東京大学は1月19日、IoT機器向けの軽量なHTTPS通信の実証に成功したと発表した。実証に成功したのは同大学 大学院 情報理工学系研究科 講師の落合 秀也氏と富士通研究所、東邦大学 講師の金岡 晃講氏らの研究グループ。落合氏らの研究グループは、IDベース暗号方式による軽量なHTTPS通信技術を使うことで、従来方式と比較して計算量や通信遅延を「5分の1程度」にまで軽減したという。IDベース暗号は、情報システムで使われる識別子(ID)とのひも付けを得意とする公開鍵暗号方式で、過去の海外の論文で提供されつつも実用化されていなかった鍵交換に基づく暗号方式の改良方式を実験では採用した。具体的には、落合氏らが開発した、建物設備をIEEE1888でクラウドに接続させるためのIoT機器「IEEE1888-BACnet/IPゲートウェイ」に、金岡氏らが開発したIDベース暗号で使うペアリング演算エンジンのTEPLA(IDベース暗号に用いるコアとなるライブラリ)を用いて、富士通研究所がIDベース暗号によるTLSで動作するHTTPSを開発・実装した。これに加えて、IEEE1888で接続するクラウドサーバ上のソフトウェア「FIAPStorage2」にもTEPLAを用いてHTTPSを開発・実装し、東京大学内の空調設備の状態データ(オンオフ状態や設定温度、室温温度など)を、IoT機器からクラウドへ送信し、処理にかかる時間などを計測した。結果として、従来のTLS技術スイートと比較して通信時間が22%削減、通信データ量についても16%の削減に成功したという。この研究の詳細は1月19日より熊本県熊本市で開催される「暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2016)」で発表される予定。
2016年01月19日テックファームホールディングスは1月15日、IoTサービス事業を強化する目的で、インヴェンティットと資本業務提携したことを発表。今後は両社でIoTのサービスパッケージ「IoTビジネスパッケージ」(仮称)を開発し、今春の提供開始を目指すという。同サービスは、顧客企業のIoTサービスの開発からアプリケーション設計・開発、プラットフォーム提供までをパッケージにしてサポートするというもの。センサーやデバイスは顧客のニーズに合わせて選定し、サーバ開発や端末制御パッケージと組み合わせた提供も行うという。開発から実証実験、サービス提供までのコスト・期間を削減し、独自のIoTサービス開発を検討している企業や地方自治体などへの提供を見込んでいる。同サービスの各機能を制御するインタフェースには、業界別の専用端末プラットフォームである、「Tablet Home Contents Platform(THCP)」が利用されている。コンシューマ向け(BtoC)、企業内業務(BtoB)の双方に対応するため、セミオーダーしたアプリケーションを必要に応じてタブレット端末などにインストールし、提供するとしている。また、パッケージ提供するプラットフォームに対し、在庫管理、音声認識など必要な機能を追加していくことで、顧客の業種に合った業界専用端末を開発するという。端末は専用端末としてOSからカスタムが可能なため、遠隔の操作や盗難対策にも対応できるとしている。さらに、タブレット端末のほかにも、Windowsアプリケーションやウエアラブル端末への対応も可能としている。例えば、専用端末を活用することで、メーカーの製品保守において、製品に劣化を検知し故障前に部品交換するなどして、業務の効率化やコストダウンを実現するとしている。
2016年01月15日●大手メーカーはIoTに迷いを持っている世界最大級の家電関連展示会「International CES 2016」が閉幕した。今年目立ったテーマには、自動車やVRなどがあったが、何より盛り上がっていたのがIoTだろう。CESのトレンドから、2016年のIoTの動きについて考えてみたい。CESを主催するのはCEA(Consumer Electronic Association:全米家電協会)だったが、2016年からCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)に名称を変えている。家電だけでなく、幅広い技術をカバーするという現状に合わせての変更だろう。CES自体は「Consumer Electronic Show」のままだが、実際には家電の域を超えた幅広い製品や技術が展示される見本市となっている。○モノがインターネットに繋がった先にさて、本稿のテーマであるIoTは、「あらゆるものがインターネットに繋がる」というのが基本的な定義だ。これまでインターネット接続機能が付いていなかった製品、それこそ電球や乾電池から、自動車、カメラ、冷蔵庫、洗濯機といったものまで、とりあえずインターネット接続するための機能が搭載されるようになる。これは「サービスの時代」を意味する。電球がインターネットに接続しただけでは何の進歩もない。「インターネット経由で消灯する、電力消費を確認する」といったサービスと連携して初めて意味を持つのだ。また、単独でインターネットに接続するだけでなく、ほかのIoTデバイスと連携することで、さらなるサービスも考えられるだろう。CESは、開幕前日に主要メーカーによるプレスカンファレンスが実施されるのが常だ。今年もLG、Samsung、Huawei、パナソニック、ソニーといった面々が登場していたが、発表された新製品はインパクトに欠けるものが多かった。もともと、携帯電話は2月・バルセロナのMWC(Mobile World Congress)、カメラは同じく2月・日本のCP+での発表がメインで、CESはタイミング的に新製品を投入しづらい。○大手メーカーは迷っているただ、タイミングだけが問題だとは思えない。世界経済の減速感も否めないが、大手メーカーがIoTに迷いを持っているという印象があるのだ。例えば、Samsungは21.5型フルHDのディスプレイを備えた冷蔵庫を発表。これまで家族との連絡事項や家族写真などを貼り付けていた冷蔵庫のドアにディスプレイを搭載することで、インターネット経由で画像やスケジュールを表示できるようになる。LGの冷蔵庫は、ドアをノックすると透けて中身が見えたり、ドアの下部に足を差し出すとドアが開く、といった機能をアピールしていたが、こういった機能がユーザーに受け入れられるかは未知数である。IoT時代になり、冷蔵庫にインターネット機能が搭載されるとして、それをどう活用すべきか、メーカー側にも見えていないのではないだろうか。LGとSamsungがプレスカンファレンスで冷蔵庫と洗濯機しかIoT製品を紹介できなかったのは象徴的である。IoT時代になり、白物家電によりデジタル的な機能が盛り込まれる。問題は、その機能が望まれるものであるかどうかだ。単独でインターネットに繋がるだけでは、利用は進まないだろう。Samsungはメッセージボードなどの機能を持たせていたが、それがどこまで冷蔵庫に求められている機能かわからない。ドアの開閉時に庫内を撮影して、何を買うべきかを知らせる機能も搭載されていて、やりたいことはわからないでもないが、もう一段階の進化が必要だろう。●日本企業が苦手な「サービスとの連携」○日本企業が苦手な「サービスとの連携」「ハードウェアに独自の機能を載せて進化させる」ことは、日本企業の得意分野ではある。ただ、今回のCESでは、東芝やシャープが出展していないこともあり、白物家電における日本の存在感が薄まった。さらに、日本企業が苦手な「サービスとの連携」が必要になってくると、日本企業がIoT時代を先導するのは、このままでは難しいだろう。ソニーは白物家電を持たないため、今回もIoTに関する言及がほとんどなかった。Life Space UXがそれに近い存在かもしれないが、いまいちサービスとの連携に欠ける。Samsung、LGの韓国勢も、「サービスとの連携」の点で攻めあぐねているように見える。スマートフォンがハブになることから、Google、Appleのプラットフォーマーの動向は気になるし、AppleのHomeKitのようなデバイス連携技術が重要になってくるだろう。ただ、Appleはサービス開発では特別存在感がないし、Googleは冗談を抜きにしても「家庭的」ではない。IoTはあらゆるものがインターネットに繋がる分、サービスが多岐にわたり、そのサービス同士が連携したものになるはずだ。CESは家電を中心とした展示会であるため、サービスも家庭向けのものが望まれるだろう。Netflixがテレビの視聴スタイルを変え、CESの基調講演に立つように、新たな勢力が家庭内のIoT普及の起爆剤になる可能性はある。それが家電メーカーになるのか、新興のサービス企業がその座を奪うのか、それとも新たなメーカーが現れるのか、今回のCESではそれがまだ見えてきていない。今年の9月、ベルリンで開催されるIFAでは、白物家電のIoT化がどう進展しているのか、そして来年のCESでは新たな動きが見られるのか。今年のCESは、IoTの今後を占う以前の段階。まだ混沌としてIoTが無秩序に存在していただけ、そんな印象だった。
2016年01月13日デジタルハリウッド大学大学院は13日、 IoTプロダクトによるスタートアップを支援するために、ファブ工房「LabProto(ラボ・プロト)」を設置し、プロトタイピングから資金調達までを実践指導する「DHGSアクセラレーション・プログラム」を開始することを発表した。「DHGSアクセラレーション・プログラム」は、デジタルハリウッド大学院の在籍生、修了生、入学予定者を対象に、IoT(Internet of Things)プロダクトアイデアレベルから事業化するまでの実践指導を行う8ヶ月間のプログラム。ハードウェアのプロトタイピングが行えるファブ工房「LabProto(ラボ・プロト)」を新たに設置し、そこを拠点に「ファブリケーション」、「プログラミング」、「ファンディング(資金調達)」という3つの実践指導とコラボレーションを行うことで、同学発のスタートアップなどインパクトを与えるアウトプットを支援するという。また、優秀なプランには、同学からの「実装支援金」による助成が検討されるほか、成果発表会などでの企業・投資家向けデモ発表の機会が用意されるという。さらに、有望なスタートアップには、シェアオフィス入居、登記、商標登録、出資などの支援も行われるとのことだ。受講対象者および受講料は、2016年度に在籍している院生については無料。また、同学を修了後に新たなアイデアを持ち、サービス・プロダクトの開発を行うデジタルコンテンツマネジメント修士(専門職)は、半期分の設備費・演習費に相当する10万9,000円での受講が可能となる。なお、1月15日、16日、18日、20日には同学への入学を検討し、「DHGSアクセラレーション・プログラム」の受講希望者向けの説明会が開催される。 場所は東京都・お茶の水のデジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパス。受講希望者は、申し込みフォームより申請する。説明会の受講費用は無料。
2016年01月13日玄人志向は7日、ボードコンピュータ「Raspberry Pi 2」をベースとした「自作IoT体験キット(KURO-IOTEXP/KIT)」を発売した。価格はオープン、店頭予想価格は15,000円前後(税別)。直販価格は16,200円(税込)で、1月下旬の出荷予定、1月7日時点では予約受付中となっている。Raspberry Pi 2とさまざまなパーツがセットになっており、自宅のPCをスマートフォンからの遠隔操作で電源ONするマニュアル「玄人指南書」が付属。使う工具はドライバーだけだが、Linuxの知識が必要で、ユーザーサポートも初期不良対応のみとなる。キットの内容は以下の通り。付属の玄人指南書では使わないパーツも同梱され、今後の玄人指南書(更新版)で利用していく可能性もある。マイコンボード関連Raspberry Pi 2 Model B ×1USB ACアダプター ×1スイッチ付きUSB電源ケーブル(USB A―MicroB) ×1ケース x1MicroSDメモリ 8GB ×1ヒートシンク ×2(大小計2個)デバイス関連温湿度センサーモジュール ×1リレーモジュール ×15Vブザー ×1GPIO関連GPIOエクステンションボード ×1GPIOケーブル ×1830穴ブレッドボード ×1ジャンパーワイヤ(オス~オス) ×30ジャンパーワイヤ(メス~メス)20cm ×10ジャンパーワイヤ(オス~メス) 20cm ×1010kオーム抵抗 ×101kオーム抵抗 ×10黄色LED ×4赤色LED ×4タクトスイッチ ×2書籍玄人志向指南書 自作IoT編
2016年01月07日●コーヒーが無料で飲めますソフトバンクは18日午後1時、最新のIoT製品などを体験できるスペース「TECH CAFE」を、東京都港区六本木の「ワイモバイル六本木 Internet Park」の2階にオープンした。すでに一般向けにオープンしているが、事前にプレス向けの内覧会があったので、これから向かわれる方のために内部を紹介しよう。○IoTを体験するための自由空間TECH CAFEはワイモバイル六本木店脇の階段を上ってすぐの2階部分にある。カフェの名前通り、入り口側にコーヒーメーカーがあり、1人1杯まで無料で飲める。入って右側にはiMacとSurfaceが並び、フリーの作業スペースとして利用可能だ。場所はワイモバイルの2階なのだが、ソフトバンクやワイモバイル製品の情報発信ではなく、純粋にIoT機器に触れたり、一服しながらユーザー同士が情報交換するなどの場所として展開したいとのこと。全体的な雰囲気はこれから作られるのだろうが、まずは緩やかな自由空間といった塩梅で、変に商売っ気が感じられないところがいい感じだ。コーヒーメーカーの隣には3Dプリンタ(機種はda Vinci 1.0 AiO)が設置してあり、希望者は材料費だけで自由に使えるそうだ。ただし、トラブルが発生した場合のサポートは一切行われないため、ある程度3Dプリンタの利用経験があるユーザーが利用することが前提になる。●ユニークな製品を展示○資金調達中のガジェットに触れるチャンス入って左側と正面奥には、ソフトバンクが販売しているIoTガジェットが並んでいる。今回はワイモバイル心斎橋でしか扱っていないという超小型完全セパレートBluetoothヘッドフォン「EARIN」や、片手での撮影が簡単に行えるアクションカメラ「HTC Re Diplo」、ロボットカメラ「appbot LINK」、ファーウェイ製のAndroid Wear搭載スマートウォッチ、Bluetooth接続のタグ、Jawbone社のヘルスケア機器「UP」シリーズなどが展示されており、実際に触ってみることもできる。各展示の隣には「いいね」ボタンが設置されており、押された回数がすぐ上に展示中のスマートフォンの中に表示されている。こうして展示の中で評価が高かったものが取り扱いを増やされたり、急遽販売が決定するといったこともありそうだ。面白いのは、クラウドファンディングなどで資金調達中のプロジェクトだったり、ハッカソンやmake系イベントに出店されたものが展示されているコーナーだ。クラウドファンディングではコンセプトはいいものの、実際に触ってみると思っていたのとは違いがある場合も多く、資金投資前に実際に見られる機会はなかなかないため、いい試みだ。このコーナーは1カ月程度でどんどん展示内容を変えていきたいとのことだったので、期待しておきたい。六本木というと、今や日本のIT業界でも一流どころが集まる街になったが、一方で泥臭い開発話などとはやや離れた感のある場所でもある。そんな六本木の中心で、IoTのスタートアップなどがユーザーと触れ合い、製品を育てていける場所となれば実に痛快だ。夜20時までの営業とのことなので、会社帰りなどに少し立ち寄って、IoT製品の今と未来に触れてみてはいかがだろうか。
2015年12月18日NTTドコモは12月16日、日本システムウエアが提供する「Toami」を活用した新たなIoTクラウドサービス「Toami for DOCOMO」を、12月21日より全国の法人に販売開始すると発表した。Toamiは、IoT機器の稼働情報などの管理を必要とする法人向けに、用途にあったメニューを用いて、クラウド上に簡易にシステムを構築することができるIoTクラウドプラットフォーム。新サービスは、PCなどの管理画面で利用できる「Toami」の各種メニューから、主要なメニューを選定してパッケージ化したもの。管理に必要な機能は、顧客が管理画面で設定するだけですぐに利用可能。機器から出力された情報はPCなどの画面上に表示されるが、リアルタイムデータを表示する「メーター」や、時系列データを表示する「棒グラフ」や「折れ線グラフ」など、11種類の表示メニューから選択できる。また、機器から受信した情報に対し、設定した数値を超えると管理画面上で顧客の設定に合わせた通知メッセージを表示するほか、クラウド上に蓄積したデータをCSV形式で出力する。提供プランは、複数社でサーバを共有する「共有プラン」と専用のサーバを構築する「専有プラン」がある。
2015年12月17日警察庁は15日、ルータやWebカメラ、NAS、レコーダーなど、インターネットに接続されたLinux OS搭載のIoT機器を狙った攻撃に注意を喚起した。利用者が知らない間に機器が攻撃者に乗っ取られ、攻撃の踏み台に悪用されているという。IoT機器を狙った攻撃では、ルータやWebカメラ、NAS、レコーダーなどのIoT機器に不正プログラムがダウンロードされ、攻撃者の命令でサーバ攻撃などを行なう"bot"となる。不正プログラムに感染した機器は、感染拡大のため、インターネットに接続されたテレビやスイッチングハブといった他の機器を探索したり、DDoS攻撃やスパムメールの送信などに悪用されたりする恐れがある。この不正プログラムは、一般的なPCで使われるx86系CPUでは感染せず、IoT機器で多く利用されるARMやMIPS、PowerPC、SuperHなど、特定のCPUで動作するLinuxに感染することが確認されているという。IoT機器では処理能力の低下など、機器の異常に利用者が気付きにくいため、不正プログラムの感染や攻撃を受けている状況を把握しにくい。このため警察庁では、利用中のIoT機器について、最新のセキュリティ情報を確認すること、脆弱性対策がなされないサポート終了製品を使い続けないことなどを推奨している。
2015年12月16日IoT時代の到来により、PCやスマートフォンではない、いわゆる組込機器がネットワークに接続されようとしている。そうした中、OSという立場から存在感を増しつつあるのがWind Riverだ。「10年以上にわたって稼動し続ける機器を作ろうとする際に、我々のOSは採用されてきた。すでに我々の提供するなんらかのソフトウェアを搭載した機器は20億台を超えており、30億台に迫ろうとしている。こうして長年の取り組みによって得られた知見が今後のIoTに向けて生きてくることになる」と語るのは、同社のPresidentであるBarry Mainz氏。同社の主な顧客となる産業は大きく分けて「航空宇宙(防含む)」、「自動車」、「ネットワークインフラ」、「産業機器/医療機器」、「モバイル/コンシューマ」の5つ。これら5つの分野は、それぞれの分野で得た知見を他の分野に応用展開が可能であり、それがビジネスの成功につながっていると同氏は語る。そんな同社の現在のビジョンは「Transform our customer’s business to deliver the promise of a software-defined world」であり、そうしたカスタマの変化に向けて現在、組織体制などの変革を進めているという。具体的には、「これまで組み込みソフトの領域が中心であったが、ビジネスの機会がsoftware-definedへと移りつつあり、組織をそちらに注力できるようにすることを進めている」とする。そうした変革によって注目するのは以下の4つの分野となる。IoT(Internet of Things)Transformation of Data into InfoemationNetwork TransformationSafety and Securityここでの肝はやはりIoTの存在だ。エッジノードで生み出された膨大なデータは、セキュアな回線を経て、ビッグデータとして解析が行われ、その結果、目に見える情報へと変化する。上記4つは、この一連の流れを網羅するものとなる。「もちろん、旧来からのRTOSやオープンソースなどのコアビジネスも重要であり、そこに新たに『クラウド』という領域が別個に加わることとなる。クラウド分野としては、ネットワーク、IoT、自動車、システムシミュレーションといった分野に成長性があると見ている」(同)とのことで、IoTにそうした新たなビジネスの課題を解決する力を与えてくれるものとなるとした。ただし、IoTの実現そのものにもさまざまな課題がある。エッジノードとしても、センサの制御、それを搭載した機器の制御、そしてそれらからデータを収集するゲートウェイの制御といったことを行う必要がある。また、組み込みソフトウェアの開発も、従来のように、開発を終え、カスタマに納品したら終わり、というわけではなく、都度アップデートを行う必要性が生じることとなり、そのための開発体制へと変更する必要がでてくる。さらに、各所より集められたさまざまなデータをBI(Business Intelligence)へと接続する必要も出てくる。こうしたニーズを踏まえ、同社はこれまでのRTOS「VxWorks」や「Wind River Linux」に加え、新たにセンサノードなどに向けた4KBからの省フットプリントRTOS「Wind River Rocket」ならびに、ゲートウェイなどに向けた「Pulsar Linux」の無償提供を開始した。また、IoT機器の開発から、製品テスト、アプリ開発、デバイス管理といったライフサイクルの管理を実現する「Helix App Cloud」「Helix Lab Cloud」「Helix Device Cloud」といったソリューションも用意。ちなみに同氏はこうした新規OSやソリューションの提供について、「IT分野では仮想化が進んできたが、産業界でも仮想化の検討が進められており、こうした動きは、IT分野の仮想化の黎明期と似ている。ビジネスモデルは変化してきている。こうした動きはまさにその象徴であり、組み込みの世界もクラウドへの対応が必須となってきた」としており、変化に対応するために必然であったことを強調する。なお、新OSにはRocketとPulsarといった宇宙にちなんだ名称がつけられているが、これについて同氏に確認したところ、「社内でネーミングコンテストを実施して、ロケットや天体の話題が好きなスタッフが多かったこと、ならびに人の記憶に残る、多言語に渡ってイメージしてもらいやすい名称であったことから採用決定となった」としたほか、ブランドとして、デベロッパが覚えやすいものという意味もあるという。また、OSそのものは無償提供し、ソリューションビジネス収益を上げるビジネスモデルを採用するが、このソリューションビジネスに親会社であるIntelやIntel Security(McAfee)も含まれてくるのか、ということについては、「セキュリティは必須だ。バンドルして提供するパターンや、サーバ側に付加価値サービスとして提供するといったことも考えられる」とした。ちなみに、Rocketは32ビットMCUをサポートとうたっており、そのメインはARMとx86。それ以外にも組み込み向けの32ビットコアや16ビットコアも存在しているが、そうした他のプロセッサコアについては、カスタマのニーズ次第で対応を検討していくという答えであった。
2015年12月15日NXPセミコンダクターズ(NXP)は12月15日、IoT製品の設計所要時間を短縮する「LPC43S67-A70CMクラウド・コネクティビティ・キット」を発表した。同キットは、「NXP LPC43S67マイクロコントローラ」、「A7001CMセキュア・エレメント」、「NTAG I2C NFC」、「Murata SN8000 802.11b/g/n」モジュールと、Zentriのセキュア・コネクテッド・プロダクト・プラットフォームを組み合わせたもの。非接続型組み込み製品とクラウド接続製品間のギャップを埋め、製品設計の際に、セキュリティ、Wi-Fiスタック、デバイス・コミッショニング、クラウド・サービス用APIなどに関する専門的な知識が不要になるという。同社によると自動販売機、個人用ヘルスケア機器、双方向ディスプレイ、FA用産業機器、産業用ゲートウェイ、診断機器や、洗濯機やサーモスタットといった家庭用消費者製品などのセキュアなコネクテッド製品の設計時間を短縮するとしている。
2015年12月15日豆蔵ホールディングスは12月15日、事業会社のメノックスが、IoT対応デバイス・サービスの監視効率を目的としたシステム導入を検討している中小企業、団体向けに、IoTデータ監視ソリューションを2016年1月から提供することを発表した。同システムは、さまざまなIoT対応デバイスから収集したデータを、時系列にクラウド上で一元的に蓄積・管理し、リアルタイムで分析・解析、顧客が保有するPCやスマートデバイスに、トレンドやイベントログとして可視化する機能が提供される。例えば、倉庫や資材置き場にセンサーを設置し、センサーからのデータを収集することで、資材や品質の管理、倉庫の温度や湿度管理を可能としている。また、作業担当者からの報告データをもとに、稼働管理や進捗状況を一元管理することも可能としている。IoT対応デバイスまたはスマートデバイスからの通信プロトコルは、MQTTやHTTPおよびTCP/IPなどのプロトコルに準拠したデバイスに対応。データベースはNoSQLデータベースを構築し、テキスト・画像・音声・動画などのさまざまなデータを時系列に蓄積・検索でき、リアルタイムにデータの活用や幅広い分析・解析が可能だという。データの格納先は商用クラウドとオンプレミスに対応。
2015年12月15日ソフトバンクは12月14日、最新のIoT(Internet of Things)製品などを体験するスペース「TECH CAFE(テックカフェ)」を18日にオープンすると発表した。「ワイモバイル六本木 Internet Park」「ワイモバイル心斎橋筋」の2店舗内に開設する。「TECH CAFE」では、片手で気軽に静止画(1,600万画素)や動画(フルHD)の撮影ができるアクションカメラ「HTC Re Diplo」(HTC製)や、Wi-Fiで遠隔操作が可能なロボットカメラ「appbot LINK」(VARRAM SYSTEM製)、超軽量、超小型のBluetoothイヤホン「EARIN」(EARIN製)などの最新のIoT製品を体験できる。一部の製品は店舗で販売も行う。また、タッチパネルを使ってコーヒーを入れる「ネスカフェ ドルチェ グスト ドロップ」を設置し、来場者に無料でコーヒーを提供する。さらに、「ワイモバイル六本木Internet Park」では、最新のパソコンや3Dプリンタ、複合機などを自由に利用でき、コーヒーを飲みながら快適に作業できる。同社は今後、「TECH CAFE」設置店舗数の拡大を検討している。
2015年12月15日近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。最終回は、IoT/WoTの現在と未来、発展するための課題について解説いただきます。○現在の技術動向IoT/WoTの実現には多くの技術的要素が必要であり、これらはまだ発展途上にあります。IoT機器やクラウドをつなぐ"通信"は、携帯網や光回線、Wi-Fiが使われており、より省電力な環境を志向した通信では、ゲートウェイを介したBluetooth LowEnergy(BLE)やZigbeeが用いられています。今後は、このどちらもカバーする通信、つまり、より多くの機器をつなげつつ、低消費電力で広い範囲をカバーする通信手段が検討されています。2015年に3GPP Rel.12で策定された「LTE Category 0」では、通信速度が上下ともに1Mbpsと制限されるものの、通信不要な場合に"スリープ"する低消費電力モードが用意されました。また、3GPP Rel.13で策定を目指す「LTE-M」では、さらに上下200kbpsまで速度が低下するものの、屋内や地下でも接続性が保たれるような、より広範囲のカバリッジを目指しています。また、4Gの次、5Gでも「IoT」は技術革新を目指す要素の1つとして注目されており、より高速な通信に加えて、大量の機器を接続できることを目標にして、2020年に向けて技術の実用化を進めることが期待されています。技術革新は、通信のや省電力化や接続性の向上だけではありません。IoT機器向けのチップも、小型化や低消費電力化が進んでいます。これまでの小型機器向けチップは8/16ビットが主流でしたが、現在は2.0mm角未満のサイズのものでも32ビットを実現したマイコンが登場しており、ボタン型電池で数年間の稼働が可能な時代となりつつあります。もちろんチップだけでなく、IoT機器でキーパーツとなる"センサー"なども省電力化されており、加速度センサーもボタン型電池で半年~数年の駆動を実現しています。IoTに必要なものは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも重要なコンポーネントです。センサ制御や通信を制御するためのOSも、これまでは汎用的なRTOSなどが用いられてきましたが、「IoT向けのOS」として機器管理、通信、省電力制御、暗号化などのセキュリティをカバーするOSが登場しています。2014年にはARMがmbed OSを発表し、IoTデバイスの開発がより行いやすくなっています。また少し高性能なCPU向けにはAndroidをベースとしたBrilloや、WebをベースとしたFirefox OSがIoT向けとして発表されています。OS以外にも重要な存在が「プラットフォーム」です。例えば、機器間の相互接続を行うAllJoynやThread、日本国内のHEMS用標準規格となったECHONET Lite、スマートフォンを中心にウェアラブルなどの小型機器を接続するHomeKit、機器やスマートフォン、そしてクラウド間をつなぐWeaveが発表されています。ほかにも、通信関連団体を中心として機器を管理・接続する共通プラットフォーム「oneM2M」規格の標準化も行われています。ただし、これらは対象範囲や参加している団体、主な業界が異なるケースも多く、規格のフラグメント化が懸念されています。そのため今後は、oneM2MとAllJoynが協力関係を築いたように、連携や統一も今後必要になると考えられますが、これはWoTが目指すところであり、解決できる問題の1つだと考えています。これ以外にも、相互接続のための規格だけでなく、機器を組み合わせて動作させることを目的にしてIFTTTやYahoo! JAPANのmyThings、Gluinといったサービスが提供・提唱されています。これらの機器や情報を接続・集約した後のビッグデータ解析などについて、注目を集めているのがAI分野で、特にディープラーニングが今"ホット"なキーワードとなっています。これまで人が介入していた学習プロセスが自動化されるようになり、抽象的な判断も可能になることで、人と同様の動きが実現できたり、人では抽出が難しい結果を膨大なデータから導き出したりすることが期待されています。身近なところではスマートフォンの音声認識機能がありますが、今後は人々の生活をアシストしたり、自動運転や医療、工場、農業と幅広い分野へ広がったりすることが期待されています。○IoT/WoTの課題ビジネス/コンシューマーの双方で多くの期待を集める「IoT/WoT」ですが、一方で課題も山積しています。前述の「プラットフォームのフラグメンテーション」もその1つですが、特に懸念されているのが「セキュリティ」です。Web上の不正アクセスやマルウェア、ウイルスのニュースが頻繁に報道されていますが、IoT/WoTにおいてもこれらの悪質行為が起きる可能性は高いと考えられています。特に、情報だけでなく、自宅の鍵などの機器制御が可能になることを考えると、これまで以上に厳密なセキュリティが必要とされます。そのためには、暗号化通信や、機器・利用者の認証、機器の"耐タンパー性"が重要になります。一方でセキュリティとコスト、操作の手間はトレードオフの関係にあるため、スマートフォンを用いて個人認証を行うなど、安全性と簡便性の両方を満たす方法が求められています。セキュリティ以外にも、機器が増えることによるメンテナンスの複雑化も課題でしょう。初期設定や充電、電池交換などの操作、故障対応、ソフトウェア更新などは、一つ一つの機器で見るとあまり発生しませんが、数が増えることでその管理は煩雑になります。これらの管理を行うには、「遠隔での一括自動操作」や「低消費電力や室内無線給電」によるメンテナンスフリーへの取り組みが必要となります。厳密には「課題」ではありませんが、ビックデータ処理やAI技術のさらなる高度化は必要不可欠な要素でしょう。クラウドサービスの技術革新によって処理能力は向上していますが、現状は「情報の見える化」や「遠隔操作」にとどまっています。人の動きを学習して処理を自動化したり、"見える化"にとどまらず、それらのデータに基づいて、病気の予兆をとらえられようになったり、より価値のあるデータを自動的に抽出したりといった機能が、今後のIoT/WoTの普及に向けて必要になるでしょう。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年12月15日近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。今回は、IoTのその先にある「WoT」について解説していただきます。○Webがインターネットにもたらしたもの「インターネット」が世界に浸透し始めたのは1980年代です。当時はさまざまな通信規格が存在していましたが、徐々にTCP/IPという通信規格の採用が広がり、世界中に散らばっていたネットワークが1つに繋がりだしました。しかしながら、ネットワークが繋がったといえ、情報は世界各地に散らばっている状況でした。例えるならば、世界中に手紙が届くようになったものの、人々はどこに手紙を送ればいいか分からず、手紙の文面の言語が目的ごとに異なったのです。ニュースを見たり、メールを送ったり、テキストを送ったり、ファイルを送ったり……etc。それぞれのサービスごとに言語があり、専用アプリケーションがありました。「Web」が登場したのは1990年代です。世界中にばらばらに存在していた情報を、テキストや画像で表現してドキュメント化し、「ハイパーテキスト」という方法でつなぎ合わせる仕組みと、その言語であるHTML(HyperText Markup Language)、通信規格のHTTP(HyperText Transfer Protocol) が生み出されました。その後、必要な情報を探すための「検索エンジン」も登場したことで、世界中の情報へ素早く、簡単にアクセスできるようになり、Webの求心力がさらに高まっていったのです。これらの技術を下支えしたテクノロジーが、「HTML/HTTP」を解釈し、PCやスマートフォン上で表示するアプリケーション「Webブラウザ」です。Webブラウザは、"基本的"にはOSやWebブラウザの種類などの環境に依存せず、同じように情報を利用できます。このように膨大な情報を容易に利用できる基盤ができたことで、ネット上の情報提供やビジネスが容易になり、その後の爆発的な普及の要因となりました。現在では、国際的な標準を定めるW3C (World Wide Web Consortium)で、さまざまなWeb技術の標準化作業が行われています。より多彩な表現ができる「HTML5」や、高性能化した「HTTP/2」への進化、「JavaScript」というスクリプト言語などを組み合わせて、今までOSごとに作成されていたアプリケーションが、Webブラウザ上で簡単に表現されるような世界になりつつあります。Webは多くのPCやスマートフォン上で動作します。つまり、単なる"情報"から、アプリケーション実行環境まで提供する巨大なプラットフォームへと成長したわけです。○WebがもたらすIoTの進化Webの存在や成り立ちは、IoTにも応用できます。今までのIoTは、個別のサービスごとに適した独自の通信規格や動作環境を用いて、独立したシステムを構築することが大半でした。それぞれのシステムが中に閉じてしまい、個別に情報が存在している状況です。それぞれのシステムとしての価値を生み出すことはできますが、"個"を超えて膨大な情報に基づいた、より付加価値のあるサービスを生み出すためには共通に利用できる基盤が必要です。そのために、最近ではIoT機器を共通に繋げるための規格や枠組みを議論したり、手を組んで広げていくコンソーシアムやアライアンスが組まれています。しかし、これらはIoT機器が繋がる通信規格のみや提唱するベンダーに依存したものとなってしまいます。一方で、このIoTの共通基盤をWebのプラットフォームを活用して実現する考え方が「WoT (Web of Things)」です。WoTの強みは、すでに広く普及している相互接続可能な通信規格と、ハードウェアやOSに依存しない「HTML5/JavaScript」による動作環境、さらにこれらは「IETF」や「W3C」という特定の組織に依存しないオープンな標準化組織による規格、取り組みという点です。オープンであることで、さまざまな環境に対して強靭に鍛えられ、自由に幅広く使えるものになります。これに加えて、通常のIoT開発では、ネットワークやソフトウェア、ハードウェアごとに幅広い知識が必要になりますが、WoTではHTML5/JavaScriptという広く普及した言語で開発でき、多くの技術者や情報が存在しています。また、繰り返しにはなりますが、基本的にハードウェアやOSへ依存しないため、さまざまなネットワークやデバイスで動作することができます。このIoTとWoTの枠組みの比較を下図に示します。WoTは、さまざまなデバイスで動作し、容易に開発できる共通のIoT基盤を志向するものです。これまでも相互接続という部分では、Web APIという形で、多くのサービスが外部に情報を公開する取り組みを行っています。例えば地図や天気、ニュース、特定の機器情報などはWeb API経由で取得可能です。また、情報にアクセスしやすいように「Linked Open Data」という"データのWeb"と呼ばれる情報ネットワークが提唱されています。WoTはこれらとも親和性が高く、既存の膨大な情報の活用も容易になるのです。動作環境も、Webブラウザ上で動くだけでなく、Webアプリケーションが各OS用のアプリケーションと同様に実行できる環境もスマートフォンを中心に整ってきました。さらに、「Web OS」という、ハードウェア上で直接Webアプリケーションが実行できる軽量なOSも登場しています。代表的なものは、PC向けのChrome OSやスマートフォン向けのFirefox OSです。すでに日本国内でもこれらの製品として「Chromebook」や「Fx0」が発売されています。さらに小型の機器向けには、JavaScriptが直接実行できるマイコンボードなどが発売されています。このようにWoTは幅広く発展してきたWebのプラットフォームを活用し、IoTをより加速、発展させる取り組みなのです。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年12月11日●IoT分野に注力サムスン電子ジャパンは8日、新製品発表会を開催。KDDI向けに、“au史上最薄“を謳う薄さ約6.0mmの「Galaxy A8」を提供すると発表した。発売は12月中旬以降を予定。このほか、ウェアラブル端末なども発表された。本稿では、発表会の模様をお伝えする。○IoTの活性化を予想説明会の冒頭、サムスン電子ジャパンの代表取締役最高執行責任者である堤浩幸氏が登壇し、新製品の概要を話した。モバイル市場では、スマートフォンの総販売台数が減少していることが報じられている。これについて、堤氏は「まだフィーチャーフォンを利用している方も多い。また最近ではMVNOも人気がある」と分析。市場は今後も変化を繰り返しながらも成長していく、というのが同氏の見方だ。そんな昨今、サムスン電子ではIoT分野に注力していく。この日に発表されたのは、約5.7インチのAndroid端末「Galaxy A8」、スマートウォッチ「Gear S2」「Gear S2 classic」、ヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」、18.4インチフルHDタッチスクリーン搭載タブレット「Galaxy View」。IoT分野の活性化により“インターネットにつながる端末の数が飛躍的に伸びる”と見込む同社が、このタイミングで自信をもって投入する製品群だ。「NEXT IS NOW。いま、ここがIoTの起点となる」と堤氏。今後とも積極的に事業創造をしていく、と宣言した。●5つのSがテーマ○新製品は5つのS製品の詳細については、プロダクトグループの糸櫻幹推氏が説明した。同社では、11月12日からNTTドコモで発売中の「Galaxy Active neo SC-01H」を含めた5つの新製品の特徴を“5S”としてアピールする。Galaxy Active neoは耐衝撃性能に優れた「Strong」。またGalaxy A8は、薄さ約6.0mmの「Slim」な端末として訴求する。約5.7インチのディスプレイ(1,920×1,080ピクセル)を備えながらも、「片手操作モード」を搭載するなどして持ちやすさに配慮したGalaxy A8。フルメタルボディにより「負荷がかかっても、折れ曲がってしまうようなことがない」(糸櫻氏)という。ちなみにGalaxy A8をこのタイミングで投入する狙いについては「ユーザーのニーズが多様化している現在、新しいシリーズの投入が必要と考えた。いま市場では画面の大型化、個性的なデザインに注目が集まっている。そこで、大画面だけれど薄くて持ちやすいA8が親和性があると感じた」とアピールした。○円形デザインのGear S2Gear S2、Gear S2 classicは円形デザインを採用した「Stylish」なデザインが特徴。同社では2013年から時計型のウェアラブル端末を販売してきた。今回の製品は第4世代に当たるもので、糸櫻氏は「これまで培ってきた技術と、お客様からのフィードバックを反映している」と説明する。電池持ちは最大4日間のロングライフで、Android 4.4以上のスマートフォンで利用できるなど、対応端末が多いのも特徴のひとつとなっている。時計型の端末の場合、ディスプレイが小さいので操作しようにも指で隠れてしまう。また指で何度も触ると指紋で汚れてしまう。このような利用者の不満を解消するため、画面のタッチが最小限で済むようにベゼルを回すことで操作できる「サークルUX」を採用した。糸櫻氏は「お客様のリアルな声をもとに開発した。細かいチューニングが施されている。製品のこだわりを皆さんにも体験してほしい」と胸を張った。●Gear VRとGalaxy View○Gear VR×Facebook×THETAヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」は「Spectacle」な体験が期待できる製品。糸櫻氏は「巷の製品は映像がディレイするので脳が混乱して、結果としてVR酔いを起こしてしまうが、本製品は9軸センサーにより追随性を向上させた」と解説。本製品ならVRを長時間楽しめるという。また着け心地に関しても、現行モデルのフィードバックを活かして改善。メガネをつけたままでも快適に利用できるようにした。ゲーム、映画、スポーツ、アーティストのライブ映像など、現状で100を超えるコンテンツを用意。またリコーの「THETA」シリーズのような全天球カメラで撮影した動画をFacebookに投稿すると、Gear VRで楽しめるようになっている。糸櫻氏は「皆さん自身がVRコンテンツをつくり、披露して楽しめる時代になった」と話した。○Galaxy Viewは驚きの大画面一般消費者の間では、オンラインによる動画の視聴機会が増える一方で、テレビの大画面化も進んでいる。こうした背景を踏まえて開発されたのが、18.4インチのフルHDタッチスクリーンを搭載した「Galaxy View」。まさに「Surprise」級の大きなディスプレイが特徴となっている。コンシューマーが動画の視聴に利用できるほか、ビジネス用途も想定されている。例えば小会議室ならプロジェクターの代わりとしてプレゼンを行える。ショップではデジタルサイネージとしても利用可能だ。背面には持ち手がついており、持ち運びやすさにも配慮されたGalaxy View。糸櫻氏は「映像体験を全く新しいステージに連れて行く製品」と紹介している。***先に登壇した堤氏は「2020年の東京オリンピックの頃には、技術の発展により次世代のスマホでバーチャルリアリティの新たな世界が体験できるかも知れない。新しいライフスタイル、ビジネスモデルが生まれるのは間違いない」と話した。また、糸櫻氏は「新しい価値を提供する5つのSを、多くの人に体験していただければ」とし、製品の展開に期待を寄せていた。
2015年12月09日日立キャピタルと日立ハイテクソリューションズは12月8日、IoTを活用した事業開発に関する業務協定を締結し、IoTプラットフォームと金融サービス機能を融合させた、IoT活用型ファイナンスサービスの提供を、2016年1月より本格的に開始すると発表した。日立キャピタルはこれまでも、装置メーカーと連携し、エンドユーザーの経営サポートをめざした従量課金ファイナンスサービスを提供してきた。また日立ハイテクソリューションズは、従来さまざまな装置やセンサー、デバイスをインターネットに安全に接続し、遠隔監視と管理を行うIoTに関するビジネスを展開してきた。このような背景のもと、両社はリースやアセットマネジメント、保険などの金融サービス機能と、IoTプラットフォームを組み合わせ、産業・工作機械や医療機器、省エネ設備、理化学・検査装置、半導体製造装置などの機械・設備を対象とするIoT活用型従量課金ファイナンスサービスを構築した。本サービスでは、IoTクラウドサービスによって取得した客観的な装置データを活用することで、装置のエンドユーザーに対し、稼働状況に応じたコストの最適化やキャッシュフローの軽減を実現するとともに、機械・設備などに関するリモートや予防保全などを可能とするとしている。これにより、装置メーカーからエンドユーザーに向けて、設備入れ替え時期の最適化といった付加価値サービスが提供される。本サービスは、日立キャピタルがIoTクラウドサービスと従量課金ファイナンスサービスをパッケージ化し、ソリューションとして一括提供する。また、IoT稼働情報に基づく従量課金などフレキシブルなサービス体系を可能とし、機器の代金や保守料の一本化など、顧客のニーズにあったサービスが提供される。定期点検や定期部品交換、ファイナンスをパッケージ化してソリューションとして提供し、IoT活用により、リモートや予防保全といったきめ細かい付加価値サービスを提供するとともに、製品ライフサイクルをサポートするとしている。両社は、装置メーカーおよび装置のエンドユーザーをはじめとした多くのステークホルダーとの協業を進めるとともに、IoTと金融の融合を追求し、課題解決に向けたトータルソリューションの提供を目指す。
2015年12月09日パーソナルメディアは12月7日、組み込みリアルタイムOS「T-Kernel」を含むマルチOSに対応したIoT機器向けプラットフォーム「T-Kernel 2/MIPS-M150ボード」を発売開始したと発表した。同プラットフォームは、Ingenic SemiconductorのMIPSプロセッサ「M150」を搭載したボードで、XBurstアーキテクチャにより0.07mW/MHzという超低消費電力を実現したM150プロセッサを1GHzのクロックで駆動するCPUモジュールと、無線LAN、Bluetooth、USB 2.0 Function、USB-UART、MicroSDカードスロット、GPIO、各種スイッチ、温度センサ、LEDなどを搭載したベースボードから構成されており、IoTの端末ノード向けに適したプラットフォームを提供するという。同社ではこれまで、トロンフォーラムで開発されたオープンソースのリアルタイムOS「T-Kernel 2.0」を組込み系CPUに移植し、開発評価用から最終製品向けのシステムまで幅広い用途や応用分野に対応した組込みソフトウェアを提供してきたが、同ボードについてもT-Kernel 2.0を移植し、その成果をトロンフォーラムから全世界に向けて公開するとしている。同ボードの標準価格は2万9800円(税別)で、同社のWebショップなどから購入可能。なお、同ボード上では、T-Kernel 2.0に加えて、Ingenic提供のLinuxを動作させることもできる。
2015年12月07日LIXILは12月2日、東京大学大学院情報学環ユビキタス情報社会基盤研究の坂村健 教授の協力を得て、住生活におけるIoTの活用に向けた「LIXIL IoT House プロジェクト」を開始すると発表した。同プロジェクトは3つのフェーズに分かれており、第1フェーズ(2015~2016年)で構想・予備実験を行い、第2フェーズ(2016年~2017年)では実証環境の構築、第3フェーズ(2017年~)では、実際に実証実験施設を建設し、有効性の検証を行う予定。同社はかねてより、研究施設「U2-ホーム」でセンサーを使用して生活シーンに合わせて住環境をコントロールする研究に取り組んでおり、今回のプロジェクトについては「IoT House プロジェクトでの研究を通じて、豊かで快適な住生活の未来に貢献していきます」とコメントしている。
2015年12月03日情報処理推進機構(IPA) 技術本部ソフトウェア高信頼化センターは12月2日、IoT時代における製品の安全・安心を確保するための開発指針の策定に向けた実証実験を、日本ロボット工業会ORiN協議会および機械振興協会との3者共同により12月7日から2016年3月末まで実施すると発表した。内容としては、工場内の製造ラインを構成する装置からログなどの情報を収集し、異常を検知した場合に速やかに装置を安全に停止する仕組みなどを実装する「障害の波及防止対策(製造ライン稼働時の異常検出と対策)」および、工場内の製造ラインの増設や新規に装置を追加する場合に、その装置が信頼できる装置であることを確認するために、装置が信頼できるかなどの品質情報をやり取りする仕組みを実装し、製造ラインに組み込んで良いかの判断を行う「相互接続時の信用確認(要求品質が異なる装置を接続する際の対策)」の2つを予定している。同実証実験の仕様決定、評価と報告書作成をIPA、実証実験のためのORiNアプリケーション作成をORiN協議会、実験環境の提供を機械振興協会が行う。IPAによると、同実験で得られた結果は、現在策定中の開発指針に反映し、その有効性を高めると同時に、内容の充実を図っていくとしている。
2015年12月02日日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は12月1日、IoTにおける複雑なアプリケーション要件に対応可能な産業用コントローラ「IC-3173」を発表した。同製品は、Intelの「Core i7」(デュアルコア版)に、高度な信号処理や画像処理にも対応できるユーザプログラマブルなXilinxのFPGA「Kintex-7 160T」、カスタマイズが可能なデジタルI/O、高速閉ループ制御を組み合わせることで、高い処理性能を実現。PoEに対応したGigabit Ethernetポートを6つと、USB3.0ポートを2つ搭載しているため、GigE VisionやUSB3 Visionに対応するカメラを複数つないで、取得した画像を同時に処理することができる。また、EtherCATマスタ、Ethernet/IP、RS-232/485、Modbus、Modbus/TCPに対応しており、PLCなどのデバイスやオペレータ用インタフェースとの通信が確立可能。システム開発ソフトウェア「NI LabVIEW」に対応しているので、制御アルゴリズムのカスタマイズや、画像処理の実行、高度な解析を容易に実施できるという。同社によると、従来のように複数のコントローラを用いてシステム構築をする必要がなく、一台のコントローラでシステム構築が行えるため、システムの複雑さが軽減され、低コスト、省スペース化が実現できるとしている。
2015年12月01日小田急エージェンシーとKDDIは11月30日、路線バスの車内でKDDIのIoT(モノのインターネット)技術で実現する「リアルタイム・バスサイネージ」の実証実験を2015年11月4日から2016年1月31日までの予定で実施中だと発表した。同システムは、既に提供中のバス営業所(基地局設置場所)での定期的な情報更新とは異なり、インターネットに常時接続するバス車載モニターにリアルタイムで情報を更新できることが特徴という。最寄りの鉄道駅の運行情報や気象情報、ニュースなどリアルタイムに情報コンテンツを配信する他、災害時には台風進路情報や津波情報、地震情報、河川氾濫情報なども配信可能であり、バス利用者の利便性と安全性が向上するとしている。また、企業広告も配信することでバス利用者と企業の新たなタッチポイントの創出も期待できるとのこと。情報コンテンツに加え、企業広告も時間ごとやバスの車両ごとに表示する内容を変えることが可能なシステムであることから、今後のバス・サイネージの車内での新たな活用方法について検討していくとしている。同実験は、小田急バスの協力を得て小田急エージェンシーがサイネージ機器を設置し、KDDIの通信網およびコンテンツ配信システムを使って実施している。なお、実施エリアは原則として小田急バス吉祥寺営業所内の運行エリアであり、実施台数は3台。車両1台につき2箇所、21.5インチの液晶モニターを設置する。小田急エージェンシーとKDDIは同実験でコンテンツ配信の他、機器設置の安全性、利用者が車内のどこからでも視認できるような設置場所の検討、利用者満足度、広告媒体としての事業採算関連などを検証する。将来的には電車内のデジタル・サイネージとバス・サイネージの連携や、営業所単位で販売しているバス広告媒体についてバス事業者間を越えてより広域で管理し、魅力的な広告媒体となることを目指して取り組んでいくとのことだ。
2015年12月01日KDDI、沖縄セルラーは11月30日、12月1日より、スマホと連携して使用するIoTを活用したauオリジナルのインテリア雑貨を「au WALLET Market」にて発売すると発表した。「au WALLET Market」は、auショップやLUXA(ネットショップ)で展開する同社のショッピングサービス。ここで販売を開始するのは、auオリジナルのインテリア雑貨「Umbrella stand(傘立て)」と「Dust bin(ゴミ箱)」。「Umbrella stand」は、専用のアプリ「Mono Manager」をダウンロードしたスマートフォンを持って近づくと、降水確率に応じて晴れならオレンジ、曇りなら白、雨なら青に光ることで、「今日傘を持っていく必要があるかどうか」をLEDの色で知らせてくれるという。一方、「Dust bin」は、同じ専用のアプリ「Mono Manager」をダウンロードしたスマートフォンを持って近づくと、ゴミ箱が光ると同時にアプリ側にも通知が届くことで、ゴミの収集予定を知らせてくれる。通信方式はいずれもBluetooth(約3m以内)。
2015年11月30日○HEMSとスマートグリッドIoT実用例の1つが「HEMS(Home Energy Management System)」です。一般的に「家庭で電力を管理する」と聞くと、「電気を使いすぎないように省エネを心掛ける」とか「電気の使いすぎで、ブレーカーが落ちてしまわないよう気を付ける」といったことを連想するでしょう。しかし最近では、太陽光発電のソーラーパネルを設置し、蓄電機能を備えたハイブリッド車や電気自動車を利用する家庭も増えています。こうした家庭の住宅では、「どれほど発電したか」「どれほどの電気を消費しているのか」「売電できるか」などをリアルタイムに把握して制御する必要があります。「HEMS」はこれらの電気を効率よく運用するシステムです。HEMSでは、ソーラーパネルなどの電力を発生する装置や電力を消費する装置にセンサーを取り付け、リアルタイムで電力を測定・制御します。これだけでは住宅内に閉じたシステムですが、通信網を介して情報をクラウドへ送信することで、家族がスマートフォンなどから電力消費量を見ることができるようになります。この見える化によって、無駄な電力消費を把握できたり、消し忘れた電灯やエアコンなどがあることを知ることができたりします。さらに、各家庭で情報を見るだけではなく、そこから送られてくる大量の電力データに基づいて、電力会社がリアルタイムに電力の需要予測や発電予測を行い、それに基づいて安定した電力供給や効率的な電力利用を各家庭に働き掛けることができるようになります。この技術は次世代送信網の「スマートグリッド」と呼ばれ、国内外で取り組みが進められています。このHEMSへの取り組みは以前から行われていましたが、特に東日本大震災以降、電力の利用効率化や省電力化のために注目が高まってきました。さらに2016年に行われる電力小売りの自由化を目指し、さらなる注目が集まっています。日本政府もグリーン政策大綱においてHEMSを推進すること、2030年を目標に普及させることを表明しています。○スマートホームIoTを電力だけではなく、宅内にある家電まで広げるとスマートホームと言われる事例になります。例えば、家電を通信網に接続した場合、外出先から電源の消し忘れに気付いて電源を切ることができます。また「ジオフェンシング」と呼ばれる技術を用いると、自宅の一定距離以内に近づくと自動的にエアコンの電源を入れるといったことが可能になります。さらに、家電のみならず、明るさや色をスマートフォンから変えられる電球や鍵をシェアして入退室記録ができるスマートロック、温度計や湿度計などのさまざまなモノが情報網につなげることが始まっています。このように多くのモノが高機能化され、情報網につながり始めているのは現在のスマートホームの特徴でしょう。これらの用途でキーとなるのはやはり「スマートフォン」です。組み合わせると、室内気温が高くかつ帰宅10分前であればエアコンを自動的につけるという動きができますし、誰も家におらず帰宅1分前になったら宅内の灯りをつけるといったことも可能になります。一つ一つのモノはシンプルで小さくても、通信網を介してリアルタイムに情報を送受信して連携させることで、より便利なことが実現できるのです。現在は手動で設定したモノ同士の連携にとどまりますが、今後は集められた膨大な情報から、人々が行う動きを学習して「連携が自動化される」「消費電力が低くなるように温度設定を自動的に行う」「ロボット掃除機が掃除経路を学習して効果的な掃除経路を見つけ出す」など、人々が意識することなく快適な生活が送ることができるようになると想定されます。○ヘルスケアと見守りサービス人体のバイタル情報や、生活のデータを集めて活用するIoT事例がヘルスケアです。心拍数や歩数、消費カロリー、睡眠状態といった1日のバイタルデータを集める活動量計は、そのデータに基づいて食生活や運動などの生活改善に役立てます。また、歯の磨き方のデータを集めて改善を指示してくれるスマート歯ブラシや、睡眠状態を監視してくれるベッドのマットレス、食べる速度を測るフォーク、体重のかけ方などの走り方をチェックする靴の中敷きや靴下など、身の回りのさまざまな生活用品がIoT化され始めています。現在は、これらのモノはスマートフォンとBLEで接続され、直接スマートフォン上でデータを確認したり、クラウド上へデータを保存したりすることが主流ですが、これらについても将来的には集められたデータから、より的確な改善を自動的に提案、また医療に役立てるようになるものと想定されます。また、生活データを集めて通信網でリアルタイムに送受信して役に立つのが、見守りサービスです。例えば、ご高齢者が日常的に使用するポットなどの電気製品、開け閉めするドアにセンサーを取り付けておき、遠隔からその状態を監視し一定時間利用がないなど異常を検知すると通知します。また、認知症の方の徘徊や子供の迷子においても、充電不要で長期間動作可能なビーコン発信機と多くの方の持つスマートフォンでのビーコン検知データを用いて、早期に場所を特定する検証が行われています。これらについても大量に収集したデータを処理することで、より正確な異常判断や位置特定が可能になることが期待されます。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年11月30日つい先日、映画「BACK TO THE FUTURE Part2」(1989年公開)で未来都市として描かれていた「2015年」のまさにその日付が現実にやってきたことに、ネットを中心に盛り上がりをみせました。実際の2015年はというと、映画の中で描かれていた空中を飛べる未来的なボードなどはまだありませんが、当時から比べると身近なところで驚くほど進化を遂げたものが数多くあります。進化をとげたアイテムには、話題の「IoT」(アイオーティー)を駆使したものが数多く見受けられます。今回は、多忙なアラフォーの暮らしに役立つ、注目のIoT 新アイテムをご紹介しましょう。そもそも「IoT」(アイオーティー)って何?昨今注目が集まっている「IoT」(アイオーティー)の分野。あまり聞き慣れないこの言葉、一体何なのでしょうか?IoTとは “Internet of things”の略で、「モノのインターネット」と言われることもあります。インターネットを経由して、家電やロボットなどとスマホやPCが連動していたり、モノとモノ、モノとヒトとが相互に通信できる仕組みだそう。なんだか難しそうだけれど、ビジネスなどだけでなく、実は日常生活にも徐々に広がってきています。家族とのコミュニケーション不足に活躍!愛らしいロボット「BOCCO」(ボッコ)働き盛りの共働き家庭も多いのが、アラフォー世代。両親も高齢になり離れて暮らしていたりと、なにかと家族間のコミュニケーションが希薄になりがちです。そこで、そんなコミュニケーション不足を解消するために楽しく取り入れられる身近なテクノロジーに注目してみましょう。未来的でありながら、どこか親しみを感じるデザインのコミュニケーションロボット「BOCCO」(ボッコ)は、インターネット経由で家族のスマホとつながり、相互に声のメッセージを送りあったり、スマホからBOCCOに送ったテキストメッセージを読み上げてもくれるロボットです。受け手側にスマホがなくても簡単にコミュニケーションがとれるのが、嬉しいポイント。さらに、玄関ドアに付属のセンサーを設置すれば、留守中でも誰かが帰宅した際のドアの開閉により通知が届き、無事の帰宅を確認することができるのです。開発しているのは、ユカイ工学の青木さん。自身も共働きで子育てをしているパパ。普段、子供と奥さんがやりとりしている内容をパパも共有でき、子供からの何気ない声のメッセージが届くことで多忙な仕事中も癒やされるそう。それぞれの家庭では、メモ書きを置いてきたり、交換日記をつけたり、子供が帰宅したら親に電話やメールを入れるルールにしたり… と創意工夫しながらコミュニケーションをとっているかと思います。でも、電話がかかってきてても、仕事の会議中や電車移動中などではすぐに電話をとることができず、コミュニケーションが行き違いになってしまうことも。そもそも家庭の方針や年齢的に子供に携帯を持たせていなかったり、まだメール操作ができなかったりと、スマホや携帯に関する心配事も多く聞かれます。また、離れた場所に住む高齢の親の生活も気になるところです。スマホが苦手な世代、スマホをまだ使えない世代の家族とのコミュニケーションにもひと役かってくれるでしょう。今後は、スマートハウスとの連動でBOCCOが照明のON/OFFのコントロールをしたり、天気を教えてくれたりと、ライフスタイルに合わせた機能が追加されていくのだとか。家族の一員になったロボットが進化していく過程を肌で感じられるのも楽しいですね。女性の必需品、「鏡」にもIoTが!?今やSNS用に自撮り写真をアップする機会も多い時代。でもセルフィー棒を買うのはちょっと、、と思う方に、朗報です。まだ日本では発売されていませんが、海外ではこんなアイテムも話題に。一見普通の鏡のように見えますが、自分の姿を確認しながら写真を撮ったり、そのままSNSにアップもできる優れもの。外出先からは、搭載されたカメラで家族の様子を見守ったり、物騒なこの時代、泥棒対策にも。さらに内蔵スピーカーで音楽を楽しめたり、家のエアコンなどと連動してリモコン代わりにもなるのだとか。今後はどんな身近なものがIoT化されていくのか楽しみですね。家事もロボットに任せる時代に!?先日話題になっていた自動洗濯機ならぬ全自動洗濯物たたみ機の出現など、将来的には今まで手でしか行えないと思っていた家事も、これからもっと進化していくことでしょう。身近なところで言うと、今では定番となったお掃除ロボット。勝手に部屋を動き回りお掃除してくれる姿を初めて見たときは驚きでいっぱいでしたが、さらなる進化を遂げているのだそう。最近ではスマホと連動して外にいながら操作もできるようになりました。まさにIoTの新領域です。今までのルンバは、同じ場所を数回通り掃除していたのに対し、最新のルンバは自分の居場所を搭載されたカメラで把握してマッピングすることにより、一度通るだけでキレイにできるようになったそう。それにより充電が切れても、ルンバ自身で充電スポットに戻り充電し直した後、掃除しきれなかったスペースに行き仕事を続けてくれる、まさにお掃除スペシャリスト。またスマホと連動することにより、外出先から別の部屋にあるルンバを移動させたり、「急な来客が!」という時にもルンバを起動して掃除をしたりもできるのだとか。昔は夢の世界のみの話だったロボットとの暮らし。仕事と家庭の両立に忙しいアラフォー世代こそ、最新のロボットの力を借りて、スマートライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。
2015年11月27日日立コンサルティングと日立システムズは11月26日、企業のIoT導入を支援するサービス「IoT導入支援パック」を販売開始したと発表した。同サービスは、日立コンサルティングが提供してきたIoT構想策定支援を行うコンサルティングサービスと日立システムズが提供するクラウド型のデータ収集/管理/分析環境をトライアルパックとして提供するもの。同サービスの活用により、IoTのビジネス活用に向けたテーマ設定、計画立案、検証、検証結果に基づく計画見直しといった一連のプロセスを短期間・低コストで行うことができる。また、データ収集/管理/分析環境は、日立システムズの「ファシリティ・モニタリングサービス」を活用し、セキュリティの確保された日立システムズのデータセンターから管理対象数、利用期間に応じたクラウド型で提供するため、大きな初期投資を行うことなく計画策定から効果検証までを実施できるという。同サービスの利用後には、IoT本格導入にあたってのM2Mネットワークの構築や制御系システムセキュリティ、大規模データの保管といったニーズに日立システムズが対応する。両社は主に工場やプラント設備を持つ製造業向けに同サービスを拡販し、2018年度末までに累計50社への販売を目指すとしている。
2015年11月26日○IoTという考え方近年、IoT(Internet of Things)という言葉をよく耳にするようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。IoTは「モノのインターネット」と呼ばれます。1990年代に世間へ広がり始めたインターネットは、通信網を介し、人々が家に居ながらにしてさまざまな情報を収集できるようになりました。買い物を行い、メールやチャットでコミュニケーションを図り、これが新たな価値を次々と生み出し、生活がとても便利になりました。現在、これと同じことが"モノ"にも起ころうとしています。今までただの"モノ"でしかなかった"物"が通信網につながり、情報を収集・発信・処理するようになります。この変革によって、これまで人力で処理していた膨大な情報を、リアルタイムで"ビッグデータ処理"できるようになるのです。さまざまな処理が効率化・自動化されて、新たな価値を生み出します。IoTとは、ただモノが通信網につながることを指すのでなく、そうした考え方も示しているのです。ただ、類似した考え方は、IoTという言葉が台頭する以前からあったことをご存じでしょうか?代表的なものはM2M(Machine to Machine)です。M2Mは、モノとモノ同士が人の介在なく情報をやり取りし、処理を行うシステムを指しています。車両管理を行う「テレマティクス」や電力管理の「スマートメーター」などの遠隔監視機能として実用化され、すでに普及しているものもあります。M2Mは主に"産業分野"で活用されていましたが、これに対してIoTは「宅内」や「ヘルスケア」など、より身近なモノにまで範囲を広げています。また、つながるモノの数も膨大で、その膨大なデータを活用した高い付加価値を生み出す傾向があります。なお、厳密な切り分けの定義があるわけではなく、M2MもIoTの1つとして扱われることもあります。○さまざまな分野で活用されるIoT幅広い概念を持つIoTはさまざまな分野で活用されようとしています。大規模な例には、都市環境を改善しようという「スマートシティ」があります。これにはいくつかの取り組みが組み込まれており、エネルギー面では「各家庭の電力使用量を一定時間ごとに収集して、電力の供給を安定・効率化」、交通の面では「道路や駐車場などの交通情報を収集して、都市の渋滞を軽減」などの効果が考えられています。自動車では、各所に取り付けられたセンサー情報に基づいて、自動車の状態や修理の必要性を把握。これを利用して、「安全運転を行っているか」「事故を起こしていないか」を確認できるほか、近年研究が進んでいる「自動運転」では、ほかの車の動きや交通管制といった情報に基づいて、より安全・効率的な運転が可能になると期待されています。工場においても、機械の管理だけではなく、工場内外の膨大な情報に基づいた最適的な生産、品質管理を行う「インダストリー4.0」がドイツを中心として提案されています。農業においては、気温や水分量などの気象条件や農作物の成長状態を収集し、その時の対応を学習して自動化することで人的労力を削減したり、農業のノウハウを機械化することで容易に次世代へ引き継げたりするような試みが進んでいます。より身近なところでは、家庭に向けたスマートホームがあります。宅内の灯りやエアコンなどの家電、ドアの鍵を操作でき、家族の帰宅を外でも知ることができるようになります。さらに生活パターンの情報を収集して、快適に過ごせるように温度を自動で設定してくれる自動化や、省電力化が期待されます。小型のウェアラブルデバイスを用いて、人の脈拍や血圧などのバイタルデータを収集し、健康管理を行うなど医療に役立てる取り組みもあります。これらの例を見てわかるように、IoTは幅広い分野に広がっています。いずれの分野でも"モノ"が情報を発信・収集して、膨大な情報から「より、価値のある便利なサービスを生み出す」「効率化を進める」という傾向があるのが特徴です。○IoTを実現する仕組み多くの分野で活用が期待されるIoTですが、1つの技術によって実現されるものではなく、モノから情報を取り出して集積し、処理を行う複合的なシステムとなります。どのようにIoTが実現されるか、分野によって細かな部分は異なりますが、およその仕組みを下図に示します。大きく分類すると、「情報を収集するセンサー」「カメラ」「車」「灯り」といった物理的に作用する"モノ"があります。そして、これらが情報を送受信するために通信網につながります。この通信網には3G/4Gなどのセルラー網や、ADSLや光回線などの有線網があります。小型化・省電力化が進むセンサーデバイスなどでは、BLE(Bluetooth Low Energy)やZigbeeなどの省電力通信が利用されることも増えていますが、この場合は通信網につなげるために、ゲートウェイと呼ばれる通信の中継装置が必要になります。なお、モノが「ウェアラブルデバイスや「アクセサリー」の場合は、ゲートウェイの機能をスマートフォンが果たす場合も多く見られます。そしてこの通信網を介して、膨大な数のモノの情報をクラウド上に集積します。この情報をビッグデータとして処理し、それに基づいて人もしくは機械が自動的に物事を判断、モノの動きを決定し、必要に応じて通信網を介しモノの制御を行います。このようにIoTの実現には複数の要因が必要です。近年のIoT発展にはセンサーデバイスなどの「モノを安価に製造できるようになった」ことと、「通信網や情報を集積、処理するクラウド技術が発展した」こと、さらにAIに代表される「より高度な情報処理技術」など、多くの要因が集まってIoTが成り立つようになったのです。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年11月26日日立コンサルティングと日立システムズは11月26日、企業のIoT導入を支援するサービスの「IoT導入支援パック」を販売開始した。同サービスは、日立コンサルティングのビジネス計画の策定を支援するコンサルティングサービスである「IoTビジネス構想策定コンサルティング」と、日立システムズの設備の稼働状況やエネルギー利用状況を集中管理する「ファシリティ・モニタリングサービス」のトライアルパックとして提供する。価格は個別見積。同サービスはIoTのビジネス活用に向けたテーマ設定、計画立案、検証、検証結果に基づく計画見直しといった一連のプロセスを短期間・低コストで行うことができる。また、データ収集/管理/分析環境は、日立システムズのファシリティ・モニタリングサービスを活用し、セキュリティの確保された同社のデータセンターから管理対象数、利用期間に応じたクラウド型で提供するため初期投資の抑制につなげ、計画策定から効果検証までを実施することが可能だという。さらに、同サービスの利用後はIoT本格導入にあたってのM2Mネットワークの構築や制御系システムセキュリティ、大規模データの保管といったニーズにも日立システムズが対応し、顧客のIoT活用全体をサポート。今後、両社は連携し、IoTへの取り組みを強化するとともに、IoTを活用した顧客の新たな利益を生み出すビジネスモデル創出を支援していく。両社は主に工場やプラント設備を保有する製造業向けに新サービスを拡販し、2018年度末までに累計50社への販売を目指す。
2015年11月26日インテルはこのほど、同社やそのパートナー企業によるIoTへの取り組みを紹介するイベント「Intel IoT Asia 2015」を開催した。基調講演では米Intel APJ DCS エンベデット・セールス エンベデット DCS ディレクターのロニー・マカリスター氏が登壇。IoTはAPJ地域(アジア太平洋と日本)だけでも、2015年の8,881億ドルの市場規模から、今後5年で2兆5,826億ドルへと、3倍以上の成長が見込まれる市場だが、Intelがこれまで行ってきたPCやサーバー事業と同様に水平的に要素を組み合わせ、イノベーションを実現することで成功するだろうとコメント。一方で、これに向けて業界が手を組んで標準化をすすめていく必要があるという認識を示した。続いて米Intel IoT事業本部 副社長のローズ・スクーラー氏が講演し、IoTを「(PC、インターネットに続く)第3のコンピューティングの波」と表現。IoTに対する今後の取り組みとして重要なのは、業界が一丸となって相互運用性を上げることだと主張する。スクーラー氏は、実証実験の例としてリーバイスの在庫管理を紹介。商品に付けられたRFタグから得られたデータをCloudera/TAPで解析することで過剰在庫と在庫切れを減らすことができたという。Intelが提供するIoTブラットフォームのリファレンスアーキテクチャは、いままでネットワークに繋がっていなかったモノをゲートウェイを通じて安全に接続するほか、ICCの標準に準拠しており、拡張性や接続性、管理性とセキュリティに配慮したものになっているとアピールする。すでにPoC(Proof of concept)やパイロット、本番導入を含めて市場に浸透しつつあるという。解析に関してはSAPがプラットフォームを作る事を発表しており、現在パイロット段階にある。スケーラビリティに関してはQuark/ATOM/Core/XEONに加え、ウェラブル向けのCurie/Quark SEとCPUのポートフォリオの充実をアピールした。ビックデータとその分析については、人材/スキル不足でデータサイエンティストの負担が大きいため、ビッグデータプロジェクトの実装をサポートする「TAP(Trusted Analytics Platform)」により、ビックデータエコシステムをけん引するとしている。IoTアプリケーション開発に関しては2つのエッジ用無償OS「Plusar Linux」と「ROCKET」を紹介。前者はYOCTO Linuxベース、後者はQuarkを中心とした32bit CPU向けの極小フットプリントのOSとなる。これにWind RiverのHELIX Cloudスイートを組み合わせることによって短期間にIoTシステムを作成できるという。最後に標準化とコンソーシアムについて触れ、IntelとしてはOIC(Open InterConnect)による業界標準とオープンソース・ソリューションの組み合わせや、IIC(Industorial Internet Consotium)によるリファレンス・アーキテクチャとフレームワーク・テストベッドに準拠することで相互運用性を高めるという。さらにエコシステムパートナーと一緒にIoTを拡大する意欲を見せた。○都市に集中する人口と課題をスマートシティで解決したい基調講演の後は6つの分科会でセッションが行われた。トラックA-1では「スマートシティ向けIoTソリューション」ということでIntel ソリューショングループディレクターのレイトン・フィリップス氏が講演した。フィリップス氏によると、都市で人口が2倍に増えると、都市で起こる問題は2倍以上に膨れ上がるという。そのうえで、大都市全体では現在、毎週100万人以上の人口が流入し、2030年には50億人が都市に集中という予測を紹介した。世界のTOP600の都市をマッピングするといくつかのホットゾーンに集中し、中でアジア太平洋地域ではホットゾーンが大きく、その分さまざまな問題も発生してしまう。これらの都市問題をIoTで解消するのがスマートシティの目指すところだ。Intelは都市開発における最も良い手法を模索しているが、交通や建築、インフラ、分析という4つの領域で、各都市による固有の問題と共通の課題があるという。例えば、交通渋滞はどの都市でも課題となっているが、個別の課題に目を向けるとドバイでは水の管理、東南アジアでは大気汚染が問題になっている。フィリップス氏は、問題解決に向けた基盤としてデータ統合やオープンスタンダード、アジリティ、トラスト、シームレスでシンプルなサービス体験、エコシステムのイノベーションの6つが重要であると説明する。また、複数のエッジを1つのゲートウェイで管理することや、複数の通信インフラを組み合わせることで価格優位性を確保し、データを融合して新しい発見に結び付けることが重要だという。引き続き日本国内の取り組み事例として、会津若松市 市長 室井照平氏が登壇。会津若松市では1995年から人口が減少し、さらに半導体産業がファブレスや事業統合の波にさらされて縮小している。また、ICT専門の会津大学を平成5年に設立し、1,300名の学生を抱えるものの、6割が県外からの学生で、地元就職率が80%と言うのもやや問題だという。一方で、12万人という規模の人口は、実証実験が行いやすいこともあり、自然エネルギーや少子高齢化の先端都市として「スマートシティ会津若松」という取り組みを平成25年から推進し、雇用創出や住み続けられる街づくり、地方創生に力を入れている。具体的な取り組みとしては、住民基本台帳とGISデータを紐付けることによって、住民のデータを位置情報とともに活用している。例えば、データを分析することで、災害時における避難マップの作成やバス路線の効率化を実現したという。このほかには、(価値の低い)間伐材を利用したバイオマス発電や、電気自動車を利用した緊急時の電源確保、GPS搭載の除雪車による効率的な除雪や運行管理なども行っている。さらに公用車に加速度センサーを導入し、急ブレーキが発生した地点と警察が持つ、人身事故発生個所の情報を組み合わせることで、潜在的な危険場所を把握する情報収集やスマートアグリも始まった。今後はさらにオープンな取り組みを行うほか、情報を解析するアナリストの育成に力を入れたいという。
2015年11月25日「IoT」という言葉が急激に広まっている。10月には経産省と総務省を旗振り役に産官学の連携を目指す「IoT推進コンソーシアム」が設立され、機を同じくして開催されたJapan IT Weekでは「IoT/M2M展」に多くの出展企業や来場者が集まった。「Internet of Things (IoT)」。モノのインターネットの意味で、身の回りにあるものがインターネットにつながることと説明され、この「IoT」というワードが使われ始めた頃には、卑近な例として「冷蔵庫がネットにつながると……」といった"スマート冷蔵庫"の話がよく取り挙げられ、すでにいくつかの製品が世に出ている。また、産業界としての話題では米General Electricの事例に注目が集まった。産業機器大手の同社は、自社の提供する航空機エンジンに取り付けた各種センサーをネットにつなげ、リアルタイムにモニタリング。運行中の航空機(のエンジン)から取得されるデータをもとに、整備や異常が感知された部品の取り寄せなどをより効率化させることで、コスト削減や顧客満足度の向上を図っている。このネットにつながる"モノ"の数は、各社の予想にばらつきはあるが、東京オリンピックが開催される2020年には500億個(Cisco)とも20兆個(Microsoft)とも言われている。そのような中で、先の冷蔵庫や航空機エンジンのように具体的な例を挙げるとわかりやすい「IoT」だが、実際にどのようなものかきちんと理解しているだろうか。○IoTがつなぐのは「モノ」だけではない10月に発売された「メイカーズ進化論 本当の勝者はIoTで決まる」(NHK出版)は、ちょうど1年前にオープンしたスタートアップのものづくり拠点「DMM.make AKIBA」で総合プロデューサを務めた小笠原 治氏の初めての著書。ものづくりに関わってきた同氏ならではの視点で「IoT」について書かれた内容となっている。著者はまず、モノのインターネットは"誤訳"だと言い切る。「IoT」において重要なのは「モノ」にインターネットが入ることではなく、物質としての「モノ」と、そして無形の「コト」がインターネットにつながることが肝であり、これまであった「モノ」が「モノゴト(サービス)」になっていくことこそが、大進化のポイントだとする。これまでのネットは、PCや携帯電話などのデバイスを利用して「ヒト」がネットにつながっていく世界であった。それが、「モノ」「コト」にインターネットが入ることによって、サービスとして新たな価値を作っていく。それが「IoT」の世界であり、その真価である。そもそも、「IoT」は個別具体的な意味を持つ用語ではなく、あらゆるものがネットにつながことによって生まれる「世界の概念」を示すものだ。○モノとコトから生まれるサービス国内の大手電機メーカが苦しむ一方で、近年は3Dプリンタなどを利用したものづくりベンチャー「メイカーズ」が活躍している。「メイカーズ進化論」は、そのようなメイカーズの製品を取り挙げ、その土台を支える3Dプリンタやクラウドファンディング、モジュール化、インダストリー4.0といったキーワードをもとに解き明かす内容となっている。激変する製造業を「売れる」「作れる」「モノゴトで稼ぐ」の3つの切り口で解説する同書、分かりやすい文章で気軽に読むことができる。「IoT」の意味はなんとなくわかるけど、なぜこれが世界を変えると言われているのかわからない…といった人におすすめだ。そして、読み終えたら、身近なものをネットにつなげたらどのようなサービスが生まれるのかを考えてみてもいい。例えば、すでにある製品だが、感圧センサーを入れた座布団。座っていることを検知できるので、居酒屋の各席に置いて、混み具合や席の空き具合をリアルタイムにWebサイトに表示できるだろう。あるいは、座ったり立ったりした動作をもとに、お年寄りの見守りサービスとしての利用も考えられる。ほかにも、会社の席や自宅の居間などに置いといて、どこにどれだけの時間いたのかを計るライフログ的な使い方もできるだろう。このような「座布団」「座っていること」といった、モノとコトがネットにつながる世界、そしてそこから生まれるサービスは可能性に満ちている。そして、IoTにより深い関心を持ったならば、同じくNHK出版から10月に刊行されたジェレミー・リフキン氏の著書「限界費用ゼロ社会<モノのインターネット>と共有型経済の台頭」を手にとってみるのもいいだろう。
2015年11月20日トレンドマイクロとユビキタスは11月16日、IoT(Internet of Things)分野におけるセキュリティソリューションを共同開発することに合意したことを発表した。具体的には、(1)IoT関連の管理装置に組み込む「セキュリティソリューションのソフトウェア開発キット(SDK:Software Development Kit)」の共同開発、(2)セキュアなIoTクラウドプラットフォームの実現、(3)自動車向けセキュリティの共同研究の3分野における協業を開始する。IoT関連の管理装置に組み込む「セキュリティソリューションのSDK」の共同開発では、スマートテレビやエアコン、給湯器といった住宅設備機器など家庭内のIoTデバイスを家の外から遠隔操作する際や、家庭内の電力使用状況を把握する際に必要な管理装置(ホームゲートウェイ)に組み込むセキュリティソリューションを共同開発する。具体的には、ユビキタスの提供するIoTデバイスと管理装置が通信するためのスマートホーム関連技術と、トレンドマイクロのIoTデバイスを保護するセキュリティ技術「Trend Micro Smart Home Network」を組み合わせて、管理装置を製造、提供する事業者にSDKとして提供する。事業者はこのSDKを利用することで、家庭内のIoTデバイスに対する脆弱性を悪用する攻撃やウイルスの感染から防ぐ機能を管理装置に実装できる。また、セキュアなIoTクラウドプラットフォームの実現を目指す目標では、ユビキタスが提供するIoTクラウドプラットフォーム「dalchymia」に、トレンドマイクロの総合サーバセキュリティ対策製品「Trend Micro Deep Security」を導入し、「dalchymia」サービスのAPIとして利用できる環境を構築する。(3)の自動車向けセキュリティの共同研究では、次世代自動車に求められるセキュリティ技術とそれを活用したセキュリティソリューションの共同研究を行う。
2015年11月19日