CELINE(セリーヌ)が、パリで9月27日、2020年サマーコレクションを発表した。courtesy of CELINE
2019年09月30日アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(Andreas Kronthaler for Vivienne Westwood)が、パリで2020年春夏コレクションを発表した。
2019年09月30日オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)が9月26日、パリで2020年春夏ウィメンズコレクションを発表した。
2019年09月30日クリエイティブ・ディレクター、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)によるロエベ(LOEWE)が9月27日、パリのユネスコ世界遺産センター(Maison de L’UNESCO)で2020年春夏ウィメンズコレクションを発表した。Copyright Manuel Braun
2019年09月30日リック・オウエンス(RICK OWENS)が9月26日、パリで「TECUATL」と名付けた2020年春夏ウィメンズコレクションを発表した。
2019年09月30日リック・オウエンス(Rick Owens)の2020年春夏ウィメンズコレクションが、2019年9月26日(木)、フランス・パリで発表された。最新コレクションの発表の場となったのはパレ・ド・トーキョー。過去にもゲストに水しぶきを浴びせるなど、サプライジングな演出を行ってきたリック・オウエンス“お決まり”の場所だ。水で満たされた池のような空間をぐるりと囲むようにしてランウェイが設置されている。彫刻のようなパーツや兜のような冠広場の上に薄っすらとミストが広がると共にショーはスタート。モデルたちは中央の階段を降りて歩みを進みていく。ファーストルックは、ツイストを加えた彫刻のようなパーツをウエスト部分にあしらったもの。ふっくらとしたボリュームのあるアウターに、ピンクのインナー、深いスリットの入ったスカート、まるで兜のような存在感溢れる冠もスタイリングしている。無数のシャボン玉が浮遊するサプライズリックが生み出すピースに視線を奪われていると、どこからともなく現れた、黒い洋服を纏った人物たちが池の周りにスタンバイしている事に気付いた。彼らは定位置につくと、なんと長い棒のような道具を使って無数のシャボン玉を創り出したのだ!数え切れないほどのシャボン玉で満たされたランウェイでは、ゲストの驚きの表情を気にも止めずに、モデルたちが淡々と歩みを進めている。鎧のようなジャケット今シーズン、リック・オウエンスらしい構築的なフォルムとして特に印象に残ったのは、ショルダー部分のデザインだろう。トライアングル状のパーツを型にあしらったアウターや、空に向かって突き出したショルダーが印象的なドレスなどがランウェイに姿を現す。また、シャボン玉が浮遊する幻想的な空間からは想像もつかない、鎧のような力強さを持つジャケットやドレスも登場した。メンズと連動したカラーやディテールカラーリングやディテールは、母方のルーツである“メキシコ”をテーマにした2020年春夏メンズコレクションと連動した要素も多い。煌めくゴールドのシークインを散りばめたロングドレスや、オーロラのごとく輝くスカート、シューレースを幾重にも巻き付けたかのようなジャケットなどが展開された。
2019年09月30日アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)の2020年春夏ウィメンズコレクションが、2019年9月26日(木)、フランス・パリで発表された。鍵を握るのは「Jolene」今シーズン、インビテーションに記されていたのは「Jolene」の文字。1970年代に発表されたドリー・パートンのこの歌は、愛する人の心を他の女性に奪われてしまう悲しみや憎しみを歌った名曲だ。今季のクリエーションはこの楽曲をカバーをしたアメリカ人マルチインストゥルメンタリスト・アーティストLingua Ignotaに大きな影響を受けている。ショーミュージックにも彼女がアレンジした「Jolene」が起用され、ショーにはLingua Ignota本人も来場した。漆黒のピース今季のランウェイを染め上げたのはダークなブラック。ブランドが度々取り組んでいる真っ黒な世界が、ドレスやジャケット、ニットウェア、シューズなど、ありとあらゆるアイテムの上に広がっている。ショーの中盤、まさに紅一点投入されたレッドカラーのシースルードレスを除いては、モノトーンのパレットがメインだ。センシュアルなカッティングや素材漆黒のピースには、肌を露わにする大胆なカッティングを施し、センシュアルなムードを演出。ベアトップドレスは、左足の付け根まで見えてしまうほど、深いカットを入れている。また、セクシャルでエレガントなドレス群は、胸元でストラップやテキスタイルが絡み合うようにレイヤードされ、複雑な表情を見せている点も印象に残った。レーシーなキャミソールや、メッシュ素材のワンピース、シースルーのドレスといった透け感のあるアイテムも散見。艶やかなサテンのジャケットや、エナメルのスキニーパンツも、妖艶なムードを演出するのに一役買っている。崩れ落ちるようなスタイリング崩れ落ちるようなスタイリングも印象的。ロングアウターの袖には片腕だけを通して、ドレスのストラップは左肩だけをずり落とすようにして、アシンメトリーな着こなしを生み出している。95年に発表したシューズが復活足元を彩るシューズは、1995年にアン ドゥムルメステールのショーに登場したカーヴィーなヒールパンプスを復刻。25年の時を経て、鳥の爪のように力強い形状のシューズを、セバスチャン・ムーニエがインダストリアルなムードにモダナイズした。
2019年09月30日Y/プロジェクト(Y/PROJECT)の2020年春夏ウィメンズコレクションが、2019年9月26日(木)、フランス・パリで発表された。Y/プロジェクトを率いるグレン・マルタンは、アントワープ ロイヤルアカデミーを首席で卒業し、ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)などで経験を積んだ人物。創業者のヨハン・セルファティの後任として2013年にブランドを引き継ぎ、2017年度LVMH ヤング・デザイナー・プライズにもノミネートされた気鋭デザイナーだ。襟元のデザインにツイストを効かせて最新のウィメンズコレクションでは、洋服の印象を左右する襟元のデザインにひねりを効かせたアイテムがこれまでにも増して存在感を示した。テーラードジャケットのピークドラペルはビッグサイズにし、フロントにドレープが出るようにボタンの位置を設計している。オックスフォードシャツをベースにしたかのようなブルーのミニワンピースは、ボタンの位置をあえて掛け違えることで、予定調和的なデザインをアレンジ。襟のデザインが少し左にずれたようなユニークなフォルムを作り上げている。トレンチコートは通常と異なる位置にボタンを留めることで、本来裏地となるようなパーツを露わにした。エレガントなドレスも一捻りエレガントなアイテムには、遊び心溢れる要素を盛り込むことで一捻り。ブラックのベロアロングドレスには、幾重にもドレープを重ねたボリューミーな装飾をあしらって。ボディラインを強調したタイトフィットのキャミソールドレスにはグラフィカルなラインを這わせることで、センシュアルなムードをポップな印象へとシフトチェンジした。存在感溢れるバッグやシューズ存在感溢れる小物類にも注目。ボリューミーなロングブーツや、ハート型に渦を巻くイヤリング、アコーディオン風のショルダーバッグ、細長い台形型ハンドバッグなどがランウェイを彩った。
2019年09月30日オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)の2020年春夏ウィメンズコレクションが、2019年9月26日(木)、フランス・パリで発表された。テーマは“METEOR SHOWER”。“流星群”のようなグラフィックヴァージル・アブローが好んで起用するロゴモチーフやグラフィックは、今シーズンは控えめに感じられる。ショー序盤は、腰から裾に向かって斜めにフリルをあしらったドレスの胸元に小さな“クロスアロー”ロゴが、身体にぴったりとフィットするタンクトップの胸元に極小の“OFF”ロゴが登場したものの、無地の洋服が主流だ。そんな中、ショー中盤に顔を出したのが、シーズンテーマである“METEOR SHOWER”=流星群を感じさせるプリント。放射状に出現する一群の流星のように無数のホワイトラインを走らせたグラフィックが、アシンメトリーなロングシャツやセンタープレスパンツ、Tシャツなどの上にのり存在感を示す。丸い“穴あき”ウェアやバッグ穴の開いたディテールも、今季の特徴の1つ。ぴったりとフィットする半袖トップスの胸元や、タンクトップのウエスト部分もホール状にくり抜かれている。レディトゥウェアだけではなく、ボリューミーなブーツやロンググローブなどにも丸いカッティングが施されており、同様のカットワークを取り入れたハンドバッグはその穴に手を通すようにしてモデルが携えていた。ネット状のドレスやトップスネット状のファブリックが多用されていたのも印象的。ボディスーツの上に重ねた真っ赤なメッシュトップスや、ロングコートの下に差し込んだ網状のドレスなど、レイヤードを楽しむためのアイテムとして提案されている。スーパービッグサイズのネットバッグは、まるで洋服の一部であるかのような存在感を放っていた。なお、ヴァージル・アブローは体調不良のため、今シーズンのショーは参加を見合わせた。
2019年09月30日イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)の2020年春夏コレクションが、2019年9月27日(金)、フランス・パリで発表された。新デザイナー近藤悟史による1stシーズン最新コレクションは、宮前義之からバトンを引き継いだ、新デザイナー近藤悟史によるファーストシーズン。一枚の四角い布から生み出されるデザインにこだわる姿勢や、鮮やかなカラーリングなどに、創業者である三宅一生の面影も感じたゲストは多かったようだ。これに対し近藤は、ショー後のインタビューで「原点回帰というわけではないが、“ミヤケイズム”を僕なりに、現代的に解釈したもの」であると語っている。複数セクションからなるダンスショーファッションショーは、複数のパートで構成されたダンスショーを観ているかのように躍動感あふれるもの。コレクションピースを纏ったモデルたちは、時には優雅に舞い、時には軽やかに飛び跳ね、時にはスケートボードに乗りながら、会場の中を駆け巡るのだ。「洋服は人が袖を通して初めて活き活きとする。」そのことが存分に感じられる動きのある演出に、ゲストは1セクションが終わるごと大きな拍手や歓声を送った。“動く楽しさ”を教えてくれる服たとえば軽やかなテクニカル素材を使ったワンピースは、2枚の生地を合わせるようにして仕立てており、隙間から空気が入り込むことによってふっくらと膨れ上がる。モデルたちはあえてこの隙間を大きく開けて歩いてみたり、自らがくるくると回転することで空気を送り込んだりして、身体の動きによってワンピースのフォルムが変化することを教えてくれる。会場の天井に装飾されていたサークル状のモチーフが、ゆっくりとモデルの頭上に降りてくるという“早着替え”風の演出もあった。つい先ほどまで一枚の丸い布であったのに、頭上から降りてきたそれはモデルの肩から地面に向かってすとんと落ち、プリーツワンピースへと姿を変えたのだ。このプリーツドレスには伸縮した素材が使われている様子で、彼女たちが上下に飛び跳ねるのに合わせて、リズミカルに上下に揺れるのである。満面の笑みを浮かべながら思い思いにジャンプを繰り返す彼女たちもまた、“動く楽しさ”のある洋服の魅力を伝えてくれている。躍動感のあるグラフィックも鮮やかな色彩だけでなく、力強いグラフィックも目に留まった。ホワイトのキャンバスに空のようなブルーを走らせたプリントは、2人の人間が抱き合っている様子をイメージしたもので、近藤の“特にお気に入り”とのことだ。身体と洋服の関係を見つめ直してフィナーレはモデルたちが一堂に集結。全員が互いに手を繋ぎ、輪になってくるくると回ると、溢れるばかりの笑顔を浮かべて会場を後にした。地域も世代も体型も異なるあらゆる人にとって“喜びを感じられる”服、それは“動いて楽しい”服であるのかもしれない。身体と洋服の関係性を今一度見つめなおした近藤の服は、そんなことを教えてくれた気がする。
2019年09月30日ディオール(DIOR)の2020年春夏コレクションが、2019年9月24日(火)、フランス・パリにて発表された。カトリーヌ・ディオールにオマージュを捧げて今シーズン、 アーティスティック ディレクターのマリア・グラツィア・キウリがインスピレーション源にしたのは、ある写真。クリスチャン・ディオール最愛の妹カトリーヌ・ディオールが、庭の花に囲まれているアーカイブフォトから想像を膨らませた。花々を愛で、育てることに情熱を注いだ彼女は、メゾンを代表するフレグランス「ミス ディオール」のモチーフとなった人物としても知られている。ロンシャン競馬場に現れた庭園ロンシャン競馬場に設置された特設会場の中に一歩足を踏み入れると、そこに現れたのも、カトリーヌにオマージュを捧げているかのような美しい庭園。多種多様な木々が生い茂るこのガーデンは、都市で園地栽培に取り組むアーティスト集団、アトリエ コロコ(Coloco)とのコラボレーションによって実現したものだ。ショーの幕開けと共に、モデルたちがこの木々の合間をぬうようにして歩みを進めていく。ボタニカル刺繍やラフィア素材ランウェイに登場するのも、カトリーヌが愛してやまない花々や植物をモチーフにしたしたピース。マリア・グラツィア・キウリが好んで起用するシースルースカートやロングドレスにはボタニカル刺繍を施した。ナチュラルなラフィア素材を用いたミニドレスやジャケットも今シーズンのキーアイテムとして存在感を放っている。どこか儚げなカラーリング花がモチーフと聞いて鮮やかなカラーリングを連想したゲストも多かったであろうが、パレットには華美な色彩を多くは用いていない。植物のエンブロイダリーやプリントには、自然が本来持っているであろう色彩が起用されており、いつか命を終えることをわかっているかのような、どこか儚げで刹那的なムードさえ感じさせる。またそのナチュラルなカラーを引き立てるため、服地はホワイト、ベージュ、グレー、ブラックといったベーシックカラーで染め上げた。サドルバッグやブックトートの新作もレディトゥウェアからアクセサリー類へと視線を移すと、サドルバッグやブックトートなどのアイコンバッグにも、花々が咲き乱れている。軽やかなムードをもたらすラフィア素材のフラットサンダルやエスパドリーユ、ハットなどは、温かな季節の訪れを祝福しているかのようにも感じられる。人間と地球との考えを見つめ直すマリアグラツィアキウイがコレクションピースの上に花々を咲かせ、木々を植え付けたのは、単にその美しさを称賛するためだけではない。このコレクションは、自然を心から愛したカトリーヌに敬意を評しつつ、私たちにサスティナビリティを見つめ直すきっかけを与えるものでもある。ディオールを愛するファンたちも、レディトゥウェアに袖を通し、アクセサリーを携える度に、私たち人間と豊かな自然を擁する地球との共存に想いを巡らせるに違いない。
2019年09月29日クレージュ(courrèges)の2020年春夏コレクションが、2019年9月25日(水)、フランス・パリで発表された。リバーサイドにランウェイが登場ヨランダ・ツォーベルがアーティスティックディレクターに就任してから、“接近”型ランウェイや、プラネタリウム風の神秘的な空間でのショーなど、様々な演出で観るものを楽しませてくれるクレージュ。3シーズン目の今回、ゲストのシートが用意されたのは、セーヌ川とラ・ヴィレット貯水池を結ぶサン・マルタン運河のリバーサイドだ。パリ市民の憩いの場でもあるこの運河沿いに、今日だけはオレンジのネオンライトが光り輝いている。ショーミュージックが鳴り響くと共に現れたのは、運河をゆっくりと進んでいく一隻のクルーズ船。薄っすらとスモークが立ち込めるこの船の中を、よく目を凝らして見てみると、どうやらコレクションピースを纏ったモデルたちを運んでいる様子。船が岸に寄せられると川沿いに伸びたランウェイに彼らが上陸し、右岸からアーチ状の橋を渡り、左岸へとその歩みを進めていく。ネオンカラーを主役に今シーズンの鍵を握るのは、ネオンカラーのようだ。序盤に目を惹いたのはインビテーションとして届いたスカーフの色や、川沿いを照らすライトとも連動したオレンジ。ルーズに編み込んだニットウェアや、ブランドロゴを散りばめたチェック柄のセットアップなどが登場した。オレンジと同様に存在感を放っていたのがネオングリーン。ショート丈のジャケットやミニスカート、うねるようなサイドラインをあしらったロングパンツが現れる。アクセントとしてイエローのスパッツやブルーのインナーも加えられた。グラフィカルなカットワークグラフィカルなカッティングも今季の特徴の1つ。胸元をトライアングル上にくり抜いたミニドレスや、斜線上にカッティングを入れたショートトップス、左肩に雫型のカットワークを施したワンピースなどが終盤にかけて投入されていく。また、これらはレイヤードの楽しみを教えてくれるものでもあるのだ。“Paris”ロゴのニットウェアニットウェアは“Paris”のロゴをバックスタイルに配して味付け。フード付きのロングマントやロング丈のニットウェアは背中に、ロングパンツやタイトスカートはヒップに、遊び心溢れるグラフィックをあしらった。フィナーレに差し掛かると両岸から橋に向かってモデルたちが集合。全員がブリッジの上に整列すると会場から拍手がわき、ショーの幕が閉じた。
2019年09月29日ロシャス(ROCHAS)の2020年春夏コレクションが、2019年9月25日(水)、フランス・パリで発表された。カラフルな色彩を楽しむシーズン今季のロシャスは、鮮やかなカラーパレットを存分に取り入れたシーズン。ジューシーなオレンジのロングドレスや、新緑を思わせるグリーンのプリーツスカート、淡いピンクのシャツブラウス、ミントカラーのフレアスカートなど色とりどりのピースがランウェイを染め上げている。温かな季節に纏いたい心躍るピースが揃った。スタイリングにも色遊びが感じられ、フレッシュなイエローのシャツブラウスに鮮烈なレッドのパンツを合わせたり、ブルーのジャケットにグリーンのハーフパンツを組み合わせたりした。足元に一貫して投入したスリングバックシューズも、ロイヤルブルーやビビットピンクなど、ウェアに劣らぬ存在感を放っている。輝く装飾やメタリックなファブリック光り輝く装飾やメタリックカラーのファブリックが用いられているのも今季の特徴の1つ。フレアシルエットのドレスには、繊細な煌めきを放つビジューをふんだんに散りばめた。メタリックな輝きのコートには、服地に特別なシワ加工を施したり、細やかなプリーツを入れたりすることによって、その煌めきを増幅させる仕掛けを取り入れている。ロングリボンを軽やかになびかせてディテールで目を引くのは、あらゆるアイテムにあしらわれたロングリボン。クチュールメゾンとして誕生したロシャスの誇りを感じさせるボリューミーやAラインのドレスルックには首に巻きつけるようにして、ロングパンツにはベルトループに通すようにしてスタイリングされている。床につくほど長いリボンは、まるで春夏の爽やかな風を受けてなびいているかのように、モデルが歩くたびに美しく揺れ動いていた。
2019年09月29日ネヘラ(NEHERA)の2020年春夏コレクションが、2019年9月25日(水)、フランス・パリで発表された。シーズンテーマはFLOWING SUBSTANCE。テーラードをエフォートレスに着る今シーズン、ネヘラが取り組んだのは、エレガントなテーラードアイテムを、春夏にふさわしい軽やかさを持って仕立てること。アメリカのデザイナー、クレア・マッカーデルが女性にとって着心地の良い快適な洋服を追い求めた姿勢がインスピレーション源になっている。たとえばトレンチコートには襟下から裾まで深いバックスリットが入っており、本来ならばかっちりとした印象のアイテムをエフォートレスに着こなす仕掛けを施した。何通りもの着こなしを楽しめる服ネヘラが得意とするこのダイナミックで構築的なパターンは、洋服の何通りもの楽しみ方を教えてくれるものでもある。ノーカラージャケットには左右のショルダー部分から裾までバックスリットが入っているのだが、このスリットによって切り取られたパーツをフロントの襟部分にあるボタンに留めることで、斬新なフォルムで着こなすことが可能だ。また腕を袖では無くスリット部分に通し、ウエストを付属のベルトで結べば、前方から見るとオフショルダーのブラウス風に、後方から見るとノースリーブジャケット風に着こなすこともできる。気分やシーンに合わせて自由自在にフォルムを変えるこのジャケットは、仕立てこそ構築的であるものの、洋服を身に纏う女性に寄り添ったものであるのだ。スポーツウェアから着想したピース機能的なスポーツウェアに着想を得たピースも、今シーズンの特徴の一つ。テクニカルファブリックを用いたドレープコートや、モデルの脚にぴったりと沿ったハーフパンツなどもランウェイに顔を出す。ニュアンスのある鮮やかな色彩カラーパレットはホワイト、ベージュ、ブラックなどブランドのシグネチャーであるベーシックカラーだけでなく、鮮やかなレッドやイエロー、ジューシーなオレンジ、爽やかなペールブルー、セージなど極めて多彩。それらは絶妙に設計されたカラーリングで、煩雑な印象をもたらすことなく、エレガンスを保っている。前衛的なペイントをのせて唯一アクセントとして加えられたのが、ポストモダニズムの代表的なアーティストとして知られるLaco Terenによるアートワーク。ブランド誕生の地であるスロバキアの画家が描いた前衛的なペイントが、ホワイトのノースリーブドレスやシャツに躍動感をもたらす。
2019年09月29日サンローラン(Saint Laurent)の2020年春夏ウィメンズコレクションが、2019年9月24日(火)に、フランス・パリにて発表された。空模様までも味方にサンローランがコレクション発表のために屋外ステージを用意した場所は、今季もエッフェル塔を望むトロカデロ庭園。パリの空はあいにくの雨模様にも関わらず、今シーズンも待っていましたとばかりに、パリ市民がショーを一目見ようと集まっている。ファッションショーを目前に雨風がより一層勢いを増していたが、開始のアナウンスが流れる頃には、サンローランが魔法をかけたかのように、雨がぴたりと止んでいた。直前までどしゃぶりだったことを教えてくれる水の溜まったランウェイや会場に立ち込める霧さえもが、ショー演出の一部であるかのようだ。ショーは、ステージ上に設置された無数の回転式のスポットライトが光の柱を生み出し、重低音が鳴り響くとともにスタート。モデルたちはこの光線が作り出した幻想的なアーチの下をくぐって、キャットウォークを闊歩していく。マニッシュなジャケット&パンツスタイルショー序盤は、ダブルブレストのノーカラージャケットにシャツやパンツを組み合わせたルックなどがメインで、ややマニッシュな印象。しかしながらスーパーショート丈のパンツや胸元を深く開けたシャツなどをスタイリングしているため、アンソニー・ヴァカレロが得意とするセンシュアルな女性らしさも感じさせる。輝きを纏ったエレガンス突然ロングボトムスのルックが現れると様子は一変。煌めく刺繍をあしらったシースルードレスや、細やかなプリーツを入れたゴールドカラーのスカートなどによって、ランウェイが輝きで満たされる。ランウェイを照らす力強いスポットライトにも引けを取らない、眩いばかりの煌めきだ。中盤特に存在感を放っていたシースルーのドレスやブラウスには、メゾンのコードであるブラックだけでなく、ネイビーやボルドー、ダークグリーンなど深みのある上品なパレットを採用。アイテム自体もひざ下丈のドレスやフレアシルエットのスカートなど優美なものに変わり、エレガントなフェミニティが加速していく。漆黒の世界に煌めきをもたらすフィナーレに近づくにつれランウェイを席巻したのは、真っ黒に染まったテーラードジャケットやうねるようなカッティングを施したリトルブラックドレスなど、漆黒のピース。ただしそれらはシークインやラメなどの装飾を施したテキスタイルで仕立てられており、ステージのバックにそびえ立つエッフェル塔と連動するように、きらきらと眩い輝きを放つのである。
2019年09月28日アンリアレイジ(ANREALAGE)の2020年春夏コレクションが、2019年9月24日(火)に、フランス・パリにて発表された。テーマは「アングル」デザイナー森永邦彦は、2019-20年秋冬コレクションから「服」そのものにフォーカスした新しい実験をスタートした。「ディテール」をテーマに服の細部をデフォルメした前シーズンに対して、今シーズンは「アングル(ANGLE)」をコンセプトに据えている。森永が注目したのは、画像化したデジタルな洋服のイメージが、カメラアングルによってその形を変容させる点。立体的な3Dの洋服を、平面的な2Dの画像イメージに変え、それをハイアングル、ローアングル、サイドアングルといった視点から見つめ直すことで、新しい洋服の構造を模索している。定番服を3つの視点から見つめ直すステージに登場するのは、オックスフォードシャツやカレッジTシャツなど誰もが目にしたことのあるベーシックウェア。ただし、様々なアングルで捉えたその洋服たちは、斬新なシルエットに再構築されている。エンブレム付きのブレザーを例にとると、ハイアングルから見たピースは、肩幅やアームホールをオーバーサイズに、ウエストや袖口をスリムに仕立てることで、逆三角形のフォルムへと導いている。サイドアングルから捉えたものは、右袖が前身頃に、左袖が後ろ身頃に移動したかのようなアシンメトリーなシルエットが印象的。ローアングルから再構築したピースは、首回りを極端に小さく設計し、裾に向けて緩やかに広がっていくAラインシルエットに仕上げた。襟やボタンといった細部にいたるディテールまでデフォルメされている。立体?平面?だまし絵のような服また、身に纏うと立体的な“洋服”であることに間違いはないのだが、平面的なイメージからパターンを起こしているため、折り畳むとフラットな“和服”のようになる点も面白い。トレンチコートのショルダー部分に注目すると、本来ならば肩に沿うようなパターンが用いられるはずが、森永が仕立てた服は平置きした時に真っ平らになる設計が施されている。バッグなどの小物においてもそれは顕著で、キャンバストートやキルトレザーのハンドバッグなど通常厚みのあるバッグが、薄いフラットなバッグに姿を変えて登場。遠近法を巧みに使った“だまし絵”のようなビジュアルとなっており、ウェアに負けないほどの存在感を放っていた。演出にもこだわりショーの演出にも、アンリアレイジらしい感性が光る。1つのベーシックウェアをベースとした3体のルックを同時にランウェイに登場させることで、それぞれの違いを浮き彫りにしたのだ。また前シーズンに引き続き、ショー前にインスタグラムでコレクションピースを公開するという斬新な手法を取った。通常“ネタバレ”となってしまうような行為だが、アンリアレイジにとっては、これもゲストを楽しませるための1つの仕掛け。インスタグラムで公開されたトロンプルイユのような画像を目にした人は、これは立体なのか、果たして平面なのか…疑問を拭えぬままショーに向かったはずだ。なおショーミュージックは、以前より森永と親交の深いサカナクションの山口一郎と、山口が代表を務めるNFの青山翔太郎が担当。世界最古の電子楽器テルミンなどを用いて今シーズンの世界観を表現した。
2019年09月28日メゾン マルジェラ(Maison Margiela)の2020年春夏「デフィレ」コレクションが、フランス・パリで発表された。メンズ・ウィメンズの新作を合同で披露。現代社会の“記憶”に注目今シーズン、クリエイティブ・ディレクターのジョン・ガリアーノが注目したのは、情報が溢れるデジタル時代に生きる私たち中にある“記憶”。無数の情報が飛び交う現代社会において、記憶は歪められ、改ざんされ、そして次第に薄れていく。そんな状態に警鐘を鳴らし、歴史や、歴史が私たちに教えてくれる物事の“本質”に目を向けるべきだというメッセージが込められたのが、今季のコレクションだ。先に発表したオートクチュールにあたる「アーティザナル」コレクションのアイデアから生まれたものでもある。本質とは何かを問う服本質とは何かを問う必要性を教えてくれるのは、たとえばヘリンボーンのテーラードジャケットに隠されたある仕掛け。このジャケットには、プリント機がハッキングされてしまったかのような“ハック・プリント”という白いグラフィックが施されているのだが、ヘリンボーンとこのプリントを見比べると、実際にはヘリンボーンはトロンプルイユであり、コットンで仕立てられているという真実に気づかされる。無数の丸いハンドカッティングも、今シーズンを象徴するディテール。トラウザーを再解釈したドレスの上には、洋服を淡いベールで包み込むようなオーガンザがレイヤードされているが、そこには無数のホールが開いている。人は無意識に穴の中を覗こうとし、本質とは何かを意識するのだ。ユニフォームを進化させるベースとなっているのは、セーラーカラーの学生服や、メンズのテーラリングなどある種のユニフォームとされるもの。誰もが袖を通したことのある制服を再解釈することにより、人々の記憶や心地よさにつながる感覚を呼び起こす。また同時に、オーセンティックなウェアを再構築し、従来の洋服よりもより良いものを生み出していくという“アップサイクリング”の概念を体現したものでもある。
2019年09月28日プラダ(PRADA)の2020年春夏コレクションが、イタリア・ミラノで発表された。“服を着る”ことへの原点回帰、プラダの考える新しい女性らしさ2020年春夏シーズンのプラダは、人が服を着るという、本質への原点回帰を行った。ただ古いものをそのまま現代に蘇らせるわけではなく、モダンな解釈を加えて“今の女性像”にあった新しいものへと作り変えている。今を作る時代のハイブリッド服の起源を辿る上で、自然へと回帰するプリミティブな素材を主役に立てた。ワンピースやスカートのガーゼ素材、帽子やバッグに用いられたラフィアなどがそうだ。それとは対照的とも思えるヘリンボーン柄の肉厚なベルベットなども印象的で、プラダらしい時代のハイブリッドが垣間見える。かつてのシルエットを参考にしたジャケットスタイルは、ポケットのフラップをビッグサイズにして、配置は低めに設定。ステンカラージャケットとスカートのセットアップは、ツイードやレザーなどの素材で組み合わせて、レトロシックなムードに捻りを効かせた。ディテールでほんのり味付けしたルックは、今の新しいスタイルへと直結している。装飾が生む、現代的エレガンスもともと服は1枚の布が始まりだ。だからこそ、トップスはレザーをそのまま肩紐で吊るしたようなものだし、スカートはラップ式がほとんど。一見単純な服には、技巧的な刺繍を施すことで過去にはない気品を纏わせている。自然をデザインへと昇華する試みも多々あり、ボタニカルな柄は精緻な手刺繍で意気揚々とゴートレザーのスカートや、シルクドレスにあしらわれた。自然に由来するバッグやシューズ小物は、過去に由来する素材使いと、時を感じさせるデザインから完成している。今季のシューズは、レザーの編み込みがアッパーやサイドに施され、まるで履き古したようなヴィンテージタッチのカラーがのせられた。フラットサンダルのアッパーもレザーの編み込みで涼やかに演出し、カラーバリエーション豊富に提案している。プラダの真骨頂であるサフィアーノレザーのバッグにも、編み込みでひと工夫を加えた。さらにラフィア素材をはじめ、原始的なムードを漂わせるバケツ型バッグが豊富に揃っているのも特徴的。言わずもがなアイコニックなナイロンバッグは、半月型のハンドバッグとして登場している。
2019年09月27日プラン シー(Plan C)の2020年春夏コレクションが、イタリア・ミラノにてプレゼンテーション形式で発表された。デザイナーのカロリーナ・カスティリオーニ自身が考える“自分の着たい服”プラン シーの提案するワードローブは、デザイナーのカロリーナ・カスティリオーニが目指すのは、“自分が着たい服”。今季は、ワークウェア、スポーツウェア、アーバンウェア、イブニングウェアといったあらゆる境界線を取っ払って、新しいジャンルのアプローチを試みた。それらは“自分の着たい服”なのだから、どんなエッジィなハイブリッドであっても、快適さを保っている。楽しいテキスタイルとコンフォータブルな魅力キーテキスタイルとして登場するチェック柄は、様々な表現でスタイリングに取り込んだ。フォーマルなグレンチェックのスーツから、グリーンとブルーがクロスするグラフィカルなギンガムチェックまで、クラシックにもポップにも表情を変える。そして今季のキーカラーであるジェイドグリーンの爽やかな色彩は、ボックスシルエットのマニッシュなスーツやトレンチコート、あるいはフェミニンなプリーツスカートなどで楽しんでいる。フローラルプリントも、境界線のないプレイフルなコレクションに一役買っている。ライトなカラーリングで描く花柄はまるでフェミニンの象徴のよう。ハイパーロングのスカートにあわせたり、ドローコードでシルエットを遊べるスポーティなロングベストにあわせたりと、表情豊かに組み合わるスタイリングは日常感たっぷりでエフォートレスだ。“イイトコどり”なハイブリッド境界線のないハイブリッドな要素を言及するなら、ヴィンテージスポーツから着想を得た、ポロドレスやニットポロシャツなどカラーブロッキングのカーディガンを挙げたい。スポーティでありながら、エレガントなテクスチャーのスカートとのコンビネーションを楽しむのも今季らしい特徴だろう。また、ナイトシーンを想起させるドレスに、あえてポップなポルカドットを配しているのも面白い。アイコン的存在、カロリーナの娘が描く絵すっかりブランドを代表するモチーフとなったカロリーナの娘が描く、遊び心たっぷりの絵も、これらのウィットに富んだワードローブにあしらわれる。シャツやプルオーバーのほか、片手に持ったバッグにも登場させ、“自分の着たい服”の中でお気に入りのアイテムを増やしている。
2019年09月27日業界人がロンドンへ来る大きな目的は、新たな才能の発掘! ロンドンのモード業界全体で若手デザイナーのサポートに精を入れており、セント・マーチンズ美術大学やロイヤル・カレッジ・オブ・アートなど、名だたる名門校の卒業コレクションは毎年大注目されます。挑戦的でアヴァンギャルドな作風はロンドンならではですが、あくまで“作品”であり商品としてファッションビジネスに落とし込むのに苦戦し、ブランド継続が難しくなるケースも少なくありません。【2020春夏ロンドンウィメンズ総括:前編】ではビジネス的にも成長する成功例を挙げましたが、【後編】ではその可能性を秘めた若手デザイナーを主にご紹介します!モリー ゴダード2020年春夏コレクションロンドンで最も輝かしい新たな才能の一人と目されるモリー ゴダード(MOLLY GODDARD)。チュールとタフタが奇妙なバランスでミックスされる華美なドレスは、セレブリティの私服や歌手のツアー衣装として着用され、セント・マーチンズ美術大学在学中から注目を集めました。2014年に同大学を中退してブランドをスタートし、ロンドン・ファッション・ウィークで発表を続けています。デザイナー、モリー・ゴダード(Molly Goddard)自身もチュールのドレスにスニーカーを合わせるというスタイリングでアイコニックな存在になりつつあります。ブランド5年目の過渡期、次のステージへとステップアップするには、チュールのドレスだけでなく、それに合わせるカジュアルなアイテムやバッグなどの小物類が鍵になってきます。2020年春夏コレクションでは、ラッフルのトップスやミドル丈スカート、ニットウエア、初となるデニムを使ったアイテムが登場しました。生産は未定ですが、バッグも数種類オリジナルで制作。ラフな眉毛にキャットアイ、ダークカラーのリップで全体的に毒っ気のあるロマンティシズムなショーに仕上げましたが、バイヤーや顧客から受け入れられるかは微妙。アイテム単体で見た時に、ドレス以外のアイテムに強い個性が感じられず、まだまだ成長の余地がありそうだなと感じました。モリー ゴダード2020年春夏コレクションモリー ゴダード2020年春夏コレクション全ルックモリー ゴダードと同じロマンティック路線での成功例といえば、シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)です。2010年セント・マーチンズ美術大学卒業と同時にロンドン・ファッション・ウィークでデビューを果たし、着実にクリエーションとビジネス両面でブランドを発展させています。今季は19世紀に建設された劇場アレクサンドラ・パレスをショー会場に、デザイナー、シモーネ・ロシャ(Simone Rocha)の出身地であるアイルランドの伝統行事から着想を得たコレクションを披露しました。陶器の絵柄、テーブルクロス、壁紙、カーテンなどホームインテリアをヒントにしたプリントや生地によって、どこか温かく懐かしい雰囲気。シアーなチュールを合わせたテーラードや、膝あたりで寄せたギャザーによってバルーンに膨らむシルエットのドレスなど新たな提案もありました。私が特に気になったのはシューズです。ヒールがクリスタルのシューズは「シモーネ ロシャ」のシグネチャーですが、今季はさらにパールやスタッズといった甘辛ミックスの装飾が施されており挑戦しやすそうでした。ショーを見ていたアナ・ウィンター(Anna Wintour)が、フィナーレ直後に小走りでバックステージへ向かいロシャを祝福していた光景が印象に残っています。ウィンターもうならせる、エモーショナルでダイナミック、最上級にカワイイコレクションでした。シモーネ ロシャ2020年春夏コレクションシモーネ ロシャ2020年春夏コレクション全ルック今季私が出会った中で気になる若手デザイナーが2人います。まずは、アイルランド出身のリチャード・マローン(Richard Malone)。2014年にセント・マーチンズ美術大学を卒業後、トップショップ(TOPSHOP)が支援する若手の合同ショー「ファッション・イースト(Fashion East)」に選出されデビューを果たしました。曲線的なシルエットとプリントの組み合わせ、独特のカラーパレットが魅力。複雑なフォルムのコートやドレスはシームレスに仕上げて着心地を追求し、インドネシアに生地を作りに行くなどクオリティーにもこだわっています。イブニングドレスは洗濯機で洗えるなど、実用性を兼ね備えているのは将来性が高いポイントでもあります。リチャード・マローンリチャード・マローン2020年春夏コレクションリチャード・マローン2020年春夏コレクション全ルックもう一人は、「ファッション・イースト」に選出され2017年にデビューしたマティ・ボヴァン(Matty Bovan)です。過去にはLVMHプライズ学生賞を受賞して、ルイ ヴィトン(LOUIS VUITTON)でアシスタントデザイナーとして働くも、一年足らずで自ら退社したそう。ニットを駆使して誇張したシルエットや破壊的なデザイン、気味悪いギリギリ手前の絶妙な色彩など、独創的なファンタジーの世界観を持つコレクションを披露しています。彼自身、ジェンダーの概念を超越した存在であり、デザイナーの枠にとらわれずイラストレーター、メイクアップアーティスト、スタイリストと変幻自在に業界を駆け巡るスラッシャーでもあります。彼が作品をどのように商品へと落とし込むのか見たい気もしますが、もしかしたらファッションビジネスには興味がないのかもしれません。“ブランドとして成功する=売り上げを上げる”という図式はもはや通用せず、彼のようなスラッシャーは特に自身のブランドにおいてはクリエーションだけに注力したいようにも見えます。成功とは何か、ファッションとは何か。概念は変化しており、多様な価値観が存在するダイバーシティーやインクルーシブといった、現代が生み出したデザイナーなのかもしれもしれません。マティ・ボヴァンマティ・ボヴァン2020年春夏コレクションマティ・ボヴァン2020年春夏コレクション全ルック
2019年09月27日モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)がロンドンで2020年春夏コレクションを発表した。
2019年09月27日9月13日から17日に開催された、2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウィークに参加してきました。どんよりした悪天候の多いロンドンですが、会期中はインディアンサマーに見舞われ、日中30度近く気温が上がる日もあったほど晴天に恵まれた5日間。そんな天候が後押ししてか、今季のファッション・ウィークも大盛況。特にロンドンは若手デザイナーの発掘の場として、新しい気鋭なクリエーションに出会える地。さらにここ数シーズンは、中堅デザイナーもたくましい成長を見せており、独自に進化しています。そんな今季のロンドン・ファッション・ウィークで注目したブランドを【前編・後編】で総括していきます!トーガ2020年春夏コレクションロンドンで気になるブランドいえば、やはり古田泰子デザイナー率いるトーガ(TOGA)ではないでしょうか。ロンドンに発表の場を移してから今回が12シーズン目となり、着実に安定した成長を続けています。時代の空気を読み解き、現代女性が潜在的に欲している物を絶妙なタイミングで提供してくれる、女性デザイナーならではのブランドです。今季はメキシコシティーを拠点に活動するベルギー出身のアーティスト、フランシス・アリス(Francis Alys)の作品から着想を得たコレクションを披露しました。彼の数ある作品の中で特に、メキシコシティー内を巨大な氷の塊を完全に溶け切るまで押し続けた様子を撮影した映像作品「実践のパラドックス1(ときには何にもならないこともする)」に感化されたそう。コレクションノートには、「生産過程において“不必要”なことにもっと多くの時間を費やし、そこから何が生まれるのかを見たかった」という古田デザイナーの言葉が記されています。ビニール素材の花のコサージュを合わせたテーラードジャケット、大きなスリットから花柄の裏地が見えるスラックス、PVC素材のエレメントが加えられたビーチサンダルなど、本質的には不必要なものから美しさを見出す試みです。ヘアメイクは個性を生かすかのように極めてナチュラルで、肩の力を抜きつつも、内側から滲み出るエレガンスや力強さを感じられるコレクションでした。「結局のところ、ファッションを作ること自体が不必要。でも、それこそが大切な道楽」と締めくくった古田デザイナーの言葉はとても意義深く、考えさせられました。トーガ2020年春夏コレクショントーガ2020年春夏コレクション全ルックロンドン・ファッション・ウィークの目玉であり、著しく成長する中堅、ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)も、程よくリラックスムードが漂う素晴らしいコレクションを発表しました。毎シーズン注目されるのはコレクション内容だけでなく、アートに造詣の深いクリエイティブ・ディレクター、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が誰のどんな作品からインスレピレーションを受けるのかという点です。今季はカナダ人ヴィジュアルアーティストのリズ・マゴー(Liz Magor)という女性。「彼女が作品を通して伝えようとする“見る”という行為に惹かれた。不要になった物に焦点を当て、新たな居場所を与えるというアイデアだ。雑音を打ち消しシルエットにフォーカスした」とショー後のバックステージでアンダーソンは語りました。ショー会場内には、透明のバックスに古びた人形、古着、おもちゃなどの不用品が無造作に入った彼女のオブジェが飾られており、その間をモデルが闊歩するような演出です。ドレープの効いたアシンメトリーなドレス、スリーブが誇張されたトレンチコート、ウエストラインから妙に膨らむテーラードジャケットなど、芸術的とも言える程変幻自在なシルエットが印象的です。さらに、今季は煌びやかなジュエリーの装飾が目立ちました。エスパドリーユのレースでボトムスの裾をロールアップするスタイリングは、手持ちのシューズで今すぐにでもトライしてみたい!クリストファー ケイン2020年春夏コレクション中堅ブランド、クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)はラグジュアリーグループ「ケリング(Kering)」を離れてから初となるコレクションを披露。アイキャッチーではあっても売り上げに直結せず、ここ数シーズンは厳しい評価を受けていたところで独立の発表。業界人から懸念の声が多かったものの、気持ちが吹っ切れたのか本来のケインらしいサイケデリックなクリエーションを見せてくれました。コレクションの大テーマは、自然! 野草が華やぐ野原のプリントから秋めくペイズリー柄、鮮やかなブルーの空へ到達したかと思えば、地球を飛び出し宇宙へ。細胞構造の図解のような変容な柄のPVCのブーツやバッグ、ドレスの胸元のディテールが目を引きました。環境問題から触発され、自然をテーマにするブランドは最近多く見られますが、これほどまでにフューチャリスティックで楽しみに満ちたコレクションは初めてで、ケインの才能が際立っていたように思います。フィナーレでは、MORE JOYの文字プリントTシャツを着用したケインが挨拶しました。“人生は楽しんだ者勝ち! ”と言わんばかりの空気感とコレクションはエネルギッシュ。新たな方向へと舵を切った「クリストファー ケイン」の今後が楽しみです!クリストファー ケイン2020年春夏コレクションクリストファー ケイン2020年春夏コレクション全ルック後編:シモーネ ロシャの成功例に続くロンドン若手デザイナーは?
2019年09月27日クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)がロンドンで2020年春夏コレクションを発表した。
2019年09月27日シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)がロンドンで2020年春夏コレクションを発表した。
2019年09月27日アイルランド出身のリチャード・マローン(Richard Malone)による2020年春夏コレクションがロンドンで発表された。
2019年09月27日マティ・ボヴァン(Matty Bovan)による2020年春夏コレクションがロンドンで発表された。マティ・ボヴァンは、トップショップ(TOPSHOP)が支援する若手の合同ショー「ファッション イースト(Fashion East)」に選出され2017年にデビューした。
2019年09月27日マメ(Mame Kurogouchi)の2020春夏コレクションが、パリ・ファッション・ウィーク初日の2019年9月23日(月)に発表された。トップバッターとして公式スケジュール初参戦マメがパリコレのトップバッターを飾った。東京都と繊維ファッション産学協議会によるファッション プライズ オブ トウキョウの支援を受け、2018-19年秋冬コレクションで初めてパリコレに参戦して以来4シーズン目を迎えるが、公式スケジュールでコレクションを披露するのは今回が初めてとなる。コンセプトは“包む”という概念今季、黒河内真衣子のインスピレーション源になったのは、自身を繭で覆った蚕虫が、世界を淡いフィルター越しに覗く様子。繭に“包まれた”蚕虫は、ディテールの消失した本質のみが映る世界を見ているのではないか...そんな想いを巡らせつつ、日本語で包容の意味を持つ「EMBRACE」をシーズンテーマに据えた。この“包む”というコンセプトを中心に据え、春の芽吹きや日常に溢れる命の気配に耳を傾けつつ、身体を守り“包む”役割を持つ洋服を作り込んでいる。また、アート・ディレクターの岡秀行が1972年に出版した『包』にもオマージュを捧げた。モチーフは日常的なオブジェクト“包む”という概念をコレクションピースに落とし込むにあたりモチーフとなったのは、和菓子を納める外箱やカラス除けのネットなど、誰もが日常的に目にしていながら見過ごしてしまうようなものたち。たとえば、草木を守るために広げられたネットや、無造作に放置された漁網が、ルーズに編み込んだノースリーブのメッシュトップスや、バックスタイルをリボンで結んだロングドレスへと姿を変えている。曇りガラス越しに見る夏の風景は、モデルが歩くたびに袖から流れ落ちるようにして揺れ動くフィルム素材のフリンジを施した、シアー素材のレイヤードドレスによって表現された。当たり前のように存在する身近なオブジェクトや旅先で見つけた日本の風景を再構築し、新たな命を吹き込むというクリエーションの姿勢は、これまでにも黒河内が大切にしてきたことだが、今季も健在のようだ。透け感のあるピースをレイヤードスタイリングで目を惹いたのも、メッシュトップスやシアーなワンピースといったベールで衣服を“包み込む”という手法。レーシーな羽織を軽やかなドレスに重ねたり、ネットトップスを光沢感を纏ったノーカラーコートの上に被せたりと、様々な素材で仕立てた洋服に透け感のあるピースをレイヤードすることで、力強くも柔らかなムードを演出している。マメを愛するファンの心を掴んで離さないPVCバッグも、モデルたちがあえてネットワンピースで覆うようにして携えている点も印象に残った。キーカラーはグリーン&ホワイトキーカラーは、春になると私たちを取り囲み、新しい季節の訪れを教えてくれる新緑のようなグリーン。そして、眩い日差しを彷彿とさせるホワイト。メインとなるカラーを潔く2色に絞っているが、刺繍、プリント、染め、織りなど幅広い表現が入り交じった服地は、リズミカルな表情を湛えている。トッズとのコラボパンプスが登場視線を足元まで落とすと、マメのアイコニックなドレスを思わせるエレガントなカッティングのパンプスが目に入るが、これはトッズ(TOD’S)とのコラボレーションによるもの。イタリアのクラフツマンシップとマメの感性が融合したスリングバックシューズが、コーディネートをより品格ある佇まいへと導いている。
2019年09月27日ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)の2020年春夏ウィメンズコレクションが、イタリア・ミラノで発表された。大地から空へ、羽ばたく妖精のように失恋の末、声のみを残して消え、木霊となってしまった森の妖精エコー。“女性らしさとは何か”を例えにしたこのギリシャ神話とともに、今季のジョルジオアルマーニは「フェミニティ」を様々な自然界の要素を用いて表現した。大地のカラーでマニッシュ×フェミニンな序盤ランウェイの序盤には大地の色をメインに、ブラウンやグレーなどアースカラーのルックが揃った。自然の動きにも着目しており、パンツには、ジッパーを走らせることで、波打つ水面のような予想できない動きをもたらしている。さらに、2019年5月に日本を訪れたアルマーニが、和の文化に魅せられたことから、ジャケットに着物の帯のようなデザインも見て取れる。深い青は、雄大な大地と海の世界を表現するために欠かせないカラー。洗練された印象とともに、より広い世界をみせてくれる。ベルベッドのジャケットやシルクのワイドパンツなど、上品な光沢をもつこれら表現はきっと、次に続く壮大なフェミニンな世界への序章だ。徐々に見えてくる壮大なフェミニンの世界次に続いた爽やかなアイスブルーは、シースルーのレイヤードと相まって単色でも立体的。ドレスルックもパンツルックも、透明感あるファブリックの重なりでフェアリーなムードを漂わせた。足元は、先ほどから登場していたイントレチャートのマニッシュなレースアップシューズから一転、PVCを織り交ぜたボタニカル柄のポインテッドトゥパンプスをあわせている。さらに天空には、ドラマティックな花の世界が広がっている。先ほどと同じくレイヤードのテクニックは変わらないが、ビジューや刺繍による煌めきが加わった。まるでオートクチュールのように精緻で立体的な刺繍は、花や葉、花の甘い香りに引き寄せられた蝶たちなどを表現し、エレガントなドレスに物語を描いている。手法は様々で、長いフリンジ状にビジューを胸元からストンと落としたオールインワン、ビジューをあえてオーガンザのベールで覆ったワイドパンツなど。最後に登場したドレスは、ピンクとブルーの淡いカラーのボタニカル柄に、小さなスワロフスキー・クリスタルを配したメッシュをレイヤードして、ゴージャスに、そして堂々と「フェミニティ」を表した。
2019年09月27日グッチ(GUCCI)の2020年春夏コレクションが、2019年9月22日(日)にイタリア・ミラノで発表された。ミケーレ手掛けるグッチからのサプライズ毎シーズン、あっと驚くような招待状でショーの前から観客たちをワクワクさせていたグッチ。今回届いた招待状は、10センチ四方もない小さな封筒。このシンプルな便りは、どんな奇抜な招待状よりサプライズで、何かグッチに変化が……?と、そう思わずにいられなかった。会場には、動く歩道が4レーン。ショーがはじまると、真っ白なワークウェアのようなものを纏ったモデルたちが、その歩道の上でマネキンのように全く動かずただ流されていった。そして突然の暗転。かと思えば、モデルたちは駆け出しシャッター裏へと消えていった。ライトが再び点灯すると、白い彼女たちの姿はなく、今季のワードローブを纏ったモデルたちが、動く歩道を足早に歩きだした。新たなステップへ、進化するミケーレワールドウィーン……という動く歩道の機械音とアップテンポな音楽とともに、遂にはじまった“ミケーレワールド”。今季のショーは、クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレが、グッチを手掛けて4年経った今、新たなフェーズに上がっていくことを示唆する「GUCCI ORGASMIQUE」をキーワードに掲げた。セクシュアルな意味である「オーガズム」から導いた造語には、新たなステップに上がるため、これまで自らが積み重ねてきたグッチでの歩みから、大きなエネルギーを生み出し、爆発させようという意図が見える。モデルたちが衝動的に動き出したのは、きっとそのエネルギーを纏ったからだ。グッチの伝統と、新たなフェミニニティの模索ミケーレは、“バックトゥルーツ”つまりはこれまでのグッチのルーツにこだわり、新解釈を加え新しい表現を追い求め続けてきた。それは今季も同様。GGパターンやホースビット、グッチウェブなどアイコニックなモチーフは健在だ。しかし、これまでのような折衷主義を感じさせるパッチワークやエンブロイダリーは少ない。とにかく今季はミニマルだ。そんなワードローブの中で、ウィメンズとメンズの区別を明確にせず、フェミニニティのモダンな表現を模索している。肌を見せるということには、非常に寛大で、それは過剰なミニマリズムの表現にも思える。花の模様にカットオフしたワンピースや、大胆なスリットを施したタイトスート、女性でも胸をあらわにして着こなすシースルーのドレスなど、きっとこれまでならもっと装飾的に表現されていた箇所が、すべてそぎ落とされシンプル化している。レースとレザー、クラシックチェックとスパンコールなどマテリアルのコントラストは、センシュアルとタフの両立へと導く。ジャケットなどのスーツは50年代風のボックスシルエットで、あえてマスキュリンに仕立てることで、逆説的に着る者のフェミニニティを引き出す。ミケーレらしさとグッチらしさの先に大きな変化の中でも、ミケーレらしいグラフィックや遊び心はそのままで、チェック柄に“G”を混ぜたり、シェルモチーフを採用したり、メゾンを語るに欠かせない乗馬の物語を表すためムチをスタイリングに取り入れたり……歴史をプレイフルに表現するのもミケーレらしさだろう。4年目となり、自分らしさとグッチらしさを掛け合わせることへの答えが見えてきた現在。今季の表現は、グッチを愛するミケーレが、ともにグッチを愛し袖を通す人に投げかけた新たなメッセージのようだ。
2019年09月27日