今回は、映画『アドバンスト・スタイルそのファッションが、人生』の公開にあわせて下北沢B&Bで行われた、BEAMSクリエイティブディレクター・青野賢一さん×『東京を生きる』を執筆されたライター・雨宮まみさんのトークイベントのレポート記事をお送りします。映画『アドバンスト・スタイルそのファッションが、人生』とは?NYの街角を闊歩する、over 60のおしゃれな女性たちを紹介したファッション・ブログ「Advanced Style」。このブログからはじまった写真集は世界中でベストセラーとなり、ついには映画公開となりました。ブログにも登場するエレガントな七人を四年間にわたって密着した、素敵なドキュメンタリー映画です。人のいいなりになっていたら明日死ぬかもしれない青野賢一さん(以下敬称略):そもそも僕らはなぜここにいるのか、の話からしましょうか。雨宮まみさん(以下敬称略):私は、Numéroという雑誌で、『アドバンスト・スタイルそのファッションが、人生』に関して、一ページ映画評を書かせていただいたんですよね。青野:僕は、劇場用パンフレットにエッセイを書いたり、雑誌『装苑』でやはり映画にまつわるエッセイを書かせていただいたり。そういうことで私たちは座ってます。まずは、『アドバンスト・スタイル』に対する率直な感想としては、「いくつになってもファッションっていいよね」っていう当たり前の話は大前提として、出演者が歳を取っていくことに関するシークエンスが印象的でした。雨宮:そうですね。本当に生きること、装うことが戦いというか、今、人のいいなりになっていたら明日死ぬかもしれない、という切実さが感じられました。そういうことが老いを通じて伝わってくるように描かれていましたね。青野:舞台であるニューヨークと日本を置き換えるとまた違うところがあるかもしれませんね。ファッションと自分の関係性というか、ニューヨークだからこそ成立することもあります。雨宮:ありますね。出演者の有名ファッションブロガーが歩いているときに、「あなた有名人でしょ!知ってる!一緒に写真撮ってー!」って気軽に声かけるノリは、東京じゃあまりないなと。あと、『アドバンスト・スタイル』はブログから出発していますが、そういう新しいものが出てきたときに、認められるスピードもとても速いですよね。私は『アドバンスト~』の写真集を知った頃に、ちょうどL’idéalというブログを見つけたんです。まさに『アドバンスト~』の日本版のような感じで、本当に素敵で。皆さん、奇抜すぎず上品で、本人にとても似合った服装をしてらっしゃるし、パーフェクトだからどこにいても違和感がないんです。かといって周りには埋没していなくて。打ち破る人の価値雨宮:私の祖母もこの『L’idéal』を写真集(『Over60 Street Snapいくつになっても憧れの女性』)で見ていて、とても喜んでましたね。祖母は福岡に住んでいて、おしゃれで、マリメッコとかも好きなんです。でも、「こんな派手な花柄のバッグ持ってたら、ついにボケたと思われるから」と言って買わなかったり、コムデギャルソンの金色の財布を持ってるんですけど『カラスに襲われる』とか言って、滅多に使わなかったり。私が銀色のクラッチを持ってたら『そんな目立つバッグ持ってたらひったくられるから、エコバッグに入れなさい』とか言うんですよね(笑)。やっぱり上の世代の方は打ち破るのが大変なんだなと思います。だからこそ打ち破ってる人の姿には価値があるなって、L’idéalをみて感じました。福岡といってもうちは田舎のほうですし、もっと都会のほうだったり、関西のように違う文化圏だとまた違ったりするんでしょうけどね。青野:そうですね。ちょっと失礼ですけど、「大阪のおばちゃんの代名詞はヒョウ柄」みたいな言い方されますよね。ビームスで89年頃に大きな店が大阪にできたんです。その時の商品の配分を思い出すと、同じブランドの中でも、やっぱり大阪用はめっちゃ派手な服ばっかりで(笑)。もちろんちゃんとそういうのが売れるお店とお客さんの関係性っていうのがあるんですが。雨宮:大阪に行くと、派手なものに対して躊躇しない姿勢が気持ちよく感じるんです。むしろ、地味で目立たないものなんか買っても意味ないじゃん、ぐらいの感覚がありますよね。でも、東京では目立つものに手を出すのに躊躇しちゃう。自分も人も、他人の視線に怯えてるな、って感じることはあります。青野:特にリアルな場面とか、対面する場だと過剰にそういうのがありますね。ただ一方で、インスタグラムとかであれば逆に個性を全面に出していく。そのアンビバレントなところの面白さは現代にあるなと感じます。埋没しないファッションって?『東京を生きる』著者:雨宮まみ(大和書房)雨宮:青野さんはお仕事柄、ファッションには気を遣われていると思いますが、埋没しないようにとか、逆に浮かないようにとか、そういうことは考えます?青野:僕はそんなに考えてないかも。一番重要なのは今日誰と、どんな場所で、ってことかなあ。人は特に大切ですね。 短パンはないだろうとか。今日だったら、この作品に出てくる人と派手さで同じ土俵には立てないし。だから落ち着いたカラーかな、でもネクタイはちょっと下北沢の場所的に違うかな、じゃあドットのスカーフでも垂らそうかな、とかそういうのが楽しめるタイプなので、それは考えます。埋没、溶け込むかとかは考えないかな。雨宮さんはどうですか?雨宮:例えばですけど、オープニングパーティ、レセプションパーティー、とか言われるともう身構えますね(笑)。「パーティー」って、みんなどれくらいのテンションでキメキメで来るのか教えて欲しいんです。行き慣れてないと、わからない。青野:ああいうのは一番難しいですね。大体、和装でくる方は何人かいますよね。鉄板だし別の世界にいってる感じもあるし。でも、あれはあれでずるいなと僕は思っちゃうんですけど(笑)。雨宮:和装は逃げ…!(笑)私の研究によると、文化系の女性には和装逃げに走る人と、チャイナ逃げに走る人がいるんですよね。私はチャイナ逃げ派なんですが…。知性もありつつ個性も見せつつ、なおかつ格式もあるというのが可能かなあ、と自分では思っているんですが…(笑)。アイコニックなものは落ち着けない青野:ファッション系の催しだと、特に女性はハイブランドの人も多いですよね。あえてそっちに突っ込んでいったりすることもありますか?雨宮:正真正銘のハイブランドは、正直買えないです。でも確かに、試写会なんかでもファッション誌の方はすぐわかりますね。最新のアイコン的なものを必ず一つは身につけていらっしゃるので、これがファッション誌の世界なんだなぁとはよく感じます。青野:でも、そういうところでいうと、ぼくはアイコニックなものは敬遠してしまうタイプかもしれません。悟られたくない気持ちが、少しあって。そういう感じで服を着るのって自分に関していえば全然落ち着けないんですよね。ロゴが入っているものも興味ないですし…。ロゴものを、本気で着てるとちょっときついじゃないですか。雨宮:(笑)。 本気で着てるかどうかの区別は、仲良しじゃないとわからないですもんね。この人は洒落で着てるんだなぁとか、友達はわかってくれても、知らない人が見ればただのロゴ好きな人に見えちゃう。青野:ロゴものは難しいところですよね。わかりやすいんですけど、逆にそれが足かせとなってしまったりして、どっちもどっちみたいなところがあるかなと思います。【次回に続きます。お楽しみに!】
2015年08月19日「国内の有料契約社数ではおそらくSalesforce.comを抜いている」サイボウズの青野慶久社長は11月28日に都内で開催した「cybozu.com カンファレンス2014」の基調講演で、クラウドサービス「cybozu.com」の好調ぶりをアピールした。2011年11月に提供を開始したcybozu.comは、「安心運用」を特徴とするクラウドサービス基盤。グループウェア「サイボウズ Office」「Garoon」や業務アプリ開発ツール「kintone」をクラウド上で提供し、インフラ面もサイボウズが設計から開発、運用している点を強みとする。2014年は特にPaaSのkintoneが堅調に伸びており、契約数で前年比260%成長を記録したという。青野社長は「思い返せばIT業界は大型コンピュータの時代もPC、インターネットの時代も欧米企業にプラットフォームを取られてばかり。クラウド時代こそ国産PaaSで日本企業がシェアを取っていきたい」と話し、そのためには、パートナーの協力が必要不可欠だと付け加えた。グローバルでは、特に中国市場が好調で、導入企業数は480社に上った。2014年8月サンフランシスコにオフィスを開設した米国市場では20社の契約が決まったという。1200人が登録するデベロッパーネットワークにも力を入れており、2014年に全国20カ所で開催したkintoneに関する勉強会も積極的にサポートしている。そのほか脆弱性を発見した人に報奨金を出す「脆弱性発見報償プログラム」を実施するなど、脆弱性対策も引き続き強化中だ。同プログラムでは、確定しているだけで計800万円の報奨金を支払う予定としている。○「日本の課題を大企業や政治家のせいにしてはいけない」(青野社長)青野社長の基調講演のメインテーマは「この変化はリスクか、チャンスか」。競争のルールも変わり、企業に柔軟性や多様性が一層求められているこの時代、日本はいまだ変化できずに行き詰まっていると指摘し、日本がかかえる大問題のうち「エネルギー問題」「少子高齢化」「持たざる経営」「多重下請け構造」の4点を挙げた。各項目について、以下の取り組み案を提示している。「エネルギー問題」・テレワークなどの実施による電力消費の削減・再生可能エネルギー支援「少子高齢化」・グローバル市場への進出・クラウドによる自動化や効率化・ワーキングマザーや高齢者に焦点を当てたワークスタイルの確立「持たざる経営」・クラウドソーシング、クラウドファンディングなどのクラウド活用・社外とのコラボレーション強化「多重下請け構造」・スパイラルアップ開発へのシフト・利益主義から幸福主義の最大化これらの取り組み策を実施している企業として、講演内では朝日啤酒(中国)投資有限公司(アサヒビール中国)、ジュピターテレコム、ソニックガーデンの事例が紹介された。青野社長は「日本の課題を大企業や政治家のせいにしてはいけない」とし、各企業がこの直面する課題に向き合う必要があると提案している。
2014年11月28日作家・演出家・翻訳家の谷賢一が立ち上げたユニット「テアトル・ド・アナール」は、これまで、第1回公演で“脳科学”を、第2回公演で“哲学”を素材にしてきた。第3回公演の『トーキョー・スラム・エンジェルス』で、谷が俎上にするのは、“資本主義経済”。南果歩を主演に迎え、そのテーマはどんな演劇に立ち上がっていくのだろうか。テアトル・ド・アナール チケット情報第3回公演で“資本主義経済”を選び、南果歩を迎えることになった経緯を、谷賢一はまずこう語る。「世界のほとんどの国が資本主義をベストな形態だと思って動いてきたけれども、ここ5年ぐらい、そのひずみが見えてきた。日本でもたとえば格差が広がってますよね。じゃあ、自分は何のために働き、その経済活動はどういう意味を持っているんだろうと、経済に興味が湧いてきて。そのときに、“女の金儲け”という言葉が浮かんできたんですが(笑)、女性から見たお金という価値観が入ると、お話が膨らむなと思ったんです」。それに対し、証券会社で成功を手に入れた女性を演じることになる南もこう応える。「女性には男性よりも、家庭のこととか、仕事以外に自分を引っ張るものがある。だから、証券会社で“女の金儲け”をしてたとしても(笑)、男性とは違うお金との関係が描かれるんじゃないかなと、楽しみにしているんです」。物語の舞台となるのは、2020年の東京オリンピック景気も過ぎ去った、少し未来の日本。スラム化が始まりつつある東京の一角に住む低所得者層と、南演じる高所得者層の異なる世界が描かれる。「オリンピックが決まってから、みんな2020年を目標に生きているところがあるなか、その先を見ようとしている谷さんはやっぱりおかしい(笑)」と笑う南だが、その谷の視点と、「演者に1対1で対峙して情熱を注ぐ濃い稽古」に信頼を置いているそうだ。谷にとっても南は、「自分から何でもやろうとし、役作りも自分で研究して、きちんと演劇をやろうとしている頼りになる人」である。この取材でも、谷の話をしきりにメモしていた南の姿があった。その誠実さは、経済というテーマを実像に落とし込む困難な作業にあたっても、力となるだろう。「経済というと堅苦しく思えますが、青山円形劇場という客席とステージが近い場所で演じることで、それが人間の営みであり、人の喜怒哀楽や愛情や失望に結びついているということが、息遣いで伝わるんじゃないかなと思ってるんです」と谷。その目論みの成就が早くも浮かぶ。公演は11月14日(金)から24日(月・祝)まで東京・青山円形劇場にて。チケットの一般発売は10月4日(土)午前10時より。なおチケットぴあではインターネット先行抽選を実施中、10月2日(木)午前11時まで受付。取材・文:大内弓子
2014年09月29日一夜の乱交パーティの模様を描いた映画として注目を浴びる『愛の渦』の完成披露試写会が2月18日(火)に開催。主演の池松荘亮、門脇麦に滝藤賢一、柄本時生、三浦大輔監督らが作品の魅力を語った。三浦監督が舞台で上演した自らの戯曲を映画化。ただセックスだけを目的に集まった男女のむき出しの人間模様を描き出していく。123分の本編中、着衣時間はわずか18分という過激さが話題となっているが、池松さんは見どころを問われると「卑猥なことしか思い浮かばない!」と苦笑いしつつ、「女性陣の体じゃないでしょうか(笑)?」とストレートに語る。昨年のドラマ「半沢直樹」で人気が急上昇した滝藤さんは、開口一番「4月クールのドラマの主役が決まりました!だからなんだって…(笑)?」と映画と全く関係ないアピールで笑いを誘い、作品について「金メダルの羽生(結弦)くんのような美しさがあり、銅メダルのラージヒル日本チームのようにチームワークの良かった作品です。僕たちにとっては間違いなく金メダル」とソチ五輪にちなんだノリノリのコメント。これから映画を鑑賞する観客に「ムラムラすると思うけど、ここでヘンなコトするとヘンなコトになるので(笑)、家に帰ってから自分で処理してください!」と映画開始前から卑猥な言葉で会場を沸かせていた。柄本さんはまだ完成した映画を観ていないと前置きしつつ、「女の人たち(三津谷葉子&中村映里子)が裸で罵り合ってるのを予告編で見ました。バカみたいで笑えそう」と楽しそうに語っていた。ぽっちゃり体型の信江勇は見どころとして「男性キャストとスタッフを魅了した私のヌード!」と自信満々に語り喝采を浴びる。三浦監督は映画について「『テラスハウス』みたいな映画ですって言えと言われてるんですが…(苦笑)」と明かし、「過激な言われ方をしてますが、人が本質的に持ってる“スケベ心”を描いただけ。デートムービーと思ってます。ちょっとでもこの作品が爪跡を残すことができれば、面白いことになるなと思ってます」と観客の反応を心待ちにしていた。最後に、マイクを握った門脇さんは「撮影が終わった後、私も乱交パーティに参加していたかのような変な感じがありました。ドキュメンタリーのようにみんな、むき出しになっていき、乱交パーティを覗いたり、参加したりしているような気持ちで見られる面白さがあると思います」としっかりと作品の魅力を訴えた。『愛の渦』は3月1日(土)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:愛の渦 2014年3月1日よりテアトル新宿ほか全国にて公開(C) 2014映画「愛の渦」製作委員会
2014年02月18日映画『バイロケーション』の完成披露試写会が14日、都内で行われ、キャストの水川あさみ、滝藤賢一、酒井若菜、浅利陽介と安里麻里監督が出席した。法条遥の同名小説が原作の同作は、"もう1人の自分"であるバイロケーションに命を狙われるサスペンス・ホラー作品。覚えのない偽札使用の容疑をかけられた桐村忍(水川)は、刑事の加納(滝藤)からバイロケーションの存在について聞かされる。突如現れ凶暴化していくバイロケーションに、忍たちは追い詰められていく――というストーリーで、映画はエンディングが異なる2作品("表"は18日~、"裏"は2月1日~)が全国公開される。オリジナルとバイロケーションの2役を演じた主演の水川は、「1人の役を演じ分けるので、私が私と対峙する時も、1人でやらなきゃいけない。複雑だったけど、貴重な体験でした」と初体験に刺激を受けた様子。また、狂気じみた役を熱演している滝藤は、「普段は3人の親なのでとても穏やかなんです」と釈明しつつ、「(狂気を)見るのも演じるのも好きなので、とても楽しくやらせてもらいました」と満足げに語った。イベントでは、「痩せすぎ!」と水川に突っ込まれた滝藤が、「病気じゃない。役づくりだから心配しないで!」と返して笑いを誘い、巨大なマイクに「ツボにはまっちゃった」と笑いが止まらない酒井につられて水川も爆笑するなど、和気あいあい。最後は、集まった観客の多数決で"表"と"裏"のどちらかを上映するという企画も行われ、「観終わった後の気分が全然違う。個人的には"表"が大好き」(安里監督)、「終わってもモヤッとする"表"が好き」(水川)というアピールによって、試写会では"表"が上映された。
2014年01月15日