メイクの役割は女性をきれいに見せるだけのものではなく、舞台などの芸術作品に一役買うという側面もあるのです。
奈良時代のおしろいは“水銀”でできていた
奈良時代のおしろいは、その原材料の多くが水銀から出来ていました。多くの人がイメージする丸くて銀色のコロコロと転がる水銀は、ほかの物質と化合するとサラサラのおしろいになったのです。ですが、水銀である以上、当然毒素を持っています。毎日顔にべったりと塗っていては、いずれ水銀中毒になることは間違いありません。
水銀のおしろいは高価なものでしたので、当然使用できるのは上流階級の人に限られていました。または役者のような舞台で演技をする人が使用していたようです。いずれにしても、使用する人の健康を害していたことはほぼ間違いなく、文献の中には、水銀中毒による症状と思われる病状の記述も、多数残されています。
江戸時代に歌舞伎役者が水銀中毒で倒れることも
江戸時代になっても、水銀を使用したおしろいはまだ使われ続けていました。ほかの材料があっても、水銀おしろいほどはのりやつきが良くなく、見た目の良さという点で使用され続けてきたのです。そして、その影響を濃く受けたのが、顔に大量のおしろいをつける歌舞伎役者でした。