『トイ・ストーリー』のウッディとバズから始まった友情の物語を受け継ぐ、ディズニー/ピクサーの最新作『アーロと少年』。このほど、映画本編では明かされない、少年スポットの秘められた過去を描いたピクサー公認 「アーロと少年“エピソード0”」が日本のためにだけに初公開。映画通としても知られるお笑い芸人「スピードワゴン」の小沢一敬が、“エピソード0”を朗読する特別映像が解禁となった。本作は、臆病で怖がりのひとりぼっちの恐竜アーロと、怖いもの知らずの少年スポットの友情と絆を描いた冒険ストーリー。劇中では、恐竜アーロとは対照的に、小さいけれど勇敢で、過酷な大自然の中で1人逞しく生き抜いてきた少年スポットの姿が描かれている。種族も大きさも違い、性格も正反対の2人の唯一の共通点は“ひとりぼっち”。しかし、冒険の中でアーロを守ろうと強くふるまうスポットにも、本当は知られざる過去があった――。今回解禁された“エピソード0”では、スポットはなぜひとりぼっちになったのか、そして、アートと出会うまで過酷な大自然の中でいかに生きて抜いてきたのか、その理由が明かされている。本編以前のスポットの過去を描いたストーリーの制作理由について、本作の監督ピーター・ソーンは「私は日本の大ファンなので、実際、日本文化からの刺激を受けなかったら映画の製作に携わっていなかったと思います。だから『アーロと少年』の日本公開にあたり、何か特別なことをしたい、日本の観客の皆さんに、何か新しいものをお届けしたいと思い、本編では明かされていない、少年スポットの生い立ちを“エピソード0”としてお届けすることにしました」とコメント、日本のファンのために、サプライズをしたかったことを明かした。さらにその物語については、「映画本編では明かされていない物語で、とても感動的で心を動かされるものになっています。スポットは僕たちのお気に入りのキャラクターです。彼を心から愛しているから、大好きな日本の皆さんに彼のことについてもっと知ってほしいと思ったのです」と、その思いを語っている。そんな“エピソード0”の特別なストーリー開発に関わったのが、本編のストーリー・スーパーバイザ―を務めたケルシー・マン。この物語を知れば、本編でアーロとスポットという“ひとりぼっち”同士の2人が共鳴していく姿に、より深く感動できるはずだ。また今回、小沢さんは、ディズニー/ピクサーが贈るオリジナル・ストーリーの読み手として大抜擢。感動屋で独特な感性を持っている小沢さんは、まさに少年スポットの“ひとりぼっち”の寂しさに共感し「何度も読んでいるうちに泣きそうになりました。声の仕事を避けてきたボクだけど、スポットのように洞窟から出て成長しなければいけないと思った」と明かし、自身もこの朗読の体験を経て苦手だったことを乗り越え、スポットのように成長できたと告白。1人でも多くの人に聞いてほしいと意気込みを寄せている。『アーロと少年』は3月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年03月11日隕石が地球をスルーして、恐竜たちが絶滅の逃れた世界を舞台に、臆病な恐竜と怖いもの知らずの人間の少年が大冒険を繰り広げるディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』で、長編監督デビューを飾ったピーター・ソーン監督が来日し、インタビューに応じた。体は大きいのに、臆病で甘えん坊な草食恐竜のアーロと、小さな体に勇敢さを宿し、大自然を生き抜く人間の少年スポット。何もかも正反対な二人が助け合いながら、次々と襲いかかるピンチを乗り越え、友情を育んでいく。そんな本作には2つの大きな見どころがある。実写のようなリアルさを追求し、大自然の美しさと厳しさを描く映像。そして、恐竜と人間が言葉の壁を超えて、真の“バディ”として心を通わせていく感動のストーリーだ。「アーロとスポットにとって、大自然は常に死と隣り合わせの危険な世界。だからこそ、彼らのサバイバルに真実味を持たせるために、リアリティには徹底的にこだわったよ。アメリカ北西部を中心に、リサーチにも行った。美しい景色を楽しんだのは、最初だけ。途中で足を痛めたり、川に落ちたスタッフもいたよ(笑)。冒険を通して主人公が成長する映画では、必ず“ラスボス”が登場するけど、この作品の場合、それは母なる自然なんだ」。恐竜たちが独自の進化を遂げて、言語や文明を手にした一方、進化の途中にいる人類はまだ言葉を話せない。つまり、アーロとスポットは直接言葉を交わすことができないのだ。「僕はニューヨーク育ちだけど、両親は韓国人。母は英語が堪能ではなかったけど、映画館でディズニーの『ダンボ』を見て、周りのお客さんと一緒に感動の涙を流していた。言葉を超えて、人を感動させることができるんだと知った経験が、この映画に生きているんだ」。2000年、ピクサー・アニメーション・スタジオに入社したソーン監督は、『Mr.インクレディブル』でアート、ストーリー、アニメーションの各部門を担当し、『ウォーリー』ではストーリー・アーティストを担当。『カールじいさんの空飛ぶ家』と同時上映された短編映画『晴れ ときどき くもり』で初めて監督を任され、本作で長編アニメーション監督デビュー。『カールじいさんの空飛ぶ家』に登場する少年ラッセルのモデルとしても知られる。インタビューに同席した本作のプロデューサー、デニス・リームが「とても感情豊かで、優しいハートの持ち主。常に冒険心を忘れない姿勢は、ジョン・ラセターにも通じるわ。何より、スタッフに対して感謝を忘れず、愛情深い敬意を抱いている。さまざまな分野を経験し、監督になった経歴もピクサーの中では珍しい」とソーン監督をたたえると、本人は「僕が秀でているのは、スタジオで一番太っている監督ってことかな」と思わず照れ笑い。今年でピクサー・アニメーション・スタジオ創設30周年。日本では本作に加えて、人気作の続編『ファインディング・ドリー』も公開される、まさにピクサー・イヤーだ。「初めて製作に関わった作品が『ファインディング・ニモ』だから、新作はとっても楽しみ。それに、いまもスタジオでは新たな物語とキャラクターに命が吹き込まれようとしている。ピクサーならではのブレない姿勢が、素晴らしい作品を生み出し続けるはずだよ」(ソーン監督)。一方、リーム氏は「大切なのは、ピーターのような次世代の才能を育てて、仲間として支えること」とプロデューサーの視点で、スタジオの未来に期待を寄せた。草食恐竜たちが言葉を話し、畑を耕すというユニークな“進化”を遂げている設定も見どころの『アーロと少年』は、次世代監督の活躍を予感させるとともに“次の30年”に向けたピクサー・アニメーション・スタジオの進化を示す作品。アーロの足あと同様、大きな一歩なのだ。(photo / text:Ryo Uchida)
2016年03月10日ディズニー/ピクサーの最新作『アーロと少年』が今週末から公開になる前に、本作の本編映像の一部が公開になった。弱虫の恐竜アーロと、ひとりぼっちの少年スポットが心を通わせる感動的なシーンだ。その他の画像/感動の本編映像本作は巨大な隕石が地球に衝突することなく、恐竜と人間が共存している世界が舞台で、主人公の恐竜アーロは大好きな父親と優しい母親、兄弟たちと暮らしていたが、不慮の事故で父を失い、さらには激しい川に流されて自分も迷子になってしまう。自分の家に帰る方法もわからずに途方に暮れていたアーロが出会うのが、言葉が通じない人間の少年スポットだ。このほど公開になったのは、そんなふたりが夜に川べりで“家族”について語り合うシーン。ふたりは言葉が通じないが、アーロとスポットは木の枝を使って相手に自分の家族について伝え、さらにそれぞれが心に深い悲しみを抱えていることがわかる。ピクサーは単に美しいCGをつくるだけでなく、キャラクターの表情、演技、カメラ位置を考え抜くことで知られているが、このほど公開された映像は、種族も、大きさも違うアーロとスポットが心の距離を縮め、絆が深めていく過程が“言葉”を使わずに見事に表現されている。本作は大昔の地球を舞台にした大冒険も描かれているが、アーロとスポットの友情、そしてふたりが成長を遂げるために下す“決断”が映画の中心に据えられており、大人の観客の心に響く内容になっている。『アーロと少年』3月12日(土)全国ロードショー
2016年03月09日弱虫の恐竜アーロと怖いもの知らずの少年スポットの友情と冒険を描いたディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』(3月12日公開)には、『スター・ウォーズ』をはじめとする実写大作の技術が生かされているという。今作のプロデューサーであるデニス・リームは、『ハリー・ポッターと賢者の石』や『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』など、多くの実写大作を手掛けてきた人物。アメリカ・サンフランシスコのピクサー・アニメーション・スタジオを訪れ、話を聞いたところ、今回の作品において「実写映画で培った技術的経験はとても役立った」と語ってくれた。――まずはじめに、今作におけるプロデューサーとしての仕事を教えてください。基本的に、ピート(ピーター・ソーン監督)と私はパートナーなの。私は、予算やスケジュール、スタッフ、キャスティング、作曲家、全体の財政的なスケジュールや、映画の資金の部分を担当していますが、自分の仕事を特定のものとして見てはいません。私の仕事は、みんなができるだけ最高の映画を作れるように、彼らが必要とするものを入手する助けをすることだと思っています。――これまで『ハリー・ポッターと賢者の石』、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』、『ミッション:インポッシブル3』など、実写の大作をたくさん手掛けられていますが、アニメーション映画にその経験に生かされていますか?『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』では、役者以外のすべてのものをクリエイトしました。(監督の)ジョージ・ルーカスのアプローチは、すべてをコンピュータで作るということ。私の実写映画の経験は、エフェクトの仕事の技術面に関わることが多かったかったわ。そして、それらの経験は、アニメーションにも生かされています。――今回の『アーロと少年』においても生かされましたか?この作品は映像の美しさが重要な映画だったから、私の経験は役立ちました。ピクサーの標準以上に多くのビジュアル・エフェクトがあったんです。たくさんの複雑な水のショットがあり、容積のある雲もあった。だから、実写映画で培った技術的経験はとても役立ちました。また、ピートがストーリー作りをしている時に、彼をリアルな世界に連れ出したのは、価値あることだったわ。彼は、ワイオミング州に行って、自然の中にいるのがどういうことか、感覚的な経験を持つことができました。私たちは最終的にそういうものを作らないといけなかったんです。おそらく、私がよく撮影現場にいた経験が助けになったと思います。特にカナダの荒野でね。――今作は、言葉を持つ恐竜と、言葉を持たない少年という、とてもユニークな映画で、会話もとても少なく珍しい作品だと思います。そこに込めたメッセージを教えてください。ピートと私にとって、映画が感情的に本物だと感じられるようにすることはとても重要でした。親を失うことや恐れといったシリアスなトピックを扱っているので、真実だと感じられないといけなかったんです。人は、何かを見ている時、それが信じられるものかどうかわかるものよ。観客には、本物らしさを感じてほしかったんです。また、ピートはいつも、キャラクターが成長することを信じてほしいと考えていて、今作では、アーロが成長することを信じられるように一生懸命努力したと思います。この映画に関わっているほとんどの人にとっても、セリフが少ない映画をやっているということはとても刺激的でした。なぜなら、最近私たちが見るアニメーションは、あまりに多くのセリフがあるから。私たちにはそれは時にはノイズのように感じるんです。だから、静かで、自然を聞くような作品を作れるのはうれしいことだったんです。アメリカにはそういう映画はないんです。――日本の男の子も恐竜は大好きですが、もしかしたら女の子は好きじゃないという人もいるかもしれません。そういう子には、どのようにこの映画を薦めますか?私が一番好きなキャラクターの一つは、Tレックス家族のおてんばな姉・ラムジーなの。見た目は怖いけど同情心のある、すばらしいキャラクターです。それに、みんながスポット(少年)に恋をしてしまうと思うわ。彼は、この映画の中で、ある意味、人気をさらったと思います。きっとだれもがスポットを大好きになると思うわ。あの演技はすばらしいし、彼はとても魅力的。だから、日本の女の子たちに、スポットを好きになってほしいです。■プロフィールデニス・リームアメリカ・カリフォルニア州出身。ILM(インダストリアル・ライト&マジック)に13年間在籍し、『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)や『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(05)、『ミッション:インポッシブル3』(06)など多くのヒット作にたずさわる。06年、『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)のアソシエイト・プロデューサーとしてピクサー・アニメーション・スタジオに入社。『カーズ2』(11)で製作を担当し、『アーロと少年』がピクサーで2作目のプロデュース作品となる。(C) 2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2016年03月07日ディズニー/ピクサーがスタジオ設立30周年の記念すべき年に放つ、恐竜と少年の冒険と友情を描く最新作『アーロと少年』。このほど、3月12日(土)の公開を前に、主人公の恐竜アーロの生まれたての愛らしい姿を映し出した、思わず“守ってあげたくなる”本編映像が解禁となった。“もしも隕石が地球に衝突せず、恐竜が絶滅していなかったら?”という世界観で描かれる本作の主人公は、3姉弟の末っ子で、父親がいないと何もできない弱虫で甘えん坊の恐竜・アーロ。家族と離ればなれになってしまい、見知らぬ土地でひとりぼっちになってしまった彼を助けてくれたのは、体は小さいのに勇敢な人間の少年スポットだった。言葉も通じず、何もかも正反対な2人の共通点は、どちらも“ひとりぼっち”。いつまでも一緒にいられると思った2人だったが、運命は彼らを引き裂こうとしていた…。今回解禁された映像は、アーロがたまごから生まれる瞬間をとらえた、可愛すぎる誕生シーン。最後に1つ残ったたまごはとても大きく、パパは「きっと大きな子だぞ」と期待を寄せる。しかし中にいたのは、とても小さな赤ちゃん恐竜。何かに怯えるように震えるその子に、パパは「はじめましてアーロ。出ておいで」と優しく声をかける。愛情たっぷりの両親と、元気な姉弟のもとに迎えられた“ベビー・アーロ”のけなげで愛らしい様子は、誰しも守ってあげたくなってしまうはず。これまでもピクサー作品といえば、『モンスターズ・ユニバーシティ』のブカブカの帽子を被った“ベビー・マイク”、『Mr.インクレディブル』に登場するスーパーパワーを持つ末っ子“ジャック・ジャック”など、かわいい“ベビー・キャラクター”たちの登場が話題を集めてきたが、本作の“ベビー・アーロ”のキュートさはそれらを上回る愛らしさ!よちよち歩きで転んでしまう姿は胸キュンもので母性本能をくすぐられ、思わず応援してしまうのと同時に、これからアーロの前に立ちはだかる、自然の脅威や冒険を予感させてもいる。本作のピーター・ソーン監督は、アーロの怖がりな性格について「僕は子どものころからいつも何かを恐れていた。子どものころ、友達に絵を見せることすら怖かったし、大人になっても人生のいろんな局面で、怖さゆえに躊躇することばかりだったんだ」と、自らの実体験が元になっていることを明かす。しかし、本作の製作途中で2人の子どもの父となり、親として子どもへの“愛”を知り、怖くても愛があれば乗り越えられることを実感したという。そんな自らの経験を重ね「アーロも様々な不安や恐怖と直面するけれど、スポットからの愛や、家族への愛があるから、それに立ち向かえるんだ」と監督は語っている。恐竜と人間という種族の壁を乗り越え、冒険の中で固い絆で結ばれるアーロとスポット。ありえないコンビの2人は、果たしてずっと一緒にいられるのか?新しい世界に一歩踏み出そうとするすべての人に、勇気とエールを贈る本作の魅力が詰まった、たまらなくキュートな“ベビー・アーロ”の誕生を、まずはこちらの映像からご覧あれ。『アーロと少年』は3月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年02月27日寒い日々が続き、ついつい消極的になっていませんか? アクティブに動くことが億劫になるとなんとなく体が固くなって、気持ちも停滞したり、お肌も心も乾燥してしまいがち。どんな美人でも表情がとぼしく、カサカサしていては魅力半減! 心に栄養を、それもとびっきりのカンフル剤を与えて、心身に浴びる感動のシャワーでうるおいを甦らせましょう。愛と官能に効く特効薬の映画を3本ご紹介します。ドキドキとワクワクで、今まで自分でも気づいていなかった「うるおいスポット」を刺激されるかもしれませんよ。「レッド・バイオリン」の波乱に満ちた運命に心がヒリヒリする▼「レッド・バイオリン」監督:フランソワ・ジラール出演:サミュエル・L・ジャクソン, グレタ・スカッキ, ジェイソン・フレミング1681年にイタリアの名工ブソッティ(カルロ・チェッキ)が製作したレッド・バイオリンという名器がたどる歴史と、それが出品されるモントリオールのオークション会場の現代が交互に描かれます。生まれてくる息子のために心血を注いで作ったのに、出産時に、妻子は亡くなってしまいます。なぜ赤いのか? 誕生からして秘密めいたレッド・バイオリンが数奇な運命に操られ、伝説の名器に魅せられた人々は翻弄されていきます。オーストリアの修道院に併設された孤児院で、神童のテクニックを持つ少年が見出され、この楽器でウィーンの宮殿でのオーディションを受けたり、海を越えて英国のバイオリニスト・作曲家のポープ(ジェイソン・フレミング)の手に渡り、彼が演奏しながら恋人と愛し合い、「君の美しさが僕の奥から音楽を呼び起こす」と霊感を受けたり、文化大革命時の中国では、「西洋主義、打倒!」と、無残にも紅衛兵に焼かれてしまったり…。オークションには、修道層が電話で参加するほか、ポープ財団の学芸員、著名なバイオリニスト、中国人夫婦、鑑定士モリッツ(サミュエル・ジャクソン)らが参加。「これに出会えるとは! まさに究極の芸術品だ。“科学と美”の完全なる結婚が生み出した傑作」と感嘆するモリッツは、DNAテストなど現代の修復技術も駆使して挑みますが…。4世紀にわたって描かれる美しく壮大なミステリーロマン。熱いドキドキが止まりません。 「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」ほどの恋愛を他に知らない▼「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」監督:マドンナ出演:アビー・コーニッシュ, アンドレア・ライズブロー, ジェームズ・ダーシー1936年、アメリカ人で40歳のウォリスは、ロンドンの友人宅のパーティーで出会った英国王エドワード8世と恋に落ち、再婚した夫がいる身で、パリや南仏でも逢瀬を重ねます。ことあるごとにサプライズで宝石を贈られ、王の誕生パーティーでは「恋ゆえに世界が失われても、誕生日おめでとう」というカードと、逆にプレゼントまで。そのサインは常に、WE(ウォリスとエドワード)でした。翌年、彼は王位を捨てて彼女と結婚。二人はウィンザー公夫妻となりますが、この恋は“20世紀最大のスキャンダル”と呼ばれました。この実話をもとにマドンナが映画化。オークション会社サザビーを結婚退社し、子作りに励みたいのに、医師の夫はかまってくれないウォリー(アビー・コーニッシュ)という現代女性が、ウィンザー公夫妻の遺品が展示された元職場のオークション会場で、故人であるはずのウォリスと出会います。めくるめく幻想の中でウォリスと交わっていくサイドストーリーが交互に描かれるのは、歴史的なヒロインを身近に感じてほしいと願う、マドンナの粋なはからいでしょう。英国王室を震撼させたロイヤル・スキャンダルに、“ヤンキーの売女”とまで呼ばれたウォリス。夫とうまくいかず「ウォリスは全世界を敵に回しても逃げなかった。なぜ?」と悩むウォリーの前に、突然ウォリスが現れます。「私、美しいと言われたことないの。女性が最大限に利用するのが“魅力”よ。私の武器は着こなしだった」と語り始めて…。時に実写フィルムが混じるのですが、実際のウォリスの装いは、個性的ながらエレガントの一言。エドワード(ジェームズ・ダーシー)の視線は常に彼女に釘づけでした。アメリカ人らしく自分の意見を自由に言い、ウイットに富み、もの真似やダンスが得意なところも彼を虜にしたとか。ウォリスの美意識が体現された、インテリア小物や宝飾品が並ぶオークション会場のシーンはため息もの。“美意識のレッスン”にもなる映画です。 「真珠の耳飾りの少女」の笑わない禁欲的な佇まいがエロティックすぎる▼「真珠の耳飾りの少女」監督:ピーター・ウェーバー出演:スカーレット・ヨハンソン, コリン・ファース, キリアン・マーフィ1665年、オランダの画家・フェルメール(コリン・ファース)の家で、メイド見習いとして働き始めた少女グリート(スカーレット・ヨハンソン)は、アトリエの掃除をするうちに、「これ、どう思う?」「色が合いません」と、次第に独自の感性を発揮し、やがて彼のモデルを務めることに。彼の妻は7人目の子を妊娠中で、夫と彼女の仲を疑うのですが…。17世紀のデルフトの街並みが見事に再現され、どのシーンもまさに絵になる美しさ。同時に、絵そのままのポーズで立つモデルたちに、名画の誕生を目撃する歓びも加わって、ワクワクしっぱなし。メイドは、頭を頭巾で覆って髪を見せなかった時代ですが、フェルメールに頼まれて頭巾を取り、豊かな髪を下ろすグリートのセクシーなこと。真珠の耳飾りをつけるため耳にピアスを開けられ、彼女の頬を一滴の涙がつたうシーンは圧巻です。「少しだけ口を開けて」「唇を舐めて」というフェルメールの要求に応えていく、いつも無口でほとんど笑わない禁欲的なグリートが、とんでもなくエロティックに見えてきます。「心まで描くの?」と彼女が驚嘆した絵には、他の画家には作れない、ラピスラズリを原料としたウルトラマリン色のターバンが描かれていました。真珠の耳飾りは実は妻のもの。それを知った妻は半狂乱で、ナイフを手に絵に飛びかかっていくのですが…。一枚の名画に秘められた至高の愛の物語。映画は基本、だまし絵だと思うのですけれど、その魅力が最大級に発揮された映画です。言葉では表せない濃密な官能に溢れていて、2004年の作品ですが、久しぶりに観たら興奮して寝付けなくなってしまいました(笑)。お薦めです。・ 「レッド・バイオリン」 ・ 「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」 ・ 「真珠の耳飾りの少女」
2016年02月20日あなたの周りにもいませんか? フツーにしているとカッコいいのに、お人好しだったり気弱だったり不器用だったり、そっちのキャラのほうが目立っているため、イケメン度が薄まってしまっている男性。自分がカッコいいとは思いもよらず、そのキャラゆえに、いろいろやらかしてくれます。せっかくイケメンなのにもったいない。でも、憎めない。そんな印象的なキャラクターが主人公の映画を観て、思わずクスクス笑っちゃってください。いえ、時にはゲラゲラ笑ってしまうかも。“困ったちゃん”な要素もありつつ、愛すべき魅力に溢れた彼らの映画は、私たちをほっこり和ませてくれるでしょう。心がしっとり潤う、おすすめの3本をご紹介します。高良健吾演じるイノセントな「横道世之介」に温かな幸福感で包まれる▼横道世之介監督:沖田修一出演:高良健吾、吉高由里子、池松壮亮1987年、長崎県の港町から大学入学のために上京してきた世之介(高良健吾)は、真っ直ぐで、空気が読めなくて、頼まれたら嫌と言えないお人好しキャラ。同級生の倉持一平(池松壮亮)とサンバサークルに入って、太陽の塔みたいなコスプレで踊ったり、お譲様育ちの与謝野祥子(吉高由里子)に好かれたり、年上の女性、片瀬千春(伊藤歩)に頼まれて、男性との別れ話に弟として同席させられドキドキしたり、ゲイの同級生、加藤雄介(綾野剛)とつるんだり…。みんなの人気者になっていきます。スキーで転んで入院した祥子をお見舞いに行き、恐縮する彼女に「心配させてよ。心配しちゃうのが仕事っていうか…」とねぎらう人の好さ。夏は故郷の海辺で、冬は雪の降るクリスマス、下宿の前の庭で、世之介は祥子に「キスしていい? じゃ、ちょっと失礼して…」とキス。そんなこと聞く男って最低! と普段なら思うのですが、嫌味のなさはさすがイケメン。かっこいいのにもったいない。でも、空気の読めなさがいじらしい。こんなストーリーが16年後、友人たちが青春時代を回想するシーンとして描かれていくのですが…。高良健吾のイノセントさ、ある種トリックスター的な存在感が、基本的に“良いヤツ”世之介を見事に顕在化。彼の母親から祥子へ手紙が届くラストシーンは、きっと泣けると思います。派手さはないけれど、じわじわきて、心が清々しくなる映画です。「小野寺の弟・小野寺の姉」で向井理演じる気弱な弟キャラに胸キュン▼小野寺の弟・小野寺の姉監督:西田征史出演:向井理、片桐はいり、山本美月両親を早くに亡くし、二人で実家に暮らし続ける小野寺姉弟は、眼鏡店に勤める40歳のより子(片桐はいり)と、調香師で33歳の進(向井理)。一緒にスーパーに買い物に行ったり、朝晩食事をしたりと、とても仲良し。こだわりの強い姉に仕切られ、不服でも従ってしまう弟には、育ててくれた姉に頭が上がらないだけでなく、姉思いを決定づける過去がありました。姉は姉で、前カノの好美(麻生久美子)と別れて以来、恋に臆病になっている弟が心配で仕方ありません。ある日、誤配された郵便物を二人で届けに行ったことから、可愛らしい絵本作家の薫(山本美月)と出会い、より子は進に婚活を促します。のらくらしている彼に、「私は心配してるの。あなたも、もういい年だし…」「いい年は姉ちゃんも一緒だろ」「私のことはいいのっ!」とキレるより子。一方、眼鏡店に営業で訪れる浅野(及川光博)から、デートらしき誘いを受け、より子は舞い上がりますが、いざ、待ち合わせてみると…。弟思いでまじめで、時にエキセントリックな姉を演じる片桐はいりの、恐いほどの名演から目が離せません。始終、くすんでもっさりした引っ込み思案な弟を、これまた、もったいなくも、向井理が胸キュンな演技で魅せつけます。日本一、不器用な姉弟の恋と人生に、じーんとするハートウォーミングコメディ。観ると必ず、元気になれます。「舟を編む」の不器用すぎる編集者を演じる松田龍平の役者魂が神▼船を編む監督:石井裕也出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー名前からしてマジメでおかしい、出版社勤務の馬締光也(松田龍平)は、営業部で変り者扱いされていたのが、「右を説明できるか?」と辞書編集部のベテラン編集者、荒木(小林薫)に聞かれ、答えられたのが縁で辞書編集部へ異動。言葉の海を渡る舟に例えて「大渡海」と名づけられた新しい辞書のため、街に用語採集に出かけたり、語釈(言葉の意味)を書いたり、完成まで15年かけ、見出し語24万語の国語辞典作りに没頭していきます。学生時代からの古い下宿は、廊下まで本だらけ。家主のおばあさんと猫のトラだけが友達だったのに、おばあさんの孫娘、香具矢(宮崎あおい)と出会って恋に落ちます。編集部のノリの軽い西岡(オダギリジョー)にラブレターの添削を頼みますが、何と手紙は巻紙に筆文字。「何で筆選んじゃったの。戦国武将じゃねえんだぞ」と、のけぞる西岡。書き直すという馬締に「そのまま渡しちゃえよ。インパクトはあるから」とそそのかします。案の定、読めなくて怒る香具矢。謝る馬締。「手紙じゃなくて言葉で聞きたい、今!」と言われ、たじろぐ馬締に「今は今でしょ。辞書で調べたら?」と彼女。"今"を辞書で引こうとする彼に、「本当に調べなくていいの」。そして、馬締はおずおずと「好きです」と、やっと告白に至るのです。辞書が中止になりそうになったり、脱字が見つかったり、監修の松本先生(加藤剛)が病に倒れたり、様々な事態を乗り越え、27歳だった馬締は42歳になり、ようやく発刊へ。辞書(舟)を編集する(編む)人たちの感動エンタテインメントですが、私たちも感動の海を渡ること間違いありません。馬締を演じる松田龍平の歩き方に至るまで不器用な演技は、もはや神。そして、ブキッチョだけど誠実なこういう人、大好きだなあ、と思うのでした。
2016年02月13日怖がりで弱虫な恐竜アーロと、小さいけれど勇敢な少年スポット。言葉が通じない2人が出会い、ともに冒険を繰り広げるディズニー/ピクサーの最新作『アーロと少年』から、その日本版エンドソングに決定した「Kiroro」の「Best Friend ~Mother Earth Version~」に彩られたミュージック予告が解禁となった。本作の舞台は、“もしも、隕石が地球にぶつからず、絶滅をまぬがれた恐竜たちが文明と言葉を持つようになったとしたら…?”という世界。主人公の恐竜アーロは家族と離れ離れになってしまい、ひとりぼっち。そんなときに出会ったのが、“まだ言葉を持たない”人間の少年スポットで、アーロはスポットとともにさまざま困難を乗り越えていく。今回解禁となったミュージック予告では、名曲「Best Friend」に乗せて、恐竜アーロと人間の少年スポット、2人の友情の軌跡が描かれている。ある日、アーロは最愛のお父さんを失い、さらに川に流され家族と離れ離れに。そんなアーロを助けてくれたのが、スポットだった。当初は言葉が通じず、なかなか互いのことが理解できない2人だったが、家族の元へ帰る冒険の中で一緒に多くの困難を乗り越えていくうち、互いにとって初めてのかけがえのない友だちになっていることに気づく。その2人の関係性は、「あなたの笑顔に何度助けられただろう。ありがとう。ありがとう。Best Friend」という曲の歌詞にも凝縮されている。この「Kiroro」が歌う新録音の「Best Friend~Mother Earth Version~」は、本作で描かれる雄大な自然風景と感動的なストーリーによりマッチするよう、ピクサー監修の下、オリジナル曲に壮大なオーケストラの演奏でアレンジを加えて完成した。ピーター・ソーン監督も、「この曲は、本作の感動的なテーマである“真の友情を見つけ出し、大切に育むこと”に完璧にマッチしているばかりか、主人公アーロと少年スポットの関係を思い起こさせてくれます」と手放しで絶賛を贈るほど。また、本ミュージック予告には台詞が一切出てこないが、大切な友情について歌い上げる「Best Friend」と本編映像が合わさることで、言葉がなくても2人が次第に友情を育んでいく様子が伝わってくる。これは本作において、「言葉の壁を超えて感動を生み出すアニメーション」を志したソーン監督の思いとも通じている。実は、本作で初めて長編アニメーション作品の監督を務める彼が、アニメーションの世界に飛び込んだきっかけは、母親との大切な思い出だったという。彼の両親は韓国人で、よく母親と一緒に映画を観に行っていたが、彼女は英語が堪能ではないため映画のあまり内容を理解できず、監督は母親と笑いや感動を共有できなかった。だが、ある日『ダンボ』を観に行くと、ダンボが檻に入れられた母に会いに来たシーンで、台詞が一切ない中、「私の赤ちゃん」という曲が流れたとき、監督の母親も周りの人と感動を共有して涙を流していたというのだ。そんな姿を見て、言葉が分からなくても、映像や音楽で心を動かすアニメーションの素晴らしさに気づいたというソーン監督。本作でも、“言葉を超えた感動”を描くべく、シンプルなストーリーと圧倒的な映像美、そしてエモーショナルで印象的な音楽にこだわりを見せている。『アーロと少年』は3月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年01月29日実際に苦難を乗り越え、命の炎をきらめかせた女性たちの映画を観ると、生きる勇気がわいてきます。「もっと好きに生きていいんだ!」と、自由な追い風に身を任せて「がんばろう!」という気分になれるから不思議です。安定した穏やかな日々こそ宝物だとわかっていても、埋没してはもったいない。わくわくして感謝したくなる毎日をゲットするために、自分に“喝”を入れてみませんか? おすすめの映画3本をご紹介しましょう。「ピナ・バウシュ 夢の教室」が自分を解放して自信を与えてくれるピナ・バウシュをご存じですか? ドイツ生まれの世界的なコンテンポラリー・ダンサーで振付家。彼女が主宰する演劇的要素の強いヴッパタール舞踏団には、世界中から気鋭のダンサーが集い、2009年に彼女が68歳で急逝した後も、意欲的な活動を続けています。▼「ピナ・バウシュ 夢の教室」監督:アン・リンセル出演:ピナ・バウシュ, ベネディクト・ビリエ, ジョセフィン=アン・エンディコットこの映画は、ピナの代表的演目「コンタクトホーフ」を演じるため、ダンスは素人の10代の男女40人が集まり、10か月間の猛特訓後に舞台に立つという、無謀とも思えるピナの企画を実現したもので、ピナの生前最後の映像が収められた感動のドキュメンタリー。「笑いながら全力疾走なんてできない!」と涙目になると、「自分を解放することを楽しみなさい」と言われたり、まだ10代だから男女で身体を近づけることに戸惑ったり、父親の死とダンスが重なったり、ピナに恋バナを聞かれ正直に応えたりしてレッスンを重ねるうちに、彼らは人見知りが消えて心がオープンになり、自分に誇りを持てるように…。だんだん惹き込まれて、まるで自分がレッスンを受けているような気分になってきます。最後の圧巻の舞台を観て、「みんながんばったわ。愛してる。ミスはいいの。努力が大事なのよ。子どもたちの作品への愛に感謝するわ。私は幸せよ」と静かに語るピナの言葉が胸に染み入ります。自分を内省して、目の前を明るく導いてくれる映画です。「永遠のマリア・カラス」で史上最高のディーヴァの生き様に心が揺さぶられる伝説のオペラ歌手マリア・カラス(1923ー1977)は、移民の子としてニューヨークに生まれ、母国ギリシャで音楽を学び、ヴェローナ野外劇場でイタリア・デビューを飾って以来、世界のディーヴァに。私生活でも、イタリアの実業家メネギーニと結婚後、ギリシャの大富豪オナシスと出会って彼のもとに出奔。夫と離婚し、オナシスがケネディ大統領未亡人ジャッキーと結婚後も愛人関係を続けるなど、美声、美貌、華麗な人生が注目の的に。▼「永遠のマリア・カラス」監督:フランコ・ゼフィレッリ出演:ファニー・アルダン, フランコ・ゼフィレッリ, ジェレミー・アイアンズまだ若い53歳で思うように声が出なくなり、愛するオナシスをも亡くした失意の中、引退してパリのアパルトマンで暮らすカラス(ファニー・アルダン)を、かつての仕事仲間ラリー(ジェレミー・アイアンズ)が訪ね、彼女の全盛期の録音を用いて映画を製作しないか、と持ちかけます。最初は「悪魔に魂を売れというの?」と否定するものの、映像が残っていない「カルメン」ならと心が動き、イケメンの若いテノール、マルコ(ガブリエル・マルコ)とは疑似恋愛も…。彼女の晩年が虚実ないまぜにドラマティックに描かれます。監督は、カラスの親友で、オペラ演出家としても著名な名匠フランコ・ゼフィレッリ。カラスを演じるフランス女優のファニー・アルダンが、どんな時も毅然とした史上最高の歌姫のプロ根性と悲哀、そして、少女のような恋心をも演じきります。歌声はカラス本人、衣装がシャネルと、聴きどころ、見どころともに満載。心が揺さぶられる映画です。「フリーダ」の愛に生き、芸術に生きる波乱万丈の生涯が胸を打つメキシコの画家フリーダ・カーロ(1907ー1954)を演じるのは、ハリウッドの人気女優サルマ・ハエック。眉毛がつながったエキゾティックな顔とカラフルな民族衣装をまとったフリーダの姿を、どこかで見た方は多いと思うのですが、メキシコ出身のサルマは、157cmと小柄でフリーダにぴったり。まさにフリーダが生きて動いている姿に感動します。▼「フリーダ」監督:ジュリー・テイモア出演:サルマ・ハエック18歳の時、右半身から膣まで鉄棒が貫通するバス事故に遭い、一生を痛みとともに生きたフリーダにとって、絵を描くことは生きることでした。著名な画家ディエゴ・リベラ(アルフレッド・モリーナ)と出会い、「俺が描いたのは外の世界だ。君のは心の世界だ。素晴らしい」とプロポーズされます。彼の女癖の悪さは有名でしたが、「貞節さが大事か?」と問う彼に、「私に忠実なら」と返し、彼が「それなら永遠に」と誓って結婚。しかし、彼の浮気癖は治まらず、フリーダの妹とまで関係を持ち、ひどく傷ついた彼女に「セックスは小便と同じ。握手より軽い」とうそぶくリベラ。それが、彼女が実家でロシアの革命家トロツキー夫妻を匿うことになり、トロツキーと関係すると「俺は深く傷ついた」と訴えるダブルスタンダードぶり。監督のジュリー・テイモアが、「この映画で強調したかったのは、あまりにも有名な存在の二人が、人間臭い人物だったことよ。孤高の画家とかでなく、身近に感じて欲しかったの」と語っているのがうなづけます。どんな悲惨な状況でもユーモアを忘れないフリーダの姿は、私たちに生きることの意味、幸せとは何かを問い直させてくれるでしょう。実在の女性3人の生き方が鮮烈で、ただ生きていられることに感謝したくなる映画たち。これらの映画を観て、どうぞ日常生活をキラキラさせてください。
2016年01月24日食べることはお好きですか? 美味しいものを食べると幸せな気分になりますよね。どんなにいたたまれない悲しみや、とげとげしい苦しさで打ちひしがれていたとしても “美味しいもの” を口に運んでいるうちに、少しづつ気持ちがほぐれていく。そんな心持ちは誰しも味わった体験があるでしょう。とくに人の手がかかった料理を賞味することは、人生を愉しむことと似ていると思います。食べる人を喜ばせたいという料理人の気持ちが、魂レベルで舌を通して全身に伝わってくる。理屈抜きで幸せを感じるひとときです。味わい深いそんな思いを共有できる映画を、3本ご紹介しましょう。空腹時に観てお腹が鳴っても責任は持ちませんよ(笑)。 「マダム・マロリーと魔法のスパイス」の異文化交流は星三つインドでレストランを経営する家に生まれたハッサン(マニッシュ・ダヤル)は、料理の師匠である母に「食材にはすべて魂がある。料理は魂の味よ」と基本から叩き込まれます。政変で店を焼かれ、母を失った一家はヨーロッパへ。父の運転する車がたまたま故障した南フランスで、インド料理店を開くことになりますが、向いがマダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営するミシュラン一つ星・名門フレンチレストランだったから、さあ大変!インド音楽が騒音だと苦情を言われたり、互いに食材を買い占めたり、壁に人種差別的な落書きをされたり…。そんな中、フレンチレストランのスー(副)シェフを務めるマルグリット(シャルロット・ルボン)は、料理人として努力し続ける彼に好意を持ち、協力的に。「マダム・マロリーは、シェフ採用試験では本人に会うことすらしないの。オムレツを一口、食べるだけ…」と、マダムの厳しい舌の話題も提供します。いつか、自分の作ったオムレツをマダムに食べてほしいと願うハッサン。その夢は意外に早く実現しますが…。いつもハッサンを助けてくれるのは、ママが遺した数々のスパイス。魔法のスパイス仕込みの調理法が、彼を凄腕料理人へと導きます。ハッサンとマルグリットの恋物語も含め、“美味しい奇跡”が次々と起こるハートウォーミング・ストーリー。余談ですが、マダムのスーツ、マルグリットのワンピース姿がとても魅力的で、そちらも必見です。「宮廷料理人ヴァテール」で絢爛豪華なフランス料理の源流を知る「ブリア・サヴァラン」や「エスコフィエ」の名前は知っていても、「ヴァテール」をご存じの方は少ないのでは?16世紀、フランスの宮廷料理として発展したフランス料理ですが、17世紀、ルイ14世の時代、ソムリエの原形を生み、クレームシャンティイ(ホイップクリーム)の創作など、現在に続く偉業を成したのが、フランソワ・ヴァテール。これは、コンデ公爵の元で料理長を務める彼が、ルイ14世と一族を招いた大饗宴を仕切った3日間を描いた映画です。歴史に残る豪華な饗宴で、山海の食材が国中から集められ、噴水、花火、氷の彫刻、宙づりのゴンドラで歌姫が歌うなど、壮大なスペクタルが展開されます。創造力溢れるヴァテール(ジェラール・ドパルデュー)に好意的な女官アンヌ・ド・モントージエ(ユマ・サーマン)は、彼女に横恋慕するローザン侯爵(ティム・ロス)を通じて、国王から「あなたとショコラを飲みたい」と誘われます。それは、一夜をともにする合言葉でした。コンデ公の痛風治療に小鳥の心臓が必要なため、アンヌのカナリアが没収されそうになったのを、自分の愛鳥と引き換えに助けるヴァテール。厨房を訪れ、彼に「なぜ助けてくれたの? 」と迫るユマ・サーマンの眼技が麗しい。禁断の一夜を過ごす二人。運悪く国王に呼ばれアンヌが駆けつけると、陛下はおらず、ローザン侯爵が「どこにいたか知ってるけど黙っててあげたよ。陛下に知れたらヴァテールは破滅。僕、あなたとショコラを飲みたいな」と。意外な結末を迎えますが、料理人の命がけの真摯さに心を打たれるでしょう。「バベットの晩餐会」に “おもてなし” の神髄を見た!舞台はデンマークにある海辺の小さな村、コトランド。牧師と美しい二人の娘、マチーネとフィリッパが暮らしていました。若い頃は、姉のマチーネに将校ローレンスが思いを寄せたり、パリからヴァカンスで訪れたオペラ歌手パパンが、妹フィリッパに恋焦がれたりしたものの、父の死後も、姉妹二人の清貧な暮らしを続けて35年後の1871年。パパンの紹介で、パリの革命を逃れたバベット(ステファーヌ・オードラン)が、家政婦として置いてほしいと訪ねてきたところから物語は展開します。雇う余裕がないと断る姉妹に「お金はいりません。置いていただけなければ、後は死ぬだけです」というバベットが同居して14年。フランスとのつながりは、友人が買ってくれる宝くじだけだったバベットに、1万フランの宝くじが当たります。彼女は姉妹の今は亡き父親の誕生日に、費用は自分持ちで晩餐会をさせてほしいと願い出ます。「だめよ。費用はこちらで…」といっていた姉妹も彼女の情熱に負け、バベットは準備に奔走。迎えた当日、村人たちに加えて将軍となったローレンスと彼の叔母も参加した晩餐会。キャビアの載ったオードヴル「ブリニのデミドフ風」、海ガメのスープ、ウズラのバイ詰め石棺風、ヴーヴ・クリコのシャンパン、銘醸ワインに驚き、感激するのはパリを知っているローレンス。そこで、バベットの素性が明かされていくのですが、彼女は12人分のディナーに1万フラン使い切ります。それは、彼女の姉妹への心からの贈り物だったのでしょう。最高の “おもてなし” に感涙をもよおす傑作。映像の美しさも見逃せません。3本に共通するのは、食する人たちが笑顔になること。不安におののいたり、いがみあったりしていても、だんだん表情が和らぎ、黙りこくっていたのが饒舌になっていきます。食べるものが人間を作るわけですが、愛情という精神的な部分もなんと大きいのだろう、と思わずにはいられません。美味映画の醍醐味を、どうぞ思う存分味わってください。
2016年01月16日恐竜アーロと人間スポットの友情と冒険を描くディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』(3月12日公開)で長編アニメーション映画初監督を務めるピーター・ソーンは、あるキャラクターのモデルになった人物。そのキャラクターとは、『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)で、カールじいさんと一緒に旅をするボーイスカウトの少年ラッセルだ。劇中でラッセルは最初、カールじいさんから邪魔者扱いされるが、カールじいさんと一緒に旅に出ることになる。少しうるさくてうっとうしい一面もあるが、どこかほっとけないかわいらしさを持ち合わせるラッセルの愛されキャラはソーン監督も同じで、ソーン監督は"ピクサー1の愛されキャラ"と言われている。ソーン監督は2000年にピクサーに入社。『Mr.インクレディブル』(04)ではアート、ストーリー、アニメーションの各部門を担当し、『ウォーリー』(08)ではストーリー・アーティストを務めた。そして、『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)の短編映画『晴れ ときどき くもり』(09)で初めて短編映画の監督を任され、本作で長編アニメーション監督デビューを果たした。プロデューサーのデニス・リームは「彼はこのスタジオでとても愛されているの。彼のことが大好きな人たちがたくさんいて、映画にとっても彼にとってもうまくいくように、一緒に働く人たちはできることを何でも協力していたわ。彼は本当にチャーミングな人よ」とその愛されっぷりを語る。彼が今まで一緒に仕事をしてきた『Mr.インクレディブル』(04)の監督ブラッド・バードやジョン・ラセター、『トイ・ストーリー3』(10)のリー・アンクリッチ監督も、ソーン監督のことが大好きだそうだ。デニス・リームは「今まで彼が一緒に仕事をしてきた監督たちは、彼の才能にすごい信頼と尊敬の念を持っているのよ。だって彼ら全員が『いつでも電話してきていいよ。助けるためにここにいるんだから』って言っていて、実際に助けようとしていたの」と明かす。そんなピクサー1愛されキャラのピーター・ソーンの長編アニメーション監督デビュー作となる本作。物語のテーマである"恐怖を乗り越えること"は、彼が実際に人生で感じてきたことがヒントになっているという。「人生において僕はいつも何かを恐れていた。挑戦するとき、いつも何かが僕を引き止めていたんだ。でもそれをどうやって乗り越えるかを考えたよ。そうしたらいつだって、愛が乗り越えさせてくれたことに気付いたんだ」と語り、愛は恐怖も勇気に変える力があるという思いを込めたそうだ。(C) 2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2016年01月10日「世紀を超えて愛され続ける服には、とてつもないパワーがある」と常々思っていました。天才デザイナーたちの映画を観ていると、なぜかすごく元気になれるのです。服を着るということは、何気ない習慣でありながら、肉体を守ることであり、自己表現であり、それをまとわないと外へ出られないという、社会生活を送るための装置でもあります。つまり着ることは生きること。いつだって違う自分になりたい! そんなチャレンジングな気持ちを鼓舞してくれる映画を観て、自分をリフレッシュしませんか? お薦めの3本をご紹介します。その結果、あなたももれなくファッショニスタ(お洒落上級者)に…。媚びない女らしさに開眼「ココ・アヴァン・シャネル」1883年生まれのガブリエル・ボヌール・シャネル(本名。ココは愛称)が、1909年、帽子のアトリエを開いて創業したシャネル。100年以上経った今も大人気なのはご存じの通り。「アメリ」で人気を得たオドレイ・トトゥ演じる本作は、1971年に87歳で亡くなったシャネルが孤児院で育った子供時代から、男性遍歴を経て、起業して成功するまでの若い時期を描いています。だからこそ、生きる息吹とピュアなエネルギーが素晴らしい。将校エティエンヌ・バルサン(ブノワ・ポールブールド)は、上流生活を体験させてくれたけれど、彼女の出自を恥じて周囲に隠し、実業家ボーイ・カペル(アレッサンドロ・ニボラ)が彼女に夢中になると、嫉妬してプロポーズ。「誰とも結婚しない」と彼女は宣言しますが、愛するボーイは事故死してしまい…。男の庇護なしに女性が生きられなかった時代、媚びない彼女がかっこいい! でも、愛する男から尊敬され愛されるのですよ。衣装がシャネル全面協力なのも魅力的。女性は羽飾りの付いた帽子にロングドレスが全盛の時代、海辺で見かけた漁師のボーダーTシャツに、男物を半端丈にカットした黒いパンツ、ツイードのジャケットというスタイルは、今すぐ真似したいほど。彼女のシーンだけ現代に見えるのが、さすがシャネルです。初めて老舗メゾンのアトリエが公開された「ディオールと私」1947年、クリスチャン・ディオールがメゾンを設立以来、輝かしい歴史と伝統を誇るディオール。2012年、ジル・サンダーでメンズ担当だったラフ・シモンズがクリエイティブ・ディレクターに就任し、パリ・コレまでの8週間を描いたのがこの映画です。フェミニンでエレガントなディオールに、シンプルでミニマリストといわれる彼が抜擢されたのはかなりの驚きでした。しかし、ラディカルなアプローチを貫いて、果敢に挑むラフ。衝撃的なのは、ディオール全面協力のもと、グラン・メゾンの中枢であるアトリエに初めてカメラが入ったこと。ディオールと刺繍された白衣のスタッフたちの動きが、ドキュメンタリーとは思えないほど見事です。現在もオートクチュールの伝統を守り続けるのは、シャネルとディオールだけですから、彼らの誇りも当然なのですが…。オートクチュール・ディレクターのカトリーヌが大事なフィッティングに欠席し、「穏やかな僕も限界」と嘆くラフに、「シーズンごとに5000万円注文する顧客の要請で出張していたの。お金がないとコレクションどころかメゾンも存続できない」と主張する彼女の言葉が印象的でした。全身全霊を傾けてドレスを作り上げる人々の緊張感に満ちた日々に密着した、感動のファッション・ドキュメンタリー。必ずやパワーをもらえるはずです。「イヴ・サンローラン」ピエール・ニネの緻密な演技がスゴい!1957年、ディオールの死後、21歳で後継者となったイヴ・サンローラン。彼を描いたこの映画も、イヴ・サンローラン財団率いるピエール・ベルジェによる初公認作品です。つまり、本物の衣装がふんだんに登場し、しかも当時のモデルは小柄で服が小さいため、そのサイズに合うモデルを選んで登場させ、それどころか、サンローランの住居や仕事場が提供され撮影が行われたという、奇跡のような映画なのです。何よりも感動するのは、イブ・サンローランを演じるピエール・ニネの役作り。伝記やドキュメンタリーで学び、デッサンやモード全般、素材の触り方まで特訓を受けたほか、毎日、3、4時間はサンローランの肉声を聞いて5か月、話し方を徹底的に叩き込んだそう。50年にわたって繊細な彼を公私ともに支え続け、実際の恋人でもあったベルジェが「似てるというより彼そのもの。仕草や声に至るまで…」とインタビューで語っているのですから驚きます。同性愛が非常に違和感なく描かれているのも特徴的で、新しいと思いました。「男同士でラブシーンを演じるのはどんな気分? とよく聞かれるけど、この物語に感動したからこそ、自然に演じられたと思う。ただのラブストーリーといえるほどね」とニネ。サンローランの革命的なデザイン、波乱の人生、知られざる私生活に息を飲む貴重な作品です。また、2015年12月からベルトラン・ボネロ監督の映画「サン ローラン」(主演/ギャスパー・ウリエル)も公開されました。見比べてみるのも楽しいかもしれません。いかがでしたでしょうか? ブランド品なんて興味ない…という方もおられるかもしれませんが、この3本を観ると、デザイナーへのリスペクトを感じてしまうから不思議です。着る喜び、生きる楽しさを謳歌して、明日の美しさへと紡いでいけたらと思います。
2016年01月06日トム・クルーズ、ジョニー・デップ、ブラッド・ピット……浮き沈みの激しいハリウッドで、スターの称号を手にいれた数々の俳優たち。その中で、アラフォー世代の代表といえば、やはりレオナルド・ディカプリオ、レオ様でしょう! コメディ、ラブロマンス、政治もの、西部劇などあらゆるジャンルの映画で、常に圧倒的な演技力をみせてくれるレオ様。近年の渋いレオ様ももちろんステキですが、遡ること約20年前。『タイタニック』(1997)で一世を風靡することになるレオ様ですが、そこに至るまでの彼の美しさといったら! 今見ても、キュンとしてしまうはずです。今回は、そんな若かりしレオ様の美しさが詰まった、代表的な3作品をピックアップ。改めて魅力を掘り下げていきましょう。“少年と大人の魅力” を併せ持つレオ様は必見!『バスケットボール・ダイアリーズ』『ギルバート・グレイプ』(1993)で演じた、知的障害を持つ少年・アーニー役で高い評価を得てから約2年後。少年の中に、大人っぽさをまといはじめたレオ様が挑んだ作品が『バスケットボール・ダイアリーズ』(1995)。ビートニクの詩人であり、ロックミュージシャンでもあるジム・キャロルの自叙伝「マンハッタン少年日記」の映画化で、レオ様が演じたのは主人公のジム役。ミッションスクールに通い、バスケットボールのチームメートとやんちゃに過ごしていたジム。最初はちょっとした不良少年でしたが、やがてドラックに手を出すとどんどんハマり、退学、家出、そしてホームレスにまで堕ちていき……。衝撃的なストーリーで、かなりヘビーなシーンも。それでも、少年と大人の魅力を併せ持つ、この時期ならではのレオ様の美しさ、存在感は鮮烈! 制服姿も新鮮でクール。スターへの階段をのぼりはじめた彼の輝きが詰まっています。レオ様史上NO.1の究極美が堪能できる『太陽と月に背いて』大人っぽさに加え、色気も漂う究極の美しさを発揮した作品が、『バスケットボール・ダイアリーズ』と同年、1995年に日本で公開された『太陽と月に背いて』。19世紀のフランス象徴主義の代表的詩人、アルチュール・ランボーと、ポール・ヴェルレーヌの宿命的かつスキャンダラスな関係を描いた本作。妻がありながらも、レオ様演じるランボーの才能と美貌に心を奪われ、その魅力にのめり込んでいくヴェルレーヌ(デヴィッド・シューリス)。2年間に及ぶふたりの蜜月、そして破滅的な別れが描かれていくのですが、ヴェルレーヌ同様、見ている私たちをも虜にしてしまうランボー(レオ様)! 海辺のシーンで、華奢なからだにひらひらとなびく、純白のシャツをまとったレオ様はハッとするほど儚げで美しく……。レオ様史上、最も美しい瞬間を閉じこめた作品、といっても過言ではありません。王道ラブストーリーで魅力全開!『ロミオ+ジュリエット』1997年、日本で公開された『ロミオ&ジュリエット』も、レオ様の魅力が際立つ作品。シェイクスピアの名作を、バズ・ラーマン監督が時代設定を現代に置き換えて映画化したもので、作品としても見応えたっぷり。対立するロミオのモンタギュー家と、ジュリエットのキャピュレット家の抗争シーンでは、スタイリッシュな映像の中、クールでカッコいいレオ様にキュン。また、ロミオ(レオ様)とジュリエット(クレア・デインズ)が、水槽越しに初めて出会うシーン、プールでのロマンティックなキスシーン、ふたりの結婚式のシーン…… どのシーンを切り取ってもレオ様の美しさが全開!悲劇のクライマックスまで、目が離せないレオ様版ロミオ。何度もリピートして観たくなること必至です。今回紹介した作品は、美しさはもちろん、その確かな演技力にも感動させられるものばかり。当時観た! という方も多いと思いますが、改めて美しいレオ様の作品、楽しんでみてはいかがでしょうか!?
2015年12月30日せつない恋愛小説の名手、山田詠美さんを取材した時、「女ってね、30過ぎたくらいから年下とも楽しめるようになってくるのよ」と、飲みものを運んできた六本木のカフェのイケメンウェイターの手をサッと握って唇に押し当てたのを見て、日本にもサガンの小説みたいなことができる女性がいるんだ! と衝撃を受けましたが、それって真理かも。寒々とした外気に冷え切って帰宅したら、温かい食べものやお風呂もいいけれど、イケメンが登場する映画を観て、縮こまった細胞を生き生きさせませんか? 美人もそうだと思うのですが、イケメンはノーリーズン。寒くてつい凹みがちな季節、年下のイケメンくんが理屈抜きにテンションをアゲてくれるでしょう。そんな映画を3本ご紹介します。「真夜中の五分前」の三浦春馬のピュアな透明感に癒される▼真夜中の五分前監督:行定勲出演:三浦春馬, リウ・シーシー(劉詩詩), チャン・シャオチュアン(張孝全)彼が演じる主人公は、上海の時計店で修理士として働く孤独な青年・良。上海の街並を、仕事が終わるとバイクでプールに通う日常で、印象的な音楽とともに、たゆたうような時間の流れが魅力的な映画です。美しい双子の姉妹(リウ・シーシー)と出会った彼は、清楚で優しい姉ルオランとつきあい始めます。映画を観ながら、恋人同士の握り方で手を握ったり、たどたどしい中国語で「君のために作った」と、時計をはめてあげたり…。それが次第に、妖艶で奔放な妹ルーメイに振り回されていくことに…。この姉妹、キャラ以外は外見も趣味もまったく同じ。たまに入れ替わって遊んでいるのに、ルーメイの夫ティエルン(チャン・シャオチュアン)も気づかないほど。そんな姉妹が旅先で事故に遭い、一人だけ帰国する、というミステリアスな展開。タイトルの時間帯通り、仄暗い照明が幻想的で、三浦春馬のピュアな透明感が際立ち、彼の優しさに包み込まれるでしょう。「恋の罪」にチョイ役で登場する深水元基がめちゃカッコいい▼「恋の罪」監督: 園子温出演: 水野美紀, 冨樫真, 深水元基深水元基を知っていますか? 俳優、モデル、デザイナーで身長187cm、35歳。NHK BSプレミアム「京都人の密かな愉しみ」に、老舗和菓子屋の若女将(常盤貴子)が好意を寄せる雲水役で登場したのを見て初めて知り、素敵だなあと思いました。彼が出演している映画を探して「恋の罪」を観たのですが、ここでの役柄はなんとAV男優! ストイックな雲水と180度違う濃厚なベッドシーンに、逆にすごく上手い役者さんだなあと感動しました。この映画、実は彼だけに言及している場合じゃないくらい話題満載の作品で、鬼才・園子温監督が、1996年に起きた東電OL殺人事件にインスパイアされて作った問題作です。自分を持て余していた人妻のいずみ(神楽坂恵)が、AVにスカウトされ、渋谷・丸山町のラブホテル街で、昼は大学教授、夜は娼婦の美津子(冨樫真)と出会い、その殺人事件を担当する刑事・知子(水野美紀)も不倫をしていて…というものすごい設定。刺激の強いシーンもあるので万人向けではありませんが、深水元基のカッコよさは保証します。キスが上手い福士蒼汰の「好きっていいなよ。」のキスが絶妙▼「好きっていいなよ。」監督: 日向朝子出演: 川口春奈, 福士蒼汰, 市川知宏高校生の学園ラブストーリー? 勘弁してよ! と思われることでしょうね。お気持ちはわかりますが、この映画を観た後はそうは言わせませんよ。きっと納得していただけるはず。もともとはTVドラマ「きょうは会社休みます。」で、綾瀬はるかとの恋愛シーンを観た時、若そうなのに余裕あるキスをするなあ、と思ったのが最初の印象でした。この時、彼は21歳で学生アルバイトの役。同年、高校1、2年生を演じたのがこの映画です。モテる男子役なのですが、小学生の時、友達に裏切られてから誰ともつきあわずに地味に生きてきた同級生の女の子めい(川口春奈)に、スカートに触ったと勘違いされ回し蹴りされて以来、関心を抱きます。本屋で他校の男子に待ち伏せされた彼女を、キスすることで助けたことがきっかけで、つきあうモードに。実は、彼にも心の傷があるのですが…。圧巻なのは「大勢の女の子とキスしてるんでしょ」とめいに言われて、「僕はしたいって思った子としかしない」と言った後、彼女に「今のは挨拶代わりのキス。今のは可愛いなあと思った時のキス。今のは進展したいなあのキス。今のは目の前にいる人に対する気持ちのあるキス。まだいっぱいあるけど、違いわかる? 俺のこと好きになれ。何も言わないと本気チューしちゃうぞ」とキスを繰り返すシーン。まいりました。寒さが厳しさを増す時節柄とはいえ、心まで冷え込んではいけません。冷え防止にイケメンを配備して、さあ、この冬も温かく心豊かに過ごしましょう。・ 「真夜中の五分前」 ・ 「恋の罪」 ・ 「好きっていいなよ。」
2015年12月24日「女ってわからない…」と男性たちは思っているでしょうが、「男ってまったく…」と女性たちもつぶやいているわけで、どんなにITが発達しようと他の惑星へ行こうと、両者間の深淵がなくなることはないでしょう。違うからこそ愛し合える、ともいえますけれど。男と女の問題でイラッときたら、いや、キレそうになったら、監督歴半世紀、酸いも甘いも噛み分けたウディ・アレンの映画を観て、楽しみながら男女の深淵を学んでみませんか? 人生での実体験も人一倍濃い彼のこと、きっと私たちに素敵なヒントを与えてくれるはず。恋愛関係のプロフェッショナルともいえる彼の映画から、お薦めの3本をご紹介しましょう。「恋のロンドン狂騒曲」が自分の一番大切なものに気づかせてくれるアラフォー世代の迷いとも重なりますが、子供を産めるであろう最後の年代、恋愛ができるであろう最後の年代…といった、いわゆる区切りの時期、人はジタバタあがいてしまうのかもしれません。熟年離婚したアルフィ(アンソニー・ホプキンス)とヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)。アルフィはまだまだブイブイいわせたくて、ジムに通い、若いコールガールと再婚へ。ヘレナは前世も占うヒーラーに通い、オカルト書店店主と出会い…。娘のサリー(ナオミ・ワッツ)は、夫で売れない作家のロイ(ジョシュ・ブローリン)の“負け犬”モードに愛想が尽きかけ、勤め先の“勝ち組”オーラがムンムンの画廊オーナー、グレッグ(アントニオ・バンデラス)の「妻とうまくいってない」という言葉を信じそうに…。二転三転する中、それぞれが、自分にとって一番大切なものが見えてきます。できるなら、お互いをあまり傷つけないうちに気づきたいものですね。勉強になります。「ミッドナイト・イン・パリ」でロマンティックな相性がカギだと知る脚本家でありながら小説家を夢見るギル(オーウェン・ウィルソン)と、お譲様育ちで現実的な婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)は、イネズの父親の出張に便乗してパリ旅行中。ゴージャスなランチや母親とのショッピング三昧、偶然出会ったインテリ友人夫妻との美術館巡りなどに夢中なイネズと、次第に別行動をとり始めるギル。深夜12時の鐘の音とともに、どこからともなく現れたクラシックカーに乗ると、到着したのは1920年代、ジャン・コクトー宅のパーティー。コール・ポーターが奏でるピアノが響く中、現れたのはゼルダとスコットのフィッツジェラルド夫妻。彼らから憧れのヘミングウェイを紹介されます。「最高の女を抱いたことはあるかい? その瞬間は死の恐怖を忘れらる。真実の愛は一時、死を遠ざけるんだ」と、ヘミングウェイが語り始めて…。そんなめくるめく世界が夜ごと展開し、現実との狭間でイネズとズレていくギル。男女って、ロマンティシズムの相性も大切な要素だと思いませんか? 必ずしも女性ばかりが現実的とは限りません。互いのロマンをどれだけ許容できるか、一緒に楽しめるかがカギ。そこが合わないなら無理してつきあうことはないし、合えばこんなに幸せなことはありません。自分も相手も自分らしくいられるために、大事なことを教えてくれる映画です。「地球は女で回ってる」から学ぶ浮気性な男をコントロールする術結婚していても子供がいても、他の女性とセックスしたいと願う男性の本能を、おもしろおかしく描き、ホロリとさせる傑作映画です。作家のハリー(ウディ・アレン)は3回離婚歴があり、あることないこと小説に書いて激怒した元妻から撃ち殺されそうになったり、一人息子に会わてくれない別の元妻からは、色情狂呼ばわりされたり。「浮気相手は本当に彼女だけ?」『神かけて誓う!』「あなた、無神論者じゃなかったの?」『神の不在は俺のせいか?』などと、お得意の自虐ネタ満載の台詞に、修羅場でもつい笑ってしまいます。そんなチャラ男な主人公が抱える、ぞっとするような孤独感。それをどう癒し、笑い飛ばせるかが、女性のキャラや度量にかかっていると思いました。女優のナオミ・ワッツがインタビューで、ウディ・アレンの魅力を「ものすごく優秀なのにバカにもなれるの」と語っていますが、それは女性にも当てはまるのではないでしょうか。ウディ・アレン映画を愉しんで、男と女の溝をちょっぴり埋めてみませんか?
2015年12月01日たくさん旅をしている友人と、映画をたくさん観ている友人を、わたしは心からリスペクトしています。両者とも、世界の森羅万象に通じ、人間的に達観している人が多いと思うから。映画好きな友人、それもハリウッド映画のみならず、フランスのヌーベルバーグなどにも造詣の深い友人を招いてのホームーパーティー …あなたなら、どんなBGMを選びますか? せっかくなら「おおっ!」と思わせて、映画談議に花を咲かせたいですよね。ゴージャスなご馳走はなくとも、好きな映画の話題で盛り上がるほど楽しいことはありません。シンプルなお料理と映画気分を満喫できるひとときを、BGMで演出してはいかがでしょう。今回は、映画通の友人もきっと満足するお薦めのCD3枚を、わたしの定番ホムパ料理とともにご紹介します。さあ、とびきり素敵な音楽を、ボナペティ!前菜は、親しみのある “ジョルジュ・ドルリュー” でトリュフォー映画のヒロイン気分わたしがよく作る簡単なオードブルは、柿かイチジクとゴルゴンゾーラチーズを、生ハムかスモークサーモンで包んだもの。数年前、ニューヨークのクラブで流行っている、という記事を読んだのですが、その話題を振るだけで、カンバセーションピースになりそう。早めに作って冷蔵庫に寝かせておき、客人が到着したらまず、これとサラダなど、冷たいものをサーブ。その間、お酒を準備したり料理の温めに入ると、会話がとぎれません。そんなパーティーの始まりには、ジョルジュ・ドルリューのこの一枚がおすすめです。▼ジョルジュ・ドルリュー「le cinema de Francois Truffaut musiques de Georges Delerue」生涯に350曲以上の映画音楽を作曲し“映画界のモーツァルト”とも呼ばれる、フランスのジョルジュ・ドルリュー。フランソワ・トリュフォー監督の主要な映画音楽を担当し、名作「突然炎のごとく」「恋のエチュード」「アメリカの夜」など、映画は観ていなくても、どこかで聴いたことのある親しみやすい美しいメロディが印象的です。前菜にぴったりの軽妙な味わいが、会話を生き生きと弾ませてくれるでしょう。メイン料理にふさわしいゴダール映画のオリジナル・サウンドトラック前日から作っておけて便利なので、メインはスペアリブのブルーベリー風味。スペアリブを赤ワインとブルーベージャムに浸して、醤油とバルサミコ酢、お好みですりおろしニンニクを加え、一晩冷蔵庫へ。当日、2時間ほど弱火で煮込んだら出来上がりです。ブルーベリージャムの酸味が美味ですが、もちろんポピュラーなオレンジマーマレードでも。ガツンと肉を食べると、なぜかフランス女優の力強さを思い出します。フランス映画で最も有名なジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」「アルファヴィル」「軽蔑」のサントラ集がこちら。▼ジャン=リュック・ゴダール「ジャン=リュック・ゴダール作品集」「気狂いピエロ」で主演した名女優アンナ・カリーナの意外に可愛い歌声が聴けるのが貴重です。ちなみに、「軽蔑」の作曲はジョルジュ・ドルリュー。ちょっぴり哀愁が加わって、どんどんお酒が進みそうです。デザートでは、ミシェル・ルグランの洒脱な余韻を楽しんでデザートは、マカロンがお気に入り。フランボアーズ、ピスタチオ、カフェ、シトロン…、様々な色と味を堪能できるのが楽しくて、ついいろんな色を買ってしまいます。シャンパンやワインを飲み続けていてもいいし、気分を変えて、コーヒーや紅茶を丁寧に淹れてもいいですね。そんな時、ジャズィなミシェル・ルグランが似合います。▼ミシェル・ルグラン「RCAイヤーズ」フランス人の彼が、アメリカのレコード会社RCAに在籍していた時の曲を集めているので、「RCAYears」というタイトルなのですが、それこそ名画中の名画「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「華麗なる賭け」などのテーマ曲が収められています。賑やかだったり、しっとりしていたり、ドラマティックで洒落たBGMが、味わい深いひとときを、さらに忘れがたい余韻で満たしてくれることでしょう。
2015年11月02日開催中の第28回東京国際映画祭で24日、インターネット映像配信ネットワーク・Netflix初のオリジナル映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の舞台挨拶が東京・TOHOシネマズ 新宿にて行われ、キャリー・ジョージ・フクナガ監督が登壇した。同映画祭のパノラマ部門に選出された本作は、アフリカで平和に暮らす少年が、内戦で家族を奪われ、ゲリラ兵に変貌していくさまを少年目線で描き、ベネチア国際映画祭で絶賛された作品。ナイジェリア在住の作家ウゾディンマ・イワエラによるデビュー作『Beasts of No Nation』を、エミー賞受賞経験を持つ38歳の日系監督キャリー・ジョージ・フクナガが、企画から7年もの歳月をかけ映画化した。主演は、ゴールデングローブ賞受賞のイドリス・エルバが務める。舞台挨拶に登場したフクナガ監督は「こういう話を新聞やニュースなどで聞くと遠いところで起きていることだと思うけど、映画だと身近なものとして感じられる」と言い、「子供兵という題材でつらい部分もあるが、彼の気持ちに共感して何か感じとってもらえたらうれしい」と呼びかけた。そして、「シリアスな題材だけど、笑える所もあるので、笑うのも大丈夫」と加えた。そして、「Netflixを通して公開されるのはうれしい。特に、世界同時で公開されることがすばらしい」と喜び、ほとんどの映画作品は、世界のほかの国よりも日本は1年遅れて公開されることが多いが、今回は時差の関係で日本は数時間ほかの地域より早く見られたと思う」とコメント。「大勢の視聴者にこの作品を届けられる」と喜んだ。また、「撮影はガーナで行った」と明かし、「撮影スタッフは、アメリカ人、南アフリカ人、地元のスタッフ…異文化交流ということで大変なこともあったが、それをみんなで乗り越え、一生忘れることのできない体験になった」としみじみ。「僕は現地でマラリアにかかり、毒蛇を踏みそうにもなり、命がけで撮影した。イドリス・エルバは崖から落ちそうにもなった」と過酷な撮影の様子も明かした。
2015年10月24日ヴィヴィアン・マイヤーという写真家のことは、もちろんご存じありませんよね? 生涯で15万枚以上の作品を残しながら、一度も発表することなく、乳母や家政婦として働き、2007年、オークションで偶然ネガが発見されるまでは、その存在をまったく知られることなく、2009年に83歳でこの世を去った、変わり者の女性のことは。彼女のネガを競り落とした青年が、写真の一部をブログにアップすると爆発的な人気が出て驚き、プリントを売って製作費を稼ぎながら、謎だった彼女を探す旅に出て、彼女を知る人々のインタビューも含め、ドキュメンタリーで描いたのがこの映画。まさに、事実は小説よりも奇なり! 今まで、こんな不思議な魅力の映画は観たことがありません。乳母だった彼女が死後、写真家として脚光を浴びるまでの旅路その青年がシカゴ在住の監督、ジョン・マルーフです。歴史の資料としてシカゴの風景写真を探している時、地元のガラクタや中古家具を扱うオークションハウスで、古い革張りの箱に入ったネガを落札。撮影者はヴィヴィアン・マイヤーとあるけれど、知らない名前で、検索してみても1件もヒットなし。初めてヒットしたのは、それから2年後、彼女がつい数日前に亡くなった、という死亡記事でした。そこから、彼は生前のヴィヴィアンを知る人物を探し当てるのですが、その人はなんと「彼女は僕のナニー(乳母)だった」と…。乳母だった人が、なぜこんなに優れた写真を撮影できたのか? 彼のヴィヴィアンを探す旅が始まります。生涯独身だった彼女の晩年の生活を援助していたのは、かつて彼女が乳母を務めていた家族でした。彼らのおかげで、さらに膨大なネガ、未現像フィルム、8mmや16mmの映像素材、カセットテープ、それどころか、ブラウス、コート、帽子、靴、レシートに書いたメモの類いまでを入手。そして、ジョンの旅はフランスにまで及びます。20世紀最高のストリート写真家の謎めいた数奇な人生彼女を知る人々は、口々に「変り者」「秘密主義」「孤独な人だった」と語りますが、彼女が写真を大量に遺していたことは誰も知りません。フランス訛りから、フランス人だとも思われていたヴィヴィアン。彼女の両親は、彼女が幼い時に離婚しているのですが、ある時期、ヴィヴィアンは母親の母国であるフランスと行き来していたことが判明します。ジョンが南フランスの村を訪ね、彼女が現像屋に「光沢でなくつや消しで」などと、プリントの指示を細かく出していたことを知り、発表するつもりがなかった写真を世に出してしまって悪かったかも… と懸念していた彼が勇気づけられるシーンは印象的でした。プロの写真家たちから「彼女は真の写真家」「驚くべき洞察力」「発表していれば成功できたのに…」と評されるヴィヴィアンの写真。ニューヨーク、ロンドン、パリを始め、世界各地を巡回中の展覧会は、その美術館史上最高の動員となったり、全米での写真集の売り上げNO.1を記録したり。なぜ発表しなかったのか、謎は深まるばかりです。引きこもって溜め込んだ新聞紙に埋もれて暮らした晩年ザンバラ髪に男物のシャツとだぶだぶのコート、足元はアーミーブーツで、愛機ローライフレックスを首から下げ、ファインダーを上から覗き込み、被写体に体当たりで撮影していたヴィヴィアン。彼女が好んで撮るのは、スラム街の人々、泣いている子供、堵殺場など、人間の負の側面を思わせる写真。ただの浮浪者にしか見えない男の写真を購入した、俳優ティム・ロスの「最貧の姿の男なのに幸せそうなんだ」という言葉が刺さります。ハッとさせられる視点や構図は、ダイアン・アーバスやブラッサイを思わせますが、長く住まわせてもらっていた部屋には、美術関係の書籍はなく、足の踏み場もないほど新聞が堆積していたとか。グロテスクで不条理な事件、人間の愚かさが露呈した事件に興味津々だったという彼女には、ジャーナリスティックな感性、作家のカポーティめいた好奇心があったのかもしれない、と思ったり。アーティストとしてはアウトサイダーだったヴィヴィアンの人生が、ミステリアスなまま、心の奥底に沈殿して離れません。作品を公表していたら、20世紀の写真史を変えていたかもしれないヴィヴィアン・マイヤーを、この映画を観て、あなたも探す旅に出てみませんか? 「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」▼予告編監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル出演:ヴィヴィン・マイヤー、ジョン・マルーフ、ティム・ロス 他2015年10月10日(土) シアター・イメージ・フォーラムほか全国順次ロードショー
2015年09月29日「ぴあ」調査による2015年9月11日、12日のぴあ映画初日満足度ランキングは、少年合唱団を舞台に歌うことに魅了された少年の成長を描いた人間ドラマ『ボーイ・ソプラノただひとつの歌声』がトップに輝いた。2位にダンスに出会い自己表現に目覚めていく少女たちの姿を描いた『ガールズ・ステップ』、3位に東野圭吾の同名小説を基に、原発を狙ったテロリストとの戦いを江口洋介、本木雅弘をキャストに迎えて描くサスペンス『天空の蜂』が入った。その他の写真1位の『ボーイ・ソプラノただひとつの歌声』は、ひとりぼっちの少年・ステットが少年合唱団に入団し、厳しい指導者との出会いによって自分の運命を切り開いていく姿を描いた感動作。少年期特有の奇跡の歌声“ボーイ・ソプラノ”をテーマにしており、出口調査では「彼らの声がすごく綺麗で感動した」「DVDではなく音響の良い映画館で観てよかった」「主人公の演技も歌声も素晴らしくて、ソプラノは天使の歌声のようだった」などの感想が寄せられた。美しい歌声だけでなく、少年の成長物語も描いている本作。主人公ステットは、複雑な家庭環境ゆえにトラブルばかり起こす問題児だが、たぐいまれな美声の持ち主で、歌への情熱を膨らませながら人間としても成長していく。観客からは「合唱の素晴らしさを少年の成長を通して描いているところがよかった」「辛い過去を背負いながら歌の素晴らしさに気づき、努力していく姿は感動的」「合唱を通して苦悩し、成長していく主人公に共感した」「音楽映画としても人間ドラマとしても満足できた」といった声が聞かれた。歌の魅力に気づき、生きる希望を見出していくステットだが、ボーイ・ソプラノを出せるのは変声期を迎えるまでのわずかな時間だけだ。「ボーイ・ソプラノへの少年の葛藤が切なかった」「少しの期間しかいられない少年合唱団の姿に胸を打たれた」「観終わって、少年がその後どのような人生を歩むのだろうと思いを馳せることができた」など、観客は子供時代ならではの輝きや、時の流れに思いをめぐらせたようだ。(本ランキングは、9/11(金)、12(土)に公開された新作映画10本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)『ボーイ・ソプラノただひとつの歌声』公開中
2015年09月14日ファッション雑誌を見始めた頃、日本の雑誌は「1ヶ月間着回しコーディネート術」とか「痩せて見えるパンツスタイル」といった実用的な記事が多いのに、外国雑誌は「不思議の国のアリスのお茶会に招かれて」「鳥の背中に乗って世界を巡る旅」といったファンタジックな特集が載っていてびっくり! 5キロ痩せて見える、5歳若く見えるハウツー記事も役立つけれど、もっと違う美意識のレッスンがあるんだなあ、と思ったものです。そんな記事を載せる最たる雑誌がVOGUEでした。1892年、アメリカで創刊以来、世界各国で発売されているハイファッションの最先端、ファッショニスタ垂涎の雑誌。歴代の名物編集長は映画にもなっていて、セレブ並みの人気者に。そんなカリスマ編集長の登場する映画を3本ご紹介しましょう。この秋のお洒落心に火が点くこと、間違いありません。元フレンチ・ヴォーグ編集長カリーヌ・ロワトフェルドの生き方が潔く美しい▼マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ監督:ファビアン・コンスタン出演:カリーヌ・ロワトフェルド, スティーブン・ガン, カール・ラガーフェルドその美貌から18歳でモデルとしてのキャリアをスタート、20代で「ELLE」の編集者、スタイリストに転身し、40代でフランス版「VOGUE」の編集長に就任以来、2011年まで10年間務めたカリーヌの顔は、どこかで見たことがある人が多いのではないでしょうか?50代になってもスッと伸びた美脚にピンヒール。パリコレのフロントロー(最前列)の常連で、パパラッチされるスナップ写真では、爪先をやや内側に向けた立ち姿が有名でした。そんな彼女が、新雑誌「CR」を創刊するまでのドキュメンタリーがこの映画。「大勢が足を引っ張ろうとする」業界で、「ファッションは夢の世界。ファンタジーは私の本質よ」という姿勢からブレずに、苦心しながら夢を実現していく彼女の生き方が素敵です。夫がいて2児の母。「仕事も夫も愛してる」と言いながら、世界中のデザイナーたちからミューズとあがめられるエレガントでセクシーなカリーヌの魅力は、実は素直でピュアな人間性。そこが伝わる映画です。「誰にでも敬意を払うのが素晴らしい。自分が特別で重要な存在だと感じさせてくれるの。だから、みんなが彼女に尽くしたくなる」とは、彼女のアシスタントの弁。「いつか飽きられるわ」とサラッと笑いながら、ハイヒールで歩き続けるカリーヌの姿は、私たちに生きる勇気と美意識を問い直させてくれるでしょう。現アメリカン・ヴォーグ編集長アナ・ウィンターはファッション界のリーダー▼THE SEPTEMBER ISSUE ファッションが教えてくれること監督:R.J.カトラー出演:アナ・ウィンター, グレイス・コディントン, シエナ・ミラーショーを見る間も外さない黒いサングラス、金髪のボブヘア、女性らしい色合いのヒザ下丈のワンピースかプリーツスカート…アメリカ版ヴォーグ編集長、アナ・ウィンターも、常にスタイルが決まっている女性です。イギリス出身ですが、アメリカのハーパース・バザーやイギリス版ヴォーグでもキャリアを積み、1988年から現職。映画「プラダを着た悪魔」に登場する鬼編集長のモデルにもなった彼女は、同時に、3000億ドルのファッション産業で最も重要な人物、映画スターよりも注目の的、といわれています。この映画は、アナを中心にニューヨークのヴォーグ編集部が、2007年、ファッション誌の新年号といわれる重要な9月号を出版する様子を描いたドキュメンタリー。アナの片腕のクリエイティブディレクター、グレイス・コディントンと写真をめぐって対立したり、シエナ・ミラーの表紙撮影では豪華なヨーロッパロケが組まれたり、締め切り5日前にグレイス担当の特集が撮り直しになったり、ハラハラドキドキで目が離せないおもしろさ!“氷の女”と呼ばれるほどクールで仕事第一のアナですが、映画内のインタビューで「強みは決断力、弱みは子供たち」と答える一面も。セレブ文化が世界的流行になることを予見し、ファッションも生き方の一部だと示し、30年近く編集長を務め続けるアナ。垣間見せる情熱的な笑顔が美しく、生き方にもインスパイアされます。それにしても現在、アナは60代、グレイスは70代で現役バリバリ。そこからして元気になれると思いませんか?元アメリカン・ヴォーグ名物編集長ダイアナ・ヴリーランドがぶっ飛んでる!▼ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ監督:リサ・インモルディーノ・ヴリーランド出演:ダイアナ・ヴリーランド真紅のドレスで赤いソファに横たわる真っ赤な部屋は、彼女のリビングルーム。そのDVDのカバーからして、ただならぬ異才を放っているダイアナ・ヴリーランドは、1989年に亡くなるまでアメリカのファッション界に君臨した、まさにアイコン的存在です。キャリアのスタートは戦前。シャネルを着てセントレジス・ホテルで踊っていたら、ハーパース・バザーの編集長、カーメル・スノウから「お洒落ね。仕事しない?」とスカウト。ハーパース・バザーの黄金時代を築き、良妻賢母風で退屈だったファッションを一変させます。ハーパース・バザーで25年間、ファッションエディターを務め、オードリー・ヘプバーン主演の映画「パリの恋人」に登場する編集長のモデルにも。1962年、ライバル誌ヴォーグへ。彼女自身が芸術品といわれるほどクリエイティブな企画で、エジプトロケやヒマラヤロケ、モデルを象と撮影したり、モデルに豹を演じさせたり、ミック・ジャガーを初めてファッション誌に起用したり、垢抜けない娘を女王に仕立てたり、ヌード撮影も…。信じられないほど斬新でダイナミックな企画は、未だに語り継がれるほど。そんなダイアナが1983年、80歳の時、作家のジョージ・プリンプトンに回顧録を依頼した時のインタビュー映像を中心に、周囲の人々へのインタビューで構成されたのが、この貴重な映画です。「自分で磨かなきゃダメよ。肌もポーズも歩き方も、興味の対象も教養も」「新しい服を着ているだけではダメ! その服でいかに生きるかなの」「人生は一度きりよ。やりたいことをやらなきゃ」と、彼女の力強い言葉が背中を押しまくります。人生で迷った時や落ち込んだ時に、間違いなく“活”を入れてくれる1本です。
2015年09月14日100年後の私たちの食べものって、どうなっているの? 大林千茱萸(おおばやし・ちぐみ)監督の映画『100年ごはん』は、そんな不安や疑問に、ある答えを提示してくれます。先日、銀座で行われたホールフード協会主催(タカコナカムラさん主宰)の映画上映会では、 “奇跡のリンゴ” で知られる農業家の木村秋則さんも駆けつけ、未来の食について熱く語ってくださいました。木村さんが伝えようとしていること、映画『100年ごはん』のこと、大林監督とタカコナカムラさんのトークショーなど、イベントの内容とともにご紹介します。木村秋則さんが語る「土と、愛情が育むほんものの食」「すべての農作物は、太陽、水、土、そして愛情が必要なんです。愛情は見えないかもしれない、でもこれが一番大事なんです」何度も挫折を繰り返しながら、自然栽培によるリンゴを生み出した木村秋則さんの言葉には、ズシリと響く重みがありました。農薬や除草剤、化学肥料を使わない果樹の生産は不可能と言われながらも、さまざまな困難を乗り越え成し遂げた木村さん。その夢の実現の秘密は、土にありました。「雑草があるから、土ができているんだ。それに気づくのに6年かかりました」雑草によって土は夏の間も適温を保ち、冬は腐葉土となってフカフカになる。大豆を一緒に植えることで土中の微生物が育つ、そんな自然のままの土のサイクルが、りんごを育ててきたといいます。また木村さんが昔ながらの農法にこだわるのには、理由がありました。「農薬や化学肥料に頼って作る現代の作物は、栄養価も下がっているのです。科学技術庁の『日本食品標準成分表』でもそれは明らかです。たとえば1951年と2000年で比較すると、ほうれん草のビタミンAは8,000IUだったのが、約50年後には700IU、1/10以下に。ミカンのビタミンCは、2,000IUから33IUに。私たちは昔のように食物から栄養を摂ることが難しくなっているんですね。これは大変なことです」今、私たちがやるべきは「次世代に伝える畑を作ること」だと木村さん。大分県臼杵市の、土からはじまる畑づくり木村さんの奇跡が、少しずつ全国に拡がりをみせているなか、大分県の臼杵(うすき)市では、次世代の畑のための土づくりが行われています。無化学合成農薬・無化学肥料の野菜作りを推進するため、2010年から元気な土づくりを始めたのです。映画『100年ごはん』は、その過程を描いたドキュメンタリー映画です。「健康な土で育った “ほんまもん農作物” を、未来の子供たちのために作っていきたい」という市をあげての情熱が、さまざまな人たちを動かしていきます。※「ほんまもん農作物」=臼杵市で認定している農産物の認定制度上映方法が実にオリジナルで、【映画を観て + 共に食事をし + 語り合い + 土に触る】という、五感で体験する上映会を、全国100カ所近くで行っています。100年後の未来も、おいしいごはんが食べられるのかな?あの大林宣彦監督の長女で、料理家でもある大林千茱萸(おおばやしちぐみ)監督が、映画撮影を開始したのは2009年。自ら汗を流してほんものの野菜作りに奔走する前市長からのラブコールに応え、監督することを決めたそう。映画は4年がかりで、120時間の撮影を経て完成されました。映画では、臼杵市役所、市民、教育委員会、給食センター、農協、有機JAS認定機関、加工業者、飲食業者、実際に土を耕す生産者、野菜を買う消費者、そして野菜を食べる子供たち…取り組みの経過とともに、それぞれの日常で少しずつ変化していく人たちが登場します。そしてリアルなドキュメンタリーと同時平行で、現在の「ワタシ」と、100年後の未来の「アナタ」がファンタジーのように言葉を交わし、私たちにいくつもの疑問を投げかけます。はたして100年後の未来も、おいしいごはんが食べられるのかな? と。農薬のこと、気候変動、農家の担い手減少と食料自給率の問題など、いま、私たちの食にまつわる不安はいろいろ。だからこそ、100年後の未来のために、いまからできることを始めなくては。そんなことを考えてしまいます。「映画にさまざまな立場の人が登場するのは、ご覧になった皆さんの立場に寄り添い、他人事ではなく、“自分事”として捉えてもらえたら…という想いから。これから私たちは未来ために何をどう選択していけばいいのか? 臼杵市の例を描いていますが、各地でこうした力強い動きが始まっていることを知って欲しいのです。『はじめの1歩は100歩分!』がこの映画のキーワードなのですが、まずは “知ること” が “はじめの1歩” 。そして映像の行間にある “何か” を感じて、皆さんが暮らしを考えるきっかけとしていただけたら嬉しいです」(大林千茱萸監督)「食だけでなく、食と暮らし、環境まで広い視野で考えて欲しいとの気持ちから活動を続ける私たち。この映画には、まさに同じテーマが描かれていると共感しました。ぜひこの機会に、これからの食のあり方について関心を持っていただけたら」(ホールフード協会 タカコナカムラさん)映画鑑賞のあとは、ホールフード協会 タカコナカムラさんによるオーガニックフードをつまみながら、参加者みんなで意見交換しながら交流も。五感で楽しみ、感じるイベントとなりました。映画『100年ごはん』の予告編はこちら。全国各地で、自主上映会が開催されています。開催情報および予告編はHPにて。 映画『100年ごはん』【プロフィール】木村秋則(きむらあきのり)1949年、青森県中津軽郡岩木町生まれ。木村興農社社長。弘前実業高校卒。川崎市のメーカーに集団就職するが、「農業を手伝ってほしい」という父の説得により、1年半で退職する。1971年から家業のリンゴ栽培を中心に農業に従事。農薬で家族が健康を害したことをきっかけに無農薬・無肥料栽培を模索する。10年近く無収穫、無収入になるなど苦難の道を歩みながら、ついに無農薬・無肥料のリンゴ栽培に成功し「奇跡のリンゴ」と呼ばれている。現在はリンゴ栽培のかたわら、全国、海外で農業指導を続けている。 大林千茱萸(おおばやしちぐみ)東京都生まれ。「天皇の料理番」元宮内庁東宮御所大膳課主厨・渡辺誠氏に師事し、料理家としても活躍。西洋食作法講師・ホットサンド倶楽部主催と様々な肩書きを持つ。11歳で『ハウス/HOUSE』(1977)原案。14歳より映画感想家として、文筆業開始。大林宣彦監督作品では、メイキングや音楽コーディネートなどを担当。AKB48の「So long!」(2013) MVでは数エピソードの脚本・演出を行う。うえだ城下町映画祭自主制作映画コンテストでは審査員を務める。本作が単独監督初デビュー作品となる。著者に「ホットサンドレシピ100」(シンコーミュージック刊)、責任編集本には「リュック・ベッソン」(キネマ旬報社刊)など。 大林千茱萸 Facebookページ タカコナカムラ日本CI協会リマ・クッキングで桜沢里真にマクロビオティック料理を師事。渡米。全米を遊学後、Whole Foodの概念に出会う。2003年東京・表参道にて「Brown Rice Café」のメニュープロデュース。2006年7月独立後、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ、「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を開校。「塩麹」「50℃洗い」のブームの火付け役としてテレビ雑誌で活躍。2013年「ベジブロスをはじめよう」(角川マガジンズ)をきっかけに、「ベジブロス」ブームを起こしている。食と暮らしと環境を次の世代へバトンを渡す活動として、2008年5月「ホールフード協会」も設立。一般社団法人ホールフード協会代表理事。近著は『AGEためないレシピ』(パンローリング)など話題の著書多数。
2015年09月11日この9月、奇しくも、“次世代を担う天才子役”が演じる少年たちが、ある出会いを通じて力強く生きていく姿を魅せる映画が、3週連続で公開される。この3作品に共通するのは、彼らが自分たちの前に立ちはだかる脅威と懸命に闘っていること。そんな少年たちが大人に伝えてくれる、人生の切り開き方に迫った。1.少年VSコドモなジジイ『ヴィンセントが教えてくれたこと』9月4日(金)公開の『ヴィンセントが教えてくれたこと』は、人生に空しさを感じ始めていた“不良老人”が、年の離れた少年との友情を通して、もう一度“生きる力”を取り戻していく物語。アルコールとギャンブルをこよなく愛する、ちょい悪オヤジのヴィンセントを演じるのは、ビル・マーレイ。2015年ゴールデン・グローブ賞で「作品賞」「主演男優賞」(コメディ/ミュージカル部門)にWノミネートされた。本作で少年オリバーが闘うのは、アルコールとギャンブルにおぼれ、口を開けば毒舌を連発する偏屈老人ヴィンセント。大人になりきれないコドモなヴィンセントに、大人な子ども、オリバーは悪戦苦闘する。このオリバーを演じるのはジェイデン・リーベラー。ビル・マーレイ相手に堂々と渡り合った彼は、ラスベガス映画批評家協会賞始め、数々の「ベスト子役賞」を獲得している。2.少年VS限られた時間『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』翌9月11日(金)に公開となる『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』は、厳しい生活環境下で生き抜いてきた少年が、突然の事故をきっかけに米国一のエリート少年合唱団を有する私立高に入学し、才能を開花させ、自身の人生を切り開いていく感動のドラマ。少年合唱団を率いるベテラン団長を2度のオスカーに輝くダスティン・ホフマンが演じる。本作で、少年ステットが対峙するのは“時間”。これはステットだけではなく、少年合唱団員全員に言えることで、ボーイ・ソプラノは永久的に出せるものではなく、少年から大人になるまでのわずかな間だけしか出せない“奇跡の歌声”であるからこそ。夢の舞台を目指しながらも、いずれは終わりが訪れる才能の儚さが秀逸に描かれている。ステット役のギャレット・ウェアリングは、本作が長編映画初出演となったが、それまでモデルとしても活躍し、プリティーン男子モデル賞などを獲得。早くもハリウッドでは、近年まれに見る天才子役と言われ、「リバー・フェニックスの再来なのでは?」と注目を集めており、先日の来日でも話題を呼んだ。3.少年VSアルプス『ベル&セバスチャン』最後に、9月19日(土)公開の『ベル&セバスチャン』は、第二次世界大戦中のナチス占領下のフランスで、ユダヤ人家族を救うため、冬の“アルプス越え”に挑む孤児セバスチャンと野犬ベルの絆を描いた感動物語。孤児セバスチャンが闘うのは、極寒の冬のアルプス。第二次大戦下、山の麓の小さな村で暮らすセバスチャンは、野犬ベルと共にまだ見ぬ母親の帰りを待っていたが、ナチスの捜索の手が伸び、ユダヤ人一家を救うため、道案内人として危険な冬のアルプス越えに命がけで挑む。本作でセバスチャンを演じるのは、2,400人の候補者の中から選ばれた新星フェリックス・ボシュエ。無邪気さとたくましさをあわせ持つ少年を素直な感性で見事に演じ、ベル役の真っ白で大きなグレートピレニーズとの絶妙なコンビネーションを観客を魅せている。純粋な心を持つ少年たちが、素直にまっすぐな眼差しで前を向いて進む姿は、観ている私たちが多くのことを学ばされるかも…。天才子役たちの期待を裏切らない名演は必見だ。(text:cinemacafe.net)
2015年08月31日カンヌ映画祭グランプリ受賞作「夏をゆく人々」がいよいよ日本でも公開となりました。監督は、1981年イタリア生まれの女性監督、アリーチェ・ロルヴァケル。「夏をゆく人々」は、心の奥底に分け入る繊細なみずみずしさと、ダイナミックに場面を切り取る斬新なセンスで、私たちをまったく違ったイメージのイタリア体験に連れ出してくれる話題作です。イタリア映画なのですが、ミラノのお洒落なモンテナポレアーネ通りも、ローマの美味しいピッツェリアも、フィレンツェの有名美術館も登場しません。トスカーナの田舎の村に暮らす、昔ながらの製法で蜂蜜を作る養蜂一家の物語。ひと夏の日常が描かれただけなのに、どこかノスタルジックで人間味あふれる展開にグイグイ惹きこまれていきます。「自然養蜂」にこだわる頑固な父、ひと夏の家族の物語寝る時はどんなに寒くても裸で寝る、という主義らしく、パンツ一丁で寝る父ウルフガング(サム・ルーウィック)は、自然農法ならぬ自然養蜂にこだわるドイツ人。なかなかの頑固親父で、優しいイタリア人のお母さん・アンジェリカ(アルバ・ロルヴァケル)は、たまに腹に据えかねて言い争うことも。4人姉妹と居候の女性ココを含む一家で、光と緑あふれる大地のもと、蜂蜜作りを営む日々。長女ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は13歳にしてその製法に精通し、父親の片腕的存在です。映画の中で登場する、養蜂のプロセスに思わず目がクギ付けに。リアルなミツバチの大群の映像を、最初は「ひえ~っ」と思いながら観ていたのですが、ジェルソミーナの慣れた反応、家族のように接する愛情深い姿勢に、だんだん愛らしく大事な存在に思えてきたから、あら、不思議! 監督自身、ジェルソミーナと同様に、同郷で養蜂家の家に育ち、父親はドイツ人で母親はイタリア人、幼少時からミツバチが最も慣れ親しんだ生きものだったとか。「ジェルソミーナ役のマリア・アレクサンドラ・ルングには、ハチに慣れてもらうため、多くの時間を費やしたわ。役柄になりきってもらうために、養蜂の仕事をマスターしてほしかった。何度かハチに刺されても、マリアはくじけずにがんばってくれたの」と監督。ハチを手づかみはおろか、口の中から出して顔面を歩かせたりするシーンが! 撮影当時は11歳で、それまでは演じた経験が全くなかったという、彼女のプロ根性に脱帽です。 テレビ番組出演と非行少年の同居が、家族の変化の始まりある日、この村に、お国自慢を紹介するテレビ番組「ふしぎの国」の撮影隊が訪れます。司会を務めるミリー(モニカ・ベルッチ)は妖精のように美しい女性。彼女に憧れたジェルソミーナは、番組に出演したくてたまりません。でも、仕事熱心だけれど頭の固い父親は猛反対。考えあぐねた末、彼女はこっそり応募してしまいます。この一家にもうひとつ、14歳の非行少年・マルティンを、少年更生プランのプログラムで預かる、という事件が起こります。身体に触れられることを極端に恐れ、言葉を話さず、言葉の代わりに巧みな口笛を吹く彼は、カラヴァッジオ描く天使のようなお顔立ち。「ふしぎの国」に出演中、マルティンの美しい口笛に合わせて、ジェルソミーナが顔の上でミツバチを操る芸を見せるシーンが、とても印象的でした。淡い胸騒ぎも、父親との軋轢も、ジェルソミーナのひと夏の体験として鮮烈に過ぎ去っていきます。家族の生活臭いっぱいにあふれた家も、家族の在りようも、ずっと同じでは決してない。そんなせつなさが胸を締めつけるラストシーンが見事です。心に鮮やかな刻印を残す。夏の思い出に、この映画をシャイで不器用でカッコ悪い、大人が勝手に思うほどにはキラキラしていない微妙な思春期を、ユニークな関係でありながらも、二人が絶妙なぎこちなさで演じ、胸が熱くなりました。下の双子の妹二人が、実際の姉妹というキャスティングだったり、母親のアンジェリカは、監督の実姉であったりと、要所要所が家族の実感を伴わせるリアリティで下支えされ、この映画の等身大な魅力に結実させています。2014年のカンヌ映画祭審査員には、ソフィア・コッポラとジェーン・カンピオンという、それぞれ強烈な個性を持つ二人の女性監督が参加。異なるジャンルの作品を手がける二人ともがこの作品を評価したのは、「“人間であること”に対する関心が共通していたからではないでしょうか」と、ロルヴァケル監督は語ります。一人の少女の成長記であり、一つの家族の物語でもある「夏をゆく人々」。ジェルソミーナという名前がフェリーニの名画「道」のヒロインを思い出させたり、ミツバチの飼育、父と娘の葛藤というモチーフがビクトル・エリゼの傑作「ミツバチのささやき」を思い起こさせたりするものの、若い監督のアグレッシブなバワーに満ちたこの作品は、新たな名画の扉を開きました。夏の思い出になるであろう名作、ぜひご覧になってみませんか?『夏をゆく人々』2015年8月22日(土)から岩波ホール等 全国ロードショー監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル出演:マリア・アレクサンドラ・ルング、モニカ・ベルッチ 他 アリーチェ・ロルヴァケル1981年12月29日 イタリア・フィレンツェ生まれ。ドイツ人の父とイタリア人の母を持つ。母親役として本作に出演のアルバ・ロルヴァケルは実姉。ドキュメンタリー作品等から映画製作をスタートし、2011年『天空のからだ』(イタリア映画祭 上映題)で長編映画デビュー。長編2作めの『夏をゆく人々』で2014年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞という快挙を成し遂げた。映画写真 © 2014 tempesta srl / AMKA Films Pro ductions / Pola Pandora GmbH / ZDF/ RSI Radiotelevisione svizzera SRG SSR idee Suiss
2015年08月31日2度のアカデミー賞に輝くダスティン・ホフマンと注目の新人俳優ギャレット・ウェアリングが、少年合唱団のベテラン団長と自らの才能を開花させていく天才少年を演じる映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』。このほど、本作をいち早く鑑賞した中谷美紀、BONNIE PINKら各界の著名人から絶賛の声が到着。また、数々の音楽作品を手がけてきた本作のプロデューサー、ジュディ・カイロが語るコメントも到着した。本作は、複雑な家庭環境に育った孤独な少年が、突然の事故をきっかけに米国一のエリート少年合唱団を有する私立高に入学し、ベテラン合唱団団長と出会い、人生を切り開いていく感動のドラマ。大空に舞い上がるような高音域で人々を魅了する13歳ごろまでの少年の歌声は、その時代だけに与えられた束の間の美しさと、奥深い力を放つ。ベテラン教師でいまなお衰え知らずの頑固な合唱団団長カーヴェルに、ダスティン・ホフマン。そして天才少年シンガー、ステットを演じるのは、新人若手俳優ギャレット・ウェアリング。『レッド・バイオリン』(’98)でアカデミー賞「作曲賞」を受賞したフランソワ・ジラールがメガホンを取った。現在、マスコミ関係者向けに行われている本作の試写会は連日、満席が続いており、予約で数十席が埋まるほどの人気ぶり。そして、音楽に精通した著名人を始め、役者、ジャーナリスト、タレント、キャスターと著名人たちから幅広い支持を得て、応援コメントが続々寄せられている。本作でプロデューサーとして名を連ねるジュディ・カイロは、TVミニシリーズ「ELVISエルヴィス」、『クレイジー・ハート』など音楽作品を多く手掛けてきた敏腕プロデューサー。彼女は、本作が多くの人々から共感を得る理由について、「素晴らしいメッセージがあるからだと思う。どの子どもにも輝くチャンスがある。自分の声を見つけ、人生の目標が何であってもそれに到達し、大きな夢をみるチャンスがある。それがこの映画で語っていることなの」と明かす。たぐいまれなる美声という自らの才能を、団長や仲間とのかかわりの中で開花させていくステット少年を体現してみせた新星ギャレットについては、「発見だったわ。素晴らしい子なの」と絶賛。「彼は美しい声と、素晴らしい人柄の持ち主で、監督のいうことをよく聞く。きっとスターになると思うわ」と太鼓判を押している。<著名人コメント抜粋>鳥越俊太郎(ジャーナリスト)「久し振りに心を揺さぶられ、心を洗われ深い感動を覚えた、そんな映画だ。変声期の前に束の間だけ訪れるボーイソプラノの天使の声。問題児だった主人公が歌うメサイアのソロが哀切に胸に響く」BONNIE PINK(シンガーソングライター)「少年のフラジャイル(壊れやすい)な心が、歌という力を得てみるみると強くなっていく。私も小学校の合唱団出身なので、鞭打たれた思い出と重なってジーンと来ました。ボーイ・ソプラノに心洗われた後なら、ファルセットのhigh Dも出るかも!是非お試しあれ」中谷美紀(女優)「孤独な少年の心が少しずつほどけていく姿と、情感あふれる歌声。ただそれだけをシンプルに描いたこの作品に、思わず涙させられました」鎌谷悠希(「少年ノート Days of Evanescence」「隠の王」漫画家)「いまの声を失った未来の自分と自信を、今の声が育んでいる―――。儚く美しい、圧倒的な魅力がボーイソプラノにはあります。それがゆえに心を揺らがせる少年達の想い、見つめる大人達の想いそれぞれが内包されたメサイアのあの合唱を、聴衆のひとりになって何度でも聴いていたい!」『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』は9月11日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年08月20日ナチス・ドイツの手からたった一人で逃げ続けた8歳のユダヤ人少年が実在していたのを知っていますか?現在も存命の本人による証言をもとに書かれたノンフィクション作品を映画化した『ふたつの名前を持つ少年』。戦後70年という節目を迎えた今年見るべき感動と衝撃の実話です。第2次世界大戦時、ユダヤ人少年スルリックは強制居住区から脱走し、森の中へ逃げ込んでいた。家族とも生き別れ、たった一人で道なき道を歩き続けていたが、容赦なく襲う雪により凍死寸前となったスルリックは、ある村でヤンチック夫人に保護される。生きるためにスルリックというユダヤ人の名前を捨てた少年に、夫人は“ポーランド人孤児ユレク”として生き延びる術を覚えさせる。ユダヤ人であるがゆえに、逃げるように転々とする生活を余儀なくされ、常に死と隣り合わせの生活を送り続けた少年の壮絶な運命。父との約束通り生き抜いたユレクが旅の終わりに見つけた未来への希望とは?そして、戦争が終わりを迎えるころ、ユレクには大きな決断を下すときが迫っていた……。大人でも耐えられないような生活を強いられているにも関わらず、生きることを最後まで諦めずに闘い続けたわずか8歳の少年。その強い眼差しが見つめる希望をこれからも守り続けていくべきだと感じさせられ、想像を絶する3年間を耐え抜いた少年の姿に胸を締め付けられます。本作でユレクを演じたのは、ヨーロッパ中で700人以上の子供たちを1年以上かけてオーディションして選ばれた一卵性双生児のアンジェイとカミル。「外交的なアンジェイがアクティブなシーンを演じ、内向的なカミルが繊細なシーンを演じることで、より幅広い感情を表現することができた」と監督が語るように、2人の少年が力をあわせて作り上げたユレクの隣に観客は寄り添わずにはいられません。戦争がもたらす悲惨さや自分の命を顧みずに他人を助ける人間の温かさを目の当たりにしたとき、あなたの中にも多くの想いが込み上げてくるはず。そして、一つの生命が持つ尊さと強さに心を揺さぶられます。一人の少年が背負った過酷すぎる運命は、とても現実に起きていたことだとは信じがたいかもしれません。しかし、それは他人事ではなく、子供から大人まで一人一人が戦争について目を逸らさずに向き合うときが来ているのだと改めて考えさせられるはずです。イベントデータ:『ふたつの名前を持つ少年』公開表記:8月15日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー配給:東北新社© 2013 Bittersuess Pictures
2015年08月12日ダスティン・ホフマン主演の映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』のフランソワ・ジラール監督と、劇中で天才的な歌の才能を持つ少年を演じたギャレット・ウェアリングが来日。8月4日(火)に行われた試写会の上映後に舞台挨拶を行った。孤独な少年が全米一の合唱団を率いる指導者との出会いを経て、変声期前の限られたわずかな期間しか出すことのできないボーイ・ソプラノの奇跡の歌声に青春を捧げ、成長を遂げていくさまを描く。初来日となったギャレットくんは開口一番、覚えたての日本語で「来テクレテ、アリガトウ!」と挨拶し喝采を浴びる。日本で見るもの、食べるもの全てが珍しく、楽しいようで「ポッキーやコアラのマーチを食べました!街のあちこちにドラえもんがいるし面白い!おみやげに買い占めて帰りたいです(笑)。I LOVE JAPAN SO MUCH!!」と満面の笑顔を浮かべる。そんなギャレットくんをジラール監督は絶賛。オーディションで長編映画初出演となる彼を抜擢したが「素晴らしい俳優の誕生に立ち会えたことを幸せに思います。寡黙で孤独な少年の役でしたが、それを演じるには内面性が必要です。彼の年代でそれを有し、それを表現できる俳優はほとんどいません。彼は言葉や動きなしで、佇まいで少年の内面を表現してくれました」と語る。監督自身、親日家で知られ今回が「おそらくは25回目くらいの来日です」とのことだが、初来日のギャレットくんを見やり「これから日本のみなさんも、彼を何度も目にすることになる思います。『これが25回目の来日です』と語る姿を見る日が来ることでしょう」とこれからのキャリアに太鼓判を押した。ちなみに撮影中と比べてギャレットくんはかなり背が伸びたよう。「だいぶ伸びました。実は撮影中も伸びてて、衣裳スタッフから『これ以上伸びちゃダメ!』と言われました(笑)。そんなこと言われても困るけど…。髪も短くなったし、残念だけど、もう高音の『レ』は出せません…」と凄まじいスピードでの成長を明かした。撮影現場ではダスティン・ホフマンやキャシー・ベイツといった大御所の俳優陣にかわいがられたようで「初めての長編映画で彼らと仕事をさせてもらえるなんて、貴重な経験でした。彼らは気さくでオープンで、いろんなことを教えてもらいました。そこで教わったことは僕にとっては宝物です。一緒にランチに行くこともありました。一度、ダスティン・ホフマンとキャシー・ベイツも一緒にバーガー屋さんに行ったことがあったんだけど、ダスティンは先に着いてて『おれはもう4つ目だけど、どんどん食べなよ』と大盤振る舞いでした(笑)。キャシーとダスティンに挟まれてランチを取ることになるなんて今でも信じられないね」と語っていた。ちなみに、次回作の予定を尋ねるとギャレットくんは「『インディペンデンス・デイ』の続編の撮影をもう終えました。20年近く前の映画の続編ですが、すごい映画になってるよ!」とアピール。一方、ジラール監督はオペラや舞台の演出が決まっているそうだが、特に2011年に中谷美紀を主演に迎え、井上靖の同名小説を舞台化し、ジラール監督が演出を務めた「猟銃」が来年、再び日本で上演されると明かし「美紀さんが本当に素晴らしいのでぜひそちらもお楽しみに」と呼びかけた。『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』は9月11日(金)より公開。(text:cinemacafe.net)
2015年08月05日ギラギラ照りつける真夏の太陽を浴びると、身体の奥底からプリミティブなリズムが湧きあがってきて、本能のままに踊ってみたくなりませんか? えっ、紫外線は気になるし、ただでさえ夏は弱いのにとんでもない? いえいえ、エアコンの効いた涼しいお部屋でお楽しみください。人間が本来、持っている“踊りたい!”という欲求を、余すところなく満たしてくれるダンスシーンが見事な映画たち。特に、狂おしいほど魅力的なラテンのステップが、これでもか!これでもか! と楽しめるマンボ、フラメンコ、タンゴは、ダンスに興味がなくてもその肉体美に目がクギ付けに! お薦めの傑作映画を3本をご紹介します。セクシー&官能的なダンスで、マンボの魅力に開眼▼「マンボ・キングス わが心のマリア」監督:アーネ・グリムシャー出演:アーマンド・アサンテ, アントニオ・バンデラス, キャシー・モリアーティキューバからニューヨークへ、アメリカンドリームを夢見てやってきた歌手のセサール(アーマンド・アサンテ)と、作曲家でトランペッターのネスター(アントニオ・バンデラス)兄弟。彼らが、アメリカのショウビズ界でスターダムに上りつめる様子が、情熱的なラテンのリズムに乗って、スタイリッシュに描かれます。1950年代、マンボ全盛期のニューヨークを背景に、アメリカの伝説的なコメディ番組「ルーシー・ショー」に二人が出演するシーンも。1992年製作で、これが英語圏の映画初出演となるアントニオ・バンデラスが、恋に悩む初々しくも激しい青年を好演。“最高にセクシーで、狂おしいほど官能的”という謳い文句通り、圧巻なダンスシーンが見物です。音楽好きにはたまらない、ラテンミュージックのトップスターたち、セリア・クルーズ、ティト・プエンテ、リンダ・ロンシュタット、ロス・ロボスらが、なんと実際に登場! ノリノリで歌い踊るシーンからは、本場の熱気がムンムン伝わり、一緒にステージを囲んでいるような気持ちになることでしょう。思わず腰が動いちゃう1本です。一流アーティストたちが華麗なる共演を果たした鳥肌もののドキュメンタリー▼「フラメンコ・フラメンコ」監督:カルロス・サウラ出演:パコ・デ・ルシア, サラ・バラス, マノロ・サンルーカル, ホセ・メルセー, ミゲル・ポペダ「血の婚礼」「カルメン」「恋は魔術師」のフラメンコ3部作が有名なスペインの巨匠カルロス・サウラ監督と、アカデミー賞撮影賞に輝く“光の魔術師”ヴィットリオ・ストローラが、スペインを代表する一流アーティストたちをドキュメンタリーで描いた傑作。フラメンコはともかく、ダンスシーンを延々見せられるのはちょっと…という方、ご心配なく! 1曲ずつ独立した21幕で構成され、ダンサーと歌手とバンド、ダンサーとギタリスト、ピアニスト2人、群舞など、それぞれが個性豊かに登場するオムニバス的な演出。美術館で個々の展示室を巡るように優雅に鑑賞でき、決して暑苦しくありません。フラメンコ界の“神”と称される、ギターのパコ・デ・ルシアを始めとするマエストロたちと、新世代の豪華なダンサーたちの華麗な競演は鳥肌もの。ダイナミックなダンスを最高に美しく見せる美術や衣装も秀逸で、本国スペインで“最高の芸術作品”と讃えられた本作。スペインに次ぐフラメンコ人口を誇る日本でも、きっとロングセラーになるはず。見事なダンスシーンと望郷のせつなさ…踊ることは生きること▼「タンゴ ガルデルの亡命」監督:フェルナンド・E・ソラナス出演:マリー・ラフォレ, フィリップ・レオタール1976年の軍事クーデターで、誘拐、拷問、虐殺が日常化したアルゼンチンから、パリに亡命した女優のマリアナ(マリー・ラフォレ)は、同じく亡命してきたバンドネオン奏者や仲間たちと、音楽劇「ガルデルの亡命」を上演しようと腐心中。ところが、官憲の眼を盗んで祖国から送られてくるはずの台本の結末が、いつまでたっても届かなくて…。ガルデルとは、不世出のタンゴ歌手、カルロス・ガルデルのこと。人気の絶頂期にあった1935年、アメリカから故郷ブエノスアイレスへ帰る途中、飛行機事故で早逝。この映画では、彼の録音した2曲の音源が使われ、アルゼンチン人の漂白の悲しみが伝わります。本作で新しい音楽を担当したタンゴの革命児、アストル・ピアソラは、試写でガルデルの歌を聴いて泣き出してしまったとか。音楽劇のリハーサルが進行していくストーリーで、見事なダンスシーンが続き、まるでミュージカルのような展開にワクワクしっぱなし。とはいえ、電話線だけでかろうじて祖国と繋がっている人たちのせつない思いも胸に迫って…。同じく亡命を体験しているフェルナンド・E・ソラナス監督が、望郷の念、愛、明日への希望をユーモアと詩情を散りばめて描き、数々の映画賞を総なめにした1985年の傑作。ぜひご堪能ください。美しいだけでなく、生きることと踊ることが一体化した“命のダンス”は、人生を浄化してくれる清流のように、私たちを癒し昂揚させてくれるでしょう。人間ってすごいな! そんな人間賛歌を感じるダンスで、心身を思う存分リフレッシュさせてください。・ 「マンボ・キングス」 ・ 「フラメンコ・フラメンコ」 ・ 「タンゴ ガルデルの亡命」
2015年07月31日フリーダ・カーロという画家を知っていますか? 1907年メキシコ生まれ。6歳の時に小児マヒを患って右足は短いまま、18歳で電車とバスの衝突事故に遭い、バスの折れた鉄柱が下腹部を貫通。脊椎、鎖骨、右足、骨盤の骨折で一時は医者にも見放され、生還しても47歳で亡くなるまで後遺症に苦しみ、それでも情熱的に描き続けたフリーダのことを。死後50年を経て、フリーダ・カーロ博物館からの依頼で彼女の遺品を撮影することになったのが、原爆で亡くなった人々の衣服を撮影した写真集「ひろしま」などで著名な世界的写真家、石内都さんでした。石内さんをテーマに映画を撮りたいと念願していた小谷忠典監督が、メキシコで石内さんに同行してカメラを回し、さらにメキシコの歴史や文化にも分け入って撮影した映画が、この魅力的で貴重な「フリーダ・カーロの遺品」です。遺品なのに、まるでフリーダが生きているかのよう! 偉大な画家というより、一人の女性としてフリーダを甦らせた石内さんは、普遍的な“女の人生”を私たちに突きつけます。女性として芸術家として、共通点を持つこの二人を、生と死の境を越えて活写した小谷監督にお話を伺いました。自分の傷に気づかせてくれた石内さんをテーマに、映画を撮りたい学生の頃から石内さんのファンで、いつか彼女の映画を撮りたいと思っていた小谷監督がインスパイアされたのが、石内さんが身体の傷を撮った写真集「scars」でした。「10年位前、結婚したいと思ったバツイチの女性に子どもがいて、その子の父親になりたいと思った時、引っかかるものがあったんです。それが何かはわからなかったけれど、石内さんの写真を見た時、自分の傷に気づかされて。自分には、父親がアルコール依存症という問題がずっとあったのですが、そのことと向き合わないと進めないんだなと」父親の理想像を追い求め、実際の父親とぶつかっていた自分が、石内さんの写真を見たことによって理想が崩れ、父親を一人の人間として受け容れられるようになったとか。その変化は非常に大きく、後に小谷監督は、自身の家族を撮った映画「LINE」のパンフレットで石内さんにコメントを依頼します。今回、彼女をテーマに映画を撮りたいと連絡した時は、たまたま石内さんがメキシコに旅立つ2週間前だったとか。「まさか、メキシコへ行ってフリーダを撮ることになるとは、全然思ってなかったです。こんなすごいプロジェクトを見過ごすわけにはいかないでしょう! とプロデューサーを説得し、石内さんの到着した2、3日後、どうにかメキシコに降り立ちました」フリーダ個人の奥にあるメキシコの歴史や文化を投影青く塗られた壁が印象的な、通称“青い家”。フリーダ・カーロの生家であり、夫の画家ディエゴ・リベラと結婚生活を送り、最期の時を迎えた場所、フリーダ・カーロ博物館の陽光の当たる中庭や、風通しのよさそうな明るい室内で、石内さんが撮影しています。何万点もある遺品の中から、即決で選び、撮らないものは「アディオース!」と除けていく姿勢の軽々と楽しげなこと。そのキュレーションの見事なこと。「石内さんも、最初はフリーダ個人を捉えていたんですけれど、遺されたものの中にある色彩とか質感、ディテールから、フリーダ個人より、もっと奥にあるメキシコの歴史とか文化に、どんどん着眼されていったんです。ただの記録では映画にする意味がないので、そういった石内さんの目には見えない仕事も可視化するというか、映像で伝えたいなあという思いがあったので、翌年、もう一度メキシコを訪れたんです」フリーダの母親の出身地オアハカで死者の祭りを撮影し、フリーダが日常的に愛用した伝統衣装テワナドレスを作る刺繍家の女性たちを取材するなど、映像に民俗色豊かな色彩感と文化の奥行が加わりました。テワナドレスは母から子へと受け継がれるとか。女性の手仕事も脈々と受け継がれ、「着物と同じね」と石内さんが撮影中に共感するシーンも。フリーダの強さは日常をちゃんと送っている生命力の強さ「フリーダは衣装持ちですが、その中でもテワナドレスは圧倒的に多い。痛みをあれだけ抱えた人だったので、衣装に守られているという感覚があったんじゃないでしょうか」1937年ヴォーグに載った時に着ていたグリーンのブラウスが、お洒落で驚きました。「自分をアピールするために、戦略的だったとは思うんですけれど、それだけじゃなく本当に大事にしていたんでしょうね。ただ、彼女はセルフプロデュースが本当に上手い人だと思います。本人は身長150cm足らずなのに、あれだけ大きく見せるというか、強く見せるというのは、衣装の力が大きいと思いますね」フリーダは、洗練された独自の感覚でテワナドレスを注文していたので、現地の刺繍家たちからは、あれは伝統本来のものではない、と言われているようです。「センスいいですよね。石内さんも着物を着崩して着るんですけれど、本当にかっこいいと思います」石内さんが淡々と撮影した写真は、光や風と柔らかく重なり合って、まるで家族の遺品をファミリーで見ているような親密な日常感に繋がってくるから不思議です。「石内さんもおっしゃってましたが、フリーダはいろいろセンセーショナルな物語を抱えていましたけれど、彼女の強さはそういうものじゃなく、あれだけの障害を抱えながら、ちゃんと日常生活を送っていた強さだと。映画でも、フリーダの日常の生命力を描きたいと思っていました。彼女は衝撃的な絵を描いていますが、タッチとか見るとすごく繊細で可愛らしかったりするんですよね。実物を見ると、よりそれは感じました」そんなフリーダの遺品を、あちらのスタッフが「こんなところで撮るの?」と驚くほど、石内さんはカジュアルに撮影していたとか。「ものを撮ってる感覚ではなく、身体としてものを撮れる人だから、フリーダ像を一回とっぱらって、もう一回、普遍的な女性というものを立ち上げるんだという意識は、最初から持っていたと思うんです」と小谷監督。撮影中も、「フリーダ、そうだったの」と話しかけながら撮影していたという石内さん。メキシコに行く前から話しかけていたそう。「フリーダ、呼んでくれてありがとう」と。そんな女性二人の息吹が伝わってくる「フリーダ・カーロの遺品」、自分に投影して観てみませんか? きっと新しい発見があり、生きる勇気が湧いてくるはずです。ドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 ― 石内都、織るように』2015年8月からシアターイメージフォーラムほか 全国順次公開監督・撮影:小谷忠典 出演:石内都 予告編: 小谷忠典(こたに・ただすけ)1977年大阪出身。絵画を専攻していた芸術大学を卒業後、ビュジュアルアーツ専門学校大阪に入学し、映画製作を学ぶ。『子守唄』(2002)が京都国際学生映画祭にて準グラン プリを受賞。『いいこ。』(2005)が第28回ぴあフィルムフェスティバルにて招待上映。初劇場公開作品『LINE』(2008)から、フィクションやドキュメンタリーの境界にとらわれない、意欲的な作品を製作している。最新作『ドキュメンタリー映画100万回生きたねこ』(2012)では国内での劇場公開だけでなく、第17回釜山国際映画祭でプレミア上映後、第30回トリノ国際映画祭、 第9回ドバイ国際映画祭、第15回ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭、サラヤ国際ドキュメンタリー映画祭、ハンブルグ映画祭等、ヨーロッパを中心とした海外映画祭で多数招待された。映画写真 ©ノンデライコ2015
2015年07月24日大人の純愛…という言葉からどんな恋愛を思い浮かべますか。淡々と落ち着いた節度ある感情? 激しくドラマティックな官能? ワケありで他人に言えない関係? 大人の事情が絡んで複雑に交錯しているかもしれません。純愛の定義は難しいけれど、でも、決して駆け引きをしないこと、そして安全地帯に逃げ込まないのが純愛ではないでしょうか。酸いも甘いも噛み分けられるからこそ、ピュアさの純度が高くならざるを得ない恋。せつなさで胸が締めつけられる感覚は、私たちをダイレクトに刺激してくれるキレイの源だと思うのです。枯れるには早すぎる! 乾きがちな心と身体に潤いを行き渡らせてくれる、大人の純愛映画を3本ご紹介しましょう。タンゴとともにほとばしる恋▼ 愛されるために、ここにいる監督:ステファヌ・ブリゼ出演:パトリック・シェネ.アンヌ・コンシニ.ジョルジュ・ウィルソン離婚して一人暮らしをしている、人生に疲れた中年男ジャン=クロード(パトリック・シェネ)は、裁判所の司法執行官。医者に運動不足を指摘され、オフィスの窓を開けると音楽が聞こえてくる近所のタンゴ教室に通い始めます。そこで出会ったのが、結婚を控え、ウェディングパーティーでタンゴを踊るため、レッスンに通っているフランソワーズ(アンヌ・コンシニ)。彼女の婚約者は小説の執筆に追われていて、二人はすれ違ってばかり…。堅物で不器用なジャン=クロードが、アルゼンチンタンゴの調べとともに、フランソワーズと恋に落ちていく様子が自然で美しく、ぎこちなく踊るシーンから目が離せません。ジャン=クロード演じるパトリックが、インタビューで「主導権を握るのは女性です。男は居心地の悪さを感じながらも女性について行く。自分が何を求めているかわからないこともあるのに、女性は常に自分の感情に素直なんです」と語っているのも興味深いものが。一見、地味な恋愛映画ですけれど、セザール賞に主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞と3部門もノミネートされた、フランス人好みの名作。やるせない哀愁と孤独、そして、シンプルな感情が心を打つ純愛映画。心の水脈がヒタヒタとみなぎってくるでしょう。女性作家ジョルジュ・サンドと年下の詩人ミュッセの恋愛▼ 年下の人監督:ディアーヌ・キュリス出演:ジュリエット・ビノシュ, ブノワ・マジメル, ステファノ・ディオニジ, ロバン・レヌッチ, カリン・ヴィアール19世紀、ロマン主義花咲くフランス。男尊女卑だった時代に、奔放で恋多き女性作家ジョルジュ・サンド(ジュリエット・ビノシュ)と詩人アルフレッド・ミュッセ(ブノワ・マジメル)の激しい愛の葛藤が描かれます。1999年の作品で、当時25歳のブノワ・マジメルがセクシーで美しい。役柄では6歳年上、実際は10歳年上のジュリエット・ビノシュと、この共演がもとで結婚するのですから、いかにドラマティックな映画かわかるはず。ディアーヌ・キュリス監督は、「私はジョルジュ・サンドを通して、すべての自由な女性を讃えたかった。ある日、『もうたくさんよ!』と言って立ち上がることのできるすべての女性を」と語っています。クリスチャン・ラクロワの衣装も美しくゴージャスで圧巻。文学好きでなくとも愉しめる、現代にも通じるせつない恋をぜひ堪能してください。キレッキレの純愛のせつなさに酔いしれる▼灯台守の恋監督:フィリップ・リオレ出演:サンドリーヌ・ボネール, フィリップ・トレトン, グレゴリ・デランジェール“世界の果て”と呼ばれるブルターニュの小さい島。そこで生まれ育ったマベは、灯台守の夫イヴォンと暮らしていますが、そこにアルジェリア帰還兵のアントワーヌが、新人の灯台守として赴任してきて…。最初の視線で、何かを感じ合う二人。閉鎖的な過疎の村という環境と、荒れ果てた海の中に立つ灯台という絶景なロケーションの中、絡み合う視線だけで描かれていく禁断の恋が見事です。マベを演じるサンドリーヌ・ボネールは、派手な美人ではないのに、女の人っていいなあ、と同性にも感じさせる魅力で惹き込まれます。穏やかだけれど何かを秘めているアントワーヌとの恋が夫に知られてしまい…。嵐の夜、二人一組で灯台守をすることになったアントワーヌとイヴォン、荒れ狂う波に飲まれそうになるアントワーヌを、イヴォンは助けるのか? ドキドキが止まらない、これぞまさしく大人の純愛! お薦めです。この3本に共通するのは、恋する視線の清冽さ。視線が語る純愛は、大人度が高くてせつないです。恋していてもいなくても、濃密で繊細な感覚が美意識を研ぎ澄ませてくれる映画たちで、感性の潤い美人になりましょう。
2015年07月23日「アポロ11号着陸映像は捏造で、キューブリックが製作したらしい」という都市伝説を題材にしたコメディ映画『ムーンウォーカーズ』が11月に公開されることが決定した。その他の情報アポロ11号は1969年に月面に到着し、その模様は中継されて全世界の人々を驚かせた。しかし、この中継映像はねつ造だったという陰謀説を信じている人はいまだに存在する。本作はそんな陰謀説を題材にしたコメディで、月面着陸を成功できないNASAに愛想をつかしたアメリカ政府が映画『2001年宇宙の旅』を手がけた巨匠スタンリー・キューブリック監督に月面着陸映像のねつ造を依頼するため、CIA諜報員・キッドマンを彼が住むロンドンに送りこむところから始まる。しかし、ベトナム戦争帰りで映画にまったく詳しくないキッドマンは、偶然、キューブリックのオフィスにいたダメ男のジョニーに金をダマしとられ、その金を奪還する過程で、なぜかジョニーとタッグを組んで“ねつ造計画”に挑むことになる。このほど公開された画像は、新聞の号外風のデザインで、映画が壮大にしてブラックな笑いに満ちた作品であることを感じさせるデザインだ。アポロ計画、ねつ造、キューブリック、CIAとダメ男のコンビ……などコメディ映画ファンには気になる要素が揃った本作は11月から公開になる。『ムーンウォーカーズ』11月14日(土)より 新宿シネマカリテほかでロードショー
2015年07月21日