ワーナークラシックスの新録音がYouTube にアップされた。注目は、人気ピアニスト、ピョートル・アンデルシェフスキによる、J.S.バッハの「平均律クラフィーア曲集」第2巻だ。どのプラグラムに於いても知的なアプローチを示してきたアンデルシェフスキが、“音楽の旧約聖書”にも例えられる不滅の名曲をどのように描くのか。ピアノ・ファンならずとも気になるところだ。まずは、YouTube にアップされた映像でチェックしてみたい。さらには、現代屈指の歌姫ジョイス・ディドナートが、ヤニック・ネゼ=セガンのピアノとともに描き出すシューベルトの歌曲集「冬の旅」も大いに気になる。こちらも、ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)による深い歌声による歌劇『リナルド』とともに要チェックだ。●ピョートル・アンデルシェフスキバッハ:平均律クラフィーア曲集第2巻より前奏曲第8番嬰ニ短調アルバムに付きましては下記を参照。●ジョイス・ディドナートがヤニック・ネゼ=セガン(ピアノ)と共に2019年12月にカーネギーHでのシューベルト:冬の旅公演から「第1曲:おやすみ」の映像4月に発売されるライヴアルバムについては下記を参照。●ナタリー・シュトゥッツマンのバロック・アルバム「コントラルト」に収録のヘンデル:歌劇『リナルド』より「Mio cor che mi sai dire」の収録風景。アルバムについては下記を参照。
2021年01月13日‘20年は韓流ドラマ人気が再燃した年となったが、ブームを牽引した俳優たちの圧倒的な存在感がヒットの根底にはあるようだ。「今年最大のヒット作となった『愛の不時着』。極限状態で愛する人を守り抜くヒョンビンの姿に、多くの女性が胸をときめかせました。長身でスラッとした軍服姿に魅了された人も多かったようですが、湖上でピアノを演奏するシーンも『幻想的で美しい』と話題になりました」(韓流雑誌ライター)『愛の不時着』で北朝鮮の将校、リ・ジョンヒョクを演じたヒョンビン。ピアノを演奏したのはスイスのブリエンツ湖の桟橋だったが、ドラマ内では他にも演奏するシーンがある。ここで素朴な疑問が湧いてくる。ヒョンビンって、ピアノ弾けるの?「大スターの仲間入りをした‘05年のドラマ『私の名前はキム・サムスン』で、レストランオーナーを演じたヒョンビン。ヒロインのキム・ソナが歌う『美しい人』という韓国で70年代にヒットした歌謡曲の伴奏をするシーンでも実際に弾いていました。幼少期にピアノを習っていたそうで、撮影前にもかなり練習したそうですよ」(前出・韓流雑誌ライター)『青春の記録』もこの秋話題を呼んだ韓流ドラマだが、主演のパク・ボゴムも17年に日本で行われたファンミで、ピアノ演奏しながら徳永英明の『レイニーブルー』を流暢な日本語で歌っている。「初めて日本で開いたファンミでしたが、甘い歌声とピアノの調べに多くのファンが酔いしれていました。デビュー前はシンガーソングライターになる夢があったそうで、ピアノ演奏しながら歌う映像を作成しては芸能事務所などに送っていたそうです。彼は、高校卒業後は大学のミュージカル学科に進学しています」(前出・韓流雑誌ライター)ちなみに今秋公開された映画『82年生まれ、キム・ジヨン』に主演したコン・ユも、ファンミでピアノ演奏を披露している。『愛の不時着』に次いで話題となった『梨泰院クラス』。主演のいがぐり頭のパク・ソジュンも‘18年のドラマ『キム秘書はいったい、なぜ?』でピアノを弾きながらプロポーズするシーンを完璧にこなしている。しかしながら、このシーンだけでは彼が実際にピアノを弾けるのかは判然としないのだが……。それにしても、他にも、ユ・アイン、ソ・ガンジュン、チュ・ジフンなどなど、ピアノを弾ける俳優が韓国にはやたらと多いのだ。なぜなのか?「ピアノは韓国の習い事の人気上位に常にランクインしています。やはり女の子が多いですが、男の子も日本に比べて抵抗感が少ないようです。通学用の専用バスを持っているピアノ塾もあり、平日は毎日通うので、家にピアノがなくてもいつでも塾で練習できるんですよ」(韓国在住ライター)確かに、ヒョンビンも幼少期にピアノの習い事をしていたという。さらには、韓国のドラマ・映画事情も影響しているのでは、と前出の韓流雑誌ライターは言う。「日本と比べて、どうしてもドラマや映画で財閥を取り上げたり、テーマが貧富の差であったりすることが多いように思います。そんな時に上流家庭をイメージさせることができるピアノはキャラ設定で使いやすいのです。その代わり、役を振られた俳優は大変です。ピアノを習っていた人はいいのでしょうが、そうでない人は苦労するそうですよ」ユ・アインは‘14年のドラマ『密会』で天才ピアニスト役を演じたが、その撮影時の苦労を共にしたプロピアニストからこう絶賛されている。「ユ・アインさんはピアノを習ったことがなかったのに、難しい曲でも翌日になると覚えてくるのを見て、物凄い努力家だとわかりました」韓国特有の習い事事情や劇中の設定などに加えて、俳優本人たちの血の滲むような役作りへの努力が、様々な作品で目にする胸キュンなピアノ演奏シーンには秘められていたようだ。
2020年12月31日テレビ&ビデオエンターテインメント「ABEMA(アベマ)」では、さまざまな恋模様を描く韓流ドラマを豊富なラインナップで取り揃えている。今回は「ABEMAプレミアム」限定公開中の韓流ドラマから、視聴者の人気も高いオススメ3作品をご紹介!切ないファンタジーラブストーリー!「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」高麗時代の武臣であったキム・シン(コン・ユ)は王との確執から逆賊の汚名を被せられ命を落とします。そして時代は流れ、現代の韓国。呪いによって死ねない“トッケビ(鬼)”となり、900年の時を過ごしていたキム。とある縁でシンと出会ったチ・ウンタク(キム・ゴウン)は、自分が“トッケビの花嫁”であるといい、トッケビにアプローチする。さらに、ウンタクを狙う死神(イ・ドンウク)も現れ…。個性豊かな登場人物が織りなす、不思議なファンタジー・ラブロマンス。落ち着いた面持ちの中に憂いを秘めたキム・シンと、明るく天真爛漫なチ・ウンタクが育んでゆく愛情に心温まり、2人を待ち受ける切ない運命に涙すること間違いなしの作品。(2016年配信全16話)【出演者】コン・ユ、キム・ゴウン、イ・ドンウク、ほか(C) STUDIO DRAGON CORPORATIONパク・ソジュン出演! 男女4人が織りなす人間ドラマ「彼女はキレイだった」子どもの頃は美人で優等生だったキム・ヘジン(ファン・ジョンウム)。しかし、大人になった今は冴えない残念な容姿で、何をするにも上手くいかない日々を過ごしていた。そんなヘジンは15年ぶりに初恋相手のチ・ソンジュン(パク・ソジュン)と会うことになったのだが、なんと彼はスマートなイケメンに。気おくれしたヘジンは美人の親友であるミン・ハリ(コ・ジュニ)に影武者を頼んでしまう。一方、先輩記者のキム・シニョク(チェ・シウォン)は仕事が上手くいかないヘジンを優しく慰めてくれて…。ひとつのウソから始まる、男女4人の複雑な人間関係。コメディータッチで進んでゆく物語だが、すれ違ってゆくヘジンとコニの関係や、少しずつ近づくソンジュンとの距離に「いつ真実が明らかになるの?」「この先どうなっちゃうの?」というハラハラドキドキの展開も楽しめる作品。(2015年配信 全16話)【出演者】ファン・ジョンウム、パク・ソジュン、コ・ジュニ、チェ・シウォン、ほか(C) 2015 MBCこれは悪縁?それとも運命!?「あやしいパートナー ~Destiny Lovers~」クールな敏腕検事ノ・ジウク(チ・チャンウク)は、ウン・ボンヒ(ナム・ジヒョン)に地下鉄で痴漢と間違われてしまう。さらに、恋人に浮気されたボンヒのヤケ酒に付き合ったり、ボンヒの指導検事になったりと、奇妙な縁で結ばれた2人。さらに、殺人容疑がかけられたボンヒを救ったため、ジウクは検事を辞めさせられてしまう。ボンヒとの関係を“悪縁”と言いつつも、彼女を気にかけるジウク。少しずつ近づいてゆく、2人の距離。しかし、事件はまだ終わっていなかった…。クールな第一印象から少しずつ明らかになっていくジウクの素顔や、深まってゆくボンヒとの絆は見ていて胸がキュンキュンすること間違いなし。殺人事件をめぐる不穏なストーリーが進むほど、「2人に幸せになってほしい!」と心から応援してしまう作品。(2017年配信 全30話)【出演者】チ・チャンウク、ナム・ジヒョン、ほか(C) SBS(text:cinemacafe.net)
2020年11月15日今の韓国ドラマブームを支えるのは、パク・ソジュンをはじめとする“韓流新四天王”と呼ばれる30代の俳優たち。20代から注目されてきた彼らが実力をつけ、ヒット作との縁もつかんだ。そんなパク・ソジュンにも負けず劣らずの人気急上昇の3人を、若手時代から彼らを見てきた本誌が、秘蔵SHOTとともに現在のヒット作と人気の理由を分析!■キム・スヒョン(32)/Netflixオリジナルシリーズ『サイコだけど大丈夫』独占配信中子役出身の確かな演技力と精悍さで、日韓のみならず中国でも大人気のスヒョン。『サイコだけど大丈夫』では超わがままな絵本作家に振り回される保護士を演じたが、これぞ彼のハマリ役。寡黙な男性がひとたび恋に落ちたときの破壊力は、ヒット作『太陽を抱く月』(’12年)や『星から来たあなた』(’13年)で見せた“ツンデレ”男子そのもの。■イ・ジョンソク(31)/Netflixオリジナルシリーズ『ロマンスは別冊付録』独占配信中186センチの高身長でモデルとしても活躍するジョンソク。『ロマンスは別冊付録』では9年ぶりに復帰したイ・ナヨンを相手にすねたり、ほっぺを赤らめたり、とかわいすぎる年下男子を演じてお姉さまをとりこに。幼なじみとの恋の行方にドキドキ!同じく彼が年下男子を演じ、ブレークのきっかけになった『君の声が聞こえる』(’13年)もおすすめ!■イ・ミンホ(33)/Netflixオリジナルシリーズ『ザ・キング:永遠の君主』独占配信中除隊後の復帰第1作『ザ・キング』では、剣と銃を使ったアクションや乗馬に加え、凛々しい軍服姿まで披露したイ・ミンホ(33)。『相続者たち』(’13年)の御曹司役や『青い海の伝説』(’16年)の天才詐欺師などノーブルな役を得意としてきた彼が、今作では皇帝役に。キム・ゴウンが演じる刑事とのロマンチックなラブシーンは、絵画のように美しい。「女性自身」2020年9月29日・10月6日合併号 掲載
2020年09月24日コロナ禍のいま、かつてないほど韓国カルチャーに熱い関心が注がれている。「愛の不時着」をはじめとする韓流ドラマは新参ファンと回帰してきたファンを熱狂させ、エンターテインメント性と社会性が両立した傑作映画の数々に、K-POP人気も根強い。なぜ、これほどまでに韓国発コンテンツは私たちを魅了するのか。韓流好き女子たちの声から紐解いてみた。いま熱い韓国コンテンツ!「冬のソナタ」の“ヨン様”が火付け役となった第1次ブーム、「東方神起」や「少女時代」などK-POPアーティストが中心となった第2次ブームと来て、ここ数年で世界にも広がった“韓流”は第3次ブームの真っ最中。SNSの普及もあって新たな世代を取り込み、日本国内の興行記録を塗り変えた『パラサイト 半地下の家族』に、『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『神と共に』シリーズなどの映画はもちろん、ドラマ、音楽、文学、グルメやコスメに至るまで、その勢いは加速する一方。例えば、メンバーそれぞれの個性も人気の「BTS」や、コン・ユ、ヒョンビン、チュ・ジフンといった、紳士的な雰囲気と親しみやすさの双方を醸し出すスター俳優などがファンをときめかせている。コミュニケーションのヒントが?韓国版テラハ「HEART SIGNAL」に注目クールかと思いきや実は慎重でシャイなだけだったり、包容力を見せたかと思えば無邪気な笑顔で和ませたりと、肩幅や筋肉といったモムチャン(最高の体の意味、いわゆるマッチョ)要素だけではない、ギャップや多彩な魅力を振りまく韓国男子たち。その心理やコミュニケーションのとり方などは、“韓国版「テラスハウス」”と呼ばれ、絶大な人気を博している恋愛リアリティー番組「HEART SIGNAL」にもヒントが隠れていそう。たとえ意中の女性の気を引くためかもしれなくても(?)、理想のデートにとことんこだわったり、何気なく言ったお気に入りの店を覚えていてくれたりと、愛情表現がより繊細でロマンチックな行動を好むのは男性陣のほう。押し気味にアプローチしていた男子が逆に押しに弱く、一歩引いて周りを見ていた男子が本来の自分を少しずつ見せていく様子など、日に日に“構え”が取れていくところや、敬語からタメ口(タメ語)に変わる瞬間も距離が一気に縮まったようでキュンとくる。「愛情表現が上手」韓流好き女子に実際に聞いた韓国男子の魅力そこで、「HEART SIGNAL」を独占配信中のABEMAでは韓流を愛する女性たちにアンケートを実施。すると、韓国男子は「愛情表現が上手」「愛情表現がストレート」といった声が多くを占め、「連絡がマメ」「記念日を大切にする」「サプライズやプレゼントが日常」「積極的に『好き』『愛してる』など言葉で愛情表現」と想いを率直に、しかも頻繁に伝えてくれる点が魅力だという。「優しくて、レディーファースト」「エスコートがうまい」ところが好き、という声も数多く寄せられている。実際に韓国男子と交際経験のある女性からは、「記念日のお祝いが素晴らしすぎる」「一緒にいれる時間を確保する努力をしてくれた」「車道側を歩いていたら、サッと変わってくれた」「『心配かけてごめんね』と言ったら、『もっとかけても良いよ』って」「〇〇の名前ずっと忘れないよってサラッと言う」などなど胸キュンエピソードが続々。「愛嬌が可愛い」「電話に出れなかったりしたら拗ねる」という意外な一面に惹かれる人も。とにかく“女性目線”で、誰の目にもはっきりと分かる行動で示してくれる、そんなド直球な愛情表現が彼らの魅力。日本の一歩先行くフェミニズムの伝播にも裏打ちされているのかもしれない。(text:cinemacafe.net)
2020年05月13日日韓女性アイドルグループ・IZ*ONE(アイズワン)が2月中に活動を再開することが分かった。1月23日、韓国のエンターテインメントチャンネルMnetが報道資料を通じて発表した。IZ*ONEは、韓国の国民的オーディション番組『プロデュース101』と、秋元康氏(61)が総合プロデュースを手掛けるAKB48グループがタッグを組んだ、公開オーディション番組『プロデュース48』で誕生した12人組。AKB48グループからは宮脇咲良(21)、本田仁美(18)、矢吹奈子(18)の3人が所属している。日本でも精力的に活動を展開していたが、番組側が視聴者投票の結果を不正にねつ造したことが発覚。騒動を受け、IZ*ONEは事実上の活動休止に追い込まれていた。放送元のMnetはこの日、報道資料を通じて「MnetとIZ*ONEのメンバーらの所属事務所は、IZ*ONEの活動の正常化を求めるメンバーたちの望みと、ファンの皆さんの意見などを尊重して、活動を再開することを決定したことをお伝えします」と発表。活動再開の時期については「IZ*ONEは2月中に活動を再開する予定であり、具体的な日程などは近いうちにお知らせいたします」とした。これを受け、日本の公式サイトも「本日、韓国MnetよりIZ*ONEの活動再開に関するリリースがございました。今後の日本での活動につきましては確定次第、IZ*ONE日本公式サイトにて順次ご案内させていただきます」とアナウンスしている。最後にMnetは「これまで何の過ちもなく、精神的苦痛を受けてきたIZ*ONEのメンバーたちが、今後ファンと大切な時間を共に過ごせるように温かく応援していただければ幸いです」と呼びかけ、「今回の事態は、デビューしたアーティストや練習生、そして所属事務所の過ちではないため、これ以上、傷つくことがないよう見守ってください」と付け加えた。今回の発表を知ったファンからは《3か月もよく耐えたね》《めっちゃ楽しみ》《待ってたよー!絶対会いに行く!》《おかえりなさい!》と歓喜の声が上がっている。
2020年01月23日悪化し続ける日韓関係。しかし、20代の若年層を中心に「韓国に行きたい!」という日本人は増え続けている。現地には、政治問題を超えた“魅力”があるのだという。《韓国国内で高まる“反日の機運”、『NO JAPAN』『NO ABE』の張り紙も――》韓国の元徴用工らに対する日本企業の損害賠償問題を契機に、こじれ続ける日韓の両国。韓国は9月17日、輸出管理の優遇措置を適用する「ホワイト国」から日本を除外する計画を承認。日本はすでに8月時点で韓国を「ホワイト国」から除外しており、両国間の問題は“泥沼化”しつつあるが――。「ニュースでは日韓の政治的な問題が多く報じられていますが、じつは、日本国内で『韓国ツアーへの申し込みが減っている』ということはないんです」そう語るのは、渡韓専門の旅行代理店「三進トラベルサービス」の広報担当者。観光庁によると、今年8月、韓国から日本を訪れた旅行者は、前年同月と比べて48%減少した。しかし、日本から韓国へ旅行に行く人は増えているのだという。韓国観光公社の資料により作成した「日本人の韓国入国者数」のグラフを見てみると、今年7月に韓国を訪れた日本人は27万4,830人。これは、前年の同月と比べて19.2%の増加。うち女性は64%、世代別で見ると最も多いのは21~30歳で、27%という結果だった。「9月14日、15日に朝日新聞は、韓国への好悪について全国的に世論調査を行いました。18~29歳の調査対象のうち『韓国が好き』と答えた人数は、『嫌い』と答えた人数を10%上回った。現在、韓国が発信する文化は10代、20代の学生に好まれており、彼らが旅行客の中心層になっているようです」(社会部記者)なぜ、若い層を中心に、韓国旅行者は増え続けているのだろうか?韓国在住の日本人ライターは、こう分析する。「日本人観光客のお目当ては、カフェ巡りと“美容大国”ならではの韓国コスメでしょう。“インスタ映え”を狙ったオシャレな内装のカフェは韓国国内で続々と登場し、それまで韓国旅行に興味がなかった女性も、足を運ぶようになりました。また、ソウル市内にある『OLIVE YOUNG』という国内最大のビューティショップには、必ずといっていいほど日本人旅行客がいます。現在、韓国コスメは日本からオンラインでも買えますが、送料を考えると現地で購入したほうが安い場合がほとんどです」9月上旬、韓国に足を運んだ24歳のOLは、旅行の動機についてこう話す。「ネットで見つけた、安くてかわいい韓国コスメを、現地で試してから買いたくて……。とくに最近は“ウォン安”なので、『行くなら今がチャンス』と思い、旅行を決めました」9月19日現在のレートは1ウォン=約0.09円(三井住友銀行調べ)。昨年9月時点での1ウォン=約0.102円と比べ、ゆるやかにウォンが安くなっているのも、渡韓の背景になっているようだ。
2019年09月28日「戦後最悪とまで言われている日韓関係ですが、それはあくまで政治や経済での話。今クールは韓国原作のドラマのリメイクが3本もあります。芸能界では特に影響はないどころか、むしろ増えているという印象ですね」(スポーツ紙記者)大森南朋(47)主演の『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』(テレ朝系)、唐沢寿明(56)主演の『ボイス 110緊急指令室』(日テレ系)、三浦春馬(29)主演の『TWO WEEKS』(フジテレビ系)。この3本に共通しているのは、韓国ドラマのリメイクということだ。「『サイン』は第8話までの平均視聴率が10.9%で、今クール3位。『ボイス』も第7話までの平均視聴率が10.7%と二桁をキープしています。『TWO WEEKS』だけは6%台と落ち込んでいますが、3本中2本が2桁というのはかなりの好成績。今後も韓国ドラマのリメイクは増えていきそうです」(テレビ局関係者)最近のドラマは、海外リメイクものが増えている。昨年10月クールに放送された織田裕二主演の『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)は、アメリカのドラマのリメイクだった。「『SUITS』もかろうじて2桁はキープしましたが、同じクールに放送された米倉涼子さん(44)の『リーガルV』(テレ朝系)や阿部寛さん(55)の『下町ロケット2』(TBS系)からだいぶ差をあけられましたからね。やはり同じアジア圏のドラマのほうが、視聴者も違和感なく見られるのかもしれません」(芸能関係者)最近の日本ドラマは漫画原作や小説原作、海外リメイクなどが激増。オリジナル作品は以前よりも少なくなっている。「テレビ局も人材不足と予算不足で、なかなか冒険できなくなっています。原作ものだと大コケの心配は減りますからね。いっぽう、韓国も堺雅人さん(45)主演の『リーガルハイ』や上戸彩さん(33)主演の『昼顔』をリメイクでやっています。芸能界に関しては、お互い『今後も波風立てずに連携していきたい』と歓迎ムードですね」(ドラマスタッフ)
2019年09月14日話題のスポットやエンタメに本誌記者が“おでかけ”し、その魅力を紹介するこの企画。今回は、作家・吉本ばななの同名小説を原作に、日韓共同で製作された映画『デッドエンドの思い出』をご紹介します。■映画『デッドエンドの思い出』(2月16日より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー)国内はもとより海外でも高い人気を誇る吉本作品のなかでも、作家自ら最高傑作と語る短編小説の初映像化。アイドルグループ少女時代のスヨンが、婚約者を追いかけ名古屋へやってくる韓国人女性・ユミを演じています。「小説のなかの人が出てきたみたいに原作のまんま。スヨンさんの演じたユミには説得力があった」そう絶賛したのは何を隠そう吉本本人。その言葉のとおり、ヒロインの絶望感を繊細に演じるスヨンは、映画初主演とは思えないほどの堂々たる熱演ぶり。いっぽう、傷心のユミに寄り添うカフェのオーナー・西山を演じたのは、BOYS AND MENの田中俊介。その不思議な存在感は“エンドポイント(=行き止まり)”という名の小さなカフェのなんとも言えない空気を作り出すことに一役買っています。そして、ふだん平静な西山もじつは心に傷を持つことを知ったユミは、以前よりも自分らしく、未来に向かって歩み出すのです。彼女の心を映すかのような桜満開の公演はクライマックスを彩るみごとな絶景!映画のロケ地巡りも楽しそう。ときには人生の袋小路に迷い込むのも悪くない。悩める大人の女性におすすめの1作です。
2019年02月18日家の中で楽しめるエンタメや流行を本誌記者が体験する“おこもりエンタメ”のコーナー。今回は、韓流ドラマファンが「ひさびさにハマった!」と口をそろえるヒューマンドラマをご紹介します!■『黄金の私の人生』DVD(全26巻)順次レンタル中。発売元:ポニーキャニオン/テレビ東京販売元:ポニーキャニオン物語は、パク・シフ演じる財閥グループの後継者チェ・ドギョンと契約社員のソ・ジアンが交通事故を起こしたことから始まります。最悪な出会いをした男女が、衝突しながらも心を通わせていく、そんな鉄板のラブストーリーと思いきや、ジアンが25年前に行方不明になったドギョンの妹だと判明。庶民から一転、財閥令嬢となったヒロインの運命ははたして?序盤は、財閥一家の一員になろうと奮闘するジアンと、彼女を妹として見守るドギョンを中心に展開。ジアンの出生のさらなる秘密が発覚することで、財閥一家と奇妙な悪縁でつながるソ家の人々の人生が複雑に絡み合っていきます。恵まれた境遇に育ちながらも、財閥グループ後継者としてレールが敷かれた人生。貧乏にもがき苦しみ、夢を諦めざるをえない人生。愛を取るか、家族を取るか。次々と選択を迫られるなか、親も、子も、みな自分の“黄金”の人生を見つけるために必死に生きる姿は涙なしでは見られません!出生の秘密、格差恋愛、韓流お得意パターンはやっぱり面白い!
2018年11月12日東京・新大久保にある「韓サラン(ハンサラン)」は、韓国の家庭料理が味わえる韓国料理店です。オープン当初からずっと変わらないこだわりの味を貫く「韓サラン」でいただきたい、おすすめのメニューをご紹介します。新大久保で韓国料理なら「韓サラン」JR「新大久保駅」から徒歩3分のところにある「韓サラン」は、韓食財団に「優秀韓国レストラン」として推薦された韓国料理店です。種類豊富な「サムギョプサル」や、豆腐にだしが染みた「スン豆腐(ドゥブ)チゲ」などの韓国料理を、 チャミスルやマッコリなどの韓国のお酒とともに味わえます。韓国伝統家屋をイメージした店内韓国伝統家屋をイメージした、どこか落ち着く雰囲気の内装です。お客さまの9割が女性で、女性同士で利用する方が多いのだそう。なかには2005年のオープン以来変わらない味を求めて通う、常連のお客さまもいます。コン・ユさんや超新星さんも訪れる超人気店!「韓サラン」は、老舗なので韓国の有名人からの信頼も厚く、韓国の俳優・コン・ユさんや韓国出身の6人組男性アイドルグループ・超新星さんなどが来日した際に訪れています。運が良ければ韓国の有名人に会えるかもしれませんよ。看板メニュー「サムギョプサル」定番の「コチュジャンサムギョプサル」や「生サムギョプサル」のほか、「梅サムギョプサル」などの変わり種メニューも用意されています。韓国人が食べても違和感のない、本場の美味しさを追求しているそう。お店のスタッフがすべてのお肉に均等に火を通して、最高の焼き加減にしてくれます。お肉の旨みたっぷりの脂を含んだ「ホットキムチ」がアクセント。国産の熟成肉を使用した「サムギョプサル」とトッピングの「焼き肉キムチ」や「ネギサラダ」を、お好みでサンチュに巻いて召し上がれ。体の奥から温まる「スン豆腐チゲ」アサリや野菜の濃厚なだしが、プルプルの豆腐に染み込んだ「スン豆腐チゲ」は、体の奥から温まるので冬におすすめ。アツアツの状態でいただけるように、お客さまの食事のタイミングを見て提供してくれます。リピーターのお客さまのために、あえて味を変えていないのだそう。いつ訪れても安定して、ほっとする味を楽しめます。ピリ辛アレンジがおすすめ「ビビンパ」ナムルの歯ごたえと“おこげ”の香ばしさ、ひき肉の旨みが合わさった「ビビンパ」は、〆にぴったりのメニューです。「プルコギ石焼ビビンパ」や「ナムルビビンパ」など、豊富な種類から選べます。お店のおすすめは、スプーン1~2杯のコチュジャンを入れること。ピリ辛になってさらに食欲がわいてきますよ。辛いものがお好きな方はぜひ試してみてくださいね。韓国の家庭料理を楽しもう!韓国のお宅にお邪魔して郷土料理をふるまってもらっているかのような気分になれる「韓サラン」。人気店のため、ディナーの時間は予約をおすすめします。辛くて美味しい、体の奥から温まるような韓国料理を食べに、足を運んでみてはいかがでしょうか。スポット情報スポット名:韓サラン住所:東京都新宿区大久保1-16-15 豊生堂ビル2F電話番号:050-5868-0456
2018年11月06日8月31日、AKB48グループが参加している韓国のオーディション番組『PRODUCE48』の最終回が放送され、秋元康(60)がプロデュースする日韓ガールズグループ「IZONE(アイズワン)」のメンバー12名が決定した。番組放送中からYahoo!検索ランキングには番組の関連ワードが数多くランクインするなど大きな話題を集めた。PRODUCE48は、5月より韓国の放送局Mnetと日本のスカパー!で同時放送され、韓国の大人気オーディション番組『PRODUCE101』とAKB48がコラボし行われたオーディションプロジェクト。日本で活動しているAKB48グループの中から選出された39人と韓国の芸能事務所に所属している練習生57人合わせた96人のメンバーから、グローバルガールズグループのメンバー12人を選考するオーディション番組だ。メンバーの選抜は国民プロデューサーと呼ばれるファンが直接行い、投票は韓国のみで行われた。この日の放送では、ファイナリスト20名の中から、ガールズグループのメンバー12名が選出。日本からはHKT48宮脇咲良(20)、矢吹奈子(17)、AKB48本田仁美(16)が選ばれた。グループ名の「IZONE(アイズワン)」は、12名の少女が1つになるという意味が込められている。IZONEは、2年間限定で日韓両国をまたにかけ活動することになる。
2018年09月01日連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合・月〜土8時)で、登場するやいなや視聴者をざわつかせた律(佐藤健)の妻・より子。「反響がすごかったです(笑)」そう話すのは、より子を演じる石橋静河(24)。彼女は、石橋凌&原田美枝子夫妻の娘。15歳のときアメリカとカナダにバレエ留学し、帰国後はコンテンポラリーダンサーとして活動していた彼女が、両親と同じ役者の道を志したきっかけは何だったのか?「留学先で初めてちゃんと芝居を見たとき、そのおもしろさに気がつきました。日本では、映画や舞台からなるべく遠くにいたくて、全然見てこなかったので。帰国後、アルバイトをしながらダンスを続けていたんですが、もっとおもしろいことがしたいと悶々としている自分がいて。ちょうど邦画を見始めたこともあって、少しずつ役者をやってみたいと思うようになったんです」(石橋・以下同)両親も「やりたいなら頑張りなさい」と背中を押してくれたという。「芝居はダンスと通じるところもあるけど、まだまだ勉強が足りません」と言うものの、昨年、初主演作『映画夜空はいつでも最高密度の青色だ』で第60回ブルーリボン賞新人賞をはじめ数々の新人賞を受賞。最新作の映画『きみの鳥はうたえる』(9月1日公開)でもその才能を存分に発揮している。「踊ったり歌ったりして、1人ミュージカルです(笑)。映画の世界観にどっぷりつかって、のびのびと演技することができました」最後に、彼女は今後の目標をこう語る。「両親から得られるものがあれば参考にして。あとは、目の前の役と地道に向き合っていくだけです」
2018年08月15日今冬、イ・ビョンホンとペ・ヨンジュンという、2000年代中ごろから巻き起こった韓流ブームの立役者で、“韓流四天王”の代表格として知られる2人の主演作が相次いで公開される。これは韓流ブーム再来の兆しなのか!?それぞれの作品に注目した。韓流ブームの中で生まれた“韓流四天王”とは、「冬のソナタ」のペ・ヨンジュン、「美しき日々」のイ・ビョンホン、「イヴのすべて」のチャン・ドンゴン、日韓共同制作ドラマ「フレンズ」に出演したウォンビンの4人のこと。なかでも、「冬のソナタ」で一躍人気者となり、日本に“ヨン様”ブームを巻き起こしたペ・ヨンジュンと、いまやハリウッドスターとして国際的に活躍するイ・ビョンホンはその代表格といえる。■ペ・ヨンジュン、映画初主演作『スキャンダル』がデジタルリマスター!1月20日(土)公開2004年に公開され、当時9億円の興行収入を記録した本作は、フランスの古典恋愛小説「危険な関係」を、18世紀の李氏朝鮮を舞台に移して映画化した華麗な恋愛ドラマ。華やかな朝鮮王朝を舞台に、優雅に、かつドロドロに繰り広げられる恋愛ゲームを描き、時代劇ならではの鮮やかな衣装や装飾品へも高い評価を集めた。特に、これまでの誠実なイメージではなく、プレイボーイを熱演したペ・ヨンジュンと2007年に『シークレット・サンシャイン』での演技により第60回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞した世界的な実力派人気女優チョン・ドヨンとのベッドシーンも話題に。そのほか、『造られた殺人』『うつせみ』のイ・ミスクなどが出演。監督は、『世界で一番いとしい君へ』『フライ・ダディ』のイ・ジェヨン。制作から15年という節目の2018年にリバイバル上映が決定した。■イ・ビョンホン主演最新作のラブ・サスペンス『エターナル』2月16日(金)公開「10年ぶりに素晴らしい小説を読んだかのような、心に響く作品」とイ・ビョンホン自身が脚本にほれ込んだ本作。その衝撃的なラストは本年度ナンバーワン・サスペンス映画と呼ばれるほど。監督は語り手としての優れた能力と、広告界で築いた演出力でイ・ビョンホンが惚れ込んだ、本作が長編映画にデビューとなる新人監督イ・ジェヨンが務める。イ・ビョンホンがハリウッドや韓国で近年演じてきた悪の魅力や激闘アクションを完全封印し、複雑な心情を言葉ではなく、表情や視線に映し出す静かなる感情表現で観る者を圧倒する演技を見せている。(text:cinemacafe.net)
2018年01月14日10月24日、日韓文化交流企画の舞台『ペール・ギュント』の制作発表会が都内で開かれ、浦井健治ら日韓の俳優6名と上演台本・演出を担当するヤン ジョンウンが登壇、作品の見所などを語った。公演には日本から15名、韓国から5名の俳優が出演する。原作はイプセンによって150年前に書かれたもの。夢見がちな青年ペール・ギュント(浦井健治)は母オーセ(マルシア)の心配をよそに、ある日、「遠回りをしろ」という闇からの声に導かれるように恋人ソールヴェイ(趣里)をひとり残し旅に出る。海を渡り世界を股にかけ、謎めいた緑衣の女(ユン ダギョン)らと愛を交わし、財産を築いては無一文になるのを繰り返す。妖精の一種トロールやその王様、猿までもが飛び出す、様々な出会いと別れに彩られた破天荒で壮大な“自分探し”の物語だ。「ペール・ギュント」チケット情報平昌冬季オリンピック開・閉会式の総合演出も務める演出家ヤン ジョンウンは、言葉によるイメージと美術や照明といった目の前のビジュアルとがない交ぜになるような幻想世界を体感して欲しいと話す。「私はこのプロジェクトで人生という物語の中で生きること、そして死ぬことに対する問いかけを提示したい。観客にとって自分の人生をオーバーラップさせられる出合いの場になれば」。また、舞台上では常に演奏家による生音楽が流れるといい、祝祭感溢れるステージとなりそうだ。浦井も東京公演はクリスマス、兵庫公演は大みそかに重なることもあり、「お酒でもひっかけつつ、観に来て頂ければ」と冗談混じりに笑う。稽古は始まって1週間程度だというこの日。「1週間が一か月にも感じる」「みんな古くからの友人みたい」と語る出演者らの口ぶりから、1日8時間という稽古の充実ぶりが伝わってくる。会見でも終始笑いが絶えず、チームワークはすでに万全な様子だ。「毎日筋肉痛になるぐらい想像を超えた世界です」(マルシア)、「お客さんもこのワクワク感を共に作り上げる物語の一員になるはず」(趣里)、「稽古開始1週間にしてもう自分が客席で観たい!と思える公演はあまりない」(浅野雅博)、「先日、稽古終わりに韓国の男優たちと松屋へ行きました。心から肉を欲するほど毎日ヘトヘトです(笑)」(キム デジン)、「互いの人生を祝福し、みんなが“今のままの自分でいい”と思える公演になることを心から願っています」(ユン ダギョン)。最後に浦井が言う。「宗教、政治、国境、男女の差、あらゆるボーダーを越えて、イプセンが描いた人間とは何か、人生における一番大切なものは何かなど、様々なテーマが浮かび上がってくる作品です。観る人それぞれに違ったメッセージが届き十人十色の気持ちを持ち帰って頂ける、もしくは10年後にそういうことだったのかと思い返して頂けるような作品になると思います」東京公演は2017年12月6日(水)から24日(日)まで東京・世田谷パブリックシアター、兵庫公演は12月30日(土)・31日(日)に兵庫県立芸術文化センターにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子撮影:宮川舞子
2017年10月25日(写真:THE FACT JAPAN) 再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第21回】『イ・ヨンエ』ーーさらに楽しめる究極ガイド『イ・ヨンエの晩餐』 連載の第3回でも紹介した、イ・ヨンエの新作『師任堂、色の日記』放送前に、制作されたテレビ番組『イ・ヨンエの晩餐』だが、今回、その番組を基にした本の日本語翻訳版の発売が決定したので、連載の最後に紹介しておきたい。 本書は、’14年2月2日と9日の2回にわたって放送された、SBS旧正月スペシャル番組の書籍化で、制作期間は6カ月の長期に及び、海外ロケまで敢行したドキュメンタリーの特別番組ではもちろん、女優がメインキャラクターを務める番組としても最近では例がないスケールである。 内容は番組同様の二部構成で、第一部は韓国料理のルーツを辿るのがメインストーリーだが、それと並行してイ・ヨンエ本人の日常生活も食事風景を中心に描かれる。100坪以上の豪邸の披露も初めてなら、夫と双子の子どもの素顔の公開も今回初で、普通では考えられないこのプライバシー公開の意図はよくわからない。現在の韓国料理の在り方の一環として自身の家庭での食事風景を紹介しただけかもしれないが、それにしても通常のドキュメンタリーではあり得ないほどの過剰サービスと考えたのは筆者だけだろうか。 第二部は、イタリア・フィレンツェへの海外取材で、グッチと共同主催した韓国伝統料理晩餐会の一部始終が収録されているが、韓国料理レストランが一軒もないイタリアの1000年都市フィレンツェで、2000年続いた韓国料理の神髄(薬食同源)を再発見するのは、料理研究書としても非凡な視点だ。異国で自国のアイデンティティを確認するテーマとして「料理」を取り上げているのは、この本を貫く基調低音ともいえる。さらに「料理」を「絵画」に替えれば、実は13年ぶりの復帰作『師任堂、色の日記』のストーリー展開とも相通じるところがあるのではないか。 テレビ番組やドキュメンタリーを書籍化する際には、事前に視聴していることを前提で編集されるものが多いが、今回の『イ・ヨンエの晩餐』はその番組を見ていなくても、一冊の本として、韓国料理のルーツを探るという観点でも読むことが可能な内容となっている(著者クレジットは、イ・ヨンエと番組の放送作家との共著)。『師任堂、色の日記』観賞の際の一番のガイドブックは実はこの本かもしれない(連載・了)。
2017年09月11日再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第20回】『師任堂、色の日記』ーーイ・ヨンエの新作、その価値と出来について 13年ぶりのイ・ヨンエの主演作『師任堂、色の日記』は、最近になって地上波BS放送とレンタルで、やっと一般的に視聴できるようになった。事前の情報通り、現在と歴史上の役柄がパラレルになった凝った設定になっているが、家庭を持っている主婦の、単なる美術講師から教授になるまでのサクセスストーリー的な内容であれば、おそらくイ・ヨンエがこの役を受ける可能性はなかっただろう。これまで積み上げてきたキャリアに付け加わるものは何もないからだ。 実際、イ・ヨンエに限らず、40代半ばの女優を主役にするのにふさわしい設定は現代劇ではなかなかあるものではない。かといって、いまさら単なる長編時代劇では、何のために、『チャングムの誓い』の続編の出演を拒んできたのかわからない。 だからなのか、このドラマはそんな期待に十分応えたもので、基本ストーリーの一部に『ある日どこかで』(’80年の米映画、原作はリチャード・マシスン)をヒントにしているのは間違いなく、500年の時空を超えたSF的な設定での過去と現在の交差は、従来のTVドラマではあり得ないような独自の内容構成になっている。そこに本人なりの価値観を見出したから出演に至ったのではないか。 「歌を忘れた金糸雀は〜」の倣い通り、もう一度歌を歌ってもらうにはそれなりの舞台を用意しなければならない。この作品はイタリア海外ロケから始まり、大学の研究室や海外の学会というアカデミズムの現場を通して、500年前の時代劇の世界にも移行する広大なスケールの構成を持つ。そして、アカデミズムの生態、SFファンタジー、時代劇という三種類の要素を溶かし込んだ、およそ韓国ドラマで考えつくだけの贅の限りを尽くしたものといえる。 まさしく、イ・ヨンエ出演のために、そのすべての期待と条件を満足させるために準備されたものだが、これが意外にも佳作に仕上がっているのは、やはり脚本を始めとしたスタッフの努力の賜物だろう。過去の遺跡、暗号等のヒントから、現在の謎を解くパターンは『ダ・ヴィンチ・コード』等でもよく見られる設定だが、そのキーワードを国宝級の絵画にしたところが非凡であり、イ・ヨンエはこの大役に見事に応えている。少なくとも13年ぶりの復帰作として、その名誉は守られたというべきだろう。
2017年09月04日世田谷パブリックシアターが開場20周年を記念して、日韓文化交流企画となる舞台、イプセン作『ペール・ギュント』を12月に上演する。舞台『ペール・ギュント』チケット情報本作は、平昌オリンピック開・閉会式の総合演出を手掛ける韓国演劇界のトップクリエイター、ヤン・ジョンウンが芸術監督を務める劇団旅行者(ヨヘンジャ)にて上演を重ねてきた代表作のひとつ。日本では第20回BeSeTo演劇祭(13年)の招聘公演として新国立劇場にて上演され、際立つ身体性と言語表現によって色鮮やかに劇場空間を埋め尽くす、ヤン独自の世界観が大きな反響を呼んだ。今回は主人公ペール・ギュント役を浦井健治が担い、ワークショップで選ばれた日本人キャスト、ヤンの信頼厚い韓国人キャスト、そしてヤンの希望によりすべて日本人スタッフで固めた布陣で新演出版を誕生させる。海を越えた注目のタッグ、浦井とヤンに話を聞いた。「異なる文化で育った者同士が良いところを持ち寄り、一緒に冒険ができることはとても贅沢で幸せなこと。僕は参加できなかったのですが、今回共演する趣里ちゃんやほかの役者仲間から、すごい熱量でワークショップの報告が来たんですよ(笑)。『面白かった!ここまで自分をさらけ出すことができるのかと思った』と。そこまで思えるのは素敵ですよね」(浦井)「サイモン・マクバーニーが日本の俳優と作った『春琴』を世田谷パブリックシアターで観て、この空間にとても演劇的魅力を感じ、いつかこんな交流の舞台をやれたらと夢見ていました。浦井さんとの出会い、スタッフとのやり取りなど、すべての過程が今楽しくて仕方ありません。韓国人俳優に比べて日本人俳優はひかえめだという話をよく耳にしますが、ワークショップで出会った日本の俳優たちは全然違いましたね(笑)。すごく自由で、エネルギッシュで、挑戦を楽しんでいた。僕のほうがインスピレーションをもらいました」(ヤン)ワークショップについて浦井が「参加できず残念だったけど、僕は臆病なので」と冗談めかして言うと、ヤンはひときわ大きな笑い声をあげた。「先ほど浦井さんが口にした“冒険”という言葉が胸に刺さり、今また“臆病”という言葉にさらに深く揺さぶられました。私は、ペールも完璧な臆病者だと考えています。なぜなら、彼を信じる母親と恋人を故郷に残して自分探しの旅に出るペールは、あらゆる選択の局面でいつも無意識的に逃げ出すからです。すべての人間の怖れ、不安を集約したものがペール・ギュントで、浦井さんはそれを直感的に探り出したスマートな俳優だなと。期待が高まります」(ヤン)趣里、マルシアなど日本人15名と韓国人5名、総勢20名の出演陣で立ち上げる壮大な冒険譚。両国の情緒の差異を楽しみ、共感を探る、刺激的な旅路の始まりだ。「本当に大切にしたいものは身近にあることを伝えてくれる物語です。この作品を経験することで、僕も人生が豊かになるんじゃないかなと予感しています」(浦井)東京・世田谷パブリックシアターにて12月6日(水)に開幕。9月24日(日) より一般発売。取材・文:上野紀子
2017年09月01日(写真:THE FACT JAPAN) 再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第19回】『ラスト・チャンス!〜愛と勝利のアッセンブリー〜』ーー国会議員の理想像を演じる俳優の適性とは 最近、韓国のみならず、日本でも国会議員の不祥事が話題になっている。その際にいつも問題になるのは、国会議員の適性及び品格だが、今回はその理想像を、演じる俳優を例に考えてみたい。 『ラスト・チャンス!~愛と勝利のアッセンブリー~』(’15年・KBS)は映画専門俳優だったチョン・ジョヨンが、デビュ?20年目にして初めてのドラマ出演で話題になった作品だ。この俳優の持ち味は、どこにでもいそうな市井の人物を演じることで、それ以外では戦争映画の命令に忠実な軍人等がはまり役だった(『シルミド』’03年、『トンマッコルへようこそ』’05年)。この作品でも、ストライキを起こした溶接作業員が仲間の汚名をそそぐために、政界に打って出るという人間味あふれる、一種純粋な性格の主人公の役を敢えてぎこちなく演じている。フィクションでありながら、ある種の国会議員の理想像ともいえる。 一般的な政治ドラマでは、無骨で朴訥、そして実直で前時代的なキャラクターは脇役ではあっても、主役には当てないのが普通である。だが、この作品はシナリオライターが直々に指名したチョン・ジェヨンのキャラクターを元に書き上げたとのことで、限りなく政治の素人である一般人を、魑魅魍魎な政治の世界に放り込むことによって起こる波紋をドラマの主題としている。これは何よりもまず、この俳優の風貌が醸し出す独特の雰囲気を抜きには考えられない。周辺には、それを利用しようとする人物と守る立場の側に、個性的な俳優を配置すればいいわけで、韓国ドラマの舞台として、裁判、病院に次ぐ第三の場ともいえる政治の世界ほど、こういった図式がふさわしい世界はない。 無学ゆえにストレートに感情を出してしまう主人公は持ち前の粘り腰で、従来とは違う、想像もつかない手法で次々と政治の難局を突破する。傍にはいつも優秀な秘書官(ソン・ユナ)がいるのだが、何故か彼女とは最後まで恋愛関係にはならない。主人公が離婚している設定もあって、恋愛感情を希薄にしているようにも感じるが、それがかえって主人公の純真さを伝える好効果にもなっている。このドラマが従来の、情欲と権謀策略が渦巻く政治ドラマとは全く違う印象を与えるのは、やはり俳優チョン・ジェヨンによるところが大だと思う。
2017年08月28日(写真:THE FACT JAPAN) 再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第18回】『記憶~愛する人へ~』――イ・ソンミンにみる主演俳優の配役変化について 地味な印象の俳優の方が、逆に新しいキャラクターを演じるのにふさわしいと考える傾向があるのか、そういう例が最近増加している。人気俳優が派手な風体で派手なキャラクターを演じるのは当たり前すぎるし、悪相の俳優が凶悪な役を演じるのも却ってつまらない、面白くないという事なのだろうか。その意味も含めて、今回の『記憶~愛する人へ~』(’16年・tvN)はこれからの韓国ドラマのある方向性を示すと思われる作品である。 主役を演じるイ・ソンミンは今までは地味な脇役を長く続けてきた俳優の一人で、主役を演じたのは『ゴールデンタイム』(’12年)からだが、その時点で43歳という遅咲きだ。その一見地味でどこにでもいそうと思われていた俳優のキャリアは『ミセン』(’14年)で急転する。猛烈商社マンの人間臭い面を見せたこの作品は、イ・ソンミンという俳優をさらに印象付けることになり、この『記憶』でその評価は決定的になった。 『記憶』はテレビドラマとしてはかなり複雑な構造を持った作品である。むしろ、映画的といってもいい濃密さだ。主人公の敏腕弁護士はあまりにも強引な手法で弁護士の枠を超えて違法すれすれの事までこなすようになっている。だが、その裏には、子どもを不慮の事故で亡くして離婚、そして再婚して、仕事に忙殺されながらも、何とか幸せな家庭を築こうとする主人公なりの努力も垣間見えるという具合だ。そんな時、本人の体に異変が起こり(初期アルツハイマー病の宣告)、同時に一見平穏だった家庭にも、弁護士としての業務にも亀裂が入るようになる。ここで上司(イ・ソンミン)の言動に幻滅して辞表を出そうとしていた部下としてジュノ(2PM)が登場し、主人公と最後まで行動を共にするドラマ内の重要な人物となる。今や定番ともいえるK-POPメンバーの単独ドラマ進出については賛否両論あるが、この作品でも全体のマイナスにはなっていない。 前妻とのトラウマも並行して描かれるこのドラマの中で、主人公は、記憶が完全になくなる前に、何のために、何をすべきなのかを考えるようになる。症状が進んでいく残された時間の中で、主人公は最後の行動に出るが、これは誰にでも起こりうる人生の転機、岐路についての根源的な問いかけである。シナリオは、傑作『復活』『魔王』を手掛けたキム・ジウの最新作で、韓国ドラマの水準をまた一つ上げた。期待通りの秀作だ。
2017年08月21日(写真:THE FACT JAPAN) 再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第17回】『町の弁護士チョ・ドゥルホ』ーパク・シニャンの成熟度について ’16年の『町の弁護士チョ・ドゥルホ』(KBS)は好評のうちに終了したのち、早々と続編制作が決定した。その主役が今いちばん韓国で演技力に定評がある俳優の1人である、パク・シニャンだ。 医師、弁護士といった職業がまさに嵌まり役で、熱血とコミカルな部分がないまぜになったオーバーな感情過多の部分さえ特徴の1つと思い当たる、他に類型を探すのが難しいタイプだ。静かな闘志を秘めて、およそ考えつくあらゆる人間の英知と感情をフルに使って、弁護に猪突猛進する。そういう役柄にピッタリな俳優はいそうでなかなかいない。もう少し庶民的な俳優のソン・ヒョンジュと対極的な位置にあるともいえる。 パク・シニャンは現在、48歳、映画もだが、ドラマは特に主演作品は少なく、作品を選ぶ俳優ともいわれている。’04年の『パリの恋人』が大ヒットしたためか、そのイメージが強かったが(『銭の戦争』はほとんど韓国版ナニワ金融道だが)、俳優としての本質は明らかに、その後の『サイン』、この『町の弁護士チョ・ドゥルホ』にある。 特にこの作品(『町の弁護士〜』)で、俳優としての評価は決定的になった。世界的に有名な俳優学校の1つであるアメリカのアクターズ・スタジオ出身かと錯覚するような部分もあり、アメリカの良心と称されたヘンリー・フォンダと言うより、韓国ではアン・ソンギ、イ・ソンミン、カン・シニルの系譜につながる、演劇的な俳優の1人だ。 今まで夥しい量の裁判、弁護士物が製作されてきたが、パク・シニャンの作品だけ違う手触りを感じるのは、一つにはこの俳優の人間的な、関西テイストをも彷彿させるキャラクターによるものだろう。様々な局面での意表を突く解決策は、シナリオの妙によるところが大であっても、俳優によってその印象がずいぶん違ってくる。そのくらい、タイトル通り庶民の味方となった“町の弁護士”としての活躍はまさに全開で、手垢の付いた正義の味方的な神話も一瞬信じたくなる錯覚を覚えるほどだ。 脇役の金貸し業パク・ウォンサンと、事務長ファン・ソクチョンとのコンビは傑作で、スパイ大作戦的な要素も加わって、視聴率の好調と続編制作決定の背景には、現在の韓国における汚職、収賄の忌避という民意の反映が大きいと思われる。
2017年08月07日(写真:THE FACT JAPAN) 再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第15回】『偉大なる糟糠の妻』ーー最強にして無敵なクイーンの登場! 今日本で見ることができる韓国ドラマで、最強にして無敵なキャラクターが遂に現れた。その女優はキム・ジヨン。本来は『偉大なる糟糠の妻』(’15年)の主人公の1人のはずが、キム・ジヨンの演技は適役どころではなく、その傍若無人な態度、傲岸不遜ともいえる言動、厚顔無恥の度合い、さらに容姿と学歴のコンプレックスが高じて無神経の塊りとなるに至っては、まるで何かが憑依しているかのようだ。どう考えても、この作品の真の主人公はこのキム・ジヨンであり、これはキム・ジヨンのためのドラマである。 善人か悪人か、という二元論ではとても割り切れない、常に相手を屈服させるシャウトボーカル口調、髪を上でまとめた年代を無視したヘアスタイル、わざと目立つことを目的としたかのようなヤンキーファッション。時代も世間も完全に超越して、人に文句を言うことで一日の大半の時間を使うことを生き甲斐としているような、わが道を行く自分中心のわがまま主婦キム・ジヨンは登場するだけであらゆる画面に波紋を呼び起こす。その言動は舞台を変えればほとんど、先頃、離党届を出した、“絶叫ピンクモンスター豊田真由子”のようだ。 このドラマは、同じマンションで偶然再会した3人の女子高の同級生たちの過去に関わった殺人事件と現在の彼女たちの夫婦生活や離婚、さらに復讐劇を描いたものだが、作品内の人間関係がすべて誰かとの血縁、姻戚関係等で完結するようにがんじがらめに設定されていて、少し作為が過剰過ぎるのが難点となっている。この点だけ目をつむれば、このキム・ジヨンの存在とキャラクターを全開にさせる、絶好の環境である人間関係が用意されているともいえる。とにかく、成金上がりの亭主の妻となった、学歴コンプレックスのキム・ジヨンの決まり文句「金と贅肉はたっぷりあるから」は近年の傑作で、その亭主の浮気がいつもささいな理由ですぐ露見してしまうところも大笑いである。 後半は、主人公の主婦たちのそれぞれの亭主への三人三様の報復劇になり、タイトル通りになるにしても、実はこの3人の関係は同級生同士ではあるものの、どこまで心を許した親友なのかは最後までわからない。お互いが必要な時には喧嘩状態で、喧嘩していない時は余計で傍迷惑な相談事を持ち込み、また3人の仲が悪くなるという寸法で、韓国ドラマにおけるシナリオの構成テクニックには今更ながら感服させられる。
2017年07月24日(写真:THE FACT JAPAN) 再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第14回】『隣人の妻』――同年代女性が共感した意外な痛快シーン ドラマの本筋とは一見関係のないような、さりげないシーンがいつまでも心に残るのが、名作の証拠と筆者は以前より考えているが、これは韓国ドラマでも例外ではない。そんなシーンが満載の作品を今回は紹介してみよう。 本欄では期せずしてケーブル局制作のドラマを紹介することが多くなっているが、それだけ、今のケーブル局ドラマは韓国の現在をストレートに投影しているともいえる。従来の多様な世代が見ることを前提にした家族ドラマ以外の、特定の層の「家族ドラマ」を現在見るにはケーブル局しかないといっていい。要するに自分の希望する番組を見たいのであれば、その選択は当然有料に直結するわけで、この方式を最良の形で実践しているのが韓国のケーブル局だ。 その中でも、’13年の『隣人の妻』(JTBC)はその典型的な作品例といっていい。おそらく、家族ドラマでありながら、親子の日常と同じ比重で、夫婦の性生活が扱われたのは、韓国ドラマの中でこの作品が初めてである。 医師と広告代理店勤務の共働き夫婦には中学生、高校生の2人の子どもがいる。夫婦の性生活にトラブルがあった夜の翌日、朝食は母親が適当に作るが、食事中、子どもたちはそのよそよそしい態度から、親たちの事情にある程度感づいている。これは見方によっては、少し危ない設定である。地上波放送では絶対ありえない設定とドラマ展開ともいえる。 メインストーリーはもう1組の夫婦と、会社、家庭共々、不倫も含めて密接な関係になっていく過程が中心の一種の不倫ドラマだが、2組の夫婦それぞれが親密な間柄になる設定はそんなに珍しくない。この作品はシリアスとコメディがないまぜになっている展開が新鮮で、なかでも見どころは、広告代理店勤務の母親(ヨム・ジョンア)と会社の同僚でもある、40代の独身遊び人OLとの奇妙な友人関係だ。ある時、話があるといって、その友人を夜中に呼び出し、2人でドライブして愚痴を言いながら朝まで飲み明かすシーンは痛快の一言に尽きる。 何とその回の半分近い時間を占めていて、本筋には意味のないこんなシーンが効果的に効いていたためか、ドラマの視聴者は敏感で、平均3%で同局の最高記録となった(因みにケーブルの視聴率を3~4倍すると地上波と同等になるという)。同年代の女性は、例えば、こういったシーンに最も共感したのに違いないと思うのだが、どうだろうか。
2017年07月16日(写真:THE FACT JAPAN) 再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第13回】『私たち、恋してる』ーー多様な家族像のなかで描かれるさりげない場面 ケーブルテレビ局JTBC制作の、アラフォーの男女3組それぞれの家庭の事情を描いた’14年の話題作『私たち、恋してる』だが、以前もこのコラムで述べたように、近年、ケーブル局制作の作品にはアメリカTVドラマの感覚に近い作品が多く、この作品もそうしたテイストを何らかの形で内包していると言えるだろう。内容的にも見所は盛り沢山だが、今回はこの作品を少し違った角度で見てみたい。 映画プロデューサー、キム・ソンス(以下、同様に俳優名)はかつての恋人(チェ・ジョンユン)に再会した時に初めて、別れた後に生まれた娘のことを知る。しかも、元恋人がその娘を子どものいない弟夫婦に託し、新たに結婚して新しい家庭を築いている経緯も知らないままだった。その事実を突きとめたキム・ソンスは、ようやくその娘と親子の対面を果たすが、2人は何ともいえないぎこちない感覚のまま、気まずい時間を過ごす。これは間違いなく韓国ドラマの“情感”の一つといえるものだ。だが、娘も高校生というそんなに子どもでもない年齢で、お互い親子として会うにはふさわしい時期だ。2人の他人行儀な食事が済んだ後、父親は何か欲しいものはないかと娘に問うと、叔父夫婦の家族の中で質素ながら、実子同様の愛情で育てられた娘は欲しい本があるので買ってほしいと言う。快諾した父親は本を買った後、他に欲しいものはないか、服でもどうだと言うと、制服のままの娘は本だけで十分と父親に感謝する。 “小さな喜び”ともいえそうな、どうということのないシーンのように見えるかもしれない。しかし、人生とは毎日の小さな出来事の積み重ねから構築されているもので、こういった細部の描写が韓国ドラマの質を支えているという筆者の持論は今も変わらない。もちろん、韓国ドラマのすべてが傑作なわけではない。だが、ヒットした作品には必ずといっていいほどこういったシーンが含まれていることも確かだ。いや、こういう描写が少なからず入っているところに、韓国ドラマの永遠の未来があると言い換えた方がいいかもしれない。 ドラマの設定以外の、一見本筋とは外れたような、前述のさりげない些細な描写にこそ、韓国ドラマの真実がある。このドラマもその観点から見るとまた違った側面を発見するはずだ。
2017年07月10日再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第12回】家族ドラマの王道を継承する『家族を守れ』ーー女性ヒロインの健気 韓国ドラマの定番ともいえる家族ドラマも見るべき作品が少なくなったといわれて久しいが、その王道の継承ともいえるのが『家族を守れ』(’15年)だ。今回新しいテーマとして選ばれたのは、本当の家族より、疑似家族の方が家族本来の大切さを気付かせてくれるという逆説的なものだが、これが予想以上の効果を上げた(最高視聴率28%強)。 家族ドラマ作りにおいて、その条件を踏み外すことなく新味を入れるのは常に課題としてあるが、今回も、経済環境の格差から想定された設定は登場人物に見事に振り分けられている。つまり、金持ちの娘はわがままで意地の悪い性格、一方、庶民の娘は心優しく、気配りができ、料理上手で、少し人が良すぎるが、親はもちろん男を立て、兄弟及び家族の幸福を誰よりも願っているという対照的な役柄だ。主人公ヘスはその理想的な存在として、自身の不幸な家族関係を恨みもせず、血のつながらない子どもたちと助け合って毎日を生きている。その点では、紛れもない正統韓国ドラマの系譜で、伝統回帰というか、先祖返りの意味も持っているわけだ。 深刻な話の展開の中でも、笑いを誘うところは随所にある。例えば、主人公の医者の父親が、金がないことを妻になじられると「天国に貯金してあるから大丈夫」だというフレーズは傑作で、楽天的なようだが、韓国のラテン系アジア人ともいえる心性をよく表している。また、間抜けな叔父夫婦もコメディ・リリーフとして、ストーリー展開の中の息抜きになり飽きさせない。 さらに、常に主人公と対立する敵役も度を越した手段で最後まで執拗に邪魔をするが、実は悪役のほうが演じるのが難しいといわれていて、この作品も例外ではない。結末はある程度、勧善懲悪と予定調和に終わるが、そうであっても、このドラマを成り立たせているのはやはり主人公ヘスの健気さに尽きる。 かつての『男はつらいよ』の妹・さくらを演じた倍賞千恵子のような女優はこれからの日本の映画、ドラマの中では絶対出てこないだろうが、その残像をこの作品に見ることも可能だ。演じたカン・ビョルは今までは地味な脇役が多かったが、今回の抜擢で、韓国ドラマはまたしても新しい女優ーーヒロインを得た。韓国ドラマ世界の鉱脈はまだ掘り尽くせないようで、その充実ぶりはこの作品でも明らかだ。
2017年07月03日再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第10回】『トロットの恋人』。K-POP出身者にみる俳優の層の厚さについて 最近の韓国ドラマの傾向の一つに、K-POPグループメンバーのドラマ出演がある。主役ではないが、重要な脇役として、配役されることが多く、話題作には必ずその存在がある。ミュージシャンだけでなく、俳優としてもデビューさせるための方法の一つでもあるが、これが必ずしもミスキャストでないのが韓国ドラマの奥深いところだ。今回はまず女優から、有望な新人として、その存在が無視できない例を取り上げてみたい。 まずは何といっても、チョン・ウンジである。A pinkのメンバーの一人でもあるが、『トロットの恋人』(‘14年)を見れば、本当にこれが歌手の演技なのかと疑ったのは筆者だけではないだろう。とにかく、どう考えてもこれは断じて素人芝居ではない。元々女優ではなかったのかと錯覚するほどその演技はこなれていて、庶民的な風貌、人懐っこい雰囲気は日本でいう関西在住の芸人のような味もある。これは実際に見て確認してもらうしかないが、それほど突出した出来といっていい。 これが主役の4人の中の1人で、さらに、もう1人の主役もK-POP出身の男優(チ・ヒョヌ)なのだから、題材がトロット(韓国の演歌のことだが、伝統歌謡ともいわれている)で、舞台が音楽業界という点を差し引いても(実際、この作品はK-POP全盛時代にもかかわらず、「トロット再評価」にもつながったという)、やはり韓国ドラマの俳優陣の層の厚さは驚異的だ。 さらに、歌手に対してこういうのも変な話だが、歌のほうも最初、アイドルシンガー程度と思っていたのだが、ドラマの中で歌うトロットの名曲『人生』(リュ・ゲヨン、’03年)のカバーはあまりのうまさに舌を巻いてしまった。これは一聴すれば誰にでもわかることで、「一芸に秀でる者は多芸に通ず」の典型的な例がここにある。 チョン・ウンジの女優としての評価は、『応答せよ1997』(’12年)で既に証明されていたが、ラブコメ演技満開のこの作品の方が本人生来のキャラクターに合っているように思う。コメディ女優は、他にも、コン・ヒョジン、キム・ソナ、ハン・イェスルと枚挙にいとまがないが、その中でもチョン・ウンジは20代では断トツ、しかも圧倒的な存在で、その意味でも、この『トロットの恋人』は必見だ。
2017年06月19日再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第9回】『パパはスーパースター!?』。韓国ドラマにおける子役の存在について 普通の配役以上に子役が輝くのは、子どもの設定のままでありながら、大人の役柄の特徴を出す時だ。通常、子役とは、主人公の小学生〜中学生前後の役柄が多いが、それとは別に、子役自体が重要な配役の一人になる場合がある。その典型的な最近の好例が『パパはスーパースター!?』(’15年)で、この作品を推奨するのは、単なる家族の中での子どもではなく、ドラマにおいて不可欠な構成要素としての子役だからだ。韓国ドラマの最良の部分がよく出た作品の一つだと思う。 病のため命に限りがあることに気付いたシングルマザーである女医(イ・ユリ)は、残された子どものために、その父親役にするためかつての恋人(イ・ドンゴン)とヨリを戻す決断をする。その事情を知らない元恋人はもちろん、一人娘もその再婚理由を訝しがる。 元恋人は将来を嘱望された野球選手だったが、全盛期を過ぎた今はリハビリコーチとして、何とかチーム内に留まっているものの解雇寸前の不安定な立場にいる。だが、主人公は娘の将来を考えて、自分が丈夫なうちに娘とこの元恋人が家族となるための舞台建てを用意しておこうとする。その行為のすべてがコミカルに、しかも悲しみを秘めて描かれていて、このドラマを貫くトーンの一つだが、10歳になった小生意気な小学生の娘はそう簡単に母親の言う通りにはならないし、初めて会う母の元恋人にもなかなか心を開かない(折に触れてドラマのポイントに出てくる、娘が飼っている愛犬の存在が見逃せない。必見!)。 この10歳という年齢設定は、もう子どもではないが、かといって思春期に至っているわけでもない、小学校後半の自我も芽生えてくる時期にあたる。疑似親子になるのを成立させるためには、おそらくこの年齢設定しかない。 シングルマザーである母親と相手の父親役が30代半ばという設定がここで初めて意味を持ってくる。娘は少し小憎らしい大人びた言動も取るし、いつまでも子どもだと思っているとそれなりに反抗もする。要するに親の言うことを素直に聞かなくなる寸前の年齢だが、実はこの年齢設定がこのドラマのコンセプトには絶対に必要だったわけで、日本ではなかなかいないと思われる娘役の子役(イ・レ)の存在が何といっても絶妙であり、この作品の一番の見どころである。
2017年06月12日再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第8回】『パンチ〜余命6ヶ月の奇跡〜』。現実は創作をはたして模倣するのかーー 一般的に、現実の事件等をヒントにした創作が書かれることは珍しくないが、現実が創作を模倣した事件がないわけではない。例外はいつの時代にでもある。 韓国では、政府や企業間であっても、親族関連による不祥事が後を絶たないのは血縁による共同身内意識が強いことの表れでもあるといわれている。血縁による絆は良くも悪くも切っても切れないものであり、プラスに働くことより、マイナスの要素の方が多い。政治家の退任後に不正が露見しなかったことはほとんどないといっていい。 大企業はもちろん、中小企業もほとんど同族経営だからいうまでもないが、この意識の延長線上に政治もあるのだから、汚職のルーツは血縁に通じるというのにはかなりの説得力がある。その縁を強調してドラマの設定、ストーリーを考えていくとそのまま現実のある事件に似てくるのは無理もない、いや必然なのかもしれない。そう思わせるような作品は実は今までかなり作られている。 例えば、今回の朴槿恵にまつわる「崔順実ゲート」は、表面的にストーリーだけを捉えるなら、従来の韓国ドラマの一部との差はほとんどない。例えば、『パン〜余命6ヶ月の奇跡〜』(’15年)はその典型的な例の一つといえるだろう。 この作品は余命が限られている身でありながら、今までの自らの裏工作を後悔し、その贖罪にすべてを懸ける若き検事の最後の戦いを描いたものだ。離婚した妻の協力を得ながらも、かつての上司へのリベンジには困難が多く、誰が誰の味方か敵かわからないまま話は進行していく。 事件の当事者である、かつての上司??検察総長の暗躍、また、法務長官の身勝手な変節と保身と言い、その深謀の深さをストーリーにうまく織り込んであるだけに、視聴者は誰が首謀者かすぐに察することができるように作られていて、最後は予想を凌駕するような結末を迎える。 ネットユーザーたちによって実際に創作ドラマの結末が左右されるのは韓国の特徴の一つだが、それと同様に、今回国民とマスコミは現実の政治の結末まで動かした。 結果的にこのドラマの中における主人公の立場は、現実(崔順実ゲート)では国民とマスコミが見事に代弁したことになる。創作と現実はまさに紙一重である。
2017年06月05日再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第7回】正統派韓国政治ドラマ『プレジデント』の二転三転の見ごたえ 今回の大統領選は予想通り、文在寅の圧倒的な勝利で終わった。9年ぶりの革新政権の誕生といることで国内外の関心も高く、当選に至るまでの選挙運動は、日本でもかなり詳細に報道されていたが、実際にはもっと生臭い戦いがあったであろうことは容易に想像がつく。大統領選挙はドラマとしてみるなら、「戦争」と同様に、これほど人生を凝縮してあらわす舞台と背景はないからだ。 だが、民主化以降の「大統領選挙」そのものを題材にした韓国ドラマは意外と少なく、大統領候補が主人公で大統領選がストーリー展開そのものになっている作品は、最近では、極論すると『レディ・プレジデント』と『プレジデント』だけと思われる(偶然なのか、2作とも’01年制作で、『レディ〜』はタイトル通り、女性大統領誕生の話で、恋愛ドラマ仕立てでありながら善戦した内容だったが、朴槿恵の退陣という現実があっただけに、今この作品に言及する意味は全くない)。 この大統領選を機に再見する意味があると思うのは、実はこの『プレジデント』である。日本の漫画『イーグル』(かわぐちかいじ作、’98〜’01年)を元にしたものだが、そんな点を全く感じさせないくらい、正統派な韓国政治ドラマの佳作に仕上がっている。アメリカ映画的といってもいい充実度だ。 ドラマは現実とは大きく違い、所属政党から、ある議員が大統領選を目指してそれを勝ち取るまでの道のりが、選挙運動の古典的なイロハを踏襲しながら、個人的な人物が脇を固める設定で描かれる。ナンパの達人でもある色男の作戦参謀、民主化運動で友人である主人公の兄を亡くした実直な選挙本部長(カン・シニルの名演が光る)、使命感に燃える“お局さま”のメディア担当とそれにまつわる微笑ましい恋愛など見所満載。また、特筆すべきは、主役であるチェ・スジョンが実生活でも夫婦であるハ・ヒラとドラマ内で夫婦役を演じたことだ。 さらに、この大統領選の展開に、主人公の隠し子と養女の存在が絡み、複雑なストーリー展開になっていくが、最後まで二転三転する選挙活動の盛衰、そして、意外な結末はちょっと予想できないだろう。筆者は原作漫画を読んでいたにも拘わらず、巧妙な作劇の中で、原作自体のエンディングの意外さを失念していたくらいだが、違う解釈の結末ながら、このドラマの方が主人公の非情さを示すためにも説得力があったのではないか。女性目線で見ても、満足度が高いドラマの一つとして、この作品を推薦しておきたい。
2017年05月29日再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く! 【第6回】『私の人生の春の日』。限られた時間の中の幸福感について 韓国ドラマの特徴の一つは、鑑賞後に感じる幸福感だと筆者は常々思っているが、その典型的な例として挙げるのがこの作品『私の人生の春の日』だ。これもストーリーはとりたてて新しいものではなく、そんなに新しい要素が付け加えられているわけでもない。だが、何を語るというより、どう語るかも映像表現ーードラマの一側面であり、重要な要素だ。 テーマは、別に韓国でなくても多用されている「闘病もの」の一つで、心臓に持病を抱えていた若い女性が献体で生体移植が可能になり、一命をとりとめて平穏な人生を過ごしているところに、ずいぶん歳の違うある会社経営者と知り合う。 実はその女性に移植された心臓は、その男の事故死した妻からのものだった。さらにその女性の婚約者は男の実弟という密接な設定の中、当然、この男女の恋愛がメインストーリーになっていく。興味深いのは、その心臓移植により、どういうわけか女性の中に、男の前妻の感情も同時に移植されたのではと思わせるシーンが効果的に使用されていて、情感の中の既視感(デジャヴ)ともいえる、説明のつかない繊細な印象を見る者に与えたのは予想外の効果だっただろう。 例えば、その女性が男の子を見ると何か胸にこみ上げるものがあり、理由もなく泣いてしまうとか、子どもたちと離れると寂しく思うといった情感を抱くようになると、同時に女性は男に対するもう一つの特別な感情を意識し始める。そして、男も、妻の心臓が女性に移植されていることに気付き、恋愛感情が芽生えた瞬間、同時に女性の体調が悪化し、残された限りある日々を男の家族と共に過ごすことになる。 この静かな時間の流れは、映画はもちろん、韓国ドラマ独特の特異な点の一つだ。 最後は女性がめぐり合った男とその家族との時間に、さらに、自分の人生に感謝して短い生涯を終えることを暗示してこのドラマは終わる。タイトルはその「みじかくも美しく燃え」た日々のことを例えたもので、その時期が私の人生の春の日だったという意味が込められている(ちなみに、女性の役名はボミ、ハングルで「春」という意味である)。 視聴後に残るのは、間違いなく、切ないほどの幸福感だ。
2017年05月22日