クイーン アンド ジャック(Queen&Jack)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月14日(木)に渋谷ヒカリエにて発表された。イタリア南部世界遺産の街、マテーラでの記憶を着想源に今季のクイーンアンドジャックは、イタリア南部世界遺産の街、マテーラで見聞きし、食した記憶が着想源。マテーラには、幾重にも重なるようにして岩山を削って造った洞窟住居や洞窟レストランが点在する。そんな、クラシックさとモダンさが融合した、歴史ある街のユニークで幻想的な光景を、ブランドが得意とするスクール・スタイルにのせていく。なお今季は、新たにデザイナーに就任した富塚尚樹によるファーストコレクションとなる。“制服”をキーワードにコレクションには、“制服”という枠組みの中、スクールをモードへというコンセプトに沿うルックが登場。制服の定番スタイル、セーラー服を特徴づけるセーラーカラーは、ジャケットやロングコートなどにオン。チェック柄が目を引く、袖をレザーで切り替えたロングコートには、袖と同じくレザー素材のセーラーカラーを配した。またもともと軍服を起源としているPコートは、その原点に立ち返るかのようにミリタリー要素を強めているのが特徴。カーキにゴールドのボタン、ウエストには太めのベルトを配し、厳格で重厚な空気感をもたらした。イタリアの高級素材×チェック柄スクール・スタイルに欠かせないチェック柄にも注目したい。ツイードやウールにのせて、コレクションを華やぎをプラスした。たとえば、厚みのあるシャギービーバーの2層構造のスカートにはライトブルーをベースとしたチェック柄をあしらっている。またペプラムを配したかのようなブレザーも展開され、そこへあしらわれたチェック柄がどこかポップささえ感じさせた。ちなみに、チェック柄というと英国が有名だが、今回はイタリア・マテーラが着想源であること、またロロ・ピアーナ(Loro Piana)やカルロ・バルベラ(CARLO BARBERA)といった、メイド・イン・イタリーの高級素材を採用していることから、どこか英国らしいチェック柄とは一味違った印象に仕上げたかったと飯塚は語る。マテーラの石畳をキルティングで表現マテーラで歩いた石畳は、キルティングで表現。淡いブルーのキルティングに花の刺繍が施され、ふんわりとした裾とパフスリーブが印象的なドレスやジャケットとなって展開された。りんごをモチーフにさて、マテーラで食べたものすらもインスピレーション源となった今季のクイーン アンド ジャック。果たしてどのように表現されたのか、それはラストルックを見れば明らかとなる。マテーラのとある日、りんごのデザートを食べたことから、モデルに王林を迎え、りんごをモチーフにしたルックを作り上げたのだ。肩は焼きりんご風に、また首元にはりんごの皮を表すリボンを添え、“りんご尽くし”の1着に仕上げた。
2024年03月17日アキコアオキ(AKIKOAOKI)の2024-25年秋冬コレクションが、東京・国立代々木競技場第一体育館のバックヤードにて発表された。ユニフォームを“美しく着崩す”「服が脱げかけていたり、着崩れていたり、そんな"途中経過"にこそ美しさが宿るのではないか。」そう語るのはデザイナーの青木明子。家に帰って服を脱ぎ、肌を曝け出す──衣服という社会的記号を取り払い、解放されるそんな瞬間から、今季のインスピレーションを得たという。ベースとなるのは、社会を生きる人の“ユニフォーム"であるテーラードジャケットやワイシャツ。だがそのどれもが、セクシュアリティを伴って着崩れ、歪み、はだけている。コンクリート打ちっぱなしの会場の無機質で冷たい印象とは裏腹に、モデルたちが纏うピースは優しく穏やかな佇まいだ。“正統ではない”ドレーピングコレクション全体を通して散見されたのが、優雅なドレーピング。シャツの胸元やパンツの裾にあしらわれたドレープは、サテンやレースといったやわらかな布の動きと対話するように流れ、女性の身体に寄り添ってエレガントな表情を魅せる。これらはシルエットを形作るためにギャザーを寄せたものではなく、人の身体にのせてはじめて立体的になる作りになっているそうで、青木はこれを「正当なドレーピングではない」と表現していた。上下左右、裏表を逆にして表裏や上下が逆になったピースもユニーク。スーツはストライプのライニングをあえて表に出すことで、テーラリングが本来持つソリッドな雰囲気に遊び心をプラス。スラックスやペンシルスカートも同様に、中心をずらして歪ませたり、あるいはウエストを折り返して裏地を見せたりして、フォーマルを再解釈しているのが新鮮だ。官能的なランジェリーディテール艶やかなサテンのスリップドレスや大胆なカッティングを施したセカンドスキンのトップスなど、ランジェリーを思わせるセンシュアルなピースも登場した。肌をシアーに透かす繊細なレースのシャツは、スーツのディテールを配したタックパンツをコーディネートすることで、フェミニンとマニッシュの絶妙なバランスを保っている。シックなモノトーンのパレットカラーパレットは、ホワイト、ブラック、グレーといったシックなモノトーンカラーが中心。無彩であるがゆえに、ドレープが生み出す美しい歪みや異素材が織りなす繊細なニュアンスが、より際立っていたように思う。
2024年03月17日タエ アシダ(TAE ASHIDA)の2024-25年秋冬コレクションが、2024年3月14日(木)に六本木・グランド ハイアット 東京にて発表された。新しい時代へ汽笛の音や鳥のさえずりで幕を開けた今季のタエアシダ。ランウェイ全体を通して、あらゆる女性像にマッチする衣服を紹介し、新しい時代を作り上げていく。まず旅立ちを示唆するかのように、陽気なムードのシャツとグラデーションに染め上げたミディスカートといった軽やかな装いに身を包んだファーストルックが披露された。緩やかなシルエット今季のムードを象徴しているのが、緩やかなスタイリング。柔らかいベロア生地のボリュームスリーブジャケットには軽やかなワイドパンツを合わせ、リラクシングな印象を与えている。落ち着いたグレーのスウェットセットアップやボタンがアクセントになったタイトジャケット、チェック柄のロングコートにおいても、どこか気持ちに余裕のある“ゆとり”を感じられる。ツイード素材はエッジィに都会の喧騒や機械音がミックスされた音楽とともに、タエ アシダらしいツイード素材を用いたルックも散見された。今季はツイード生地に煌めくラメを織り込み、袖のサイドやスカートにフリンジをあしらうことで、エッジィな要素をプラス。鮮烈なレッドのショートジャケットとスカートのセットアップに加え、ブラックラメのロングコートなども登場した。輝きが揺らめくオケージョンドレスショーが終盤に向かうにつれて、段々とドレッシーなオケージョンドレスへ。とりわけ目を惹いたのは、見る角度によって多彩な輝きが揺らめくプリーツスカートだ。光沢のあるレザーを用いた青緑のワンショルダートップスと同じ模様で統一感を持たせつつ、個性的な1着へと昇華させていた。ラストルックには、胸元を大胆にカットし、Vラインに沿って羽根をあしらったブラックドレスがラインナップ。旅を経て成長し、また来季への新たな旅路につく様を表すかのように、今季のランウェイを締めくくった。
2024年03月17日ウィザード(wizzard)の2024-25年秋冬コレクションが、2024年3月14日(木)にオンライン形式で発表された。技巧的な魔術師魔術師という意味を持つウィザードが2024-25年秋冬コレクションのテーマに選んだのが、「クラフト(KRAFT)」。技能や技巧といった意味を持つその言葉は、超自然的な魔術とは対局にあるようにも捉えられるが、その一方で、ほんの少しの差異で成果物に大きな差が生じるということに思いを馳せれば、両者の繊細な空気感は呼応するところがあるのかもしれない。空気を変えるレイヤードスタイル技巧的な魔術師といったところか、ブランドが得意とするレイヤードスタイルが目を惹いた。ファーストルックはオールブラックスタイルで、重厚なレザーとボアを組み合わせたビッグシルエットのアウターを羽織っている。モデルが上着を何気なく脱いで椅子にかけると、その下に着ていたものの軽やかさに気が付く。ボリュームを持たせたアームがまるで空気を含んだように見えるシャツや、動くたびに裾が揺れるアシンメトリーなスカート。同じブラックという色味を共有しながらも、まったく印象の異なるアイテムが一体の中に同居する様は、さながら魔術のようである。そして同時に、計算しつくされたそれは技巧といって良いのだろう。混沌のパッチワーク複数のトップスを繋げたようなパッチワーク風のセーターからは、異なる性質がひとところに集まろうとするカオスが醸し出される。右半身は秋冬らしいイエローブラウンのハイネックセーターかと思えば、左半身は網目がボーダーを織りなすグレーのニット。異素材たちがざっくりとした太目の糸で繋ぎとめられ、さらに、どこかから拝借してきたかのようにフリンジやニットフリルが配されている。この混沌とした状態に心地よさを感じるように、モデルは音楽を聴きながら横たわっている。穏やかなシルエット気取らないリラクシングなシェイプも、今季特筆すべきポイント。“KRAFT”の文字を配したTシャツや、糸でサイドラインを施したトラックジャケットのセットアップなどは、実際の体よりも大きくみせるはずのビッグシルエットを、肩に落ち感を持たせることでその存在感を和らげ、やわらかなムードに昇華している。また、スポーティーな印象のアウター類には、襞襟のように装飾的なディテールやバルーンスリーブを加えたり、裏地にやわらかなファーを採用したりすることで、品や余裕を感じる穏やかな表情にまとめあげた。
2024年03月17日フォトコピュー(PHOTOCOPIEU)の2024-25年秋冬コレクションが、2024年3月14日(木)に渋谷ヒカリエ「ヒカリエホール」にて発表された。日常に潜む美東京ファッションウィークへ初参加となったフォトコピュー。今季の着想源は、北欧デザインの巨匠、アルヴァ・アアルトとその妻アイノだ。女性が働くのに多くの障壁があった時代、アルヴァを献身的に支えるアイノの姿に、デザイナー・竹内美彩は心を打たれたという。これを服に置き換えると、それぞれの労働にあったワークウェアは、人々に寄り添う一種の“オートクチュール”と言えるのではないか。そんな仮説を基に、日常の暮らしの中に埋もれてしまっている美を見つけ出すため、衣服を着る者の職業や性格といった具体的な人物像をイメージした“ペルソナ”に落とし込んだ。「世界のどこかにいる誰かのための服を作る」という竹内の想いをのせた、28体のマネキンを展示するインスタレーションが完成したのである。見過ごされがちなものへの愛竹内が目指したのは、日々の営みで見過ごされてしまったものの可視化。たとえば、ライトベージュのシンプルなセットアップには、透け感のある生地をスカートのように巻き付けたり、腰部分に“まるで枕”のようなフリル付きの布を垂らしている。また、ヴィンテージ花柄をゴブラン織で施したトップスを着た、毎週水曜日カフェにいるエミリアや、膝にポケットが付いたワークパンツを履く美容師のビルギッタなど、ルックから彼女たちの情景が思い浮かぶ。このような広く大衆的な衣服をインスピレーション源に、ハイエンドな素材を用い、絶妙なバランス感のあるルックを作り上げているのが特徴だ。生活感をプラス生活感のある小物も見逃せない。マネキンたちは、仕事用のトートバッグからカメラ型のショルダー、ワークジャケットのチャームが目を惹くポーチ、買い物の紙袋、カフェでもらったビニール袋まで、暮らしに根付いたアクセサリーを身に着けており、その実在するであろう人物をより身近に感じとることができた。生活を彩るベーシックトーンカラーパレットは、ホワイトやブラック、ダークブラウンといった生活に溶け込むベーシックトーンが主流。そこに立体レースが浮かび上がる赤のニットや胸元にシャーリングを施したロングワンピース、パープルに染め上げたデニムのセットアップなどが彩りを与え、洗練された女性像へと昇華させている。
2024年03月17日ヴィルドホワイレン(WILDFRÄULEIN)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月13日(水)、東京・西武渋谷にて発表された。テーマは“MEMENTO MORI”。大切な“友人”に捧げるコレクションデザイナー・ループ志村にとって、最高の顧客であった女性への鎮魂歌となった今季のヴィルドホワイレン。彼女は毎日、彼のアトリエを訪ね、服が完成するまで決して帰ろうとしなかった。そんな彼女との愛しく懐かしい日々を偲ぶかのように、テーマに再生や復活という意味としての“MEMENTO MORI”を選択し、どこか儚く、それでいて力強さも感じられるコレクションを作り上げた。ボリューミーな首元首元に目線が集まるような、ボリューミーな襟やネックチューブ使いが印象的だった今季。中でも異素材を組み合わせたブラックのコートは、襟を極端に大きく設計。その大胆な襟が、目線を上へと向かわせる。さながら、天国にいる大事な人を無意識に見上げさせるようであった。バリエーション豊かなコートまた散見されたのは、様々な素材や形で提案されたコート。高い位置でウエストをマークしたレザー素材のロングコート、背面にベルトを配したシングルブレストコートなど、バリエーションは多岐にわたる。昔の記憶を表現する絵幼い頃から多ジャンルな芸術に囲まれて育ったループ志村は、コレクションアイテムに自らが描いた絵を多く落とし込んでいる。テーマともリンクするように、無意識に何かを再生させようという思いを抱きながら日頃創作活動を行っているという。今回は、一角獣のアートを採用したジャケットを展開。幼い時に絵本で見た一角獣が強く印象に残っていたと語るループ志村が、初めて描いた絵はドラゴンだった。そんな、実在しない、実際に見たこともないような“幻”を一角獣として描き出し、現実に“再生”させた。花柄モチーフ17世紀初頭、バロック美術において、“MEMENTO MORI”を表すモチーフとして花も多く取り上げらた。繊細な草花のジャカードを施した異素材をパッチワークのように組み合わせたコート、花柄ジャケット、花柄のジャカードを施したスカートなどが、そうした背景を思わせた。
2024年03月16日カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)の2024年秋冬コレクションが、東京の渋谷ヒカリエにて、2024年3月13日(水)に発表された。ふれないできたものに向き合う「女性の乳房において愛と飢えが出会う」──精神分析を創始したジークムント・フロイトは、その著書『夢解釈』のなかでこう書いている。ひとりでは生きられない赤子、どうしようもなく助けのないこの存在は、その飢えを乳房で満たす。こうして赤子は、外部から差し伸べられた助け=愛を受け取り、他者と関係を取り結ぶことで、ようやく生きてゆけるようになる──。このストーリーを全面的に受け入れたくて、フロイトに言及したのではない。そうではなく、人との関係を織りなすうえでこうまで特権化されてしまう乳房というものこそ、今季、デザイナーのサカイカナコが、いわゆる「女性性」について考える回転扉となったからだ。「女性性」とはサカイにとって──幾分言いよどみつつも──これまで自分がふれないでおいたもの、であったという。サカイはコレクションを準備するにあたって、歴史家マリリン・ヤーロムの著書『乳房論』を手に取った。古代から現代にいたる乳房の文化をたどる同書において、乳房は赤子を養うものとして、男性に欲望されるものとして、あるいは隠すことを強いられるものとして登場する。つまり、乳房は女性のものであるはずが、つねに他者のもとにあったのだ。そしてそれは、「女性性」にも敷衍できることだろう。ヤーロムは書く──「自分の選択が実は自分本来の希望ではないことに気がつかぬまま、他の人を楽しませるために商品を選んでいる」。サカイが「女性性」を避けてきたのは、それがつねに、自分ならぬ存在によって課せられたものにほかならないからであった。だからこそ今季、サカイが試みたのは、他者の規定ゆえに遠ざけてきたものを自ら選び取り、向き合うこと。自身が得意としてきたクリーンな佇まいを軸とはしつつ、自身が苦手に思い続けてきた「女性的」な要素を取り入れることである。カナコ サカイを代表するアイテムが、洗練された佇まいのテーラリングであったり、すっとクリーンなラインを描くワイドスラックスであったりするならば、今季は対照的に、「女性的」とされてきた要素が数多く見られる。たとえば、コーンブラが鋭く突き出た、コルセットを彷彿とさせるビスチェ。ハート柄のカットアウトを施した、レザーやラメ素材のパンツ。テーラリングのフロントにあしらった、ドレスのような結び目。レースドレスのバックに入れた、大胆なカットアウト。あるいはトレンチコートやジレは、ヘリンボーンという重厚な素材ながら、レースを重ねたような軽やかな効果を醸しだす。もちろん、これまでのカナコ サカイのスタイルとは異なる要素を織り交ぜるなかにも、ブランドが重んじてきたエッセンスはたしかに底流している。たとえば、日本の職人の手仕事に支えられた素材。京都・丹後の民谷螺鈿が手がける「焼箔」の織物は、硫化し、鈍く七色を織りなす銀箔を織り込んだものであり、サカイ自身が得意とするテーラリングのロングコートや、今季を特徴付けるビスチェに用いられた。日本的なモチーフも、サカイが積極的に取り入れてきたものであった。今季はたとえば、ネクタイ、ブーツやミュールに用いた家紋柄・亀甲花菱を挙げることができる。六角形の伝統的な文様を採用しつつも、それをメタリックなきらめきへと昇華することで、ロックなスタッズを彷彿とさせる力強い表情を生みだしていると言えるだろう。あるいは、焼箔が織りなす曖昧なグラデーションも、偶然的な表情を愛でる日本的な感覚のあらわれであったはずだ。ところで、サカイは今季の製作に、草間彌生の身振りを重ねている。よく知られるように草間は、無数の突起物を生やした作品を手がけてきた。それは、自らが育った環境ゆえに刷り込まれた、性は隠すべきものだというファルスへの恐怖心を、ひたすら作品を作ることで克服しようとすることにほかならない。それならばサカイのコレクションとは、自分のものでありながら自分のもののようではなかったものを、自らなぞり直す試みであったのだ。
2024年03月16日フェティコ(FETICO)の2024-25年秋冬ウィメンズコレクションが、2024年3月13日(水)に東京都国立博物館で発表された。永遠に変わらない“お気に入り”を込めてテーマは「Eternal Favorites」。デザイナーの舟山瑛美は日頃から、女性が、歳を重ねることに後ろめたさを感じ、エイジングを理由に自由な感性を失ってしまうことを悲観的に捉えていると語る。いくつになっても少女のように、好きなものを愛でていたい。そんな素直な気持ちを肯定するかのようなテーマを掲げた今季は、舟山が幼少期から好んでいる映画『アダムス・ファミリー』のゴシックな世界観や、アメリカの絵本作家 エドワード・ゴーリーのダークな作品群、ブロードウェイ版『ドラキュラ』やドイツ人アーティストのハンス・ベルメールが手掛けた奇妙な人形などを着想源としている。クロスカットが引き出す女性らしさドレスの胸元やトラウザーのサイド、ボディスーツのスリーブや背面などで散見されたのは、ゴシックな雰囲気を漂わせるクロスカットのディテール。施された十字の切り込みは、わずかに素肌をのぞかせ、秘めたる女性的な色気を解放していた。また、クロスカットをフェミニンンなフラワーモチーフに昇華させたデザインも登場。ニットトップスやドレスにあしらわれていた。ランジェリーライクなコルセット風ビスチェフェティコらしいランジェリーライクなモチーフは、コルセット風のビスチェでお目見え。チュールのベビードールブラウスや、ネグリジェを彷彿とさせるキャミソールドレス、ガーゼのシャーリングドレスなどに取り入れられた。腰回りのラインに沿うようにフィットするコルセット風のピースは、身体のメリハリを強調し、洗練されたスタイルを叶えている。優雅な表情を見せるベルベット素材また今季を象徴する素材として、福井・鯖江産の上質なベルベットがあげられる。肩にフリルをあしらったジャケットや、ビスチェなどあらゆるウェアで採用された。マットな光沢感のベルベット素材は、多彩なスタイルにエレガントな存在感を与える。しなやかな素材感で、ドレスやスカートでは優雅なドレープを生み出しているのも印象的だった。キルティングを用いた大胆なシルエット女性の造形美を浮かび上がらせるタイトなシルエットは今季も健在。しかしその一方で、キルティングの素材使いによる立体的なフォルムや、ジャケットのパワーショルダーなど、大胆なシルエットもひと際目を惹いた。特に注目したいのが、ボディとスカート部分をキルティングで切り替えたドレス。絶妙な光沢感で、歩みを進めるたびに異なる表情を見せていた。モノクロの世界でカラーパレットは、ホワイトやブラックのベーシックな色彩をメインに。ブラウンのジャケットやボルドーのオフショルダーワンピースなども加え、全体的に落ち着いたトーンでまとめられていた。束の間差し込まれたライトブルーのサテン風シャツやデニムスタイルは、モノクロ中心の世界にささやかなアクセントを添えている。英国ブランドとのコラボレーションバッグやハットもまた、コラボレーションアイテムも登場。イギリスのバッグブランド「ザ・ケンブリッジ サッチェル カンパニー(The Cambridge Satchel Company)」とのコラボレーションバッグや、ハットブランド「ミサハラダ(misaharada)」とのバケットハットやボーターハットなどが揃う。
2024年03月16日ジョウタロウ サイトウ(JOTARO SAITO)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月13日(水)、東京・表参道にて発表された。テーマは「日陰のプリズム(PRISM IN THE SHADE)」。陰翳が生む美しさ日本の伝統美とは、薄暗い灯りすなわちその陰翳の美しさから成り立っていると論じた谷崎潤一郎による「陰翳礼讃」。ジョウタロウ サイトウのモノ創りの一片にもあるという「陰翳礼讃」を、今季のテーマ「日陰のプリズム」として再解釈とアレンジを加え、現在におけるキモノのスタイルとして提案する。フラワーシルエットテーマに如実に沿うのは、光に充てられ生まれるドライフラワーのシルエット。どこか薄暗さを思わせるブラックとグレーをメインに彩られた着物に、縞模様と共にまるで影を落としたかのような柄に仕上げている。日陰のプリズム日陰の中でプリズムが生まれたかのような柄も目を惹く。ボカシの技法により、イエローやピンク、ミントといった光が、分散、屈折、全反射、複屈折したかのような様子を表した。なお帯は、ブラックとホワイトでシンプルに、フラワーシルエットをあしらっている。リアルクローズとしてリアルクローズとしてのキモノ・スタイルを提案するジョウタロウ サイトウは、日常着でも着れるよう、着物にフードを合わせたルックを展開。フードを目深に被りランウェイに現れたモデルは、まるで太陽を忍ぶように顔をフードの中に隠していた。光と陰を表す色彩光あるところには陰があり、陰あるところには当然光がある。ブラックやグレー、ネイビー、ボルドーといった落ち着いたカラーと相反するように、ヴィヴィッドな色彩も登場。プリズムボーダーと題したオレンジとブルーのボーダーがイエローの生地の上で映える1着は、鮮やかに周りを照らし、周囲に陰を生むかのような存在感を放っていた。
2024年03月16日ミカゲ シン(MIKAGE SHIN)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月13日(水)、東京・表参道にて発表された。テーマは“GAME CHANGER”。タブーに挑む“GAME CHAMGER”とは、元来スポーツの試合で流れを一瞬にして変えるプレーヤーを指す言葉だ。近年では、従来の市場の流れやルールを破壊し一瞬で主導権を掌握する実業家や企業にも例えられるようになった言葉でもある。今季、“GAME CHANGER”をテーマに選んだミカゲ シンは、見た瞬間に心と頭を瓦解させるような、強い“BUG”、すなわち衝動を与えるコレクションを展開する。テーラリングアイテムに衝撃を“GAME CHANGER”として、今季ブランドの殻を破るべく行ったのが、エレガントなテーラードアイテムの瓦解だ。ブランドが得意とするプリーツや尖った裾などの構造的なパターンワークの表現は継続しつつ、大胆な異素材のドッキングを施し、意外性をもたらした。たとえばロングフリンジを合わせることで、テーラードアイテムが持つ上品や清廉といったイメージに、狡猾性や力強さといった要素を加えている。デニムアイテムには限外な作り込みデニムは、職人の手作業により表面で炎が燃え盛っているかのようなビジュアルに。2枚のデニムを貼り合わせた後、1枚だけ糊を溶かすデニムボンディングオパールの製法により作られたものだ。また強酸性の薬品で5回以上ブリーチしたという手間を惜しまずに作られたデニムも登場し、大胆な表現こそ繊細な職人による技に支えられているというメッセージが感じられる。「瓦解」をストレートに表現熟練の技を持って瓦解を表現したルックもあれば、ストレートに瓦解に挑むルックも見受けられた。騙し絵をあしらったものがその好例。時にシンプルなトップスのプリントとして、はたまたゆったりとしたシルエットのパンツに、秘部を隠すようにして描かれた身体のプリントとして、観る者の目を欺いた。自由に夢遊する素材瓦解に出会い人が“BUG”を起こした時、次に訪れるのは混乱だ。一筋縄に理解できないものと出会い衝撃をくらった時、何も考えられなくなる危なげな瞬間がある。そんな、自由に夢遊するかのような状態を、シアー素材やレース、ラメ糸のハンドカットジャカードといった素材で表現。キラキラと煌めくフリンジのトップス及びスカート、ワンピースに合わせたセーラーカラーのレースにより、瓦解から生まれるハードさと繊細さのギャップを生み出している。
2024年03月16日ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)の2024-2025秋冬コレクションが、2024年3月13日(水)に東京の泉屋博古館東京にて発表された。子供時代の延長線上にあるラグジュアリー「大人とは何か?」ヨウヘイ オオノの2024-25年秋冬コレクションは、この問いに対する1つの答えを提示したといえるだろう。先シーズンの2024年春夏コレクションではデザイナーである大野陽平が、自身の幼少期をある種アヴァンギャルドな表現として昇華していた。落ち着いたムードが漂う今季は、それとは一線を画すように感じられる。しかし当然ながら、子供も大人も、1つの人生の中に存在しているということを忘れてはならない。大人という単語はしばしば、成長や成熟、転じてラグジュアリーといった言葉に結びつけられる。だが大野陽平はブランド開始から10年が経った現在でも、「ラグジュアリーは“遠いもの”だ」と語る。「大人へ向けたクラシック」という挑戦を、あくまでブランドらしく、ばかばかしく捉える。そのフラットなスタンスが、かえって“気品”を生み出しているように思う。気取らないという品性特筆すべきは、気取らないノンシャランな雰囲気を醸す、身体に馴染むようなマテリアルだ。例えば、ファーストルックであるスタンドカラーのストライプシャツドレスや、穏やかな色味のセットアップ、ブラックのワンピースなど。フラノウール素材をはじめ、クラシカルかつ軽やかな生地を多く用いることで、オーセンティックなピースを緩やかで落ち感のある表情に仕立てた。貴婦人のしぐさ“貴婦人のしぐさ”から着想したアイテムは、子どもがパーティーの準備をする大人を見たときのような、“大人の世界”への憧憬と高揚感を思わせる。裾部分の生地を手首にかけることで、バッグと服が一体化したかのように見えるロングコートやナイトドレスなど、構築的でユニークな提案がなされた。垣間見える子ども心エレガントなルックが多い中、子ども心をくすぐられるヨウヘイ オオノらしいアイテムも散見。蝶々結びを立体的に表現したかのようなべストや、スカート部分にワイヤーを入れ、風にひるがえっているようなフォルム仕立てたワンピースなどが並ぶ。さらに、“腕”のモチーフに大ぶりのゴールドチェーンを合わせたハンドバッグなど、健康的な人体をかたどった品々が、コレクションに遊び心を差し込んだ。“へんてこ”な煌めきピアスやグローブの先で煌めくジュエリーは、日高俊による「ヒダカ(HIDAKA)」、村田志文による「エスエスピー(ssp.)」とのトリプルコラボレーションによるもの。河原で拾ってきた石を、メタルやパールの質感に加工し、高価なジュエリーのように用いた。価値の異なるものが1つの中に共存する様は、時に“へんてこ”だが、他の何にも代えられない自分というものの絶対的価値を打ち出しているようにも感じられた。
2024年03月16日タナカダイスケ(tanakadaisuke)の2024-25年秋冬コレクションが2024年3月13日(水)、渋谷ヒカリエ「ヒカリエホール」にて発表された。“おまじない”「おまじない…」の音声と高揚感あふれる音楽が流れ、今季のランウェイが開始。ステージ中央の頭上から星型のスパンコールやラインストーンが降りそそぐ中、ファーストルックとして現れたのが、“まるでドール”のようなピンクのオールインワンだ。ボリューミーなフリルをあしらったショルダーと対照的に、胸元に大胆なカットを入れ、絶妙なバランスを保っている。続くモデルたちも“おまじない”をかけられた後、よりファンシーなムードを纏ってランウェイを闊歩していた。装飾ビーズを散りばめて散見されたのは、パーティーで使用するような“キラキラと煌めく”フリンジやビジューといった装飾を施したピース。その好例となるのが、ビジューからビーズ、スパンコールなど装飾品をプリントした生地を立体的に重ねたキャミソールワンピースだ。シルバーのモールが付いたオーガンジーを折り込むことで、よりデコラティブな装いに仕上げている。酒井タケルとのコラボも国内外で活躍するスタイリスト・酒井タケル(sakaitakeru)とのコラボレーションウェアも見逃せない。"No Romantic"のキーワードのもと、繊細なレースにビジュー刺繡を施したオフショルダートップスとキャミソールワンピの2ピースドレスや、プリーツの裾を8本のベルトで吊り、ポケット2つをプラスした斬新なパンツなどが披露された。淡いカラーパレットカラーパレットは、オフホワイトやグレーのベーシックトーンと、柔らかなピンクをはじめとするペールトーンがメイン。鮮烈なレッドを用いたヨーロピアン風ジャケットや、多彩に煌めくシルバーのマーメイドスカートなどが、コレクションに色濃い印象を与えている。
2024年03月16日ヴィヴィアーノ(VIVIANO)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月12日(火)、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪 貴賓館にて発表された。テーマは“What‘s New?”。愛に溢れるコレクション2023年秋冬コレクションのテーマ、“愛”を彷彿とさせるほどに、今季のコレクションも愛に溢れていたと言えるだろう。そんな今季のファーストルックを飾るのは、燃え盛るような愛を思わせる赤に彩られた、レースのドレス。アシンメトリーの裾は、一部床を擦るほどに長く設定され、時に別れを惜しむ恋人たちのように脚に絡みつき、時に淡白にモデルの歩みに合わせて風を切る。散りばめられたハートモチーフ今シーズン目を見張るのは、そのハートモチーフの多さ。トップスの8割を占めるほど大きなリボンがあしらわれたトップスをはじめ、ぴったりと身体に沿うトップスやタイツ、ファー素材のアウター、スカートなどに用いられ、コレクションに文字通り愛を溢れさせた。チャイナボタンの装飾中国出身、アメリカ育ちというバックグラウンドを持つデザイナー、ヴィヴィアン・ノスーのルーツが感じられるチャイナ服の要素を落とし込んだルックが繰り返し提案されたのも今季の特徴の1つ。一般的にチャイナボタンと総称される紐で結んだボタンが、ファー素材のアウターやデニムジャケットに添えられた。このほか、極端に袖の長いチャイナ風のシアードレスも登場した。シルエットはとことんボリューミーにシルエットは総じてボリューミーだ。ブランドが得意とするチュールをたっぷりと重ねたり、何層ものフリルで構成したりしたドレスやトップスがその好例。そんな中、重ねたチュールとは異なるボリューミーさを感じさせたのが、卵型に膨らんだスカートだ。ふんわりと楕円を描いたスカートは、スタンドカラーのシアーシャツとフロントをリボンで留めたアウターに合わせてコーディネート。スリットの入った裾から覗くレースタイツも印象的であった。赤・黒・ブルーを基調にカラーパレットは、赤、黒、青をメインに構成。時折、ピンクやイエロー、ライトブルーを差し込み、ヴィヴィッドな色彩の中にライトな色合いをプラスした。
2024年03月15日ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月12日(火)、東京・原宿にて発表された。テーマは、「THREE FARMERS ON THEIR WAY TO A DANCE」。写真家アウグスト・ザンダーに誘われて今季のハルノブムラタが着想源としたのが、20世紀ドイツの写真家アウグスト・ザンダーだ。ザンダーは、人物写真を通して同時代の社会を記録するというテーマのもと、作品を手がけている。被写体を克明に捉えたその作品に、表現主義的なところはない。しかし、感情的なものを抑制した簡潔な表現を通して、そこには逆説的に、被写体となった人々の人間味が溢れてくる──それこそ、デザイナーの村田晴信が関心を抱いたところであった。今季のコレクションはしたがって、装飾性を抑制したシンプルな佇まいを基調とはしつつも、そこから柔らかな人間味を立ち上がらせているのだといえる。たとえばダブル仕立てのロングコートは、ほどよくドロップさせたショルダーから、量感のあるファブリックがすっと流れ落ちる。テーラードスーツやキャミソールドレスは、トップのシルエットを抑え、ボトムにのボリュームを持たせることで、動きに合わせていきいきと躍動する表情を生みだしている。こうした簡潔さは、素材の質感を通して、いかにフォルムが生まれるのかを示している。上述のダブルコートには、ハリとドレープの引き立つファブリックを用いることで、ダイナミックなシルエットを際立てる。襟を大ぶりに設定したコートには、膨らみのあるウール素材を採用し、丸みを帯びた佇まいに。あるいは、コンパクトな丈感のハイネックニットにはモヘアのボアを採用しており、切り詰めたフォルムながら、ボアのボリュームによって存在感を獲得しているといえる。さて、ザンダーの作品のなかで村田がとりわけ関心を寄せたのが、今季のテーマとなっている《舞踏会に向かう3人の農夫》であったという。背景に広がるのは農地だろうか。3人の農民が、些か不慣れな佇まいでスーツに身を包んでいる。隣街の舞踏会に向かうのだ。そこには、農村から街へと向かう──先取りして言うのならば、そこに近代文明の「発展」を読み込んでもよい──その姿が、どこか不安な表情のうちに捉えられている。その装いは、襟を大きく取った上述のコートの直接的な着想源となっているという。ところでなぜ、3人の農夫は「不安」なのだろう。ザンダーは街の記録写真において、まずこのような農民を捉え、次に種々の専門職に携わる人々を撮影し、そして最後には街に住まうホームレスにレンズを向けたという。いわば、近代化が孕む光と闇に、等しく視線を注いだのだ。ザンダーはこんな言葉を残している──「わたしたちは、真実を見ることに耐えねばならない。それが都合のいいことであろうとなかろうと、この真実を、共に生きる仲間たちへ、また後世の人々へ伝えなくてはならない」。ザンダーが行った「記録」とは、このように容赦ない真実に目を向け、それをのちに残すことにほかならなかった。では、村田はザンダーの写真に、どのように応えたのであろう。ダウンジャケットやトレンチコートに用いたシルクコットンは、コーティングにより光沢を帯びている。そこに朧げに浮かび上がるのは、掠れたような花の姿だ──なぜなら花とは、ひと時のあいだ美しく咲き、しかしたちどころに萎れるというように、栄華と退廃の両義牲を帯びるものであるのだから。
2024年03月15日ホウガ(HOUGA)の2024-25秋冬コレクションが発表された。テーマは「ささやかな冒険(modest adventure)」。ホウガの国を飛び出して、“ささやかなの冒険”の始まり毎シーズン、“ホウガの国の物語”をインスピレーション源にロマンティックなコレクションを提案しているホウガ。その「エピソード05」となる今季、デザイナー石田萌がテーマとして掲げるのは「ささやかな冒険」だ。アウトドアをロマンティックに再解釈ホウガの国を飛び出して、自分の信じる道をどこまでも求める冒険家。小さな雑草のように強く、永遠にとめられない静かな冒険。――そんなイメージを洋服に落とし込んだという今季は、アウトドアテイストのピースが中心。複数のポケットを配したフィッシャーマンズベストや、ミリタリージャケットといった機能服を、たっぷりのフリルやギャザーでガーリーに再解釈している。たとえば、ウォッシュ加工を施したサファリコートには、たっぷりとギャザーを寄せたシアードレスを合わせて、本来無骨な印象のアウトドアルックをロマンティックに引き寄せているのが印象的。シルバーのラメ糸でシャーリング加工を施したサファリハットもまた、儚げなムードを加速させている。軽やかな肌見せ秋冬コレクションでありながら、どこか軽やかなムードが漂うのは、素肌を覗かせるカッティングによるものだろう。小さなクローバー柄の中綿キルティングコートは、パズルのようにパーツを繋げたり、切り離したりして、シルエットを変化させられる仕様に。スカートはウエストのサイドを切り込んだり、太もも部分を丸くくりぬいたりして、抜け感を演出している。揺らめく曲線ドレスユニークなオリジナル素材が次々登場するのも、生地にこだわるホウガならでは。中でも目を惹いたのが、透け感のあるソフトグリーンの生地に、毛足の長いペールピンクのフロッキープリントとシュリンク加工を施したロングドレス。生地表面の凸凹感とスカートの立体フォルムによって曲線チェックがさらに歪み、水中の中で揺らめいているような独特の表情に。いきいきとしたピンクやグリーンを織り交ぜてカラーリングは、今季のテーマである「ささやかな冒険」にインスパイア。パレットの中心であるカーキやブラック、ライトグレーは、“冒険家の挑戦”、いきいきとしたピンクやグラスグリーンは“小さな草花”、ホワイトは“静かな情熱”を表現したものだという。
2024年03月15日アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(Andreas Kronthaler for Vivienne Westwood)は2024-25年秋冬ウィメンズ&メンズコレクションをフランス・パリにて発表。ルネサンス後期の衣装から着想「THE TAYLOR」を掲げた今季は、ルネサンス後期の衣装からインスパイア。アンドレアス・クロンターラーがミラノで見たという、イタリアの画家ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニの展覧会が創作の出発点となっている。写実的な肖像画を多く手掛けたジョヴァンニ・バッティスタ・モローニの描く厳格でエレガントなアートの数々が、ヴィヴィアン・ウエストウッドとともに制作を行っていた初期の記憶を思い起こさせたという。加えて、かつてヴィヴィアンとともに参照していたジャネット・アーノルドの名著『パターンズ・オブ・ファッション(Patterns of Fashion)』における歴史的なパターンや、友人から譲り受けたスポーツ用プロテクターからもアイディアを繋げていった。メインとなるのはルネサンス後期を思わせるクラシカルなウェア。バルーンスリーブのブラウスや、ジョッパーズパンツ、スタンドカラーのロングコート、コルセットを配したドレスなどが登場している。切り刻んだようなスカートやドレス特徴的なのは、切り刻むようにカットを施したピース。丸みを帯びたスカートは切り込みによってフォルムに躍動が生まれ、生地をふんだんに使ったブラックのドレスは切れ目から肌が見えることでセンシュアルなエッセンスをプラスしている。エレガントなシルエット真っ白なガウンコートやパワーショルダーのブラックドレスなど、生地を贅沢に用いた流れるようなシルエットのアイテムが散見された。また、ドレープも多用されており、エレガントさをプラス。一連のパーツが流れるような曲線を描くフード付きブラウスをはじめ、パンキッシュなチェック柄セットアップのサルエルパンツ、テール付きのシャツジャケットなど、随所に緩やかなカーブが落とし込まれている。劇的でフェティッシュな要素歴史上の衣装をベースとしつつ、アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッドらしいフェティッシュな要素も随所に見て取れる。サイドや背中が大胆に開いたドレスや急な角度をつけた厚底ブーツなど、劇的なディテールを加えたアイテムが揃う。股の部分を覆う1600年代のコッドピースもフェティッシュな要素として機能し、ブラウスやストライプ柄のパンツなどに重ねてボディラインを強調。太ももまでダイナミックに覆うサイハイブーツも目を引いた。
2024年03月15日タナカ(TANAKA)は、2024-25年秋冬コレクションを、東京・代々木第二体育館で発表した。自由の翼を広げて「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服」というコンセプトのもと、ジャパンデニムを核としてコレクションを展開しているタナカ。今季のクリエーションの源となったのは、東京とニューヨークを行き来しているデザイナーのタナカサヨリが常日頃肌で感じているという、“自由を制限されることへの憤り”だ。多種多様な“ウィングモチーフ”全体を通して散見されたのが、自由を象徴する“ウィング”モチーフ。フェザーをたっぷりとあしらったフラッフィーなダッフルコートのファーストルックに始まり、メタリック糸で羽の刺繍を施したシャツや、バックに翼のスタッズを配したデニムジャケット、羽を思わせるペイズリー柄のパンツなど、多種多様なウィングモチーフがコレクションを彩った。“新しいデニム像”を提案「デニムをアートへと昇華させたい。伝統をリスペクトしつつ、従来と全く違うアプローチができたら。」そう語るのは、ディレクターのクボシタアキラ。その言葉通り、ブランドの中心アイテムであるデニムは、全ての型を今季から作り直したそう。生地をつまんで“花”のようにギャザーを寄せたり、端正なプリーツを施したり、あるいは、シアーなオーガンザを重ねて“水面”のような表情を演出したり。様々なアプローチで、“新しいデニム像”を提案した。ビジューやスタッズの煌めき自由や希望を象徴するモチーフなのだろうか、キラキラと輝きを放つピースが数多く登場したのも印象的だ。たとえば、ヴィンテージ感漂うデニムジャケットには、水滴のようなクリスタルモチーフをオン。モデルの歩みとともに揺れ煌めくビジュー付きのフリンジスカートや、スタッズを配したデニムジャケットなどもまた、その煌びやかさを以ってコレクションに高揚感を与える。存在感を放つパッチワークキルト毎シーズン登場する、グラフィックプリントのキルティング地を大胆に纏うルックは今季も健在だ。こちらはアメリカンキルトの残布をパッチワークしてアートピースにしたものだそう。今季は和服のようなシルエットのジャケットや、ボリューミーなアシンメトリースカートに変身して、存在感たっぷりにルックを彩った。ヴィヴィッドなピンク、未来的なシルバーの差し色カラーは、デニム本来の色であるブルーやネイビー、シックなブラック、ホワイトなどベーシックなパレットを中心に、ヴィヴィッドなピンクで差し色をプラス。また、伝統的なデニムに未来的なアプローチを加えるという意味を込めて、フューチャリスティックなシルバーを差し込んでいる。
2024年03月14日ペイデフェ(pays des fées)の2024-25年秋冬ウィメンズコレクションが、2024年3月11日(月)に発表された。無機質でありたいと願う自我今季のテーマは「circle in square」。デザイナーの朝藤りむは、未だ成熟し切っていない身体のなかでうごめく自我の葛藤、つまりは、人間の誰しもが第二次性徴期に抱く複雑な想いをこの“四角の中の丸”という幾何学的なモチーフに込めた。何者にも干渉されず、何者にも汚されない。そう強く望めば望むほど、ざわめく身体と心の輪郭に戸惑ったあの頃の感覚を、ファッションのなかで記号的に蘇らせようとしたのだ。詩人・北園克衛「プラスティック・ポエム」を着想源にまた朝藤は今季のコレクションにあたり、詩人・北園克衛の作風から大きなインスピレーションを受けている。北園は、言葉の意味を排除して、図形や記号などのモチーフから詩を造形する「コンクリート・ポエトリ」で知られるモダニズム系譜の詩人。晩年に近づく1966年には、新聞の切り抜きやクリップなど、身近にある素材を組み合わせて撮影した写真から視覚的に詩を造る「プラスティック・ポエム」を提唱した。今季のペイデフェは、身体に纏う「プラスティック・ポエム」を体現しており、思春期に望んだ“無機質でありたいと願う自分”を、繋ぎ合わせたファブリックによって包み込んでいる。多用された“手”のモチーフ印象的だったのは、“手”のモチーフ。四角い枠線のなか、円形の何かに触れようとする手のデザインのほか、大きな水玉模様の中にも、指で何かをつまもうとする手の様子が描かれていた。このモチーフを取り入れたのは、今季のデザインに取り掛かっていた朝藤が「ふとした時に自分の手をよく見ていた」ことが起因しているという。自身の一部を見つめてしまうという、朝藤の個人的な気づきは、思春期特有の内省的な姿勢にも重なっているのではないだろうか。控えめなシルエット、身体に沿うラインシルエットは、これまでのペイデフェで多く見られた曲線的かつロマンティックなフォルムをあえて抑えるかのようなデザインが散見された。ハイウエストで切り返されたワンピースは、下半身のラインに添うようにして流れ落ち、過度な主張を感じさせない。ダブルブレストコートも直線的なテーラリングによって構成されており、何者でもない本質的な自分自身に寄り添うシルエットとなっている。二面性ディテールダブルブレストのケープコートでは、サイドを大きく切り裂いた大胆なディテールが目を惹いた。加えてコートの背面には、中心一直線にボタンを配し、まるで前身頃のような印象に。“後ろ前”の概念を取り払ったかのような独創的なデザインとして昇華させていた。また、今季のコレクションでは、モデルのほとんどが顔を布で覆い、表情を隠して登場したのも特徴的。「無機質な個体でありたい」と望む意志をひしひしと感じさせる。ベーシックなカラーをまとってカラーパレットは、ブランドとしては珍しく、グレーやネイビー、ホワイトなどのベーシックカラーが中心。時折ブルーやライトブルーのテキスタイルが、コートの裏地、クロップド丈のトップスやショートパンツなどに差し込まれていたが、全体として落ち着いたトーンにまとめられていた。
2024年03月14日チカ キサダ(Chika Kisada)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月11日(月)、東京・青山にて発表された。テーマは「砂漠の花」。頭の中のメモリーを形にピアノの音色と共に現れた少女たちは、トゥシューズのリボンを結び、ニコニコとお喋りをしながら柔軟を始める。その準備の様子は、さながらバレエのレッスン前を思わせる。今季のチカキサダは、「砂漠の花」がテーマ。デザイナーの幾左田千佳は、幼少時のバレエ教室での思い出を皮切りに、これまでの思い出など頭の中のメモリーが表れるようなコレクションを作りたかったという。同時に、絵画の中に登場する象徴的なドレス、主にパーティドレスを着想源に、ブランドが得意とするチュール使いを取り入れ、日常着とダンスを融合したようなルックを提案した。踊りのポーズこれまでもコレクションに多く取り入れてきた動きの残像と共に、今季は“踊りのポーズ”にも着目。背筋が伸びるようなポーズ、とりわけバレエの基本的な動作を始める前の、基礎的なポーズをパターンに取り入れているのが、今季の特徴のひとつだ。そんな中目を惹くのは、片脚で立ち、もう一方の脚を高くのばしたポーズのアラベスクを想起させるような、上に大きく持ち上がったチュールスカート。たっぷりのチュールが使われており、躍動感が感じられる。日常着とダンス日常着とダンスが融合したかのようなルックも登場。たとえばレザージャケットやデニムジャケットに、レオタードを思わせるチュールタイツやトップスを合わせたルックが例として挙げられるだろう。なおデニムジャケットはウエストが絞られ、とことんフェミニンな雰囲気を纏っている。見え隠れするクリノリンブランドが毎シーズン取り入れているクリノリンは、今季も様々な形でお披露目された。19世紀のヨーロッパでは、スカートを膨らませるための下着であったはずのクリノリンをあえて前面に持ってくるようなルックを提案し続けてきたチカキサダであったが、今季もその提案は健在。テーラードの上に、下着としてのシルエットをそのまま形にしたようなクリノリンが重ねられ、クリノリンとしての役割を率直に表した。同時に、従来の使い方が為されたルックが登場したのも印象的であった。ジャージ素材のワンピースには、本来そうあるべき姿として、ワンピースの下にクリノリンを配置。スカートの膨らみ、歩みに合わせて揺れるその動きが、確かにそこにクリノリンの存在を感じさせた。クラシカルな花柄プリントチュールやデニム、レザーは、いたってシンプルな単色使いである一方、コレクションに新鮮な風を吹き込んだのは、鮮やかな絵画に描かれたような花々のプリントだ。そのプリントが用いられたドレスは、スカート部分がクリノリンによりふわりと膨らみ、さらにその下にもスカートが重ねられた2重構造に仕上げられている。
2024年03月14日ハイドサイン(HIDESIGN)の2024-25年秋冬コレクションが発表された。「グレー カラー」をテーマに掲げる最後のシーズン多種多様なワークユニフォームを手掛けるデザイン集団から生まれたハイドサイン。これまで、知的労働者を表す「ホワイトカラー」や肉体労働者を示す「ブルーカラー」に分類されない自由なポジションを意図する「グレー カラー(Gray Collar)」をテーマに、多種多様な環境で働く労働者それぞれに寄り添ったユニフォームを提案してきた。4シーズン目となる今季は、「グレー カラー」をテーマに掲げる最後のシーズン。これまでの3シーズンと同様、どんな体系の人でも着られる機能的なウェアを基盤にしつつ、素材やディテール、フィット感などをブラッシュアップさせたという。“変形できる”ユニフォームファーストルックに登場したのは、“変形できる”パデットジャケット。フードを外せばスタンドカラーに、袖を切り取ればベストにと、解体したり組み立てることで自由にシルエットを変えられるのがユニークだ。続くルックには、工事現場などで用いられるハーネスをソフトに解釈したピースがお目見え。こちらも、ベストにつけたり、外したりしてトランスフォームすることができる。ジップでフィット感を調整ジップを駆使したブルゾンもまた、“変形できる”アイテムの一例だ。ジップを開けたり、閉じたりすることで、着る人の体型に合わせてフィット感を調整することが可能に。ハイドサインが掲げる、“着る人を選ばないユニフォーム”を体現している。カスタマイズできる機能的なポケットブランドを象徴する、多機能ポケット付きのウェアは今季も健在。ペンやメジャーを入れるための工業的な収納はもちろん、タバコやライター、パスポート、新聞を入れられるちょっぴりユニークな専用ポケットまで、ありとあらゆる形のポケットが取り付けられている。今季はそれらを“カスタマイズ”できるのも特徴で、生活や要望に応じて服に機能を追加することができるようになった。ファッションとしてのドローコードワークウェアの機能的なディテールであるドローコードが、デザインの一部として昇華されているのもユニーク。無数のドローコードを走らせたジャケットは、くしゅっと寄ったギャザーが波のように広がり、ワークウェアディテールとは思えないほどエレガントな表情を演出。またパンツも、ドローコードでキュッと絞りを入れることで、フレアパンツのようなビジュアルに。グレーを中心にシルバーを織り交ぜてカラーパレットは今季もグレーを中心に、時折シルバーを差し込んでアクセントをプラス。白に寄ったアイシーグレーや、チャコールグレー、ダークグレーなど、パーツやアイテムごとに濃度の異なるグレーを組み合わせることで、同じトーンでまとめつつも立体的で奥行きのある構造に仕立てている。
2024年03月14日08サーカス(08sircus)の2024-25年秋冬コレクションが、楽天ファッション・ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)期間中の2024年3月11日(月)に発表された。ニュートラルの中で生まれる個性今季の08サーカスは、通常カラーで用いられる“中間”という意味の「ニュートラル」を、ジェンダーやシルエット、スタイリングへと昇華。物事の境界線を曖昧にぼかした多様性の中で、纏う者の個性を引き立てることを目指した。エレガントな佇まいを軸に、抜け感のあるジェンダーレスなコレクションを展開する。自由自在に姿を変えて象徴的なのは、アイテムの型に嵌らない自由なスタイリングを提案するウェア。たとえば、ヴィンテージレザー風にワックス加工されたトレンチコートは、袖下のボタンを外すと“ポンチョ”に姿を変える。自らドレープを生み出す緩やかなフォルムに調節することで、アイデンティティを自在に表現できるのが特徴だ。また、マニッシュなMA-1とフェミニンなカバーオールの2面性を持つリバーシブルアウターも登場した。時代の垣根を超えた、1980年代を彷彿とさせるショート丈ブルゾンも印象的。光沢感のあるサテン生地の中には中綿を詰め、見頃から袖にかけて丸みのある“ゆったりとした”着心地と温かさを叶えながら、首元にあしらわれたドローストリングで襟の立て折りをアレンジできる。そのほか、トラックラインをファスナーに置き換えたパンツなど、個性を引き出すアイテムが散見された。染めのディテールブランドが得意とする製品染めのディテールも見逃せない。水色から濃青までのグラデーションデニムや、イエローやライトブルーなどパステルカラーでスプレー染めしたモヘアニットのカーディガン、京都の職人による抜染染めを施した“インクが飛び散ったような”唯一無二の柄ワンピースが披露された。ニュートラルカラーがベースカラーパレットは、アイコニックなブラックをはじめ、柔らかなベージュやクリーム、洗練された印象のアッシュカーキといったニュートラルカラーを採用。時折、鮮やかなグリーンの裾が千切れたようなニットベストや、鮮烈な赤のワンピースなどが差し込まれ、コレクション全体にアクセントを加えていた。
2024年03月14日ニナ リッチ(NINA RICCI)は、2024-25年秋冬ウィメンズコレクションをフランス・パリで発表した。視線の集まるグラマラスな装い無数のパパラッチのフラッシュから幕を開けた今季は、ハリス・リードが手掛ける3度目のシーズン。女優のスージー・パーカーが1962年のモンテーニュ通りに佇む様子をリチャード・アヴェドンが撮影した写真からインスピレーションを得た。クラシックなツイードのドレスをまとったスージー・パーカーの自信に満ちあふれた姿に見出した、気負わないグラマラスさを探求したという。展開されたのは、注目の的にふさわしいゴージャスなオーラのウェアだ。シースルーレースのボディスーツにふんわりとしたファーのガウンを合わせたルックをはじめ、大きなパフスリーブを配したミニドレスと大きなハットのコーディネートなど、きらびやかな存在感を放つウェアが揃う。リボンをフィーチャー象徴的に用いられていたのはリボンモチーフ。コンパクトなショートジャケットのフロントやドレスのバック、もしくはタキシードスタイルのタイに、アイキャッチなモチーフとして立体的なリボンが装飾された。また、頭にダイナミックなヘッドウェアとしてリボンを装飾したルックや、極端に大きなリボンをフロントに配したスカルプチャーのようなドレスも登場している。ボアで大きなリボンを表現したハウンドトゥースツイードのコートは、柔らかな質感を生かしたリュクスなボリュームが魅力。バックスタイルには、結んだリボンの端がエレガントなトレーンとして配されている。流れるようにしなやかな素材使いしなやかな素材使いも特徴的だ。直線的なシルエットのロングドレスや、幾何学模様を配したアシンメトリーのシルクドレス、鮮やかなブルーの花柄ロングワンピースはいずれも、柔らかく流れるような生地が用いられており、軽快な佇まいを演出する。優雅にたなびくストールも、軽やかさを後押ししていた。多彩なシースルールックまた、シフォンやレースといったシアーな生地を使ったアイテムも散見された。繊細な黒のシースルーブラウスには、レザーのウエストパーツとマットなスカートを組み合わせ、緩急をプラス。緩やかに仕立てたパープルのドレスは透け感がセンシュアルなエッセンスを加えていた一方で、鮮烈な赤のボディスーツは身体にすっと馴染むような生き生きとしたフィット感を生み出していた。
2024年03月14日ミュウミュウは、3月5日に2024年秋冬コレクションのショーをパリにて発表しました。Courtesy of Miu Miu子どもから大人へと移り変わる「服」という言葉。ミウッチャ・プラダによるミュウミュウ2024年秋冬コレクションのインスピレーション源は、人生のステージ、 そして性格や世界の移り変わりと共に変化する服の数々です。Courtesy of Miu Miu同時に使われる複数の要素は、人生のさまざまな瞬間を表現しています。1つの経験に複数の思い出があるように、1枚の服にはさまざまな要素が共存しているのです。クロップドスリーブやラウンドトゥシューズといった幼い頃に着た服を想起させるアイテムは、意図的に少女のようなバランスでコーディネートし、子ども時代の思い出を表現しています。逆に大人らしさは、手袋、ハンドバッグ、ブローチ、かっちりとした仕立ての服、リトルブラックドレスといった格式と上品さの象徴を通して表現されています。Courtesy of Miu Miu子ども時代の特徴とも言える衝動性や反抗心を表現するのは、相反する2つのアイテムの自由な組み合わせです。パジャマにアウターウエア、かっちりとしたラインにゆるりとしたライン、正統と異端の組み合わせが登場しました。服は、私たちに昔を思い出させると同時に、前進するきっかけにもなります。Courtesy of Miu Miuこうした相反する要素と考えが、異なる素材や仕立てに表現されています。2枚の異なる素材の生地を貼り合わせて1枚生地にしたり、全く性質の異なるアイテムを組み合わせたりする工夫が随所に見られます。シルクとカシミヤのセーターやカーディガン、ポプリン生地のスカートに合わせたニット、高価なファーに見えるよう加工したシアリングなどがその一例です。シワ加工を施したシルクのドレスは、コットンジャージーのシースドレスと一体となり、素材の印象や質感は残しつつ、ボリューム感を控えめに仕上げられています。Courtesy of Miu Miuこのコレクションが服という言葉を通して人生の特徴を再考するように、私たちの文字通りのボキャブラリーを読み直すことができます。それは、「女の子らしさ」という言葉の意味を再定義できるかもしれません。以前は、特定の年齢の、特定の性別に用いられる名詞だったかもしれませんが、今は反抗心という強さ、自由な精神、そしてその人ならではの個性を表す万国共通の慣用句として用いられています。ミュウミュウが最初から持ち合わせている性質だと思われていますが、一つの特徴としてではなく、広範な意味で、気質の根本的要素として捉えるべきでしょう。こうした考えが、ランウェイに登場するそれぞれのモデルにも反映されています。彼らが表現するのは、絶えず変化し続けるミュウミュウの外的人格の一つなのです。Courtesy of Miu Miuクリスティン・スコット・トーマス、ダラ・アレン、エセル・ケイン、ギヨーム・ディオップ、ルーサー・フォード、エンジェル・ヘイズ、キン・フリアン、リトル・シムズ、ジャスミン・サヴォイ・ブラウン、そしてミュウミュウのショートフィルムプロジェクト「女性たちの物語」にも出演したアンヘラ・モリーナがランウェイを歩きました。Courtesy of Miu MiuCourtesy of Miu Miu会場のイエナ宮に映し出されたのは、ベルギー系アメリカ人アーティストであるセシル・B・エヴァンスが手掛けたビデオインスタレーション。芸術は人々の会話をより豊かに広げるツールである、とエヴァンスは考えます。コレクションから独立して制作されたインスタレーションは、芸術の中に残る記憶に、服が共鳴しているかのようでした。これは、私たちが生きる瞬間が形作る万国共通の言語であり、それぞれの経験とも呼応し合います。Courtesy of Miu MiuCourtesy of Miu Miu#MiuMiuFW24#MiuMiu@miumiu
2024年03月11日ユミカツラ(Yumi Katsura)の2024-25年秋冬コレクションが2024年3月5日(火)、恵比寿ガーデンプレイス「ザ・ガーデンホール」にて発表された。デザイナー・桂由美の60年間の軌跡日本の結婚式およびブライダル業界を牽引し続けるデザイナー・桂由美。今季は、ユミカツラを象徴する花・バラとともに、2025年に60周年を迎える桂由美のデザイナー活動における軌跡をたどるコレクションを展開する。“Rose Yumi Story”のテーマ通り、ウェディングドレスをはじめ、ヘッドピースやブーケなど、ランウェイの随所にバラが散りばめられている。気品にあふれる白バラ「ローズ・ユミ」1998年、京成バラ園で咲いた新種の白バラに、“花嫁のためのバラ”として名付けられた「ローズ・ユミ」。そんな気品とロマンチックさを兼ね備えた純白のバラ「ローズ・ユミ」のコサージュを頭につけたウェディングドレスのファーストルックで幕を上げた。アイコニックな「ユミライン」続いて目を惹くのは、ユミカツラの代名詞ともいえるシルエット「ユミライン」のウェディングドレス。着物のお引きずりに着想した、女性の体躯を引き立てる美シルエットはそのままに、総レースやオーガンジーなど軽やかな素材を取り入れたエレガントなスレンダードレスが登場した。多彩なローズドレス今季のムードを最も体現しているのが、ローズドレスの数々だ。ラメ糸でバラの刺繍を施したサテンドレスから、小さなバラモチーフを不規則にあしらったマーメイドドレス、バラ柄レースが煌めくケープドレス、ドレス全身に立体的なバラを縫い付けたミニドレスまで、上品かつエレガントなウェディングドレスがお目見えする。“バラが咲き誇る”カラードレスカラードレスのバラモチーフも見逃せない。フロントとバックに“バラの花びらが浮き上がって見える”大きな立体モチーフ、胸元には1枚の花びらのようにデコラティブなハートシェイプラインを仕立てた淡いローズカラーのドレスや、ドレスの肩から背中、前面から背面にかけてバラの花々をリースのように施したブラックドレスなどが散見された。新たな和装スタイルまた、ユミカツラの新和装スタイルも印象的。縁起のよい伝統的な吉祥模様の白無垢ながら、斬新なヘッドピースを身に着けることで、モダンなムードを演出している。牡丹や蘭・菊といった華やかな佇まいの色打掛に加え、ブルーの軽やかな生地に白いバラのカットワークを盛り込んだ、“洋レース風”の打掛も存在感を放っていた。軽やかなアフタヌーンドレスも“着回しを楽しめる”エレガンスウェアを製作するエフ(ykF)は、日常でも気軽に着られるスタイリングを提案。淡いサーモンピンクのシルク素材を用いたアフタヌーンドレスや、ブラックのライン使いが新鮮なワンピース、ダークグレーのレーススカートが揃う。メンズフォーマルの多様化なお桂由美は、今後の展望として「多彩なデザインを揃える花嫁のドレスに合わせて、メンズフォーマルの多様化にも力を入れていきたい」と語った。ランウェイでは、スタイリッシュ感のあるアースカラーや、カラードレスにマッチするライトカラーのタキシードを中心に、イエローやブラウンのピークドラペルスーツといった、豊富なカラーリングのフォーマルウェアが披露された。
2024年03月08日シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)の2024-25年秋冬コレクションが、2024年3月5日(火)に東京プリンスホテル・ガーデンプールにて発表された。ご馳走に見立てた“冬”を堪能「DIVE INTO WINTER FEAST」をタイトルに掲げた今季のシンヤコヅカ。「みなさんのご馳走は何でしょうか」という一文から始まるインビテーションには、デザイナーの小塚信哉がパリを散歩中、ふと「晩餐」という言葉を思い浮かべたこと、その後立ち寄った本屋の陳列でレオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》が描かれた冊子を見かけたことなどが記されていた。屋外プールをショー会場に「偶然は大切にしたい」と語る小塚はそこからリサーチを重ね、“ご馳走”という言葉に辿り着く。また、最近プール通いを再開したという小塚の私的な背景や、「自分が生まれた季節が1番落ち着くのではないか」という持論から、会場には屋外のプールが選ばれ、小塚自身が生まれた“冬”を存分に感じさせるルックの数々が登場。“冬”や“プール”という小塚の個人的なご馳走を振る舞うコレクションとなった。冬を象徴するノルディック柄で北欧の伝統的なノルディック柄は、ホワイトやネイビーのカラーを中心に展開。あたたかみのある冬の定番柄を、アイコニックなバギーパンツ、フーディーやロングコートなどに落とし込むことで、今季のシンヤコヅカを代表するモチーフへと昇華させた。またアーガイル模様で編み込んだニットパンツは、ウェットスーツのように身体へフィットするタイトシルエットで登場。寒さを想起させるパターンをオリジナルのシルエットで解釈していた。極寒にきらめく幻想的な光沢ファブリックでは、繊細にきらめく光沢をまとったオーガンジー素材がアイキャッチ。ゆったりとしたポンチョ型のアウターに落とし込まれ、光の当たり具合によって毎秒異なる輝きを見せる。クリアな素材感のため、中に着ているウェアが透けて見えるのも特徴。全身を水のヴェールで包まれているかのような幻想的な雰囲気を演出している。寒色のなかにきらめく装飾をカラーパレットは、前述したノルディック柄に採用されたようなネイビーやブルー、ホワイト、そしてブラックなどの寒色が中心。冬の定番アイテムであるダッフルコートをはじめとし、レザージャケット、エプロン状の巻きスカートなどにはゴールドに輝く装飾や、絵画、動物、冬景色などをモチーフにした刺繍や缶バッチをあしらい、ベーシックなテキスタイルに遊び心のあるアクセントを添えていた。「潜水」アイテムを彷彿とさせるアタッチドフードなどまた、テーマにある“DIVE”を体現するキャッチーなアイテムにも注目。豊富なカラーと柄で登場したアタッチドフードは、首元を包み込むハイネックのジップアップを採用。ダイビングの防寒対策として重宝される“ダイビングフード”を彷彿とさせた。さらに、ダイビングの際に履く“フィン”をモチーフにした足ひれ付きのシューズは、まるで地面を優雅に泳いでいるかのようなしなやかな表情を見せていた。
2024年03月08日シャネルは、3月5日22時(日本時間)に2024/25年秋冬 プレタポルテ コレクションを発表しました。©CHANEL「ドーヴィルはメゾンにとって、すべてがはじまった場所です。1912年、ガブリエル シャネルの帽子店がそこで誕生し、その後まもなくして、明確なヴィジョンを持った先鋭的なスタイルの服が生みだされるようになりました。彼女にとって、すべてはこの場所からはじまったのです。この物語は私にとっても、非常に重要な意味を持つものです」とヴィルジニー ヴィアール(Virginie Viard)は打ち明けます。競馬場でも海辺でも、カードゲームをするテーブルやレストランや宮殿、有名な遊歩道「レ プランシュ」でも、すべてはエレガンスと自分を演出するためにあるように思えてくる―それがドーヴィルです。©CHANEL「今回のコレクションでは、ドーヴィルの遊歩道を再現しました」とヴィルジニー ヴィアールは説明します。「巨大なスクリーンには、夜明けから夕暮れまで、長くロマンティックなシルエットが光のなかを闊歩する姿が映し出されます」。謎めいた雰囲気に包まれながら、浜辺を歩くモデルたち。1920 年代と70 年代が交差し、絡み合います。©CHANELヴィルジニー ヴィアールが手がけた、アンドロジナスでシネマティックな2024/25年秋冬 プレタポルテコレクションは、ガブリエル シャネルのワードローブからフェミニニティを、海辺で過ごす冬という繊細なエレガンスからマスキュリニティを引き出しています。ブロードショルダーのピーコートや、ドレッシングガウン風のベルト付きロングコートは、ボックスプリーツのスカートや、キュロット、クロップドパンツのツイードスーツ、そしてドロップフロントのパンツ、後ろにタブの付いたパンツと合わせて羽織ります。©CHANELドーヴィルの風景をモチーフにした厚手のセーラー風セーターやニットと交互に登場するのはセーラーカラーのシルクブラウスや、ヘリンボーン柄、フラウンスがあしらわれたローカットトップス、ジャンプスーツやネグリジェ。その優美さからは、穏やかな波が砕け、柔らかな風が吹く情景が浮かび上がってきます。©CHANELピンク、モーブ、オレンジ、ペールブルーなどの鮮やかな色合いやパステル調のカラーは、絶え間なく変化するドーヴィルの空の色に由来し、ブラウンやゴールドのラメがあしらわれています。35 ミリフィルムと映画のチケットのプリントパターンは、この町と第七芸術とのつながり―毎年開催されているアメリカ映画祭や、クロード ルルーシュ監督の『男と女』―にリンクしています。ショーのオープニングを飾ったイネス&ヴィノードのフィルムは、この映画にトリビュートを捧げたものです。©CHANEL「デヴィッド ボウイのシルエットや、ガブリエル シャネルの大切な友人だったアヌーク エーメのような映画スターが、砂の上を歩く姿には人を惹きつけるものあります。今回のコレクションは、そうした親しみのある人たちへのオマージュなのです」©CHANELアイコニックなバッグの数々が至るところに登場しますが、それはパステルカラーのつば広の帽子、カラフルなシルクスカーフ、ヒールのあるニーハイブーツや『男と女』でアヌーク エーメが着ていたコートを彷彿とさせるシープスキンのサイハイブーツも同様です。「今回のコレクションは、素材や色、ボリュームを重ね合わせた、とても温かみのあるものになりました。そしてドーヴィルという、ガブリエル シャネルの運命が永久に変わった伝説の場所へのトリビュートでもあるのです」©CHANEL©CHANEL©CHANEL©CHANEL#CHANELFallWinter
2024年03月08日トッズ(TOD’S)の2024-25年秋冬メンズ&ウィメンズコレクションが、イタリア・ミラノで発表された。マッテオ・タンブリーニによる初のコレクション新クリエイティブディレクターのマッテオ・タンブリーニによるデビューコレクションとなる今季。これまでにも現代アートパビリオンやスカラ座アンサルド工房などミラノを象徴する場所でショーを開催してきたトッズだが、今回はダルセナの歴史ある路面電車の車庫をコレクションの舞台に選んだ。“二面的な要素”を持つ洋服トッズの新章を明らかにすべく、マッテオ・タンブリーニが打ち出したのは“二面的な要素”を併せ持つルック。トッズを象徴する、タイムレスでエレガントな佇まいは継続しつつ、フォーマルとインフォーマル、都市生活と余暇、伝統と革新が共存するようなスタイルを展開した。ベーシックにひと捻りをベースとなるのは、端正なテーラードやニットなどリアルクローズに根差したベーシックなアイテム。だが、そこにひと捻り加えるのが今季のトッズ流だ。たとえばトラディショナルなトレンチコートは、落ち感のあるゆったりとしたシルエットとレザー素材でモダンにアップデート。本来フォーマルな印象のシガレットパンツは丈を伸ばし、大きくターンアップすることで、リラクシングなムードに引き寄せている。レイヤードの遊びまた、レイヤードによる遊びも散見された。クラシックなオックスフォードシャツは、2枚重ねることで襟元を強調。カーディガンもまた、丈の長さやボタンの位置が違うものを組み合わせて、新たなアンサンブルを提案しているのが新鮮だ。デザインを際立たせるナチュラルな色使いカラーパレットは、ブラック、ブラウン、ベージュ、グレーといったナチュラルなパレットが中心。トッズらしい落ち着いたトーンのカラーリングが、クラフツマンシップを活かした手仕事による仕上げと、洗練されたデザインを引き立てる。“フリンジが揺れる”モカシンシューズなどフットウェアの新境地として、アイコニックなモカシンシューズ「ゴンミーニ」のヨーキーバージョンがお目見え。歩くたびに細いレザーのフリンジが揺れ、スタイリングに躍動的なリズムをもたらす。また、極細のメタルバンドを配した「ゴンミーニ」や「ローファー」も、今季を象徴するアイテムとして足元を彩っている。
2024年03月07日スポーツマックス(SPORTMAX)の2024-25年秋冬コレクションがイタリア・ミラノで発表された。美しくも退廃的な歌姫にインスパイア今季のスポーツマックスは、60年代のアイコンであるドイツ人歌手・ニコと、彼女が残したアルバム『カメラ・オブスキュラ(Camera Obscura)』にインスパイア。すらりと伸びた手足、謎めいたまなざし、飄々とした態度…ドラッグ&ロックンロールの寵児と呼ばれたニコの美しくも退廃的な雰囲気を、ダークな世界観のコレクションに落とし込んだ。80年代のディーヴァにも思いを馳せてニコと同様にパワフルな息吹を与えるのは、グレース・ジョーンズ、デビー・ハリー、アニー・レノックス、スージー・スーなどの80年代の伝説的なディーヴァたち。シャツやドレス、ジャケット、ニットには、アルバムのジャケットから着想を得たプリントをあしらい、これらのカリスマティックな音楽界のアイコンたちを讃えている。“コルセット”着想の彫刻的なシルエット全体を通して印象的だったのは、コルセットの世界観からヒントを得たスタイル。幾何学的なカッティングを施したビスチェスタイルのドレスや、ベルトのレイヤリングによってショルダーやウエストを強調したジャケットなど、ボディをしっかりと引き立てる彫刻的なシルエットが散見された。マニッシュなテーラードブレザーやレザーコートも、フォーカスはウエストラインにシフトして、あくまでレディな着こなしとしているのが新鮮だ。近未来的な素材使いSF映画の金字塔『ブレードランナー』を意識したという、フューチャリスティックな素材使いにも注目。たとえばボディコンシャスなレッドドレスには、PVCの透明なフリンジをレイヤリングし、グラマラスなひねりをプラスしているのがポイント。このほかにも、ハイテク素材とテーラリング、パテント仕上げなどの組み合わせを通して、未来に目を向けた過去の世界に波及していいる。官能性を引き立てる鮮烈な赤カラーは、ブラックやネイビーブルー、グレーメランジュといったシックなパレットを中心に、ロイヤルブルー、ヌードを差し込んで。中でも、ダークな色彩の中に投じられた鮮烈なレッドのアクセントが、ニコのエッジーで官能的なムードを際立てる。コレクションを彩るアクセサリーアクセサリーには、かっちりとした構造の新作バケツバッグがお目見え。パテントレザーにメタルハンドルを合わせたボディを開くと、ヴィンテージスタイルのミラーが現れる仕様となっている。シューズはラウンドトゥのメリージェーンがやわらかな雰囲気をプラスする一方で、パンツの裾から顔を覗かせるカウボーイブーツがクラシックなムードを演出した。
2024年03月07日マックスマーラがミラノで、2024年秋冬コレクションを発表しました。Courtesy of Max Maraふっくらとした唇の膨らみ、首のくびれ、まつげ・・・。コレットの作品にはこうした要素が多く登場します。繊細な感情の陰影のひとつひとつが、正確かつ率直に描かれる彼女の官能的な散文は、深い情熱を暗示し、心の琴線に触れます。コレットはその特有の率直さで、「愛は名誉ある感情なんかではない」と宣言しました。Courtesy of Max Mara洗練され、知的で、性的に自由であった女性、コレットは、作家、ジャーナリスト、脚本家、時にはビューティシャン、そして大胆なミュージックホールのパフォーマーとして多彩な才能を発揮しました。彼女をインスピレーションソースとしてマックスマーラが描くのは、人生を自らコントロールできる完璧な女性像。彼女が持つベル・エポックのエレガンスと、ドゥミ・モンドのグラマラスな魅力の中に、内に秘めた官能的な女性の一面を垣間見ることができます。Courtesy of Max Maraモダンで余分なものは一切なく、それでいて深い感動を呼ぶデザイン。文学界で最も知られた女性がコレットであるならば、マックスマーラはまさにデザイン界におけるコレットのような存在だと言えるでしょう。そして、ブローニュの森 のベル・エポックの美女たちの姿を捉えたきめの粗いモノクロ写真が、魂のこもったスマートなルックを生み出します。Courtesy of Max Mara1910年代の日本の影響を受けた卵形シルエットから着想を得た新しいコートは、キモノスリーブを取り入れ、ボンバージャケットのように背中でブラウジングしてふくらみを持たせたシルエットで登場します。コンパクトなカシミアのメルトンコートでは、手触りの良いダブルフェイスのキャメルとアルパカが、ストリートスマートなラグジュアリーの最終形として提案されます。Courtesy of Max Maraニットやフェルトに施されたピンクの縁取りは、コートとカーディガンの中間のような、アウターウエアにおける新鮮なアプローチを際立たせます。ロングでもショートでも幅広のニットバンドと帯のような細いストラップベルトでウエストを協調したスタイルや、柔らかなカーフスキンのバッグ、スタイリッシュなヒンジとクラスプが印象的な柔らかなカーフスキンのバッグなどが登場します。かつてコレットが、「ワインの鑑定家がいるように、ブルーの鑑定家もいるの」と言ったように、マックスマーラは、深みのあるネイビーと、漆黒やスモーキーグレーとのコンビネーションを提案します。Courtesy of Max Maraコレットは、しばしば男性のような恰好をしていました。彼女の小説に登場するハンサムなアンチヒーロー、シェリは、権威あるオフィサーコート、ピーコート、そしてマックスマーラの得意とするパワージャケットなど、非の打ち所のない完璧なクラシックスタイルのお手本です。ペニョワール、パジャマ、パウダー・・・。濃密に遮られたブドワール(婦人の私室)やバックステージの特別席で繰り広げられるシーンは、キャミソール、テディ、スリップドレスにインスピレーションを与えます。また、フランネルやドレープ、そしてオープンステッチを施したツイードなどは、マックスマーラの都会的な鎧とは対照をなす誘惑的なデザインに仕上がっています。ゆるやかにうねるフリルは、大胆なブロードクロスのスカートやチュニックドレスに新しいフェミニニティをもたらします。フランネルや豪華なミッドナイトブルーのベルベットを使用した、ボリュームたっぷりのパジャマやローブ・ド・シャンブルは、昼夜を問わず新たな雰囲気を醸し出し、日が暮れるとブラックやブルーのクリスタルの輝きがその厳格な幾何学模様を際立たせます。Courtesy of Max MaraCourtesy of Max MaraCourtesy of Max MaraCourtesy of Max MaraCourtesy of Max Mara#MaxMara#MaxMarafw24#MFWマックスマーラ ジャパンTEL: 0120-030-535
2024年03月07日イザベル マラン(ISABEL MARANT)は、2024-25年秋冬コレクションをフランス・パリで発表した。気ままな旅や砂漠の地平線を思わせる装い今季は、気ままな旅や広大な平原、砂漠の地平線を彷彿させる色彩や素材を用いてエネルギッシュなスタイルを提案。特に、フリンジを配したウェアが散見されている。総柄のワンピースに重ねたベストや、ゆったりとしたスエードのシャツ、バッグに配されたフリンジが、装いに躍動感をもたらしている。スタッズとフリンジを組み合わせた、華やかなレザーシャツも目を引いた。ざっくりと羽織るアウターざっくりと羽織る、旅人のようなアウターも印象的だ。重ね着の1番上に着るマントのようなアウターや、立体感のあるパフィージャケット、オーバーシルエットのロングコートなどが展開されている。レザーブルゾンは、袖に分量を持たせることで曲線的なシルエットに。ミニスカートやストレートシルエットのパンツなど、すっきりとしたボトムスと組み合わせたアクティブなスタイルで披露された。光沢を放つウェア存在感を放つのは、光沢感を備えたウェア。真っ赤なコーティングレザーのコートは光を受けて繊細にきらめき、鮮やかさをより一層際立たせる。また、コンパクトなミニワンピースに合わせたメタリックなロングコート、もしくはタンクトップやシャツに合わせた艶やかなパンツなど、デイリーのスタイリングに特別なアクセントを加えるアイテムとして提示されている。アースカラーをメインに、赤・白の差し色カラーパレットは、太陽の光を浴びたようなスエードやウールの織りなすブラウンや、ミリタリー調のカーキといったアースカラーがメイン。印象的に差し込まれるネオンレッドのニットやボトムス、アウターがフレッシュなアクセントを加える一方で、アイボリーのアウターやホワイトのニットが柔らかさをもたらしていた。
2024年03月07日