ニューアルバム『アンサンブル・プレイ』の収録曲はほぼタイアップ曲。好調さが窺えると同時に、自身のライフストーリーを鮮明に描いてきたこれまでの作品と違い、フィクション性が高い。特に印象的なのが「友人A」と「フロント9番」。前者の歌詞はAからZまでのアルファベットが順に入り、後者は1番から9番までが登場し、フィクションならではの遊び心が炸裂している。一番楽しいことをやってればこの先も大丈夫。(松永)フィクションを書けるタイミングが来たんだと思う。(R-指定)「2曲ともリリックのアイデアは2014年からあったんです。でも、まずはCreepy Nutsのことを世の中に知ってもらわなきゃいけなかったから、当時は自分語りを優先しました。それで今回、フィクションを書きたいタイミングになったので、置いておいたアイデアを膨らませていきました」(R-指定)「我々は格段にレベルアップしてるので、ストックしておいてよかったです。『フロント9番』の数の数え方は超自然で品があって洒落てる。お見事だと思いました」(松永)「嬉しいな。その前に入ってる『友人A』はアルファベットの部分をかなり立たせたから、『フロント9番』はさらっとやりました。この曲では、やしきたかじんや上田正樹系の関西弁で物語を描くような表現がやりたかったんです。でも当時はサビ以外のワードが出てこなかった。そこからいろんな経験をして、今回書けたのでよかったですね」(R-指定)DJ松永さんによるトラックはとても多彩でキャッチー。同時に、どこに転ぶかわからない面白さがある。「二人だけで曲を作っているといくらでもマンネリ化できますけど、それだと自分がつまらない。ひとりのトラックメイカーでどれだけ違う曲を作れるかをめちゃめちゃ意識してます」(松永)「(松永の)頭の中にあるキャンバスの自由度がやっぱりとんでもないなと思いました。これとこれ混ぜたらどうなるんだろうっていう、そもそもヒップホップが持ってる魔改造的な発明性を本質的に体の中に落とし込めてるんだろうなと。全部が違うアトラクションみたいな感じなので、ラップを乗せるのは楽しいですよ。試されている感じもあるし、ヒリヒリする感じもある」(R-指定)様々なメディアで活躍し、多忙な日々を送るが、その軸はやはり、お互いの表現をぶつける“かまし合い”だという。「トラックをRに『どうだい?』って感じで送って、書き上げられたラップが送られてくる。そこでまた『やるじゃねえか』って思ってアレンジを送る。そのかまし合いは毎回楽しいです。今はどういうスピード感で走ってるかわからないぐらいの状態。そのありがたさに浸った時が停滞かもしれないという怖さはあるんですが、これからも変わらずに良いトラックを作ってRが良い歌詞を書いて曲になる。そしてツアーをするっていう俺らにとって一番楽しいことをやってればこの先も大丈夫だと思います。自分たちがこれから手に入れていく技術や景色に対して、疑いはないんです」(松永)アルバム『アンサンブル・プレイ』。アニメ『よふかしのうた』OPテーマ「堕天」など全12曲収録。【Tシャツ盤】¥5,500【ライブBlu‐ray盤】¥5,500【ラジオ盤】¥3,300【通常盤】¥2,200(Sony Music Labels)クリーピーナッツ左から、R-指定、DJ松永。日本一のラッパーR-指定と世界一のDJ、DJ松永によるヒップホップユニット。2017年メジャーデビュー。9月26日よりさいたまスーパーアリーナ公演を含むツアーを開催。DJ松永さん・シャツ¥34,100(シーク ヤブーティ/スタジオファブワーク TEL:03・6438・9575)パンツ¥35,200(08サーカス/08ブック TEL:03・5329・0801)R-指定さん・レザージャケット¥11,000レザーパンツ¥7,700(共にリメール/シアン PR TEL:03・6662・5525)※『anan』2022年9月14日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)スタイリスト・鹿野巧真取材、文・小松香里(by anan編集部)
2022年09月09日ラッパーのR-指定さんとターンテーブリストのDJ松永さんからなるヒップホップユニット、Creepy Nuts。近頃はCMソングにドラマの主題歌、バラエティ番組への出演など、お茶の間まで人気が波及。ニューアルバム『かつて天才だった俺たちへ』では、俳優の菅田将暉さんとのコラボが実現。そんな注目の新譜の話とともに、お互いに全力でほめ合い、隙あらば楽しげにはしゃいでいるという、二人の仲のよさの秘訣などについても聞いてみました。――ニューアルバムは表題曲でもある「かつて天才だった俺たちへ」が軸となっているそうですが。R-指定(以下、R):毎回アルバムを作る時は、今までの自分らより成長したビジョンとか、前向きなものを軸にしているんです。今回は何曲か作っていく中で、「かつて天才だった俺たちへ」がそうだったっていうのはありますね。DJ松永(以下、松永):ただ、前回の『よふかしのうた』を作った時は、いろんな要素を全乗せして、ラジオ盤も入れて、ライブDVDも入れて、曲も自分たちの引き出しを全部開けていろんな幅のものを詰め込んだので、「次は絶対に引き算だな」って宣言したのに、前回以上に詰め込んだ作品になりました(笑)。――今作では、「サントラ」「日曜日よりの使者」の2曲で菅田将暉さんとコラボもされていますよね。松永:ラジオ番組の『オールナイトニッポン0(ZERO)』で、菅田さんが月曜、俺らが火曜のパーソナリティをしているんですが、お互いにラジオ上でやり取りしていて、その落としどころが曲作りっていう。R:でも、「サントラ」が一番時間かかったよね。松永:菅田さんを生かさないといけないっていう初めての試みかつ、「作ります」って番組で宣言して、ある程度ストーリーが敷かれた状態で作るので、期待に応えるものを作らなければいけないというか。R:だから音的にも、お互いを100%生かせるようにかなり挑戦したんです。ヒップホップのビートが、菅田さんのパートでガラッとロックに変わる、とか。松永:Rさんが、菅田さんが映えそうな感じを逆算して作っていたのが、すごいですよね。――今回、それぞれが作ったリリックやトラックで、とくに「さすが」と思った曲はありますか?R:「かつて天才だった俺たちへ」のトラックは、最初にすっぴんの状態を松永さんからもらって、それに俺がラップを乗せたら、サビじゃないところにネタを足してくれたんです。それでだいぶ印象が変わって…。切ないのに疾走感があって、希望もある、みたいな。最近はとくに、俺がラップを乗せたあとのトラックの化けがヤバい。松永:「かつて天才だった俺たちへ」の歌詞がエモすぎてヤバかったから、早急にトラックを変えたんです(笑)。いかん、いかんと思って。Rさんのバースに引っぱられて、急いで追いつかせた感じです。ほかの仕事も本業に還元できたらと思っている。――二人は音楽活動以外にも、ラジオやテレビ出演などさまざまなことに挑戦していますが、そこにはどんな思いがあるのでしょう?R:自分らの本業にいい意味で還元できたらと思って全部やっています。ラジオは好きで楽しくやっているっていうのはありますけど、俺は全部ラッパーとして出ているので、それがラップに返ってくればいいなって気はしていますね。松永:本当にそう。いろんな仕事をしていますけど、一つ物差しがあるとしたら、音楽に返ってくるかどうかで決めています。でも、やるほどに結局一番好きなのは音楽なんだって実感するんです。――音楽への還元とは、音楽をやっている自分たちを知ってもらうことですか?あるいはそこで得た経験を作品に生かすとか?R:両方ですね。松永:うん。いろいろ学んで還元されるものもありますし、自分たちを知ってもらうっていう意味では、ラジオが大きい。それがなかったら、俺らは今も大したことないけど、もうちょっと歩みが遅かっただろうなと思います。ラジオを始めてから如実にライブの客層が変わって、人格ごと好きになってもらっている感じがしますから。――最近いろんなメディアでお見かけして活躍目覚ましいですが、二人が注目されている理由は何だと思いますか?松永:注目度が上がっているとか、お客さんが増えているっていう自覚がマジでないんです。「またまた」って思います。だってやってること、そんなに変わらないもんね。R:うん。目に見えて生活が変わっているわけじゃないもんな。松永:同じ家に住み続けてるしね。R:爆発的にモテもせえへんし。松永:仕事と家の往復ですよ。――実感なさそうですね(笑)。しかし、二人はいつも仲がよさそうですが、11年も一緒にいて、なぜそんなに仲がいいんですか?松永:え、11年!?出会いから計算するとそうか、俺が今年30歳だから…。30キモ!R:え?30歳がきしょいってことじゃなくて、松永さんがってことだよね。松永:俺が30なのがきしょい。R:俺が29歳ってことか。うわー。信じられへん。松永:なぜ仲がいいかってことですよね。なんでだろう…。ケンカもあんまりしないし、許せないところとかもないですね。自分の許せないところはありますけど。冷静に考えて、付き合いが長くなるほど、何も咎められませんよ。R:確かにそうなってくる。松永:相手を咎め始めたら、自分のダメな部分を探しちゃいますもん。最近は、もうちょっとRにヘマしてほしいって思ってる。そのほうが俺もヘマできるから(笑)。――ところで、今号の特集が「新しい暮らしのカタチ」なのですが、最近始めたことはありますか?松永:私はネットフリックスに入りました。怖い作品は苦手なんですが、頑張って挑戦して『ウォーキング・デッド』を観ています。怖そうだなっていう時は早送りをしながら観たり、何か作業しながら半目で観たり…。そういうことができるようになりました。R:俺は筋トレを1か月くらい続けて、1週間半空いて、明日からもう一回始めようと思っています。般若さんっていうラッパーの先輩に出会った頃から、ライブのために30歳になる前にはトレーニングをする習慣をつけておいたほうがいいよって言われているので。――ちなみに、生活の必需品ってありますか?松永:俺、肌が弱いんで、化粧水とかリップクリームは全部同じのじゃないとダメなんです。R:俺はドン・キホーテ。ライブで地方に行った時も、まずドンキを探します。松永:今日の私服もドンキだしね。ファミマの日もありますよ(笑)。クリーピーナッツ2009年にヒップホップイベントで出会い、2013年にユニットを結成。2017年、メジャーデビュー。7曲入りのニューアルバム『かつて天才だった俺たちへ』が、【ライブDVD盤(CD+DVD)】(¥3,600)と【ラジオ盤(CD)】(¥2,200)の2形態で発売中。D J松永1990年生まれ、新潟県出身。2019年、ターンテーブリスト世界一を決める大会で優勝。現在、『文學界』(文藝春秋)でエッセイを連載中。R-指定1991年生まれ、大阪府出身。日本最高峰のMCバトルを3連覇。『フリースタイルダンジョン』では、モンスター、ラスボスとして活躍。R-指定さん・シャツ¥9,800(スリック/ブライト TEL:03・5708・5432)中に着たTシャツ¥9,000(イキジTEL:03・3634・6431)デニムパンツ¥32,000(ナンバーナインTEL:03・6416・3503)チェーンブレスレット¥27,000(トゥエンティー エイティー/HEMT PR TEL:03・6721・0882)DJ松永さん・シャツ¥24,000(ロットワイラー/アドナストTEL:03・5456・5821)デニムパンツ¥16,000(ジベルタ/シアン PR TEL:03・6662・5525)ネックレス¥25,000(バフTEL:0154・38・2600)チェーンブレスレット¥25,000バングル¥18,000(共にトゥエンティー エイティー/HEMT PR)※『anan』2020年9月2日号より。写真・佐藤航嗣(UM)スタイリスト・鹿野巧真ヘア&メイク・藤井陽子取材、文・保手濱奈美(by anan編集部)
2020年08月29日andropのニューシングル『SOS!feat. Creepy Nuts』は注目を集めているCreepy Nutsとのコラボレーションということで、内澤崇仁さん(androp)とR-指定さん(Creepy Nuts)のお二人に話をうかがいました。彼らと一緒だからこその「やっちゃえ感」が出ました。今年の夏も各地でフェスやイベントで熱いライブを届けているandrop。ニューシングル『SOS!feat. Creepy Nuts』は、今やヒップホップ界隈のみならず多方面から大きな注目を集めているCreepy Nutsとのコラボレーション。「僕らがまだアンダーグラウンドな活動をしていた頃にandropの前田(恭介/Bass)くんがフリーライブを観に来てくれて。びっくりしましたけど、すごくラフな感じで接してくれたので、色んな相談に乗ってもらったりしていたのがきっかけです」(R-指定)「僕もCreepy Nutsの存在は知ってて、怖い人かと思ってたんですけど、物腰柔らかくてちゃんと挨拶してくれて。イメージとのギャップにびっくりしました」(内澤)「みんなフリースタイルでバトルしてるイメージが強いと思うんですけど、日常生活からあんなだったらヤバい奴ですよ(笑)」(R-指定)念願叶っての共同作業、楽曲のテーマは“夏”。完成したのは爽快なメロディラインとラップが掛け合うド派手なサマーチューン。これまでのandropのイメージを打ち破るようなハジケっぷりに驚かされる。「打ち合わせでandropのほうから『バカなことがやりたい』と提案されて。その結果、どちらでもやってなかった世界観の曲ができました」(R-指定)「今回はCreepy Nutsと一緒だからこそ『やっちゃえ感』が出たんだと思います(笑)」(内澤)タイトルの「SOS!」は“サウンズ オブ サマー”の略。≪ハッシュタグはウェイ!≫なんてハイテンションなワードが飛び交いつつも、夏を楽しめない人も巻き込む夏ソングに仕上がったのは彼らならでは。「実は全然、夏が好きじゃないんです(笑)。僕は、浴衣を着て夏祭りデートとかしたいけど行けないから嫌いになったタイプ」(R-指定)「僕もインドア派(笑)。夏を楽しんでる人も、楽しめない人も、共存してるのが世の中。そこを掘り下げることで物事は自分の心次第で面白くもなるし、つまらなくもなるという普遍的なメッセージに繋がるんじゃないかなと思ったんです」(内澤)そして楽曲制作以上に大変だったというMVもぜひチェックを。アロハシャツにグラサンではしゃぐandropのメンバーが新鮮だ。「MVはショウダユキヒロ監督にお願いしたんですけど。打ち合わせは撮影の前日で『何も決まってないので今から自分たちで考えてください』と。焦りましたけど、それこそが監督の狙い。自分たちの殻を壊したいと思ってた僕らが、自分たちでアイデアを出して殻を壊せるようにしてくれました」(内澤)「大雨の中、朝6時集合。でもandropは自前のウェットスーツや浮輪持参でノリノリでした(笑)。行き当たりばったりなことをやっちゃう豪快さ。ロックバンドの人たちがマジでロックやな、というのと同じ感覚で、この人らマジでヒップホップやなと思いました」(R-指定)うちさわ・たかひとandropのVocal&Guitar。2009年にアルバム『anew』でデビュー。多種多様な要素を取り入れた音楽性と、緻密なバンドアンサンブルで人気を博す。映像効果にこだわった幻想的かつ完成度の高いライブにも定評がある。アールしていDJ松永とヒップホップユニット、Creepy Nutsとして活動中のラッパー。テレビ番組『フリースタイルダンジョン』のMCバトルで圧倒的スキルを披露し注目を集めた。既にライブでも披露されているカップリングの「Sunrise Sunset」はandrop初のレゲエ・ナンバー。【初回限定盤CD+DVD】¥2,300【通常盤CD】¥1,200(UNIVERSAL MUSIC)※『anan』2017年8月30日号より。写真・小笠原真紀文・上野三樹(by anan編集部)
2017年09月04日