幸せな人は、総じてポジティブである。人は生きる上で、嫌なことやつらいこと、悩むこともたくさんあるけれど、ポジティブ脳があれば乗り越えていける。脳科学者の茂木先生に、ポジティブ脳の育て方、切り替え方を学びましょう!「くよくよしないでポジティブに考えてみよう」と自分を鼓舞したり、「やる気を出せば次は頑張れるはず」と自己暗示をかけるのは、実はニセモノのポジティブだと脳科学者の茂木健一郎さん。「いわゆる“前向きな考え方”はただの我慢。脳のエネルギーを消費するだけで、行動するためのエネルギーを消耗させてしまいます。確かに、悩みや不安に直面すれば『ポジティブにならねば』と自分を奮い立たせようとするかもしれませんが、それでは一時的にモヤモヤを回避しただけ。ネガティブな感情を引き起こしている根本的な原因に向き合っていないので、ストレスは解消されません」私たちがニセモノのポジティブに陥る背景には、ネガティブな感情を悪いものと捉え、徹底的に排除しようとする思考グセがある。「無力感や自己嫌悪とか、ネガティブな感情にとらわれている自分は弱い、ダメだと烙印を押して、まるで石鹸で手を洗うかのように、心の汚れを洗い落とそうとしてしまう。こうしたネガティブ無菌志向は問題です。体と同様に、脳や心にも、善玉菌だけでなく悪玉菌のような存在が必要。ポジティブ一辺倒でなく、ネガティブな思考があることで、脳と心の免疫力がアップするものなんです」そもそも、創造的なコミュニケーションを目指し、アメリカを中心に発展してきたポジティブ心理学では、ポジティブとネガティブの心理は、切り離して考えられないものだとするのが大前提。「ネガティブな感情をきちんと受け入れた人ほど、ポジティブな感情と一体となって、ものすごいパワーを生み出している実例がたくさんあります。欠点と長所は表裏一体なので、欠点も客観視してちゃんと見つめ、受け入れられるようになれば、ネガティブな脳からポジティブ脳へとスイッチを切り替えられるはずです」ポジティブ脳に切り替えるため、重要なスイッチとなるのが、脳科学でいわれる「メタ認知」。「簡単に言えば、自分の現状を俯瞰できる、客観的に見つめる力です。感情に振り回されないで『なぜ嫌な感情に取り憑かれているのか』を客観的に分析し、自分の心の状況と原因を言葉で表せるようになると、発想の転換が生まれます。ネガティブな状況に陥っている人は、引き込み現象が起きて視野が狭まるものですが、『メタ認知』ができれば気づきがあり、脳が切り替わってくれるんです」例えば、彼氏ができたと友達に告げられて嫉妬の気持ちが芽生えたら、その感情を客観視してみる。「なぜ僻むのか。私も彼が欲しいから?だったら友達に紹介してもらえばいいかも」と、自分を俯瞰してみることで、ネガティブな感情の向こう側にあったポジティブな発想や行動につなげられる。「ポジティブ脳でいるためには、行動あるのみです。行動するのにやる気はいりません。動かず停滞していては、脳のエネルギーを無駄に消耗してしまうだけ。『自信がない』『時間がない』などと言い訳をする前に、どうして自信がないのか、時間をどう生み出すか、考える作業を続けながら、自分ができることをとにかくやってみること。目の前のことをやり続けていれば、知らないうちに脳はポジティブに変わっていきます」茂木さんに提案してもらった、具体的な脳の切り替えスイッチの入れ方を、早速実践してみよう。◇茂木健一郎脳科学者。脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論などにも取り組む。近著に『もっと結果を出せる人になる!「ポジティブ脳」のつかい方』(学研プラス)。※『anan』2016年7月20日号より。写真・土佐麻理子文・板倉ミキコ
2016年07月14日音楽教育が、子供の情緒や感受性、社会性や知能の発達にとても良い影響を及ぼすことは、すでに広く知られている事実です。また、子供たちが音楽を集中して聞くことで、言語を聞き取る能力もアップし、語彙力や語学力がつきやすくなるとも言われており、昨今ますます幼児のための音楽教室の人気があがっているようです。「音楽教室に通わせたいけれど、経済的な事情や、時間的な問題で難しい」というご家庭は、ぜひ家庭で音楽教育をしてみてはいかがでしょうか。今回は、家庭でもできる音楽教育についてご紹介したいと思います。つけっぱなしのテレビを消して、良い音楽を聞かせよう音楽教育というと楽譜を読んだり、楽器を弾いたりすることを想像しますが、 幼児期の子供にはまだまだ難しいもの。さらに楽器を演奏するにも、手が小さすぎますよね。ですから、乳幼児期はよい音楽をたくさん聞かせて、「耳つくり」をしてあげることが最も重要な音楽教育なのです。普段、リビングで子供と過ごすときなど、テレビをつけっぱなしにしているママも多いかもしれませんが、これからはテレビの代わりに良い音楽を流してみませんか。では、どんな音楽が子供にとって「良い音楽」なのでしょうか。クラシック音楽やジャズ・ポピュラー・日本の伝統音楽・童謡など、音楽といってもさまざまなジャンルがあります。もちろん、どのジャンルにもすばらしい音楽は存在していますが、子供におすすめなのが、それぞれの国の歴史とともに、長く生き続けてきたような音楽です。いくら流行しているとしても、機械的な音楽では、子供の想像力や情緒を育てることは難しいのです。手始めに、ママやパパが小さいころから聞いていた日本の昔ながらの童謡や、モーツアルトのクラシックなどの歴史ある音楽を選んで、部屋でゆっくりするときや、食事中のBGMとして流してみませんか?日常生活や遊びの中に音楽に取り入れる音楽教室ではなく、家庭で音楽教育をするメリットは、遊びや生活の一部として自然に音楽に親しめる点ではないでしょうか。子供が遊んでいるときに音楽を流してあげていると、無意識に子供の心に音楽が刻まれていきます。他にも食事中、寝かしつけの際、朝起きるときなど、その状況に相応しい音楽を選んで、自然な形で生活に取り入れていきましょう。また、子供が元気のないとき、イライラしているときは、まずは静かな音楽を流し、気持ちを落ち着けてから、活発な音楽を流すようにすると、子供たちの気持ちが明るくなったり いらだちをやわらげたりする効果があるとも言われています。このように、子供の気分を変えたり、気を紛らわせたりする手段として音楽を使ってみても良いでしょう。家族で一緒に音楽を楽しもう!子供の情緒や知能の発達に役に立つからと、一方的に子供に音楽環境を与えるだけでは、家庭での音楽教育は物足りないものになってしまいます。大切なのは、ママやパパの心にも、音楽を楽しむ余裕を持ってもらうことなのです。親子一緒に、童謡を歌ったり、音楽を聞きながらリズムを取ったりして、「音楽は楽しいものだ!」と子供が思えるようにしてあげましょう。ママやパパがピアノなどの楽器が弾けるのであれば、童謡やクラシックを演奏して子供に聴かせてあげることができますが、楽器が苦手だったとしてもハーモニカや鈴など、かんたんに演奏できる楽器を用いて、家族で歌いながら合奏するのもおすすめです。また「とんとんとんとんひげじいさん」や「いとまきまき」など、子供たちが大好きな手遊び歌を一緒に歌ったり、音楽に合わせて飛んだり跳ねたりすることも、立派な音楽教育です。このように、家族で音楽に親しみ、楽しんでいるという環境こそが、子供の音楽的感受性を育ててくれるのです。いかがでしたか?音楽が子供の心や脳に良い影響を及ぼすからといって、一方的に楽器を与えたり、子供が嫌がる音楽を聞かせようとしたりするなど、やみくもに「音楽」を押しつけることはやめましょう。子供たちが音楽に親しみを感じ、楽しめるようになってこそ、音楽が子供に良い影響を与えてくれるのです。まずは、親子で音楽を楽しみながら、子供が音楽に興味が持てるような環境づくりから始めてみましょう!
2016年06月08日恋は人生の喜びである半面、道を違えると、逃れがたい苦しみも生む。いま、そんな恋に悩むあなたへ。脳科学のプロが「わかっちゃいるけどやめられない」を、卒業する術、教えます。脳科学的に分析すると、終わらせるべき恋には“2種類のツラさ”が混ざっているそう。脳科学者・中野信子さんはこう分析します。【ツラい恋に陥るメカニズム】恋をすると分泌されるドーパミンの誘惑のせい。「まず一つは、彼への思いを断つと、それまで恋愛で得られていた刺激がなくなってしまうというツラさです。もう一つは、恋愛でときめいている状態自体のツラさ。恋に落ちると、脳内にはドーパミンが分泌されますが、それはとても気持ちがいい半面、食欲がなくなり、胸が詰まる感じもして、肉体的にはしんどい。そしてその恋が困難であるほどドーパミンの分泌は促され、苦しくはあるけれど、気持ちよくて諦めづらくもなるのです」とはいえ、誰もがそんな恋に陥るかというとそうではないという。「ドーパミンの感受性が低い人は、たくさんのドーパミンが分泌されないと満足できないため、いつもときめきを感じたがります。結果、恋に依存しがち。ドーパミンの感度は生まれつきのものなので変えることはできないのですが、脳の前頭前野を鍛えることでコントロールできるようになりますよ」【ツラい恋の強制終了法】前頭前野を鍛えて恋に盲目な自分とサヨナラそうした恋を終わらせるには、自分を客観視する領域である前頭前野を鍛えることが大切です。鍛え方としては、毎日10分でいいのでその日の自分を振り返ること。『彼のことを考えちゃったな』などモニタリングして。そのうちに自分の状態を把握するのが上手になり、恋に依存しがちな自分を抑えるための、理性が強くなるはず。あとは、恋愛以外の刺激でドーパミンの分泌を促すのも有効です」【TO DO】・エクストリーム系スポーツで新たな刺激と良質なリスクを両立。・仕事にバリバリ打ち込んで、周りから認められるようになる。・山登りのように、達成感のあるレジャーでドーパミンを分泌!◇なかの・のぶこ脳科学者。横浜市立大学客員准教授、東日本国際大学教授。『ワイド!スクランブル』(テレ朝系)コメンテーターなどテレビでも活躍。著書は『脳はどこまでコントロールできるか?』(KKベストセラーズ)など。※『anan』2016年5月25日号より。イラスト・佐瀬麻友子文・保手濱奈美
2016年05月22日徹夜をしたときの頭のボーッとした感じは、明らかに脳が働いていないなと実感できるものですよね。実際に、脳と睡眠には深い関係があるので、今回はそれにまつわる研究を紹介します。最近、仕事でミスが多いなと思う人は、もしかしたら睡眠が足りていないのかもしれません。睡眠が脳に与える影響睡眠と脳には切っても切れない密接な関係があります。私たちは、仕事や勉強中の活動を始め、人の表情、駅のアナウンス、味や匂い、騒音など、五感をフル活用して、さまざまな情報感じ取っています。それらがずっと蓄積されていくと、とんでもない情報量になるので脳はパンクしてしまいます。そうならないために人間は、睡眠中に「脳にたまった情報の整理や掃除」を行うのです。脳にはそのための循環系があり、睡眠中に脳脊髄液によって老廃物を排出していると考えられています。朝起きたらスッキリしているのは気のせいではなく、実際に脳もスッキリしているからなのかもしれません。この脳内の整理や掃除は快適な生活を送るためには必要なことです。脳に余計な情報がパンパンに詰まったままだと脳がフル稼働できません。睡眠と脳の関係を調べる研究あれこれ睡眠と脳に関する研究というものがあります。どのようなものがあるのか見てみましょう。眠気を誘発するのはカルシウムイオン今年3月に東京大学の研究チームが発表した研究結果によると、脳内のカルシウムイオンが眠気を誘発していることを突き止めたそうです。これまで眠気の正体は明確にわかっておらず、睡眠物質なるものが存在すると考えられてきました。それを特定するために東京大学の研究チームはマウスを使った実験などを行った結果、脳へのカルシウムイオンの流入が睡眠に関係あるとわかったそうですこの研究結果が睡眠と関係があるとされるアルツハイマーなどの神経変性疾患の治療に役立つ可能性があると言われています。睡眠時間によって脳の効率が変わる睡眠時間と脳の働きの関係を調べた研究では、1日6時間の睡眠を続けた人は飲酒したときと同等のパフォーマンスしか発揮できないということがわかったそうです。被験者をグループ分けし、4時間・6時間・8時間と睡眠時間を違えて、2週間調査を続けたところ、8時間では問題なく脳が働くことが判明したと言われています。ちなみに4時間睡眠では、飲酒時と同等の6時間よりも脳の働きが悪く、検査を受けられないレベルの人もいたそうです。脳は本当に働き者睡眠には深い睡眠のノンレム睡眠と浅い睡眠のレム睡眠があります。これも脳と関係があり、レム睡眠時の脳の酸素消費量は起きているときよりも高い数値になると言われています。なぜかと言えば、冒頭でも紹介した、脳にたまった情報の整理や掃除をレム睡眠のときに行っているからです。私たちが寝ている間も、脳は日中より多くの酸素を使って一生懸命、整理整頓をしてくれるというわけです。瞬間睡眠を知ってる?ところでみなさんは瞬間睡眠という言葉をご存知ですか? 脳をクールダウンさせ、若返らせることができると言われているすごい睡眠法なんです。実はこの瞬間睡眠、みなさんも知らないうちに実践しているかもしれないのです。ランチ後、強烈な眠気が襲ってきた仕事中などに、一瞬だけ眠ってしまうことがありますよね。「いけない、いけない」と慌てて起きて仕事をすると、一瞬寝た前よりも頭がスッキリしていることがあると思います。それは気のせいではなく、一瞬でも脳は整理や掃除をしてくれているからです。もちろん、もう少し長く(数分~30分未満)睡眠をとれたら、もっとパフォーマンスが向上することは言うまでもありません。でも、仕事中はどうしても長く仮眠がとれないものですよね。そんなときは一瞬でも意図的にウトウトする瞬間睡眠を活用してみてはいかがでしょうか。photo by acworks
2016年04月20日『聞くだけで脳が目覚めるCDブック』(山岡尚樹著、あさ出版)の著者は、「超脳トレ」全脳活性プロデューサー。そう聞いただけで活動内容をイメージすることは難しいかもしれませんが、つまりは脳をより活性化させるためのオーソリティ。具体的にいえば、人の脳に秘められた潜在能力を、音、イメージ、気の力を通じた実践ワークによって引き出しているのだそうです。つまり本書においては、これまで10万人以上に実践してきたという脳トレのノウハウを凝縮しているということ。CDも付属しているので、聴くだけで無理なく効果が望めるのだといいます。■脳は3%しか使われていない!ところで著者は脳のことを、あえて「道具」だと位置づけています。いってみれば、それはスマートフォンのようなもの。いろいろなアプリが入っていて、さまざまな使い方ができるという意味です。だとすれば、一般的に「頭がいい」「デキる」「効率がいい」といわれるような人は、総じて「道具としての脳の使い方がうまい」ということになるでしょう。ところが多くの人は現実的に、「電話をかける」「メールをする」といった程度の使い方しかできていないのだといいます。せっかくの多機能を、まったく使いこなせていないというわけです。しかも一説によると、ほとんどの人が脳をわずか3%しか使えていないというのですから驚き。だとすれば必要なのは、残り97%の「脳力」をどう引き出すかということになるはずです。■右脳・左脳・間脳・脳幹の役割そこで、まずは脳の役割をおさらいしてみましょう。ご存知のとおり、脳には大きく分けると「右脳」「左脳」「間脳」「脳幹」という部位があり、それぞれ次のような役割があります。[右脳]ひらめきやイメージ力、調和などをつかさどる脳。「芸術家肌の人は右脳優位」といわれるのは、このような理由があるからです。[左脳]計算や分析が得意な脳。言語、計算、論理、理屈といった理性的で論理的なところをつかさどるわけです。[間脳]脳内ホルモンの分泌を調整し、感情の操作をつかさどる役割。[脳幹]呼吸、体温調整といった、生きるための調整を担当。本書のトレーニングにおいては、まず「右脳」を活性化させ、多くの人のなかに眠っている未使用の脳力を引き出すのだそうです。■新しい「脳力」を目ざめさせる日常生活においてほとんどの人は、左脳が優位に働いているもの。著者によれば7~8割以上の日本人が左脳優位だというデータもあるそうですから、日本人は左脳民族であるともいえるのかもしれません。左脳優位である以上は、計算、論理、理屈など、現実的に判断・実行する力をしっかり持っているということになります。では、そんな実行力ある左脳に加え、右脳を活性化するとどうなるのでしょうか?答えは次のとおり。・与えられたことだけではなく、斬新な発想、ひらめき、イマジネーションを現実的に判断・実行できる。・ひとつのことだけでなく、同時に複数のことを実行できる(効率がよくなる)。・直感力や判断力が上がり、課題・問題に対して「検討→解決」の時間が短くなる(問題解決が格段に速くなる)・ものごとを俯瞰的に見ることができ、マネジメント脳力が上がる。つまり、一般的な「デキる人」「頭がいい人」のイメージと重なっていくということです。現代人は、もともと左脳が鍛えられているもの。だからこそ、右脳や間脳、脳幹などで眠っている“新しい脳力”を目ざめさせることにより、また異なった脳力を生かすことができるということです。■聴くだけで脳が活性化する理由よくある計算ドリルなどの脳トレは、左脳中心の訓練しかできないことが難点。一方、右脳を刺激できるのが、本書に採用されている「音」のトレーニング。なぜなら脳は「音」「イメージ」「気」という3種類のアプローチで活性化できるからだそうです。「イメージ」することは、人によってうまい・下手の差があるでしょう。「気」にしても、感じられる人と、そうでない人がいるはずです。しかし「音」は、誰にとっても、耳に届く内容は同じ。また、そもそも脳に伝わるエネルギーの約90%は、耳から入ってくるといわれているのだそうです。こうしたことから、「音」は脳を活性化させるための、もっともベーシックで優れた刺激だといえるのです。*しかも、脳は何歳からでも鍛えることができるのだとか。「脳を鍛える」という発想自体があまりなじみのあるものではありませんが、音を聴いているだけで鍛えられるならば、ぜひ試してみたいところではあります。CDに収録されている音源は、クラシック、オペラ、落語までバラエティ豊か。著者のノウハウが凝縮されているだけでなく、リラックスして聴くこともできるというわけです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山岡尚樹(2016)『聞くだけで脳が目覚めるCDブック』あさ出版
2016年04月11日忙しい毎日を過ごしていると、あたかも自分が充実した人生を送っているかのように錯覚してしまいがちです。しかし、それは大きな勘違いだと指摘するのは、精神科医・医学博士である『ぼんやり脳! 上手にボーッとできる人は仕事も人生もうまくいく』(西多昌規著、飛鳥新社)の著者。充実しているどころか、常になにかをやって忙しくしているのは、脳にとって「非常に不健康な状態」だというのです。そして、だからこそ「なにもせずにボーッとしている時間」が必要なのだということが本書の考え方。実際、ボーッとしているときには、脳内において意識的課題を行っているときの15倍にもおよぶエネルギーが使われているというのですから驚きです。ちなみに、ぼんやりしているときの脳活動システムは「デフォルト・モード・ネットワーク」(本書では「ぼんやりモード・ネットワーク」と呼ばれています)。脳をすこやかにキープしていくためには、その機能を落とさないようにしていくことが重要だというのです。■ボーッとすると脳の健康にいい!書店には、「時間術」「手帳術」などをテーマにした本や雑誌がたくさん並んでいます。しかし、その多くに書かれているのは、「ほんの数分の時間もムダにすべきではない」「すき間時間をフル活用しよう」というようなことばかり。たしかに時間は大切で、有効に使うに越したことはないでしょう。しかし、ほんのわずかな時間に対して汲々とするのは、ちょっと余裕がなさすぎると著者はいいます。すき間というすき間をすべて予定で埋めてしまったら、ほっと一息つく時間すらなくなってしまうということです。むしろ、ビジネスや自分磨きなどにおいて他人に差をつけるために重要なのは、「いかに効率的にぼんやりするか」なのだとか。脳を健やかに機能させていくためには、ボーッとする時間が不可欠。だからこそ、仕事と仕事の合間のすき間時間になるべくボーッとするようにしていれば、脳の疲れがスッキリとれて、その後の仕事に対してフレッシュな頭で臨むことができるということ。■ボーッとするといい企画が浮かぶまた、ボーッとしていると、ひらめきが湧きやすくなるのだともいいます。つまり、いい企画や、仕事上の懸案に対しても「そうか、こうすればよかったんだ」という解決策が浮かぶ可能性が高まるということ。また、ぼんやりしているときの脳内においては、過去のことを反省したり、未来に対する準備をしたりしながら、自分の現在の状況を立てなおすようなネットワークが働いているのだそうです。無意識のうちにぼんやりと頭に浮かべている反省や準備のイメージが、あとあと自分の思考や行動を修正する際に生きてくるのです。だからこそ、「時間術」を学ぶよりも「ぼんやり術」を学ぶほうが、より脳の力を引き出して自分を伸ばしていけるという考え方。■活動時の15倍もエネルギー消費ちなみに「デフォルト・モード・ネットワーク」の存在を世界で初めて明らかにしたのは、ワシントン大学のM・E・レイクル教授。その研究においては、脳の活動エネルギーの大半をデフォルト・モード・ネットワークが使っていたという点に多くの注目が集まったといいます。レイクル教授によれば、脳が消費するエネルギーのうち、本を読んだり仕事をしたりといった「意識的活動」に使われるエネルギーは、全体のわずか5%程度。約20%のエネルギーは脳細胞のメンテナンスにあてられ、残り75%のエネルギーが「なにもせずにぼんやりしているときの活動」のために使われているそうなのです。「なにもせずにボーッとしているとき」には、「意識的な活動をしているとき」の15倍ものエネルギーが使われているということです。■ボーッとする時間を大切にしようつまりエネルギー消費という側面からみれば、「なにもせずにぼんやりしているとき」の活動のほうがメインだったことになるわけです。逆に、仕事や作業に集中するなどの「意識的な活動」は、脳のエネルギー消費量からすれば“どうでもいい”という程度のものであったということ。私たちは多くの場合、「なにもせずにボーッとしていること」に価値を見出すことはなく、むしろ「意識的に働いていること」を重要視して日々の生活を送っているのではないでしょうか?事実、ぼんやりしている姿は、周囲の人から「仕事や作業をなまけている」「集中力を欠いている」と見られがちでもあります。ところが、そんな「ぼんやり時間」にこそ、脳は大量のエネルギーを投入して重要な活動を行っていたというわけです。だからこそ私たちは、これまでの先入観や価値観をいったんリセットし、「なまけモード・ネットワーク」「ぼんやりモード・ネットワーク」の大切さを見なおしていく必要があるのではないか?著者はそう提言しています。*たしかに著者がいうように考えれば、ずいぶん気が楽にもなります。精神的な負担を意識せず、最良のかたちで物事を進めるために、「ぼんやり時間」を意識してみるべきかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※西多昌規(2016)『ぼんやり脳! 上手にボーッとできる人は仕事も人生もうまくいく』飛鳥新社
2016年04月10日小学3年生~4年生というと、年齢にすれば9歳~10歳になりますね。実はこの頃の子どもたちの脳は、あるポイント地点に到達しています。この時期を境として、その前と後とでは、脳が少し違ってくるのです。いったいどう違ってくるというのでしょうか。それを知ると、わが子への働きかけをどうしていったらよいのかが、よくわかるのです。■9歳~10歳で大人の脳へと切り替わる!生まれてから3歳くらいまでは、脳の発達の度合いはとても急激です。そして3歳過ぎになるとややゆっくりとした速度で脳は発達していきます。そのまま行くのかというとそうではなく、子どもの脳は9~10歳ころにもう一度変化をみせるのです。学校での実例から見ても、9~10歳ころ、つまり小学3~4年生の頃というのは、子どもの学習という視点から見ても変化の兆しが表れる時期です。また、発達心理学の立場からは、このころを「9歳半の節」と名付けています。つまり、この頃の子どもたちはそれまでとはどこか違った様子を見せるようになるというのです。この時期の子どもたちの脳は、大人の脳に移行していく時期を迎えているのです。■子どもの脳と大人の脳の違いでは、大人の脳と子どもの脳というのは、どう違うのでしょうか。そもそも脳にとってのエネルギーは、血液から来ています。脳を使うと血液循環のスピードが速まり、それに伴ってエネルギーもたくさん脳に取り込めるのです。エネルギーを脳に取り込むには、酸素が必要です。大人の場合、血液循環のスピードが上がったとき、それに準じて酸素もたくさん取り入れられるようになるかというと、実はそうではないのです。ですから、エネルギーが脳に取り入れられる量が一定に決まっているということになります。なぜこんな仕組みになっているのかは定かではありませんが、突然血液量が増えてしまうことによって血管に圧力がかかり、詰まりを生じたり切れたりしないようになっているとも考えられています。しかし、この仕組みは、子どもの脳には当てはまりません。子どもの場合は、血液循環のスピードが上がるに従って、取り入れられる酸素の量も増えていきます。ということはつまり、脳を使えば使うほど、脳に必要なエネルギーをどれだけでも得ることができるということになります。子どもの脳はこのような素晴らしい仕組みになっています。ですから、子どもの脳である時は、どんどんと脳を鍛える学習(漢字の書き取り、音読、計算問題など)をするのにもっともふさわしい時期と言えるのです。では、いつまでが子どもの脳と言えるのか。それがズバリ、9歳~10歳ころ、学年で言えば小学校3~4年生の頃なのです。移行の時期には男女差があり、女子は男子より6ヶ月ほど遅れてやってきます。■9歳~10歳くらいの子どもの変化に対して心の余裕を持つ方法小学校3年生~4年生のころになると、脳はもう子どもではありません。大人の脳へと移行していくのです。まだまだ子どもに思える小学校3年生~4年生ですが、脳は確実に大人へと切り替わっていくのですね。さて、この時期の子どもたちを見ていると、それまでとはちょっと違うように見えることがあります。「何だか最近、生意気な口を利くようになってきた」「どうも落ち着きがないのよね」などと、どことなく漂う不安定感に気づかれる方もいるでしょう。それはもしかしたら、大人の脳へと移行していくことから来るのかもしれません。反抗期を迎えた子どもも、今までとはちょっと違った様子を見せますが、それとこの時期の変化とは、少し異なっています。いつも一番近くで子どものことをよく見ている親であれば、きっとその違いがわかることでしょう。さあ、ここまで読んでいただければ、あなたの子どもが小学校3年生~4年生になり、今までとはちょっと違った雰囲気を見せ始めた時、「大人の脳へと変化しているのだ、確実に成長しているんだな」と、少し余裕を持って受け止めてあげられるでしょう。大人の脳へと順調に移行していけば、脳の働きはより潤滑なものとなり、ついに思春期へと向かっていくのです。
2016年04月05日初対面で目を合わせた瞬間に「あなた貧血でしょう?」とか、握手する手を見ただけで「タンパク質をあまり食べてませんね?」などと指摘され、それがぴったり合っていたら驚きますよね。それが医師ならなおさらのこと!斎藤糧三先生は、まさにそんなドクター。専門は「機能性医学」という新しい医療です。海外ではすでに定着しつつあるこの「機能性医学」、一体どのようなものなのでしょう。根本原因を探り、生活改善で治す 「機能性医学」とは?機能性医学… 日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、おおまかに言えば「よくある慢性的な病気や原因不明の不調に対して、薬などの対症療法に頼らず、根本原因を探って生活改善によって治す」という考えに基づくもの。もう少し詳しく、先生にお話を伺いましょう。「機能性医学は、1990年にアメリカのジェフリー・ブランド博士が提唱した新しい医学です。アメリカではここ20年ほどで定着し、かなりポピュラーになってきました。熱があるから解熱剤を出し、咳が止まらないから咳止めを処方するというのではなく、熱や咳の原因を調べ、その原因を取り除くことで健康を取り戻す方式ですね。アメリカではもう、従来の投薬に重きを置いた対症療法では無理だと国民が気づいただけ。日本は保険制度が完備されていて、誰もが平等に医療が受けられるしくみが整っていますが、アメリカは、病気になったから治療を受けたのでは高額の治療費がかかる。知恵のある人はいかに病気を避け、病院に頼らない方法を追求する傾向があります。機能性医学が広く受け入れられる下地があったわけです」(斎藤先生)近年は日本でも、機能性医学が求められているはず。生活習慣病などの慢性病(治療が長引き、慢性の経過をたどるさまざまな病気)が、日本の医療費に占める割合はおよそ8割だからです。花粉アレルギーや、アトピー、うつ病、頭痛、冷え症、ぜんそく、蕁麻疹、リウマチ、便秘、糖尿病などは、多くの人が悩む慢性病の代表的なもの。学校へ行けないとか仕事を休まなくてはならないというほどひどくはないけれど、仕事や勉強の能率を著しく下げてしまうような病気が増え続けていることは、社会が抱える重大な問題です。最近では、ガンさえも生活習慣によるものと言われていること、見逃せません。病気は “医者に治してもらう” のでなく患者さんと医師が「一緒に」治すもの「多くの人が医者から処方された薬を飲み続けています。それでも治らない。その結果ドクターショッピング(あちこちの病院、さまざまな科、主治医を転々と変えること)をし、時間もお金も使ってしまう。対症療法でなく、症状の原因に目を向けて診断すると、その方が栄養バランスが悪かったり、病気を呼ぶような環境にいることがわかったりします。栄養の偏りを正したり、足りない栄養素を補ったりするだけで症状が軽くなる人が多く、中には何十年も苦しめられていた頑固な持病がすっかり治ってしまうケースもあるほど。『先生のように、私の生活の中に原因があるのではないかと探ってくれた医者は今までいなかった』と感謝されると、本当に良かったなと思いますよね」(斎藤先生)斎藤先生が機能性医学と出会ったのは、自分が長年悩んでいた花粉症をこの医学が治してくれたからでした。そもそもアンチエイジングに力を注ぐ医師でありながら、慢性疾患になすすべがない従来型の医療に疑問を感じていた先生は、2006年、うっかりカビの生えた燻製肉を食べたことがきっかけで、腸の調子が悪くなりました。お腹の張り、ガス、下痢などに散々悩まされた挙げ句、1カ月後に症状は全身に広がり、手のひらや足の裏にまで炎症が起こり、膝にはリウマチを思わせるような関節痛まで生じてしまったのです。なぜ、カビ毒からそんな全身の症状が引き起こされるのか、従来型の医療では説明がつかない。何かないのだろうか… と考えていたところ、アンチエイジングの国際学会の仕事をしていた折りに、腸と全身疾患の関係を解いた『機能性医学』というものを知り、急に興味を持ちました。2007年からは、アメリカで機能性医学のプログラムに参加し、この医学を系統的に学び、日本人として初めて「機能性医学認定医」の資格をアメリカで取得。日本ではまだ紹介されていなかった機能性医学研究所を設立します。そして2008年、機能性医学の底力を自ら体感するターニングポイントがやってきたのです。「その年の機能性医学のトピックのひとつがビタミンDだったのですが、機能性医学では、ビタミンDを“免疫系を整えるのに必須の栄養素”ととらえているんです。そこで『小さいときから抱えているアトピーや花粉症などのアレルギー疾患は、ビタミンDの慢性的な欠乏によるものかも』と思うようになりました。そして、実際にビタミンDを摂取することで自分の花粉症が治ってしまったんですよ。ほんとに、これだ! と思いましたね」(斎藤先生)「生活」を変えるのは、患者さん本人病気には「遺伝的要因」と「環境的要因」の2つがあります。遺伝的な要素は両親から受け継いだものなので生涯変化しませんが、環境的なものは食生活などの生活習慣や、その人の置かれている生活環境によってコントロールが可能です。遺伝子に関わらず最大の健康を得るためには、生活習慣・生活環境を最適化することが大切。もちろん、人の体は代謝ひとつとっても十人十色。なので、一人一人に合わせた見極めも必要です。「日本人は『病気になったら病院で薬をもらって治してもらおう』という発想に陥りがちですが、生活を変えるのは患者さん本人。医者にはできません。医師と患者さんが二人三脚で疾病に立ち向かうこと。治してもらうのではなく、一緒に治すという気持ちを持ってもらうことも大切なんですよね」(斎藤先生)慢性病を改善するための「5つの習慣」機能性医学では、これまでとは全く違ったアプローチで原因を特定していきます。例えば、精神的な悩みにも栄養不足を疑ったり、頭痛であれば肝機能の低下を疑う、など。女性に多いむくみや冷え症はタンパク質不足が原因であることが少なくないのだそうです。「普通の医師ならばたいして深く注意を払わないような対人関係や、睡眠環境といった領域まで、聞き出すこともありますね。それも、機能性医学においては慢性病を治す上で欠かせないポイントなんですから」(斎藤先生)そして慢性病を改善するために「5つの習慣」を提案します。1:栄養精製糖や白い穀物を控えて、良質のたんぱく質・脂質をしっかり摂り、ビタミンやミネラルが不足しないように気をつけること2:ストレスと対処力置かれている状況を把握したうえで、ストレスを味方にするようなものの考え方をする3:運動と活動30分ほどの速歩や自宅で行える簡単な筋トレを取り入れるだけで、メタボもロコモも防げて、認知症リスクが下げられる4:睡眠と休息栄養状態を整えると同時に、光をコントロールし、睡眠時無呼吸症候群などにも対処5:家族とソーシャルネットレジャーや運動などを介して人とのつながりを増やすことが、それぞれの慢性疾患のリスク軽減これらはすべて、治療薬を飲み続けるよりも低コストでできること。患者さんにできそうなものから薦めますが、5つのなかでも要となるのは1つめの「栄養」。1日3回、無意識のうちに口にしている食事の中身(=栄養バランス)、これを整えるだけで、慢性疾患のリスクが下げられるためです。食生活を整える「ファンクショナル栄養学」機能性医学に基づく栄養の考え方は「ファンクショナル栄養学」と言われます。従来の栄養学が慢性病を招いているのだとしたら、それを予防する食事法が必要。これが「ケトジェニックダイエット」と呼ばれるものです。勘違いされがちなのですが、「ダイエット」とは、日本ではこの30年ほどの間に「減量」を指す言葉になってしまいました。そもそも英語では「食事法」という意味です。現代人には必要のない糖質の過剰摂取をやめ、栄養のバランスを考えたケトジェニックダイエットを広めるため、斎藤先生は2013年、「一般社団法人 日本ファンクショナルダイエット協会」を立ち上げました。全米では、名門病院クリーブランド・クリニックにも2014年に機能性医学の外来が開設。全米から患者さんが殺到して、常に200人以上のウエイティングリストができているそうです。アメリカで広まりつつある機能性医学は、医療費がパンク状態の日本においても、近い将来、不可欠な医療になると考えられているのです。斎藤糧三先生 プロフィール1973年東京都生まれ。医師。1998年に日本医科大学を卒業後、産婦人科医に。現在、日本機能性医学研究所所長、一般財団法人日本ファンクショナルダイエット協会副理事長、サーモセルクリニック院長、ナグモクリニック東京・アンチエイジング外来医長。機能性医学をいち早く日本に紹介し、日本人として初めての機能性医学認定医に。栄養療法、アレルギーの根本治療、ケトジェニックダイエットの啓蒙・指導、更年期症候群の治療、アスリートの栄養管理など、得意分野は多岐に渡る。著書に『慢性病を根本から治す「機能性医学」の考え方』(光文社新書)。『スーパーフード事典 BEST50―栄養素、効能、おいしい食べ方がわかる』(監修/主婦の友社)。そして話題の新刊『糖質制限+肉食でケトン体回路を回し健康的に痩せる!ケトジェニックダイエット』(講談社)が2月24日発売に。
2016年03月26日人間には「男性脳」と「女性脳」の脳タイプがあるって知ってた?男女脳のメンタリスト、DaiGoさんによれば、脳タイプの判別の仕方は簡単。右手を見て、薬指と人差し指を比較して。薬指のほうが長ければ男性脳、人差し指のほうが長い、もしくはほぼ同じであれば女性脳なんだそう。「女だから、あたりまえ?いえいえ、そうではありません。女性でも男性脳の傾向が強い人は約10%、男性でも女性脳の人は約15%もいます。ただ1つ確かなのは、男性脳と女性脳では、生物学的に『脳』の仕組みに大きな違いがある、ということです」(DaiGoさん)女性脳の特徴は、「共感が大事。同時進行もOK。感覚的。プロセス重視。頷きながら聞く。シェアしたがる」。男性脳の特徴は、「競争が好き。ひとつに集中。論理的。結論重視。黙って聞く。独占したがる」とのこと。「その違いは、右脳と左脳をつなぐ『脳梁』と呼ばれる神経の太さに表れます。右脳は『直感』や『感性』を司ります。左脳は『言語』や『思考』を司ります。つまり、右脳と左脳の連絡がスムーズで両方の脳をバランスよく使えるのが、女性脳。女性は感情(右脳)を言葉(左脳)で表現する『おしゃべり』がとても得意なのです。一方、男性脳は、会話をするとき左脳しか使えません。そう、もうお分かりですね、“伝えること”は本来、女性脳の得意分野です。女同士の高度なコミュニケーションにおいては、その力が最大限に発揮されます」(DaiGoさん)ということは、男性脳相手の仕事や恋愛の場面ではどうなる?「上司や彼氏が、“典型的な男性脳”の場合、彼らは、女性脳の考え方や行動を理解することが難しいかもしれません。さらに言えば、男性脳と女性脳の発想の違いは、日常のコミュニケーションで『すれ違い』を生む原因になるでしょう。互いに全く悪気がない場合でも、です。それって残念だと思いませんか?」とDaiGoさん。まずは、男性脳と女性脳の違いを理解するところから始めてみましょう。※『anan』2016年3月30日号より。写真・土佐麻理子文・瀬尾麻美
2016年03月26日実は男女のすれ違いは「男性脳」「女性脳」の2つの脳タイプの違いが原因になっていることも。男女脳のメンタリスト、DaiGoさんによれば、脳タイプの判別の仕方は簡単。右手を見て、薬指と人差し指を比較して。薬指のほうが長ければ男性脳、人差し指のほうが長い、もしくはほぼ同じであれば女性脳なんだそう。メンタリストのDaiGoさんが具体的なシチュエーションをもとに、脳タイプによる考え方の違いを解説します!■SCENE1彼氏とのすれ違い女性脳の彼女:「Jちゃん(同僚)、彼氏と旅行したんだって。ハワイだって」男性脳の彼氏:「へーそうなんだ。いま、部署が忙しい時期だったんじゃなかったっけ?」女性脳の彼女:「……」(そのあと不機嫌に)男性脳の彼氏:「……」(Jのせいで、彼女、仕事量増えたりしてるのかな。かわいそうだな)この会話、察しのいい人なら「私もハワイに連れていってほしい」と女性側が暗に言っていることがわかるはず。でも、男性脳の人は言葉をその通りに受け取る傾向があるため、このような勘違いが起こるのも、ある意味当然。男性脳の前では直截的な表現を心がけて。■DaiGoさんの解説女性脳はダイレクトな表現をあまり好みません。本心をズバッと伝えるのはやや苦手なのです。そのため、女性脳同士の会話では、会話の中身が、気づけば“状況報告”ばかりになっているパターンが多々あります。まるでネットの“まとめサイト”のような…。会話しているにもかかわらず、いちばん伝えたいことの“核心”を絶対に明かさないまま話が進行していくという、ある意味、超高度なコミュニケーションです。これを男性脳が理解するのは至難の業。“裸の付き合い”“腹を割って話す”という言葉があるように、男性脳のコミュニケーションは女性が思う以上に直球勝負なのです。■SCENE2上司とのすれ違い男性脳の上司:(一度頓挫しかけたプロジェクトについて)「あの時はどうなるかと思ったけど、成功してよかったな!」女性脳の部下:「あ…ありがとうございます。(部長はあの時の私の失敗をやっぱり気にしているのかな。落ち込むな~)」褒められているにもかかわらず、「あの時はどうなるかと思ったけど」というネガティブな前置きのほうが気になるのは、想像力の豊かな女性脳らしい感情の読み取り方。でも残念ながら、男性脳の人にこうした高度な嫌みを言える発想はありません。ご安心を!■DaiGoさんの解説先日、とある企業の社長から、「部下を褒めるのって難しいですね」と相談されました。そうなんです、特に、男性脳の上司が女性脳の部下を褒めるのは苦労します。なぜなら、女性脳の場合、相手の言葉を、素直に“文字通り”には受け取りません。自分に対しての言葉を、すぐ拡大解釈して一喜一憂してしまう。いわゆる、深読みする、というやつです。特に女性脳は男性脳に比べて思考が広がりやすい傾向が。例えば、カップルがケンカをした時に、女性が関係のない過去の話を突然持ち出してきたりするのも、この拡大解釈が一因です。◇ダイゴ人の心を読み、操る技術“メンタリズム”を駆使するメンタリスト。テレビや雑誌で活躍するほか、外食系企業のコンサルや研修も手掛ける。※『anan』2016年3月30日号より。写真・土佐麻理子文・瀬尾麻美
2016年03月24日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。みなさんは脳についてどの程度知っているでしょうか。脳というと、生き物の中心、重要な器官、体の司令塔のようなイメージがあると思います。しかし、脳というのはまだまだ解明できていない部分が多く、 非常に複雑な臓器、器官となっています。これまでも多くの研究がされてきていますが、その中でも結論というのは二転三転してしまっているのです。それくらい解釈が難しく、正確な結論に至ることができていません。逆に言ってしまうと、脳が持つ可能性というのはとても大きなものであると考えることができます。脳細胞は減り始めたら増えることはないと言われていますが、1998年の段階でスウェーデンのエリクソン博士によって、高齢になっても脳細胞は増えていく ということがわかっています。脳の持っている大きな可能性というのは日常生活でも重要になりますが、障害を負ってしまった場合、非常に大きな意味を持ってくることがあります。●大脳の半分がなくなってしまう可能性がある脳の半分がなくなってしまう、大脳の半分がなくなってしまうとなると、それは生命の維持に大きな支障をきたすのではと思ってしまいますが、大脳の半分がなくなっても人は生きていける場合が多くあります。難治性のてんかんの手術では、大脳の半分を切除する方法が効果的と言われています。小児に限定しますが、大脳を半分切除してしまっても残りの半分が適応をしていき、障害というのを非常に小さくしてしまえるのです。大人であっても、脳に関する病気によって能力を一時的に消失してしまったとしても、リハビリによって回復をしていくこともあります。なくなった分を残された脳が補うことで、苦手が得意になる ということもあるようです。まだまだ研究段階ではありますが、脳の可能性というのはとてつもなく大きいことがわかり、その可能性こそが脳の病気に対する大きな将来性につながっているとも言えます。【参考リンク】・大人でも脳細胞は新生する | 日経サイエンス()●ライター/yoshi
2016年03月15日親は誰しも皆、わが子の脳の発達にとって良いことをしたい、と考えているでしょう。そのために幼い頃から子どもを塾や教室に通わせたり、学習教材を買い与えたりするのです。でも、お金を使わず、かつ、もっとも脳の発達にとって大切となることを見落としている人が多いのです。それは、「コミュニケーション」です。親子のコミュニケーションほど脳を発達させるものはない!子どもの脳の発達について書かれた本には、たいてい「コミュニケーション」という言葉がたくさん書かれてあります。赤ちゃんに対する言葉かけ、幼児に対する読み聞かせ。それらは脳の発達に欠かせないものであり、そこにはいつも「コミュニケーション」という言葉が付いて回ります。そう、脳の発達のキーワードとなるのは、コミュニケーションなのです。逆に考えてみると、コミュニケーションなしでの事柄は、どんなに脳に良いと言われていることであっても、脳をそれほど発達させないということです。特に乳幼児と呼ばれる子どもたちにとって、一番その脳を発達させてくれるものは、親によるコミュニケーションなのです。実際、たくさんの研究結果によって、「幼少期にたくさん親から声をかけてもらった子どもは、将来よい子どもになる」ということが明らかになっています。脳の発達に良いからと、多くの親が、幼稚園に通い出すころから教室や塾などで何かを習わせます。それはそれでよいでしょう。でも、他人からのアプローチよりも親からのアプローチのほうが、子どものやる気を十分に引き出せるため、「いろいろ通わせたものの、あまり子どもに変化が見られないのよね…」なんてこともあるのです。習い事で親子のコミュニケーションの時間を減らしては本末転倒さらに危惧すべきところは、まだまだ親子のコミュニケーションが必要な時期に、貴重な時間を習い事で消費してしまうということです。習い事を始めれば、そこにいる時間だけでなく、送り迎えにも時間をとられて、ゆったりとした親子のコミュニケーションの時間がかなり減ってしまうのは否めません。では何も習わず、家で親子が一緒にいるだけでよいのかというと、それもちょっと違います。一緒にいても会話をせず、ただ教育メディアを見ているだけなら、子どもの脳にはコミュニケーションによる刺激は与えられません。家族そろっての食事時も、テレビをつけ、皆がそちらを向いて黙って食べているなら、それはコミュニケーションのある風景ではないのです。< 後編 に続く>(子育ての達人)
2016年02月28日『ハーバードで学んだ脳を鍛える53の方法』(アスコム)の著者・川﨑康彦氏は、ハーバード大学の医療機関の元研究員で、医学博士。輝かしい実績を数々残した方ですが、もともとは勉強もスポーツも人並み以下だったというのですから驚きです。そんな著者の成功の秘訣が、脳を味方につけること。脳を上手に使えば、仕事や勉強、スポーツでよい結果を出すことができるというのです。そのような考え方を軸に、本書では脳を効率的に鍛えるための「ワクワク」と「ハラハラ」を起こしやすくする53の方法が公開されています。きょうは、第7章から「行動力のある脳を作る方法」をご紹介したいと思います。■1:1日5分ワクワクすることをやってみるやりたいことがあっても「時間がない」「距離が遠いから」といった理由で無理だと決めつけていませんか?しかしハーバードの研究員たちの中には、それらをできない理由にする人はいなかったといいます。なぜなら、できない理由よりも、できるための手段を考えて行動しているから。著者は本書で、仕事以外でワクワクできる時間を1日必ず5分持つように勧めています。これは時間や距離の概念から解き放たれるためのトレーニング。たとえばブログを書いたり、好きな楽器を演奏したり、5分間自分が心の底からワクワクできる時間をつくるなど。ワクワクすることで、脳には集中力やエネルギーといったパワーがみなぎるそうです。最初は5分からでも、徐々に無駄な時間を省いてワクワクできることをする時間を増やしてくのがポイント。このトレーニングを続けていけば、人は次第に無駄な時間を削り、「いかにワクワクできる時間を増やすか」を考えるようになるとのこと。そうなれば、時間や距離などを理由に、諦めるクセも減ってくるというわけです。■2:無理だと思っても「やります」と宣言する人は不安があるとき、なかなか「できる」「やります」とはいえないもの。著者は中国に留学中、大きな会場でのDJのアルバイトを依頼され、最初は自分には無理だと断ろうと思っていたそうです。ところが「ときにはハッタリをかけなければチャンスは掴めない」というアフリカ人の友人の言葉によって、チャレンジすることを決心。結果的に成功に終わったというのです。著者によると、「できる」と宣言をしたとき、脳はとても「ハラハラ」していたとのこと。そしてそのハラハラが、「絶対に無理だ」と思うことでも実現できてしまえるように脳をチューニングしてくれたといいます。■3:「恐怖はチャンス」だと唱える「恐怖の原因になっていることは、チャンスになる」と自分に強くいい聞かせるというシンプルなトレーニングで、恐怖を軽減させることができるそうです。著者は電話でのコミュニケーションが苦手で、電話をする前に小さな恐怖を感じてしまう人なのだとか。しかしこの恐怖から逃げず「電話を使うことはチャンスだ」と考え、すぐに取り組むようにしたそうです。普段は存在しない脳の使い方をするため、当然ハラハラします。しかしこの訓練によって、電話が以前ほど怖くなくなったといいます。つまりこのトレーニングを続けることで、小さな恐怖が徐々に克服できるようになるというわけです。■4:「スタートスパート」を意識するハーバードの研究員として着任早々、ボスからある論文の完成をオファーされた著者。不安はあったものの「やります」と宣言したことで、大きなチャンスを得ることができたそうです。このことから、著者はラストスパートよりもスタートスパートが肝心だということを学んだといいます。大きなハラハラは発生したものの、それに比例するかのように大きな成果を出すべく、脳が稼働したのです。著者は「できない理由を考える前に、できる方法を考えてみる。この繰り返しで脳は確実に活性化する」と主張しています。*本書で紹介されている方法は、お金も特別な道具も不要で、誰でも簡単にできるものばかり。脳を鍛えることは、決して難しいことではないのです。夢を叶えるためのヒントが満載の一冊。ぜひ、手に取ってみてください。(文/椎名恵麻)【参考】※川﨑康彦(2016)『ハーバードで学んだ脳を鍛える53の方法』アスコム
2016年02月09日国立がん研究センターは2月4日、朝食を食べる回数が週2回以下の人は、毎日食べる人に比べて脳出血リスクが4割近く高まるとした論文を、同日までに米医学誌に発表したことを明らかにした。これまで、朝食の欠食は脳卒中・虚血性心疾患のリスク因子である肥満や高血圧、糖尿病などのリスク増加につながると報告されていた。だが、朝食の欠食が結果的に脳卒中および虚血性心疾患のリスクを上げるのかという点に関しては、ほとんど研究されていなかった。特に脳卒中に関する研究は今までなかったという。そこで今回、朝食欠食と脳卒中および虚血性心疾患との関係を検討することを目的とした研究を実施した。研究チームは、沖縄県や茨城県などに居住していた45~74歳の男女(8万2,772人)を対象に、朝食に関するアンケートを実施。平均で約13年の追跡期間中、3,772人の脳卒中発症と870人の虚血性心疾患発症を確認したとのこと。脳卒中の内訳は脳出血が1,051人、くも膜下出血が417人、脳梗塞が2,286人だった。さらに、発症者を1週間あたりの朝食摂取回数が「週に0~2回」「週に3~4回」「週に5~6回」「毎日」の4群に分けて疾病との関連を分析した。その結果、週に0~2回摂取する群の発症リスクは、毎日摂取する群と比較して、脳卒中と虚血性心疾患を合わせた循環器疾患で14%、脳卒中全体で18%、脳出血で36%も高くなっていたという。一方で、くも膜下出血や脳梗塞、虚血性心疾患については、朝食の回数との関連が確認できなかった。同センターは、「本研究は、世界で初めて朝食欠食により脳出血のリスクが上昇する可能性を示したコホート研究です。これまで朝食をとることの重要性がさまざまな報告で指摘されてきましたが、今回の結果はそれを支持するものとなります」と、研究の意義を説明。そのうえで、これまでの報告も踏まえて「朝食を欠食することで朝の血圧が上昇し、毎日朝食を摂取する人に比べて脳出血のリスクが高くなっていた可能性が考えられます」としている。※写真と本文は関係ありません
2016年02月04日カシオ計算機は22日、電子辞書「エクスワード」シリーズとして、医学向けモデル「XD-Y5900MED」「XD-Y5700MED」を発表した。3月18日から発売する。価格はオープンで、店頭予想価格(税別)は「XD-Y5900MED」が90,000円前後、「XD-Y5700MED」が71,500円前後。○XD-Y5900MED「XD-Y5900MED」は、電子辞書「エクスワード」シリーズの医学向けハイエンドモデル。9年ぶりに改訂された「医学大辞典(第20版)」や、治療薬の最新情報がわかる「今日の治療薬 2015」などを収録し、医療現場や医学部学生の授業をサポートする。そのほか国語系や英語系のコンテンツも収録。きょう体カラーはブラックのみ。主な収録コンテンツは、南山堂医学大辞典(第20版)、ステッドマン医学英英辞典、ステッドマン医学大辞典 改訂第6版、医学英和大辞典(第12版)、[電子辞書版]今日の治療薬2015、プラクティカル医学略語辞典(第6版)、今日の臨床検査 2015-2016、医療の英会話など。メイン画面には5.3型のカラー液晶を搭載し、解像度は528×320ドット。メイン画面の左右にはクイックパレットを装備する。内蔵メモリは100MB。電源には単3形乾電池×2本を使用し、電池寿命は約180時間。本体サイズはW148×D105.5×H15.7mm、重量は約265g(電池込み)。○XD-Y5700MED「XD-Y5700MED」は、医学向けのスタンダードモデル。実務で役立つ医学コンテンツを充実させ、新たに医学英和辞典「ステッドマン医学大辞典」などを収録した。そのほか主な収録コンテンツは、南山堂医学大辞典(第20版)、医学英和大辞典(第12版)、[電子辞書版]今日の治療薬2015、プラクティカル医学略語辞典(第6版)、今日の臨床検査 2015-2016、医療の英会話など。きょう体カラーはホワイトで、ハードウェア面の仕様は「XD-Y5900MED」とほぼ共通。
2016年01月22日東北大学は1月5日、長時間のビデオゲームが小児の広汎な脳領域の発達や言語性知能に及ぼす悪影響を発見したと発表した。同成果は同大学加齢医学研究所・認知機能発達(公文教育研究会)寄附研究部門の竹内光 准教授・川島隆太 教授らの研究グループによるもの。1月5日に米国精神医学雑誌「Molecular Psychiatry」電子版に掲載された。今回の研究では、一般から募集した健康な小児を対象に、最初に日々のビデオゲームプレイ時間を含む生活習慣などについて質問に答えてもらったほか、知能検査、MRI撮像を実施した。この時点での研究参加者の年齢は5~18歳(平均約11歳)だった。これらの研究参加者の一部が3年後に再び研究に参加し、知能検査とMRI撮像を受けた。その後、必要なデータが揃っている283名の初回参加時の行動データ、240名分の脳画像データを解析し、平日に被験者がビデオゲームをプレイする平均時間と言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所の水分子の拡散性とよばれる指標の関係を調査した。さらに、必要なデータが揃っている223名の初回参加時と2回目参加時の行動データと189名分の初回参加時と2回目参加時の脳画像データを解析し、初回参加時における平日にビデオゲームをプレイする平均時間が、どのように各参加者の初回から2回目参加時の言語性知能、動作性知能、総知能、脳の水分子の拡散性の変化を予測していたかを解析した。これらの解析においては、性別、年齢、親の教育歴、収入、親子の関係の良好性、居住地域の都市レベル、親子の数等各種交絡因子を補正し縦断解析の場合は、さらに初回参加時の値等の種々の交絡因子を補正した。これらの解析により、初回参加時における長時間のビデオゲームプレイ習慣は、初回参加時の低い言語性知能と関連し初回参加時から数年後の 2 回目参加時へのより一層の言語性知能低下につながっていることがわかった。また、同様に初回参加時における長時間のビデオゲームプレイ習慣は、初回参加時の前頭前皮質、尾状核、淡蒼球、左海馬、前島、視床などの領域の水の拡散性の高さ(高いほど水が拡散しやすく組織が疎であることの証拠とされる)と関連しており、さらに初回参加時から数年後の2回目参加時へのこうした領域の発達性変化への逆の影響(水の拡散性の発達に伴う減少がより少ない)と関連していた。また、言語知能、動作性知能、総知能のいずれも、共通して、左海馬、左尾状核、左前島、左視床、周辺の領域の水の拡散性と負相関していた。同研究グループはこの結果を、小児における長時間のビデオゲームプレイで、脳の高次認知機能に関わる領域が影響をうけ、これが長時間のビデオゲームプレイによる言語知能の低下と関連することを示唆するものだとしており、「今回の知見により発達期の小児の長時間のビデオゲームプレイには一層の注意が必要であると示唆されたと考えられます」とコメントしている。
2016年01月06日フロリダ州政府柑橘(かんきつ)局はこのほど、「グレープフルーツの脳機能に与える影響」についての研究結果を発表した。ホットグレープフルーツジュースを摂取すると、脳が活性化し集中力がアップすることがわかったという。同研究は、杏林大学 医学部 精神神経科学教室の古賀良彦教授に協力を依頼して行った。被験者は、22~23歳の健康な男女6名(男性4名、女性2名)。被験者には、「水(常温10℃以下)」「グレープフルーツジュース(常温10℃以下)」「ホットグレープフルーツジュース(約60℃)」の3種類を3分間かけて摂取してもらい、その後クレペリン検査用紙を用いて1桁の数字の足し算を実施した。実験の結果、計算問題達成数は、ホットグレープフルーツジュースを摂取した時が一番多くなることがわかった。常温の水と常温のグレープフルーツジュースの間には、大きな差は見られなかった。計算中は、光トポグラフィー検査装置を用いて、脳の血流量も測定。グレープフルーツジュース摂取の場合は、常温、ホットどちらでも、前頭葉の脳血流量が増え、脳が活性化する様子が観察できた。常温では、立ち上がりが速く(効果がやや弱い)、ホットではじわじわと立ち上がり効果が持続するという違いも明らかとなった。古賀教授は、常温で摂取したときの立ち上がりが早いのは「(常温ゆえに)素早く覚醒度が上がりサッパリ感を感じさせるためと考えられる」と見解を述べた。実験の終わりに、被験者に体感アンケートを実施。その結果、ホットグレープフルーツジュースは、「落ち着き」「気分」の2項目で、水や常温グレープフルーツジュースより高い評価が得られた。古賀教授はこれらの結果から、「ホットグレープフルーツジュースには、落ち着いて気持ち良く勉強できる雰囲気や状況を作るはたらきがあるのでは」と推測している。また、受験生が勉強前や勉強の合間にホットグレープフルーツジュースを飲むことは、集中力を高めて勉強の効率を上げるという点からおすすめであるという。また、「コーヒー・紅茶の場合はカフェインによる覚醒効果が期待できますが、摂(と)りすぎると眠りにくくなるなど、生活リズムが乱れる可能性もある。ビタミンCが豊富で低GI食品でもあるグレープフルーツを使ったホットジュースは、受験生の健康をサポートするという面からも有効といえるでしょう」ともコメントしている。
2015年12月17日ぴあはこのほど、脳ヨガのやり方を本とDVDで紹介した新刊『白澤卓二と間々田佳子の脳活顔ヨガで活性脳&若顔・小顔』(1,058円・税込)を発売した。同書では、ベストセラーとなった『100歳までボケない101の方法』の著者・白澤卓二氏と、顔のたるみとシワを防ぐ「顔ヨガ」シリーズの著者・間々田佳子氏が開発した「脳活顔ヨガ」を紹介している。脳活顔ヨガは、手指を使った体操に顔ヨガを組み合わせたもの。1日3分、1日1ポーズでも、顔のアンチエイジングや脳の活性化が見込める一石二鳥の健康体操であるという。同時に2つの動きをすると脳は活性化し、その効果は脳の活動を「見える化」する光トポグラフィでも実証されているとのこと。「脳活顔ヨガ・基本編」では、「ムンクでダイヤモンド体操」「舌だしやぐらの体操」「でか目のオニ体操」「ひょっとこあやつり人形体操」などを紹介している。そのほか、「脳活顔ヨガ・応用編」、身体全体を使い、だれでも楽しくできる「顔脳活ヨガぱんぱん体操」も収録した。同書は全国書店、ネットショップのほか、「BOOKぴあ」でも販売している。
2015年12月08日アメリカの国立神経疾患・脳卒中研究所によると、世の中には400以上もの神経疾患が存在するそうです。脳にまつわる病気は珍しいものではないのです。でも、私たちは自分の脳についてどれだけのことを知っているでしょうか?『BUSTLE』では、最新の研究から明らかになった、脳にまつわる意外な事実を紹介しています。テレパシーの実現から、胃腸と脳の意外な関係まで、脳に関する知識をアップデートしておきましょう。■1:脳は感情によって記憶力を増すニューヨーク大学の研究によれば、記憶力は感情によって高まるのだといいます。とても嫌なことがあったとき、恐怖を感じたとき、またはうれしいことがあったとき、脳が刺激され、記憶力が高まるのです。たとえば震災のとき、どこでなにをしていたかよくおぼえていたり、初恋のことを忘れなかったりするのはこのためです。これはマウスを使った実験でも実証されていますこうした効果は、カウンセリングなどの技法の研究に役立てられているのだそうです。■2:胃腸の働きは脳に影響するカリフォルニア大学のエメラン・メイヤー博士により、人間の脳と内臓の間には深い関係があることがわかりました。内臓、特に胃腸の働きが鈍くなっているときは、うつなどの精神的な病気になりやすいという研究が発表されたのです。また、胃腸に善玉菌が増え、消化がスムーズに行われているときには脳の働きもよくなるのだそう。4週間善玉菌のサプリメントを摂取した人は、落ち込んだ気持ちややる気が出ないといった精神的な症状を感じることがなかったといいます。「最近なんだか調子が出ない……」という人は、胃腸の調子を整えてみるのもひとつの手です。■3:妊娠中は脳に変化が現れる妊娠中には、体だけではなく脳にも変化が現れます。妊娠中は、脳の記憶や感情をつかさどる部分が物理的に大きくなるのです。子どもが生まれてからもしばらくその状態は続きます。これは、妊娠によるホルモンバランスの変化によるもの。こうした働きにより、妊娠すると、赤ちゃんや周りにいる人と強いつながりを感じることができるようになるのだと考えられています。■4:脳が成長しきるのは25歳脳は、法的に大人になる20歳では、まだ成長しきっていないことが最新の研究から判明しました。特に、感情や行動をコントロールする部分の成長が未熟なままなのだといいます。25歳くらいまでは感情的になりやすく、プレッシャーなどにも弱い期間が続きます。脳の成長には意外と時間がかかるようです。■5:顔を認識できない病気は実在する「人の顔と名前がおぼえられない」といった記憶力の問題ではなく、人の顔を「顔」として認識できない、記憶できない、という病気があります。「相貌失認(そうぼうしつにん)」と呼ばれる脳障害の一種で、人口の2.5%ほどが苦しんでいると考えられています。自分の顔も認識できないため、日常生活に支障をきたす病気です。これは、脳の紡錘状回(ぼうすいじょうかい)と呼ばれる部分の機能に問題があった場合に起こると考えられています。相貌失認の人は相手の顔を認識できないため、相手の体格、におい、話し方や声などで誰と話しているかを推測するのだそうです。■6:テレパシーは実現可能?テレパシーは実現不可能なものではなさそうです。2013年にワシントン大学で、テレパシーを現実に近づける装置の実験が行われました。その装置は、脳波を他の人に送信し、受信した人の手がその考えに呼応するジェスチャーをするというものでした。単純な思考ならば伝わったといいます。研究者はコンピューターの通信技術に応用しようと考えているようですが、人の脳とコンピューターをつなぐ技術はまだ研究途中のようです。*まだまだわからないことも多い脳。科学の発展にともなって、どんどん仕組みが明らかになっていきます。今後の研究からも目が離せません。(文/スケルトンワークス)【参考】※Surprising Facts About The Human Brain-BUSTLE
2015年11月24日京都大学はこのほど、より強く幸福を感じる人は、特定の脳領域が大きいことがわかったと発表した。同成果は同大学医学研究科の佐藤弥 特定准教授らの研究グループによるもので、11月20日に英国科学誌「Scientific Reports」のウェブサイトに掲載された。今回の研究では、成人を対象に、脳の構造を計測する磁気共鳴画像(MRI)と幸福度などを調べる質問紙を用いて、主観的幸福が脳内のどこに・どのように表現されているのかを調査した。その結果、右半球の楔前部(頭頂葉の内側面にある領域)の灰白質体積と主観的幸福の間に、正の関係があることが示された。これは、より強く幸福を感じる人は、この領域が大きいことを意味するという。また、同じ右楔前部の領域が、快感情強度・不快感情強度・人生の目的の統合指標と関係することも示された。つまり、ポジティブな感情を強く感じ、ネガティブな感情を弱く感じ、人生の意味を見出しやすい人は、この領域が大きいことを意味しているという。今回の結果について同研究グループは「幸福は、楔前部で感情的・認知的な情報が統合され生み出される主観的経験であることが示唆されます。」とコメント。また、幸福という主観的な経験を、客観的・科学的に調べることができることを示すものだとしている。
2015年11月24日笑うことは健康にも繋がると言いますが、笑顔のとき、私たちの頭の中では何が起こっているのでしょうか?脳医学に詳しく、株式会社「脳の学校」の代表も務める医師・加藤俊徳先生に話を聞いてみました。怒るとそのことで頭がいっぱいになるけど、笑っているといろんなことを許容できるという感覚、覚えがある人も多いのでは?「怒っている時に比べて、笑っている時の脳内の酸素使用量は少ない。笑いは脳の余計な部分を使わず、脳にとって楽な状態なんです。笑いで脳はニュートラルな状態になり、複数の事態に対応できるように。笑った後は自然とやる気や集中力も上がります」加藤先生によると、運動系の脳番地内で占める面積がいちばん大きいのは、顔面と連動している部分なのだとか。「手や足を少し動かすよりも、顔を動かして表情を作るほうが、脳にとっては大きな運動をしたほどの脳活動になります」笑顔は体の一部の動きにすぎないけど、脳からすれば大きな動き。いろいろな笑い方をして表情を動かせば、脳への良い刺激に。「思い出し笑いは記憶系脳番地を、冗談を聞いて笑うのは聴覚系脳番地を使うというように、笑い方によって別々の部位が感情系脳番地に繋がっていきます。笑いは脳内の各機能間の連関を強めるのに非常にいい行為。逆に言えば、目や耳など違う入り口で笑いを起こすようにすると、脳の成長に繋がります」日々意識的に笑おうとすることで感覚を研ぎ澄まし、脳を元気にしよう。◇かとう・としのり医師、医学博士、株式会社「脳の学校」代表。記憶や感動など異なる機能を司る脳の部位を「脳番地」と呼び、脳の成長方法を研究。※『anan』2015年11月18日号より。(C)jordanchez
2015年11月11日「ココナッツオイルが脳に働く」と話題になっていますが、実はもっと脳にいいオイルがあるのをご存知ですか?それは、オリーブオイルにニンニクを漬け込んだ「アホエンオイル」。毎日の料理にかけるだけで、脳がすっきりすると話題を呼んでいます。■ニンニクに含まれる成分「アホエン」って?温めた植物油にニンニクを漬け込んだときにだけ抽出できる成分を「アホエン」といい、生のニンニクにはほとんど含まれていません。アホエンは活性酸素を減らすほか、脳の活性化、記憶力アップに効果があるといわれています。さらに、免疫力を高め、ガン細胞の分裂を抑える効果、白血病や皮膚ガンなどのガン細胞の増殖を抑制する効果などを含め、以下のような科学的効果の報告があるとされています。・脳年齢の若返り・動脈硬化の予防・活性酸素の抑制・美肌効果・肝臓保護作用・抗菌作用・ぜんそく予防・コレステロール値の正常化・尿酸値を下げる・中性脂肪が下がる・γ-GTPが正常になる■簡単で続けやすいアホエンオイルのパワー「アホエン」は生のままのニンニクを食べたり、高温で煮たり焼いたりする料理では摂取できません。ニンニクの匂い物質であり、アホエンの素「アリシン」は約50℃の油に溶かすことで、抽出できる成分だからです。また、無臭ニンニクにはアホエンの素となるアリシンが含まれないので、臭いがある通常のニンニクを選びましょう。(1)ニンニク3かけを細かく刻む(2)オリーブオイル(エキストラバージンタイプがおすすめ)150mlを耐熱容器に注ぎ、水を張った鍋に入れて湯煎で温める(3)オリーブオイルが50℃になったら耐熱容器を鍋から出して、(1)を加える(4)そのまま24時間置き、こし器でニンニクを濾す。(5)密閉容器に入れて冷暗所で保存し、1ヶ月以内に使い切るオリーブオイルを使う理由は、オリーブオイルの脂肪酸が悪玉コレステロールを減らす効果やビタミンEなどの栄養素が高いためです。気になるニンニクの匂いは控えめですが、しっかりした風味やコクがあるので、幅広い料理に合うのも特徴です。加熱はせず、料理の仕上げにサッと一振りして、料理にかけて1日1杯のアホエンオイルを摂取しましょう。*身近な食材で簡単につくれて、どんな料理とも相性が良い万能オイルなので、無理なく、毎日摂取できるのがうれしいですね。(文/Marico Taguchi)【参考】※篠浦伸禎(2012)『脳神経外科医が実践するボケない生き方』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年10月19日スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月5日、今年のノーベル医学・生理学賞に北里大学の大村智 特別栄誉教授ら3名を選出したと発表した。今回は、アイルランドのWilliam C. Campbell氏、中国のYouyou Tu氏との共同受賞で、大村特別栄誉教授は抗寄生虫薬のエバーメクチンを発見した業績が評価された。エバーメクチンから開発されたイベルメクチンはアフリカなどの感染症に対し大きな効果をあげている。同教授はこれまでにも、2014年に医学への顕著な業績に与えられるガードナー国際保健賞を受賞するなど、寄生虫病に対する治療法の研究で国際的な評価を得ていた。
2015年10月05日慶應義塾大学は9月14日、第20回慶應医学賞の受賞者に東京工業大学の大隅良典 栄誉教授と米ワシントン大学のJeffrey I. Gordon 教授を選出したと発表した。大隅教授の受賞研究テーマは「オートファジーの分子機構の解明」。同教授は細胞が自分自身のタンパク質などの細胞成分を分解し再利用する「オートファジー現象」を出芽酵母の遺伝学的手法を用いて解析。世界に先駆けてオートファジーに不可欠な遺伝子群を同定し、それらの機能と生物学的意義について明らかにした。一方のGordon教授の受賞研究テーマは「ヒト腸内細菌の病態生理的意義」で、ゲノムシークエンスによる腸内細菌の分類法を開発した。また、肥満および幼年期の栄養不良に、腸内細菌叢が密接に関与すること、さらに腸内細菌が食物の栄養価を規定することも解明した。同賞は世界の医学・生命科学の領域において医学を中心とした諸科学の発展に寄与する顕著、かつ創造的な研究業績をあげた研究者を顕彰するもので、過去の受賞者からノーベル賞受賞者6名を輩出している。なお、受賞者には賞状とメダルおよび賞金1000万円が贈呈される。
2015年09月15日明日香出版社はこのほど、書籍『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』を発売した。同書の著者は、早稲田大学研究戦略センター教授で、脳の神経ネットワーク解析や行動解析を研究している枝川義邦氏。人間は年を取るとともに肉体が老いていくが、毎日運動を欠かさない人は、筋肉が落ちづらい傾向にある。それと同じように、「脳」にも衰えさせない行動があるという。書籍内では、「脳が若い人」になるために脳の働きをよくする習慣や、「脳が老ける人」にならないように脳を守るための習慣、うまくストレスをコントロールする習慣など、さまざまなメソッドを紹介。若い脳を保つため、生活の中で「やったほうがいい習慣」と「やらない方がいい習慣」を対比し45項目でまとめている。それぞれの項目は、仕事の現場や日常生活の中で取り組みやすいものになっているとのこと。価格は1,404円(税込)。
2015年08月04日情報通信研究機構(NICT)は7月28日、安静時の脳活動の脳画像データに対して脳内を活動の類似性で色分け(モジュール化)することで、統合失調症患者群と健常者群それぞれに特徴的な脳部位モジュールを推定する安定的な手法を開発したと発表した。同成果は、NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)の下川哲也 主任研究員と大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太 准教授らによるもの。詳細は「第38回日本神経科学大会」にて発表された。統合失調症は約100人に1人が発症する精神障害で、診断は医者が症状を診ることでなされ、客観的な検査などで判断する方法は確立していなかった。今回の研究では、統合失調症のデータ解析に向け、ネットワーク理論におけるモジュールに着目。従来、個人のモジュール構造のバラつきが大きいことから、集団を特徴付けるモジュール構造を推定することができなかったが、研究グループでは、統合失調症患者の安静時脳活動のfMRI(機能的磁気共鳴画像)データに対して、被験者間の差を考慮しつつ、従前の各個人でモジュール分け(色分け)する方法ではなく、新しい試みとして、平均化せずに、全員を一度に色分けすることで、モジュール解析する手法を新たに開発することで、結果のバラつきが少なく、安定的に、統合失調症患者群と健常者群それぞれに特徴的な脳部位モジュールを推定することを可能とした。今回の成果について研究グループでは、患者の主観的意見に左右されない、脳画像のデータに基づく客観的な診断法につながり、精神医学領域において注目される成果だとするほか、同手法を活用することで今後、医療の現場で実際に使えるような、医者の診断を補完する自動診断システムの開発に発展することが期待されると説明している。
2015年07月28日脳を育てることと、心を育てることは、なんとなく別のことに思えるかもしれませんが、「心=脳」ということが最近の研究の結果、明らかになっています。以前は、児童虐待の残す傷あとは、「心の問題」であると考えられていましたが、最近の脳科学の研究では子どものときに虐待を受けると、脳の一部に発達障害を起こす出典:日経サイエンス2006年12月号臨時増刊「インタビュー 熊本大学大学院医学薬学研究部小児発達社会学助教授 友田明美 子どもは親を選べない 脳科学は子どもの心を救えるか」ということがわかっているのです。近年話題になっている、突然感情を爆発させて暴力的になる「キレる子ども」になるかどうかも、脳の発達に関係があるそうです。脳の発達の基礎は、幼児期の親子関係の中で作られていきます。そこで今回は、脳科学で明らかにされてきた子どもの脳について紹介します。「キレない」ために大切なのは、脳の前頭前野言葉を覚え、計算し、人の気持ちを感じ取るときに重要な働きをしたり、「キレる」ことのブレーキ役となったりするのは、大脳の前頭前野です。前頭前野は脳の部位の中でも、もっともゆっくりと成長していきます。脳のおおよそは8~10歳くらいでほぼ完成を迎えますが、前頭前野だけは24~25歳くらいまで成長を続けるそうです。つまり、脳の構成がかたまる8~10歳までに脳の基礎を育てておく必要はありますが、大脳の発達は絶えず続き、足りないものがあれば補おうと変容したり、新たな刺激や発想があればいくらでも変わることができたりする柔軟性を持っています。つまり、8~10歳の時期を逃したら手遅れ、ということではありません。このことはしっかり覚えておいてください。「遊ぶことは学ぶこと」なのは、前頭前野の連携を鍛えるため前頭前野は知性を司る領域体を司る領域情動(感情)を司る領域の3つの領域に分かれています。そのうち、知性を司る領域は、体や情動を司る領域とうまく連携できて初めて、十分な発達をとげるのだそうです。脳科学者の篠原菊紀教授によると、ひと昔前は、子ども同士の遊びの中でこの結びつきが鍛えられていた出典:AERA with kids 2006年12月15日 「脳科学 発達行動学から見た早咲き脳 後のび脳」ということです。さらに、「今、ADHD(注意欠陥・多動性症候群)傾向や自閉傾向、LD(学習障害)といった子どもの増加が問題になっていますが、以前は子ども同士の遊びが、そうした障害の出現を抑制していたのではないか」と指摘しています。「子どもにとって、遊ぶことは学ぶこと」と、よく言われますが、先の指摘によるとこの言葉は理にかなっており、外で大騒ぎしながら遊ぶことは、子どもの脳が健やかに発達するために大切なことといえるでしょう。キレにくい子に育てるには、扁桃体の暴走をコントロールさせること前頭前野のある大脳の活動を支えるのは、脳全体の中心辺りに位置する大脳辺縁系です。記憶を司る海馬のほか、扁桃体(へんとうたい)があります。扁桃体は、生き物として「近づくべきか」「これは食べられるか」といった、危険性の判断や恐怖にかかわる部分です。幼児期に虐待されたり、愛情を与えられなかったりすると、この部分が育ち損なう可能性があるといわれています。扁桃体では、「好き」「嫌い」という感情も決めています。ここで判断された「嫌い」という感情が攻撃欲と結びつくと、扁桃体が暴走し、いじめや衝動的な攻撃が生じるのです。扁桃体を暴走させないためには、そのボリュームを増やしてしっかり攻撃欲をコントロールさせることが必要です。そして結果としてこれが、キレない脳、社会性を育てることにつながります。扁桃体は、幼児期に身近な人の笑顔、愛情表現を与えることで成長が促されることもわかっています。自分を育ててくれる親を見て「好き」になり、その好きな親が笑顔で自分を見ている、という経験は、お互いに「好き」という気持ちを共感することです。この体験が他人との信頼関係を築いていく原点となるのです。幼児期のやりたい気持ちを尊重することが脳の健やかな発達につながる子どものうちは、前頭前野が大人のようには完成していないので、大人よりも一時的な「好き嫌い」で物事を判断します。物事の重要性や優先順位を判断したり、本能的な欲望に理性的にブレーキをかけたりするのは前頭前野の活動です。子どもが「やってみたい」と思うことには、危なかったり汚かったり、眉をひそめたくなることもあるかもしれません。ですが、「やってみたい」気持ちをくじけさせてしまうと、せっかく芽生えた意欲をつぶしてしまいます。ルールに従い、我慢する、他人の意図や感情を理解するのは、ゆっくり時間がかかるもの。幼児期に大切なのは、しつけの前に、「やってみたい」意欲を出来る限り尊重し、挑戦させてあげることではないでしょうか。
2015年07月28日長さ16センチ、幅13センチ、高さ13センチ。重さは1.3キロでやわらかく、豆腐のような質感。これがなんだかわかりますか?答えは、私たちの脳。今回は、意外と知らない脳についての知識を『Live Science』より紹介します。■1:人類の脳はだんだん縮んでいる人類の脳はこの5000年ほどで、なんと150立方センチメートルも縮んでいるのだそうです。これは10%ほど縮んでいる計算になるのだと、ウィスコンシン大学マディソン校の古人類学者ジョン・ホークス氏はいいます。脳が縮んでいる詳しい原因はわかっておらず、研究者の間でも諸説あるのだとか。■2:脳は人体の中で最も大食い脳の重さは体重の2%にすぎませんが、血液中の酸素の20%と、糖分の25%を消費するといわれています。猿からヒトへ進化した際、この大食いの脳がなにを食べていたのかは専門家の間で議論になっていますが、最近は地中に埋まっていたじゃがいもなどの根菜を摂取していたのではないかという説が有力です。■3:脳のシワが多い人ほど賢い私たちの脳の表面はシワで覆われています。脳は表面に神経細胞(ニューロン)があるので、表面積が大きいほど、神経細胞の数が多く、賢くなるといわれています。しかし頭蓋骨内の限られた容積のなかで表面積を増やすためには、シワを増やすしかないわけです。ちなみにイルカの脳は、ヒトの脳よりもシワが多いのだそうです。■4:ニューロンは脳の10%しかない脳細胞と聞くとなんとなくニューロンをイメージしますが、実はニューロンは脳細胞全体のたった10%しかありません。では90%はなにでできているのかというと、神経膠(しんけいこう)と呼ばれる細胞。これはニューロン同士をつなぎとめる働きをしています。■5:脳腫瘍から救うナノテクノロジー脳内の毛細血管は、栄養素など特定の物質しか通しませんが、脳腫瘍の治療の際にはこの仕組みが仇となります。有効な成分が脳まで届かないため、薬を使って強制的に脳のガードを緩めなければならないのです。これを解決するのが、2009年に発表されたナノテクノロジー。治療に必要な成分をごく小さい分子にすることによって、薬を使わなくても脳まで届けることができる技術です。近い将来には、脳腫瘍も簡単に治療できるようになるかもしれません。■6:受胎後3週間から脳がつくられ始める胎児の脳は意外に早い段階で形成されます。なにしろ、受胎からたったの3週間で脳幹が形成されはじめるのです。脳幹は妊娠3か月で大きく成長していきます。4か月を過ぎたころにニューロンや神経膠が形成されますが、まだシワはありません。6か月を過ぎると、わずかにシワができはじめ、7カ月くらいでようやく脳らしい見た目になってきます。脳は意外と長い時間をかけてつくられるんですね。■7:10代独特の思考は脳のせい2006年に発表された研究では、10代の若者は、脳の仕組みが自己中心的になるようにできているといわれています。共感や罪の意識を感じる前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ)が、大人にくらべてあまり使われないのです。思春期の複雑な気持ちが、脳の影響だったとは驚きです。■8:大人になっても脳細胞はつくられる大人になってある年齢に達すると、もう新しい脳細胞はつくられないという話を聞いたことはありませんか?しかし、これは事実ではありません。2007年に発表された研究では、脳卒中になった女性の脳が、脳の似た部分の細胞を使ってダメージを受けた部分をカバーしはじめたとされています。また、大人のマウスの脳に新たな脳細胞がつくられたことも確認されています。脳は一生変化を続けているのです。■9:男女の脳はほとんど変わらない男性と女性とでは脳の仕組みが違うという話をよく聞きますが、必ずしもそうではないようです。2010年に、69か国のおよそ50万人の男女の計算能力を調査したところ、その能力の差はほとんどなかったというのです。まだまだわからないこともたくさんある脳。興味がわいた人は、さらに詳しく調べてみては?おもしろい発見がたくさんありますよ!(文/和州太郎)【参考】※10 Things You Didn’t Know About the Brain―Live Science
2015年07月25日「私たちの脳は、『楽をする』ことを忘れてしまったのです」『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』(長沼毅著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、冒頭部分でそう主張しています。他の動物は、眠くなったら寝て、疲れたら休む。腹が減れば食べるし、からだの欲求に忠実に生きている。しかし人間は、先天的にからだの欲求に背いてしまう脳のトラブルを抱えているのだというのです。無理をする。疲れる。見栄を張る。ストレスがたまる。我慢する……。そんな困りごとが生まれるのは、あまりに高度に発達した脳があるから。だから本書では、「脳に振り回されずに生きる方法」を、生物学的な視点から考えているということ。■6,000年前よりも劣化した脳スタンフォード大学のある研究者によると、脳という臓器がもっともいいコンディションだったのは、いまから6,000年前。つまり文明ができたころだったのだとか。それどころか、実は文明の発達とともに、人間の脳は劣化しているというのです。これは文明の進化が、人間を自然から切り離し、城壁のなかへ閉じ込めてしまったから。私たちは脳を自然に対して使うのをやめた結果、その能力を人間関係に対して使うようになったという考えです。■脳の「どうしようもない部分」人間の脳の特徴な点は、抽象的なことを考えることができる能力。「メタ組織」といって、いろんなことを脳内宇宙で組み居合わせ、いままでになかったことをつくり上げられるということ。たとえば弓矢の発明がそうであるように、自然に対してこの能力は有効に発揮されていたといいます。そのように、建設的な方向へと広がるぶんにはいいのですが、「悩み」や「不安」など負の要素が脳のなかで堂々巡りしてしまう状態になると、一転して人を苦しめることに……。しかし現状では、脳の構造は遺伝子で決まってしまっているもの。だから、どうしようもない部分がある。いわれてみれば、たしかにそのとおりです。■少しでも楽しましょう人間の脳は進化の過程で、さまざまな遺伝子が誤用され、転用され、流用されるなかで偶然生まれたもの。だから、不都合がいっぱいあるわけです。いわば、「いろんな遺伝子の寄せ集め」でつくられたものだとも著者はいいます。ポイントはここ。「もともとからだの作りからしておかしいのだから、少しでも楽しみませんか」という考え方。それこそが、読者に訴えかけたいことの趣旨だということです。この点を踏まえて読み進めると、本書のメッセージをストレートに受け止めることができるでしょう。■楽になれるように生きよう私たち生物は、普通の状態がいちばん楽。健康も普通の状態をさすわけで、無理に働いたりしてからだを壊すなど異常なことだというわけです。からだが普通の状態でいたいと願っているのに、そうでないことをしたがるのが人間。しかし、そんな無理をせず、楽になれるように生きよう。著者は本書を通じ、そんなメッセージを投げかけているのです。*以後も、自分の個性を知る方法、群れのなかでの働き方など、知っておくと便利な脳の情報が満載。ぜひ一度、手にとってみてください。(文/印南敦史)【参考】※長沼毅(2015)『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』クロスメディア・パブリッシング
2015年07月22日人生には幸運なことも不運なことも起こるもの。不運が続くと、運命だから仕方ない…なんて思っていませんか?実はこの運、変えることができるそう。脳科学者の中野信子さんが、科学的に解説してくれました!***運命を、科学の視点で捉えるとどうなるでしょうか。ここでは、運命を形作る要素である「運」の善し悪しについて、考察したいと思います。なぜかいつも運がいい人がいる一方で、そうでない人はつねにツイていない。そう思ったことはありませんか?こうした偏りが本当にあるのかどうかを考える手がかりとして、“コイン投げ”の法則があります。コインを投げて表が出たらプラス、裏が出たらマイナスとカウントした場合、多くの人が結果はほぼプラスマイナスゼロになると考えるのではないでしょうか。ところが、実際は不思議なことに、必ずどちらか一方に偏るのです。この現象は「逆正弦定理(ぎゃくせいげんていり)」と呼ばれ、物事の結果はランダムに、すなわち偏って生じることを意味します。つまりこの法則に従えば人の運も平等ではなく、幸運な人はハッピーなことが続き、そうでない人は不運続きということに。ちょっとショッキングですが、確率論で考えるとこれが事実なんです。では、もし運命が悪いほうに傾き始めてしまったらもう終わりなのでしょうか。答えはノー。簡単に言うなら、そのゲームをやめればいいのです。やめて、自分がより運よくいられる、満足できるゲームを始めればいいのです。人の「満足度」は、その人が属する集団が適切かどうかが、大きく関係します。もし何をやってもうまくいかない、運命に見放されている…と感じているなら、今乗っているゲームやいる場が、適切ではない可能性があります。仕事なら職場や、仕事の目標を変える、恋愛なら相手を変える。そんな「乗り換え」が必要なときかもしれません。もちろん降りたくないゲームであれば、本気でやり抜くのもありです。が、「これは勝ち目なし」と思ったらさっと場を変えることが、もっとも合理的な場合もあるのです。実際に運命を引き寄せる力がある人を見ていると、自分の強みを研究し、その都度身の置き場を変えていることがわかります。◇なかの・のぶこ脳科学者、認知科学者として教鞭をとり、多くのメディアにも出演。世界人口の上位2%のIQ所有者だけが所属できるMENSA会員。共著に『正しい恨みの晴らし方』(ポプラ社)。※『anan』2015年7月22日号より。写真・土佐麻理子(人物)、村上未知(風景) 文・新田草子
2015年07月17日