肌に重ねる、冬の遊戯。ジョー マローン ロンドンふたつの香り。
鼻の頭を撫でる風がツンと冷たくなって、自然と肩のまわりに力が入り、肌がひりつく季節。寒さがつらくはあるけれど、この数カ月は、香水で遊ぶのがとびきり楽しい、香りにとってのゴールデンシーズン。
もちろん、初夏から夏にかけて、青々としたフレッシュな香りを纏うのも楽しいし、春や秋にぴったりな花々や穀物の香りを満喫するのも粋だと思う。だけれど、香りを自由自在に「ものにしよう」と思ったら、冬という時期こそお誂え向きかもしれない。
そういえば、私が香水に心を奪われるきっかけになったのもまた、ずっと昔のとびきり寒い冬の夜だった。ボーイフレンドの部屋のベッドサイドにさりげなく置かれた、薬瓶を思わせる見慣れないフレグランス。
ニューヨークで買ったのだというそれは、当時の私にはどうしようもなく成熟した官能的なものとして映った。彼が部屋から離れた隙にほんのワンプッシュだけ、その日着ていたヒートテックの中に吹き付けてはたまらなくドキドキしたことを覚えている。
■肌の上に纏う
そしてあれから随分経った今年の冬、いまやもう私にとってフレグランスは自分の一部のようになっていて、日々洋服や気分、天気や湿度、その日会う相手などのことをおもんぱかっては「さぁ、今日は何にしようか」