心理学科教授「新型コロナで怖い夢を見る人が増えている理由」
夢の設定は、Aさんが古い家に引っ越したあとーー。
《せまい部屋で、実在の娘とAさんの妹、そして姪と一緒に寝ていた。Aさんはほかにも部屋があることに気づき、隣のドアを開けると、その部屋は薄暗く、しっとりしていてカビ臭い。部屋の中には、古い木製ケースに入った同じ楽器がたくさん並んでいた。するとその楽器から、聞き取れない声のような、怖い音が聞こえてきた。Aさんは恐怖のあまり体がかたまって声も出ず、ひとり震えながら元の部屋に戻ると、妹や姪たちから『感染するから近寄らないで!』と叫ばれ、飛び起きた》
「Aさんの場合、自分がウイルスに感染して、妹さんたちに拒否されるという筋書きでした。聞取り調査のなかでその理由を考えていくと、妹さんは姉妹のお母さんを介護している人。そして、姪ごさんは生後4カ月の乳児を育てている人でした。
Aさんはふだんから、『もし自分が感染したら、この2人だけは絶対にうつしちゃいけない』という思いがあった。それが夢の中で『近寄らないで!』と拒否される形で表れたのだと思われます」
そして松田さんは、「悪夢には大きく分けて2種類ある」と話を続ける。
「いちばん強度の高い悪夢は、たとえば、東日本大震災で津波や火災で建物が崩れるといった、まさにその場に直面し、体験したものがそのまま夢に出てくるケース。