“冠攣縮性狭心症”で心肺停止 医療ライターが体験した「ブレーカーがバチッと落ちたような“無”の世界」
私の身元がわかったのは、たまたまお財布に入れていた父の名刺からでした。
まさかは突然やってくる。その教訓から、私は退院後、名前、年齢などの基本情報に医療情報や保険証等の各種証明書を、ポーチにまとめて持ち歩くようになりました。また、スマホやパソコンのパスワードの保管場所などは信頼できる友人に伝えています。医療ポーチの実物がこれです」
このインタビューの日も、熊本さんは、大ぶりのカバンからコンパクトな医療ポーチを取り出して見せてくれた。
透明なポーチの中には、前述した各種情報に加えて、常備薬やお薬手帳なども。
また裏面には、「緊急連絡先」として妹や友人の名前と携帯番号が貼ってあるのに加えて、「私には心疾患があります。植え込み型除細動器が左脇にあります」と記されたメモが貼られている。
「ずっと何の根拠もなく、自分だけは大丈夫と思い込んでいましたが、それは妄信と知りました。まさかに備えて準備をしておくことは、私のように大病を経験したり持病のある方だけでなく、今は健康と思っている方たちにも大切なことと思います。
現在、7分に1人が心疾患で亡くなっているとのデータもあります。突然、意識を失い倒れるというのは誰にも起こりうることなんです、私がそうだったように」