健同人社とヒューマネージは12月5日、12月1日に施行した「ストレスチェック制度」(労働安全衛生法の一部を改正する法律)について、企業のメンタルヘルス担当者に実施したアンケート調査の結果を発表した。同調査は両社が10月22日と27日に企業のメンタルヘルス担当者を対象に実施したもので、有効回答者数は366人。調査によると、施行1カ月前の時点においても企業の準備は進んでおらず、3割強が具体的な実施時期を決めていという結果となった。ストレスチェック義務化が施行される1カ月前となる10月末の時点において、準備状況について「ほぼ完了している」と回答した担当者は2%未満だった一方、7割以上が「検討中/情報収集中」と回答している。ストレス・チェック義務化施行の直前でも、企業の準備はなかなか進んでいない実態が明らかになった。準備状況を従業員規模別に見ると、「検討中/情報収集中」の割合は、従業員1,001人以上の企業では60.2%、従業員301人以上1,000人以下の企業では73.8%、従業員300人以下の企業では81.6%であり、規模が小さくなるほど準備が進んでいないことが分かった。ストレスチェック義務化への対応で懸念している点については、ストレスチェック実施後のフォロー体制が42.3%で最多であり、以下、規程の整備(35.8%)、高ストレス者への対応(34.4%)、担当者の業務負荷増大(30.9%)、医師面談の実施(28.1%)と続く。法律が定める「やらなければならないこと」にどう対応するかという点とともに、義務化対応を担うメンタルヘルス担当者のマンパワーについても不安を抱いていることがうかがえると両社は見る。ストレスチェックを既に導入・実施しているまたは導入を検討中の企業の担当者に対して、実際にストレスチェックを実施する時期を尋ねると、具体的な時期では「2016年4月~6月」と「2016年7月~9月」が多かった。ただし、最多は33.5%の「未定/無回答」であり、スケジュールなどの実施に関する具体的な事項はまだ検討中の企業が多いようだと両社は推測する。ストレスチェック義務化対応で外部委託先を選ぶ際に重視する点を複数回答で尋ねたところ、費用が56.8%と最多であり、以下、運用サポートの充実(45.9%)、ストレス・チェックの信頼性(43.7%)、セキュリティ体制(38.5%)、システムの使い勝手(36.9%)の順だった。委託先を選ぶ際に費用を重視することに加えて、「実施する際のサポートがどれだけ充実しているか」「ストレスチェックは科学的に信頼できるものか」「セキュリティは万全か」「スムーズに実施できるシステムかどうか」など、多岐にわたるポイントでパートナーを選定していることが分かる結果となった。これらの結果を受けて、両社が提供する企業向けEAP(従業員支援プログラム)サービスである「TEAMS」のEAPコンサルタントは「マイナンバーや新卒採用スケジュールの変更などさまざまな対応が重なるなか、ストレスチェック義務化の制度を理解し、運用体制を整えるにあたって、企業のメンタルヘルス担当者が非常に苦労していることがうかがえる」とコメントとした。外部委託先を選ぶポイントとして「『ただストレスチェックを実施するだけ』の対応では、情報漏洩など、取り返しのつかない経営リスクに直結する。堅牢なセキュリティ、科学的に根拠のあるストレスチェックを提供できることに加え、コンサルティングから業務プロセスの企画・設計・遂行までトータルにサポートできる外部パートナーを戦略的に使いながら、ぜひ、今回のストレスチェック義務化対応を組織の生産性向上へつなげてもらいたい」としている。
2015年12月15日キヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)は、テクノクラフトのクラウドサービス「コミュニケーション&なび」の新サービスとして、子ども・子育て支援新制度に対応した「あずかり精算なび」を2016年4月1日より販売開始することを発表した。近年の共働き世帯の増加や就労形態の多様化、保育士不足を背景とした待機児童問題の解消をはじめ、子育てを社会全体で支えることを目的に、本年4月より「子ども・子育て支援新制度」が施行された。本制度により、保護者は子どもを預けられる選択肢が増え、子育てと仕事を両立しやすくなる一方、新たに設定される認定区分に応じて利用できる施設や料金が変わるため、認定区分によりどの施設・サービスを利用できるのかを正しく認識する必要があるという。また、施設側では、市町村への申請や保護者への利用料請求のため、一時預かり・延長保育の利用状況の把握や、手記入・手計算の処理の増加により、日々の業務負担の増加が懸念されている。それに加え、慢性的な職員不足、業務過多などを解決するためにはIT活用が課題となっているとキヤノンS&Sは指摘する。こうした課題を解消すべく、新システムは、預かり時間の管理に着目した新制度対応システムとなっている。登降園時または一時預かりや延長保育開始のタイミングに時間を記録することで、預かり時間数と料金が自動で算出される。時間の記録は、園児のバッグなどに着けたRFタグ(電波を利用して、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体)をRFID(電波を利用してRFタグに埋め込んだID情報を非接触で読み取る仕組み)対応のハンディリーダーで読み取ることで、スムーズな登降園と正確な記録時間の把握が可能。また、ハンディリーダーがなくても、タブレットで直接時間を入力して、運用することも可能となっている。記録したデータは、保護者への利用明細や、市町村への提出書類作成の負荷を軽減する。テクノクラフトは、幼稚園、保育園を運営しており、2011年に「コミュニケーション&なび」を提供開始した。実際の現場の先生や保護者の意見を反映し、「連絡なび」「バスなび」「出欠預かりなび」「写真コレなび」「絵本ドコなび」「名簿センター」といったラインアップをそろえ、同社によると現在約150の施設に導入されているという。幼稚園、保育園では、インフルエンザのシーズンだと、朝から園児の欠席連絡の電話が鳴り続け、ほかの業務を行えないような状況になるという。「コミュニケーション&なび」はパソコンやスマートフォンから連絡してもらうため、施設側の負担を軽減することができる。実際に、3回線必要だった電話回線を、同システムの導入によって1回線に減らした施設もあるという。「あずかり精算なび」の費用は、初期費用が1万円、年間利用料金は園児100名分までが6万9,600円、園児10名を追加するごとに、6,960円となっている。いずれも税別価格。この費用にはハンディリーダー、タグの代金は含まれおらず、また別途、導入後の設定費用、操作説明費用が発生する。なお、先行予約特典として、2016年3月末日までに「あずかり精算なび」を契約すると、初年度の年間利用料金が半額となるキャンペーンが実施される。
2015年11月27日Beat Communicationは11月24日、社内表彰制度システム「BEAT AWARD」の提供を開始した。従来の社内表彰制度は、Eメールやポータルサイトを利用したものが多く、現場からアイデアがうまく集まらなかったり、制度自体を活用する社員に偏りがあったりすることから、うまく機能しないという問題点があったという。このような課題を解決するために開発された「BEAT AWARD」は、全社員からアイデアを募集して成功している企業の、カスタマイズ要望から生まれた社内表彰用のパッケージサービスとなっている。本サービスは、「金銭」よりも従業員への「感謝」や「認知」というモチベーションをアップさせる仕組みを「見える化」することで、個人の潜在能力を引き出し、会社の全体的な底力を増し、強い企業作りの役に立つことを目的としたものだとしている。また、同社のコンサルティングのノウハウと、社内向けに実施してきた表彰制度実施プログラムを体系化し、これまで社内システム上で数多くの表彰制度を実施してきた実績や知見をプログラム化した、システムとリアルが一体となったサービスだという。同社は、システム提供だけを主眼に置くのではなく、企業風土を育成していくために、ソフト面からの支援も行い、さらに、経営層に対するコンサルティングサービスもオプションとして提供することで、システム以外でのサービスも実施していくとしている。
2015年11月25日FiNCは11月20日、ストレスチェック制度に対応した法人向け新ウェルネス経営サービスを提供開始した。同社では、医師による面接指導など同制度に対応したサービスを幅広く提供できるよう、全国37都道府県に1,000人以上の産業医/医師のネットワークもあわせて構築したとしている。同社のストレスチェックでは、厚生労働省準拠の57項目もしくは同社によって充実させた110項目の質問により、従業員のメンタルの状況を計測し、従業員にフィードバックする。また、高ストレス者への医師面談の勧奨から、医師面談の設定、意見書の取得などすべて同社のシステム上で完結させることができるほか、集団分析についても各社の要望に合致したものが提供されるという。スマートフォンや紙による受検にも対応しており、改善ソリューションとしてスマートフォンなどを通じたセルフケアや相談センターなどのサポートも提供される。さらに、産業医/医師のネットワーク構築により、産業医の選任支援や医師面談が必要な高ストレス従業員に対する産業医のスポット紹介なども提供される。
2015年11月24日ビデオ会議システムや音声会議システムなど、世界中で40万以上のユーザーがソリューションを利用しているポリコム。その日本法人であるポリコムジャパンでは、制度改革やオフィスの効率化などをふまえて自社製品を活用したテレワークを実践している。テレワークを支援するソリューションの提供を本業とする同社の取り組みについて取材した。○震災後、テレワークを全社員対象に自社の製品自体がテレワークを可能とするものだけに、ポリコムジャパンでは以前から海外とのやり取りや、営業スタッフ、地方にいるスタッフなどとはテレビ会議をはじめとする自社のユニファイド・コミュニケーション製品を用いてテレワークを行っていた。しかし同社が全社員規模にまでテレワークを拡大したきっかけは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。震災の直後、社員全員が自宅に待機することとなったが、そうした状況下で各社員は自主的に自分のパソコンに入っているビデオ会議アプリケーションや内線を受けられるIPフォンなどを駆使して業務を継続させていった。一週間、一人も出社することなく事業を継続できたことで、テレワークの意義を改めて認識した同社では、翌4月には全社的にテレワークが行える環境を整えたのである。ポリコムジャパン ビジネスオペレーションズのシニアマネージャー、藤井浩美氏は「震災以前からテレワークを拡大したいという意向はあったのですが、オフィスにいない社員との連絡のとり方や人事面での評価をどうするのかなど課題もあってなかなか全社員を対象にするまでには踏み込めませんでした。それが震災後にいざ実践してみると、業務の滞りもなく、またオフィスにいなくても社員のプレゼンスやステータスが確認できるため、全員が“見えている”状態にできることが実感できたことから、全社展開が決まりました」と言う。社員のスケジュールはOutlookのカレンダーで社内に公開されているため、お互いに確認しながら動きを同期させることも容易に行えたという。○テレワークのための制度改革を実施ポリコムジャパンでは、全社員がテレワークを行うための制度改革として、テレワーク・フレックス制度や育児サポート関連、介護サポート関連といった3つの制度を新たに整えた。このうちテレワーク・フレックス制度は、以前から実施していたフレックス制度にテレワークに必要な要素を盛り込んだもの。全社員を対象にテレワークを許可し、上長の許可を得ることで誰でも利用が可能(総務・特定技術職は状況に応じて)としている。またコアタイム(11時~15時)以外の時間は、開始時間と終了時間について8時間の間で自由に設定可能とした。育児サポート関連の制度としては、最長1年間、育児休業を取得可能とするとともに、産前・産後の休暇や子どもの看護のための休暇も実施。このうち育児休暇と子どもの看護のための休暇は男性でも取得することが可能だ。こうした整備の拡充により、現在、育児休業からの復帰率は100%となっている。そして介護サポート関連の制度では、まず最大93日まで介護休業の期間を設け、配偶者や父母、子ども、配偶者の父母、その他会社が認めた人への介護に対して申請可能とした。これと合わせて別途時短勤務制度も整えている。○オフィススペースも50%削減ポリコムジャパンにおける、こうしたテレワークを軸とした多様な働き方の実践は、同社の「ダイバーシティ推進戦略」に基づいたものだ。「生産性の向上と業務の効率化、事業継続・リスクマネジメント、経費の削減をきっかけに、テレワーク活用を中心戦略とした柔軟な職場環境の構築を目指すのがダイバーシティ推進戦略です」と藤井氏は説明する。また同戦略に基づきテレワークを推進するための3つの柱として、先に挙げた制度改革と合わせて、インフラ・運用ルールの整備、オフィスの最適化を掲げている。このうち運用ルールとしては、Microsoft Lyncによる労働時間中のプレゼンス表示、Outlook利用でのスケジュール開示、セキュリティに関する社員の意識向上など6項目が必須として定められている。そしてオフィス最適化を象徴するのが、2014年6月9日に移転した東京・東新宿の新オフィスである。新オフィスでは、必要時のみオフィスに出勤する「テレワーク特化型」の仕事環境へとシフトするべく、フリーアドレス型のオフィスとして個々の固定デスクを廃止(技術職などの専門職を除く)。また資料など私物保管用のロッカーを設け、社員のニーズに対応しながら、仕切りのある席やオープンスペースなど用途に合わせて利用できる設計とした。「さまざまなライフステージにいる社員の自由な働き方を支援するために、これまで当社で培われてきたノウハウをベースにしながら新たなオフィス環境を構築しました」(藤井氏)社長室についても、社長が不在の際は会議室として利用可能とするなど、徹底的なオフィススペースの最適化を図った結果、前オフィス比で約50%ものスペースを削減することができた。そうして、顧客やパートナーへのサポートを強化するための「東京カスタマーエクスペリエンスセンター(TCEC)」を同オフィス内に新設することができたという。○テレワークが自然と可能になる技術の提供をポリコムジャパンの代表執行役社長、三ッ森隆司氏は、自社でのテレワークの取り組みについて次のような見解を示す。「われわれ自身が離れた場所にあるPCやモバイルからでもコミュニケーションを行うための技術手段を提供しているわけですが、それがあることで自然とテレワークやモバイルワークが実践可能なのだといった効果や意義を実感することができました。それとともに、テレワークを活用する社員自身のプロフェッショナルな業務遂行と高い意識も、テレワークを成功させるポイントであることも再認識しました」「お客さまを見渡すと、出張旅費の削減など、最初は目に見える効果を動機として当社の製品を導入いただき、その後、効果を実感しながらワークスタイル変革へと広げていくケースが多いようです。自社でテレワークを実践することで、ワークスタイルの部分に拡大していく際のサポートも充実できればと思っています」(藤井氏)今後ポリコムジャパンでは、さまざまな場所で働くことができるワークスタイルを普及していくというミッションのもと、自ら製品を活用し実践しつつ、自然とそうした働き方が浸透していくような展開を目指していくという。
2015年11月05日●日本が抱える課題世間ではマイナンバー制度に関するニュースが多数報道されているが、今年の12月から施行される重要な法律があることも忘れてはいけない。改正労働安全衛生法に基づく、ストレスチェック制度である。従業員50人以上の事業場では、今後年に1回全従業員へストレスチェックを実施し、従業員のストレスの状況について検査を行わなければならない。マイナンバー制度への対応に向けて、業務も費用も企業にとって負担が生じるなか、この法律も重荷に感じている企業も少なくないだろう。しかし、この法律の背景には、日本の経済力を高めることを目的とした政府の考えがある。10月13日、メンタルヘルス関連サービスを展開するアドバンテッジ リスク マネジメントは、ストレスチェック制度に関するセミナーを開催した。当日は同社の代表取締役社長である鳥越慎二氏が講演。当日の講演内容についてお届けしよう。○職場におけるメンタルヘルスの状況警察庁による自殺者数の調査では、総数は減少傾向にあるものの、「被雇用者・勤め人」にあたる労働者の自殺者数は横ばいで推移している。平成26年度では、総数が25,427人に対し、労働者の自殺者数は7,164人で、全体のおよそ28.2%を占める高い割合となっている。自殺の理由はさまざまであるが、「その多くが鬱状態ではないか」と鳥越氏は推測する。ちなみに、交通事故による死亡者数は平成26年度で4,113人となっている。比較すると、労働者の自殺者数は交通事故死者数の1.7倍となっていることがわかる。また、厚生労働省による精神障害などの労災補償の調査では、平成26年度の労災請求件数は1,456件、認定件数は497件、うち自殺件数は99件となっており、いずれの件数も過去最多となっている。従業員がメンタル不調などで休職・退職することによって、実は大きなコストがかかっている。休職前後の周囲の従業員が手伝う残業代や、休職中の本人への手当、周囲の業務調整、事務対応など、さまざまな場面で人件費が発生し、内閣府によると一人の従業員(年収約600万円想定)が6カ月間休職した場合に発生するコストは、422万円にのぼるという。さらに、その従業員が退職し、新たな人材を採用するためのコストは、約180万円(年収×30%で試算)だと言われている。これらの状況を受けて、政府は企業の健康経営の推奨やブラック企業の是正など、さまざまな施策を実施・検討している。●ストレスチェック制度のポイント○ストレスチェック制度の目的は?鳥越氏は、ストレスチェック制度のポイントとして次の3点を挙げた。50名以上の事業場について、医師・保健師などによる全従業員へストレスチェックを実施し、実施した医師・保健師より従業員へ直接チェック結果を返却高ストレス状態かつ申し出を行った従業員への医師による面接指導の実施面接指導の結果に基づき、医師の意見をふまえて必要に応じた就業上の措置これは、法律で定められている基本的なポイントとなる。しかし、鳥越氏も参加していたという法案公布後の審議会では、法律で触れられていない点に対して付け加えを行ったという。鳥越氏は「ストレスチェックを実施するだけでなく、ストレス問題を改善することが重要」とし、さらに3つのポイントについて説明した。まず、「企業の集団分析」である。ストレスチェックの結果を部署ごとに分析し、企業は職場環境改善のために活用するよう求められている。集団分析は努力義務とされているが、鳥越氏は「"努力義務"とは、"努力することが義務"なので、これはほぼ義務ということ。ストレスチェックを行っただけでは、改善されない。改善するためにはストレスチェックの結果を利用し、企業が努力することが必要」と説明した。2つめは、「相談窓口の案内」である。ストレスチェックを行った結果、高ストレス判定を受けた従業員は、その後会社に対して医師による面接指導の申し出を行う必要がある。「高ストレス状態の人が、果たして自分で申し出をするものか?」と鳥越氏は疑問を投じる。そこで、医師面談とは別にカウンセリングなどが受けられるような環境の整備をすることが、推奨されている。3つめは、「労働基準監督署への報告」である。企業はストレスチェックの実施日・チェックを受けた人数・フォロー状況を、労働基準監督署に報告することが義務付けされている。「この報告内容によって規制や取り締まりは行わないとされているが、十分に注意した方がよい。政府はこの報告内容をブラック企業対策の参考にすると考えられる」と鳥越氏は促す。「ストレスチェック義務化の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止が主な目的であって、ストレスチェックをすることが目的ではない。この目的のために、ストレスの原因となる職場環境の改善を行うことが、企業が求められている対応である」(鳥越氏)●ストレスチェック制度で求められる対策○企業と従業員、双方に求められる対策ストレスチェック制度の実施にあたり、企業が行わなければならないこととして、まず、衛生委員会などで調査審議を行い、社内規定を定め、従業員に周知する必要がある。また、実施する医師は誰にするのか、帳票の回収やデータ入力など、ストレスチェック結果を出力するまでの情報を扱う実施事務従事者を誰にするのかなど、体制を決めていく必要もある。鳥越氏は「事業者はストレスチェック制度に対する基本方針を決める必要がある。それによって、対応の仕方が変わってくるからだ」と話す。今回の法令に遵守するレベルで考えるのであれば、ストレスチェックの実施と医師面接の実施を行えばよい。しかし、メンタル不調者の未然予防も考えるのであれば、前出の外部相談窓口の設置についても検討する必要が出てくる。さらに、メンタルヘルス対策にとどまらず、組織改善や活性化をはかり、企業の生産性を向上させようと考えるのであれば、しっかりとした組織分析・改善施策の実行が必要となってくる。また「企業だけでなく、従業員も意識を変える必要がある」と鳥越氏は話す。「政府が推奨するストレスチェックに関する57の質問項目はNIOSH職業性ストレスモデルを参考にしてつくられている。しかし、このモデルにあって、ストレスチェック推奨項目に欠けているのが、『個人的要因』に関するチェックだ。個人の性格などを抜きにしてストレス対策を進めても、効果が出ないケースがある。ストレスは客観的には存在しないもの。個人の受け止め方によってストレスに変わる。従業員も刺激に強くなるために努力する必要がある」(鳥越氏)鳥越氏は、ストレスチェック制度の実施にあたって「自分の会社がどういった対応をするのか、従業員は会社を判断するきっかけになる」と言う。きちんと運用できる体制で、従業員の期待に応える制度運用を行うことが、望まれる。
2015年10月21日日立製作所は、企業などの事業者に対して12月から義務化される「ストレスチェック制度」に基づく業務を支援する「従業員健康管理クラウドサービス/ストレスチェック」を、10月15日から販売開始することを発表した。新サービスは、ストレスチェックの実施や面接指導、ストレスチェック結果の集計・分析など、ストレスチェック制度に基づく一連の業務を支援するクラウドサービス。従業員によるストレスチェックの質問票への回答だけでなく、未回答者の把握や催促、回答結果に基づく面談実施の推奨をクラウド上で行うことができるようになっている。また、従業員が面談希望や検査結果の開示に関する同意の有無を登録することも可能としている。問診項目は厚生労働省が推奨する項目以外の質問を追加できるほか、事業者の情報セキュリティポリシーに合わせてデータの保管場所を変更できるなど、ニーズに応じて柔軟な設定を行うことができるという。さらに、新サービスは企業の定期健診向けの「従業員健康管理クラウドサービス」のオプション機能としても利用することができ、「従業員健康管理クラウドサービス」の基本機能である健診管理・面接管理・就業制限管理の各機能と組み合わせることで、心と体の両面から従業員の健康管理を行うことを可能としている。価格は基本月額費用が10万円~、従量月額費用が一人あたり20円で、いずれも税別価格。初期導入費用が別途必要となる。サービス提供開始時期は12月1日となっている。
2015年10月14日いよいよマイナンバーの通知カードの送付が始まります。また、マイナンバー制度のもうひとつの番号、法人番号の通知、公表も始まり、ここからマイナンバー制度がスタートします。その一方で、内閣府が9月に公表した世論調査では、マイナンバー制度について「内容まで知っていた」と答えた人の割合が43.5%と5割にも満たない現状が明らかになっています。そのほか民間企業などの調査結果では、マイナンバーの取り扱いが必須となる中小企業の取り組みの遅れも明らかになってきており、平成28年1月から利用が開始されるマイナンバー制度がスムーズにスタートできるのか懸念の声もあがっています。今回は、最新の情報を整理、確認してみましょう。○通知カードの送付および個人番号カードの交付申請最新情報整理総務省のお知らせ「個人番号の通知に係るスケジュールについて」によると、マイナンバー通知カードの「お届けの時期」について「概ね10月中旬~11月中を予定」としています。住民票を有するすべての個人(約1億2,800万人)にマイナンバーを付番した後、世帯単位(約5,600万世帯)に簡易書留で送付するわけですが、これだけの数の簡易書留が送付されること自体、前代未聞のことですので、さすがに一時期に集中して送付することは難しく、1カ月以上の時間をかけての送付となってしまいます。また、簡易書留での送付ですので、届け時本人不在の場合は再配達が必要となったり、土日に地区の郵便本局へ引き取りにくる人が殺到したり、受取人不在のまま市区町村まで返送されるものも多数でることが想定されています。返送されたマイナンバーの通知カードは再送付が行われることになっているようですが、住民票を有するすべての個人がマイナンバーを受け取るまでには相当の混乱が起きてしまうことが予想されます。送られてくる通知カードですが、図1のように、マイナンバーの通知カードと個人番号カードの交付申請書が一体となった様式で送られてきます。通知カードは氏名、住所、生年月日、性別の個人4情報とともにマイナンバーが記載されています。顔写真が掲載されていないため身元確認には使用できませんが、番号確認が必要なシーンでは個人番号カードを取得するまで、この通知カードを使用することになりますので、大事に保管しておく必要があります。また、個人番号カードを申請する場合は、この交付申請書書に顔写真を添付して書面で申請するのが基本ですが、パソコンから指定のWebサイトに進み、申請書に記載されている「申請書ID」を入力して申請する方法や、申請書下部のQRコードをスマートフォンで読み取ってWebサイトへ進み申請する方法なども用意されています。○法人番号の通知・公開法人番号の通知・公開のスケジュールも法人番号の付番機関である国税庁より、図2のとおり公表されています。こちらも10月下旬から11月中くらいの期間に通知書が発送されるとともに、国税庁の法人番号公表サイトに法人名称・所在地・法人番号の基本3情報が公表される予定です。法人番号は公表される番号ですから、いつでも入手可能ではありますが、取引先などの法人番号を記載しなければならない書類の提出時期までには、確実に入手できるように段取りだけはつけておく必要があります。○今年中にマイナンバーを収集するために考慮しておくことこの連載では、中小企業のマイナンバー取り扱いの入り口となる従業員などからのマイナンバーの収集を、マイナンバーが送付される10月から11月にかけての期間で行うことを提案してきました。それは、来年の年末調整時期以前にもマイナンバーの利用が必要となるケースもあること、また来年のこの時期に収集しようとすると必ず通知カードを失くした従業員や扶養親族が出てくることが想定されることを考慮した提案でした。先に見たとおり、市区町村によっては送付時期が11月下旬までかかってしまうことや、最初の送付で受け取れず再送付を待たなければならない従業員も出てくることを想定すると、従業員などからの収集に12月までかかることは想定の上で、収集スケジュールを組み直す必要があります。すでに、従業員へのマイナンバー提供依頼の案内や収集したマイナンバーの安全管理措置など必要な準備を整えている場合は、通知カードが手元に届いた従業員から順次収集していくほうが、一斉に収集することにくらべると非効率のようでも実際的な対応方法といえます。また、現時点でマイナンバー制度への対応準備が充分にできていない中小企業の場合は、あわてて従業員などからのマイナンバーの収集を始めるのではなく、マイナンバーの利用分野である税や社会保障の専門家である税理士や社会保険労務士に相談して、まず制度への理解を深めるとともに、自らの企業規模に応じた方法として、これら外部の専門家にマイナンバーの取り扱いも委託する方向で相談していくことが、対応準備の近道となります。そのうえで、信頼できる税理士などにマイナンバーが必要となる源泉徴収票作成業務とあわせてマイナンバーの取り扱いを委託する場合は、税理士事務所と企業との役割分担を決め、企業がうけもつ役割に応じて安全管理措置を講じてから、従業員などからのマイナンバーの収集を開始しても、遅くはないのではないでしょうか。著者略歴中尾健一(なかおけんいち)アカウンティング・サース・ジャパン株式会社取締役1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。
2015年10月13日オービックビジネスコンサルタント(OBC)は9月18日、企業が行う初めてのストレスチェック制度の準備に対応したオールインワンサービス「OMSS+ストレスチェックサービス」を同月24日から同社の販売パートナーを通じて発売すると発表した。同サービスはOBCの業務サービスとして年間利用型で提供し、価格は税別でProfessionalタイプ(実施者・相談センターIT受検/分析)は9万5000円(社員数100名まで、人事奉行所有のOMSSユーザーの場合)~。同サービスは厚生労働省のガイドラインに則ったサービス設計をしており、法令完全準拠。専用導入運用ガイドでは企業に必要な体制構築の手順や準備書式を提供し、IT受検サービスでは「職業性ストレス診断簡易票」をベースに、57問・23問・80問の設定が可能。努力義務となっているストレス状況の組織分析は厚生労働省が提唱する「仕事のストレス判定図」に沿って、企業全体、組織のストレス状態を把握でき、努力義務となっている職場環境改善の指標として利用できる。また、メンタルヘルスに精通した専門医を実施者として提供し、実施者はITによって収集された診断結果を総合的に判断し、高ストレス対象者と面接勧奨などを適切に判定。実施結果に対して、実施者は企業の状況を適切に分析し、改善ポイントやアドバイスをレポート。さらに、利用企業の総合的なサポートするために相談センターを設置し、対応するスタッフは産業保健に精通した事務スタッフ・産業カウンセラー・社会保険労務士などのプロ集団が総合的に対応。相談は体制構築・書面作成・ストレス実施・分析など多岐に渡る内容に対応し、初めての制度対応・ストレスという未経験な内容に対し相談することが可能で従業員からのストレス診断結果に関する直接のお問い合わせに対応する。
2015年09月18日NECは9月16日、社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の開始に伴い、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)から、全国の地方公共団体(7月時点で1743団体)の個人番号カード(ICカード)交付窓口で、本人確認に利用される「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」を受注したことを発表した。同社によると、顔認証システムが全国の地方公共団体において統一的に導入されるのは、今回が初めての事例となるという。本システムは、地方公共団体の窓口において個人番号カードの交付を希望する住民に対し、来庁者と個人番号カードの顔写真を照合、もしくは、来庁者と個人番号カード交付申請書の顔写真を照合するもの。これにより、地方公共団体における個人番号カード交付時のなりすまし対策などに対して有効だとしている。同社によると、採用されたシステムには、同社の顔認証エンジン「NeoFace」を活用しているという。
2015年09月16日NECは9月14日、山梨県甲州市から、社会保障・税番号制度(以下、マイナンバー制度)を扱うすべての住民基本台帳システム端末約160台のセキュリティ強化に向け、顔認証セキュリティソフトウェア「NeoFace Monitor V2」を受注したと発表した。甲州市は2016年1月のマイナンバー制度運用開始に合わせ、同ソフトウェアの利用を開始する予定。「NeoFace Monitor V2」は、顔認証エンジンをベースに、顔認証によるPCログオン、ログオン中の利用者の常時監視を可能とするソフトウェア。端末を複数の職員で共有する場合でも、利用者を個人単位で認証し、いつ誰がアクセスしたという利用履歴が確実に残るため、職員の不正利用への心理的な抑止効果も期待できる。常時監視機能により、端末利用者の離席をすぐに検知して自動で画面をロックするとともに、ログオン中に未登録ユーザーが着席した場合も検知して画面をロックする。これにより、未登録ユーザによる不正利用を確実に防ぐ。
2015年09月15日株価が乱高下する中、上場各社が長期株主確保のために充実させているのが「株主優待制度」だ。だが、これまで株式を保有したことのない人にとっては、株の購入はハードルが高いかもしれない。そこで今回は、投資情報会社のフィスコ 情報配信部 株式アナリストの小林大純氏に、株主優待を受けるための株式購入の方法など、「株主優待制度」の基本についてインタビューした。○「株主優待制度」、利用できる条件とは?――株主優待の基本について、株を持てば受けられるというのはわかるのですが、何株持てばいいのかなど、その辺りから教えていただけますでしょうか。株主優待というのは、上場企業が株主に長期的に株を保有してもらいたいとか、そういった目的のために、自社の商品をプレゼントしたり、あるいはサービスを提供したりといった、文字通り贈呈する仕組みです。受けるためには幾つかの条件があります。1つ目が、1年の決まった時に株式を保有している必要があることです。おおむね、企業には1年のうちで決算期があり、大抵の場合は3月ですが、2月、1月というところもあります。決算の期末であるとか、3月期末の決算企業であれば9月など中間期ですね。多いのは年に1回期末のとき、あるいは期末と中間の年に2回、その時時点の株主さんに株主優待をするというケースです。ですので、株主優待を受けるには、その企業が、いつ時点の株主さんに株主優待するかを確認する必要があります。――なるほど。企業ごとに決まった時点でその企業の株を持っているかどうかが株主優待を受ける第一の条件なんですね。それはどうやって調べればいいのですか?企業のホームページを見ますと、IRサイト、つまり株主向けページに、株主優待のコーナーを設けている企業が多く、「基準日」といいますが、いつ時点で株主である必要があるかということが記載されています。――たとえば、3月期末の会社は、3月31日に持っていればいいということですか。そこが注意点です。初めて株をする人は間違いやすいことなので、ぜひ注意してほしいのですが、3月期末の会社は3月31日時点で株主であることが必要であることが多いのですが、証券会社さんで株を買いますと、発注して即日それが自分のものになるわけではないのです。たとえば31日の3営業日前までに買う必要があると、決済が終了して自分の名義になるのが3営業日後になります。3営業日前が「権利付の最終売買日」となります。権利を取得するためにその日までに買っておく必要があるのです。――最終売買日は、3月31日の3営業日前になるということですね。そうです。その時点で買っておく必要があります。3月末が株主優待の「権利確定日」である場合は、その3営業日前が「権利付の最終売買日」です。具体的にいいますと、今年の3月は、31日が火曜日、この時点で証券会社さんで株を買いますと言ってもだめです。3月27日までに買っておく必要がありました。この3月27日が「権利付の最終売買日」です。企業のホームページを見ると、「権利確定日」は3月末時点の株主様と書いてあったりしますが、これを3月末に買えばいいという誤解をしてしまうと、31日に買っても優待は受けられないのです。――なるほど。「権利付の最終売買日」が重要なんですね。もう一つ注意してほしいのは、保有株数の条件が設定されています。大抵の場合は、売買するための最小単位、「単元」といいますが、100株、1000株の企業が多いです。今は大抵100株ですね。最低の売買単位が100株の企業ですと、100株持っている株主から優待を提供しますよという企業が多くありますが、たまに300株以上の株主とか、500株以上の株主いう条件がある場合もあるので、何株以上からの株主が対象かということを確認する必要があります。また、100株以上が対象の企業でも、500株以上の株主さんになると贈呈品が倍になるとか、段階的に優待のボリュームがアップするケースが多くあるので、これも確認しておきたい点です。――よく条件を確認しておく必要がありますね。株主優待を受けるためには1単元以上という企業が多いのでしょうか。そうですね。そもそも、株式投資は1単元以上から可能ですので、最低投資金額以上であれば優待対象という企業さんが多いです。まれに、「1単元」が100株でも、500株以上でないと株主優待の対象にならないというような企業もあるので気をつけたほうがいいですね。○企業は何のために株主優待をやっている?――最初の話に戻るかもしれませんが、企業は何のために株主優待をやっているのでしょう?自社の商品を提供してファンになっていただいて、直接株を保有してもらう。BtoCの企業ですと、優良顧客にもなり得るわけです。そういった意味で、長期株主を定着させたり、消費者としてのターゲットとして自社の商品のファンになってもらう、そういう狙いで株主優待を提供している企業が多いですね。また、最近出てきた動きですが、保有している期間によって優待内容に差をつける企業が出てきています。たとえば、100株以上を3年以上保有していると、今までの優待が1000円分だったのが2000円分になります、など。長く持っている株主さんに手厚くする傾向が最近徐々に出てきていまして、これも注目すべき動きです。――それはどういった理由からですか。ファンになってもらうことや、株価の安定でしょうか。そうですね。株価の安定や、安定株主をつくるということですね。企業同士の株の持合いの解消ということもあり、個人投資家に安定株主になってもらおうと。――なぜ持合いの解消が必要なのでしょう。「コーポレートガバナンス・コード」で、極力持ち合いはやめましょう、やる場合は説明しましょう、という制限がついてきました。○株主優待のリスクはある?――中国の問題で株が下がったりしています。個人の投資家にとっての株主優待のメリットは、商品・サービスが受けられるということだと思いますが、リスクはどうでしょうか。当然、株式ですので、投資した原資が100%返ってくるというわけではなく、場合によっては100万円投資したものが50万円になってしまうとか、ほとんどないですが、倒産してゼロ円になってしまうとか、そういうケースもあります。ですので、優待の商品の中身も大切ですが、その企業がどういったビジョンで経営していて、どういった成長戦略を持っているのかとか、そういった見極めも大事になってくるのです。――企業がどうなるか予測するのは個人投資家にとって、経済の勉強にもなると思いますが、どのあたりを見ればいいですか。ファンドマネージャーでもなく、アナリストでもなくという場合に、企業の株を買う買わないという、どの辺に判断の基準はありますか。1つは業績のトレンドです。決算短信、東証の適時開示システム(TDnet)など、企業の業績を開示する資料はたくさんありますので、そういったところをごらんになっていただいたらいいと思います。赤字か黒字かだけではなく、直近2期、3期ぐらいの利益の増勢、トレンドが出ているかとか、そういったところは簡単に見ることができると思います。また、財務情報を見るのは一般の投資家には難しいと思いますが、企業の決算を監査する監査法人が、企業が継続していくことに対して注意すべきところがあるのかどうか意見を付している、継続疑義の注記というのがあります。これは、企業が継続していく際に、たとえば何期赤字になっているので、このまま赤字が続くと資本を食いつぶして危ないとか、負債が増えていて危ないとか、注意点があれば投資家さんに知らしめるための注記を付しています。継続疑義の注記がついている、ついていないとかを見るだけでも参考になります。短信自体に継続疑義の注記が付されているのですが、たとえばネット証券会社のWebサイトでは、継続疑義の注記がついている企業の一覧が載っているケースが多いです。投資情報の一環としてそういうリストがあったりします。投資したいと思っている企業がそこに該当するかどうかのチェックは簡単にできます。○「配当」も考慮すべき?――株式を持っていると配当もあるかと思うのですが、株主優待目的で株を購入する場合でも、配当は気にするべきですか。配当も株主への還元という意味で、個人投資家にメリットがあります。配当は機関投資家も含めてメリットがありますが、株主優待は機関投資家にはあまり人気がありません。機関投資家は大量のロットで株を持っていても、優待が要らない人たちですので。個人の投資家さんにしてみれば、投資していることで得られるリターン・メリットの考え方として、優待と配当を合わせた総還元利回りというものがあります。たとえば100万円投資したら3万円の配当がもらえて、同時に優待が1万円分もらえるとします。100万円の投資に対して1年間で4万円、4%のリターンが得られるわけです。両方合わせてどのくらいのリターンが得られるのかという、総還元利回りという考え方で投資先を検討している投資家も増えています。――配当額はどうやってわかるのですか。企業さんの決算短信に記載されています。1株あたりで記載されています。100株持っていたら×100すればいいのです。自分がいくら投資したかによって、何%のリターンかというのがわかります。――優待もそうですが、配当もうれしいですね。個人投資家がひかれるのはワクワク感ですので、配当も考慮することで、その企業がどんなことをやっているのか理解する助けになると思います。○おすすめの銘柄は?――小林さんから見ておすすめの銘柄はありますか。外食系だと、食事券、割引券がもらえることが多いですが、注目して見ているのは、アスラポートダイニングです。牛角など多業態でレストランを経営しています。ダイヤモンドダイニングも多業態で展開しています。最近、多業態で展開している企業も多いので、優待の使い道がいろいろあるので注目しています。――なるほど。外食産業にそういう傾向があるのですね。注意点の1つになってくると思うのですが、外食企業などサービス系の企業全般にいえると思うのですが、近くに使える店舗があるかどうか確認していただきたいですね。首都圏で展開している企業で、大阪在住の投資家は店舗利用券をもらっても使えないということになりますので、実際に使える店舗が近くにあるかどうかが大事になってきます。一方、そういう株主に配慮しようということで、最近、サービス系とか外食系含めて、自社店舗での利用券または商品を発送しますという企業も増えてきている。そうすると、使える店舗が近くになくても、その企業の商品を取り寄せて楽しむことができます。――外食系以外におすすめの企業はありますか。皆さんのご趣味だとか、それぞれ違ってくると思うのですが、会社のサービスなどが目に見えるというのが株主優待を受ける楽しみでもありますので、サービス系がいいと思います。たとえば、カラオケをよくされるのであればシダックスですと利用券がもらえます。また、ネットカフェをよく利用する人にとっては、「自遊空間」を展開しているランシステムもいいかもしれません。身近でこういうサービスがいいなと気づいたときに、そこが上場されている企業であれば優待がないかと調べてみるのも楽しみの一つだと思います。自分の普段の生活から探してみるということです。――あらためて自分の生活を振返ってみるのもいいかもしれませんね。最近検索エンジンも進化していまして、FISCOウェブでもキーワード検索といって、「自遊空間」と入れるとランシステムが出てきます。弊社の投資情報アプリである「FISCOアプリ」は、投資家向けに提供させていただいているのですが、こちらでもキーワード検索ができますので、たとえば店名と会社名が違うというケースはあるのですが、店名検索していただければ、運営されている会社にたどり着くということはできます。○手元にいくらあれば、株主優待目的の投資を行える?――手元にいくらぐらいあれば、株主優待目的の投資を行えますか?最近は東証の指導がありまして、投資のために必要な最小単元を広く投資家に持ってもらうために引き下げましょうという動きがありまして、最小限の投資単位で持とうとすると安くてすむようになってきています。単元の株数が少ない会社ですと数万円から投資できますし、多いところでも数十万円、50万円未満にしましょうという指導されています。この範囲内に収まる企業さんが大抵です。――50万円未満でできるということですね。ボーナス1回分ぐらいでしょうか。10万円未満で買える株特集なども雑誌で組まれていますので、あきらめずに探せば、余裕資金が10万未満しかないという人でも投資できます。弊社でも特集をやっています。――フィスコさんで特集を組むというのはホームページ上でということですか。先ほどのFISCOアプリや、アプリがPCのWeb画面でも利用できる「FISCOウェブ」でも見ることができます。――「株主優待制度」を利用するだけで、いろいろな知識が身につきそうですね。本日はありがとうございました。
2015年09月15日すでに報じられている通り、2016年(平成28年)1月から「マイナンバー制度」がスタートします。正式名称は、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年5月31日法律第27号、通称「番号法」)に基づいた「社会保障・税番号制度」。社会保障と税に関する行政手続きで利用するため、日本に住民票を持つ個人全員に対し、12桁の「個人番号」が付与されるというものです。結果として各個人の所得を正確に把握できるようになり、公平な税負担、社会保障の的確な提供などの効果が期待できるとか。また、行政機関・自治体等のさまざまな確認作業の負担も軽減されることになるといいます。とはいえ、私たちにとっては不安なことだらけ。そこで基礎知識を得るために読んでおきたいのが、『これ1冊でできるわかる 小さな会社のマイナンバー制度やるべきこと、気をつけること』(村阪浩司著、あさ出版)です。「Part 1 マイナンバー制度の基本を押さえる」から、「これだけは知っておきたいキーワード4つ」に焦点を当ててみます。■1:「個人番号」先に触れたように、マイナンバー制度においては住民票を持つ全国民に12桁の個人番号が指定されることになります。そして原則的に、一度指定された個人番号は生涯変わらないのだといいます。間もなく2015年10月以降に通知カードが配布され、さらに希望者には2016年1月以降、個人番号カードが交付されるそうです。ちなみにこれは写真つきなので、申請者の個人番号の確認だけでなく、身元確認にも有効。■2:「法人番号」法人番号とは、「国の機関、地方公共団体、会社法その他の法令の規定により設立の登記をした法人」、あるいは労働組合やマンションの管理組合などの「上記以外の法人又は人格のない社団等であって、法人税・消費税の申告納税義務または給与等に係る所得税の源泉徴収義務を有することとなる団体」に指定されるもの。難しい表現ですが、つまりは各種法人や団体のための番号です。■3:「特定個人情報」特定個人情報とは、個人番号や、「個人番号に対応する符号」を含む個人情報のこと。ちなみに「個人番号に対応する符号」というのは、個人番号に対応し、個人番号に代わって用いられる番号や記号などで、しかも住民票コード以外のものを指すのだといいます。■4:「特定個人情報ファイル」特定個人情報ファイルは、「個人番号や個人番号に対応する符号」をその内容に含む個人情報ファイル。民間の企業の場合は、個人情報保護法に定める「個人情報データベース等」と同じ意味だそうです。*これが、マイナンバー制度の基本的な部分。これを踏まえたうえで、会社の仕事がどう変わるのかを、本書ではわかりやすく解説しています。なんらかのかたちで自分自身にも関わってくる問題ではあるので、本書でしっかりと知識をつけておきたいところです。(文/印南敦史)【参考】※村阪浩司(2015)『これ1冊でできるわかる 小さな会社のマイナンバー制度やるべきこと、気をつけること』あさ出版
2015年09月07日アライドアーキテクツは9月2日、SNSプロモーション総合支援プラットフォーム「モニプラ」において、企業が運営する公式YouTubeチャンネルのファン獲得を支援するサービスの提供を開始した。導入第一弾として、森永製菓の「キョロちゃんのムービーを見てチョコボールを当てよう! キャンペーン」を同日よりスタートしている。「モニプラ」は、SNSを活用したキャンペーンを基点に、Webプロモーションの成果向上をワンストップで支援するASPサービス。FacebookやTwitter、Instagramなど国内主要SNSのユーザーを対象に、写真コンテストやユーザー投票、アンケート調査などのWebキャンペーンを安価かつ容易に開催することができる。新サービスは、Webキャンペーンという間口の広いプロモーション施策と企業の「公式チャンネル」を掛け合わせることで、幅広いターゲットに向けて効率良く動画コンテンツを訴求することが可能となる。また、不特定多数のWebユーザーではなく、キャンペーンの応募ユーザー(=もとよりサービスに興味・関心を持つ消費者)を公式チャンネルへ呼び込むため、より高いプロモーション効果が期待できるという。さらに、応募ユーザーの情報はモニプラのデータベースに蓄積されるため、動画視聴後の商品・サービスに対する好意度の変化の計測など、動画を基点とした長期的なマーケティング施策に繋げることも可能だ。
2015年09月03日