福島ガイナックスは、漫画家/イラストレーター・寺田克也氏の個展「寺田克也ココ12年展~絵を描いて生きていく方法?~」を開催する。会期は10月31日~2016年1月31日(大晦日・元旦は休館)。会場は、福島県・田村郡の「空想とアートのミュージアム 福島さくら遊学舎」。会期中は夢枕獏氏とのトークセッションをはじめ、新作襖絵の公開制作やサイン会が実施される。入場料は大人800円、大学生700円、中高生600円、小学生400円。同展は、数々のゲームやアニメ、書籍、コミック作品を手掛けてきた漫画家/イラストレーター・寺田克也氏の個展。大判で出力したイラストを襖(ふすま)に貼りこみ、屏風のように演出して60点以上が展時されるという。加えて、同氏の新刊書籍「絵を描いて生きてきた」に収録される新作イラストなども展時される。 ほかにも、寺田氏本人の制作風景を収めたドキュメント映像など、「絵を描いて生きてきた」寺田氏の創作の秘密を垣間見ることのできるコンテンツが多数出品されるという。また、開催初日の10月31日・13時からは、寺田氏と公私ともに親交があるという夢枕獏氏を迎えてのトークセッション『寺田克也×夢枕獏「ものをかいて、 生きてきた」』が開催される。会場は同館 工作室。参加費は1500円(展示観覧料込み)。参加希望舎は、同ベント当日に「さくら遊学舎」受付でイベント参加権付き入場券を購入する(定員は先着100名、先着順)。さらに、11月21日、22日、23日と1月9日、10日には、展示室内で寺田氏本人による新作襖絵の公開制作『寺田克也「絵をかいて、 生きている」』が実施される。このほか、1月9日と10日には、当日、本館ミュージアムショップにて対象商品を1000円以上購入した来場者を対象に、寺田氏のサイン会が開催される予定となっている。
2015年10月05日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。ペン先のちょっとしたズレが気になったまずりんさん、哀ちゃんのアドバイスで調整し直して、使いやすい状態に。ようやく本題のイラスト描画に突入か?~ワコムの会議室の中~~15分後~次回はいよいよ最終回。お楽しみに!
2015年09月24日今回のテーマは「作業中の飲み物」についてである。○兼業漫画家にとっての「神の雫」基本的には水を飲んでいる、もちろん、ミネラルウォーターなどというしゃらくさい物は飲んでいない。まじりっ気なし100%の水道水だ。冬はストレート。夏はそのままだとぬるいので、これまた同じ水道水で作った氷でロックとシャレこむ。原料が同じなだけに、実に親和性が高い仕上がりとなっている。私にとっての神の雫だ。なぜ水道水を飲むのかというと、まず蛇口をひねれば出てくる、というところが大きい。やれ自動販売機だのコンビニだのにわざわざ出向いて飲料を買い求めていては、その間に干からびて死ぬおそれがある。人間の体は6~7割が水分なのだ。水分補給は常に一刻を争い、一秒の遅れが死を招く。もちろん自宅で麦茶を作るなどもってのほかであり、作っている間に確実に手遅れになるに決まっている。このように平日は大体水道水を飲んでいるが、休日は趣向を変える。休日と言っても会社が休みなだけであり、逆に言えば「長時間原稿を描く日」である。長丁場を耐え抜くための飲み物を摂取せねばならない。まず、一番多く飲むのがコーヒーだ。コーヒーが好きかと言われたら、正直そんなに好きではなく、ただ苦いと思う。しかし、ここでミルクココアなどを淹れてしまったら「甘~い!うま~い!もう一杯!」とか言って3秒で飲み干すに決まっている。あくまで作業中の飲み物だ、まんじりと減らないぐらいでちょうどいい。コーヒーを飲むのは、もちろんその眠気覚まし機能に期待しているからだ。あまりに期待しすぎて、村上春樹が言うところの「新聞紙を煮たようなコーヒー」を作ってしまうほどだ。とにかく濃すぎてコーヒーなのになぜかトロみがついている、もはやコーヒーというよりドブと形容していい一品である。日曜の朝から一日中ドブをすすりながら漫画を描く姿はスタイリッシュさの欠片もないので、もっとスマートにコーヒーの粉だけ食べる、もしくは淹れたてのコーヒーを頭からロックに浴びるなどの検討が必要である。現代の漫画家の仕事風景はもっとクールでなくてはいけないのだ。○エナジードリンクのクールな"効能"現代と言えば、「エナジードリンク」もここ数年で台頭してきた飲み物だろう。コンビニに行けば、レッドブルを筆頭にたくさんのエナジードリンクが置かれている。昔からあるオロナミンCやリアルゴールドに似ているが、それよりは割高なので、おそらく成分も高いのだろう。私も、このエナジードリンクの類をたまに飲む。どういう時に飲むかと言うと、ここが山場とか、もうひと踏ん張りしたい時などではない。「忙しい自分がカッコ良くて仕方がない時」だ。日本には「忙しい自慢」という文化がある。「寝てない」「休みがない」などをさも自分が有能であるがゆえのことのように、自慢げに言うことだ。漫画を描く人間にもこの文化はあり、それがいわゆる「修羅場自慢」である。昨今の「修羅場自慢」はTwitterを使って行われることが多く、「締め切りまであと…3日!」、「白紙があと10Pもある」などとでつぶやいたり、「原稿をやれ」と言うbotの発言をリツイートした後「ひえええええ!」などとポストしてしまったりする行為を指す。Twitterをしている時点で忙しくないだろうと思われるかもしれないかもしれないが、「修羅場自慢」をする人(私も含む)は、本当に忙しくはあるのだと思う。ただ、どうせ忙しいなら、このオレの忙しい雄姿を見てくれという気にもなってしまい、その誘惑にはなかなか勝てないものだ。よって、SNSをやっていながら原稿の進捗には一切触れず、もちろん「修羅場自慢」をすることもなく、延々と食った飯など別の話をしている作家業の人を私は尊敬する。ともかく、「忙しい自慢」をするのに、エナジードリンクは最適のアイテムなのである。ただ「忙しい」と言うのではなく、「今日レッドブル3本目…」とコメントすると、かなりの忙しさが演出できる。ソークールだ。また、エナジードリンクの長所は飲みやすいところだ。ほとんどの物がジュースと変わらない味をしている。本当に本気を出したいなら、もっと高価な栄養ドリンクを飲めばいいのだが、あの手の物は高値になるほどまずいので飲みたくない。その点、レッドブルはジュースを飲むだけで「俺頑張っている感」が出せるので最高なのである。だが、それでも満足できないほど自意識がスパークした場合は「こんなまずいものを飲んで頑張る俺」という臥薪嘗胆ムードを出すために、ユンケルや眠々打破を投入する時もある。そうした時はもちろん、飲んだユンケルの写真つきでツイートする。ちなみに、エナジードリンクにしろ栄養ドリンクにしろ、それらの効果自体については良くわかっていない。とにかく自分のテンションが上がって、みんなに自分のガンバリを見せられればそれでいい。あとは、ちょっとイエローが濃い目の尿を出すためだとでも思っている。自分がエナジードリンクなどを飲む目的は上述したようなことだが、みんながみんなそうと言うわけではないし、実際にがんばっている人が飲んでいる場合もある。しかし、やっぱりそんなに頑張ってない奴も多く飲んでいるのがエナジードリンクと言う物であろう。だからこそ、それらを飲んでいる人を見ると、「頑張っているアピールに精が出ますな!」と肩を叩きたくなってしまうのだ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は9月22日(火)昼掲載予定です。
2015年09月15日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。コンパクトなOS入り機種「Cintiq Companion 2」のファンクションキーの活用を哀ちゃんから教わったものの、年上のまずりんさん&アデ子さんを逐一煽る小生意気な言い方に怒ったまずりんさんが、ついに作者の権力を振るって哀ちゃんの顔に落書きを! 液晶ペンタブレットになれてきて絶好調のまずりんさん、今回はついに作画完成なるか?~ワコムの会議室の中~次回は、Cintiq Companion 2を漫画家・まずりんさんが実際に使う想定で使う様子に迫ります!(のんびり待て!)
2015年08月21日柳楽優弥&瀬戸康史がW主演を果たす『合葬』が、第39回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門に正式出品されることが、このほど決定した。漫画雑誌「ガロ」に連載され、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した杉浦日向子の同名漫画を実写映画化する本作。NHKテレビ小説「まれ」に出演中の柳楽優弥と、今年デビュー10周年を迎えますますの飛躍を見せる瀬戸康史がW主演を果たし、ほかにも若手実力派の岡山天音や、『FOUJITA』の公開を控えるオダギリジョー、柳楽さんと同じく「まれ」出演中の門脇麦、「なぞの転校生」の桜井美南ら個性溢れる共演陣が勢ぞろいし、これまでの“時代劇”とは一線を画すリアルな青春群像を紡ぎ出していく。このほど本作の出品が決定したモントリオール世界映画祭は、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界三大映画祭に次ぐ北米最大規模の権威ある映画祭であり、近年立て続けに日本映画が受賞。今年すでに中村倫也主演の『星ガ丘ワンダーランド』の正式招待も決定し、“日本好き”として知られる本映画祭は大きな注目を集めている。そして、今回の正式出品を受けて柳楽さん、瀬戸さん、岡山さん、小林監督からコメントが届いている。■柳楽優弥今回このようなお知らせを聞く事が出来てとても光栄です。僕は舞台の稽古中の為、現地へ伺う事が出来ませんが、『合葬』に込められた想いがモントリオールの方々にどう感じて頂けるのか、とても楽しみです。■瀬戸康史小林監督、スタッフ、共演者の方々と共にリハーサルを重ね、短い期間でしたが昨年の暑い夏、妥協せず闘った作品が評価され、個人としては初の海外映画祭コンペの出品となったことを光栄に思います。まるで自身の目で見て、感じた幕末の人間模様や風俗をそのまま描いた、杉浦日向子さん原作の日本の時代劇映画が世界の沢山の方々に観ていただける機会を与えられて嬉しく思いますし、今作は僕ら日本人が観ても、“新しさ”を感じる時代劇で、海外の方々の反応が今からとても楽しみです。この映画から、亡くなった者、遺された者、それぞれの生き様を見届けてほしいと思います。■岡山天音『合葬』が、モントリオール世界映画祭に出品された事、とても嬉しく思います。日本の幕末という時代を生きた人間たちの、ありのままの生き様に国境を越えて寄り添ってもらえたら最高です。■小林達夫監督『合葬』のWorld Competition部門ノミネート、嬉しく思います。若者の置かれている状況に対する不安や、仲間同士の羨望や嫉妬といった感情から生まれるストーリーは、時代劇という枠にとらわれず普遍的な青春映画のテーマとして海外の方にも共感していただけることを願っています。尚、映画祭には、小林監督と瀬戸さんが出席予定。瀬戸さんの海外映画祭への参加は今回が初となり、海外でどのような注目を集めるのか大いに期待がかかる。『合葬』は9月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年08月12日今回のテーマは「タスク管理」についてである。○"やればできる"タスクを掲げる漫画家というのは、実はとてもタスク管理をしやすい職業だ。連載であれば毎月あるいは毎週、締め切り日というのは大体決まっている。今月はダーツで締め切りを決める、などということはまずない。中には、お盆進行、年末進行(盆暮れに印刷所か休みになるため、締め切りが前倒しになること。ネット連載でも同じような進行を求められることがあるが、それは編集が休むためのものなので無視していい)というイレギュラーもあるが、毎年盆と正月が来ることはわかりきったことなので問題はない…と言いたいのだが、毎年連休進行をやっているのに毎回忘れるのが、漫画家七不思議のひとつでもある。よって連載分に関しては、締め切り日に向けて何日までにネームを出す、何日までに完成稿を出すというルーティンをこなしていけば何の問題もないのだ。このように書くと、とても計画性がある生真面目な人間のように見えるかもしれない。だが、私が提出しているのは、もはや描いた本人ですらおもしろいかどうかわからなくなっている、締め切りを守っている以外は長所が見当たらない原稿である。「面白くて売れる漫画を締め切り内で描く方法」が知りたい場合は他を当たってほしい。では、具体的にどのように仕事を計画通り進めているかというと、とにかく1日でやることを決め、それを必ず実行するようにしている。つまり、「今日中にネームを描く」と決めたら、親が死んだとか、自分が死んだとか、よほどの事が起こらない限りは何を差し置いてでも描くのだ。もちろん、「モテたいから今日中に15歳若返って顔面をぱるるにする」というような目標は立ててはいけない。あくまでノルマは「やればできる」範囲にすることが重要である。逆に、やると決めたことは必ずやるが、それ以外のことはまったくしない。予想より早く終わったからといって、明日の仕事を前倒しでやるということはしない。たとえ他にやることがまったくなく、虚空を見つめるしかなかったとしても、仕事だけは絶対しない。つまり、「今日やること」を終えてしまえば後は自由時間であり、早く終わらせれば終わらせるほど、その時間は長くなる。なので毎日「よし、こいつを早くやっつけて思う存分虚空を見つめるぞ!」という高いモチベーションを持って仕事にあたることができるのだ。しかし、繰り返しになるが本当にやると決めた以外のことはやらない。それは原稿に限ったことだけではないので、「部屋の掃除」が一日のノルマに入ってない場合は、どんなに汚れていてもやらない。そのため、ゴミに囲まれて虚空を見つめているという、端から見れば「お前他にやることあるだろ」という状態になってしまうこともままある。これが怠けているのではなく「一日の戦いを終えた戦士の休息」であると理解されないのが、非常に残念なところだ。○先々のタスクが生む「無間地獄」早く終わったなら、次回のネタでも考えた方が後々楽になるのではないかと思われるかもしれないが、あんまり先のことを考えすぎるのも良くない。漫画家にとって一番つらいのは、志半ばで連載が打ち切りになってしまうことだが、その次につらいのが連載を続けることである。続けさせてもらえることがいかにありがたいことかはわかっているが、続けていく内にどうしてもネタ切れが起こる。そこを何とかひねりだして脱稿した後に「来月も同じことをしなきゃいけないんだよな」と思うと暗澹たる気持ちになるのだ。今回が早く終わったからと言って、次回、次々回のことまで考えていると、脳裏に「無間地獄」という言葉が浮かんでくる。結局漫画の連載も会社と同じで、続けなければいけない内は「会社爆発しねえかな」と思ってしまうのだ。もちろん、実際に爆発(打ち切り)したら困るのはわかっている。もし瓦礫と化した会社の前で小躍りしているやつがいたら本物のノイローゼであり、むしろそいつが爆破した本人であろう。つまり、「どうせ明日も行くんだから」と連日会社に泊まりこんだりはしないように、漫画の仕事もどこかで区切らないとエンドレスになってしまい、その内自宅を爆破してその前で踊り狂うことになる。次のことは、次の締め切りまでに考えればいいのだ。また、あまり先のことまで考えすぎると、担当編集から突然「あと3回で終われ」と言われたとして、まったく対処できないという事態も起こり得る。こちらがいくら完璧な計画を立てそれを実行していても、他人の都合でそれが狂う場合もある。漫画家の場合は「担当がネームの返事をなかなかよこさない」というのが一番多いのではないだろうか。担当のOKが出ないと作画には入れないし、独断で進めたあとに修正が入ったら完全な二度手間である。幸い、私の担当編集は一様に返事が早い、中には「お前本当に読んだのか?」と疑いたくなるようなスピードで「これで良いです」と返信してくる担当もいる。しかし、返事が早いのはこちらも助かるので「OKしてくれるなら読んでなくても良い」と考えている。この「必ずしも読む必要はない」というのは私の全作品に言えることなので、読者の皆さまもこの夏、私の本を読まなくていいから買ってみてはどうだろうか。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は8月18日(火)昼掲載予定です。
2015年08月11日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。コンパクトなOS入り機種「Cintiq Companion 2」に触れてから1時間足らずで、操作にも慣れてきた様子。試し書きにと描いてきたアデ子さんの顔も、いよいよ連載当時の美貌(?)に近づくのか…?~ワコムの会議室の中~次回は、Cintiq Companion 2はじめ、液晶ペンタブレットの見逃しがちな設定に注目します。乞うご期待!
2015年07月30日今回のテーマは「夏のレジャー」である。○漫画家ならではの「夏の風物詩」そう言われても、基本的に春夏秋冬、部屋から出ない。それに現在、すべての原稿を締切通りに終わらせていたら1カ月経っているし、それを12回やったら1年が終わっているという生活で、年々季節感というものがなくなってきている。去年は一応花火など見に行ったのだが、花火が始まるまでずっとスマホでエゴサーチしていたし、始まったら始まったで、花火の写真をTwitterにアップしてリプライ待ちし、その待ち時間の間エゴサーチをしていた。とにかくエゴサができない所には1秒たりとも行きたくないので、海などもっての他である、水中エゴサはエクストリームすぎるし、そもそもスマホがぶっ壊れる。よって、もはや「アイスが美味いのが夏」「甘いパンが美味いのが冬」「ペペロンチーノは年中美味い」というぐらいの基準しかないのだが、唯一漫画家だからこそ感じる夏というものがある。「液晶タブレットが猛烈に熱くなってきたら夏」なのである。これは当方が使っている機種が相当古いため余計にそう感じるのかもしれないが、 冗談ではなくアツアツの鉄板に長時間向かい合うのと変わらない状態になるため、ただ漫画を描いているだけの奴が、まるでお好み焼きを100枚焼いたかの様な姿になるのが、漫画家にとっての夏なのである。すべての作業をパソコンで行っているが故の弊害だが、出た汗が直に原稿を汚すことがないという点は、やはりデジタルの利点だ。○フルデジタルが起こした"漫画革命"常日頃から「パソコンで漫画を描ける時代じゃなかったら私は漫画家になれなかった」と言っているが、具体的にどうなれなかったかというと、まず汚損してない原稿を作れなかったと思う。漫画雑誌には多種多様な漫画が掲載されていて、私のようにどうかと思うぐらい絵が下手な作品だって載っていることもまれにある。しかし、余白に作者の指紋が縦横無尽についているという、個人情報丸出しな漫画に出くわしたことはおそらくないだろう。自分は何をするにも不器用で、集中力及び注意力がない。たとえば料理をしろと言えば、全身血まみれか火だるまになっているタイプなのであるが、そういう人間に液状であるインクを持たせると、3歳児に生卵を3パック持たせるのと同じぐらいの惨事が起きる。もちろん、汚すのは原稿だけではない。完成する頃には、実際にやったことはないが「Splatoon(スプラトゥーン)ってこんな感じかな?」という部屋ができ上がっているのである。それに、書き損じをしたとしてもデジタルなら簡単に消せるが、アナログだとホワイト(修正液)を用いて間違ったところを修正しなければいけない。しかし、こういう人間に間違ったところにだけホワイトを塗れというのも無理な相談なのである。消してはいけないところまで塗ってしまうのはもちろん、またしても原稿と言う枠を飛び越え、黒一色だったスプラトゥーン部屋に白が加わり、ますます喪に服しているような状態になってしまう。何度も間違いを犯し、繰り返しホワイトを塗るうちに、その部分だけ3Dな原稿ができるというハプニングも当然起こるだろう。さらに、それをカッターで削ろうとして原稿にでかい穴があくと言うのも想定の範囲内だ。作画以前に、枠線がうまく引けないという問題もある。私がデビューまで原稿を完成させたことがないというのは以前書いたが、大体の場合、枠線で挫折していた。まっすぐ直線を書くというのは案外難しく、4コマ漫画の枠線を書くだけでも徐々にズレて行き、最終的に「自分の人生か」というぐらい右肩下がりな枠ができたのは良い思い出だ。もちろん、その原稿は黒い指紋だらけだった。漫画作成ツールがいくら発達したと言っても、最終的には使う者の腕、というのは確かだ。しかし、「それ以前の問題」だった奴が、印刷できる程度の原稿を完成させることができるようになったというのは、革命と言わざるを得ない。それゆえに、本人がますます進歩できなくなったとも言えるが、仕事である以上使える物は使うべきである。こう書くといかにもデジタルが最高の手段であるように見えるかもしれない。確かに、デジタルであれば、書き損じなどは一瞬にして消してくれる。しかし、データそのものも一瞬で消してくれるというミラクルもたまに起こるし、停電やマシントラブルで手も足も出なくなることもしばしばだ。去年、液晶ペンタブレット(略して液タブ)がウンともスンとも言わなくなり、作業が完全にストップしてしまったことがある。締め切りがあるので、修理に出すなど悠長なことはしていられなかった。よって、約10万円ほどする新品の液タブを即決で購入するはめになってしまった。次の日、液タブは無事に届いたのだが、それが届いたと同時に、死んだはずの旧マシンが息を吹き返すという奇跡が起こった。全米が泣く展開だと思うので、映画化したいという方はご一報いただければと思う。このように、デジタルはデジタルでアナログ時代にはなかった危機管理をしなければいけないのである。ちなみに、その時死んだはずの液タブは今も現役で、今年の夏もその熱で私の顔面を焼いてくれている。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は8月4日(火)昼掲載予定です。
2015年07月28日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:ワコム東京本社でついに液晶ペンタブレット「Cintiq Companion 2」に触れたまずりんさん。数々の苦難(蛍光灯の映り込みや解像度設定)を乗り越えて、試しに描いてみたアデ子さんの顔が、連載当時とちょっと違う…? とにかく慣れようとトライするまずりんさんと応援する哀ちゃん、うなだれるアデ子さん。さて、今回はどうなる?~ワコムの会議室の中~次回はCintiq Companion 2に搭載されているファンクションキーに注目します。乞うご期待!
2015年07月15日今回のテーマは「親、兄弟、友人などが、兼業漫画家である自分をどう思っているか」についてだ。○漫画は妄想を加工した産物商業漫画と言うのは、「大勢の人に読まれてなんぼ」の世界だ。しかし商業作品と言えど漫画というのは元は個人の妄想であり、それを人様にも楽しんでもらえるように加工して、世に出しているにすぎない。そのため、人に見せる用だとしても、自分の妄想を近しい人に見せるというのは恥ずかしいもので、久しぶりに会った人などに「漫画いつも読んでるよ」などと言われたら、「今すぐやめろ」と言いたくなるのである。そもそも、私は自分から自分の漫画について話すことがほぼない。恥ずかしいから、というのもあるが、「明るい話題がゼロ」だからというのが最も大きい。私とて、漫画が上手くいっていれば、調子にのって今後の構想とかをベラベラ喋るだろうが、漫画家になってからこの方、調子に乗れる状況が一度もなかったし、年々それは悪化している。なので、周囲もそれを察して、私の漫画の話はしなくなった。すでに私が漫画家であることは話題ではなく地雷となっている。そうは言っても、友人知人ぐらいまでなら、私が漫画家をやっていることに関して、いい意味で面白がってくれていると思う。しかし、家族、特に自分の子どもが漫画家をやっている(もしくは漫画家を目指している)と言う状況は、親としては面白がってばかりはいられないと言うか、はっきり言って「笑えない」ものだったと思う。○カレー沢氏の進路選択6歳児が「将来は公務員になる」と言ったら、夢がないと親は心配するかもしれないが、実際は進路を決める段階になっても「漫画家になる」と言っているやつの方が、もっと悩みの種なのである。事実、95%が大学に行く高校に進学しておきながら、3者面談で「漫画家になるから、漫画専門学校に行く」と言い張る私は、親にとって相当の頭痛物件だったと思うし、私も当時のことを思いだすと、ロキソニンを箱食いしたくなる。その後も、若かりし頃の私は「漫画専門学校は諦めるが、大学進学はしたくない(受験勉強したくなかった)」とごね続けた上、「じゃあ、漫画家じゃなくてデザイナーになるわ」と親を煙に巻いて、グラフィックデザイン専門学校に進学することになった。このように、「漫画専門学校は反対されたので、とりあえずデザイン系学校に入った」という経歴を持つ人間は結構いるのだ。「漫画にくらべればデザイン業の方が安定している気がする」という錯覚を親に覚えさせ進学を許可させるという手管なので、親御さんは注意してほしい。そして、まんまと美術系の専門学校に行ったは良いが、初回コラムに描いた通り、在学中は1本も漫画を描かなかった。卒業後は印刷会社に就職するも、勉強したデザインを生かすどころか、総務課に8カ月在籍しただけで退職。その後5年、全くデザインにも漫画にも関係ない仕事に就いたり辞めたり、クビになったり、派遣切りに遭ったりしていた。その間、一度も「お前、グラフィックデザインはどうしたの?」と言わなかった親を、私はマジでリスペクトしている。○親から見た兼業漫画家・カレー沢薫の印象は?その後、間口ガバガバの漫画賞に応募したことを機に漫画家となった私だが、親は、娘が漫画を描いていることを応援してくれてはいる。だが、私のことは兼業漫画家というより、兼業会社員と思っている。もし私が「会社を辞めて、漫画1本にする」と言いだしたら、それは親にとってみれば「本業を辞めてアルバイトで食っていく」と言われたようなものであり、おそらく止められるであろう。漫画家などのいわゆる人気商売は、一見華やかそうに見える。私も、友人にそういう職業の人間がいるとしたら、面白がるし応援もするだろう。しかし、親にとってみれば子供がそういう職業を目指すのは止めたいし、なってからも心配の種と思われているケースが多いと思う。しかし、時勢の変化とともに「漫画家を目指す子供と親」情勢は変わってきているようで、今では漫画家を目指す子供を止めず、漫画学校へ通うことも許し、卒業後も就職を促すことなく、デビューまで面倒を見てくれる親が増えてきているという。あまりに世の中が不安定なので、「どうせ安定した職がないなら、夢を追った方がいい」と考えている親が増えてきているのかもしれない。反対されるよりはバックアップしてくれる方が良いには決まっているが、経験上、漫画というのは、いくら時間と描ける環境がそろっていても、描かない奴は描かない。そのため、気づけば子供が「自称漫画家志望」という、幾重にもわからない職業についている場合があるので注意が必要である。先ほど、親からは漫画について応援されていると書いたが、実をいうと、両親は私がもう漫画の仕事をしていないと思っている。現在、親が把握していた漫画の連載は全て終わっており、新しく始まったものに関しては一切言っていないので、親は私の連載はもう一本もないと思っているのだ。ある日、母に「もう漫画の仕事は全部ないの?」と聞かれたので、私はちょっと考えてから、元気に「うん」と言った。母はそれに対し「さみしいけど、まあ、よくもった方かもね」と言った。親の期待に応えるのも確かに親孝行だが、それが無理なら「早めに諦めさせる」というのも立派な親孝行だと私は思っている。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は7月21日(火)昼掲載予定です。
2015年07月14日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:ワコム東京本社のぴかぴかの会議室にめまいを起こしながらも、三人は目的の液晶ペンタブレット「Cintiq Companion 2」とご対面。OS搭載の機種を選んだ理由を「旅する漫画家」(演劇やアーティストのおっかけ)と力説するまずりんさんに、圧倒されるアデ子さん。まずりんさんは液晶ペンタブレットを使いこなして無事「旅する漫画家」になれるのか?~ワコムの会議室の中~次回はCintiq Companion 2に搭載されている、あの便利な機能に3人が注目。乞うご期待!
2015年06月26日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ : ワコム東京本社に到着したまずりんさん&哀ちゃん&アデ子さん。ハイテクな高層ビルに圧倒されながらもたどり着いた先で出会った液晶ペンタブレットは…?~部屋の中にはいった3人~~ドアを開けて会議室の中へ~次回、いよいよ実際の操作に挑戦。乞うご期待!
2015年06月12日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物次回、いよいよまずりんさんが初めての液晶ペンタブレットにご対面。まずりんさんが液晶ペンタブレット導入を検討する壮大な目的も明らかに? 乞うご期待!
2015年05月29日伝説の漫画雑誌「ガロ」に連載された、江戸風俗研究家としても知られる天才漫画家・杉浦日向子の傑作を、柳楽優弥&瀬戸康史のW主演で映画化した『合葬』。このほど、本作にオダギリジョー、門脇麦ほか豪華共演者が新たに発表となった。幕末期、鳥羽・伏見の戦い後、将軍の警護および江戸市中の治安維持を目的として有志により結成された「彰義隊」。高い志をもって結成され江戸の民衆からも慕われながらも、幕府の解体とともに反政府的な立場に追いやられてしまった「彰義隊」は、「新撰組」や「白虎隊」に比べると、これまであまり語られることがなかった。本作は、将軍・慶喜に忠誠心を持ち、自らの意思で彰義隊に加わった青年・極(柳楽優弥)と、養子先から追い出され、行くあてもなく彰義隊へ入ってしまう柾之助(瀬戸康史)、彰義隊の存在に異を唱えながらも加わらざるをえなかった悌次郎(岡山天音)という、若き青年たちの切なく揺れ動く数奇な運命を描き出す。脚本を手がけるのは、映画『天然コケッコー』やNHK連続テレビ小説「カーネーション」などの人気脚本家・渡辺あや。映画脚本を手掛けるのは、4年ぶりとなる。監督には、その渡辺さんが「新進気鋭の逸材」と評する小林達夫。主演を務める柳楽さんは、存在感のある演技で評価が高く、現在、連続テレビ小説「まれ」にも出演中。また、瀬戸さんもデビュー10周年の今年、ドラマ「マザー・ゲーム~彼女たちの階級~」などでますますの飛躍を見せている。そして、若手実力派として注目される岡山天音と、いま最も注目を浴びる20代男優3人に、さらに強力な豪華キャストが加わった。「彰義隊」穏健派の懐刀・森篤之進には、国内外で活躍する実力派のオダギリさん。また、極(柳楽さん)の元・許嫁で、悌二郎(岡山さん)の妹・福原砂世には、「まれ」でも好演を見せる最旬・若手女優、門脇さん。そして、柾之助(瀬戸さん)が想いを募らせ、極が恋心を抱く茶屋の仲居・かなに「なぞの転校生」の桜井美南とフレッシュな演技派を起用。これまでの“時代劇”とは一線を画す、現代の若者にも通じるリアルな青春群像を紡ぎ出していく。『合葬』は9月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年05月26日女優でモデルの山田優が22日、東京・新宿ステーションスクエアで行われた、映画『新宿スワン』のガールズトークイベントに出席した。和久井健の同名漫画を実写化した本作は、新宿歌舞伎町を舞台に、スカウトマンたちの熾烈な抗争を描く作品。スカウト稼業に足を踏み入れた白鳥龍彦(綾野剛)は、頂点を目指して成り上がろうとする男たちの中で試練に挑む――というストーリーで、映画は30日から全国公開する。高級クラブのママ・涼子を演じた山田は、龍彦の巨大像を前に、「ものすごく熱くて、一人ひとりが魅力的な作品。男性陣が本当に格好良いです!」と笑顔でアピール。また、イベントには、ギャルモデルの桜井莉菜、杉山佳那恵も登場し、ガールズトークを展開。登場キャラクターの中での好みを聞くと、「一緒にいて幸せになれそうなのは龍彦だけど、関さんみたいに女性に優しい人が良い。男らしく守ってくれそう」と言う山田をはじめ、深水元基演じる関大介に軍配が上がった。一方、"良い女"のイメージについて、「男の人を立ててあげて、表で大きく羽ばたかせる人。自分のところでは甘えてもらって癒すみたいな」と本音を語った山田。現在、夫で俳優の小栗旬との間に生まれた第1子の子育て真っ最中で、「子どもが成長していくにつれ、色んなことが出来るようになると母親になったんだと実感する」と母親の顔を覗かせる場面も。続けて、「いずれ離れていっちゃうと思うと、すでに寂しい……」と溺愛している様子を見せ、「出来れば5人欲しい。たくさんの方が楽しいと思う」と更なる子作りに意欲満々だった。
2015年05月23日今回のテーマは、「兼業でやっていてよかったこと」である。漫画家兼会社員生活の最大の利点は「健康でいられる」ことだ。よく、「そんなに仕事したら体を壊すのではないか」と言われるが、正直、専業漫画家になった方が体と心を壊す自信がある。○二足のわらじを履くことの「利点」まず、会社勤めをしていると、規則正しい生活が送れる。毎日定時に出社するため、朝6時半に起き、夜12時前には寝るようにしている、そして、原稿は12時には寝られるようにスケジュールを立て進行させる。また、締切りを破ったことはない(仕事自体をすっかり忘れていたことはある)。「そう上手く行くか」と思われるかもしれないが、「会社に遅刻したら怒られる」、「締め切りを破ったら怒られる」等、多方面から叱責されることを考えると、どんなに怠惰な人間でも割とキッチリやるようになるのである。これが、遅刻、締め切り破り当たり前、怒られても平気、という状態になったら、もはや漫画家、会社員以前に社会に向いていない。よほど厳しく自らを律することが出来る人間以外でもないかぎり、規則正しい生活を送ろうと思ったら「定時出社」「締め切り」などの強制力が必要だ。しかし、漫画家という職業はその強制力が弱い。ハッキリ言って、締め切りさえ守れば、あとはどう生活してもいいいのだ。特に私はアシスタントなしの一人作業なので、専業作家になったら日中家に一人きりである。これは非常に危険な状況で、起きている間ずっと物を食っているか、連続飲酒状態になる姿が容易に想像できる。現在、会社では同僚たちとの人間関係構築に見事失敗したため、誰とも会話せず、ひとりで仕事をしているようなものだが、やはり人の目があるというのは大きい。デスクでネバーエンドに菓子を食ったり、胸ポケットからウィスキーを出して煽ったりはもちろん、全裸で仕事をすることもできない。つまり、私にとって、生活リズム的には、兼業状態がベストということになり、専業で健康的な生活を送ろうと思ったら、酒瓶を握ろうとする私を手刀で止めるアシスタントを雇わねばならず、非経済なのである。そして第二の利点はその「経済的安定」である。「安定した職業につけ」というセリフに対し「今の時代安定した仕事なんてあるのか?」という反論を聞くことがあるが、残念ながら圧倒的に、漫画家より会社員の方が安定している。作家の実力にもよるが、私を例にした場合、「連載が打ち切られる可能性」と「会社が潰れる可能性」を比べると、どう考えても前者の方が高い。これに「会社をクビになる可能性」をプラスすると五分五分ぐらいになってしまうが、今回は含めないものとする。とはいえ、今勤めている会社の給料はとても良いとは言えず、会社に行っている時間を漫画に使った方が割が良いかもしれない。しかし、今の会社には6年勤めているが、私の漫画連載で6年続いているものなど1本もないのである。また、今は良いが、この先10年、20年と自分に漫画の仕事の依頼が来るというビジョンがどうしても思い浮かばない。むしろ、給与というベーシックインカムを心の支えに、何とかこの不安定な仕事を続けていられるとも言える。その支柱を失ってしまったら今以上に打ち切りに怯え、酒に逃げ、それを空中とび膝蹴りで止めるアシスタントを雇わねばならず、ますます非経済なのである。先日亡くなられた桂米朝氏が「芸事で生きる人間は末路哀れは覚悟の内」とおっしゃっていたが、「俺は末路哀れで良いから漫画を描く」と思っている漫画家よりは、一獲千金を夢見た結果、末路哀れになっているケースの方が多い気がする。そして私のように、人一倍末路哀れな自分ばかり想像するタイプは、何らかの保険なしにはとても漫画など描けないのである。○専業を夢見るも…このように、兼業漫画家生活の利点は多々あるのだが、正直、漫画家1本にしてもっと自由な生活を送りたいという気持ちは非常に強い。会社に行っている時間を漫画に費やせば、作品の質が上がり大ヒット、結果的に会社を続けるより懐も潤うのではと考えることもある。しかし、「時間があれば」と言っている奴は、時間があっても5億%何もしない。会社を辞めたとしても、漫画製作時間はそのままに、余った時間は何もしないに決まっている。それに、ネガティブな人間に時間があるというのは危険なのだ。ポジティブな人間なら、リフレッシュしたり新しい事を始めたりと余暇を有効に使うだろうが、ネガティブな人間に時間を与えるというのは「いらんことを考える時間を与える」ということなのである。つまり、会社を辞めたことによってできた時間全てを「会社を辞めたことに対する後悔」をする時間に使ってしまうのだ。よって私のようにネガティブで、自らを律することができない人間は、会社と締め切りで、縛り上げ、いらんことを考える暇もなく仕事をしている状態が一番健康的な生活と言えるのである。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年05月12日今回のテーマは「漫画を描くために行った練習、勉強したこと」についてである。漫画家というのは絵が描けるのが大前提であるが、全員がすごくうまいというわけでもない。もちろんうまい人の方が多いと思うが、「ヘタウマ」という作風でヒットを出している作家も少なくはない。私の漫画を読んだことがある人ならご存じの通り、当方の作風は、ヘタウマからウマを引いたものである。しかし5年の作家生活を経て、私の絵も「常軌を逸したヘタ」から「普通のヘタ」へとランクアップし、余計に売れなくなった。デビューの際、私は最初の担当編集者から「絵はうまくならなくていい」と言われ、1~2年はそのアドバイスを忠実に守ってきたのだが、今思えばそのアドバイスを守り続けた方が良かったのかもしれない。しかし、個人的にはやはり漫画家たるもの、絵がうまいに越したことはない、と思う。○絵の練習にありがちな"オウンゴール"を避けるために絵をうまくするにはどうしたらいいか、と絵が描ける人に尋ねると、大抵の人が「とにかく描くこと」と答えるだろう。しかし、私も約5年間、ほぼ365日休まず絵を描いてきた。それにしては上達がなさすぎるが、ここでただ単に才能がない、と断じてはいけない(私の心が折れる)。肝心なのは「向上心を持って正しい絵をとにかく描くこと」であり、自分の描きたい絵だけを自分の手癖のままに描き続けても、サッカーのルールを一切覚えず必殺シュートの練習だけするようなもので、試合に出てもオウンゴールを連発するだけである。よって、まず正しい漫画の描き方の教本通りに描いてみる必要がある。そういった本を買うと「ダイエット本を買っただけで痩せた気になるデブ根性」が発動するという人は、ネットで絵の描き方を調べれば、そういったページがたくさん見つかるだろう。また、技術うんぬんはしゃらくさい、とにかく描きたいという人は、うまい人の絵を模写してもいいし、トレースするだけでもやり続ければ、おのずと手が覚えていく。私は以上のことを一切やらずに、今現在の「印象に残らないヘタ」という作風を完成させたので、そのポジションを目指す人は参考にしてほしい。特に、練習として模写やトレースをしたことはほぼないと言って良い。○絵を描くことの「喜び」は人それぞれ「絵や漫画を描くのが好き」と言っても、「絵を描く作業自体が好き」「満足する絵が描けたときの達成感が好き」など、どこに楽しみを見いだしているかは人それぞれだ、そして、その中には「絵を人に見せて褒められるのが好き」という人も含まれている。そこで「絵を褒めてもらいたい」→「上達するために努力する」という方向に行く人はうまくなる。しかしその過程をすっ飛ばして、「とにかく絵を褒められたい」という人はうまくならない。私は典型的な後者のタイプでああるそういうタイプの人間は、模写やトレースはしない。そうやってうまく描けても自分の絵として公開できず、人から褒めてもらえないからだ。時々、模写やトレースで描いた物を自分の絵として公開してしまう過激派もいるが、見つかれば叩かれるし、商業作家がやったら命取りになる。よって、自己流の絵で褒められようとするものの、練習をコツコツやらないから大して上達せず、当然ながら褒められることはないのである。「努力せずに結果だけ得ようとしてもダメ」という当たり前のことを、5年もかけて証明できたことだけが不幸中の幸いだ。他山の石としてほしい。○カレー沢作品に突如"美少女"が登場、読者の反応は?しかし、私にも全く向上心がないというわけではない、このままじゃダメだと思う時もある、もちろん自然にそう思うわけではなく、アンケートや単行本の売り上げが具体的にダメな時になって初めて考えるのだ。だが、「とにかく結果だけ得ようとする派」の私は、どれだけピンチに陥っても、今さらスケッチブックで絵の練習など始めない。ならばどうするかというと、原稿上で試行錯誤を始めてしまうのである。前話と明らかにキャラの造形が変わっていたり、ひどい時はコマ単位で顔が変わっていたりすると言う手探り状態を、そのまま雑誌に載せてしまうのである。数年前、連載作品の調子が芳しくなく、担当から「このままでは打ち切り」と言われたことがあった。それまで「うまくならなくていい」を実践していた自分も、やはり絵はうまいに越したことはないのではないかと思い直し、次の原稿では極力うまく描こうとした。まだそれだけなら良かったのかもしれないが、「カワイイ女の子が登場したら人気が出るのでは」という安易すぎる発想から、ヒロインの顔を別人のように変えて登場させたのである。その結果、評価は散々だった。平素、良くも悪くも話題にのぼらない自分の漫画が某大型掲示板でたたかれたほどである。そもそも、突然うまい絵やカワイイ女の子が描けるわけがなく、それまで応援してくれていた読者にまで「元に戻してくれ」と言われるありさまであった。私のみならず、突然作風が変わる漫画があったら、それは不人気によるテコ入れか、作家が突然このままじゃダメだと思い、見切り発車したかのどちらかである。既存ファンからしたら「余計なことを」と思うかもしれないが、こうした試行錯誤は作家が一応持っている向上心の表れであり、作品をよりよくしようという気持ちから生じているのである。ただ、焦って前に進もうとして、ギアがバックになっているのに気付かずアクセルを踏んでしまっただけなのだ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月28日今回のテーマは「漫画家と結婚生活の両立について」だが、両立できてないのでこの話は終了、解散である。しかし両立の定義を「離婚していない」にまで広げていいなら、確かに両立していると言えなくもない。では、両立のコツはと聞かれたら、配偶者に「焼きゴテを押しつけられても眉ひとつ動かさない我慢強い人間を選ぶこと」としか言えない。○作家業界の「常識」自分で言うのもなんだが、私の夫はえらいと思う、どこがえらいかというと、なんと働いている。そんなの当たり前ではないか、と思うだろう。私もそう思う。私の友人・知人、親族の中にも、そんな褒め方をする人はひとりもいない。だが、漫画編集者などは本気で「カレー沢さんの旦那さんは、ちゃんと働いているからえらいですよね」と言うのである。そんなに女性作家の旦那というのは働いていないものなのだろうか。話を聞いてみると、もちろん、ちゃんと働いている人も多いという。しかし、最初はまともだった人も、嫁が作家として大成し収入差が広がるにつれ、ヒモ化したりマネージャーきどりになってしまったりする人もいる、とのことである。つまり、私の夫が未だまともに働いているのは、全て私が全然成功していないおかげなのだ。普通に働いている人間と結婚しただけで「男を見る目がある!」などと言われ、「カレー沢さんは夜寝て朝起きているから偉い」と斜め下の角度から褒められることを考えると、やはり作家業界というのは特殊な世界である。もしくは私にそういうところ以外褒める部分がないのだろう。○カレー沢家の分業体制現在、結婚生活5年目。昼間はお互い会社で、夜は私が仕事部屋にこもりっきりとなる。一緒にいる時間は10分にも満たないため、端から見れば家庭内別居と思われてもおかしくない。家事分担に関しては、最初は半々ぐらいだったと思うが、今では夫の方が圧倒的にやっている、特に掃除はほぼ夫がやっており、彼が掃除を放棄したら、我が家は瞬時に異臭を放ち、今ごろ行政の訪問を受けているところである。しかし、当然夫も暇ではない、正直いつ彼がブチ切れるのではと冷や冷やしているし、一緒にいると怒られる(怒られる覚えは5億個ぐらいある)気がするので、時間があろうがなかろうが、3分以上は一緒にいないように心掛けているぐらいだ。しかし今のところ夫に怒られたことと言えば「トイレを綺麗に使え」「たまには仕事部屋の換気をしろ」ぐらいである。"ぐらいである"、と言っても、このふたつが十分酷い。「お前はクソの仕方が汚い、と焼きゴテを押されても眉ひとつ動かさない」「俺でも耐えられないほど貴様の部屋は臭い、そのうち自分の臭いで死ぬカメムシみたいになるぞ」 と言われているのである。とても大人の女性が怒られる内容ではない。亭主関白を貫く一家の大黒柱でも、ここまで配偶者の手を煩わせないだろう。その上、当方の柱としてのスペックは先述の通りである。 反省してトイレはキレイに使うように心掛けているが、部屋は未だに臭い。このような状態なので、少なくとも「共働きでも家事は女が主にやるもの」という意識をもった相手ではとっくに家庭崩壊しているだろうし、顔を合わす時間はあっても、ゴミの山で相手の顔が見えないという事態になることは容易に想像できる。○「作家の家族」の受難また、作家の配偶者というのは、勝手にエッセイなどに登場させられている場合が多い。私も、こういった文章やエッセイ漫画などにたびたび夫を登場させているが、全て無許可である。女性作家というのは男に比べてえげつなくプライベートをネタにする傾向があるので、例え夫が酒におぼれようが、ギャンブルで大借金しようが、浮気をしようが、離婚になろうが、転んでもただでは起きない。それで1冊本を出してしまうのである。そして、出した方には印税が入るが、描かれた方はただただ酷い男であると全世界に晒されるだけである。スキャンダル暴露本ではなく、ほのぼの家庭エッセイなら良いかもしれないとも思うが、それを出した後に離婚という事態になったら、夫の側はしばらくお天道様の下を歩けない(そして元嫁はまたそれをネタに本を出す)。作家自身は覚悟の上で私生活を切り売りしているだろうが、知らないうちに切ったり売られたりしているのが作家の家族というものなのである。仮にフィクション作家だったとしても、時として自分の嫁が信じられない下ネタ漫画を描いているのを粛々と見守らなければいけない場合もあるのだ。個人的には、夫には私の描くものについては何も言って欲しくないと思っている。エッセイものに関しては苦言を呈する権利はあると思うが、少なくともフィクションに関しては何も言って欲しくない。夫もそれを察してか、今まで作品内容について、何か言ってきたことは一度もない。しかしよくよく考えると、夫は、ジャンプ、マガジン、サンデーを愛読し、「進撃の巨人」のコミックスを集めているメジャー嗜好である、私の描くマイナー漫画に対する感想は最初からないのかもしれないし、そもそも読んでいないのかもしれない。だが、それがお互いにとって一番幸せな状態である。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月21日今回は漫画家と編集者の関係についてである。漫画家と編集者と言えば、喧々諤々の打ち合わせを経て共に作品を作り上げているというイメージもあるかもしれないが、私と編集者のやりとりはあっさりとしている場合が多い。ネーム(ネタ)を編集に見せる→OKが出る(修正が入る場合もある)→完成原稿をチェックしてもらう→OKが出る(修正が入る場合もある)→データを渡す、これで終了である。月刊連載の場合、月2、3回のメールのやり取りで終わってしまうことも珍しくない。連載当初は「ここはこうしたら良いのではないか」など修正を入れてきた編集も、3回目あたりになると「こいつは何言っても無駄だ」と思うのか、何も言わなくなる。私の担当は全員諦めが早いのか、私が諦めさせるのが早いのかわからないが、とにかくあまり修正が入らないのだ。描く側としては楽なのだが、あまりに何も言われないと本当にこれでいいのかと不安になるものである。○編集者から修正が来た場合のワークフローでは逆に修正が来た時はどうするかというと、まずひとりで怒る。尋常じゃなく怒る。この話の面白さがわからないコイツが悪いとマジ切れである。冷静に考えて、自分が描いた漫画を読むのは、全員が読者と言う他人である。ならば他人の意見は聞くべきなのであるが、修正が来た瞬間はそうは思えないものだ。そこで一旦、部屋の物を全部破壊するなどのクールダウンをしてから、再度修正案を読み、そう言われればそうだ、と思えば直すし、どうしてもそうは思えない場合は、編集を説得して初案を通す。それでも向こうが折れない場合は再度部屋の物を木っ端みじんにしてから修正をする。納得のいかない修正をする時がないとは言わないが、ネタがスベッた時に編集のせいにできるという利点もあるので、やはり編集の意見はある程度聞くべきなのである。○インターネット時代が可視化した"骨肉の争い"それにしても昔に比べ、漫画家、編集者という存在がずいぶん可視化されてきたと思う。今ではホームページ、ブログ、SNSなどを一切やっていない作家の方が珍しいと思うし、編集者がTwitterなどで作品の宣伝を行うことも少なくない。作家と編集は宣伝ができて、読者も作家と直接交流できたり、製作の裏側を知ることができたりと、おおむねWin-Winの関係であるが、何せ魑魅魍魎が跋扈するネット上のことなので、作家の不用意な発言が炎上したり、編集があまりにも前に出過ぎて叩かれるなどの弊害もなくはない。また、作家と編集のマジ喧嘩が始まり、それが読者に丸見えという事態も起こりうる。作品の美しさに魅かれて作家のTwitterアカウントをフォローしたのに、いきなり骨肉の争いを見せられるということもままあるのである。この場合、ケンカと言っても大体作家が一方的に編集への不満をぶちまけている場合がほとんどである。もちろん、編集が常に一方的に悪いというわけではない。編集をぶん殴りたいという作家の数だけ、あるいはそれ以上、漫画家を土に埋めたいと思っている編集がいるはずである。ただ、作家は個人であるが、編集は企業の一員なので、作家の言う事に編集が個人として反論することはできないのだろう。では編集は一方的に言われて不利だ、立場が弱いと思われるかもしれないが、ネットで内情を暴露してダメージを受けるのは作家の方である。暴露することでその出版社との仕事が切れる危険はもちろん、「何かあったらネットで言っちゃう作家」というイメージがつけば他の出版社からも敬遠されるであろう。それは暴露する作家も重々承知のはずだ。よほど後先考えない性格でない限り、いきなり不特定多数に向けて内情をぶちまけたりはしないはずである(漫画家になる時点で先を考えないタイプとも言えるが)。それでもなぜ言ってしまうかと言うと、もう「怒っているから」としか言いようがなく、ハナから得しようなどとは思っていない。むしろ、怒りと作家生命を天秤にかけて「終わっていい」と判断できるほどの、混じりっ気なし、100%純国産、「私が怒りました」と顔写真つきのシールを貼って良いほどの「怒り」がそこにあるのだろう。○作品の成否が関係を決める?こう書くと、漫画家は年中編集に対して怒り続けているように思えるかもしれないが、おそらく大半の作家と編集が良好、もしくは、仲良くもないがもめもしないというドライな関係だと思う。ちなみに個人的な意見だが、やはり作品自体が上手く行っていれば、作家と編集の関係はおおむね良好なのではないかと思う。作品の調子が悪ければ、編集は何とかしようとあれこれ助言をするだろうが、作家はそれに焦ったり反感を覚えたりするものだ。逆に作品が絶好調であれば、「先生、今週も最高です」と打ち合わせもそこそこに夜の街に繰り出し、ふたりで仲良く女体盛りをつついたりできるはずである。そんなことはない、売れたら売れたでもっともめる、と言われるかもしれないが、何せ売れたことがないのでわからない。どうせもめるなら売れてもめたいところである。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月07日3月19日22:00より放送されるFM西東京のラジオ番組『漫学~Nちゃんねる(仮)』に、漫画家・のむらしんぼ氏と、漫画誌『コロコロアニキ』(小学館)編集部の石井宏一氏がゲスト出演する。『コロコロアニキ』は子供の頃に漫画雑誌『月刊コロコロコミック』を楽しんでいた大人のために企画された新雑誌で、第一号が昨年10月に発売。売り切れ続出となり、急きょ重版が決定するなど大きな話題を呼んだ。そして、ラジオ番組『漫学~Nちゃんねる(仮)』は、漫画家や編集者、書店員など漫画に携わる人物をゲストに迎え、ディープなトークを繰り広げる"漫画探求番組"。FM西東京で昨年12月まで放送され、一旦終了していたが、今回スペシャル番組として復活する。パーソナリティーは疋田しおりが務める。番組では、14日に発売となった『コロコロアニキ』第2号を記念して、「第2号発売記念!! コロコロアニキにおける特別漫学!」と題した番組を1時間にわたって放送。ゲストに『月刊コロコロコミック』創刊当時から活躍する漫画家・のむらしんぼ氏と、コロコロアニキ編集部の石井宏一氏を迎えて、『コロコロアニキ』創刊秘話などを披露する。番組はラジオのほか、インターネットやスマートフォンでも視聴することができる。のむらしんぼ氏が出演する第一部では、昨年の『コロコロアニキ』創刊時のエピソードのほか、大反響となった第一号の反響などについてトーク。第二部には『コロコロアニキ』編集部の石井宏一氏が出演。自らもコロコロを読んで育ったという石井氏の熱い思いや、「小学生お断り!」というキャッチコピーに込められた意味、第二号の見どころなどが語られる。ゲストの二人がそろう第三部では、のむらしんぼ氏とその担当編集である石井氏が『コロコロ創刊伝説』を毎回どのように作り上げているのかという創作裏話も。さらに、のむらしんぼ氏からは『月刊コロコロコミック』が創刊された当時の話も披露される。『コロコロアニキ』第2号は現在好評発売中。徳田ザウルス氏の『ダッシュ!四駆郎』を、『シャーマンキング』の武井宏之氏が描くほか、こしたてつひろ氏の『爆走兄弟レッツ&ゴー!!Return Racers!!』も掲載。2大ミニ四駆漫画の共演が実現している。さらに天樹征丸原作・石蕗永地作画の「Yの箱船」を始めとする豪華連載作品がずらり。付録として「ダッシュ!四駆郎」に登場するミニ四駆「ダッシュ3号・流星」のゴールドメッキボディが用意されている。『漫学~Nちゃんねる(仮)~』はラジオでの視聴のほか、放送エリア外であってもインターネットやスマートフォンで視聴が可能。FM西東京市の公式サイト(にアクセスすると自動的に再生開始。スマートフォンでは、アプリ「TuneIn Radio」から「FM西東京」を選ぶことで聴くことができる。『第2号発売記念!! コロコロアニキにおける特別漫学!』は、3月19日22:00より放送スタート。
2015年03月18日文化庁メディア芸術祭「マンガ部門大賞」を始め、第9回手塚治虫文化賞「新生賞」を受賞した漫画家・こうの史代の「この世界の片隅に」をアニメーション映画として映像化するプロジェクトが立ち上がった。このプロジェクトは、サイバーエージェントが手がけるクラウドファンディング・プラットフォーム「Makuake」で設立されたが、5日間ですでに資金援助の金額は1,500万円を超え、Makuakeの支援金額歴代5位の記録となっている。こうの氏が第二次世界大戦前後の広島県呉市を舞台に描き、「漫画アクション」(双葉社)にて2007年~2009年の間に掲載された同名コミックを原作とする本作。絵を描くことが好きな少女・すずと、彼女が突然嫁ぐことになった海軍勤務の周作の夫婦のやりとりを通して、戦時中の庶民の日常を丁寧に描き出す。監督には映画『マイマイ新子と千年の魔法』などで知られる片渕須直。監督は、在学中から宮崎作品に脚本家として参加。『魔女の宅急便』(’89)では演出補を務め、その後もTVシリーズ「名犬ラッシー」(’96)、「BLACK LAGOON」(’06)など数々のヒット作を乱してきた。片渕監督は、今回のプロジェクトについて「空を飛ぶものに憧れて、自由に大空を舞う姿を描き出したいと思った頃もありました。けれど、ぽつんと雲の上に浮かぶことが孤高に見えても結局は一人ぼっちなのだと気づいてからは、地の上で暮らす人の姿を画面に描き出したいと思うようになりました。すずさんこそそういう人です。そしてそんなすずさんは、原作漫画を読んだ人みんなから愛されています。すずさんは戦時中の世界で、毎日の暮らしを営み続ける人です」とコメントを寄せる。さらに戦時下の時代を描く本作について「『戦時中の物語』『空襲の登場する映画』というと『小学校の頃、体育館で見せられた教育映画みたいなもの?』と誤解してしまう向きもあるようですが、そうではありません。原作『この世界の片隅に』は、さまざまに新しい漫画表現を凝らして活躍する、こうの史代さんが心血注いだ力作なのです。愛すべきすずさんのいとおしさを、彼女がそこですごす『世界の片隅』のありさまを、そこに流れた大切な時間を、自分にできる限りの理解をした上で、映画の画面の上に描き出してみたい。そう思っています」と語っている。そんな想いを抱えた片渕監督と本作のアニメーションを制作するのは「坂道のアポロン」(’12)、「残響のテロル」(’14)などのTVアニメを手がけてきた「MAPPA(マッパ)」。また、本作の準備にはすでに4年もの歳月が費やされているとのこと。集まった資金は、作品のためのスタッフの確保や、パイロットフィルムの制作に使用されるとのことだ。資金援助は「すでに1,000万円」と前述で紹介したが、プロジェクトの目標金額は「2,000万円」。片渕監督の想い描く世界が映像となってスクリーンいっぱいに広がる日に期待したい。(text:cinemacafe.net)
2015年03月13日NHK Eテレの対談番組「SWITCHインタビュー 達人達」にて、デザインオフィスnendo創立者/デザイナーの佐藤オオキと漫画家・松井優征が共演する。放送日時は3月7日 22:00~23:00。「SWITCHインタビュー 達人達」は、異なる分野で活躍する"達人"2名が共演し、番組の前半と後半でゲストとインタビュアーを"スイッチ"(交代)しながら、各々の「仕事の極意」について語り合うという構成の対談番組。今回は、建築をバックグラウンドにしながらも、家具から食品パッケージなど多様な分野で活躍し、世界的に評価されているデザイナーの佐藤オオキ氏と、発行部数100万部を突破した週刊少年ジャンプ連載の人気作品「暗殺教室」の作者・松井優征氏が共演する。また、番組内では両名が「アイデアを形にするコツ、ヒットの生み出し方を語り尽くす」とのことで、佐藤氏は斬新な発想を連発する秘密を「ドラえもん」と「エアコンのフィルター」にあると語り、松井氏は「キャラそのものより運用法が大事」と独自のヒット理論を語るという。「実は"やりたいこと"も才能もない」と両名が告白し、「弱者戦略」について語り合う一幕もあるということだ。
2015年03月05日はじめまして、漫画家のカレー沢薫と申す者です。と名乗った所で誰も知らないので、あらためて自己紹介させてもらう。漫画家兼会社員生活6年目、「売れたら会社を辞める」が目標だったが、最近では「会社を辞めなくて本当に良かった」が口癖の、まあ木っ端作家である。そんな華やかじゃない方の漫画家の生活を華のない文章でつづるのが当コラムだ。○漫画家をめざしたきっかけ絵を描くことは幼少のころから好きだったが、小学二年生の時に読んださくらももこ氏の代表作「ちびまるこちゃん」の単行本に収録された「作者が漫画家になるまでのエッセイ漫画」を読んで、初めて漫画家という職業を意識し、目指すようになったと思う。その後一貫して「漫画家になりたい」と言い続けてきたが、恐ろしいことにそれから約20年間、私は1回も漫画を最後まで書き上げたことがなかった。漫画家になりたい、と言いながら、キャラクターの設定だけ凝りに凝った漫画の冒頭2ページだけを描いたり、末期になると自分の作品は一切書かず、ひたすら既存のアニメやゲームのキャラクターのキメ顔ばかり書いていた、親に高い金を出させ、美術系専門学校に通わせてもらったにも関わらずである。ボンクラすぎる、と思われたかもしれないが、こういう「漫画を描かない漫画家志望」というふざけた奴らは結構多いのである。ただこういうボンクラどもを一概に責めてはいけない。何故なら漫画を描くと言うのは超面倒くさい行為なのだ。「描き上げる」というだけでも多大な才能がいる、ボンクラに出来るわけがない、むしろ出来る方がおかしいと言ってもいい。しかしこの超面倒くさかった「漫画を描く」という作業も、パソコンツールの発展によりだいぶ緩和されてきた。正直私はパソコン以外で漫画を描いたことがない。もしいまだに漫画がつけペンにインクでしか描けない代物だったら、私は100%漫画家になれていないし、なった所で、原稿は3歳児100人に囲まれて描いたのかと思われるほどさんさんたる物になっていたであろう。私が現在使っているマンガ製作ソフトは「ComicStudioEX 4.0」。ペンタブはワコムの「Cintiq 12WX」を使用している。パソコンは多くのクリエイターがMacを使う中不動のWindowsで、机が狭すぎるためノートパソコンである。こういったソフトのおかげで、黒く塗りつぶす「ベタ塗り」「トーン貼り」などがワンクリックで可能になった。今でこそ当たり前のことであるが、昔は手でイチイチ黒く塗っていたし、トーンはカッターで切ったり貼ったりしていたのだ。この時点でボンクラどもは原稿を投げ出して、アニメキャラクターの模写を始めるところである。○漫画家デビューは規格外の"フォトショ原稿"こうしたツールのおかげで、描かない漫画家志望だった私は初めて投稿作を描き上げることができた、と言いたい所だが、全くそんなことはなかった。応募した漫画賞が「なんでもあり」をうたっており、完成原稿でなくてもOK、漫画原作でも小説でもOK、もちろん何を使ってどんな規格で描いてあってもOKという、間口ガバガバだったのである。今までの漫画投稿と言えばB4サイズにA4の枠を取り、断ち切りサイズは云々、黒インク使用、ボールペン薄墨不可…等々、それだけでバカ野郎の頭を破裂させるに十分なものだったため、正直冒頭2ページどころか枠線さえ満足に描いたことがなかった。しかし、このなんでもありの漫画賞を見た私(当時26歳無職)は、本当に何でもいいんだろうと思い、ブログに載せていた未完の漫画(B4とか一切無視でPhotoshopを使って描かれたもの)をプリントアウトしそのまま投稿したのである。その4カ月後、その原稿がデビュー作として誌面に載り3年の連載となった。こう書くとサクセスストーリー自慢のようだが、その漫画自体は特にサクセスしてないので許してもらいたい。(今後もサクセスの予定はない)このように、漫画家になる術というのは昔より大幅に広がっているのだ、昔であれば限られた雑誌のページを奪いあう形であったが、今ではWebという無限の容量があるし、何で描かれていても問題なく、逆に趣味でWebに発表していたものが出版社の目に止まり書籍化というケースも珍しくない。さらに何が売れてもおかしくない時代なので、たまたまインフルエンザとノロウイルスに同時に罹っていた編集者が、私のような者を「ワンチャンあるかも」と勢いでデビューさせてしまうこともままあるのだ。また前述の通り、漫画を描くソフトの発展も目覚ましいため、近い将来全く絵の描けない人間でも、ツールを駆使すれば漫画家として活躍できる時代がくるかもしれない。と言いたいが、私の漫画を見てもらえればわかるように、最新のツールを使っても、いまだに使い手の技術によるところが大きいのである。漫画制作ツールの開発者の方はもっと頑張ってほしい、私は限界だ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年03月03日高知県高知市の高知県立県民文化ホール、ザ・クラウンパレスホテル新阪急高知、得月楼、須崎市の須崎市深浦漁港などで、多くの漫画家たちが集合する「全国漫画家大会議2015 inまんが王国・土佐」が行われる。開催日は2月21日、22日の2日間。○さいとう・たかをや、ちばてつやなど、豪華な顔ぶれ同イベントでは、21人の漫画家と中川翔子さん、水木一郎氏、堀江美都子さん、影山ヒロノブ氏をゲストに迎え、トークショーや講演、ミニライブなどさまざまな催しが行われる。参加する漫画家は、『ゴルゴ13』で知られるさいとう・たかを氏、『あしたのジョー』のちばてつや氏、『釣りバカ日誌』の北見けんいち氏、やささき十三氏、『GTO』の藤沢とおる氏、『包丁人味平』のビッグ錠氏、『アリエスの乙女たち』の里中満智子さん、『毎日かあさん』の西原理恵子さんなど。21日には、オープニングに先立って、北見けんいち氏、やささき十三氏、うえやまとち氏と釣りを楽しめる「釣り好き漫画家との交流イベント」を実施する。高知県立県民文化ホールでは12時~13時まで、オープニングを開催。その後、13時30分~15時まで「世界へ飛び出せ! まんが王国ニッポンの未来を語る!」と題したトークショーと、中川翔子さんのミニライブが行われる。そのほか、15時30分~17時30分まで、ザ・クラウンパレスホテル新阪急高知で「高知家の食卓をマンガで語れ!」、18時~20時には得月楼において「夜さ濃いトークショー」も開催される。22日は、高知県立県民文化ホールにおいて、10時~12時20分まで、ちばてつや氏、里中満智子さんによる事前応募作品への公開アドバイスや、魚戸おさむ氏、安倍夜郎氏がプロの漫画家の技術と発想について講義する「本日開校!まんが大学」を実施。「編集者が明かす売れる漫画家への道」、「日本職業漫画家選手権漫画家甲子園」に続いて、16時からアニソン界のカリスマと言われる「アニソンBIG3」水木一郎氏、堀江美都子さん、影山ヒロノブ氏による「まんが王国・土佐スーパーステージ」が行われ、イベントのフィナーレを飾る。
2015年02月20日手塚治虫タッチのパロディー漫画『神罰』で知られ、著名作家の絵柄をまねたシモネタギャグを得意とする漫画家の田中圭一氏。デビュー当時からサラリーマンを兼業する"二足のわらじ漫画家"としても有名で、現在はBookLiveに勤務する一方で、京都精華大学の講師も務める。そのほか、「田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-」(ぐるなび)、「うつヌケ~うつトンネルを抜けた人たち~」(文芸カドカワ/note)、「ハピラジ!」(ニコニコ生放送)など、インターネットを中心に幅広く活動している田中氏。今回、紙からインターネットへ移行した経緯や、インターネットの魅力、漫画家としての今後の展開などをインタビューした。――田中先生はインターネットを積極的に活用されていて、2013年に漫画発表の場を紙媒体からインターネットに移されたとのことですが、どういった経緯だったのでしょうか。ちょうどその少し前から僕の紙の本が売れなくなってきていて、世間でも、雑誌も売れない単行本も売れないという傾向が顕著になってきてますよね。だから、これから先、漫画家で食べていくのに希望的な状況じゃないなと思ったんです。そんな時に、電車で周りを見渡すとみんなスマホをいじっていたんですね。新聞や漫画雑誌を読んでる人はずいぶん減ったけどスマホは見ている。だったらスマホの中で自分の存在感を大きくすることが生き残りの1つの手だなと感じたんです。当初は、特にマネタイズは考えていなかったんですが、Twitterで面白いネタをつぶやいたり面白い画像を載せるとフォロワーが増えるし、これから先スマホやインターネットでみんなもっと情報を得るようになっていくだろうから、その中で生き残るための第1歩と考えたんです。――編集者で漫画原作者の竹熊健太郎さんにも後押しされたとか。竹熊さんが2010年くらいから、これからは「街のパン屋さんのような漫画家を目指せ」とおっしゃっていて。彼が紙の本からの仕事がなくなってスランプになっていた時期に、周りから勧められて『たけくまメモ』というブログを立ち上げたんですよ。そうしたら一気に固定ファンが数万人できて。これからの漫画家は、大手のメジャー雑誌に載ってミリオンセラーを出して豪邸を建ててというのが年々難しくなってくるから、数万人でもいいから固定ファンを捕まえてその人たちが欲しいもの、望むものを提供することでマネタイズをしていくのが良いと。それはすごく正しいなぁと思っていて。それを見ていたから、最初は自分も興味本位でおもしろ画像などを上げている内に、リツイートが増えて、フォロワーが増えて、「あー、これはメディアなんだ」とわかったです。――実際にSNSを始められて実感したんですね。当時、前の会社で「コミPo!」という漫画制作ソフトを発表する際に、プロモーションムービーを作って発売前に一部の関係者用にWEBにアップしたんですよ。その時にアルファブロガーの小飼弾さんにも見てもらったんだけど、「発表会が来週ありますよ」という告知をした時に、「ようやく発表ですね」と一部の関係者しか公開していなかったムービーのURLをうっかりTwitterに載せてしまって…。そしたら一気にダーッとリツイートされてサーバーもパンクして、その時にツイートをエゴサーチするとドンドン話題が増えていくのがリアルタイムで見れて、「バズられるってこういうことなんだ」とわかったんです。それまでもバズるとかバイラルっていう言葉は知っていたんだけど、1秒に何十人もリツイートされるという経験を初めてしたんですよ。――個人がすごい影響力を持つ、と。「コミPo!」でコンテストをした時、中に1人すごく面白い漫画を作ってくる人がいて、それがダ・ヴィンチ・恐山さんでした。彼は芸能人でもない普通の人なんだけど、彼のツイートはものすごく面白くて、それがドンドンとバズられて多くのフォロワーが付いたんです。その時、「Twitterって、有名人でなくてもバズられればフォロワーが集められるんだ」とあらためて思ったんですよ。僕も初めは、なにげなくおもしろ画像を投稿していたら、ついっぷるの人気画像ランキングに入って、僕のフォロワーじゃない人の目にも触れてドンドンとリツイートされて、フォロワーも増えたので、「これは面白いな」と思いました。ツイートや画像を何時ごろに上げればバズられやすいかとか、どんなネタが受けるのかとか、Twitterを使って、個人でのマーケティングリサーチをできることに気付いたんですね。――ご自身でマーケティングリサーチまでされているなんて驚きです。私はこれまで雑誌のアンケート結果ってあまり教えてもらえなかったんですよ。ギャグ漫画でページが少ないとアンケート上位に行くことは難しくて、編集さんも気を遣ってくれて「一部では好評みたいですよ」くらいしか教えてくれなかった。ただ、個人的には、今回こういうネタだからこういう反響があった、というデータが欲しかったんですね。この時間にこのタイミングでこのネタを上げたらリツイートされた、勝因は何だろう、自信満々のネタが全然ウケなかった、敗因は何だろう、みたいな。こんなことを繰り返し、ずーっと自分のデータとして蓄積していったんです。そこから、もちろんマネタイズは無視して、「ウケたいという気持ちだけで、いかに多くの人を笑わせられるか?」ということをやり始めたんです。――ファンの方と直接的な交流が生まれたんですね。そんなことをしているうちに、僕のネタ画像を見た編集者からWEBでの連載依頼が来て、そこに載った作品をTwitterやFacebookで情報発信してバズられて…という良いスパイラルになった。紙の雑誌に固執していたら、世の中に作品を発表できなかったかもしれない。これによって、「田中圭一をフォローしておくと面白いものが色々とくるぞ」というフォロワーとの信頼関係ができたっていうのは、これから電子化が進むという時期に、うまくSNSの波に乗れたなと思いますね。――そうしてインターネットの影響力を実感される中で、電子書籍の可能性と課題についてもお聞かせください。日本の家電メーカーにぜひ言いたいのは、日本って世界的に珍しく国民がすごく本を読む国だということ。日本人は知識欲が旺盛で、本を読むことが好きですよね。にもかかわらず、なんで電子書籍デバイスを日本人に合う形で作らないのかと思うんですよ。スマホはアメリカ製か韓国製で、手帳サイズで、さすがに漫画を読むにはきついですよね。タブレットは、サイズはちょうどいいですけど重い。だったら、もっと薄くて軽くてペラペラで、筒から巻物のように液晶画面がひゅっと出せて、雑誌の見開きサイズで読めるような端末ができるといいですよね。日本のメーカーが本気出せば簡単にできそうなもんじゃないですか。それによって電子書籍の市場ってもっと広がりそうなのに、やらないでしょ、どこも。電子書籍の漫画が読みづらいという人もいますが、新しいデバイスなら解決できる。ガラパゴスでもいい。日本市場って本に関しては大きいはずなので。――デバイスの進化には期待ですね。コンテンツ側で電子書籍に期待することはありますか。たくさん言いたいことはありますね。昔、ケータイコミックなどで音が出るものがありましたが、あまり流行らなかった。デジタルならではの面白い仕組みはあったんですが、それを最大限に使う作品・キラーコンテンツがなかった。やはりこういったものを普及させるのはキラーコンテンツありきですよ。例えば、デジタルデータなんだから、1ページ目からラストまで1本道である必要はないですよね。ゲームが得意としているストーリーの分岐とか、最初に自分の名前を登録すると、漫画の主人公の名前が自分の名前になるとか。分岐に関しても、アドベンチャーのように選ばせるのもあれば、ランダムに変わるというのもあるとか。そういった仕様も技術的には難しくない。問題は、そういう面白い仕組みを活かしたキラーコンテンツがあるかどうか。器を作ったら、器に見合う料理を考えなきゃいけなくて、漫画家さんなりクリエイターさんが、新しい仕組みに見合う作品を作って、1作品でもヒットが出れば、「この手法があるなら俺ならこう活用するぜ」という人が続々と出てくる。それが電子デバイスで本を読む新しい形にならないかなと思っています。――田中先生もそういう作品を作ってみたいですか。作りたいですね。たとえば、(主人公が複数存在し物語が並行して進む)ザッピングの作品ができないか、とか。とある夫婦が登場する作品で、奥さん目線では幸せなストーリーなんだけど、旦那さん目線では悲劇だとか。他には、最初のページで「あなたはどの漫画家が好きですか」というアンケートがついていて、手塚治虫とか松本零士とか選択肢を選んでもらって、ストーリーは同じでも、選んだ作家の絵柄に変わるとか。手塚治虫の絵で読んだ後に松本零士の絵に切り替えると微妙に違っていて、「こう違うんだ」というようなところを楽しむとか。デジタルの時代の表現方法の1つだと思います。――いろんな可能性がまだまだあるんですね。あるんですよ。誰かがキラーコンテンツを出して、そればブレイクした時こそ、新時代が来ると思います。僕も実験的に、なにかやってみたいと思うんですよね。ホラー漫画は僕の絵じゃ合わないかもしれないけど、じつはやりたいんですよ。例えば作品の中に、"読んだら死んじゃう漫画"というものが登場して、登場人物がその漫画を読んで次々に死んでいくというストーリー。これは、当然フィクションなので、実際にこのデジタル漫画を読んだ読者が死ぬわけじゃない。でも、ストーリーを読み進めていくと、最後に「この漫画は絶対に読み返してはいけない」と書いてあるページが開かれて、作品は終わる。それを、たまたま2回目に読んだ読者がいたとしたら、冒頭に「なぜ読み返すなと言ったのに読んだのか!」と書いてあって、つまり1回目に読んだときと中身が変わってしまっている。この恐怖ってハンパないと思います。これで読者が作品の中にイッキに引き込まれていくとか。――田中先生は現在、電子書籍の「BookLive!」にお勤めですが、最近話題の漫画家さんへのインタビューコーナー「わが生涯に一片のコマあり」についても教えてください。どういった経緯で始まった企画なんですか。BookLiveの社員の方から、以前に私が実施した藤田和日郎先生のインタビューがすごく好評だったので、ああいうものを定期的にできないかという依頼があったんです。コーナー化するにあたっては、ネットで読ませるための文字数の上限やテーマ設定など、いろいろと改良が必要な点がありました。そうした時にある方から、「"作者の渾身の1コマ"に絞ってはどうですか」というアイデアが出た。それならワンテーマだし文章も短くて済むし、焦点もはっきりする。他でもやっていないと。そして別の方が「わが生涯に一片のコマあり」というぴったりのタイトルを考えてくれた。そうしてこのインタビュー企画が始まりました。第1回ゲストの新條まゆ先生が、こちらが望んでいたとおりのお話をしてくれましてね。新條先生の連載が打ち切りになりそうだった時期に、「渾身の1コマ」を描くことで盛り返して人気が回復して行った、というような。そこで弾みがついてコーナーが続いています。――このコーナーはTwitterなどでもすごく評判なのですが、インタビュー時にこういうことを聞こうというのは何かあるのでしょうか。そうですね。僕も漫画家なので、この作品のここはすごく苦労して描いててるなっていうのがわかるんです。例えば東村アキコさんの場合は、『マカロニほうれん荘』(鴨川つばめ/秋田書店)や岡田あーみんさんの漫画が大好きで、それが引き出しになっていて今の作品を描いているとおっしゃっていて。自分もギャグ漫画家として、小さい頃好きだった漫画はあれとこれとこれで、それが組み合わさって今の漫画になっているというのがあるので、すごくわかるというか、お互い「そうだよね」というのがあるのは作家同士ならではだと思いますね。――なるほど。漫画家同士だからこそわかる世界観が、あのインタビューを生んでいるんですね。そうした幅広い活動をされている田中先生ですが、今年から京都精華大学で「ギャグマンガコース」の講師もされています。そのお話もぜひ聞かせてください。本当は竹熊健太郎さんの助手で入る予定だったんだけど、急きょ竹熊さんが休学されるということになって、あとは任せたと(笑)。経験もないし、忙しくて準備もできてないしで、バタバタとしたスタートでした。始めてみて思ったのは、生徒に教えるためにはロジックを自分で整理して伝えなきゃいけないということ。今まで直感で、つまり右脳でやっていたものをロジカルに整理することで自分にも気づきがあったんです。例えば、読者に「こっちだよ」とわざと思考をミスリードさせておいて、実はこっちだったみたいな意外性というかギャップが笑いを生むんだ…とかね。――教えることを通じて、田中先生ご自身も表現の理論を改めて整理できたんですね。どうしてこれは面白いんだろう、と常に分析しながら見るという視点も持つようになって、他の仕事にも良い効果が生まれましたね。先ほどのインタビューコーナーも、この作品はどうして泣けるんだろう、とか分析しながら作品を読んでいますし、今ぐるなびで連載している『ペンと箸』も、事実をそのままの順番で漫画にするのではなく、話の順番を入れ替えることでより感動が伝わるな、とか。いろいろと並行してやっている仕事がそれぞれ役に立っているんです。――これまで若い漫画家志望の方に教える機会はあったのでしょうか。今まで何人か、漫画家志望の若いアシスタントが来たことはあったけど、あまりギャグ漫画家になりたいという人はいなかったから、教えられることがあまりなかったですね。でも今は、大学でギャグ漫画家になりたいという人に教える訳だからやりがいもあります。京都精華大には「ストーリーマンガコース」と「ギャグマンガコース」があって、ストーリーマンガコースに落ちたからギャグマンガコースに来た人もいるんだけど、そうした中にもすごくギャグセンスのある学生もいる。プロになろうと思ってなくてもポテンシャルがあったり、センスを秘めている人はいっぱいいて、そういう人には「君はギャグに向いているから磨いていこうよ」という話もできますよね。――違う道を目指そうとしていた人が、ギャグ漫画家になって良い作品を生み出して、読者を楽しませていくというのは素晴らしいですね。本人もたぶん、ストーリーマンガコースに行ってたら生徒数も多くて競争率が高かったりで挫折してしまったかもしれないけど、ギャグマンガコースは人数も少ないから、その中で「イケてるぞ」となれば、自信もつくんじゃないでしょうか。竹熊健太郎さんが「電脳マヴォ」っていう無料の漫画サイトをやってるんですが、ギャグマンガコースで才能を持った人はそこでも紹介していきたいと言っていて、生徒さんが納得してくれればそこに作品をアップして世の中の多くの人に見てもらう機会を持つというのも、ありかなと思っています。そこで編集者の目に止まって商業誌デビューを果たす、という道もあるかもしれないですし。――インターネットならではの作品の見せ方ですよね。「note」っていうSNSで人気の『岡崎に捧ぐ』という漫画がものすごく読まれていて、作者の山本さほさんは、現在いろんなところから引っ張りになっているんですよ。内容は「ちびまる子ちゃん」的な作品なんですが、「ちびまる子ちゃん」よりももう20才くらい下の世代にすごくささっていて。ちびまる子って10年ごとに、つまり年代ごとに作ればいいんじゃないかと思ったりね(笑)。とにかくその漫画、面白いんですよ。ネットで人気を博して商業誌に行くっていうのもあるんですよね。こういう言い方はよくないんだけど、漫画家志望って編集さんとそりが合わなくて、デビューはしたものの連載を取れないまま何年かの時間をすり減らしてしまうこともある。でもネットに上げると、支持してくれる人が何人いるかが数字でわかるので、結果が悪ければすべて自分の責任です。冷酷ではあるものの非常に平等な発表の仕方ですよね。そういう方法でのデビューもあると思ってまして、竹熊さんの「電脳マヴォ」などからデビューするというのもあると思うんですね。――このようにファンの方と直接つながれる時代に、出版社の役割とは何だとお考えでしょうか。やっぱり大手の出版社の編集さんって、すごく特殊なノウハウを貯めている方がいて、新人が持ち込みしてきてから一人前にして世に送り出すまでのトレーナーとして一流な人もたくさんいるんですよ。それを分っていない人は編集者を軽視する発言をしがちですよね。WEBとかブログで人気になった漫画家さんが10年、20年と食べていけるかというのは、トレーナーの力量も大きいと思います。あとはアシスタントに入ってそこの先生に学ぶとかね。そういう道のメリットもたくさんあると思いますよ。ネットはそういう工程をすっとばせるから便利だと言われがちですけど、最初はビギナーズラックでヒットを打てても、2打席目から打てない人もいて、とにかく編集者や師匠から教えや、漫画家としての基礎体力作りを軽視してはいけないと思いますね。――ある作家エージェントの方がおっしゃっていたんですが、「0を1まで売るのはエージェントの役割だけど、1を100にするのはやはり出版社さんが強い」と。どちらが良いではなくて、それぞれ役割があるということでしょうか。大手の出版社さんって編集者が優秀だからミリオンセラーが出ると思われていますが、それに加えて営業の方のスキルも高いからだと思いますよ。僕も営業やっていたからわかるんですが、良いものを良いと伝えて書店さんを説得するのは営業さんの力なんですよね。だから1万部を100万部にするのは、販促やキャンペーンも含めた営業力だと思うんですよ。ネットで作品を出した人がそこまで行けるかというと、営業さんが後押ししてくれないとなかなか難しいですよね。ネットでヒットした『きょうの猫村さん』(ほしよりこ/マガジンハウス)とか、『となりの801ちゃん』(小鳥アジコ/宙出版)とかは、紙の本になって初めて大きくマネタイズができたわけじゃないですか。ネットだとただの人気者で終わってたかもしれない。だから、出版社が今も作家さんにお金をもたらす重要な役割を担っているのは確かですよね。今後は電子書籍ストアとか先ほどの「note」とかで作家が直接売るというの時代が来るかもしれませんが、それはそれで作家自身の営業力が必要だと思いますよ。ネット上には様々なコンテンツがものすごくたくさんあるので。――田中先生が先日から参加されている「ハピラジ!」についても教えてください。ニコ生(ニコニコ生放送)で「ハピラジ!」というWEBラジオを始めることになりまして。この番組というかシリーズは、声優さんを中心にやってきて、漫画家は僕が初かもしれません。番組としては、企画の担当者が面白いコーナーとかを考えてくれていて、ニコ生を使うので、音だけじゃなくて時々絵を描いたり大喜利のようなこともやっていきます。僕が描いた絵に声優さんが声を当てたり、4コマ漫画の3コマまでを僕が描いて4コマ目を募集とか。ラジオなんだけど、ところどころ絵も入っている感じで今の時代ならではの番組ですね。――田中先生はTwitterやFacebookも活用されていますが、ニコ生をやろうと思ったのはなぜですか。もともとニコ生は個人でもやりたかったんですが忙しくて手をつけられていなかったところに、ハピラジ!のお話をいただいてぜひやらせてくださいと。一人で全部やるのは大変ですからね。FacebookとTwitterとニコ生は個人で出来るプロモーションとして、3つでセットと考えています。Twitterは瞬発力、バイラル力はあるけど、すぐタイムラインが流れてしまう。Facebookはもう少し滞留しますし、もう少しお友達限定というクローズドな部分がある。音声は生放送でリアルタイム性がある。この3つを組み合わせるのが1番効果的だと思っていたんです。だから、ニコ生を始めたのはちょうどいいタイミングでした。今後、以前に勤めていたソフト会社で企画していた『ライブアニメ』という、音声に反応してアニメのキャラが操作できるソフトを使った放送などもやってみたいなと思っています。アニメキャラによる生放送です。――次々と新しい取り組みをされている田中先生ですが、最後に、漫画家・田中圭一としての今後の展開について教えてください。僕が今52歳だから、健康にペンが握れるのはあと20年なんですよね。土日しか描いてないから、計算するとあと単行本15冊しか死ぬまでに出せないな、と最近考えています。つまり、残された時間と描ける作品数は限られています。なので、山のようにある「やりたい企画や作品」の中から「何を諦めて、何をやるか」を考えなきゃいけない歳なんですよね、52歳って。これまで温めて実現できていない企画の中で早めに着手しないとダメなものを、優先的にやっていきたいと思っています。ここ2、3年はそこに力を注ぎたいなと。さっき言ったインタラクティブな漫画もその1つなのでぜひ実現したいですね。
2014年12月26日2005年に46歳の若さでこの世を去った漫画家・杉浦日向子さんの『合葬』が、主演に柳楽優弥と瀬戸康史を迎えて初めて実写映画化されることが10日、明らかになった。映画は来年秋の公開を予定している。『合葬』は『月刊漫画ガロ』(青林堂)で連載され、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した人気漫画。杉浦さんは1980年代の「江戸ブーム」を牽引し、数々の名作を残した。中でも、同作は評価が高く、幕府の解体に反対し、最後まで戦った「彰義隊」をテーマに、そこに参加した3人の若者の数奇な運命を描いている。映画『天然コケッコー』(2007年)や連続テレビ小説『カーネーション』(2011年)などを手掛けた脚本家・渡辺あやが、映画脚本としては4年ぶりに担当。その渡辺が「新進気鋭の逸材」と評した小林達夫監督がメガホンを取る。柳楽演じる秋津極は、悌二郎(岡山天音)の妹との婚約を破談にし、彰義隊へ入隊。クールな物腰の反面、主君・徳川慶喜に対して熱い忠誠心を抱いている。柳楽は本作について「日本の伝統、日本らしさというのは忘れてはいけないんだと作品を通して思いました」と実感。「粋な人生を生き抜いた『極』という役を演じることができて幸せでした」と俳優としての喜びを語った。一方、瀬戸演じる吉森柾之助は、極、悌二郎の幼なじみで、養子先の笠井家を追い出され、行くあてもないまま彰義隊へ入る役どころ。原作の魅力を「杉浦日向子さんの作品は、"萌え"と"燃え"が共存した不思議な世界へ僕達を連れて行ってくれる」と説明し、「作品を知っていくうちに、僕が思い描いていた武士は薄っぺらく、当時の人も現代の若者と同じような悩みを持ち、柾之助はある意味時代にあらがった人物なんだという、僕なりの答えが見つかった」とこちらも歴史の重みを再認識していた。
2014年12月10日「月刊漫画ガロ」に連載されていた、天才漫画家・杉浦日向子の「合葬」を柳楽優弥、瀬戸康史を主演に迎え実写映画化することが明らかになった。慶応4年。300年にわたる徳川幕府の支配が終わった。極(柳楽優弥)は、悌二郎(岡山天音)の妹との婚約を突然破談にする。それを聞いた悌二郎は憤慨し、極を追い詰めている最中、幼馴染である柾之助(瀬戸康史)と再会。柾之助が家を追い出されたと聞いた極は、柾之助に彰義隊への入隊を勧める。この3人の再会が、其々の人生を狂わせてゆく…。伝説の漫画雑誌「月刊漫画ガロ」に連載され日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した杉浦日向子の傑作漫画を原作に、映画『天然コケッコー』や連続テレビ小説「カーネーション」などを手掛けた人気脚本家・渡辺あやと、新進気鋭の逸材と評した小林達夫がタッグを組み実写化した本作。秋津極役に『許されざる者』『闇金ウシジマくん Part2』など存在感のある俳優として評価が高い柳楽優弥、極の幼なじみ吉森柾之助役に来年デビュー10周年を迎え、『わたしのハワイの歩きかた』や2015年1月からスタートする大河ドラマ「花燃ゆ」などますます飛躍を見せる瀬戸康史がW主演を務める。そして2人の幼馴染役で柾之助、極と関わり翻弄されていく福原悌二郎役に『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』『チョコリエッタ』に出演する岡山天音が好演。幕末という時代の転換期に生き、戦いに巻き込まれていく若者たちの青春を濃密で哀切な空気と共に描いていく。以下、出演者コメント<柳楽優弥/秋津極役>「日本の伝統、日本らしさというのは忘れてはいけないんだと作品を通して思いました。粋な人生を生き抜いた「極」という役を演じることができて幸せでした」<瀬戸康史/吉森柾之助役>「僕が演じた柾之助はあっけらかんとした性格で、僕が思い描いていた“武士”とは全く違っていた。ものすごく純粋で不器用だ。作品を知っていくうちに、僕が思い描いていた武士は薄っぺらく、当時の人も現代の若者と同じような悩みを持ち、柾之助はある意味時代に抗った人物なんだという、僕なりの答えが見つかった。杉浦日向子さんの作品は、“萌え”と“燃え”が共存した不思議な世界へ僕達を連れて行ってくれる」<岡山天音/福原悌二郎役>「幕末を生きた若者達が、今の僕らと同じ等身大の想いを抱いて、確かに生きていたんだとゆう事を、この作品に参加して身を持って感じました。この映画を通して当時を生きた人達の体温に少しでも触れて頂きたいです」『合葬』は2015年秋全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年12月10日© wisut ponnimitタムくんの愛称で知られるタイの漫画家でアーティストのウィスット・ポンニミット氏は12月19日(金)~ 翌年1月18日(日)まで展覧会「マムアンちゃんHAPPY NEW ME」を六本木ヒルズA/Dギャラリーにて開催する。今回は、新作のドローイングと版画作品を展示。また展覧会に合わせてウィスット氏本人も来日、同氏を代表するキャラクター「マムアンちゃん」のアニメーションを使ったライブイベントを開催する予定だ。タムくん漫画でおなじみの女の子「マムアンちゃん」は、実はウィスット氏が2003年から2年半の日本滞在中に創りだしたキャラクター。悲しいことがあったら泣き楽しいことがあったら笑うピュアで愛らしい女の子で、LINEスタンプや、ファッションブランドne-netとコラボ、雑誌「BIG ISSUE」や「翼の王国」に登場するなど、タイや日本をはじめとするアジアで人気を博している。年末年始のタイミングで、マムアンちゃん、そしてタムくん自身の、柔らかで優しい世界観の中、心のリセットをしてみてはいかがだろうか。【作家プロフィール】ウィスット・ポンニミット / 1976年、タイ・バンコク生まれ。愛称はタム。1998年バンコクでマンガ家としてデビュー。2003年から2006年神戸在住の後、現在バンコクを拠点に作品制作中。「マムア ン」シリーズ、『ブランコ』(小学館)、『ヒーシーイット』 (ナナロク社)など作品多数。2009年『ヒ ーシーイットアクア』が文化庁メディア芸術祭マンガ部門奨励賞受賞。アニメーションの制作や音楽 活動もしており、2013年には原田郁子(クラムボン)と共にCD「Baan」を発表。>>公式ホームページ
2014年12月05日あびる優、ブログ人気急上昇先月結婚をしたばかりのあびる優さんのブログが、人気急上昇中!仕事やプライベートを楽しみつつも、常にオシャレな彼女の生活をのぞき見ることができます。同ブログで特に話題になっているのが、ランジェリーシリーズ。彼女がモデルをつとめるエメフィールのランジェリーを着用した写真が、4回にわたってアップされています。エメフィール・ランジェリー可憐な花柄模様やセクシーな黒やヒョウ柄など、豊富なデザインで知られるエメフィールですが、胸をボリュームアップさせるのも得意中の得意。同ブログ9月25日付けの記事では、「今回も盛れるブラが豊富だったよん。」と彼女も大満足のコメントを寄せています。お気に入りはグレース彼女が自身の結婚会見で着ていた素敵なワンピースについても、9月21日付けの記事で触れられており、グレースで購入したと告白。ビジューの使い方を絶賛していて「素敵で衣装でもプライベートでも大活躍!」とグレースを愛用していることを明かしました。テレビや雑誌で活躍中のあびる優さん。ブログ同様、彼女のタレント人気にこれから火がつきそうです。【参考】・あびる優オフィシャルブログ「あびるさん」
2014年10月04日漫画『ツルモク独身寮』などで人気の漫画家・窪之内英策氏が、9月6日~14日に台湾で初めて個展を開くことが明らかになった。台湾では今年、窪之内氏原作の漫画『ショコラ』(長澤まさみ主演)がTVドラマ化され、ヒットした事を受けての開催となる。会場内には漫画連載時の原稿や原画を展示し、ライブドローイング、サイン会、生原画のオークション等が行われる予定だという。もともと台湾を含むアジア圏では、『ツルモク独身寮』や『ショコラ』(日本での放送はホームドラマチャンネルにて8月28日より毎週木曜日深夜1:15~2:15/全22話)などの翻訳版が刊行されており、熱烈なファンが多い。今年の1月には長澤まさみ主演で『ショコラ』がドラマ化、また数年前には『ツルモク独身寮』もドラマ化されており、共に大きな話題となった。特に「ショコラ」については視聴率も良く、台湾の人気ドラマの一つになっている。『ツルモク独身寮』は、1988年から1991年まで漫画誌『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて連載された同氏の代表作で、「ツルモク家具」の新入社員・宮川正太と、彼が住む独身寮の住人たちとの人間模様を描いたラブコメ漫画。『ショコラ』は、ケーキ屋に転身した元暴力団員と、そこに転がり込んできた16歳の娘が織りなす人間ドラマを描いた作品で、漫画誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて1999年から2003年まで連載された。イベントではこれら漫画作品の原稿や原画展示のほか、イベント初日である6日~7日には、窪之内氏自身も滞在し、ライブドローイングやサイン会、生原画のオークションが行われる予定だ。日本では今年4月、吉祥寺で行われた窪之内英策氏の初の個展「まむがや大図鑑」が開催され、大盛況となった。その個展に対して、海外のファンから「見に行けなくて残念だ」「ぜひ日本以外でも行ってほしい」等の要望が多数寄せられたことが、今回の台湾開催のきっかけになったと関係者は話している。また、窪之内英策氏はTwitterやFacebookでも積極的にイラストを発表しており、こうしたネットでの活動に対して、日本だけでなく海外(特に台湾)からも大きな反響があるのだという。今回の個展「漫画屋大図鑑」は、9月6日~14日にかけて、台北にて開催される。会場の詳細などは以下の通り。■窪ノ内英策台湾初個展 - "漫画屋大図鑑"Kubonouchi First Taiwan Personal Exhibition-"Mamugaya Daizukan"展出資訊/Exhibition Info -日期/Date - 2014/09/06~09/14時間/Hour - 13:30~22:00地點/Place- Paradise Taipei 台北市敦化南路一段187巷17號地下室- Paradise Taipei No.17, Lane 187, Sec 1, Dun Hua, S. Rd., Taipei
2014年09月02日